令和5(行ケ)10076 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年1月30日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文23,765 文字)

令和6年1月30日判決言渡 令和5年(行ケ)第10076号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年11月8日判決 原告株式会社キングジム 同訴訟代理人弁理士香原修也 同古井かや子 被告特許庁長官 同指定代理人豊田純一 同冨澤武志 同清川恵子 同山田啓之 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が不服2022-895号事件について令和5年6月8日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 商標登録出願(甲152) 原告は、令和2年3月12日、以下のとおりの構成よりなり、指定商品を第16類「ラベルプリンター用テープカートリッジ」とする商標(以下「本願商標」という。)について商標登録出願を行った(商願2020-27041号。以下「本願」という。)。 ⑵ 拒絶査定等 ア 本願について、令和2年12月25日付けで拒絶理由の通知がされた。(甲153) イ 原告は、令和3年6月28日、特許庁長官に対して意見書を提出したが、本願については、同年10月20日付けで拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)がされた。本件拒絶査定では、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、提出された証拠を参照するも同条 出したが、本願については、同年10月20日付けで拒絶査定(以下「本件拒絶査定」 という。)がされた。 本件拒絶査定では、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、提出された証拠を参照するも同条2項の要件を具備するものとはいえないと判断された。(甲154、155)⑶ 原告は、令和4年1月20日、拒絶査定不服審判を請求した(不服202 2-895号)。(甲156)⑷ 特許庁は、本願商標が商標法3条1項3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、一定の事実(原告以外の会社が製造するラベルプリンター用テープカートリッジの内容)を発見したとして、原告に対し、令和4年8月29日付け証拠調べ通知書によって通知し、これに対する意見 を求めた。原告は、上記証拠調べ通知書に対し、同年10月12日付けの意見書を提出した。(甲158、159)⑸ 特許庁は、令和5年6月8日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月23日に原告に送達された。 ⑹ 原告は、令和5年7月20日、本件審決の取消しを求めて、本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)のとおりであり、その理由の要旨は次のとおりである。 ⑴ 商標法3項1項3号該当性について本願商標の立体的形状は、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」について、機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の形状として、取引者、需要者において、機能の向上又は美感の向上を目的とする形状の変更又は装飾 等を施したものと予想し得る範囲のものであるから、それを超えて、形状の 特徴をもって商品の 」の形状として、取引者、需要者において、機能の向上又は美感の向上を目的とする形状の変更又は装飾 等を施したものと予想し得る範囲のものであるから、それを超えて、形状の 特徴をもって商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。 したがって、本願商標はこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の立体的形状の一類型を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当であって、本 願商標は、商標法3条1 項3号に該当する。 ⑵ 商標法3条2項該当性について原告が発行する「ラベルプリンター用テープカートリッジ」に関する「総合カタログ」及び「テプラカタログ」、カタログ以外の方法による本願商標に係る商品の宣伝広告等において、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」 の立体的形状とともに、原告の略称を表示する「キングジム」の文字や、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の商品名又は商標として「テプラ」及び「テプラPRO」の文字が使用されている。 原告は、「総合カタログ」及び「テプラカタログ」の発行数を示すが、同業他社の同様商品のカタログの発行数が明らかではないため、多寡の確認がで きない。 原告は、ラベルプリンター及びその消耗品(テープカートリッジ)等を含む電子文具市場において、売上高で市場1位の占有率を有していると主張するが、本願の指定商品は「ラベルプリンター用テープカートリッジ」であって、ラベルプリンターの消耗品にすぎず、原告が主張する市場占有率は本願 商標に係る商品(以下「本件商品」という。)の市場占有率とはいえない。 加えて、原告以外の者が取り扱う「ラベルプリンター て、ラベルプリンターの消耗品にすぎず、原告が主張する市場占有率は本願 商標に係る商品(以下「本件商品」という。)の市場占有率とはいえない。 加えて、原告以外の者が取り扱う「ラベルプリンター用テープカートリッジ」において、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻取りや送り出しをするような輪状の部品を有する等の機能を有する商品が実際に取引されており、ケースやカバーに当たる部分を半透明のものと することは、その内部構造を視認するという機能的な理由や美感上の理由か らデザイン手法の一つとして採用されていることが確認できることからすると、原告が令和2年2月に調査実施機関に依頼したアンケート調査の結果は、需要者が本件商品の形状をもって同業他社の商品と区別していることを示しておらず、原告の略称や「テプラ」及び「テプラPRO」の商品名又は商標を認識していることを示すものと判断するのが相当である。 そうすると、原告の主張及び提出された証拠を参照しても、原告が本願商標を商品「ラベルプリンター用テープカートリッジ」に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできず、本願商標は商標法3条2項の要件を具備するものではない。 3 取消事由⑴ 取消事由1商標法3条1項3号該当性に関する判断の誤り⑵ 取消事由2商標法3条2項該当性に関する判断の誤り 第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性に関する判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 本願商標を構成する立体的形状の態様は、黒色の底面部と透明又は半透明の天面部とに二分される扁平な直方体から、これを平面視して右辺下側に右 向きの凸部が残るよう上半部を 〔原告の主張〕⑴ 本願商標を構成する立体的形状の態様は、黒色の底面部と透明又は半透明の天面部とに二分される扁平な直方体から、これを平面視して右辺下側に右 向きの凸部が残るよう上半部を蒲鉾形に切り取り、この蒲鉾形の上半部(以下「蒲鉾形上半部」という。)内の中心に位置するテープリールと、外縁が蒲鉾形上半部の外周に沿うようにはめ込まれて巻かれたテープが、透明又は半透明の覆いを介して視認できることを特徴とする。また、その形状的要素を分解すると、本願商標の上方の大部分を占め、蒲鉾形上半部を有する略矩形 部(本願商標を右に45度倒して欧文字のPになぞらえると右に凸出する半 円状部に相当する部分。以下「蒲鉾状矩形部」という。)の形状、本願商標の右下にある右向き凸出部(上記欧文字Pの脚部に相当する部分)の形状、及び蒲鉾状矩形部内に透けて見える「真円状テープリール及びテープ」となる。 これらの形状を有する本願商標は、自他商品識別力を備えることができる程度の形状的特徴を有している。 ⑵ 本件審決は、本願商標を構成する要素である①「印字用テープをロール状にして収納する部分」、②「印字用テープの巻取りや送り出しをするような輪状の部品」及び③「ケースやカバーに当たる部分を半透明のものとすること」が、原告以外の者が取り扱う「ラベルプリンター用テープカートリッジ」にも採用されており、これらは機能的あるいは美感上の理由からデザイン手法 の一つとして採用されているものであるとし、それゆえに本願商標は識別商標として認識され得ないと結論づけた。 しかし、上記①から③までの各要素が商品の立体的形状に採択され得るものであり、本願商標と、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジがともに上記①から③までの要素を含むものであ 。 しかし、上記①から③までの各要素が商品の立体的形状に採択され得るものであり、本願商標と、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジがともに上記①から③までの要素を含むものであるとしても、 これらの要素を含みつつ形成されたそれぞれの立体的形状は互いに全く異なるものであるから、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジに係る商標は本願商標と異なるものとして識別されるべきものである。前記⑴で挙げた本願商標の特徴的形状の三要素は、上記①から③までと一対一の対応関係にはない。この種の商品に印字用テープ収納部分を設ける ことが求められるとしても、これを蒲鉾状の矩形にする必要はないし、右向き凸出部を残さなければならない技術的・美感的必然性もない。また、原告が考える特徴は、ケースやカバーに当たる部分を半透明にすること自体にあるのではなく、右向き凸出部を備えた蒲鉾状矩形部の中に大きく見えるテープリールの見え方と、本願商標の概外形との統合した結果として現れる全体 的な形状である。したがって、上記①から③までの要素を有するラベルプリ ンター用テープカートリッジが存在することは本願商標の識別力を直ちに否定すべき理由とはならない。 〔被告の主張〕原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジ(乙2~12)には、ロール状の印字用テープ、印字用テープの巻取りや送り出しをする ような輪状の部品や、半透明のカバーが採用されており、これらは商品の特性上普通に求められる部品及びその形状であるといえる。また、これらの商品は、本体であるラベルプリンターのはめ込み部分に適合する形状で作られるものであるから、本体のはめ込み部分の形状に応じた様々な形状をその外形としている。 本願商標の立 る。また、これらの商品は、本体であるラベルプリンターのはめ込み部分に適合する形状で作られるものであるから、本体のはめ込み部分の形状に応じた様々な形状をその外形としている。 本願商標の立体的形状は、原告以外の者の製品と同様に、ラベルプリンター用テープカートリッジとして、普通に求められる部品及びその形状である、ロール状の印字用テープ、印字用テープの巻取りや送り出しの輪状の部品を有し、半透明のカバーが採用されている。さらに、本体であるラベルプリンターのはめ込み部分に適合するよう、一部に凸部があり、二つの角が丸みを帯びた厚み のある略四角形の外形よりなるものである。 そうすると、本願商標の立体的形状は、ラベルプリンター用テープカートリッジの商品において、普通に求められる部品及びその形状を組み合わせた範囲のものであり、取引者、需要者において、機能又は美感の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲のものであるから、それを 超えて、上記形状の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。 さらに、本願商標の立体的形状が、他のラベルプリンター用テープカートリッジの形状と異なる特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感の向上を目的とした形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲す るものであるから、先に商標登録出願したことのみを理由として当該形状を特 定の者に独占させることは、公益上の観点から適切ではないとともに、自他商品識別力を欠くものといえる。 以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、ラベルプリンター用テープカートリッジの立体的形状の一類型を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用 とおり、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、ラベルプリンター用テープカートリッジの立体的形状の一類型を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられ る方法で表示する標章のみからなるものというべきであるから、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(商標法3条2項該当性に関する判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 原告は、本願商標の使用されたラベルプリンター用テープカートリッジを、 日本全国において、約30年という長期間にわたって、同一形状で継続的に販売している。 そして、本願商標の掲載されているカタログが、毎年、相応の部数、日本全国を対象に、継続して頒布されており、本願商標の立体的形状を示しながら販売する手法が採られていて、本願商標が需要者の目にとまる状況が確実 に存在していた。 ⑵ 株式会社矢野経済研究所の発行に係る「文具・事務用品マーケティング総覧」(甲114~130)には、「ラベルライターの市場は、その8割がラベルテープなどのサプライ品」、「キングジムの2018年6月期の電子文具売上は、(中略)テプラ関連が約9割、その他デジタル文具が約1割の構成であ る。テプラは、売上げの8割以上をテープが占めている。」などといった記述がある。 ラベルプリンター及びその消耗品(テープカートリッジ)等を含む電子文具市場において、原告の売上高は61.1%の占有率を有しているところ(平成30年度)、原告の市場占有率が約6割であり、原告の売上げのうち「テプ ラ」関連製品の売上高が約9割であって、「テプラ」関連製品は売上げの8割 以上をテープ(本件商品)が占めるとすれば、電子文具市場における本件商品の売上 割であり、原告の売上げのうち「テプ ラ」関連製品の売上高が約9割であって、「テプラ」関連製品は売上げの8割 以上をテープ(本件商品)が占めるとすれば、電子文具市場における本件商品の売上高比率は、以下のとおり、約43%であると推測される。 0.6×0.9×0.8=0.432電子文具市場における本件商品の売上高比率が43%を超えるということは、需要者が、文房具店、量販店の文房具売場又は通信販売のウェブサイ ト等で本件商品を見かける機会及び頻度がそれなりにあったはずであると予測され、このことは本願商標が標識的に理解される機会・頻度にもつながり得る。 ⑶ 原告は、文字的要素を含まない本願商標の写真だけを需要者に見せ、その立体的形状のみで原告の商品であることが認識されるか否かを実験し、40. 2%の確率でその認識が得られているとの結論を得た(甲147。以下、甲147の調査を「本件調査」という。)。 需要者又は取引者の認識をして立体的形状のみで商品の出所の識別をすることができるのであれば、当該立体的形状には自他商品識別力が備わっているとみるべきである。そして、この自他商品識別力の有無は、需要者又は 取引者の認識によっても立証され得る性質のものであるところ、本件調査の結果はまさにその証拠足り得る。 本件審決は、本件調査の結果は、需要者が本件商品の形状をもって同業他社の商品と区別しているのではなく、請求人の略称や「テプラ」及び「テプラPRO」の商品名又は商標を認識していることを示すものと判断するのが 相当であるとした。しかし、本件調査では、ラベルプリンターの活用経験者の中では52.2%の者が、テープカートリッジの交換経験者を対象とすると62.4%の者が、それぞれ本願商標に接し、出所を特定できている。同種製品 。しかし、本件調査では、ラベルプリンターの活用経験者の中では52.2%の者が、テープカートリッジの交換経験者を対象とすると62.4%の者が、それぞれ本願商標に接し、出所を特定できている。同種製品の中から原告のラベルプリンターを選択・購入しようとする取引の実情があるとした場合、このような選択購入者のうち半数以上の者が、本件商 品の形状をしてその出所を理解し特定しているのであり、少なくとも同種商 品について明確に出所を特定できている者の存在は肯定的に捉えるべきである。したがって、前記40.2%の認識率について、立体的形状により同業他社の商品と区別している者の割合ではないとした本件審決の判断は失当である。 ⑷ 取引者・需要者が本願商標の立体的形状を意識しつつ広告していることを 窺わせるインターネット上の各種記事や動画がある(甲131~146)。 例えば、アスクル株式会社がヤフー株式会社の協力により運営するインターネット通販サイト「LOHACO」の「キングジムテプラ特集」のwebページ(甲131)では、「名前つけ」、「ラッピング」、「整理収納」、「デコレーション/DIY」及び「おすすめテープ」の全ての項目において、本願商 標の立体的形状を視認できる態様で本件商品が広告され、その正面写真とパッケージの写真も並べて掲載され、その下には本件商品の「テープの種類」と「その価格」が表示されている。したがって、このサイトにアクセスした者は「テプラ」に用いられるカートリッジがいかなる形状をしているのかを瞬時に把握させられることになる。また、本件商品の広告ページは4頁にも 及び、広告されている本件商品は全て写真が掲載されているため、このページを見た需要者等がその形状を記憶に残す可能性は極めて高い。 甲132ないし甲146の た、本件商品の広告ページは4頁にも 及び、広告されている本件商品は全て写真が掲載されているため、このページを見た需要者等がその形状を記憶に残す可能性は極めて高い。 甲132ないし甲146のウェブサイト、雑誌等の媒体、ブログ記事においても、いずれも本件商品の形状が明確に視認できる鮮明な写真又は映像が掲載されて宣伝広告、紹介等がされている。インターネット上のブログ記事 においては、各ブログの作成者が、テープカートリッジの包装を開け、本件商品の形状それ自体を執拗に見せているが、そのように形状を見せたくなる理由は、本件商品の形状が、普通のテープカートリッジとは異なる特異的な印象でユーザーの記憶に残りやすく、再度同じカートリッジを選ぶ際には、記憶にある特異な形状の印象から、本件商品をそのまま連想させることがで き、再度の購入に迷いが少なくなることにある。このことは、「テプラ」を使 うには「こういう形」のカートリッジが必要であることを、立体的形状という標章の構成要素を用いて人の知覚に訴えかけていることを意味する。 ⑸ 以上のとおり、①本願商標に対する需要者の直接的・間接的な認識、②本願商標が永年にわたり誠実に使用され続けてきた事実、③本願商標の使用された本件商品が日本全国で販売・使用されていること、④本願商標を構成す る立体的形状ほかの形態的な各特徴点(色彩など)を総合すれば、本願商標が「何人かの業務に係る商品であることを認識できる商標」に該当するものとして、商標法3条2項を適用することができる。 ⑹ 本件審決は、本願商標の特徴を形成していると原告が主張する三つの形状要素(前記1〔原告の主張〕⑵)が、本件商品と同種の商品においても採用 されており、これらの要素が「デザイン手法の一として採用されている」との理 の特徴を形成していると原告が主張する三つの形状要素(前記1〔原告の主張〕⑵)が、本件商品と同種の商品においても採用 されており、これらの要素が「デザイン手法の一として採用されている」との理由のみで、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を有しないとして、原告の主張を退けている。 しかし、前記1〔原告の主張〕⑵の①ないし③の要素を有するラベルプリンター用テープカートリッジの存在が本願商標の識別力を直ちに否定すべき 理由とならないことは、同⑵において原告が主張するとおりである。 また、原告は、前記⑴から⑸のとおり、現時点において本願商品が識別標識として機能し得ていることを主張立証しているのであり、本願商標について原告が主張する事実が商標法3条2項の要件を充足するものであるか否かの判断を示すことなく、「デザイン手法の一として採用されている」との理由 のみで原告の主張を退けた本件審決の判断は不当である。 〔被告の主張〕⑴ 前記1〔被告の主張〕のとおり、本願商標は、ラベルプリンター用テープカートリッジとして商品の特性上普通に求められる内部構造として、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻取りや送り出し をするような輪状の部品を有しており、半透明のケースやカバーは使用上の トラブル回避のために内部構造を視認できるという機能的又は美感上の理由と考えられ、その他の形状はラベルプリンター本体のはめ込み部分の形状に応じたものである。そして、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジにおいても同様の形状の部品及び半透明カバーを有し、かつ、ラベルプリンター本体のはめ込み部分の形状に応じた様々な形状を外形 とする商品が実際に取引されている。 そうすると、本願商標の立体的形状 においても同様の形状の部品及び半透明カバーを有し、かつ、ラベルプリンター本体のはめ込み部分の形状に応じた様々な形状を外形 とする商品が実際に取引されている。 そうすると、本願商標の立体的形状は、その構成要素及び形状において、需要者の目につきやすく強い印象を与えるような特徴を欠いている。 ⑵ ラベルプリンター用テープカートリッジの需要者は、オフィス用品、事務用品を購入する需要者である。また、ラベルプリンター用テープカートリッ ジは、ラベルプリンターに適合するように作られた交換用部品(消耗品)であるから、購入したラベルプリンターとメーカー及び型式が適合するものを購入する商品である。 本願商標の立体的形状を有するラベルプリンター用テープカートリッジである本件商品は、「テプラ」及び「テプラPRO」と称される商品の本体に セットして使用する消耗品であるから、本件商品の商取引においては、当該商品が「テプラ」及び「テプラPRO」と称される商品の専用の商品であることを告知するのが自然である。 本件商品が掲載された商品カタログ(甲7~78、150、151)においては、本件商品を取り付けるラベルプリンターの商品名又は商標として、 「テプラ」又は「テプラPRO」の文字が記載され、また、原告の名称、原告の略称を表示する「KINGJIM」の文字や「キングジム」の文字が記載されている。他方、これらの商品カタログにおいて、本願商標の立体的形状に関しては、機能面に関する記載はあるが、その立体的形状の特徴を前面に押し出すような記載はない。そして、当該商品カタログには、本願商標 の立体的形状の写真が掲載されているが、この写真は小さく掲載されており、 殊更目立つような掲載方法とはなっていない。 そうすると、当該商品カタログにおい 当該商品カタログには、本願商標 の立体的形状の写真が掲載されているが、この写真は小さく掲載されており、 殊更目立つような掲載方法とはなっていない。 そうすると、当該商品カタログにおいては、本願商標の立体的形状が需要者の目につきやすく強い印象を与えるようなものとはなっていない。 原告は、そのウェブサイト(甲102~104)において本件商品を紹介しているが、これらのウェブサイトにおいても、「『テプラ』PROテープカ ートリッジ」の文字や「PROテープカートリッジ白ラベル」の文字とともに本件商品が紹介されており、また、本願商標の立体的形状について説明するものは1件のみであり、その他に本願商標の立体的形状を前面に押し出すような記載はない。 ⑶ ウェブサイトや雑誌において、本件商品を掲載又は紹介する記事が掲載さ れているが(甲131~146)、本件商品を取り付けるラベルプリンターの商品名又は商標として「テプラ」、「テプラPRO」及び「PROテープカートリッジ」の文字等が記載されており、また、本願商標の立体的形状の特徴を紹介するような記載はない。 また、「『なかよし』第64巻1号」(甲111)の本文中に「ガーリー『テ プラ』+テプラカートリッジりぼん」の文字が記載されており、「『マーガレット』第58巻第17号」(甲112)の本文中に「PROテープカートリッジりぼん」の文字が記載されており、それぞれ本件商品が紹介されているが、本願商標の立体的形状の写真は小さく、当該立体的形状の特徴を紹介するような記載はない。 ⑷ア本件調査は、整理整頓、分類・識別などを行っている者に調査対象を限定している(「スクリーニング調査」Q4)。 しかし、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の需要者は、オフィス用品、事務用品 ア本件調査は、整理整頓、分類・識別などを行っている者に調査対象を限定している(「スクリーニング調査」Q4)。 しかし、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の需要者は、オフィス用品、事務用品を購入する者であるといえるから、調査対象をあえて整理整頓、分類・識別などを行っている者に限定するのは適切とはいえない。 イ原告は、本件調査から、本願商標から出所を特定できる者の割合を40. 2%であると主張している。 しかし、「40.2%」はQ5におけるノイズ(いい加減な回答)除去前の数字であり、ノイズ除去後は31.0%であって、前記アのとおり調査対象を不適切に限定している状況においても、約3割の者にしか本願商標から出所を識別されていない。 また、Q6の選択式の質問に対する回答においては、「テプラ(TEPRA)」のブランド名を提示しているにもかかわらず、正答率は51.9%、ノイズ除去後は35.8%であり、「テプラ(TEPRA)」のブランド名を提示されても4割弱の者にしか本願商標から出所を認識されていない。 ⑸ 以上のとおり、①本願商標の立体的形状は、その構成要素及び形状におい て、特段需要者の目に付きやすく強い印象を与えるような特徴を欠いていること、②本件商品は、商品カタログ、原告のウェブサイト及び第三者による記事において、宣伝広告又は紹介されているが、いずれも、当該立体的形状が殊更目立つような掲載方法となっておらず、当該形状の特徴を前面に押し出すような記載もないことから、宣伝広告及び紹介記事においても、本願商 標の立体的形状が特段需要者の目に付きやすく、強い印象を与えるようになっていないこと、③本件商品は、「テプラ」又は「テプラPRO」などの商標により、他者の商品と識別されていると考えられること、④本件 標の立体的形状が特段需要者の目に付きやすく、強い印象を与えるようになっていないこと、③本件商品は、「テプラ」又は「テプラPRO」などの商標により、他者の商品と識別されていると考えられること、④本件調査からも、本願商標から原告(出所)を認識できる需要者の割合は低いこと、がいえる。 これらの事情を総合考慮すれば、本願商標は、その指定商品に係る需要者の間において、原告のブランドの出所識別標識たる特徴として全国的に広く認識されるに至っているとはいえず、本願商標は、その指定商品との関係において、原告により使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至ったものとはいえないから、本願商標は、商標法 3条2項の要件を具備しない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性に関する判断の誤り)について⑴ 商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に 供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定する。その趣旨は、同号に該当する商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き、 商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。 商標法上、商標登録を受けようとする商標が立体的形状か いものであることによるものと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。 商標法上、商標登録を受けようとする商標が立体的形状から成る場合であっても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる(同法2条1 項、5条2項)。 しかし、商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させることや、商品等の美感をより優れたものとすること等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように、商品等の製造者、供 給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能又は自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選 択されたものと認識するのであって、商品等の出所を表示し、自他商品を識 別するために選択されたものと認識する場合は多くない。 また、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは、公益上適当でない。 そうすると、客観的に見て、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解される。 また、当該商品 して採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解される。 また、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品等につい て、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。 さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状であっても、当該形状がもっぱら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときは、 「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」について商標登録を受けることはできない旨を規定する商標法4条1項18号の趣旨から、同法3項1項3号に該当するというべきである。 ⑵ 本願商標の商標法3条1項3号該当性について ア本願商標は、前記第2の1⑴のとおりの構成の立体的形状からなる商標であり、その形状は、正面の覆いを半透明にしたカートリッジケースの内部に、大きなロール状の輪と、それに接するように円形の二つの輪(このうち、一つの輪の芯には円の内側に向け連続した小さな突起がある。)並びに比較的大きな長方形の空間及び小さな円形の空間を配置してなり、全体 として、一部に凸部があり、二つの角が丸みを帯びた、厚みのある略四角 形の立体的形状よりなるものである。 本願の指定商品は「ラベルプリンター用テープカートリッジ」である。 ラベルプリンターはラベル印刷専用のプリンターであり(甲4)、本願商標が用いられる本件商品は、原告が販売するラベルプリンター製品「『テプラ』PROシリーズ」に着脱する印字用テープの リッジ」である。 ラベルプリンターはラベル印刷専用のプリンターであり(甲4)、本願商標が用いられる本件商品は、原告が販売するラベルプリンター製品「『テプラ』PROシリーズ」に着脱する印字用テープの交換用部品であって、上記ロ ール状の輪は印字用テープ、円形の二つの輪は印字用テープの巻取りや送り出しのための輪状の部品である(甲7~78、弁論の全趣旨)。 また、本件商品は本体のラベルプリンターにはめ込んで用いる交換用部品であり、本願商標の全体の形状は、ラベルプリンターのはめ込み部分の形状に適合するようなものとなっている(弁論の全趣旨)。 カートリッジケースの正面の覆いが半透明となっているのは、美感上の理由とともに、ラベルプリンター用テープカートリッジの使用中のトラブルの確認、回避のために、内部構造を視認することができるようにしたものである(弁論の全趣旨)。 イ本願商標の需要者はオフィス用品、事務用品を購入する一般の消費者で あると認められるが、本願商標の形状に係る上記アの各事情は、需要者がこれを容易に認識することができるといえる。 ウ原告以外の者が販売するラベルプリンター用テープカートリッジにおいても、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻取りや送り出しをするための輪状の部分を有し、ケースの覆いが透明又は 半透明となっている製品が複数存在する(乙2~12)。 エ上記アないしウの事情を総合すれば、本願商標の形状は、客観的に見て、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであり、かつ、本願商標の需要者であるオフィス用品、事務用品を購入する一般の消費者において、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的 とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであると認め つ、本願商標の需要者であるオフィス用品、事務用品を購入する一般の消費者において、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的 とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであると認められる。 そうすると、本願商標に係る立体的形状は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として、商標法3条1項3号に該当するというべきである。 ⑶ 原告の主張に対する判断ア前記第3の1〔原告の主張〕⑴について 原告は、本願商標は自他商品識別力を備えることができる程度の形状的特徴を有していると主張する。 しかし、本願商標の形状が、①蒲鉾状矩形部(本願商標の上方の大部分を占め、蒲鉾形上半部を有する略矩形部。本願商標を右に45度倒して欧文字のPになぞらえると右に凸出する半円状部に相当する部分)の形状、 ②本願商標の右下にある右向き凸出部(上記欧文字Pの脚部に相当する部分)の形状、及び③蒲鉾状矩形部内に透けて見える「真円状テープリール及びテープ」からなると分析できるとしても、前記⑵ウに記載の他のラベルプリンター用テープカートリッジの形状と比較して特に斬新な形状といえるようなものではなく、商品の特性上普通に求められる形状の範囲内 のものであり、仮に斬新な形状であるといえるとしても、これらの形状は、本体であるラベルプリンターのはめ込み部分に適合する形状で作られるものであり、専らラベルプリンターにはめ込んで用いるラベルプリンター用テープカートリッジとしての商品の機能向上の観点から選択されたものにすぎないと認められるから、機能上の理由による形状の選択と予測し 得る範囲のものであるというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告の前記第3の1〔原告の主張〕 いと認められるから、機能上の理由による形状の選択と予測し 得る範囲のものであるというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告の前記第3の1〔原告の主張〕⑵について原告は、本願商標と形状において共通の要素を有するラベルプリンター用テープカートリッジが存在するとしても、形成された各立体的形状は互 いに全く異なるものであるから、本願商標が自他商品識別力を有すると主 張する。 しかし、前記⑴のとおり、客観的に見て、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標というべきである。 本願商標の形状と、原告以外の者が販売するラベルプリンター用テープカートリッジ(乙2~12)の形状とを比較すると、形状として異なる部分はあるが、ラベルプリンター用テープカートリッジとしての機能又は美感に資することを目的として採用された形状として共通する部分が複数あるといえるから、形状において異なる部分があることをもって、本願商 標が自他商品識別力を有すると解することはできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 2 取消事由2(商標法3条2項該当性に関する判断の誤り)について⑴ 商標法3条2項は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを 認識することができるもの」については、商標登録を受けることができる旨を規定している。同条2項の趣旨は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標がその商品又は 登録を受けることができる旨を規定している。同条2項の趣旨は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて自他商品識別力又は自他役務識別力をもつに至ることが経験的に認められるので、このよう な場合には商標登録を受けることができるとしたものと解される。 そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、立体的形状が需要 者の目につき易く,強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上 で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断するのが相当である。 ⑵ 認定事実前記1⑵アにおいて認定した事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告、本願商標及び本件商品に関し、以下の事実が認められる。 ア原告は、文具、事務用品の製造、販売等を目的とする株式会社であり、文具事務用品(電子製品)の一つとして、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターを製造販売している。「『テプラ』PRO」シリーズの初号機が販売されたのは平成4年である。原告の2019年(令和元年)6月期の売上高は約343億2900万円であるが、このうち電子製品の売 上高が約155億4700万円であり、売上高全体の約45.3%を占めている。(甲3、5)イラベルプリンターはラベルを作成する電子製品であり、本願商標が用いられている本件商品は、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター用のテープカート 約45.3%を占めている。(甲3、5)イラベルプリンターはラベルを作成する電子製品であり、本願商標が用いられている本件商品は、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター用のテープカートリッジであって、本件商品を本体のラベルプリンターに はめ込んで使用し、本件商品のテープを使い切ったときは新たな本件商品に交換するものであって、本件商品は交換用の消耗品である。また、本件商品には、幅、テープの色、文字の色、デザイン等が異なる多数の種類の商品がある。本件商品は全国的に販売されている。(甲5~78、104)ウ本件商品は、箱に入った状態で販売されており、箱の表面の左上部には 「KINGJIM」の文字が、その下には比較的大きく「TEPRA」の文字が、その下には黒字に白抜きで小さく「PRO」の文字が、それぞれ記載されている。「TEPRA」及び「PRO」の文字の右側には、テープの幅及び色、文字の色等が記載されている。また、箱から出した状態の本件商品の形状は、前記第2の1⑴及び前記1⑵アのとおりであるが、半 透明のカートリッジケースのうち、内部に大きなロール状の輪が存在する あたりに、「KINGJIM」、「TEPRA」及び「PRO」の文字の記載、テープの幅及び色の記載等が存在するシールが貼られている。(甲103)エ原告は、その販売する商品を掲載したカタログ(以下「原告カタログ」という。)を毎年発行し、文具店や顧客である企業等に配布している。原告 カタログには本件商品も掲載されており、少なくとも2000年(平成12年)以降の原告カタログでは、本件商品に関するページに、本願商標の形状が分かる態様で本件商品の写真(ただし、上記ウのシールが貼られた状態の写真となっている。)及び本件商品の箱(上記ウ)の写真が 2年)以降の原告カタログでは、本件商品に関するページに、本願商標の形状が分かる態様で本件商品の写真(ただし、上記ウのシールが貼られた状態の写真となっている。)及び本件商品の箱(上記ウ)の写真が掲載されている。(甲11~101) オ株式会社インテージは、原告の依頼に基づき、本件商品に関する、日本国内居住の一般消費者における出所識別力を明らかにするための調査として、本件調査を行い、その結果を記載した令和2年6月26日付け調査報告書を原告に提出した。 本件調査は、最初に対象者のスクリーニングのための調査を行い、これ によってスクリーニングされた後の者を対象として本調査を実施した。調査の対象者は全国の16歳から60歳の男女であるが、本人又は家族の職業が「マスコミ・広告、新聞・放送業/市場調査」又は「事務用品・文房具・電子文具のメーカー及び販売」に該当する者を除外することとしており、スクリーニング調査において、本人又は同居の家族の仕事(業種)に 関する質問をして、上記のいずれかの業種を選択した者を除外した。また、本件調査は、本件商品の需要者を「電子文具やラベルプリンター等の利用者層・潜在的利用者層・購買担当者など(仕事や家庭内において仕事用具や雑貨・備品などの整理整頓、分類・識別、ファイリングや保管・管理、仕分けなどを行うことがある方)」であるとしており、スクリーニング調査 において、仕事用具や、家にある雑貨、備品等について、整理整頓、分類・ 識別、ファイルとじ(ファイリング)、保管・管理、仕分けを行っているか、どれも行っていないかを回答させる質問をして、どれも行っていないと回答した者を除外した。 本件調査は、インターネットにより実施されたが、設問の中で、回答の理由を聴取し、その理由から明らかにいい 、どれも行っていないかを回答させる質問をして、どれも行っていないと回答した者を除外した。 本件調査は、インターネットにより実施されたが、設問の中で、回答の理由を聴取し、その理由から明らかにいい加減な回答(ノイズ)をしたと 判別できる調査対象者を除いた集計も行った。 本件調査では、対象者に対し、前記第2の1⑴に挙げた本願商標に係る2枚の写真を見せた上で、「この画像の製品を製造・販売している企業名(メーカー)をお答えください。」との質問(Q3)、「これを使用する製品の名前(ブランド名)をお答えください。」との質問(Q4)及び「どうし てその製品・ブランドだと思ったか、理由をお答えください。」との質問(Q5)をして、自由回答により回答させた。その後、Q4と同一の質問について、「テプラ(TEPRA)」を含めた選択肢を提示して一つの回答を選ばせる質問(Q6)をして、Q5と同様にその理由を問う質問(Q7)をした。 調査の結果、ノイズ除去を行わない場合、Q3とQ4の少なくとも一方を正答した者が回答者全体(3247人)のうち40.2%、両方とも不正答であった者が回答者全体の59.8%であった。Q6の正答率は51. 9%であり、Q3及びQ4の両方とも不正答であったがQ6を正答した者が全体の10.3%おり、Q3、Q4又はQ6の少なくとも一つを正答し た者が全体の50.5%、上記3問の全てを誤った者が全体の49.5%であった。 その上で、本件調査は、Q5で回答したQ4の回答理由の記述内容及びQ7で回答したQ6の回答理由の記述内容から、本件商品を識別できていないにもかかわらず回答したと思われるもの(例えば、「わからない」、「な んとなく」、「調べてみた」、「有名な名前だから」など)をノイズとして除 去した場合の結 、本件商品を識別できていないにもかかわらず回答したと思われるもの(例えば、「わからない」、「な んとなく」、「調べてみた」、「有名な名前だから」など)をノイズとして除 去した場合の結果も集計した。 ノイズを除去した場合、Q3とQ4の少なくとも一方を正答した者から、Q5の回答内容によりノイズとされた者を除いた人数は、回答者全体の31.0%であり、Q3及びQ4の両方とも不正答であった者と、ノイズとされた者との合計人数は回答者全体の69.0%であった。また、Q6の 正答者から、Q7の回答内容によりノイズとされた者を除いた人数は、回答者全体の35.8%であり、Q3及びQ4の不正答者(Q5の回答結果によりノイズとされた者を含む。)のうち、Q6を正答し、かつ、Q7の回答によりノイズとして除去されなかった者は、回答者全体の9.2%であった。 (以上、甲147)⑶ 本願商標の商標法3条2項該当性についてア本願商標の立体的形状の構成は前記第2の1⑴及び前記1⑵アのとおりであり、その形状は、ラベルプリンター用テープカートリッジとしての商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであると認 められる。 しかも、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジにおいても、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻取りや送り出しをするための輪状の部分を有し、ケースの覆いが透明又は半透明となっている製品が複数存在し(前記1⑵ウ)、本願商標の 形状と、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジの形状とは、一定の差異はあるが、主要な構成要素が共通しており、本願商標の形状の斬新性は乏しく、本願商標の形状に類似した他の商品が存在すると認められる。 イ 「『テプ リンター用テープカートリッジの形状とは、一定の差異はあるが、主要な構成要素が共通しており、本願商標の形状の斬新性は乏しく、本願商標の形状に類似した他の商品が存在すると認められる。 イ 「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターは平成4年から販売さ れており(前記⑵ア)、同時期に「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプ リンター用テープカートリッジである本件商品も販売が開始されたものと推認される。本件商品の形状が販売当初において現在と異なるものであったと認めるに足りる証拠はなく、本件商品はその販売当初から本願商標の形状が用いられていたと認められる。 しかし、本件商品について、原告カタログに掲載されていることは認め られるものの、本件商品のみを扱った広告宣伝がされたとは認めるに足りる証拠はない。 また、本件商品は箱に入った状態で販売されており(前記⑵ウ)、店舗において本願商標の形状が顧客に示されないと認められる。箱には、原告の社名を示す「KINGJIM」の文字や、「TEPRA」、「PRO」等、 「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター用テープカートリッジであることが分かる文字の記載、テープの幅や色等を示す記載等がされている。原告のウェブサイトで本件商品を紹介する画面には、箱から出された本件商品が表示されており、本願商標の形状が示されているが、「KINGJIM」、「TEPRA」、「PRO」等の文字が記載されたシールの貼られ た状態の写真であり、箱も表示されている上、ウェブサイト上の記載としても「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターであることが示されている(甲102~104)。原告カタログも、箱から出されてシールの貼られた状態の本件商品とともに、箱が表示されている(前記⑵ウ)。 そして ラ』PRO」シリーズのラベルプリンターであることが示されている(甲102~104)。原告カタログも、箱から出されてシールの貼られた状態の本件商品とともに、箱が表示されている(前記⑵ウ)。 そして、本件商品は、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター 用のテープカートリッジであり、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターを所持する者が、新たなテープカートリッジが必要となった場合に購入する商品であるといえ、需要者は、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター用テープカートリッジであること及びテープの色、幅等の情報を基に、本件商品の中から特定の商品を購入すると考えられるので あり、これらの情報は、本件商品の箱やインターネット上の記載において 表示されている。 したがって、需要者である一般の消費者は、本願商標の形状からではなく、箱やシールに記載された文字、あるいはウェブサイト上に記載された説明の記載から、本件商品を他の商品と識別すると考えられる。 ウ本件調査の結果は、本願商標の形状が明らかな写真を示した上で回答さ せたところ、自由回答では、写真に撮影された商品を販売する企業名及び商品名の両方を誤った者が回答者全体の約6割を占め、選択肢に「テプラ(TEPRA)」を入れて商品名を選ばせる質問を含めても、自由回答による質問及び選択問題の全てを誤った者が全体の約半数にのぼった。 また、本件調査では、設問の中で、回答の理由を聴取し、その理由から 明らかにいい加減な回答(ノイズ)をしたと判別できる調査対象者を除いた集計も行ったが、ノイズを除くと、上記写真に撮影された商品を販売する企業名又は商品名のいずれか一方を正答した者は回答者全体の31. 0%にすぎず、選択肢を示して回答させる質問でも、ノイズを除くと、 た集計も行ったが、ノイズを除くと、上記写真に撮影された商品を販売する企業名又は商品名のいずれか一方を正答した者は回答者全体の31. 0%にすぎず、選択肢を示して回答させる質問でも、ノイズを除くと、上記写真から「テプラ(TEPRA)」の商品名を選択した者は回答者全体の 35.8%にすぎないという結果となった。 エ上記アからウまでの事情を総合すれば、本件商品が販売開始から約30年が経過していること及び販売地域が全国であることを考慮しても、本願商標が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったということはできないから、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至った と認めることはできず、この判断を覆すに足りる事情は認められない。 ⑷ 原告の主張に対する判断ア原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴及び⑵のとおり、本件商品が、全国で約30年以上にわたって同一形状で継続的に販売されており、原告カタログに本願商標の形状が掲載されていて、本願商標が需要者の目にと まる状況があった、電子文具市場における本件商品の売上高が全体の4 3%を超えており、需要者が売場や通信販売のウェブサイト等で本件商品を見かける機会が一定程度あり、本願商標が標識的に理解される機会があったと主張する。 しかし、本件商品が約30年にわたって全国で販売されていることを考慮しても、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったと認め られないことは、前記⑶エのとおりである。 原告カタログに本願商標の形状が掲載されていることは認められるが、商品名等が記載された箱も掲載されており、原告カタログに掲載された本願商標の形状のみによって、需要者が本件商品は原告の業務に係るものであることを認識するとは認められない。 本件商品は箱に入 商品名等が記載された箱も掲載されており、原告カタログに掲載された本願商標の形状のみによって、需要者が本件商品は原告の業務に係るものであることを認識するとは認められない。 本件商品は箱に入って販売されているから、需要者が販売店に置かれた本件商品を見ても本願商標の形状を認識するとはいえない。通信販売のウェブサイトでは、箱から出した本件商品の写真が掲載され、本願商標の形状が示されている可能性があるが、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター用テープカートリッジである旨の説明及びテープの幅や色等 に関する説明も掲載されていると推認され、需要者はこれらの説明を基に商品を購入すると考えられる。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑶のとおり、本件調査の結果は、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったことの証拠とな る旨主張する。 しかし、前記⑶ウのとおり、本件調査の結果は、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったことを示すものとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑷のとおり、本件商品を紹介した インターネット上の各種記事や動画が、本願商標が使用により自他商品識 別力を有するに至ったことの証拠になる旨主張する。 しかし、原告が指摘するインターネット上の記事や動画(甲131~146)は、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターとともに本件商品を紹介するもの、あるいは「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターの活用方法を説明する趣旨のものであると認められ、本件商品のみ を紹介する記事や動画ではない。 これらの記事等の中には、本件商品が本体のラベルプ は「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターの活用方法を説明する趣旨のものであると認められ、本件商品のみ を紹介する記事や動画ではない。 これらの記事等の中には、本件商品が本体のラベルプリンターに容易に装着することができる旨述べたものは存在するが(甲136、139)、これはラベルプリンター用テープカートリッジとしての本件商品が本体のラベルプリンターに合わせた形状となっていることを示すにすぎず、他に 上記記事等において本願商標の立体的形状の詳細や特徴について説明がされているとは認められない。 本件商品を紹介したインターネット上のブログの記事(甲145)が、本願商標の形状を執拗に見せているとは認められず、本願商標の形状の特徴を強調する内容の記述があるとも認められない。 そして、上記記事等において本願商標の形状が掲載又は撮影されていること自体をもって、取引者や需要者が本願商標の立体的形状を意識しつつ広告や紹介等を行っているとは認められず、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったと認めることもできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑹のとおり、本願商標の特徴を形成している三つの要素が同種の商品におけるデザイン手法の一つとして採用されているとの理由のみで原告の主張を退けており不当であるなどと主張する。 しかし、本件審決は、本願商標の要素がデザイン手法の一つとして採用 されていることのみを理由として、本願商標が商標法3条2項の要件を具 備しないと判断したものではない。 そして、前記⑶の説示の内容に照らせば、本願商標が同項の要件を具備しないと判断した本件審決に違法、不当な点は認められない。 したがって、原告の上記主張は採用 備しないと判断したものではない。そして、前記⑶の説示の内容に照らせば、本願商標が同項の要件を具備しないと判断した本件審決に違法、不当な点は認められない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 結論 以上のとおり、取消事由1及び2は、いずれも理由がない。よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 水野正則(別紙審決書写し省略)

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