令和7年5月29日判決言渡 令和6年(ネ)第10067号不正競争行為差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第28384号) 口頭弁論終結日令和7年4月10日判決 控訴人 株式会社スノーピーク 同訴訟代理人弁護士 角谷直紀 墳崎隆之 大野徹 根鈴久志 成田凌 被控訴人 株式会社山谷産業 (以下「被控訴人会社」という。) 被控訴人 Y(以下「被控訴人Y」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士 鮫島正洋 高瀬亜富 高橋正憲 丸山真幸 上記両名訴訟代理人弁理士 片山修平 高林芳孝 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由【略語】 略語は、本判決で新たに定めるもののほか、原 文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由【略語】 略語は、本判決で新たに定めるもののほか、原判決の例による。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らは、原判決別紙被告商品目録記載の各商品を製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入してはならな い。 3 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、2億1507万3874円及びこれに対する令和2年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人らは、第2項記載の商品を廃棄せよ。 5 被控訴人らは、原判決別紙広告目録記載第1の内容の謝罪広告を、同記載第2の要領で掲載せよ。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、控訴人が、控訴人の販売する原告商品の形態が、控訴人の商品等表 示として周知性を獲得したところ、被控訴人らは、原告商品に類似する形態の被告商品を販売等し、混同を生じさせ、不競法2条1項1号に該当する行為をしている旨主張して、被控訴人らに対し、同法3条1項に基づき被告商品の製造、譲渡等の差止めを、同法3条2項に基づき被告製品の廃棄を、同法4条及び民法719条に基づく損害賠償として、2億1507万3874円及びこれ に対する令和2年12月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法 (平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払、不競法14条に基づく謝罪広告の掲載を求める事案である。 2 原審の判断及び控訴の提起等原審は、控訴人の請求を棄却した。その理由の要旨は、①控訴人は平成24 年5月30日に存 金の連帯支払、不競法14条に基づく謝罪広告の掲載を求める事案である。 2 原審の判断及び控訴の提起等原審は、控訴人の請求を棄却した。その理由の要旨は、①控訴人は平成24 年5月30日に存続期間が満了した原告意匠権を有していたところ、原告意匠権の存在により獲得された独占状態に基づいて獲得又は維持された特別顕著性及び周知性のみを根拠として、原告商品の形態について不競法2条1項1号所定の商品等表示としての保護を認めることは、意匠権の存続期間満了後も第三者による原告意匠の利用を妨げることになり相当でない、②原告商品の形態が 商品等表示に当たるというためには、原告意匠権に基づく原告商品の形態に係る独占状態の影響が払拭された後に、新たに原告商品の形態が出所を表示するものとして特別顕著かつ周知のものとなる必要があるところ、本件における上記独占状態が払拭された令和元年(原告商品と被告商品の販売数が肩を並べるようになり、他社の同種商品も年間約●●●●販売されていた時期)以降、原 告商品の形態が、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していると認めることはできず、原告商品の形態が出所を表示するものとして周知になったともいえないというものである。 これを不服として控訴人が控訴を提起した。 3 前提事実 原判決「事実及び理由」の第2の2(3頁~)のとおりであるから、これを引用する。 4 争点(1) 不競法2条1項1号の不正競争の成否(争点1)ア原告商品の形態が控訴人の周知な商品等表示であるか(争点1-1) イ原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示が 同一又は類似であるか(争点1-2)ウ被告商品の販売等が控訴人の商品と混同を生じさせる行為であるか(争点1- イ原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示が 同一又は類似であるか(争点1-2)ウ被告商品の販売等が控訴人の商品と混同を生じさせる行為であるか(争点1-3)エ被控訴人Yが被控訴人会社と共同して被告商品の販売等をしたか(争点1-4) (2) 差止め及び廃棄の必要性(争点2)(3) 故意又は過失の有無(争点3)(4) 損害の有無及びその額(争点4)(5) 謝罪広告の必要性(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 争点に関する当事者の主張は、以下のとおり当審における当事者の補充的主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」の第2の4(5頁~)のとおりであるから、これを引用する。ただし、後記1【控訴人の主張】(2)のとおり撤回された本件形態1に関する主張を除く。 1 争点1-1(原告商品の形態が控訴人の周知な商品等表示であるか)につ いて【控訴人の主張】(1) 意匠権の保護対象となっている商品の形態に関しては、意匠権に基づく商品形態に係る独占状態の影響が払拭されてから、新たに商品の形態が出所を表示するものとして特別顕著かつ周知のものとなる必要があるとの原判決の 解釈(以下「払拭必要説」という。)の不合理性についてア意匠権の存続期間満了後も当該期間中に意匠権者が自助努力で獲得・維持したブランド価値については、維持・促進を認めることが望ましい。 意匠法と別個の趣旨から、別個の要件をもって、不競法に基づき商品形態に一定の保護が与えられることは背理ではなく、そのことは、意匠権 の存続期間の満了後も立体商標による保護が与えられることが想定され ていることからも明らかである。 特許権(特に医薬品、医療機器等に関するもの)の は背理ではなく、そのことは、意匠権 の存続期間の満了後も立体商標による保護が与えられることが想定され ていることからも明らかである。 特許権(特に医薬品、医療機器等に関するもの)の場合と異なり、意匠権の場合は、広告宣伝しなければ販売数は伸びず、周知になることもない。 意匠法上の類否判断は対比観察を前提としているのに対し、不競法上 の類否判断は離隔観察を前提としているから、両者の保護範囲は異なっており、併存しても不合理ではない。 イ意匠権の存在を考慮するとしても、その影響の「払拭」を不競法2条1項1号の保護を受ける要件とすべきではない。 意匠登録をしたがために、意匠権の影響の「払拭」までは不競法上の保 護が得られないというのは背理であり、しかもその判断基準は不明確である。原判決のように、「払拭」のために競合他社が「実際に」同種商品を市場に展開することが必要であるというのでは、元意匠権者の立場は不安定となる。 存続期間が満了した意匠権を考慮するとしても、競合他社が同種商品 を市場に展開するのに「必要な」期間で足りる。そして、需要者は、特別顕著性及び周知性が意匠権存続期間内に獲得されたものか否かを区別しないのであるから、意匠権の存続期間内に獲得された特別顕著性及び周知性がこの期間経過後も維持されているのであれば、それも周知商品表示性の判断に考慮すべきである。 特許権の場合は、存続期間満了後に競合他社が市場に参入するには、製造ノウハウや許認可等の障壁があり相当の期間を要することもあり得るが、意匠権で保護される外観にはそのような事情はない。 本件では上記「必要な」期間は1年で十分である。 ウ原告商品の形態に係る商品表示性・周知性は、意匠権による独占 こともあり得るが、意匠権で保護される外観にはそのような事情はない。 本件では上記「必要な」期間は1年で十分である。 ウ原告商品の形態に係る商品表示性・周知性は、意匠権による独占状態以 外の控訴人の自助努力により獲得されたものである。 鍛造スチールを用いた表面にざらつきのあるペグは、平成7年から平成16年まで原告商品のみ存在したのであり、その後平成24年の原告意匠権存続期間満了まででも控訴人以外は●●しかない。控訴人はオートキャンプのパイオニアブランドであり内外のユーザーから熱狂的な支持を得ている。 原告意匠は模様、光沢、質感等は特定しないから、「鍛造スチールを用いた表面にざらつきのあるペグ」の形態の周知性は原告意匠権とは無関係である。 特許権で機能や効用が独占されている医薬品には代替性がないため、独占状態であることにより一定の販売数量が見込まれるが、意匠権で形 態が保護されているにペグは、同様の機能を有する別の形態のペグを容易に製造できる代替性があり、原告意匠権により原告意匠について独占状態にあったとしても、控訴人が広告宣伝等の自助努力をしなければ、原告商品が需要者に購入されることはない。 (2) 特別顕著性について ア原告商品の形態は次の特徴を有するものである。なお、これは、原審では予備的主張としていた本件形態2を基礎とするものであるが、本件特徴2⑤は、原審では「鍛造されたスチールが構成材料として選択されていることから、硬く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有することが外観的に看て取れる。」とあったのを修正したものである。原審に おける主位的主張としていた本件形態1に基づく主張は撤回する(他の争点についても同様)。 ①鍛造されたスチールが構 有することが外観的に看て取れる。」とあったのを修正したものである。原審に おける主位的主張としていた本件形態1に基づく主張は撤回する(他の争点についても同様)。 ①鍛造されたスチールが構成材料として選択されたテント・タープ用ペグであり、上方がやや太く、下方がそれに比べると細くなっている軸及び軸の上方側面に軸に沿って設けられたテント・タープのロープを 引っ掛けるための板状の掛具部から構成されている。 ②軸の頭部は、短い円柱形で軸の他の部分よりやや大きくなっている(以下「打撃部」という。)。 ③軸の上方には、ロゴが記載されている。 ④掛具部は、次の形態を有している(以下、次の特徴を見出し符号に従って「本件特徴2④a」などという。)。 a ペグを地面から引き抜く際にハンマーのカギ部を引っ掛けるための穴が設けられている。 b テント・タープのロープを引っ掛けるためのフックが設けられている。 c 穴は、打撃部の斜め下に位置し、軸とフックの隙間部分の直上に位 置する。また、穴は、掛具部の幅の半分以上を占め軸に接するように位置し、フックの上に及んでいる。 d フックの先端の長さは、掛具部全体の長さのほぼ半分か、それ以上であり(25〜40mm)、フックは軸と平行に直線的に伸びている。 e 掛具部の厚さは掛具部の設けられている部分の軸の直径よりやや薄 く、横幅は当該軸の直径の1.5倍以上である。 f フックと軸との間の隙間は、フックの横にある会社名(ブランド名)のロゴの記載がある箇所の軸の直径とほぼ同じ比率であり、フックの先端の直径はこれよりやや小さい。 g 掛具部の上部は、フック穴に沿うように丸みを帯びている。 ⑤鍛造スチールを構成素材に用いることで、硬く、重みがあり、金属の質感を有し であり、フックの先端の直径はこれよりやや小さい。 g 掛具部の上部は、フック穴に沿うように丸みを帯びている。 ⑤鍛造スチールを構成素材に用いることで、硬く、重みがあり、金属の質感を有し、かつ、表面にざらつきがあることが外観的に看て取れる。 ⑥上記①ないし⑤が組み合わされている。 イ本件形態2は、本件特徴2⑤により、表面にざらつきがあることで、溶解された鉄が研磨されずに製品になったような無骨なイメージを需要者 に与えること、本件特徴2①の軸部と本件特徴2④の掛具部により、真 直ぐに伸びるくちばし(掛具部のフック)、首(フックと平行に伸びる軸)、目(掛具部の穴)からなるフラミンゴの頭部のような印象を需要者に与えること、という2つの点が特に需要者の注意を惹く特徴的部分(以下「本件特徴的部分」という。)である。 本件特徴的部分を有する商品は、原告商品の販売開始時(平成7年)当 時はもちろん、控訴人主張の商品表示性獲得時である平成16年においても存在しない。 被告商品の販売が開始された平成25年の時点では本件同種商品1ないし3が存在するものの、原告商品の累計販売数の割合は●●●●●●であり、この時点でも原告商品の商品形態は、独自性を有していたもので ある。 (3) 周知性についてア控訴人主張の周知商品等表示性取得時である平成16年の時点について原判決「事実及び理由」の第2の4(1)(原告の主張)イ(ウ)(10頁)のとおり、原告商品の形態は、平成16年の時点において周知性を獲得 していた。 イ被告商品の販売が開始された平成25年の時点について前記(2)イのとおり平成25年の時点で本件同種商品1ないし3の市場占有率は数%であ おいて周知性を獲得 していた。 イ被告商品の販売が開始された平成25年の時点について前記(2)イのとおり平成25年の時点で本件同種商品1ないし3の市場占有率は数%である。 同時点で原告商品の品番R-102の取扱店舗数は292店舗、品番R -103の取扱店舗数は272店舗、品番R-104の取扱店舗数は182店舗、品番R-105の取扱店舗数は94店舗である。 原告商品は、原告意匠権の存続期間が満了した平成24年5月30日より後から平成25年の間に限っても、新聞、雑誌等で少なくとも8件取り上げられており、原告商品の広告宣伝は引き続き維持されている。 (4) 商品等表示性・周知性の希釈化について 商品等の表示が需要者にとって自他識別力(出所表示機能)のあるものとして周知になった場合に、一旦需要者に根付いた印象や記憶を払拭し、当該表示が商品等表示として機能しなくなるには、その印象や記憶が根付くために要した期間を上回るほどの長期間の年月にわたって異なる事実関係が継続することを要する。 周知商品等表示性を獲得した商品の販売が継続しており、かつ、その売上が継続又は増加している場合、周知商品等表示性が獲得された際と同程度かそれ以上に需要者の目に触れているということであり、そのような事情があるにもかかわらず出所表示機能が失われることは到底考えられない。このように解しなければ、模倣品の一定数の販売により周知商品等表示性を喪失さ せることになり、不当である。 また、周知商品等表示性を希釈化させる同種商品とは、形態が同一又はほぼ同一なものであり、相当程度に認知され、長期間市場に流通していることも要件となると解すべきである。類似にとどまる商品の場合は、 また、周知商品等表示性を希釈化させる同種商品とは、形態が同一又はほぼ同一なものであり、相当程度に認知され、長期間市場に流通していることも要件となると解すべきである。類似にとどまる商品の場合は、特徴の差異ゆえにオリジナルとは異なると認識されるものであるから周知商品等表示 性の希釈化の根拠となり得ないし、同一又はほぼ同一の形態を有する商品は侵害品であって、このようなものが市場に出現したという一事をもって希釈化を認めるべきではない。 被控訴人らが同種商品とするものは、販売本数が僅少であるか、販売中止となっているか、原告商品と形態が異なるかであり、希釈化の根拠とはな し得ない。なお、このような、わずかな本数しか販売されていない、形態の完全同一でない模倣品すなわち希釈化に寄与しない模倣品に対し、訴訟まで見据え多大なコストをかけて個別に警告を行うことは現実的な選択肢でないことも付言しておく。 【被控訴人らの主張】 (1) 原判決の払拭必要説が正当であることについて ア特許権や意匠権等については、権利の存続期間が満了した後は、何人もその創作等を自由に利用することができ、それによって社会一般の発展が築かれるようにすることが、制度の根幹となっている。したがって、このような登録型の権利による独占的使用やそれに基づく周知性をもって、直ちに商品等表示としての保護を認め、他者による自由な利用を安 易に制限することは許されない。 意匠権に基づく独占により獲得された周知性は、競業者との自由競争により獲得されたものとはいえない。意匠権の存続期間中に、権利者が当該知的財産権により保護される商品の販売等を行うことにより、当該商品の形態が周知性や自他商品識別力を取得することは当然である。その ような事実 のとはいえない。意匠権の存続期間中に、権利者が当該知的財産権により保護される商品の販売等を行うことにより、当該商品の形態が周知性や自他商品識別力を取得することは当然である。その ような事実だけをもって、意匠法等に定められた権利の存続期間を超えた半永久的な保護を与えることは、かえって事業者間の公正な競争を不当に制限する結果となる。 イ控訴人は、不競法による保護を検討するに当たって、仮に存続期間が満了した意匠権を考慮するとしても、その影響の払拭までは必要でなく、 競合他社が同種商品を市場に展開するために必要な期間(本件では1年)が経過すれば足りる旨主張するが、結局意匠権に基づく独占により獲得された周知性を基に競業者を排除しようとするものにすぎない。 ウ原告商品の市場占有率は、原告意匠権の存続期間中は●●●●●で推移していたが、存続期間が満了した平成24年以降、急激に低下を続け、 近年は●●●●●●●●●程度に落ち着いている。原告商品の市場占有率が、原告意匠権の存続期間の満了時点を境に大きく変動(低下)しているという事実は、原告商品の販売に関し、原告意匠権による独占状態の寄与(影響)が非常に大きかったことを端的に示すものである。 (2) 原告商品の形態の特別顕著性について ア原告商品が「鍛造スチールを用いることに由来」する特徴を備えている ことは、原告商品の外観のみから判別することはほぼ不可能である。 イ本件において問題となっているのは、原告意匠権の存続期間が平成24年に満了し、第三者の同種商品が市場に投入されて相当期間経過するなどして、意匠権に基づく控訴人商品の形態に係る独占状態の影響が払拭された後の時点における特別顕著性の有無であるから、それより前の平 成7年や平成 者の同種商品が市場に投入されて相当期間経過するなどして、意匠権に基づく控訴人商品の形態に係る独占状態の影響が払拭された後の時点における特別顕著性の有無であるから、それより前の平 成7年や平成16年の時点における特別顕著性の有無は、原告商品の商品等表示該当性と何ら関係がない。 また、平成25年の時点においては、原告商品と形態的特徴の大部分が共通する本件同種商品1ないし3が存在し、いずれの累計販売数も●●●を超えているから、遅くとも同時点以降において、原告商品が特別顕 著性を有していない(あるいは、失っている)ことは明らかである。 ウ商品の形態が商品の技術的な機能及び効用に由来する場合には、商品の形態が客観的に他の同種商品と異なる顕著な特徴を有していることはまれである。 商品の形態が商品の技術的な機能及び効用を実現するために他の形態を 選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合や、不可避的な構成とはいえないまでも、商品の用途に応じた望ましい性能の発揮、製造技術上の制約等の観点から必要適切な形態である場合には、独占適応性を欠くものとして商品の出所の表示に該当しない。 原告商品の形態も、鍛造スチール製に由来する特徴を含め、技術的機能 に由来する特徴が形態的要素の大半を占めており、商品表示性を有しない。 (3) 周知性についてア平成16年や平成25年の時点について原告商品の形態の周知性を論じる意味がないことは特別顕著性について前記(2)イで論じたとおりである。 また、これらの時点における周知性を問題とするとしても、平成11 年から平成16年までの約6年間で63万5133本という原告商品の販売数は、爆発的な販売実績というにはほど遠い。 また、これらの時点における周知性を問題とするとしても、平成11 年から平成16年までの約6年間で63万5133本という原告商品の販売数は、爆発的な販売実績というにはほど遠い。 イ加えて、平成17年以降は、世界的な著名アウトドアブランドであるコールマンより、「鍛造スチール」を含む原告商品の形態的特徴のほとんどを備えた本件同種商品1が発売され、その後継品(本件同種商品5) を含め、少ない年で●●●●●●●●●●●●●、多い年で●●●●●●●●●●●と、安定した販売数を記録し続けている。その結果、被控訴人ら側で実施したアンケート調査(乙78の1)では、原告商品の形態を見て「コールマン」と誤答した人数が、原告商品の出所を正答した人数を上回り、両者が逆転する結果となった。 (4) 商品等表示性・周知性の希釈化について通常、需要者は商品名やブランド名で商品の出所を識別するものであり、商品形態が出所識別機能を有するのはあくまで例外的なケースにすぎないところ、いったん出所識別機能を取得したケースでも、多数の同種商品が市場で販売される等した場合には、需要者はもはや商品形態のみではその出所を 識別することができなくなるのであって、そのためには必ずしも「長期間」を要するとは限らない。もっとも、本件は、本件同種商品1が平成17年に発売されたのを皮切りに、その後も控訴人の商品形態と特徴を共通にする同種商品が継続的に発売され、現在まで20年近くにわたり多数市場に出回ってきた事案であるから、仮に周知性の希釈化のために「長期間」が必要であ るとしても、当該期間は優に経過している。 2 争点1-2(原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示が同一又は類似であるか)について【 に「長期間」が必要であ るとしても、当該期間は優に経過している。 2 争点1-2(原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示が同一又は類似であるか)について【控訴人の主張】(1) 被告商品は、本件形態2の特徴を全て備え、したがって、1【控訴人の主 張】(2)イの本件特徴的部分も備えている。 (2) 被控訴人らは、被告商品と原告商品には後記相違点①ないし相違点⑤がある旨主張するが、これらは些末な相違点であり、離隔的観察に基づけば認識することができないか、又は共通する本件特徴的部分から与えられる強い印象を凌駕するものではなく、全体的な類似性を否定するに足りるものではない。 被控訴人らは、相違点⑤に関し、ペグのように大半が技術的機能に由来する形態であったり、それ故に競争上似ざるを得ない形態からなる商品については、需要者において形態のみで商品の出所を識別することは難しく、ロゴ部分の形態(デザイン)は自他商品を識別するために極めて重要な相違点となる旨主張するが、アウトドア用ペグは、原告商品発売時から現在に至るま で、多種多様なデザインのものが発売されているから(甲11)、大半が技術的機能に由来する形態であったり、それ故に競争上似ざるを得ない形態であるとはいえない。 【被控訴人らの主張】(1) 被告商品は、本件形態2の特徴のうち②ないし④及び⑥を備えていない。 カラーバリエーションの商品についてはコーティングされているため光沢があり、⑤も備えていない。 (2) 本件特徴的部分(フラミンゴの頭部のような形態)は本件同種商品全てが備えており、仮にこの点において原告商品と被告商品が共通するとしても、創作性のない部分が共通するということにすぎ い。 (2) 本件特徴的部分(フラミンゴの頭部のような形態)は本件同種商品全てが備えており、仮にこの点において原告商品と被告商品が共通するとしても、創作性のない部分が共通するということにすぎない。原告意匠の公開後に本 件特徴的部分を備えた意匠が多数登録されていることに鑑みても、本件特徴的部分がありふれたものにすぎないことが理解される。 (3) 被告商品は、原告商品とは以下の点で相違し、これは些末でない相違点であるから、原告商品と被告商品とは類似しない。 ア軸部の断面形状が楕円であること(相違点①)。これに伴う機能的な長 所は、需要者の間に浸透している。 イカラーバリエーションがあること(相違点②)。被告商品のカラーバリエーションは、商品の視認性を高めるための実用的な特徴であり、さらに他の同種商品にはない被告商品独自の特徴として、需要者の間に浸透している。 ウ被告商品は、ヘッド部分のうち打撃部が出っ張っておらず、フック部分 の上端と一体となったなだらかな湾曲面を形成しているのに対し、原告商品は打撃部が円柱状に出っ張っていること(相違点③)。打撃部が円柱状に出っ張っていることは、同種商品が備えるありふれた形状である。 被告商品のようにフック部分の上端と一体となったなだらかな湾曲面を形成しているものは同種商品の中にもほとんどなく、当該相違点は需要 者の注意を強く惹くものである。また、ペグの打撃部は、ハンマー等でペグを地面に打ち込む際に需要者が必ず視認する部分であるから、この点からも当該部分に係る形態上の相違点が需要者の美観に与える影響は大きい。 エ被告商品は、軸部のうち穴の真横に周方向のくびれが形成されているの に対し、原告商品には当該くびれがないこと( らも当該部分に係る形態上の相違点が需要者の美観に与える影響は大きい。 エ被告商品は、軸部のうち穴の真横に周方向のくびれが形成されているの に対し、原告商品には当該くびれがないこと(相違点④)。原告商品のように穴付近のくびれが存在しない形態は、同種商品のほぼ全てに備わっているありふれた形態であるのに対し、被告商品における穴付近のくびれは、同種商品のいずれにも備わっていない唯一無二の形態であって、当該相違点が需要者に与える印象は大きい。そして、相違点③、④が相 まって、被告商品は、穴の真横に位置する360°のくびれから上方に向かって広がる軸部がフック部分の上部と一体となることで、需要者に対し、スタイリッシュかつ丸みのある外観上の印象を与えている。このような相違点は、原告商品と被告商品を非類似とするに十分なものであり、この点は離隔的観察においても変わらない。 オ被告商品は、ヘッド部分に商品名を示す「ELLISSE」の刻印があ るのに対し、原告商品は会社名を示す「SNOWPEAK」の刻印があること(相違点⑤)。ペグのように大半が技術的機能に由来する形態であったり、それ故に競争上似ざるを得ない形態からなる商品については、需要者において形態のみで商品の出所を識別することは難しく、ロゴ部分の形態(デザイン)は自他商品を識別するために極めて重要となり、 需要者による着目度も高い。 第4 当裁判所の判断 1 争点1-1(原告商品の形態が控訴人の周知な商品等表示であるか)について当裁判所も、原告商品の形態が控訴人の周知な商品等表示であるとは認め られないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 (1) 商品の形態は、その機能や美観を発揮させるために採用されるもので、原則として の形態が控訴人の周知な商品等表示であるとは認め られないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 (1) 商品の形態は、その機能や美観を発揮させるために採用されるもので、原則として商品の出所を表示するものとしての性格を有しないが、①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有し(特別顕著性)、かつ、②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極 めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合(周知性)、商品の形態が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。 そして、商品の形態が不競法2条1項1号の周知な商品等表示に当たる として、これと同一又は類似の形態を使用する者に対し損害賠償請求又は行為の差止請求をするためには、損害賠償請求については請求の対象である行為がされた時(本件では平成29年11月10日から令和2年11月9日までの期間)、差止請求については口頭弁論終結時に、当該商品の形態が上記の特別顕著性及び周知性を備えていることを要する(最高裁昭和63年7月 19日第三小法廷判決・民集42巻6号489頁参照。以下、この判断の基 準となる時点を「基準時」という。)。 (2) 原告商品、被告商品及び同種商品の販売の状況ア原告商品原告商品は平成7年から販売を開始されたものであるが、販売数については、平成11年以降の証拠が提出されており(甲3)、令和4年まで の販売実績は別紙のとおりである。なお、令和2年から令和4年までについては、甲3記載の令和元年の販売実績に基づく推計値である。 これによれば、原告商品の販売数は、 3)、令和4年まで の販売実績は別紙のとおりである。なお、令和2年から令和4年までについては、甲3記載の令和元年の販売実績に基づく推計値である。 これによれば、原告商品の販売数は、平成11年は571本にとどまっていたものの、平成12年に10万本台、平成20年に20万本台、平成25年に30万本台となり、平成27年から平成30年の間に50万 本台から60万本台で推移した後、令和元年に82万2287本となっている。 イ被告商品被告商品の令和4年までの販売数は別紙のとおりである(乙2。令和2年から令和4年までについては、原告商品同様、令和元年の販売実績に 基づく推計値である。)。 これによれば、被告商品の販売数は、販売が開始された平成25年は2万8209本であるが、平成26年に10万本台、平成27年に20万本台、平成28年に40万本台、平成30年に50万本台、令和元年に77万3415本となっている。 ウ同種商品他社の同種商品は、原判決別紙同種商品一覧表のとおりである。 このうち、原告商品の形態が周知商品等表示に当たるか否か、すなわち、周知商品等表示性の取得又は希釈化について検討する際には、販売数が判明しているものを基本とすべきである(なお、本件同種商品22 の2は、本件同種商品22と同じ株式会社システムスタイルの製造販売 に係るものであるが、アマゾンのウェブサイト(乙172)によれば、本件同種商品22がスチール製であるのに対し、本件同種商品22の2がチタン製であるという違いがあることは分かるものの、同ウェブサイト及び他の証拠によっても本件同種商品22の2の詳しい形状が明らかでないので、考慮の対象からは除くものとする。)。そうすると、 2の2がチタン製であるという違いがあることは分かるものの、同ウェブサイト及び他の証拠によっても本件同種商品22の2の詳しい形状が明らかでないので、考慮の対象からは除くものとする。)。そうすると、検討 の対象は、本件同種商品1ないし5、7、12、13、15、19、20、22、26、27、36、39(以下、これらを合わせて「本件同種商品」という。)となり、その販売数は別紙のとおりである。 控訴人は、特に周知商品等表示性の希釈化を検討する場面において、考慮すべき同種商品は、形態が同一又はほぼ同一なものであり、相当程 度に認知され、長期間市場に流通しているものに限られるべきである旨主張するが、商品形態の出所識別力を判断する際に考慮する商品を「形態が同一又はほぼ同一」のものに限る理由はないし、販売数が判明しているにもかかわらず検討から排除することは、市場の実情から乖離することになるので、控訴人の主張は採用できない。 エ市場占有率について原告商品の市場占有率は別紙のとおりである。 原告意匠権の存続期間が満了した平成24年まではほぼ独占状態だが(平成11年から平成16年までは●●●●であり、その後も●●●を超える。)、上記存続期間の満了後は市場そのものの拡大とともに市場 占有率が低下し、被告商品の販売が開始された平成25年には●●●あったものの、控訴人の損害賠償請求の基準時が含まれる平成29年には●●●となり、令和元年以降は●●●を割り込んでおり、●●●●から●●●●である。 (3) 検討 ア(ア) 控訴人は、本件特徴2⑤により、表面にざらつきがあることで、溶 解された鉄が研磨されずに製品になったような無骨なイメージを需要者に与えること(以下「本件特徴的 討 ア(ア) 控訴人は、本件特徴2⑤により、表面にざらつきがあることで、溶 解された鉄が研磨されずに製品になったような無骨なイメージを需要者に与えること(以下「本件特徴的部分Ⅰ」という。)、本件特徴2①の軸部と本件特徴2④の掛具部により、真直ぐに伸びるくちばし(掛具部のフック)、首(フックと平行に伸びる軸)、目(掛具部の穴)からなるフラミンゴの頭部のような印象を需要者に与えること (以下「本件特徴的部分Ⅱ」という。)、という2つの点を本件特徴的部分である旨主張する。 しかし、これらの形態は、(イ)以下のとおり、いずれも技術的合理性又は商品の機能に由来するものであり、かつ、乙第39、40号証、控訴人及び被控訴人の申立てに基づく各検証の結果によれば、控訴人 の各請求の基準時の前後に販売されていたものである本件同種商品(別紙参照)の多くに全部又は一部みられるところであって、他の商品に見られない顕著な特徴を有する形態ということはできない。 (イ) 控訴人は、本件特徴的部分Ⅰに関わる本件特徴2⑤において、原告商品の特徴として鍛造スチールを構成素材に用いることを掲げる。鍛 造とは、金属加工の塑性加工法の一種で、金属をハンマー等で叩いて変形させる方法であり(乙29)、加工時の温度によって、熱間鍛造、冷間鍛造などに分類されるところ(乙184)、鍛造スチールのペグは、頑丈なので、石混じり等の固い地面において打ち込みやすく、このような地面に使用する用途に向くものとして需要者が選択すること を欲する材料といえる(乙99、189)。しかして、ペグの構成材料として鍛造スチールを用いることは、商品の用途を考慮した技術的合理性に基づくものであり、控訴人において独占できることではないのである を欲する材料といえる(乙99、189)。しかして、ペグの構成材料として鍛造スチールを用いることは、商品の用途を考慮した技術的合理性に基づくものであり、控訴人において独占できることではないのであるから、構成材料として鍛造スチールを用いることに由来するペグの形態上の属性は、原告商品の特別顕著性を基礎付けるものでは ない。 本件特徴的部分Ⅰに係る表面のざらつきについては、熱間鍛造において、熱した鉄を鍛造する際に、表面に薄い酸化鉄の層ができ、これが部分的に剥がれたり剥がれなかったりすることで、再加熱と加工を繰り返すうちに表面に独特の凸凹模様ができるものである(甲232)。表面のざらつきの点を含め、本件特徴2⑤は、いずれも、構成 材料として鍛造スチールを用いることに由来するものであって、原告商品の特別堅調性を基礎付けるものではないというべきである。現に、本件特徴2⑤は、本件同種商品1ないし5、12、27、36、39がこれを備えている。 なお、鍛造スチールではないが、表面のざらつきという点について は、本件同種商品13(スチール溶接)、15(ステンレス鍛造)、22(スチール溶接)、26(クロームモリブデン鋼鍛造)も備えている。 (ウ) 本件特徴的部分Ⅱは、本件特徴2①及び④が関わるものであるが、本件特徴2①のうち鍛造スチールを用いることに由来するペグの形態 上の属性が原告商品の特別顕著性を基礎付けるものでないことは前記(イ)のとおりである。また、上方がやや太く、下方がそれに比べると細くなっている軸及び軸の上方側面に軸に沿って設けられたテント・タープのロープを引っ掛けるための板状の掛具部から構成されているという点は、ペグという商品の機能に由来するもので、本件同種製品の 全てがこれを備えてい の上方側面に軸に沿って設けられたテント・タープのロープを引っ掛けるための板状の掛具部から構成されているという点は、ペグという商品の機能に由来するもので、本件同種製品の 全てがこれを備えている。 (エ) 次に掛具部の形態に係る本件特徴2④について検討すると次のとおりである。 本件特徴2④a及びbについてみると、地面から抜きやすくするために、ハンマーを引っ掛ける穴と、ロープを引っ掛けるためのフック を別に設けることは技術的に限られた選択肢にすぎず、現に、本件同 種商品の全てがこれを備えている。 本件特徴2④cについてみると、穴が打撃部の斜め下でフックの上部に位置することは、商品の機能上及び金型やコストの面から合理的であり、本件同種商品2から4まで、7、12、13、15、19、20、22、27、36がこれを備えており、このうち本件同種商品 2、22を除くものは、穴が軸とフックの隙間部分の真上にあり、掛具部分の幅の半分以上を占め、軸に接するという原告商品と同様の特徴を備えている。 本件特徴2④dについてみると、ロープを引っ掛けるために掛具の中である程度大きな割合を占めるフックは必要であるし、フックと軸 を平行にすることは金型やコストの面から合理的であり、本件同種商品26、39を除く本件同種商品がこれを備えている。 本件特徴2④e、fは、軸が主、掛具が従(打撃を受ける軸は強度が必須であるが掛具は薄くても構わない)という金属製ペグの技術的特徴から導かれるものであり、特に、本件特徴2④e については、フッ ク部分が叩いて引き延ばされることによって形成されることから薄くなり、また、軽量化の観点からも望ましいことによるものであると解される。本件特徴2④eについては本件同種商品3、7を除く本件同 ク部分が叩いて引き延ばされることによって形成されることから薄くなり、また、軽量化の観点からも望ましいことによるものであると解される。本件特徴2④eについては本件同種商品3、7を除く本件同種商品がこれを備えている。本件特徴2④fについては本件同種商品2、7、26を除く本件同種商品が備えており、本件同種商品7は、 本件特徴2③を備えない(軸の上方にロゴが記載されていない)ため本件特徴2④fを文字通りには備えないが、「フックの横にある会社名(ブランド名)のロゴの記載がある箇所の軸」を「軸の上方」と読み替えれば、本件特徴2④fを備えている。 本件特徴2④gについては、金属製製品において人に痛みを及ぼさ ないよう丸みを持たせるという基本的な要請によるものと解され、本 件同種商品3、36を除く本件同種商品がこれを備えている。 (オ) その他、本件特徴2②(軸の頭部が短い円柱形で軸の他の部分より大きくなっていること)は、ペグをハンマーで叩きやすいようにした結果であることが容易に理解でき、本件同種商品2、7、12、13、15、19、20、22がこれを備えている。 本件特徴2③(軸の上方にロゴが記載されていること)も、製品のどこかにロゴを記載することは通常のことで、軸の上方に記載されているという点を含めて本件同種商品7、13、22を除く本件同種商品がこれを備えている。 (カ) 以上検討したところによれば、控訴人主張の本件特徴的部分は、技 術的合理性又は商品の機能に由来するものであり、基準時において、本件特徴的部分の各要素を備える同種商品が多数に及んでいることから、本件特徴的部分が他の商品に見られない顕著な特徴に当たるものということはできず、控訴人が主張する本件形態2の他の特徴も同様であ 、本件特徴的部分の各要素を備える同種商品が多数に及んでいることから、本件特徴的部分が他の商品に見られない顕著な特徴に当たるものということはできず、控訴人が主張する本件形態2の他の特徴も同様であって、原告商品の形態が基準時において特別顕著性を有するとは 認められない。 イそうすると、既に控訴人の請求には理由がないのであるが、念のため、周知性についても検討する。 (ア) 原告商品の市場占有率は、原告意匠権が存続期間の満了により消滅した後急激に低下し、平成29年には●●●、令和元年以降は●●● ●●●●●●●で推移し、原告商品と形態的特徴を共通とする同種商品が展開されていることは、前記(2)のとおりである。 (イ) 原告商品の宣伝広告については、個人のブログを除き、原告商品が掲載されている雑誌(甲9、21、22、24~27、31、181~185)、カタログ(甲15~18、20)、ウェブ記事(甲29) を対象として検討すべきところ、いずれも、形態よりは、固い地面で も食い込むという機能面に重点が置かれている。 (ウ) 控訴人が実施したアンケートの結果(甲122)a 概要控訴人は、株式会社日本能率協会総合研究所に依頼して、原告商品の形態が控訴人の商品を示すものとして認識されているかどうかを 確認する目的で、アンケート方式による調査を実施した。 b 調査期間令和3年5月27日から同年6月2日までc 調査対象及び回答人数自身が使用する目的でテント、タープ又はペグのいずれかを所有 している全国の20歳から65歳の男女を対象とし、1008人から有効回答を得た。 d 質問内容控訴人商品の外観が写った写真を呈示した上で、どこのブランドの商品だと思うかを、自由回答式 している全国の20歳から65歳の男女を対象とし、1008人から有効回答を得た。 d 質問内容控訴人商品の外観が写った写真を呈示した上で、どこのブランドの商品だと思うかを、自由回答式(純粋想起)及び選択式(助成想起) で尋ねた。 e 結果(a) 原告商品の外観が写った写真から、メーカー名又はブランド名を自由回答式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 なお、「コールマン」(アウトドア用品のメーカーとして世界的 に有名。乙45)は本件同種商品1、5の、「ロゴス」は本件同種商品15の、「ホールアース」は本件同種商品27の、「ハイランダー」は本件同種商品2の、「キャプテンスタッグ」は本件同種商品4のブランドである。また、「ユージャック」は販売数不明であるが(そのため、特別顕著性の検討に関しては考慮して いない。)、本件同種商品14のブランドである(乙39、4 0)。 控訴人又は原告商品 9.3%コールマン 7.8%被控訴人会社又は被告商品 1.2%モンベル 2.1% ロゴス 1.3%その他計 6.4%わからない 71.8%同様に選択式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 控訴人又は原告商品 12.2% ユージャック 2.1%コールマン 9.6%ホールアース 4.5%ハイランダー 4.8%被控訴人会社又は被告商品 3.4% キャプテンスタッグ 4.7%その他のブランド 5.5%わからない 53.4%(b) ①最近3年以内に、テント、タープ及びペグのいず 被告商品 3.4% キャプテンスタッグ 4.7%その他のブランド 5.5%わからない 53.4%(b) ①最近3年以内に、テント、タープ及びペグのいずれかを購入した、かつ、②キャンプ、登山のどちらかに1年に1回以上行くと の二つの条件を満たす者に対し、原告商品の外観が写った写真から、メーカー名又はブランド名を自由回答式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 控訴人又は原告商品 14.9%コールマン 7.8% 被控訴人会社又は被告商品 1.2% モンベル 2.1%ロゴス 1.3%その他計 6.4%わからない 61.4%同様に選択式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 控訴人又は原告商品 20.4%ユージャック 4.7%コールマン 11.7%ホールアース 8.9%ハイランダー 8.6% 被控訴人会社又は被告商品 6.0%キャプテンスタッグ 7.6%その他のブランド 6.3%わからない 25.8%(エ) このように、原告商品の市場占有率が低下するとともに、これと形 態的特徴を共通とする同種商品が展開されていること(前記(ア))、原告商品の宣伝広告も形態よりも機能に重点が置かれていること(前記(イ))、アンケートの結果によれば、原告商品の形態を見て、一般ユーザーにおける回答では控訴人としたものとコールマンとしたものが拮抗し、回答者を①最近3年以内に、テント、タープ及びペグのいずれ かを購入した、かつ、②キャンプ、登山の 品の形態を見て、一般ユーザーにおける回答では控訴人としたものとコールマンとしたものが拮抗し、回答者を①最近3年以内に、テント、タープ及びペグのいずれ かを購入した、かつ、②キャンプ、登山のどちらかに1年に1回以上行くとの二つの条件を満たす者に絞り込んでも、正答率は向上するものの、「控訴人又は原告商品」と答えた者の半数以上の者が「コールマン」と答えている上、全ての問いで「わからない」が第1位を占めていること(前記(ウ))が認められる。 以上から、原告商品のような実用品では、ユーザーは商品形態とい うよりは、性能、ブランド名等で商品を選択していることが理解でき、原告商品の形態的特徴は同種商品の中で埋没しているもので、需要者において本件特徴的部分を有する原告商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっているとはいえないというべきである。 (4) まとめ 以上のとおりであって、控訴人主張の原告商品の形態については、基準時において、周知な商品等表示に該当していたものと認めることはできない。 2 小括よって、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人の請求は理由がない。 第5 結論以上によれば、控訴人の被控訴人らに対する請求は理由がないからいずれも棄却すべきところ、これと結論を同じくする原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 増田稔 裁判官 長裁判官 増田稔 裁判官 本吉弘行 裁判官 岩井直幸 別紙原告商品及び被告商品の販売実績 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 ~ R1 R2 R3 R4 原告商品 571 103999 108633 135060 136362 150508 163838 184088 180079 221912 243229 250308 238068 270813 374716 399272 548696 615810 588580 691851 822287 822287 822287 822287 被告商品 28209 101031 234017 408220 424942 590698 773415 773415 773415 773415 同種商品の販売実績番号通称 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 ~ R1 R2 R3 R4 コールマン ハイランダー ビジョンピークス キャプテンスタッグ コールマン ディーオーディー クイックキャンプ キャンピングムーン ロゴス コールマン ハイランダー ビジョンピークス キャプテンスタッグ コールマン ディーオーディー クイックキャンプ キャンピングムーン ロゴス キャンピングムーン ブッシュクラフト M-STYLEペグ ogawa鍛造 ホールアース i-WANO タラスブルバ
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