平成22(ネ)512 認知無効,離婚等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成23年4月7日 広島高等裁判所 棄却 広島家庭裁判所 平成21(家ホ)49
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判決文本文13,257 文字)

主文 1 一審被告らの控訴及び一審原告の控訴をいずれも棄却する。 2 一審被告Bの当審における反訴請求を棄却する。 3 控訴費用は各自の負担とし,当審における反訴訴訟費用は一審被告Bの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判(一審被告らの控訴) 1 控訴の趣旨 (1) 原判決中,一審被告ら敗訴部分をいずれも取り消す。 (2) 一審原告の請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は,第一,二審とも一審原告の負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁 (1) 一審被告らの控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴費用は,一審被告らの負担とする。 (一審原告の控訴) 3 控訴の趣旨 (1) 原判決中,一審原告敗訴部分を取り消す。 (2) 一審被告Bは,一審原告に対し,160万円及びこれに対する離婚判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第一,二審とも一審被告Bの負担とする。 4 控訴の趣旨に対する答弁 (1) 一審原告の控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,一審原告の負担とする。 (一審被告Bの当審における反訴請求) 5 反訴請求の趣旨 一審原告の離婚請求が却下,棄却されることを解除条件として (1) 一審原告は,一審被告Bに対し,160万円及びこれに対する離婚判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 反訴訴訟費用は,一審原告の負担とする。 6 本案前の答弁 (1) 一審被告Bの反訴に係る訴えを却下する。 (2) 反訴訴訟費用は,一審被告Bの負担とする。 7 反訴請求の趣旨に対する答弁 (1) 一審被告Bの反訴請求を棄却する。 (2) 反 の答弁(1) 一審被告Bの反訴に係る訴えを却下する。 (2) 反訴訴訟費用は,一審被告Bの負担とする。 7 反訴請求の趣旨に対する答弁(1) 一審被告Bの反訴請求を棄却する。 (2) 反訴訴訟費用は,一審被告Bの負担とする。 第2 事案の概要 1 請求の内容と訴訟の経緯等本件は,一審被告Bの夫である一審原告が,一審被告Bの子で一審原告が認知した一審被告Aに対し,認知の無効を求める(原審平成21年(家ホ)第49号)とともに,妻である一審被告Bに対し,離婚とこれによる慰謝料160万円(附帯請求は判決確定後の遅延損害金)の支払を求めた(原審平成22年(家ホ)第18号)事案に係る控訴事件である。 本件のうち,認知無効請求事件の争点は,①同請求が民法785条に違反するか,②同請求が権利濫用となるかの各点に,離婚等請求事件の争点は,③一審被告Bによる悪意の遺棄又は一審原告と一審被告Bとの婚姻関係の破綻が認められるか,④同請求が信義則に反するかの各点にあり,これらに関し,原審は,①,②を否定し,③の婚姻関係の破綻を認め,④を否定する判断をした上,一審原告の一審被告Aに対する認知無効請求と一審被告Bに対する離婚請求をいずれも認容し,一審被告Bに対する慰謝料請求を棄却する旨の原判決を言い渡した。 これに対し,一審被告Aが認知無効請求を認容した部分を,一審被告Bが離 婚請求を認容した部分をそれぞれ不服として控訴し,また,一審原告が慰謝料請求を棄却した部分を不服として控訴したのが本件である。 なお,一審被告Bは,当審において,一審原告の離婚請求が認容された場合の予備的請求として,一審原告に対し,離婚慰謝料160万円の支払を求める反訴を提起した。 2 前提事実と争点及び争点に関する原審における当事者の主張次のとおり補正する 離婚請求が認容された場合の予備的請求として,一審原告に対し,離婚慰謝料160万円の支払を求める反訴を提起した。 2 前提事実と争点及び争点に関する原審における当事者の主張次のとおり補正するほかは,原判決2頁25行目から同6頁18行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁3行目末尾に「なお,一審原告は,昭和**年**月**日生まれであり,一審被告Bは,昭和**(19**)年**月**日生まれである。」を,同5行目の末尾に「一審原告の血液型はA型,一審被告Bの血液型はO型,一審被告Aの血液型はB型であり,一審原告と一審被告Aとの間には血縁上の親子(父子)関係はない(甲2ないし4)。なお,一審被告Aは,来日前,フィリピンにてフィリピン人である血縁上の実父とともに生活していたが,その実父は,平成20年ころ死亡した。」を,同6行目の「届出」の次に「(以下「本件認知」ということがある。)」をそれぞれ加え,同7行目の「日本国籍を取得した。」を「平成20年法律第88号による改正前の国籍法3条所定の届出をしたことにより日本国籍を取得したが,生来的に有していたフィリピン国籍を喪失,離脱したか否かは明らかでない。」にそれぞれ改める。 (2) 同4頁5行目から同6行目にかけての「性的虐待」を「体に触る,陰部に触るなどの性的虐待」に改める。 3 当審における当事者の主張(1) 一審被告らア認知無効請求について(ア) 民法785条,786条の解釈 原判決は,民法785条の趣旨を認知の撤回を認めないという点にとどめ,血縁上の親子関係が存在しない場合であっても,認知者の認知の取消しや無効の主張を許さないとの趣旨を含まないとした上,同法786条の利害関係人には認知者を含むと解されるので,認知者による認知無効請求 血縁上の親子関係が存在しない場合であっても,認知者の認知の取消しや無効の主張を許さないとの趣旨を含まないとした上,同法786条の利害関係人には認知者を含むと解されるので,認知者による認知無効請求は許されると判断した。しかし,この判断は,大審院大正11年3月27日第二民事部判決・民集1巻4号137頁,東京高裁昭和63年8月31日判決・判例タイムズ694号161頁に反する。 民法785条は,気まぐれな認知を防止するとともに,一旦認知された後の法的安定性を確保する点にあると解されるのであり,本件においても,認知無効を認めることによって一審被告Aの身分関係,居住関係が不安定になり,それにより精神的,経済的に不利益を受けることとなるのであって,一審被告Aの運命はもてあそばれ,その福祉が害される結果を招来することとなるのであるから,原判決のような解釈は妥当でない。 (イ) 権利の濫用原判決は,①同居期間が1年8か月程度であること,②一審被告Aがフィリピンで実兄らとともに生活し,一審原告が実父でないことを理解していたこと,③一審原告の認知が連れ子養子に近いもので,認知には離縁のような事後的な関係解消制度が予定されていないこと,④今後の親子関係の修復可能性が低いことを強調して,一審原告の認知無効請求が権利の濫用に当たらないと判断した。 しかし,①は,一審原告が派遣社員として1年6か月間富山県や静岡県に働きに出ていたからであり,過度に強調される事情とはいえない。 ②は,一審被告Aと実父との同居期間は短く,実父は既に死亡していることが考慮されるべきである。 ③については,養子縁組ではなく,あえて虚偽認知という犯罪を犯し たのは一審原告であり,その不利益は一審原告自身が甘受すべきである。 ④も,今後の親子関係の修復可能性が低いの るべきである。 ③については,養子縁組ではなく,あえて虚偽認知という犯罪を犯し たのは一審原告であり,その不利益は一審原告自身が甘受すべきである。 ④も,今後の親子関係の修復可能性が低いのは,一審原告の一審被告Aに対する性的虐待や暴力という一審原告自身の責められるべき行為が原因となっているのであるから,これについては,むしろ一審原告の請求が権利の濫用となる理由の一つになり得る事情である。 本件において,一審原告の認知無効請求が権利の濫用となるか否かを判断するに当たっては,一審原告の請求が,性的虐待から避難するために一審原告のもとを去った一審被告らに対する報復目的でされていること,一審原告が一審被告Aを認知した動機が,性的興味の対象を手元に置こうとしたことが重視されなければならない。また,認知無効が認められないとしても,その不利益を受けるのは認知者たる一審原告以外には存在しない。さらに,認知無効が認められれば,一審被告Aは,完全に日本人として生活しているにもかかわらず,日本国籍を失い,フィリピンへ退去強制されることになり,その不利益は計り知れない。 以上の事情によれば,本件は,認知無効を認めることが著しく不当な結果をもたらす場合に該当するから,一審原告の認知無効請求は,権利の濫用に当たるというべきである。 イ離婚等請求について(ア) 婚姻関係の破綻一審被告Bが一審原告と別居した理由は,一審原告の性的虐待から一審被告Aを避難させるためであった。そうすると,一審被告Aが成人して独立し,一審原告が自らの非を認めて態度を改めれば,同居の障害がなくなるから,今後の婚姻関係の修復可能性がまったくないとはいいきれない。 したがって,一審被告Bと一審原告との婚姻関係が破綻しているとまではいえない。 (イ) 信義則 れば,同居の障害がなくなるから,今後の婚姻関係の修復可能性がまったくないとはいいきれない。 したがって,一審被告Bと一審原告との婚姻関係が破綻しているとまではいえない。 (イ) 信義則違反一審原告の離婚請求が信義則に反しているかどうかを判断する上で最も考慮されるべき事情は,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたことであり,一審原告が有責配偶者であることである。 一審原告は,一審被告Aが小学校3年生ころから4年生ころにかけて,その胸や股に触るという行為を繰り返しており,この行為は,13歳未満の男女に対するわいせつ行為であるから,強制わいせつ罪が成立する。 しかも,一審被告Aについて虚偽認知をし,自分の手元に置いて性的虐待の対象としたのは,ほかでもない加害者たる一審原告である。 また,一審原告の離婚請求が許容されると,一審被告Bは在留資格を失い,日本からの退去を強制される恐れが生じ,そうなれば,一審被告Aも日本での生活を継続できなくなるが,これ以上,有責者である一審原告の都合で一審被告らの運命を左右することは,絶対に避けなければならない。 このように,一審原告の有責性が極めて重い以上,その離婚請求は,信義則に反しているといえる。 ウ一審被告Bの当審における反訴請求について前記のとおり,一審原告は有責配偶者であり,一審被告Aに対する性的虐待に起因して,一審被告Bは多大なる精神的苦痛を受けてきた。また,一審原告の離婚請求が認められると,一審被告らは,退去を強制される事態に陥ってしまう。 それらの精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,少なくとも160万円を下回らない。 よって,一審被告Bは,一審原告に対し,不法行為による損害賠償として,160万円及びこれに対する離婚判決確定の日の翌日から支払済みまで民法 るに足りる金額は,少なくとも160万円を下回らない。 よって,一審被告Bは,一審原告に対し,不法行為による損害賠償として,160万円及びこれに対する離婚判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 一審原告ア慰謝料請求について原判決は,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたと認定し,婚姻関係が破綻した主たる責任は一審原告にあるとして,一審原告の慰謝料請求を棄却したが,この認定,判断は誤っている。 一審原告と一審被告Bとの婚姻関係が破綻した原因は,①一審被告Bが日本での滞在を続ける目的で一審原告と結婚したとしか考えられないこと,②パチンコなどによる一審被告Bの著しい浪費とこれを原因とする多数の知人からの借金のため,一審原告までもが支払の催促を受けるなどの金銭的トラブルに巻き込まれたこと,③一審被告Bが一審被告Aの実父の葬儀に参列するため,自分の子が亡くなったと虚偽の事実を告げ,帰国費用を負担させてフィリピンに帰国していたことなどから,一審原告が一審被告Bに対する信頼を失ったことが原因である。 また,一審被告Bが平成21年2月12日に自宅を出て行ったのは,一審原告が失職し,就職先が見つかる目処も立っていなかったためであって,一審原告との婚姻生活を続ける理由が失われたことによる。 このように,婚姻関係破綻の原因は一審被告Bにあり,しかも,一審被告Bは,資力のない一審原告が生活の場所さえ失ってしまうことを認識していながら,そのような行動に及んだのである。 したがって,一審原告の一審被告Bに対する慰謝料請求は認容されるべきである。 イ一審被告Bの当審における反訴請求に対する本案前の答弁について一審被告Bの当審における反訴請求は,控訴審においてされたもの ,一審原告の一審被告Bに対する慰謝料請求は認容されるべきである。 イ一審被告Bの当審における反訴請求に対する本案前の答弁について一審被告Bの当審における反訴請求は,控訴審においてされたものであるから,相手方の同意が必要とされている(民事訴訟法300条1項)。 しかし,一審原告は,これに同意しないから,同請求に係る訴えは,却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 一審原告及び一審被告らの控訴について当裁判所も,一審原告の一審被告Aに対する認知無効請求と一審被告Bに対する離婚請求はいずれも正当であるから認容し,一審被告Bに対する慰謝料請求は失当であるから棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」,「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決7頁11行目の最初の「フィリピン法」の次に「(フィリピン家族法175条,172条,なお,同法には認知の制度は存在しない。)」を加え,同21行目の「9,10」を「9ないし11,12の1ないし3,14の1ないし4」に同行目の「乙1ないし6」を「乙1ないし7」にそれぞれ改める(なお,書証番号はすべて認知無効請求事件のものである。以下,同様)。 (2) 同8頁8行目の「入局管理局」を「入国管理局」に改め,同11行目から同12行目にかけての「虚偽のもの」の次に「,なお,一審被告Aは平成16年6月25日に一審原告を父とする出生登録がされたが,その手続は一審被告Bが行った。」を加え,同12行目の「被告」を「一審原告」に,同15行目から同16行目にかけての「同居を始めた。」を「広島市d区eの自宅(一審被告Bの勤務先の従業員寮であった。)に同居し,日本での生活を始めた。」にそれぞれ改める。 (3) 同8 原告」に,同15行目から同16行目にかけての「同居を始めた。」を「広島市d区eの自宅(一審被告Bの勤務先の従業員寮であった。)に同居し,日本での生活を始めた。」にそれぞれ改める。 (3) 同8頁17行目から同21行目までを以下のとおりに改める。 「(8) 一審被告Aは,上記のとおり,平成17年10月に来日した後,F小学校に入学したが,当時は日本語が不自由であったため,本来であれば3年生であったが,1学年下の2年生に編入された。また,一審被告Aは,当時,日本での生活に馴染んでおらず,箸を使わずに手で食べ物を食べたり,自分のことを「オレ」と呼んだりしていたため,これを見と がめ,聞きとがめた一審原告から厳しく叱責され,次第に一審原告を疎ましく思うようになった。そのような中,一審原告から禁じられていたにもかかわらず,一審被告Aがいとこ(一審被告Bの妹の子ども)に一審原告のパソコンのパスワードを教え,そのいとこがプログラムに手を加えたことから,パソコンが起動できなくなったことがあり,その際には,一審原告も怒りを抑えられず,一審被告Aの髪の毛を引っ張るなどしたことがあった。このようなことから,一審原告と一審被告Aとは,当初から一貫して不仲であった。 なお,一審被告Bは,一審被告Aが同居するようになった3か月後の平成18年1月12日,広島市児童相談所を訪ね,次の点について相談をしている。 ア一審原告が一審被告Aに一緒に入浴するように言い,断り続けているが,連日なので心配がある。 イ一審被告Aが学校から帰宅すると,一審原告が抱きすくめてキスをするため,一審被告Aが嫌がっている。 ウ一審原告が一審被告Aの日常生活に干渉し,意に沿わないと機嫌が悪くなる。 エ正月には,一審被告Aが騒いだため,一審原告が足で一審被告Aを蹴った。 スをするため,一審被告Aが嫌がっている。 ウ一審原告が一審被告Aの日常生活に干渉し,意に沿わないと機嫌が悪くなる。 エ正月には,一審被告Aが騒いだため,一審原告が足で一審被告Aを蹴った。 オ一審原告が,一審被告Aをフィリピンに帰すとか,一審被告Bと離婚すると発言する。」(4) 同8頁24行目の次に行を改めて以下を加える。 「 なお,一審被告Bは,平成19年7月4日,再び広島市児童相談所を訪ね,次の点について相談をしている。 ア一審原告は,一審被告Bがいても,一審被告Aに触るため,一審被告Aが嫌がっている。 イ一審被告Bは,離婚して引っ越したいが,離婚後も,一審被告Aと一緒に広島市に住み,今の店で働きたい。 ウ一審原告は,離婚を了解したが,離婚届はまだ出していない。」(5) 同8頁25行目の「妹の夫」を「妹の夫であるC」に改める。 (6) 同9頁4行目の次に行を改めて以下を加える。 「 なお,一審原告は,富山県と静岡県で稼働した平成19年6月ころから平成21年1月までの間,一審被告B名義の郵便貯金にほぼ毎月入金(多い月で10万円,少ない月で5000円ないし1万円)し,一審被告らの生活費を援助していた。」(7) 同9頁5行目の「原告との同居再開に恐怖感を持ち」を「不仲であった一審原告との同居再開を嫌い」に,同6行目の「同年」を「同月」にそれぞれ改め,同16行目の末尾に「そこで,一審原告は,当時,前記のとおり,派遣切りにあい,無職で就職先も決まっていなかったため,労働金庫から派遣切り支援資金を借り受けて転居したが,その後も就職先に恵まれず,現在も福祉に頼って生活している。」を加える。 (8) 同10頁2行目の「登録」を「戸籍の記載」に改め,同3行目から同13行目までを以下のとおりに改める。 「3 たが,その後も就職先に恵まれず,現在も福祉に頼って生活している。」を加える。 (8) 同10頁2行目の「登録」を「戸籍の記載」に改め,同3行目から同13行目までを以下のとおりに改める。 「3 ところで,一審被告らは,一審原告が一審被告Aに対し,体に触る,陰部に触るなどの性的虐待を加えたと主張し,乙5,6及び一審被告ら各本人尋問の結果中には,これに沿う陳述ないし供述がある。 よって検討するに,上記各証拠によれば,一審原告の一審被告Aに対する性的虐待が行われたというのは,一審被告Aが小学校2年生の終わりころから小学校3年生の時期(乙5の4頁,乙6の5頁,一審被告A本人59項)であるというのであるから,平成17年の年末から平成19年の3月までの間ということになるが,前記認定の事実によれば,一審被告Bは,平成18年1月12日,広島市児童相談所を訪ね,一審原 告と一審被告Aのことについて相談したが,その際の相談内容は,一審原告が一審被告Aに連日にわたって一緒に入浴するように言うとか,一審被告Aが学校から帰宅すると,一審原告が抱きすくめてキスをするということであって,一審被告らが主張するような性的虐待に係る行為ではない。また,少なくとも日本では,父親が小学校2,3年生の娘に一緒に入浴しようと誘うことは奇異なことではなく,しかも,一審原告の本人尋問の結果(203項)によれば,一審被告Aと一緒に風呂に入ったのは,シラミ(虱)取りのために入った1回だけだというのであるし(この点に関する一審被告Aの本人尋問の結果(118項以下)は甚だ曖昧であり,採用できない。),抱きすくめるというのも,一審原告の本人尋問の結果(205項)によれば,ハグ(hug)であり,通常,親愛の情を表すとされている行為であるから,いずれも直ちに性的な行為がされたという 用できない。),抱きすくめるというのも,一審原告の本人尋問の結果(205項)によれば,ハグ(hug)であり,通常,親愛の情を表すとされている行為であるから,いずれも直ちに性的な行為がされたということはできない。 したがって,上記乙5ほかの証拠はたやすく採用することができず,一審原告が一審被告Aに対し,平成18年1月12日までの間に性的虐待を加えたと認めることはできない。 次に,その後,平成19年3月までの間のことであるが,上記乙5ほかの証拠によれば,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたとすれば,この間が最もその可能性が高いことになるが,前記認定の事実によれば,一審被告Bがこの間に児童相談所を訪ねて相談をした事実はなく,一審原告が派遣社員として働くために富山県に転居し,一審被告Aの被害がなくなったはずの同年7月4日に至り,一審被告Bは,児童相談所を訪ねた上,初めて一審原告が一審被告Aに触る旨を訴えているのであって,真に性的虐待があったにしてはあまりに不自然な経緯というべきであり,しかも,その際には,一審被告Bの離婚や離婚後の生活についても相談していることにかんがみると,一審原告の一審被告Aに対する性的 虐待というのは,離婚のための単なる口実として持ち出されたにすぎないとの疑いが残る。 したがって,上記乙5ほかの証拠はたやすく採用することができず,平成19年3月までの間についても,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたと認めるに足りる証拠はない。 なお,前記認定の事実によれば,平成20年12月,一審被告Bの妹の夫であるCが一審原告に対し,一審原告が一審被告Aの身体に触ることを非難した事実があるが,Cにおいても,一審被告らの話を信じてその旨非難したにすぎず,上記のとおり,一審被告らの陳述や供述の信用性に疑問がある以 一審原告に対し,一審原告が一審被告Aの身体に触ることを非難した事実があるが,Cにおいても,一審被告らの話を信じてその旨非難したにすぎず,上記のとおり,一審被告らの陳述や供述の信用性に疑問がある以上,上記事実があるからといって,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたと認めるには足りない。 以上のとおりであり,一審被告らの主張は,これを認めるに足りる証拠がない。」(9) 同12頁5行目の「不実保護者」を「不実認知者」に,同9行目の「ことからすれば」から同11行目末尾までを「上,個々の事案において具体的妥当性を欠くことになる場合には,後記のとおり,権利濫用の法理の適用によってこれに対処することが可能であり,かつ,そのようにすべきでもあるから,上記の身分関係の安定や不実認知者への非難を理由として,認知者自身による認知無効請求を一切許容しないと解するのは相当でない。」に,同26行目の「身分関係,居住関係が不安定になり」を「法律上の父がいなくなり(なお,一審被告Aの血縁上の実父が既に死亡していることは,前提事実において確定したとおりである。)」にそれぞれ改める。 (10) 同13頁3行目の「積極的に不実認知を行い」から同7行目末尾までを「一審被告B(ただし,フィリピンにおいて,一審原告が一審被告Aの父であるとの虚偽の出生登録の手続をしたのが一審被告Bであることは,前記認定のとおりである。)とともに積極的に不実認知を行ってもいる。」に,同10 行目の「被告」を「一審被告A」に,同12行目の「実親子関係」を「しかも,一審原告と一審被告Aとは当初から一貫して不仲であったのであるから,その関係が実親子関係」にそれぞれ改める。 (11) 同13頁18行目から同22行目までを以下のとおりに改める。 「 そして,以上に加えて,一審原告が一審被告 から一貫して不仲であったのであるから,その関係が実親子関係」にそれぞれ改める。 (11) 同13頁18行目から同22行目までを以下のとおりに改める。 「 そして,以上に加えて,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたと認めるに足りる証拠はなく,他に性的な行為を加えたともいえないこと,一審原告が一審被告Aの髪の毛を引っ張った事実があるとしても,一審原告からすればそれなりの理由があったことは前記認定の事実から明らかであり,一審被告A(50項以下,98項以下)や同B(49項以下)の各本人尋問の結果によっても,他に一審原告が一審被告Aに対して違法と評価されるほどの暴行を加えていたとは認め難いこともまた,本件における権利濫用の法理の適用上,考慮されなければならない。 他方,本件認知の無効請求が認容されたとすれば,それによって一審被告Aと一審原告との法律上の父子関係が一審被告Aの出生に遡って存在しなかったこととなり,ひいては前記届出による一審被告Aの日本国籍の取得も無効となると解されるが,既に説示したところによれば,一審原告と一審被告Aとは一貫して不仲であり,今後ともその修復の可能性はほとんど考えられないというのであるし,一審被告A(現在14歳である。)は,8歳までフィリピンで実兄らと生活しており,しかも,甲9の1ないし4,一審原告(50項,68項以下,117項,152項以下),一審被告B(138項)及び一審被告A(115項)の各本人尋問の結果によれば,フィリピンには実兄も,祖母もいるほか,一審被告Bとは母語であるタガログ語で会話する日常生活を送っていることが認められるのであるから,一審被告Aの日本国籍の取得が無効となり,これにより,在留資格を喪失してフィリピンに退去強制されたとしても,看過し難いほどの重大な不利益を被ることになるわけでは ていることが認められるのであるから,一審被告Aの日本国籍の取得が無効となり,これにより,在留資格を喪失してフィリピンに退去強制されたとしても,看過し難いほどの重大な不利益を被ることになるわけではない。 そうすると,本件認知の無効請求を認容することにより,既に血縁上の父と死別した一審被告Aが更に法律上の父を失うことになるとしても,それにより一審被告Aが被る精神的,経済的不利益が大きいということはできず(現在,一審原告が福祉に頼って生活していることは前記認定のとおりである。),また,本件認知が一審原告と一審被告Bとの婚姻に伴ってされた連れ子養子の実質を有するものであり,後記のとおり,その婚姻関係が破綻した場合であっても,これを解消する制度がないことなどの本件認知やその無効請求がされた諸事情にかんがみると,一審原告による本件認知の無効請求が権利の濫用に当たるということはできない。」(12) 同13頁26行目から同14頁2行目までを以下のとおりに改める。 「 一審原告は,一審被告Bが平成21年2月12日に一審原告に告げることなく自宅を出て,以後,自らの生活場所等を知らせないことが悪意の遺棄に当たると主張するが,一審被告Bが自宅を出たのは,一時保護されていた一審被告Aとともに避難生活を送るためであったことは前記認定のとおりであるから,これをもって直ちに悪意の遺棄ということはできない。」(13) 同14頁6行目の末尾に「一審被告らは,一審被告Bと一審原告との婚姻関係の修復可能性がまったくないとはいえないと主張するが,到底にわかに採用できるところではない。」を加え,同8行目から同10行目までを削り,同11行目の「しかしながら」を「一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたことを認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりであり,他に一審 るところではない。」を加え,同8行目から同10行目までを削り,同11行目の「しかしながら」を「一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたことを認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりであり,他に一審原告が有責配偶者であると認めるべき事情や証拠はない。他方」に,同17行目と同18行目を以下のとおりにそれぞれ改める。 「 一審原告は,一審被告Bが日本での滞在を続ける目的で一審原告と結婚したとしか考えられないとか,一審被告Bの浪費と借金のため,一審原告までもが金銭的トラブルに巻き込まれたと主張する。しかしながら,一審原告と一審被告Bとは,少なくとも4年強は実質的な同居生活を送ってい たことは前記のとおりであるから,一審被告Bが上記目的で一審原告と結婚したとしか考えられないとの一審原告の主張を採用することはできないし,一審被告Bの借金等に関する一審原告の主張が認め難いことは既に説示したとおりである。また,一審原告は,一審被告Bが,自分の子が亡くなったと虚偽の事実を告げて,一審被告Aの実父の葬儀に参列したなどと主張するが,それだけでは,一審被告Bに慰謝料の支払を要するほどに,違法であるとまでは認められない。 次に,一審原告は,一審被告Bが自宅を出て行ったのは,一審原告が失職し,就職先が見つかる目処も立っていなかったためであるとか,その際,資力のない一審原告が生活の場所さえ失ってしまうことを認識していた旨を主張するが,一審被告Bが自宅を出たのは前記の事情のためであり,これが違法であるとは認められない。 なお,一審原告が一審被告Aに性的虐待を加えたとの一審被告Bの主張事実を認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりであるが,だからといって,一審被告Bが裁判所を欺罔しようなどとの不正な意図のもとにあえて虚偽の主張をしたことを認めるに足り えたとの一審被告Bの主張事実を認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりであるが,だからといって,一審被告Bが裁判所を欺罔しようなどとの不正な意図のもとにあえて虚偽の主張をしたことを認めるに足りる証拠はないから,最高裁判所昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁の趣旨に照らすと,一審被告らが上記主張をしたからといって,これが違法と認めることはできない。 以上のとおりであり,一審原告の一審被告Bに対する慰謝料請求は失当である。」 2 一審被告Bの当審における反訴請求について本件においては,一審原告の一審被告Bに対する離婚請求を認容すべきであるから,一審被告Bの当審における反訴請求について判断する。 (1) 本案前の答弁について一審原告は,一審被告Bの当審における反訴請求に同意しないから,同請 求に係る訴えは,却下されるべきであると主張するが,人事訴訟法18条によれば,人事訴訟に関する手続においては,民事訴訟法300条の規定にかかわらず,控訴審の口頭弁論の終結に至るまで,反訴を提起することができる旨が規定されているから,一審原告の上記主張は失当である。 (2) 本案について一審原告が有責配偶者であると認めることができないことは,既に説示したとおりであり,また,一審被告Bと一審原告との婚姻関係が破綻したことに関し,一審原告に慰謝料の支払を要するほどの違法な行為があったことを認めるべき事情も証拠もない。 したがって,一審被告Bの一審原告に対する慰謝料請求もまた失当である。 第4 結論よって,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから棄却し,一審被告Bの当審における反訴請求は理由がないから棄却することとし,控訴費用及び訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決す 相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから棄却し,一審被告Bの当審における反訴請求は理由がないから棄却することとし,控訴費用及び訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 主文 広島高等裁判所第4部 裁判官近下秀明 裁判官松葉佐隆之 裁判長裁判官田聰は,退官につき,署名押印することができない。 裁判官近下秀明

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