平成26(行ケ)10014 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年9月24日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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判決文本文28,494 文字)

- 1 -平成26年9月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(行ケ)第10014号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年8月6日判決原告 X訴訟代理人弁理士新居広守被告特許庁長官指定代理人仲間晃同金子幸一同山田和彦同相崎裕恒 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2012-16757号事件について平成25年12月3日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「知識ベースシステム,論理演算方法,プログラム,及び記録媒体」とする発明につき,平成23年12月1日に特許出願(出願番号:特願2011-263928号。平成22年5月18日に出願した特願2010-541357号(以下「原出願」という。)の分割出願。以下「本願」という。)を行った(甲1)。 原告は,平成24年6月18日付けで拒絶査定を受け,同年8月28日,- 2 -拒絶査定不服の審判を請求するとともに,手続補正をした(甲3。以下「本件補正」という。)。 特許庁は,上記請求を不服2012-16757号事件として審理し,平成25年12月3日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない をした(甲3。以下「本件補正」という。)。 特許庁は,上記請求を不服2012-16757号事件として審理し,平成25年12月3日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(以下「本件審決」という。),その謄本は同月17日,原告に送達された。 原告は,平成26年1月13日,本件審決の取消しを求める本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載 本件補正前(平成24年5月15日付け手続補正書(甲2)による補正後のもの)の特許請求の範囲の請求項1ないし26の記載は,以下のとおりである(甲2。以下,請求項26に記載された発明を「本願発明」といい,甲2による補正後の本願の明細書を「本願明細書」という。)。 「【請求項1】知識ベースシステムであって,知識ベースを記憶している記憶部を備え,前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,- 3 -前記特徴データは,対応する属性の実体であり,前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである知識ベースシステム。 【請求項2】前記知識ベースでは,第一の物を識別する第一の物識別子と,当 する属性の実体であり,前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである知識ベースシステム。 【請求項2】前記知識ベースでは,第一の物を識別する第一の物識別子と,当該第一の物の属性である第一の属性を識別する第一の属性識別子とが対応づけられ,第二の物を識別する第二の物識別子と,当該第二の物の属性である第二の属性を識別する第二の属性識別子とが対応づけられ,前記第一の属性と前記第二の属性とは同じ種類の属性であり,前記第一の属性識別子と前記第二の属性識別子とは異なる識別子である請求項1記載の知識ベースシステム。 【請求項3】前記特徴データは,当該特徴データに対応づけられた属性識別子が識別する属性の形,音,香,味,色,圧力,温度,長さ,座標値,及び面積の少なくとも一つを表すデータである請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項4】前記知識ベースシステムはさらに,前記属性に関する情報を取得する入力部と,前記入力部で取得された情報から,前記特徴データ及び前記識別データの少なくとも一つを抽出する特徴抽出部と,前記特徴抽出部で抽出された前記特徴データ及び前記識別データの少なくとも一つを,前記属性を識別する属性識別子と対応づけて前記知識ベースに格納するデータ格納部とを備える請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 - 4 -【請求項5】前記属性識別子は,主識別子と副識別子とを含み,前記属性識別子は,前記主識別子と前記副識別子との組み合わせによって,前記属性を識別する請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項6】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性 記属性を識別する請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項6】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理積を算出する処理として,個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられている場合,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持ち,かつ,対応づけられた真偽値が共に真であるか又は共に偽である属性だけを集め,個々の属性に前記真偽値が対応付けられていない場合,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持つ属性だけを集めることで,新たな属性の集合を生成するAND演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項7】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成するOR演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項8】- 5 -さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が1つ指定された場合において,指定された1つの集合に対する否定を算出する処理として,当該属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場 が1つ指定された場合において,指定された1つの集合に対する否定を算出する処理として,当該属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した新たな属性の集合を生成するNOT演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項9】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する否定論理積を算出する処理として,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持ち,かつ,対応づけられた真偽値が共に真であるか又は共に偽である属性だけを集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した更に新たな属性の集合を生成するNAND演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項10】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,- 6 -前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する否定論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性 指定された2つの集合に対する否定論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した更に新たな属性の集合を生成するNOR演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項11】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合が似ている程度を算出する処理として,個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応づけられている場合,いずれの属性の集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が同じである属性の数を共通度として計数し,個々の前記属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれの属性の集合にも含まれる属性の数を共通度として計数する請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項12】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合が似ていない程度を算出する処理として,個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応づけられている場合,いずれの属性の集合にも含まれ,かつ,対応づけられ- 7 -た真偽値が異なる属性の数を非共通度として計数し,個々の属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれかの属性の集合にだけ含まれる属性の数を非共通度として計数する けられ- 7 -た真偽値が異なる属性の数を非共通度として計数し,個々の属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれかの属性の集合にだけ含まれる属性の数を非共通度として計数する請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項13】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性から,いずれの集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が異なる属性を除くことで,新たな属性の集合を生成するOR演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項14】さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する排他的論理和を算出する処理として,指定された2つの集合のいずれにも属する属性を除くことで,新たな属性の集合を生成するXOR演算を行う請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項15】さらに,少なくとも一つの属性が指定されると,指定された属性に対応づけられた物識別子を集めることで,当該属性をもつ知識の集まりを生成する演算部を備える請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 - 8 -【請求項16】前記演算部はさらに,物が指定されると,当該物の物識別子が前記知識の集まりに属するか否かを判断する請求項15記載の知識ベースシステム。 【請求項1 ム。 - 8 -【請求項16】前記演算部はさらに,物が指定されると,当該物の物識別子が前記知識の集まりに属するか否かを判断する請求項15記載の知識ベースシステム。 【請求項17】前記演算部はさらに,生成した前記知識の集まりを識別する物識別子と,前記指定された少なくとも一つの属性を識別する属性識別子,及び抽象的な物であることを示す属性の属性識別子とを対応付けた情報を前記記憶部に格納することで,抽象的な物を新たに生成する請求項15に記載の知識ベースシステム。 【請求項18】前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークを含み,前記ノードは,当該ノードに対応する物識別子と,当該ノードが属する知識ネットワークに関する情報である知識ネットワーク情報とを含み,前記知識ネットワーク情報は,前記知識ネットワークを識別する知識ネットワーク識別子と,前記知識ネットワークにおける当該ノードとつながる他のノードへのポインタとを含む請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項19】さらに,指定された知識ネットワーク識別子で識別された知識ネットワークにおいて,当該知識ネットワークを構成するノードに含まれる物識別子と知識ネットワーク情報とを参照することで,指定された物とつながっている他の物を特定する演算部を備える請求項18記載の知識ベースシステム。 - 9 -【請求項20】さらに,属性識別子が指定されると,当該属性識別子に対応づけられた知識ネットワークを検索し,検索された知識ネットワークの知識ネットワーク識別子を取得する演算部を備える請求項18記載の知識ベースシステム。 【請求項21】前記演算部はさらに,前記知識ネ ットワークを検索し,検索された知識ネットワークの知識ネットワーク識別子を取得する演算部を備える請求項18記載の知識ベースシステム。 【請求項21】前記演算部はさらに,前記知識ネットワークを識別する物識別子と,前記知識ネットワークに対応付けられた少なくとも1つの属性識別子,及び抽象的な物であることを示す属性の属性識別子とを対応付けた情報を前記記憶部に格納することで,抽象的な物を新たに生成する請求項20に記載の知識ベースシステム。 【請求項22】前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークを含み,前記知識ネットワークを構成するノードは,当該知識ネットワークを指定する属性に対応づけられる請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項23】前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークと,前記知識ネットワークを表わすノードとを含み,前記知識ネットワークを表わすノードは,前記知識ネットワークを構成するノードに対応づけられる請求項1又は2記載の知識ベースシステム。 【請求項24】- 10 -知識ベースシステムにおける論理演算方法であって,請求項1又は2記載の知識ベースシステムが備える知識ベースに対して,少なくとも請求項6~17,19~21のいずれか1項に記載の演算部による処理を行うステップを含む論理演算方法。 【請求項25】知識ベースシステムのためのプログラムであって,請求項24記載の論理演算方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるプログラム。 【請求項26】知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,請求項1 項24記載の論理演算方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるプログラム。 【請求項26】知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,請求項1~23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラムが記録された記録媒体。」本件補正後の特許請求の範囲請求項1及び26の記載は,以下のとおりである(甲3。下線を付した範囲が補正部分であり,請求項2ないし25の補正はない。)。 「【請求項1】知識ベースシステムであって,コンピュータによる論理演算の対象となる知識ベースを記憶している記憶部を備え,前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,- 11 -前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,前記特徴データは,対応する属性の実体であり,前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである知識ベースシステム。 ・・・(中略)・・・【請求項26】知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,請求項1~23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラムが記録された記録媒体。」 3 本件審決の ースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,請求項1~23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラムが記録された記録媒体。」 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 本件補正後の請求項26に係る発明は,以下のとおりに認められる(以下「本件補正発明」という。なお,文節⒜ないし⒞は本件審決で付したものである。)。 「⒜ 「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって」,「請求項1」「に記載の知識ベースが記録された記録媒体」を含むものであり,上記請求項1に記載の「知識ベース」は,- 12 -「物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,前記特徴データは,対応する属性の実体であり,前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである」ものであって,「コンピュータによる論理演算の対象となる」ものである,「記録媒体」」以上を前提に検討すると,①本件補正発明は,自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められな る」ものであって,「コンピュータによる論理演算の対象となる」ものである,「記録媒体」」以上を前提に検討すると,①本件補正発明は,自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められないから,特許法2条1項に規定する発明に該当せず,同法29条1項柱書の要件を満たしていないので,独立して特許を受けることができないから,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項,53条1項に基づき,却下すべきものである,②本願発明も,同様に自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められないから,特許法2条1項に規定する発明に該当せず,同法29条1項柱書の要件を満たしていないので,特許を受けることができないというものである。 4 取消事由- 13 - 本件補正発明の発明該当性に係る判断の誤り(取消事由1) 本願発明の発明該当性に係る判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 原告の主張取消事由1(本件補正発明の発明該当性に係る判断の誤り)について本件審決は,本件補正発明は「知識ベース」のデータ構造である,「物」「物識別子」「属性」「属性識別子」「特徴データ」「識別データ」等の情報の内容及びそれらの間の対応付けを規定したものであり,この「知識ベース」自体は特定の構造を有するデータの単なる集まりでしかなく,そもそもコンピュータに対する命令を規定するものでないのであって,この「知識ベース」をコンピュータに読み取らせたとしても,これ自体でコンピュータが動作するものでないことは技術常識からして明らかであるから,本件補正発明は,「知識ベース」がコンピュータに読み込まれることにより,「知識ベース」とハードウェア資源とが協働した具体的手段によって,使用目 作するものでないことは技術常識からして明らかであるから,本件補正発明は,「知識ベース」がコンピュータに読み込まれることにより,「知識ベース」とハードウェア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又はその動作方法が構築されるものとはいえないものであるとして,特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないと判断した。 しかしながら,以下のとおり,本件補正発明は,コンピュータを利用しており,その内容も「香り,味,熱さ冷たさ,映像,音などの記憶を統合することにより,『意味あるいは概念』が生じ,この『意味あるいは概念』を識別するものが広義の『言葉』と呼ばれているものである」という自然法則を利用したものであるから,本件審決の判断は誤りである。 アコンピュータの利用まず,「知識ベース」をコンピュータに読み取らせた場合には,読み取り処理として,コンピュータが動作することは技術常識である。そして,本件補正発明の「知識ベース」は,「コンピュータによる論理演算- 14 -の対象となる」ことが,請求項1に記載されており,本件補正発明に係る「記録媒体」は,「コンピュータ読み取り可能な」ものであることが,請求項26に記載されている。 したがって,本件補正発明に係る「記録媒体」は,コンピュータによって利用されるもの,すなわち,自然法則を利用したものであることは明らかである。 また,本件補正発明は,情報処理(プログラム)に特徴を有するのではなく,知識の表現方法(データベースの構造)に特徴を有するところ,データ構造に特徴を有する発明については,データとハードウェア資源とが協働した具体的手段が請求項に記載される必要はない。 請求項に記載されたデータがコンピュータの処理対象になることが請求項の記載から ータ構造に特徴を有する発明については,データとハードウェア資源とが協働した具体的手段が請求項に記載される必要はない。 請求項に記載されたデータがコンピュータの処理対象になることが請求項の記載から明らかであれば,コンピュータの常識的な情報処理を請求項に記載することは,請求項を読みづらくするだけであるところ,本件補正発明に係る「知識ベース」は,いわゆるデータベースのことであり,請求項の記載から,コンピュータのハードウェア資源によって利用されることは明らかである。 そして,現代のコンピュータ社会において,データベースは,基盤技術であって,人間にとって欠くことのできないコンピュータ技術,つまり,自然法則を利用した技術である。コンピュータによって利用されることが請求項に記載されているにもかかわらず,コンピュータの常識的な協働処理が請求項に記載されていないとの理由によってデータベースが記録された記録媒体を保護対象から除外することは,発明が自然法則を利用した技術的思想の創作であることを定義する特許法2条1項及び産業の発達を企図する同法1条に反するものである。 イ本件補正発明の内容本件補正発明は,以下のとおり,自然法則を使った技術的思想の創作の- 15 -結果であるから,「発明」に該当するものである。 従来の知識ベース及び人工知能では,言葉が意味を内包していると見なし,情報を言葉だけで構成している。すなわち,コンピュータのソフトウエアとハードウェアとを使って,記憶部に言葉を記憶し,その記憶された言葉と言葉を対応づける処理を行い,情報を表現している。 これに対し,本件補正発明は,以下の内容の自然法則を利用して,特徴データと識別データで情報を構成するものであって,従来技術と全く異なるものである。 a まず,具体的には何か している。 これに対し,本件補正発明は,以下の内容の自然法則を利用して,特徴データと識別データで情報を構成するものであって,従来技術と全く異なるものである。 a まず,具体的には何か判らないが,意味を表わすものがあって,その意味を表わすものによって,脳は意味を認識するとみなす。 b ここで,座標軸が意味を表わすとみなし,異なる意味を表わす複数の座標軸から生成される,N次元空間を作る。すると,このN次元空間の点や領域が物を表わす。つまり,この点あるいは領域が,いくつかの属性(概念あるいは意味)を持つ物であるとみなす(本願明細書の図11ないし13)。 c そのような座標軸に,たとえば,味のデータや映像データなどの記憶がぶら下がることにより,座標軸に意味が生じるとみなす。 d 上記cでは,記憶-座標軸-物という対応づけになる。記憶を特徴データに換え,座標軸を属性に換えると,特徴データ-属性-物という対応づけになる(なお,属性及び物はそれぞれ神経細胞を抽象化したものであると見なすことができる。)。 e 上記dに識別データを加えると,「特徴データ-属性-物」「識別データ-属性-物」という対応づけになる(本願明細書の図2A,2B,3,5,33)。 本件補正発明では,特徴データ」を,意味又は概念の実体と見なすことができ,このような「特徴データ」が,上記aで記載し- 16 -た「具体的には何か判らないが,意味を表わすもの」に該当する。 そして,本願の発明者は,,記憶(特徴データ)が神経細胞とつながることにより,意味や概念が生じるという自然法則を見出したものであって,本件補正発明は,「香り,味,熱さ冷たさ,映像,音などの記憶を統合することにより,『意味あるいは概念』が生じ,この『意味あるいは概念』を識別するものが広義 じるという自然法則を見出したものであって,本件補正発明は,「香り,味,熱さ冷たさ,映像,音などの記憶を統合することにより,『意味あるいは概念』が生じ,この『意味あるいは概念』を識別するものが広義の『言葉』と呼ばれているものである」という自然法則を利用した技術的思想の創作によって生み出されたものである。 なお,データが記憶部に格納されているということは,コンピュータのソフトウエアとハードウェアとを使って,記憶部に記録されたことを意味し,本願明細書には,特徴データや識別データなどのデータを格納する方法の例として,データベースを用いる方法や神経細胞のネットワークをコンピュータで模した方法が記載されている。 また,コンピュータ読み取り可能な記録媒体にデータが記録されている場合も,コンピュータの記憶部に記録された場合と同様に,コンピュータのソフトウエアとハードウェアとを使ってデータが記録されたことは明らかであり,この場合も自然法則を使った技術的思想の創作であるといえる。 したがって,本件補正発明は,コンピュータによって利用される技術,つまり,特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」であり,特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていることから,特許出願の際,独立して特許を受けることができる。 取消事由2(本願発明の発明該当性に係る判断の誤り)について本願発明は,本件補正発明から,「知識ベース」の限定事項である「コンピュータによる論理演算の対象となる」ことを省いたものであるところ,上特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当し,特許法29条1項柱書に規定する要件- 17 -を満たしていることから,特許を受けることができる。 小括以上からすると,本件補正発明及び本願発明は 利用した技術的思想の創作」に該当し,特許法29条1項柱書に規定する要件- 17 -を満たしていることから,特許を受けることができる。 小括以上からすると,本件補正発明及び本願発明は,特許法2条1項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当し,ひいては同法29条1項柱書に規定する「発明」に該当する。かかる結論と矛盾する本件審決には判断を誤った違法があり,取り消されなければならない。 2 被告の主張取消事由1(本件補正発明の発明該当性に係る判断の誤り)に対しアコンピュータは,例えば,CPU,メモリ,バス,各種コントローラ等の各種ハードウェア資源から構成されるハードウェアであって,これら自体は自然法則を利用した物である。また,プログラム及びデータは,それ自体では単なる記号列や数値等であるが,コンピュータに読み込まれてコンピュータが動作すれば,上記自然法則を利用した各種ハードウェア資源と協働することにより特定の動作を実現するから,その自然法則を利用した各種ハードウェア資源を制御する仕方は,自然法則を利用した技術的思想の創作である。 もっとも,このことは,プログラム及びデータがコンピュータに読み取られて特定の動作を実現する装置となることを前提としたものであり,自然法則を利用した各種ハードウェア資源を制御する仕方を特定するものでなければ,プログラム及びデータは,単なるコンピュータの使用を前提とした抽象的なアイデアを表す記号列や数値等でしかないから,自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえない。 以上を前提として本件補正発明をみると,知識ベースを構成する各項目や定義は,人為的に取り決められたものであるから,これ自体は,自然法則を利用しているといえるものではない。また,「知識ベースシステムのためのコ として本件補正発明をみると,知識ベースを構成する各項目や定義は,人為的に取り決められたものであるから,これ自体は,自然法則を利用しているといえるものではない。また,「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な」との記載,及び,「コンピュータに- 18 -よる論理演算の対象となる」との記載は,単にコンピュータに読み取られて処理対象となること,すなわちコンピュータの使用を前提とすることを明示する以上のものではない。 イ原告は,本願の特許請求の範囲に,本件補正発明の記録媒体が,コンピュータ読み取り可能なものであること,及び,本件補正発明の知識ベースが,コンピュータによる論理演算の対象となることが記載されているから,本件補正発明は自然法則を利用したものであるなどと主張する。 しかしながら,コンピュータによる読み取り及び論理演算は,コンピュータが具備する構成であって,本件補正発明(知識ベースが記録された記録媒体)が具備する構成ではない。また,知識ベースがコンピュータによる読み取り及び論理演算の対象となることは,知識ベースがデータとして読み取られた後,記号論理学において数学の演算に類する操作で命題の真偽を決定することの対象となることを表すにすぎず,使用目的に応じた特有の情報処理を何ら特定するものではない。 また,本件補正発明の知識ベースをコンピュータに読み取らせた場合は,読み取り処理として,コンピュータが動作するが,本件補正発明の知識ベースは,特定の構造を有するデータの単なる集まりでしかなく,単なるデータは,コンピュータに対する命令を規定し,コンピュータを動作させるものではないから,その構造を特定しただけでは,通常は,使用目的に応じた特有の情報処理が把握できず,自然法則を利用した技術的思想であるとはいえない。 する命令を規定し,コンピュータを動作させるものではないから,その構造を特定しただけでは,通常は,使用目的に応じた特有の情報処理が把握できず,自然法則を利用した技術的思想であるとはいえない。 したがって,原告の主張は理由がない。 ウなお,原告は,本件補正発明は,記憶を統合することにより,意味や概念が生じるという自然法則を利用している旨主張するが,その自然法則の内容は,むしろ,記号論理学又は人間の思考にまつわる学術的又は精神的なものである。 - 19 -取消事由2(本願発明の発明該当性に係る判断の誤り)に対し上記と同様に,原告の主張は理由がない。 以上のとおり,原告の主張する取消事由はいずれも理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 本件補正発明について本件補正発明本願明細書には,次のとおりの記載がある(甲1)。 ア 【技術分野】「本発明は,知識ベースシステムに関するものである。」(段落【0001】)イ 【背景技術】「単細胞物の生物でも外界からの刺激を受けると,ある刺激に対応して特定の反応を示すことがある。外界からの入力情報と内部の状態とに応じて,情報を出力し,一定の反応を示す。つまり,あらかじめ生命体に組み込まれ固定された情報処理の仕組みがあると考えることができる。このような情報処理を,本願では第1の情報処理と呼ぶ。」(段落【0002】)「外界からの入力情報に対応する出力情報を調整し,最適な出力情報を見出し,調整情報を記憶する仕組みがあることも明らかになっている。これを,本願では第2の情報処理と呼ぶ。これは,ニューラルネットワークの1つの働きとして,広く知られている。」(段落【0003】)「人間は,文字で書かれた言葉を用いて,更に精緻な情報処理を行っている ,本願では第2の情報処理と呼ぶ。これは,ニューラルネットワークの1つの働きとして,広く知られている。」(段落【0003】)「人間は,文字で書かれた言葉を用いて,更に精緻な情報処理を行っている。これを,本願では第3の情報処理と呼ぶ。」(段落【0004】)「現在の人工知能の研究の多くは,第3の情報処理について研究を行っている。しかし,この方法で,人間が日常的に行っている情報処理をまねるシステムを構築できていない。文字で書き表された言葉を使うため,精密に情報を記述し,精密に記述された情報を論理演算することができる。 - 20 -しかし,精密であるがゆえに,情報を知識として蓄積する方法や,知識として記録された情報をうまく使う方法が開発できていない。」(段落【0005】)「物は,言葉で表わすことができる。英語や日本語のような言語の中で,物は言葉,すなわち単語で表される。物には,定まった性質である属性がある。この属性も言葉で表わされる。言葉は,文字の集まりである文字列,すなわち単語で表わすことができる。したがって,物を表わす単語は属性を持ち,物もその属性も,文字で書き表された文字列,すなわち単語で表わすことができる。文字を使うと,情報を長時間保持し,記録できる。音声や身振りでなど文字以外の手段を言葉として,単語を表現することもできる。単語そのものが,その単語自身の意味を表わしていることが特徴である。」(段落【0006】)「物には,石や太陽などのように具体的な物以外に,暖かさ,概念,映像,音,WEBページのような抽象的な物も含まれる。未知の物は,属性を持たないこともある。属性は,「赤い色をしている」,「甘い味がする」など,物の性質を表わす。」(段落【0007】)「コンピュータなどの機械で,2つ文字列を比較し,2つの文字列 。未知の物は,属性を持たないこともある。属性は,「赤い色をしている」,「甘い味がする」など,物の性質を表わす。」(段落【0007】)「コンピュータなどの機械で,2つ文字列を比較し,2つの文字列が等しいかどうかを判定することができる。2つの文字列が同じかどうかを判定して,同じであれば真の値を,異なる場合は偽の値を生成することはできる。コンピュータは,文字で表わされた単語が同じかどうかを判定して,真偽値を生成することができる。」(段落【0008】)「2つの単語を比較して,同じであれば真の値を,異なる場合は偽の値を生成することはできる。この方法によって,物や属性が同じか,異なっているかを判断することができる。単語に対応づけられた記号を用いても同様のことができる。単語に対応づけられた記号は,対応付けられた単語の意味を表わす。この場合の記号は,意味を表わす。記号を識別子と言い- 21 -換えると次のように言える。単語に対応づけられ単語を表わす識別子は,対応付けられた単語の意味を表わす。したがって,単語に対応づけられ単語の意味を表わす識別子も,単語である。犬という単語とABCという識別子が対応付けられているとすると,ABCは犬の意味を表わす単語である。」(段落【0009】)「文字の組み合わせだけでなく,音や図形などの組み合わせでも単語は生成できる。音や図形などの組み合わせで生成された単語を,文字で生成された単語に置きかえることができるので,記録の容易性を除いて,何で単語を生成するかは本質的なことではない。」(段落【0010】)「昔,リレー式計算機というものがあった。リレーを使ってAND,OR,NOTの3つの演算をする仕組みを実現していた。現在のコンピュータも部品がリレーから半導体に変わっているが,原理はリレー式計算機と同じ リレー式計算機というものがあった。リレーを使ってAND,OR,NOTの3つの演算をする仕組みを実現していた。現在のコンピュータも部品がリレーから半導体に変わっているが,原理はリレー式計算機と同じである。」(段落【0011】)「現在のコンピュータは,論理演算する手順を機械部品の組み合わせで保持するのではなく,論理演算する手順をプログラムと呼ばれる情報として保持している。プログラムと呼ばれる情報を変更することで,同じ装置で異なる論理演算を行うことができる。」(段落【0012】)「コンピュータが直接実行できるプログラムは,「0」と「1」という2種類の値が組み合わされたものなので,人間がそのようなプログラムを作ることは大変であった。そこで,人間が理解できる英数字の組み合わせでできたプログラムを,コンピュータが直接扱える「0」と「1」とが組み合わされたプログラムに変換する方法が考案された。プログラムを使ってコンピュータにこの変換を行わせる。たとえば,COBOLは,人間が理解できるプログラムである。COBOLのようなものをプログラミング言語と呼ぶ。機械であるコンピュータが直接扱えるプログラムは,機械語と呼ぶ。コンパイラというプログラムは,プログラミング言語で作られた- 22 -プログラムを機械語のプログラムへ変換してくれる。」(段落【0013】)「物は,一般に,幾つかの属性を持っている。物を表わす1つの単語は,0個以上の属性を持っている。」(段落【0014】)「PROLOGというプログラミング言語がある。この従来技術では,属性を表わすために,属性を表わす単語を用いている。このようなプログラミング言語を用いて人工知能を実現しようとする実験が行われたが,限界があった。」(段落【0015】)「PROLOGというプログラミング すために,属性を表わす単語を用いている。このようなプログラミング言語を用いて人工知能を実現しようとする実験が行われたが,限界があった。」(段落【0015】)「PROLOGというプログラミング言語で,「ソクラテスは人である。」を記述すると,(manSocrates)になる。このように,“man”と“Socrates”という2つの単語を並べて,物の性質,すなわち物の属性を表現している。コンピュータの内部では,物と,性質である属性とを単語として保持している。“man”が“man”であることを判断する基準は,単語が同じかどうかである。単語そのものが意味を表わしている。単語は,並びの順によって物,属性,関係として解釈される。」(段落【0016】)「「家康は信康の父である」をPROLOGで記述すると,(FatherIeyasuNobuyasu)となる。これは,2つの物の関係を表現している。3つの単語を並べて2つの物の関係を表現している。最初の単語が関係を表わし,2番目と3番目の単語が物を表わす。この例では,2番目の単語が父を表わし,3番目の単語が子を表わす。(FatherNobuyasuIeyasu)のように,2番目の単語と3番目の単語の順番を変えると,「信康は家康の父である」という意味に変わる。 関係によっては,2番目の物と3番目の物に意味の違いがあることがある。」(段落【0017】)「コンピュータの内部では,関係と2つの物とを3つの単語の並びとして保持している。単語の並びの順番が異なると意味が変わる。単語の並び- 23 -の順番に意味が含まれている。単語の数や並び順で意味を表わしている。 この方法では,1つの物と他の物との2階層の関係を表わすことはできるが,子→父→祖父のような3階層以上の関係を直接的に表わすこと の順番に意味が含まれている。単語の数や並び順で意味を表わしている。 この方法では,1つの物と他の物との2階層の関係を表わすことはできるが,子→父→祖父のような3階層以上の関係を直接的に表わすことはできない。」(段落【0018】)「(FatherAB),及び(FatherBC)の2つの単語の並びがあったとする。2つの単語の並びには,Bという共通の単語がある。そこで,AはCの父の父,つまり,AはCの祖父であることが導かれる。直接的には,AとCの関連は記述されていないが,共通する単語を仲立ちとして,間接的に表現された物同士の関係を知ることができる。」(段落【0019】)「この技術で物と属性と関係とをデータベースとして保持できるが,物や属性や関係を表わす単語の並びを保持しているにすぎない。単語の並びで物の性質である属性を表現し,単語の並びで関連を表現している。属性も関係も,単語の並びという同じ方法で表現されている。情報を体系化したものを知識とすると,情報を現す単語を幾つか並べたものを複数個保持し,保持された単語の並びを知識としている。この方法では,3階層以上の物同士の関連を直接表わす情報は保持されていない。ある単語と他の単語とを付き合わせ,一致している単語を探すことにより,単語の並び同士を関連付ける。一致している単語を探すことによって,その都度,単語の並びで表わされた情報の関連を調べる。」(段落【0020】)「再表2005-122014号公報(特許文献1)では,次のような技術が開示されている。インターネット上のWEBサーバに保管され,パソコンなどの上で動作するブラウザと呼ばれるソフトウエアで見ることできるWEBページや,文書ファイルなどの情報をノードと呼び,ノードの集まりを空間と呼び,前記空間内のノードが持つ情報を 保管され,パソコンなどの上で動作するブラウザと呼ばれるソフトウエアで見ることできるWEBページや,文書ファイルなどの情報をノードと呼び,ノードの集まりを空間と呼び,前記空間内のノードが持つ情報を評価する装置が開示されている。また,ノードに結びついた情報をプロパティと呼んでいる。 - 24 -プロパティ(属性)の実装については一切規定されておらず,プロパティの実装は,プログラムの実装者に全て任せられている。この技術は,物が属性を保持することは開示されていない。また,属性の評価方法について開示されていない。」(段落【0021】)「英語や日本語などの言語内の単語をつないで構築された知識ベースがある。この従来技術の知識ベースでは,言語内の単語同士が直接つながっている。そして,従来技術の知識ベースは言語の中に含まれる。」(段落【0022】)「グラフ構造を持つ確率モデルであるベイジアンネットワークを使って,推論を行う人工知能の分野がある。ある事象が発生したときに別の事象がある確率で発生すると考え,ある事象から他の事象が発生するという連鎖をグラフ構造で表現するものである。ある事象から他の事象が発生する確率が必ず保持される。ある事象を出発点として,あらかじめ保持されたグラフを辿ることにより,発生確率が一番高い事象を探すことができる。 この処理によって推論ができるという考え方である。この方法では,物,属性,関係が区別されておらず,すべて事象として表現されている。事象は言語の中の単語で表わされ,事象同士が直接つながっている。そして,ベイジアンネットワークは言語の中に含まれる。」(段落【0023】)ウ 【発明が解決しようとする課題】「従来技術では,文字を組み合わせて意味を持つ単語を生成する。単語は言語の中にあり,言語の中だけでその ークは言語の中に含まれる。」(段落【0023】)ウ 【発明が解決しようとする課題】「従来技術では,文字を組み合わせて意味を持つ単語を生成する。単語は言語の中にあり,言語の中だけでその単語の意味を直接持つ。意味を直接持つ単語で物や,性質,特徴,意味,概念などの属性という情報を表わす。物を表わす単語と属性を表わす単語とから成る単語の並びを作り,単語の並びで物の性質や物と物との関係を表わす。複数の単語の並びを蓄積し,蓄積された単語の並びを知識としていた。この方法では,単語そのものの意味を持つ単語だけを使って知識を構築している。」(段落【002- 25 -5】)「本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,物や属性の意味内容を言語に依存せずに表現することのできる知識ベースシステムを提供することが目的とする。」(段落【0026】)エ 【課題を解決するための手段】「本発明の一形態に係る知識ベースシステムは,知識ベースを記憶している記憶部と,前記記憶部に記憶された知識ベースに対して論理演算を行う演算部とを備え,前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含む。前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられる。前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成される。前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成される。」(段落【0027】)「ここで,前記知識ベースでは,第 自体で物の意味を持たない記号で構成される。前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成される。」(段落【0027】)「ここで,前記知識ベースでは,第一の物を識別する第一の物識別子と,当該第一の物の属性である第一の属性を識別する第一の属性識別子とが対応づけられ,第二の物を識別する第二の物識別子と,当該第二の物の属性である第二の属性を識別する第二の属性識別子とが対応づけられ,前記第一の属性と前記第二の属性とは同じ種類の属性であり,前記第一の属性識別子と前記第二の属性識別子とは異なる識別子である。」(段落【0028】)「上記構成によれば,物および物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子で表わし,保持し,さらに演算の対象とすることができる。 なお,「物が指定される」とは,当該物を識別する物識別子が指定される- 26 -ことを指す。」(段落【0029】)「また,前記特徴データは,対応する属性の実体であり,対応する属性の概念を表し,かつ,言葉に対応づけられたデータを除くデータであり,例えば,当該特徴データに対応づけられた属性識別子が識別する属性の形,音,香,味,色,圧力,温度,長さ,座標値,及び面積の少なくとも一つを表すデータであってもよい。このように,各属性の概念(意味内容)は,属性識別子に関連付けられた特徴データによって定義される。」(段落【0030】)「本発明の一形態に係る記録媒体は,知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,上記記載の知識ベースと,上記記載のプログラムとが記録されている。」(段落【0054】)オ 【発明の効果】「本願技術を用いることにより,物および物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子で表 載の知識ベースと,上記記載のプログラムとが記録されている。」(段落【0054】)オ 【発明の効果】「本願技術を用いることにより,物および物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子で表わし,保持できる。」(段落【0056】) 本願明細書記載の技術の特徴 すると,本件補正発明を含めた本願明細書記載の技術は,以下の特徴を有するものと認められる。 ア情報処理の仕組みについて,従来技術は,文字を組み合わせて意味を持つ単語を生成し,その単語だけを使って言語に依存して知識を構築していたところ,本願明細書記載の技術は,物や属性の意味内容を言語に依存せずに表現することのできる知識ベースシステムを提供することを目的とするものである。 イそして,上記課題を解決するための手段である本願明細書記載の技術の一形態は,知識ベースを記憶している記憶部と,前記記憶部に記憶された知識ベースに対して論理演算を行う演算部とを備え,前記知識ベースは,- 27 -物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含む。前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられる。前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成される。前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成される。 上記構成によれば,物及び物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子で表わし,保持し,さらに演算の対象とすることができる。 また,前記 自体で属性の意味を持たない記号で構成される。 上記構成によれば,物及び物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子で表わし,保持し,さらに演算の対象とすることができる。 また,前記特徴データは,対応する属性の実体であり,対応する属性の概念を表し,かつ,言葉に対応づけられたデータを除くデータであり,例えば,当該特徴データに対応づけられた属性識別子が識別する属性の形,音,香,味,色,圧力,温度,長さ,座標値,及び面積の少なくとも一つを表すデータであってもよい。このように,各属性の概念(意味内容)は,属性識別子に関連付けられた特徴データによって定義される。 そして,本願明細書記載の技術を用いることにより,物および物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子(記号)で表わし,保持できるとの効果を奏するものである。 ウ本件補正発明は,以上のような技術に使用される記録媒体であるが,本願明細書の記録媒体に関する記載は,「本発明の一形態に係る記録媒体は,知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,上記記載の知識ベースと,上記記載のプログラムとが記録されている。」(【段落0054】)との記載があるのみで,本願明細書の【発明を実施するための形態】には,記録媒体における知識ベースやプログラムの記録について,具体的な記載はされていない。 - 28 - 2 取消事由1(本件補正発明の発明該当性に係る判断の誤り)について 本件審決は,本件補正発明は単なる情報の内容及び対応付けを規定したに止まるものであり,また,本件補正発明の「知識ベース」自体は特定の構造を有するデータの単なる集まりでしかなく,そもそもコンピュータに対する命令を規定するものではないから,この「知識ベース」をコンピュータに読み取らせた た,本件補正発明の「知識ベース」自体は特定の構造を有するデータの単なる集まりでしかなく,そもそもコンピュータに対する命令を規定するものではないから,この「知識ベース」をコンピュータに読み取らせたとしても,これ自体でコンピュータが動作するものでないことは技術常識からして明らかであって,本件補正発明は,「知識ベース」がコンピュータに読み込まれることにより,「知識ベース」とハードウェア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又はその動作方法が構築されるものとはいえず,特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないと判断した。これに対して,原告は,本件補正発明は,コンピュータを利用しており,その内容も「香り,味,熱さ冷たさ,映像,音などの記憶を統合することにより,『意味あるいは概念』が生じ,この『意味あるいは概念』を識別するものが広義の『言葉』と呼ばれているものである」という自然法則を利用したものであるなどと主張するので,以下検討する。 特許制度は,新しい技術である発明を公開した者に対し,その代償として一定の期間,一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し,他方,第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与えるものであり,特許法は,このような発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とする(特許法1条)。また,特許法2条1項は,「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定し,発明は,一定の技術的課題の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものである。 そうすると,請求項に記載された特許を受けようとする ,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものである。 そうすると,請求項に記載された特許を受けようとする発明が,特許法2- 29 -条1項に規定する「発明」といえるか否かは,前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かによって判断すべきものである。 そして,上記のとおり「発明」が「自然法則を利用した」技術的思想の創作であることからすれば,単なる抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体は,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則とはいえず,また,科学的法則を何ら利用するものではないから,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当しないことは明らかである。また,現代社会においては,コンピュータやこれに関連する記録媒体等が広く普及しているが,仮に,これらの抽象的な概念や人為的な取決めについて,単に一般的なコンピュータ等の機能を利用してデータを記録し,表示するなどの内容を付加するだけにすぎない場合も,「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しないというべきである。 アそこで,まず,本件補正発明が前提としている課題についてみると,前記1ウの本願明細書の「従来技術では,文字を組み合わせて意味を持つ単語を生成する。単語は言語の中にあり,言語の中だけでその単語の意味を直接持つ。意味を直接持つ単語で物や,性質,特徴,意味,概念などの属性という情報を表わす。物を表わす単語と属性を表わす単語とから成る単語の並びを作り,単語の並びで物の性質や物と物との関係を表わす。複数の単語の並びを蓄積し,蓄積された単語の並び ,意味,概念などの属性という情報を表わす。物を表わす単語と属性を表わす単語とから成る単語の並びを作り,単語の並びで物の性質や物と物との関係を表わす。複数の単語の並びを蓄積し,蓄積された単語の並びを知識としていた。この方法では,単語そのものの意味を持つ単語だけを使って知識を構築している。」(段落【0025】),「本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,物や属性の意味内容を言語に依存せずに表現することのできる知識ベースシステムを提供することが目的とする。」(段落【0026】)との記載によれば,従来技術では言語(単語)に依存して知識のデータベ- 30 -ース等を構築し,情報処理をしていたところ,本件補正発明では言語に依存せずに知識のデータベース等を構築し,情報処理をするという目的を有していることは,一応理解することができる。 しかしながら,上記記載からは,従来技術において,知識のデータベース等が言語に依存していることによって生じている技術的課題は明らかではない。 本願明細書の【背景技術】(段落【0002】ないし【段落0024】)の記載をみても,ニューラルネットワーク,人工知能,プログラミング言語,コンピュータ,インターネットなど極めて多様な内容が記載されているものの,知識に関するデータベースが言語に依存していることでどのような課題が生じているかについては,「情報を知識として蓄積する方法や,知識として記録された情報をうまく使う方法が開発できていない。」(段落【0005】)などの抽象的な記載があるにすぎず,「情報を知識として蓄積する方法」が具体的にどのような意味を有しているのか(上記段落【0025】の記載等によれば,従来技術においても情報を知識として蓄積していると考えられる。),「知識として記録された情報をうまく使う方法」に 法」が具体的にどのような意味を有しているのか(上記段落【0025】の記載等によれば,従来技術においても情報を知識として蓄積していると考えられる。),「知識として記録された情報をうまく使う方法」において,うまく使うとはどのような意味であるのかについては明らかではない。また,PLOROGというプログラミング言語について,「子→父→祖父のような3階層以上の関係を直接的に表わすことはできない。」(段落【0018】),「この技術で物と属性と関係とをデータベースとして保持できるが,物や属性や関係を表わす単語の並びを保持しているにすぎない。単語の並びで物の性質である属性を表現し,単語の並びで関連を表現している。属性も関係も,単語の並びという同じ方法で表現されている。情報を体系化したものを知識とすると,情報を現す単語を幾つか並べたものを複数個保持し,保持された単語の並びを知識としている。この方法では,3階層以上の物同士の関連を直接表わす情報は保持されていない。」(段落【0020】)などの- 31 -記載もあるが,これらの記載をみても,言語に依存したデータベース全般において,3階層以上の物同士の関連を直接表す方法が存在するか否かについては必ずしも明らかではないし,本件補正発明において,このような関係を直接表すことができるか否かについても不明である。 以上によれば,本件補正発明が前提としている課題は,言語に依存しないデータベース等の構築であるが,その前提として挙げられた言語に依存したデータベース等に具体的にどのような課題があるのか,言語に依存しないデータベース等にどのような技術的意義があって,従来技術と比較して,本件補正発明がどのような位置付けにあるのかについては,明らかとはいえない。 イ次に,本件補正発明の技術的手段の構成について タベース等にどのような技術的意義があって,従来技術と比較して,本件補正発明がどのような位置付けにあるのかについては,明らかとはいえない。 イ次に,本件補正発明の技術的手段の構成についてみると,前記第2の,下記構成を有することについては,当事者間に争いがない。 記⒜ 知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,請求項1に記載の知識ベースが記録された記録媒体を含むものであり,上記請求項1に記載の知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,前記特徴データは,対応する属性の実- 32 -体であり,前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータであるものであって,コンピュータによる論理演算の対象となるものである,記録媒体以上の構成によれば,本件補正発明は,上記アで認定した言語に依存しないデータベース等を構築するという課題を実現するため,「物」を言語と関連しない記号である「物識別子」で識別した上,同様に言語と関連しない記号である「属性識別子」で識別される「属性」を用いて,言語以外のデータである「特徴データ」,言語に対応した「識別データ」に分けて整理し,関連づけるという手法によって知識 上,同様に言語と関連しない記号である「属性識別子」で識別される「属性」を用いて,言語以外のデータである「特徴データ」,言語に対応した「識別データ」に分けて整理し,関連づけるという手法によって知識のデータベース等を構成することを示しており,その本質は,「物」に関するデータを「属性」を用いて言語以外のデータと言語に関するデータに分けて整理して関連づけるという概念の整理,データベース等の構造の定義にあると認められる。また,本件補正発明は,これを実現するに当たって,コンピュータに読み取り可能な記録媒体を用い(構成⒜),知識ベースがコンピュータによる論理演算の対象となる(構成⒞)などの構成を有しているが,これらはいずれも一般的なコンピュータ又は記録媒体の機能を利用するという内容に止まるものであって,具体的に構築されたデータベース等についてどのような論理演算を行い,それがどのような機能を有するのかなどについては必ずしも明らかではない。 ウさらに,本件補正発明の上記構成から導かれる効果についてみると,本願明細書には,「本願技術を用いることにより,物および物が持つ属性を,物や属性の意味を表わさない識別子で表わし,保持できる。」(段落【0056】)との記載はあるが,これは本件補正発明の構成自体を別の表現で表現したに等しいものであって,前記アのとおり,そのような形式でデータを保持する技術的な意義が明らかではなく,それによって,どのような効果が生じるのかについて明らかになっているとはいえない。 - 33 -エ以上を総合して検討すれば,本件補正発明については,そもそも前提としている課題の位置付けが必ずしも明らかではなく,技術的手段の構成としても,専ら概念の整理,データベース等の構造の定義という抽象的な概念ないしそれに基づく人為的な取決めに止ま いては,そもそも前提としている課題の位置付けが必ずしも明らかではなく,技術的手段の構成としても,専ら概念の整理,データベース等の構造の定義という抽象的な概念ないしそれに基づく人為的な取決めに止まるものであり,導かれる効果についてみても,自ら定義した構造でデータを保持するという本件補正発明の技術的手段の構成以上の意味は示されていない。また,その構成のうち,コンピュータ等を利用する部分についてみても,単に一般的なコンピュータ等の機能を利用するという程度の内容に止まっている。 そうすると,本件補正発明の技術的意義としては,専ら概念の整理,データベース等の構造の定義という抽象的な概念ないし人為的な取決めの域を出ないものであって,全体としてみて,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するとは認められない。 原告の主張についてア原告は,「知識ベース」をコンピュータに読み取らせた場合には,読み取り処理として,コンピュータが動作することは技術常識である上,本件補正発明の「知識ベース」は,「コンピュータによる論理演算の対象となる」ことが,請求項1に記載されており,本件補正発明に係る「記録媒体」は,「コンピュータ読み取り可能な」ものであるから,本件補正発明に係る「記録媒体」は,コンピュータを利用し,自然法則を利用している旨主張する。 しかしながら,「知識ベース」及び記録媒体がコンピュータに読み取り可能であることや,「知識ベース」が論理演算の対象となるという点は,いずれも,コンピュータが有する一般的機能にすぎないから,それだけで直ちに「発明」に該当するということはできず,本件発明が「自然法則を利用した」技術的思想の創作とおりである。 - 34 -したがって,原告の主張は理由がない。 イまた,原告は,本件補正発明は,情報処理( に該当するということはできず,本件発明が「自然法則を利用した」技術的思想の創作とおりである。 - 34 -したがって,原告の主張は理由がない。 イまた,原告は,本件補正発明は,情報処理(プログラム)に特徴を有するのではなく,知識の表現方法(データベースの構造)に特徴を有するところ,データ構造に特徴を有する発明については,データとハードウェア資源とが協働した具体的手段が請求項に記載される必要はない旨主張する。 しかしながら,前記判示したとおり,本件補正発明については,全体として未だに抽象的な概念ないし人為的な取決めに止まるものであり,その技術的意義が明らかとなっていないから,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当しないものであって,原告の主張は,その前提を欠き,理由がない。 ウさらに,原告は,本件補正発明は,「香り,味,熱さ冷たさ,映像,音などの記憶を統合することにより,『意味あるいは概念』が生じ,この『意味あるいは概念』を識別するものが広義の『言葉』と呼ばれているものである」という自然法則を利用した技術的思想の創作によって生み出されたものであるなどと主張する。 しかしながら,原告の主張する「自然法則」は,意味,概念,言葉をどのようなものとして捉えるかという抽象的な概念の整理をするものであって,人の精神活動に基づくものというべきであり,自然界の現象や秩序に関する因果関係とは無関係であるから,自然法則には該当するものではない。本件補正発明は,物を符号により識別した上で,言葉に関連するデータとそれ以外のデータに分類するという整理方法を提示したにすぎず,その整理方法が何らかの自然法則を利用しているとはいえず,また,その整理方法(データ構造)をとることによって,コンピュータによる処理効率が高まるなど何らかの技術的な いう整理方法を提示したにすぎず,その整理方法が何らかの自然法則を利用しているとはいえず,また,その整理方法(データ構造)をとることによって,コンピュータによる処理効率が高まるなど何らかの技術的な効果が得られるともいえない。 したがって,原告の主張は理由がない。 - 35 - 小括以上の検討によれば,本件補正発明は,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するとはいえず,特許法2条1項が定める発明に該当しないから,特許法29条柱書に規定する要件を満たしておらず,独立して特許を受けることができない。よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項,53条1項に基づき,却下すべきものであり,これと同旨の本件審決の認定判断に誤りはない。 したがって,取消事由1は理由がない。 3 取消事由2(本願発明の発明該当性に係る判断の誤り)について本願発明は,本願補正発明から,「知識ベース」の限定事項である「コンピュータによる論理演算の対象となる」ことを除いたものである。 そうすると,上記1で判示した理由と同様の理由から,本願発明は,特許法2条1項にいう「発明」に該当しない。 したがって,本件審決の認定判断に誤りはなく,取消事由2は理由がない。 4 結論以上の次第であるから,本件審決は相当であって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 - 36 - 裁判官平田晃史 善範 裁判官大鷹一郎 裁判官平田晃史

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