【DRY-RUN】主 文 原判決を取り消す。 本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。 事 実 控訴代理人は、「原判決を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担 と
主 文 原判決を取り消す。 本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。 事 実 控訴代理人は、「原判決を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担 とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は 控訴人の負担とする。」との判決を求めた。 本訴につき、昭和四五年三月一八日の経過をもつて訴の取下があつたものとして 処理されるに至つた事実関係についての当事者双方の主張は、原判決事実摘示のと おりであるから、これを引用する。 控訴代理人は、当審において次のとおり述べた。 一、 昭和四四年一一月一五日に名古屋地方裁判所の廊下において、裁判所書記 官Aが原告代理人弁護士Bに本件の期日を告知した事実は存在しない。廊下であい さつしたことは期日の告知あるいは訴訟行為にはならない。重大な準備手続期日の 送達を、これをもつて補うべきではない。 二、 仮に告知があつたとしても、責問権の放棄があつたものではない。口頭告 知の違法性をさらに口頭告知の形式をもつて補填しても、その効力は同様であるは ずである。責問権の放棄とは、少なくとも、その後訴訟手続が行なわれることによ つて過去の違法が治癒されたことを必要とし、本件のごとくその後なんら訴訟行為 が存在しない場合には、これをもつて責問権の放棄となすべきではない。 証拠(省略) 理 由 一、 原審ならびに当審における証人Aの各証言によると、名古屋地方裁判所書 記官Aは、昭和四四年一一月一三日実施された本件訴訟の原審における第一八回準 備手続期日に立ち会い、右期日に欠席した原告代理人の弁護士Bに次回期日(同年 一二月一八日午前一〇時三〇分)を連絡するため、同日夕刻同弁護士の事務所に電 話をし、事務員に右期日を告げ、その後同月一五日同裁判所庁舎 に立ち会い、右期日に欠席した原告代理人の弁護士Bに次回期日(同年 一二月一八日午前一〇時三〇分)を連絡するため、同日夕刻同弁護士の事務所に電 話をし、事務員に右期日を告げ、その後同月一五日同裁判所庁舎二階東廊下におい てたまたま出会つた同弁護士に次回期日を告げたことが認められる。原審ならびに 当審における証人Bは、同弁護士の事務所においても、また同弁護士みずからも、 右期日の連絡を全く受けていないと証言するが、右A証人の証言に照らし措信する ことができない。 そして、同年一二月一八日午前一〇時三〇分の第一九回準備手続期日に同弁護士 が出頭せず、被告指定代理人は弁論をなさず退廷したため、本件訴訟はいわゆる休 止となり、その後三か月以内に期日指定の申立てがなかつたので、昭和四五年三月 一八日の経過をもつて訴の取下があつたものとみなされたところ、右弁護士から同 年五月一日付で期日指定の申立てがなされたことは、本件記録上明らかである。 二、 そこで、本件訴訟において、原告(控訴人)に対し、原審の第一九回準備 手続期日の呼出しが適法になされたか否かについて判断する。 <要旨>民訴法一五四条によれば、期日の呼出しは呼出状を送達してこれをなすの が原則であり、ただ例外とし</要旨>て、当該事件につき出頭した者に対しては期日 を告知するをもつて足るとされている。その趣旨は、期日の指定は、裁判長(受 命・受託裁判官、準備手続裁判官)の行なう裁判すなわち命令の一種であるから、 本来なら相当と認められる方法で当事者に告知すれば足りるはずのものである(民 訴法二〇四条一項)が、期日は、当事者が積極的に自己に有利な訴訟行為を展開 し、あるいは相手方の訴訟行為に対し防禦方法を構ずる等の各種の訴訟活動をなす 機会であるから、期日に出頭するや否やは当時者に重大な利害関係を与えるもので あるため、期日 極的に自己に有利な訴訟行為を展開 し、あるいは相手方の訴訟行為に対し防禦方法を構ずる等の各種の訴訟活動をなす 機会であるから、期日に出頭するや否やは当時者に重大な利害関係を与えるもので あるため、期日の出頭についてはこれを確実に担保する方法を執ることが要請され ることによるものである。原則の呼出状の送達が最も確実な方式であることはいう までもないが、但書において口頭告知を認めたのも、その確実性を軽減するもので はなく、この方式によるも確実性において原則の方式と差異がないとみなしたもの と解するを相当とする。 右口頭告知は、期日の指定とは別個のもので、裁判所の訴訟指揮上の一事務に属 するものであるから、必ずしも裁判長(裁判官)によつて行なう必要はなく、裁判 所書記官が代つてしてもさしつかえないと解されるが、その確実性を要請される趣 旨からみて、民訴法一五四条但書の口頭告知であることを明確に認識できる方法と 状況の下になされることを要し、これを欠くときは違法としてその効力を有しない ものというべきである。 本件について口頭告知がなされたという時の状態を子細にみると、前記A証人の 証言によれば、昭和四四年一一月一五日の昼ごろA書記官は所用で自己の執務室で ある書記官室を出たところ、裁判所庁舎二階の東廊下の便所の近くでB弁護士に出 会つたので、同弁護士に対し「Cの事件の期日は一二月一八日午前一〇時三〇分に 決まりましたが都合はよろしいでしようか」と尋ねたところ「どうもすみませんで した」と返事したから、さらに「事務所にも連絡しておきましたが」と述べたのに 対し「どうもお手数をかけました」と答えたから、記録に口頭告知の記載をしたこ とが認められる(これに反するB証人の証言は措信しない)。 右事実によれば、告知した場所は裁判所の廊下である。口頭告知は裁判所書記官 がその職務として した」と答えたから、記録に口頭告知の記載をしたこ とが認められる(これに反するB証人の証言は措信しない)。 右事実によれば、告知した場所は裁判所の廊下である。口頭告知は裁判所書記官 がその職務としてなすべき行為であるから、その職務上の行為たることを相手方に 認識せしめるに足る状況の存する場所(例えば書記官室、法廷、準備手続室等)に おいてなすを相当とするものであり、廊下の如きは裁判所に出入する公衆の通路に すぎないものであつて、一般人をしてかくの如き場所において職務行為が行なわれ るものとは思わしめないものである。そのうえ、口頭告知の方法としてなされたと いう具体的の内容は、前記認定の如き問答が行なわれたにすぎず、かくの如き内容 のものをもつてしては民訴法一五四条但書の口頭告知たることを確実に表示したも のといい難く、またB弁護士をして口頭告知たることを認識せしめるに足りないも のというべきである。これを要するに、A書記官がなしたという口頭告知なるもの は、民訴法一五四条但書の口頭告知であることを明確に認識できる方法と状況の下 になされなかつたものというべきである。 三、 なお、一一月一三日A書記官がB弁護士の事務員に電話をもつて次回準備 手続期日を告げたことは、本件記録によれば同書記官自身これをもつて民訴法一五 四条但書の口頭告知として取り扱つていないのみならず、その確実性において欠く るところがあり、前記論旨に徴し、これをもつて同条の口頭告知として適法なるも のとなしがたい。 四、 ところで、期日の呼出手続における瑕疵は責問権の放棄ないし喪失の対象 となると解されるが、本件記録によるも、B弁護士が口頭弁論において如上の呼出 手続の瑕疵について責問権を放棄する旨明示して陳述した事実は認められず、また 責問権の喪失が生ずるためには、「遅滞ナク異議ヲ述べザルトキ」との要 、本件記録によるも、B弁護士が口頭弁論において如上の呼出 手続の瑕疵について責問権を放棄する旨明示して陳述した事実は認められず、また 責問権の喪失が生ずるためには、「遅滞ナク異議ヲ述べザルトキ」との要件が必要 であり、右「遅滞ナク」とは、異議を述べうる最初の機会に直ちに(通常は、瑕疵 を知りうべかりし時期の直後の準備手続期日または口頭弁論期日)の意であると解 されるところ、本件においては、右異議を述べうる最初の機会と考えられる原審の 第一九回準備手続期日は、上来説示のとおりその呼出手続において違法なものであ るから、同期日にB弁護士が出頭して異議を述べなかつたことをもつて責問権を喪 失したものとすることができないのは当然である。 なお、前記認定によれば、B弁護士が裁判所の廊下においてA書記官から第一九 回準備手続期日の日時を告げられた際に何ら異議を述べなかつたことは明らかであ るが、右告知なるものは、その方法およびこれがなされた際の状況に照らし、同弁 護士をして民訴法一五四条但書の口頭告知であることを明確に認識せしめるに足り るものでなかつたことはさきに述べたとおりであり、しかも同弁護士は当日別の事 件のため裁判所に出頭していたにすぎないから、これを本件についての期日の呼出 しであると認識したうえで、これに対して直ちに異議を述べるという挙に出る余地 は、そもそもなかつたものといわなければならない。したがつて、右告知の際に同 弁護士が直ちに異議を述べなかつたことをもつて責問権を喪失したものとすること はできない。 五、 以上説示のとおり、本件訴訟における原審の第一九回準備手続期日の呼出 しは、違法のものであつてその効力を有しないものであるから、同期日に原告(控 訴人)代理人弁護士が欠席したことを前提として本件訴訟が終了したとすることは できない。したがつて、原判決は取消し 期日の呼出 しは、違法のものであつてその効力を有しないものであるから、同期日に原告(控 訴人)代理人弁護士が欠席したことを前提として本件訴訟が終了したとすることは できない。したがつて、原判決は取消しを免れないが、本件においては、控訴人の 請求の当否を審理するためになお弁論をなす必要があるから、これを名古屋地方裁 判所に差し戻すのが相当である。よつて、民訴法三八九条一項を適用して主文のと おり判決する。 (裁判長裁判官 伊藤淳吉 裁判官 宮本聖司 裁判官 新村正人)
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