平成14(わ)348 業務上過失致死,道路交通法違反被告

裁判年月日・裁判所
平成14年8月22日 福岡地方裁判所 小倉支部
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判決文本文3,297 文字)

平成14年8月22日宣告平成14年(わ)第348号,第429号業務上過失致死,道路交通法違反被告事件判決 主文 被告人を懲役2年10月に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成14年4月21日午前3時30分ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,北九州市a区b町c丁目d番e号付近道路をx方面からy方面に向かい進行するに当たり,指定最高速度(時速50キロメートル)を遵守するのはもとより,前方を注視し,進路の安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,自車助手席の同乗者との会話に気を取られ,前方注視を欠いたまま漫然時速約80キロメートルで進行した過失により,折から進路前方を同一方向に進行中のA(当時41歳)運転の普通貨物自動車を,その後方約16.7メートルに迫って初めて認めたが,急制動の措置を講ずる間もなく,同車左後部に自車右前部を衝突させ,その衝撃により同普通貨物自動車を右斜め前方に逸走させた結果,同車を中央分離帯に設置された信号柱に激突させ,よって,同人に頭部打撲等の傷害を負わせ,同月22日午後9時28分ころ,同市a区fg丁目h番i号所在のB総合病院において,同人を上記傷害に基づく一次性脳幹損傷により死亡するに至らしめた。 第2 同月21日午前3時30分ころ,同区b町c丁目d番e号付近道路において,上記第1記載のとおり,普通乗用自動車を運転中,上記Aに上記傷害を負わせる交通事故を起こしたのに,直ちに車両の運転を停止して同人を救護する等必要な措置を講ぜず 区b町c丁目d番e号付近道路において,上記第1記載のとおり,普通乗用自動車を運転中,上記Aに上記傷害を負わせる交通事故を起こしたのに,直ちに車両の運転を停止して同人を救護する等必要な措置を講ぜず,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった。 第3 同日午前3時40分ころ,同区jk丁目l番m号付近道路において,普通乗用自動車を運転中,自車を同所に駐車中のC所有の軽四輪乗用自動車に衝突させ,同車のフロントバンパー等を損壊(損害額15万6800円)する交通事故を起こしたのに,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった。 (証拠の標目) 省略(法令の適用)罰条判示第1の所為刑法211条1項前段に該当判示第2の所為前段の救護等義務違反の点は,平成13年法律第51号による改正前の道路交通法117条,72条1項前段に,後段の報告義務違反の点は,道路交通法119条1項10号,72条1項後段にそれぞれ該当判示第3の所為道路交通法119条1項10号,72条1項後段に該当観念的競合の処理(判示第2の所為)刑法54条1項前段,10条(重い救護等義務違反の罪の刑で処断)刑種の選択いずれも懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入同法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,前方注視を欠いたまま指定最高速度を超える高速度で漫然と自車を進行させたことにより,前方を同一方向に進行していた被害車両を避けきれずにその左後部に自車右前部を衝突させて被害車両を右斜め前方の信号柱に激突させ,同車両の運転者を後刻死亡させ,また で漫然と自車を進行させたことにより,前方を同一方向に進行していた被害車両を避けきれずにその左後部に自車右前部を衝突させて被害車両を右斜め前方の信号柱に激突させ,同車両の運転者を後刻死亡させ,また,上記交通事故を起こしたのに,直ちに被害者の救護等の必要な措置を講じなかったと同時に,事故発生等の事実を最寄りの警察署の警察官に報告せず,さらにその後,逃走中に自車を道路脇の駐車車両に衝突させる交通事故を起こしたのに,やはり事故発生等の事実を直ちに最寄りの警察署の警察官にに報告しなかったという,業務上過失致死及び各道路交通法違反(救護等義務違反,報告義務違反)の事案である。 本件一連の経緯は,被告人が,前日の夜に内妻の友人を迎えに車で福岡市まで行き,北九州市に戻る車中で運転をしながら発泡酒(350ミリリットル缶)を1本半飲んだほか,その後に内妻及び上記友人らとともに入ったカラオケボックスでは,後に車を運転することが分かっていながら,ビールを中ジョッキで約5杯飲んだ上で車を運転して帰宅の途につき,上記人身事故現場付近において,指定最高速度を時速約30キロメートル超過した時速約80キロメートルで進行しながら,助手席の内妻との会話に気をとられて前方を注視していなかったために上記人身事故を起こしたものの,飲酒運転であったため,重い処罰を受けることを恐れてそのまま自車を走らせてその場から逃走し,さらにその途中に起こした上記物損事故についても,その場を走り去った後行き止まりで降車した際,後を追いかけてきた関係者から追及されたところ,今度は自車をその場に置いたまま走り去ったというものであるが,まず,上記人身事故については,前方注視という車の運転者にとり極めて基本的な注意義務を怠ったことに加え,指定最高速度を何ら遵守しようともしておらず,さらには多量の飲酒 走り去ったというものであるが,まず,上記人身事故については,前方注視という車の運転者にとり極めて基本的な注意義務を怠ったことに加え,指定最高速度を何ら遵守しようともしておらず,さらには多量の飲酒をした上での運転であって,その犯行態様は,危険かつ悪質極まりないもので,本件過失の程度は極めて重大である。 そして,いうまでもなく本件人身事故の結果は重大である。被害者は,昨年に妻と入籍したばかりで,妻の連れ子3人を含む子供5人と一緒に生活をしていたところ,本件事故によって幸福な生活を打ち砕かれたものであり,その悲しみや憤りの大きさは察するに余りあるとともに,被害者の妻の処罰感情も極めて大きいもので,その心情は誠に当然のものである。しかし,被告人の運転車両に係る任意保険は,年齢制限のために利用できず,遺族に対しては自賠責による賠償しかなされておらず,被告人からは何ら慰謝の措置が講じられていない。 また,その後の各道路交通法違反の件については,本件人身事故により,被告人は,被害者に大けがを負わせたかもしれないとの認識を当時有し,しかも,同乗者からは制止を求められたにもかかわらず,飲酒運転での事故の発覚を恐れて現場から逃走し,さらに,その後の物損事故についても,関係者からの追及を振り切って逃走しており,やはり犯情は極めて悪質である。 被告人には,これまでに複数の前歴があり,昨年には,最高速度違反行為を含めた2件の交通違反歴もありながら,上記のような一連の犯行を犯しているもので,その具体的態様等を見ても,被告人の規範意識の鈍磨には看過し難いものがあり,以上を総合すると,被告人の刑責は重大であるといわざるを得ない。 そうすると,他方,被告人は,本件犯行を素直に認めて反省の情を示し,社会復帰後は少しずつでも遺族や被害者に被害弁償をしたい旨述べているこ 上を総合すると,被告人の刑責は重大であるといわざるを得ない。 そうすると,他方,被告人は,本件犯行を素直に認めて反省の情を示し,社会復帰後は少しずつでも遺族や被害者に被害弁償をしたい旨述べていること,いまだ20歳の若年であり,また,これまでに前科はないこと,被告人にも,その社会復帰を待ち望む内妻や幼い子がいることなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮してもなお,被告人に対しては,主文のとおりの刑期の実刑をもって臨むのが相当であると判断した。 (検察官田代英明,国選弁護人田村一巳各出席)(求刑懲役3年6月)平成14年8月22日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部裁判官西森英司

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