- 1 -主文 本件訴えのうち,法務大臣に対し原告の帰化による日本国籍取得の義務づけを求める訴えを却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 原告が日本国籍を有することを確認する。 法務大臣は,原告に対し,原告の帰化を認め,日本国籍を付与せよ。 第2事案の概要本件は,朝鮮国籍を有する母と日本人父との間に出生した原告が,出生後に日本人父から認知を受け,父母が婚姻したため,出生又は準正により日本国籍を取得した旨主張して,被告に対し,原告が日本国籍を有することの確認を求めるとともに,帰化による日本国籍の付与の義務づけを求めた事案である。 争いのない事実(1)原告は昭和▲年▲月▲日A日本国籍以下AというとB朝,,(。 「」。)(鮮国籍。以下「B」という)との間に出生した。 。 (2)原告の出生当時,AとBは婚姻しておらず,原告はBの子(嫡出でない子)として出生届が提出された。 (3)A及びBは,京都市北区長に対し,昭和50年2月15日,婚姻届を提出し,また,Aは,京都市北区長に対し,前同日,原告の認知届を提出し,いずれも同日受理された。 本件の争点(1)争点1日本人父から出生した子である原告は「出生の時に父が日本国民である,とき(国籍法2条1号,昭和59年法律第45号による改正前の国籍法2」。 ,「」。),条1号以下単に国籍法2条1号というの要件を満たす者として- 2 -日本国籍を取得しうるか。 (2)争点2原告は,A及びBの婚姻並びにAの認知により,準正による日本国籍の取得を認める国籍法3条に基づき日本国籍を取得しうるか。 当事者の主張(1)争点1についてア原告の主張 。 (2)争点2原告は,A及びBの婚姻並びにAの認知により,準正による日本国籍の取得を認める国籍法3条に基づき日本国籍を取得しうるか。 当事者の主張(1)争点1についてア原告の主張原告は,出生後に日本人父から認知を受け,法律上の親子関係が成立したから,父が日本国民であるときに日本国籍の取得を認める国籍法2条1号により,原告は日本国籍を取得した。 被告は,原告が出生後に認知を受け,出生時には法律上の親子関係が成立していなかったことを問題とするが,胎児認知であれば日本国籍を取得できるのに,生後認知であれば日本国籍を取得できないのは著しく均衡を失し,法の下の平等を定めた憲法14条1項や,個人の尊厳及び幸福追求権を保障した憲法13条に反する。したがって,国籍法2条1号の解釈に当たっては,日本人父から認知があった以上,生後認知の場合も含めて法律上の親子関係が成立し「出生の時に父が日本国民であるとき」の要件,を満たすと解すべきである。 イ被告の主張原告は,日本人父と朝鮮国籍の母との間に嫡出でない子として出生したから「出生の時に父が日本国民であるとき(国籍法2条1号)に該当,」せず,同号により日本国籍を取得することができない。 原告は,胎児認知と生後認知で日本国籍の取得に差異が生じることは憲法14条1項や憲法13条に違反する旨主張するが,国籍法2条1号は,生来的な国籍の取得は,できる限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいという観点から,子の出生時に日本人の父と法律上の親子関係があることをもって我が国と密接な関係があるとして国籍を付与する規定- 3 -である。そして,出生前に日本人である父の認知を受けていない非嫡出子は,出生後に認知されるか否かが出生の時点では未確定であり,国籍の安定性を欠くから,国籍法2条1号が 国籍を付与する規定- 3 -である。そして,出生前に日本人である父の認知を受けていない非嫡出子は,出生後に認知されるか否かが出生の時点では未確定であり,国籍の安定性を欠くから,国籍法2条1号が生後認知だけでは日本国籍の生来的な,,取得を認めないとしていることには合理的な根拠があり憲法14条1項13条に反するものではない。 (2)争点2についてア原告の主張仮に,原告の出生による日本国籍の取得が認められないとしても,原告は,出生後に日本人父から認知を受け,父と母が婚姻したから,準正により日本国籍を取得した(国籍法3条1項。 )被告は,原告が国籍法3条1項所定の「20歳未満のもの」の要件を満たさないから,同項により日本国籍を取得することができない旨主張するが,準正による日本国籍取得の要件として「20歳未満のもの」という,要件を課すことには合理的な理由がなく,むしろ,同じく準正が成立したにもかかわらず,日本国籍を取得しうる者とそうでない者を不当に差別するものであるから,上記の年齢要件は憲法14条1項,13条に反し,無効と解すべきである。 イ被告の主張原告は,日本人父から認知を受け,かつ,父母が婚姻しているが,準正による国籍取得の制度(国籍法3条1項)は,昭和59年の国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律(昭和59年法律第45号)によって創設されたものである。そして,原告は,上記改正の時点において既に成人に達していたから,国籍法3条1項が定める要件の一つである「20歳未満のもの」に該当せず,同項の適用はない。 原告は,準正による国籍取得に年齢制限を要件としていることは憲法14条1項,13条に反する旨主張するが,国籍法3条1項が準正子の国籍取得を20歳未満の者に限定したのは,親子が同一の国籍であることが望- 4 -ましいの 取得に年齢制限を要件としていることは憲法14条1項,13条に反する旨主張するが,国籍法3条1項が準正子の国籍取得を20歳未満の者に限定したのは,親子が同一の国籍であることが望- 4 -ましいのは子が未成年の時期であること,20歳を超えると,一般的に外国人として社会生活を既に営み始めているという実情があるため,個別に帰化の手続によって判断をするのが適当であるという立法趣旨に基づくものであるから,合理的な根拠があり,憲法14条1項,13条に反するものではない。 第3当裁判所の判断 争点1(出生による日本国籍取得の可否)について(1)国籍法2条1号は,子の出生の時に父が日本国民であるとき,子は出生により日本国籍を取得する旨を定めるが,同条は,出生による日本国籍の取得をできる限り確定的に決定する観点から,出生の時を基準としたものと解,,(),されしかも国籍法の前身である旧国籍法明治32年法律第66号が(,)認知による日本国籍の取得を認める規定を置いていた同法5条3号6条のに対し,国籍法は,認知自体により日本国籍を取得しうる旨の規定を設けていないことに照らすと,同号により子が日本国籍を取得するためには,子の出生時において,当該子と日本国民たる父との間に法律上の親子関係が存在することを要すると解すべきである(最高裁平成9年10月17日判決・民集51巻9号3925頁参照。 )そうすると,子の出生後に日本人父が当該子を認知したとしても,出生時に日本国民たる父との間に親子関係が存在したと認めることができず,同号により子は日本国籍を取得することはできないところ,本件において,原告はBの嫡出でない子として出生し,原告の出生当時においては父たるAとの間に法律上の親子関係が成立していなかったから(上記第2の1(2) ,原告 本国籍を取得することはできないところ,本件において,原告はBの嫡出でない子として出生し,原告の出生当時においては父たるAとの間に法律上の親子関係が成立していなかったから(上記第2の1(2) ,原告)は同号により日本国籍を取得することができないというべきである。 (2)原告は,国籍法2条1号の適用上,日本人父が胎児認知をした場合であれば日本国籍を取得できるのに,出生後に認知をした場合には日本国籍を取得できないのは著しく均衡を失し,法の下の平等(憲法14条1項)に反する旨主張する。 - 5 -しかしながら,憲法10条は,日本国民たる要件は法律で定める旨を規定しているから,誰に対し,いかなる要件の下に日本国籍を付与するかは,立法府の合理的な裁量に委ねられていると解すべきであって,国籍法2条1号の適用上,胎児認知の場合と生後認知の場合に日本国籍の取得の可否において差異が生じたとしても,そのような取扱いに合理的な根拠がある限り,立法府に与えられた上記の合理的な裁量を逸脱したと評価することはできず,憲法14条1項が保障する法の下の平等に反しないと解すべきである(最高裁平成14年11月22日判決・判例時報1808号55頁参照。 )そして,上記(1)のとおり,国籍法2条1号は,単なる血統という生物学的要素だけではなく,日本人父との法律上の親子関係が成立したことをもって,我が国と密接な結びつきを有するに至ったと評価し,日本国籍の取得を認める趣旨の規定であり,しかも,この日本国籍取得の基準としては,出生による日本国籍の取得をできる限り確定的に決定する観点から,出生の時を国籍取得の基準としたものと解されるところ,出生時に日本人父の認知を受けていない子については,その後認知を受けるか否か,すなわち日本国籍を付与するに値する法律上の親子関係が成立するか ら,出生の時を国籍取得の基準としたものと解されるところ,出生時に日本人父の認知を受けていない子については,その後認知を受けるか否か,すなわち日本国籍を付与するに値する法律上の親子関係が成立するか否かが未確定であると評価せざるを得ないことに照らせば,同号が出生により日本国籍を取得することができる場合から生後認知を除外したことには合理的な根拠があるというべきであり,これをもって法の下の平等に反すると解することはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない(なお,原告は,憲法13条違反の主張もしているが,既に説示したところによれば,国籍法2条1号が生後認知を除外していることが憲法13条に反するものではないことは明らかである。 。) 争点2(準正による日本国籍取得の可否)について(1)国籍法3条は,父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であった者を除く)について,一定の。 要件の下で,届出による日本国籍取得を認めるところ,同条は,昭和59年- 6 -法律第45号により創設された規定であって,その施行日である昭和60年1月1日から適用されるから(昭和59年法律第45号附則1条,原告が)同条により日本国籍を取得するためには,原告が昭和60年1月1日において「20歳未満のもの」という上記要件を満たす必要がある。 ところで,上記第2の1(1)のとおり,原告は昭和38年3月3日に出生した者であるから,昭和60年1月1日において「20歳未満のもの」という要件を満たしておらず,したがって,国籍法3条により日本国籍を取得することができないというべきである。 (2)原告は,国籍法3条が「20歳未満のもの」という要件を課す点で,同,じく準正が成立したにもかかわらず,日本国籍を取得しうる者とそうでな り日本国籍を取得することができないというべきである。 (2)原告は,国籍法3条が「20歳未満のもの」という要件を課す点で,同,じく準正が成立したにもかかわらず,日本国籍を取得しうる者とそうでない者を不当に差別するものであるから,法の下の平等(憲法14条)に反する旨主張する。 しかしながら,前記1(2)のとおり,国籍法は,血統という生物学的要素だけではなく,当該子が我が国と密接な結びつきを有するに至ったと評価することができる場合に限り,日本国籍の取得を認める政策を採用していると解されるところ,国籍法3条が,父母との間に準正が成立した子のうち,20歳未満であるものに限って日本国籍の付与を認めたことも,被告が指摘するとおり,20歳を超えると,一般的に外国人として社会生活を既に営み始めているという実情があり,届出のみにより日本国籍を付与することを相当とする程の我が国との結合関係を認めることは困難であるという趣旨によるものと解されるのであって,このような取扱いには合理的な根拠があるというべきである。 そうすると,準正による日本国籍取得の要件として「20歳未満のもの」という要件を課す国籍法3条は,法の下の平等に反するものではないから,原告の上記主張は理由がない(なお,原告は,憲法13条違反の主張もしているが,既に説示したところによれば,上記の要件を課すことが憲法13条に反するものではないことは明らかである。 。)- 7 - 帰化による日本国籍取得の義務づけを求める請求の適法性について原告は,原告に対し帰化を許可し,原告に日本国籍を取得させることの義務づけを求めるところ,帰化の許可を得るためには,その申請をすることが必要(,),,であるから国籍法19条国籍法施行規則2条上記の義務付けの訴えはいわゆる申請型の義務付けの訴え との義務づけを求めるところ,帰化の許可を得るためには,その申請をすることが必要(,),,であるから国籍法19条国籍法施行規則2条上記の義務付けの訴えはいわゆる申請型の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号)に該当し,原告が帰化の申請をしたことを訴訟要件とするものと解すべきである(同法37条の3第1項。 )そして,本件全資料を総合しても,原告が上記帰化の申請をしたことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記訴えは不適法というべきである。 第4 結論 よって,本件訴えのうち,法務大臣に対し帰化による日本国籍取得の義務づけを求める訴えは不適法であるからこれを却下し,その余の請求は理由がないから棄却することとして,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官定塚誠裁判官中山雅之裁判官進藤壮一郎
▼ クリックして全文を表示