平成18(行コ)2 漁業不許可処分等取消,損害賠償請求各控訴事件(原審・徳島地方裁判所 平成16年(行ウ)第19号(A事件),同年(ワ)第350号(B事件))

裁判年月日・裁判所
平成18年8月29日 高松高等裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-34236.txt

判決文本文20,937 文字)

- 1 -主文 原判決主文第1項を取り消し,控訴人の被控訴人県知事に対する小型機船底びき網漁業の起業認可申請の不認可処分取消しの訴えを却下する。 原判決のうち控訴人の被控訴人県知事に対する小型機船底びき網漁業の許可申請の不許可処分取消請求に関する部分を取り消し,同部分に係る控訴人の訴えを却下する。 控訴人のその余の控訴をいずれも棄却する。 訴訟費用は,控訴人と被控訴人県知事との関係では,第1,2審とも全部控訴人の負担とし,控訴人と被控訴人県との関係では,当審で生じた費用を控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 控訴人(1)原判決のうち控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)被控訴人県知事が控訴人に対して平成16年6月28日付けでした小型機船底びき網漁業の許可申請の不許可処分を取り消す。 (3)被控訴人県知事が控訴人に対して平成16年6月28日付けでした漁船登録申請の不許可処分を取り消す。 (4)被控訴人県は,控訴人に対し,3544万4095円及びこれに対する平成16年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5)(4)につき仮執行宣言 被控訴人県知事(1)原判決のうち被控訴人県知事敗訴部分を取り消す。 (2)ア前項の部分に係る控訴人の訴えを却下する。 イ前項の部分に係る控訴人の請求を棄却する。 - 2 -第2事案の概要 本件は,控訴人が,被控訴人県知事から小型機船底びき網漁業(以下「底びき網漁業」という。)の許可を受けていた者より船舶等を譲り受け,平成11年に,被控訴人県知事に対して底びき網漁業の許可(承継許可)を申請したのに対し,被控訴人県知事から上記申請を不許可とする処分を受け,平成16年にも,上記と同様の許可,上記船舶の動力漁船登録の許可及び底びき 控訴人県知事に対して底びき網漁業の許可(承継許可)を申請したのに対し,被控訴人県知事から上記申請を不許可とする処分を受け,平成16年にも,上記と同様の許可,上記船舶の動力漁船登録の許可及び底びき網漁業の起業認可をそれぞれ申請したのに対し,被控訴人県知事から,上記各申請をいずれも不許可ないし不認可とする処分を受けたことについて,平成11年及び平成16年の各不許可等処分が被控訴人県知事における不合理な取扱いの方針等に基づくものであるなど,漁業法や規則の解釈や適用を誤ったものであるから,いずれも違法である,などと主張し,平成16年の上記各不許可等処分の取消しを求める(A事件)とともに,被控訴人県知事による違法な平成11年及び平成16年の各不許可等処分の結果,上記漁業に従事することができないことなどにより損害を被ったと主張し,被控訴人県に対して,国家賠償法1条1項に基づき,損害(合計3544万4095円)の賠償を求めた(B事件)事案である。これに対し,被控訴人県知事は,控訴人の上記承継不許可処分及び起業不認可処分の各取消しを求める訴えが審査請求前置に違反する不適法な訴えであるとして,その却下を求めるとともに,被控訴人らは,上記各不許可等処分が適法であるとして,控訴人の請求を棄却するよう求めて争っている。原審が,上記起業不認可処分の取消しを認め,その余の控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人と被控訴人県知事が各敗訴部分を不服としてそれぞれ控訴した。 本件における関連法令等,争いのない事実等,争点及び争点についての当事者の主張は,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点についての当審における当事者の付加的主張は次のとおりである。 - 3 -(1)本件起業不認可処分取消 び理由」中の「第2事案の概要」1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点についての当審における当事者の付加的主張は次のとおりである。 - 3 -(1)本件起業不認可処分取消しの訴えについての審査請求前置違反(被控訴人県知事)本件先行不許可処分が,控訴人の承継許可申請につき,aの副申書の添付がなく,かつ,海区委員会も現時点においては不許可を相当とする旨の意見であったことから,これを不許可としたものであるのに対し,本件起業不認可処分は,直接には隻数の枠外であること及び海区委員会の意見を根拠とするものであって,本件先行不許可処分と本件不認可処分とは必ずしも処分の理由が同一であるとはいえないし,両処分の対象は「承継」許可申請と「起業」認可申請という異質のものである上,両処分の間には約4年9か月の間隔があり,農林水産大臣が同じ対応をするとは限らない。 また,審査請求後3か月以内に裁決がされない場合には処分取消しの訴えを提起することができるのであるから,それによって認可に係る有効期間の残存期間を経過することにはならない。原判決のように行政事件訴訟法8条2項3号にいう裁決を経ないことについての「正当な理由」の解釈を緩やかなものにしてしまうと,漁業法が特に審査請求前置を定めた趣旨が没却され,審査請求制度の意義を失わせることになり,不当である。 (控訴人)審査請求前置が採られているのは,司法審査の前に当該処分の当否につき行政庁に見直しの機会を与えて,速やかな権利救済を図るためであるところ,漁業法上の許認可処分には期限付きのものも多く,取消訴訟による救済では訴訟係属中に期限が経過してしまいかねないことから,漁業法が定める審査請求前置については,原処分の明白な誤りにつき行政庁内部で早期に是正を図ることのできるというメリットがある 取消訴訟による救済では訴訟係属中に期限が経過してしまいかねないことから,漁業法が定める審査請求前置については,原処分の明白な誤りにつき行政庁内部で早期に是正を図ることのできるというメリットがあるといえるけれども,本件では,本件先行承継許可申請をしたものの放置され,前訴取消訴訟の提起が遅れた結果,同訴訟係属中にb漁業許可の有効期間が経過したことにより,前訴取消訴訟に係る訴えは訴えの利益を欠くものとして却下され- 4 -て終了してしまったという経緯がある上,本件訴訟についても,平成16年6月28日付けでされた本件各不許可処分の取消しを求める本件訴訟を同年8月2日に提起し,その後迅速審理に努めてきたものの,許可の有効期間はわずか1年を残すのみであって,その間に本件訴訟による終局的解決が図られるかどうかさえ微妙であるし,仮に間に合ったとしても,実際に控訴人が操業することができる期間は幾ばくもないというのが実情である。この点を考慮するだけでも,行政事件訴訟法8条2項3号にいう裁決を経ないことについての「正当な理由」があることは明白である。 (2)本件先行不許可処分の違法性(被控訴人ら)漁業法は,漁業の特殊性にかんがみ,漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構を設けて,自主的な漁業調整を期待しているところ,各地方に置かれる海区委員会は,知事の諮問・建議機関であるばかりでなく,自ら裁定,指示,認定等を行う決定機関としての機能をも有し,広範かつ強力な権限を付与された行政委員会であって,その漁業調整に関する意見は最大限尊重されなければならない。他方,漁協は,漁民の自主的組織として水産資源の管理をはじめ,漁民の事業や生活に必要な物資の供給,漁場の利用に関する施設や漁業に必要な設備の設置等の事業を行うとともに,一定の水面における水産動植物の 方,漁協は,漁民の自主的組織として水産資源の管理をはじめ,漁民の事業や生活に必要な物資の供給,漁場の利用に関する施設や漁業に必要な設備の設置等の事業を行うとともに,一定の水面における水産動植物の採捕の方法や期間等の事項を適切に管理する任務を担うものであり,海区委員会が行う漁業調整には漁協の協力が不可欠である。漁業法は,漁業権漁業や入漁権漁業,農林水産大臣の許可による指定漁業や大臣承認漁業,知事許可漁業について定めるほか,これら以外の漁業について,自由漁業を除いて,一般的に禁止しているところ,本件で問題となっている底びき網漁業についても,水産資源保護を含めた漁業調整上の必要性から一般的に禁止されており,漁業調整上問題がないと被控訴人県知事が判断したときに初めて許可がされる仕組みになってい- 5 -る。そして,被控訴人県知事は,漁業法及び水産資源保護法の定めに基づいて県調整規則及び旧県取扱方針を定め,α海域を操業区域とする底びき網漁業に係る承継許可については,aの副申書の添付を要件としていたところ,他の府県においても,漁業調整上の必要から,漁協組合員であることを許可の要件としているか,仮にそうでないとしても,漁協組合員でない者に対する許可は予定していないか,少なくとも許可するにつき極めて慎重な姿勢をとっているのが実情である。徳島県がaの副申書を添付させることとしているのは,漁業調整上の見地から,操業海域における全底びき網漁業者が加入する広域団体であり,長年にわたって底びき網漁業に関する漁業調整上の問題に継続的に取り組んできた実績を有するaの方が,地域団体であり,自由漁業を含むあらゆる漁業種類の漁民から成る漁協よりも,柔軟で的確な判断ができると考えたからにほかならず,漁民の自主的な団体に漁業調整を期待する漁業法の趣旨に照らしても適法 方が,地域団体であり,自由漁業を含むあらゆる漁業種類の漁民から成る漁協よりも,柔軟で的確な判断ができると考えたからにほかならず,漁民の自主的な団体に漁業調整を期待する漁業法の趣旨に照らしても適法かつ合理的な制度である。 控訴人の本件先行許可申請について,aが,控訴人が漁協組合員でないからという理由で副申書の発行を拒み,海区委員会が,現時点では不許可相当という意見を述べたのは,他府県におけると同様に,漁協組合員でない者に対して許可をすることが相当でないとの考えに基づくものと考えられる。漁業調整の問題は,水産資源の保護育成や減船事業の推進への協力,法令や自主規制の遵守,他の漁業者との円滑な関係の維持等の様々な考慮事項を含むものであって,そうした実情について最もよく知る立場にあるのは,底びき網漁業においてはaであるから,そのaが副申書発行を拒否しており,法律上重要な調整機構として構成されている海区委員会も同意見である以上,被控訴人県知事としては,漁業調整上何の問題もないことが明らかであるのに,aの判断に欠陥があるか,海区委員会の意見に偏りが見られるなどの特別の状況が存する場合に限って,許可申請について個- 6 -別具体的な検討を行った上で許否の判断をすべきものである。本件先行許可申請に関してはこうした特別の状況は存しておらず,被控訴人県知事がした本件先行不許可処分は適法である。 (控訴人)漁業法は,大別して漁業権漁業と許可漁業と自由漁業に分け,漁業権は漁協に与えるものとして漁協組合員でなければ漁業権漁業に従事することができないこととし,漁協が管理支配することが不適切であるか,又はそこまでの必要がないものについて,農林水産大臣又は知事の許可制として漁業調整を図ることとしている。底びき網漁業は,本来重要な国民の食用水産物確保のために長 が管理支配することが不適切であるか,又はそこまでの必要がないものについて,農林水産大臣又は知事の許可制として漁業調整を図ることとしている。底びき網漁業は,本来重要な国民の食用水産物確保のために長年にわたって発展してきたものであり,無制限の自由漁業とすることは妥当でなく,漁協あるいはその組合員にのみ漁業権を認めることも適切でないとして,知事の許可制としたものであるから,知事の許可処分は恣意的なものであってはならず,不許可とすべき事由が存しない限り,許可しなければならないものである。 本件では,aが副申書を発行しなかったのは,漁協組合員でない者の加盟を認めておらず,控訴人が協会員でないからというにすぎず,そこでは,漁業法や県調整規則上の要件具備の有無についての審査,検討は全くされていないにもかかわらず,aの副申書の添付がないことをもって不許可とするのは,被控訴人県知事に付託された許可に際しての審査・判断義務を放棄したに等しい。 また,他府県においても,漁協組合員であることを許可要件とするところは少数であり,ましてやaのような任意団体への加盟やその副申書ないし同意を許可要件とするところは皆無であるし,漁協組合員であるかどうかを勘案するということとこれを許可要件とすることとは大いに異なるものである。漁協組合員でない者からの申請が許可されたことがないというのは,たまたま漁協組合員でない者からの申請がなかったからにすぎない- 7 -にもかかわらず,漁協組合員でなければ申請が許可されないというのは論理のすり替えである。 さらに,許可漁業である底びき網漁業について,漁協が資源保護や漁業調整上コントロールをしているという実体はないし,漁協にそうした役割を担わせるようなことをすれば,漁協管理の漁業権漁業と区別して知事所管の許可漁業とした意味がなくな 業について,漁協が資源保護や漁業調整上コントロールをしているという実体はないし,漁協にそうした役割を担わせるようなことをすれば,漁協管理の漁業権漁業と区別して知事所管の許可漁業とした意味がなくなってしまう。漁協組合員であることを要件としている他府県においても,その趣旨とするところは,漁業経験や操業能力,漁業に従事する意思に関する審査を漁協組合員たることで代替しようとしているにすぎない。 県調整規則上,被控訴人県知事は許認可をしないときは海区委員会の意見を聴くと定められているにすぎず,海区委員会の同意は許可の要件ではない上,本件先行許可申請に対する海区委員会の意見は,aの副申書不添付という書類上の不備を指摘しているだけであって,漁業調整上の問題があるとは言っていないのである。 本件先行許可申請については,許可隻数が国の定める範囲内にあり,その許可が従来の底びき網漁業者の権利を承継するものであって新たに増加させるものではないのであるから,申請者が底びき網漁業の経験を持ち,操業する意思と能力を有しているかどうかが審査の対象となるものであって,その点についてすら個別審理を行うことができないとする被控訴人らの主張は無責任なものである。 (3)本件承継不許可処分及び本件登録不許可処分の違法性(控訴人)本件承継許可申請については,控訴人が承継したb漁業許可の有効期間でなければ許可申請をすることができないと限定的に解すべき必然性はなく,本件のように,b漁業許可の有効期間内に本件先行不許可処分の取消しのための手続を終了させることができずにその期間が経過してしまった- 8 -場合には,改めて期間経過後も許可申請をすることができるものと解すべきである。 本件登録不許可処分についても,上記と同様の理由により取消しを免れない上,本件起業認可申請は認め てしまった- 8 -場合には,改めて期間経過後も許可申請をすることができるものと解すべきである。 本件登録不許可処分についても,上記と同様の理由により取消しを免れない上,本件起業認可申請は認められるべきものであるから,これに並行して本件漁船登録申請も認められるべきである。そうでなければ,仮に本件起業認可申請が認められるべきものとされても,新たに漁船登録申請をしなければならず,それがまた不許可とされればその処分を争ううちに起業認可に係る許可の有効期間が経過してしまうことが明らかだからである。 (被控訴人ら)いずれも争う。 (4)本件起業不認可処分の適法性(被控訴人ら)本件起業不認可処分は,「資源管理上,減船の取組みを促進する目的で,県調整規則8条2項の知事が定める許可申請の期間の開始日の前日現在において,許可又は起業の認可がされていない許可枠については,これを許可しない。」との新県取扱方針に基づくものである。 被控訴人県知事は,徳島県における底びき網漁業において,水産行政における重要な方針として,長年にわたって減船を行ってきている。βにおけるものとαにおけるものとでは,使用船舶につき前者が6.5トン未満で後者が13.5トン未満となっているほか,底びき網の構造,規模や漁獲能力の点でも大きな差異があり,特に減船の必要があるのはαにおける底びき網漁業であるとの認識に立っている。資源保護及び漁業調整の必要から,特にαにおける底びき網漁業については,徳島県が外郭団体を通じて減船のための補助を行い,aの会員に減船積立金の自主的支出を求めて,「とも補償」による減船事業を推進してきている。平成元年以降のα海域における底びき網漁業の許可隻数の推移は原判決別紙6「最高限度・許可- 9 -数一覧表」のとおりであり,平成元年の281隻から220隻ま 補償」による減船事業を推進してきている。平成元年以降のα海域における底びき網漁業の許可隻数の推移は原判決別紙6「最高限度・許可- 9 -数一覧表」のとおりであり,平成元年の281隻から220隻まで減少させたが,これは上記「とも補償」による減船事業の成果である。それでもなお底びき網漁業の漁獲対象である底魚資源に対する漁獲圧力(隻数)が高過ぎるため,今後とも稚魚放流等の資源育成や底魚資源の自然再生産の保護を進める一方で,減船事業を続けていかなければならないと考えている。漁業資源が少なくなればなるほど効率的な漁獲能力の向上が目指され,それがまた資源減少を招くという悪循環を断つ必要があるところ,その要請は比較的大型の船舶を使用するα海域において顕著であるからである。 他方で,「とも補償」の補償金を上回る金額で誰にでも自由に漁船の漁業許可付き売買が行われたときに,これを許可しなければならないとすると,減船に向けた水産行政の遂行は不可能となってしまう。 過去の底びき網漁業の許認可に際しては,現に許可又は認可がされている数を増やすことのないような取扱いをしてきたものであって,このことは旧県取扱方針の当時においても同じであり,新県取扱方針ではこれを明文化したにすぎない。このような行政の裁量に基づいて作成された新県取扱方針が適法なものであることは疑いがなく,本件起業不認可処分もこれに基づいてされたものであるから,本件先行不許可処分の当否とは直接の関係はないし,本件先行不許可処分の適否を本件起業不認可処分の適否に関連させて判断することは誤りである。 (控訴人)底びき網漁業の許可隻数については,全般的見地から各府県別に国が定めているところ,県の許可方針もそれに基づくものであることが求められる。漁業法66条1項による農水省告示の徳島県の許可最高限度数は, 底びき網漁業の許可隻数については,全般的見地から各府県別に国が定めているところ,県の許可方針もそれに基づくものであることが求められる。漁業法66条1項による農水省告示の徳島県の許可最高限度数は,昭和39年まで493であったものが,昭和44年には771と急増しており,その後は平成7年632,平成15年632と高水準を保ったまま推移してきており,やみくもな減船至上主義でなかったことは明らかである。 - 10 -漁業法による漁業調整はあくまでも漁業の生産力を高め,その発展に資することを目的とするものであるところ,指定漁業等の超大型漁業は別として,底びき網漁業は,漁業従事者の高齢化,後継者不足により自然に減船化傾向にあって,衰退の方向をたどっており,このまま推移すれば,県下の底びき網漁業自体崩壊の危険性すらあるにもかかわらず,減船至上主義に立つ新県取扱方針にはおよそ合理的根拠がないことは明らかである。しかも,本件では,被控訴人県知事が違法に本件先行不許可処分をしたがために,形式上許可申請の期間の開始日の前日現在の許可隻数を1隻上回ることになるから不認可にするというにすぎないものであって,本件起業不認可処分の違法は明白である。 (5)損害賠償(控訴人)旧県取扱方針も新県取扱方針も法令としての効力を有するものではない上,許可条件として申請人が漁協組合員であることを要件とはしていないにもかかわらず,被控訴人県知事は,本件先行承継許可申請及び本件起業認可申請に対し,aの副申書が添付されていないという形式的要件の不充足のみをもって,これらを不許可ないし不認可とする処分を行ったものであるところ,こうした取扱いは,任意団体にすぎないaの同意,実質的には漁協組合員であることを絶対的な要件とするものであって,上位規範である漁業法や県調整規則に違反す し不認可とする処分を行ったものであるところ,こうした取扱いは,任意団体にすぎないaの同意,実質的には漁協組合員であることを絶対的な要件とするものであって,上位規範である漁業法や県調整規則に違反するものである。もともと底びき網漁業という熟練を要する漁業の性格上,漁協組合員である者が許可申請をするのが一般的であったことからくる反射的効果として,従来漁協組合員でない者に対して許可した例がなかったというにとどまるにもかかわらず(他府県でも漁業組合員であることを許可条件としているところは少ない。),本件先行承継許可申請及び本件起業認可申請に際してaの副申書を添付することができない控訴人側の事情を個別具体的に斟酌することなく,上記- 11 -副申書の添付がないことのみを理由にして本件先行不許可処分及び本件不認可処分をした被控訴人県知事には過失がある。とりわけ,本件不認可処分については,新県取扱方針に特段の合理性がないにもかかわらず,これを機械的に適用し,これまでの被控訴人県知事側の非違を一切考慮することなく行われたものであって,被控訴人県知事に重大な過失があることは明らかである。 (被控訴人県)争う。 第3当裁判所の判断 本案前の争点(審査請求前置違反)について(1)漁業法135条の2第1項は,被控訴人県知事が同法66条1項等(同法65条1項の規定に基づく農林水産省令及び規則を含む。)によってした本件承継不許可処分及び本件起業不認可処分については,審査請求に対する裁決を経た後でなければその処分の取消しの訴えを提起することができないとしているところ,控訴人は,裁決を経ないで上記各不許可等処分の各取消しの訴えを提起し,審査請求期間である上記各不許可等処分の通知が送達された日である平成16年7月1日の翌日から60日以内(行政不服審査法 るところ,控訴人は,裁決を経ないで上記各不許可等処分の各取消しの訴えを提起し,審査請求期間である上記各不許可等処分の通知が送達された日である平成16年7月1日の翌日から60日以内(行政不服審査法14条1項)に審査請求をしなかったのであるから,審査請求前置の要件(行政事件訴訟法8条1項ただし書)を充足していない。 (2)前記争いのない事実等によれば,本件承継不許可処分は,本件承継許可申請が元の許可(b漁業許可)の有効期間中にされたものでなく,県調整規則28条1項所定の要件に適合しないことを理由としてされたものである。これに対し,控訴人は,本件訴えにおいて,本件先行不許可処分について,先行審査請求及び前訴取消訴訟におけると同様に,本件先行許可申請にaの副申書が添付されていないことを理由に不許可としたことが違法であるとの主張を前提として,違法な本件先行不許可処分を受けなけれ- 12 -ば,b漁業許可について承継許可を得た上,平成13年6月に許可を得ることができたはずであるのに,前訴取消訴訟係属中であったために許可申請をしなかったものであるから,本件承継許可申請は,b漁業許可の有効期間経過後にされたものであるものの,県調整規則28条1項に基づく許可の申請として有効であり,県調整規則23条1項各号所定の事由にも該当しないから,本件承継不許可処分が違法であると主張している。しかしながら,本件先行不許可処分に対する先行審査請求が長期間放置されたという経緯が存することなどから,控訴人において,審査請求の手続を経ていたのでは,前訴取消訴訟と同様に,許可の有効期間を経過してしまう可能性が高いと判断したとしても,本件承継不許可処分の処分理由は本件先行不許可処分の処分理由と同じものとはいえないのであるから,控訴人が裁決を経ないで本件承継不許可処分の取 有効期間を経過してしまう可能性が高いと判断したとしても,本件承継不許可処分の処分理由は本件先行不許可処分の処分理由と同じものとはいえないのであるから,控訴人が裁決を経ないで本件承継不許可処分の取消しの訴えを提起したことについては,行政事件訴訟法8条2項3号の裁決を経ないことにつき「正当な理由がある」とは認められないといわなければならない。 (3)前記争いのない事実等によれば,本件起業不認可処分は,新県取扱方針に基づき,漁業調整又は資源の保護培養上,知事が定める許可申請期間の開始日の前日現在において,許可又は起業の認可がされていない許可枠についてはこれを許可しないこととし,今回のα海域を操業海域とする許可申請数が平成16年5月31日現在の許可数を1件上回ったため,申請の優先順位につき現に当該漁業の許可を受けている者を優先すべきものとする県調整規則26条2項の趣旨に従い,本件起業認可申請を認可しないこととしたものであるところ,控訴人は,本件訴えにおいて,本件先行不許可処分について,先行審査請求及び前訴取消訴訟におけると同様に,本件先行許可申請にaの副申書が添付されていないことを理由に不許可としたことが違法であるとの主張を前提として,本件起業不認可処分が違法であると主張している。 - 13 -起業の認可は,新たに漁業の許可を受けようとする者であって現に船舶等を使用する権利を有しないものが,あらかじめ起業につき知事の認可を受けるものであるところ(県調整規則21条1項),知事は,県調整規則23条1項各号の一に該当する場合には起業の認可をしないとされているのであるから,起業の認可を受けた者がその起業の認可に基づいて許可の申請をした場合において,申請の内容が認可を受けた内容と同一であるときは,特段の事情がない限り,知事から漁業の許可を受ける れているのであるから,起業の認可を受けた者がその起業の認可に基づいて許可の申請をした場合において,申請の内容が認可を受けた内容と同一であるときは,特段の事情がない限り,知事から漁業の許可を受けることが可能となるものである(県調整規則22条1項)。起業の認可と承継許可とは別個の処分である上,起業認可の申請は,新たに漁業の許可を受けようとする者が許可申請の前提として行うものであって,申請に対する被控訴人県知事の審査・判断における考慮要素等の点で承継許可申請とは同一には論じられない面を有していることは否めないところであって,上記のような本件起業不認可処分の処分理由にもかんがみれば,前記のとおり本件先行不許可処分に対する先行審査請求が長期間放置されたという経緯が存することや,本件起業認可申請に係る漁業の許可の有効期間が最長で3年間に限られていることから,控訴人において,審査請求の手続を経ていたのでは,前訴取消訴訟と同様に,許可の有効期間を経過してしまう可能性が高いと判断したとしても,控訴人が,本件起業不認可処分に対する審査請求を行うことなく,裁決を経ないでその取消しを求める訴えを提起したことについては,行政事件訴訟法8条2項3号の裁決を経ないことにつき「正当な理由がある」とは認められないといわなければならない。 (4)以上によれば,控訴人が裁決を経ないで本件承継不許可処分の取消しの訴え及び本件起業不認可処分の取消しの訴えを提起したことには正当な理由があるということはできないから,これらの訴えは,いずれも審査請求前置に反する不適法なものとして却下を免れないものというべきである。 本件先行不許可処分の違法性について- 14 -この点に関する当裁判所の判断は,以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の を免れないものというべきである。 本件先行不許可処分の違法性について- 14 -この点に関する当裁判所の判断は,以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決28頁16行目の「各10」を「各甲10」に改め,32頁17行目の「行ってきた」の次に「(B乙15ないし17,20ないし24,26ないし33,37ないし55)」を加え,同20行目の「ころ」を「ころまでに」に改め,同行目の「至った」の次に「(B乙25,35,36)」を加える。 (2)原判決36頁9行目から39頁7行目までを次のとおり改める。 「漁業法や県調整規則は,申請者が漁協ほか漁業者の団体の構成員であることを許可漁業である底びき網漁業の許可の要件として明示していないけれども,前記のようなaの性質,組織形態,活動実績等に照らせば,徳島県において,底びき網漁業の許可の申請をした者がaの会員であることやaの副申書を得ていることをもって,漁業調整等において支障がないと判断することには合理性があり,換言すれば,許可申請に際してaの副申書の添付がないことは,漁業調整上の問題が存することを疑わせるに足りる事情であるということができる。しかしながら,底びき網漁業の承継許可等の申請をした者について,従前から漁業に従事して,漁協やaに加入の申込みをするなどしたにもかかわらず,申請者に必ずしも責任があるとはいえない事由等により加入が認められず,そのためにaの副申書の発行を受けることができなかったと認められる場合にまで,旧県取扱方針4(2)①の適用につき一切の例外を認めず,aの副申書の添付がされていないことのみを理由に,上記申請について,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当すると判断して不許可処 合にまで,旧県取扱方針4(2)①の適用につき一切の例外を認めず,aの副申書の添付がされていないことのみを理由に,上記申請について,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当すると判断して不許可処分をすることは不合理である。被控訴人県知事は,底びき網漁業の承継許可等の申請について,aの副申書が添付されていない場合であっても,申請- 15 -者から,aの副申書の発行を受けられない理由や漁協やaに加入することができない事情についての具体的説明やこれを疎明する資料の提出を求めるなどした上,その内容等に照らして必要があると認めるときには,申請者,漁協,a等に対する確認や調査を行って,県調整規則23条1項3号に該当するか否かについて判断すべきである。 前記(1)の認定事実によれば,控訴人は,被控訴人県知事に対し,県調整規則28条1項に基づき,底びき網漁業の承継許可申請である本件先行承継許可申請をした際,控訴人がb漁業許可を承継することを承諾する旨のb名義の承継承諾書や,控訴人が底びき網漁業の漁船に1年間乗り子として乗っていたことを証明する旨のc名義の漁業従事証明書等を添付しただけで,aの副申書を添付しなかったため,被控訴人県の担当職員によりこれを添付するよう要請され,aの副申書を取得しようと試みたものの,漁協の組合員でないためにこれを得ることができず,その旨の書面を提出したものである。 本来水産業協同組合法18条1項1号所定の要件を充足する漁民は,漁協の組合員たる資格を有するものとされ,その者が漁協に加入しようとするときは,漁協は,正当な理由なく,その加入を拒んではならない旨規定されているところ(同法25条),前記(1)の認定事実によれば,控訴人が平成元年に控訴人の父が死亡した後d漁協の組合員名義を控訴人に変更することを求めたものの結論を その加入を拒んではならない旨規定されているところ(同法25条),前記(1)の認定事実によれば,控訴人が平成元年に控訴人の父が死亡した後d漁協の組合員名義を控訴人に変更することを求めたものの結論を留保され,平成2年6月に控訴人の母がd漁協の持分権を控訴人に譲渡して組合員名義の変更を求めたのに対して拒絶された背景には,控訴人の父とd漁協との対立関係及びこれに関連した控訴人とd漁協の理事等との間の口論等のトラブルが存在しており,これがd漁協が控訴人の加入を拒む実質的理由であったものと推認されるけれども,こうしたd漁協の加入拒絶に正当な理由があったといえるかどうかは判然としないところである。また,証拠(A及- 16 -びBの各甲7,10)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,前訴取消訴訟係属中に,aに対し,漁業調整又は水産資源の保護培養に関する必要な措置を受け入れることを申し出て,aへの入会及び副申書の発行を申し入れたが,aは,控訴人との協議を行うことなく,控訴人が漁協組合員でないことのみを理由として,控訴人の上記申入れを拒絶したことが認められる。 前記のとおり,本件先行許可申請の際に,控訴人がaの副申書を添付せず,漁協の組合員でないためにこれを得ることができなかった旨の書面を提出したにとどまっていたとはいえ,上記の事情にもかんがみれば,被控訴人県の担当職員において,控訴人に対し,更に漁協やaに加入することができない具体的な事情についての説明等を求め,その内容に照らして必要があるときには,d漁協やa等に対する確認や調査を行った上で,県調整規則23条1項3号に該当するか否かについて判断すべきものであったといわなければならない。しかしながら,本件先行承継許可申請を取り扱った被控訴人県の担当職員においては,旧県取扱方針4(2)①について例外 3条1項3号に該当するか否かについて判断すべきものであったといわなければならない。しかしながら,本件先行承継許可申請を取り扱った被控訴人県の担当職員においては,旧県取扱方針4(2)①について例外を認めるべき場合があり得ることまでは念頭になく,控訴人からの具体的な事情についての説明等を受けたり,必要に応じて漁協やa等に対して確認や調査を行うこともなかったものである。また,被控訴人県知事が本件先行不許可処分をした際の海区委員会の意見は,本件先行承継許可申請について不許可処分が相当であるとしているものの,控訴人がaの副申書を添付するという手続的な要件を充たしていないことだけを理由としており,それ以外に漁業調整等の観点から具体的に不許可とすべき事由があるとまでは言明していない。さらに,本件先行不許可処分に対する控訴人の先行審査請求の申請書に,水産資源の保護培養等のために漁業法令を遵守する旨の記載があることからすれば(A及びBの各甲17),本件先行承継許可申請の際にも,控訴人にお- 17 -いて,被控訴人県の担当職員からの求めがあれば,底びき網漁業を営むに当たってa等の方針に従った行動をとる旨誓約する書面を提出したであろうと推測される。 これらの事情にかんがみれば,被控訴人県知事において,漁業法や県調整規則によって委ねられた許可の権限を適正に行使せず,必要な手続を尽くすことなく,aの副申書が添付されていないことのみをもって直ちに県調整規則23条1項3号所定の事由があると即断して,本件先行不許可処分をするに至ったものというべきであるから,本件先行不許可処分については,被控訴人県知事において漁業法により委ねられた裁量権を逸脱又は濫用した違法があると認めるのが相当である。」 本件承継不許可処分の違法性についてこの点に関する当裁判所の判断は 許可処分については,被控訴人県知事において漁業法により委ねられた裁量権を逸脱又は濫用した違法があると認めるのが相当である。」 本件承継不許可処分の違法性についてこの点に関する当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決41頁5行目の「ほか,」から8行目の「できる」までを削る。 本件起業不認可処分の違法性について(1)本件起業不認可処分に至る経緯等に関する事実関係については,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の4(1)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決43頁15行目の「求め」の次に「(A及びBの各乙5)」を加え,同23行目から末行までを次のとおり改める。 「キ昭和58年11月に設置された徳島県沿岸漁業等振興対策懇談会の中間報告において,底びき網漁業については,漁獲努力量が資源量に比べて過大であると考えられ,資源の動向に即応して,漁獲努力量を合理的に見直す中で,その縮減を検討する必要があるとの認識が示され,とりわけα海域における底びき網漁業については,漁獲努力量縮減の必要性についての業界の一応の合意がされていることから,今後- 18 -縮減方法等についての意見の集約を急ぐとともに,漁獲量の縮減を行うべきであるとの提言がされていた(A乙13)。 クα海域における底びき網漁業の年間漁獲量(推定値)は,平成元年・4824トン,平成4年・3835トン,平成7年・2683トンと急激な減少を見せた後,平成8年・2968トン,平成9年・2786トン,平成10年・2926トン,平成11年・3098トン,平成12年・2801トン,平成13年・3020トンと若干持ち直してはいるものの,3000トン前後ないしこれをやや下回 ,平成9年・2786トン,平成10年・2926トン,平成11年・3098トン,平成12年・2801トン,平成13年・3020トンと若干持ち直してはいるものの,3000トン前後ないしこれをやや下回る水準で推移している(A乙12)。被控訴人県知事は,β海域におけるものに比べてより大型の13.5トン未満までの船舶を使用することが認められているα海域における底びき網漁業につき,水産資源の保護及び漁業調整上の観点から,減船の必要性が大きいとして,被控訴人県が外郭団体を通じて減船のための補助を行うとともに,a所属の漁民による減船補償のための積立金からの支出を行い,いわゆるとも補償により減船事業を推進してきている(A及びBの各甲10,B乙32ないし34)。その結果,徳島県における底びき網漁業についての平成年代以降の漁業法66条3項に基づく農林水産大臣の定める船舶の隻数の最高限度及び被控訴人県知事による許可(起業の認可を含む。)数については,原判決別紙6最高限度・許可数一覧表記載のとおりであって,平成元年から平成16年までの間に上記許可数は281から220へと減少しているところ,α海域における底びき網漁業につき上記許可数の推移を船舶のトン数別に見ると,平成元年と平成16年とでは,10トン以上13.5トン未満のものについては同数のままで,5トン以上10トン未満のものが4,5トン未満のものが57,それぞれ減少となっている(A乙8,9)。」(2)漁業法66条1項に規定する漁業及び県調整規則7条の規定による漁- 19 -業の許可は,法令によって一般的に禁止されている行為につき,特定の場合にその禁止を解除して適法にその行為をすることができるようにする行政行為(講学上の「許可」)であり,県調整規則21条に規定する起業の認可は,新たに漁業の許可を受け 止されている行為につき,特定の場合にその禁止を解除して適法にその行為をすることができるようにする行政行為(講学上の「許可」)であり,県調整規則21条に規定する起業の認可は,新たに漁業の許可を受けようとする者であって現に船舶等を使用する権利を有しないものが,許可申請の前提としてあらかじめ知事の認可を受けるものであるところ,県調整規則は,申請者が24条に規定する適格性を有する者でない場合,その申請に係る漁業と同種の漁業の許可の不当な集中に至る虞がある場合及び漁業調整又は水産資源の保護培養上必要があると認める場合には,知事は漁業の許可又は起業の認可をしないものとしているだけでなく(23条1項),知事が水産資源の保護培養その他漁業調整のため必要があると認めるときは,漁業の許可若しくは起業の認可につき,その内容を変更し,制限若しくは条件を付け,取り消し又は操業を停止させることがあると定めており(32条1項),被控訴人県知事に対し,水産資源の保護培養及び漁業調整上の必要性にかんがみて,漁業の許可ないし起業の認可に関して広範な権限を与えている。 前記(1)の認定事実によれば,被控訴人県知事は,底びき網漁業の許可ないし起業の認可の申請について,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当するか否かの判断基準として,平成16年5月6日に改定した新県取扱方針を定めており,本件起業認可申請について,新県取扱方針4-1等に従って,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当することを理由に不認可とする本件起業不認可処分をしたものである。既に説示したとおり,被控訴人県知事は,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当するか否かの判断をするに当たって裁量権を有しており,底びき網漁業の許可ないし起業の認可の申請に対する不許可ないし不認可処分については,被控訴人県 知事は,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当するか否かの判断をするに当たって裁量権を有しており,底びき網漁業の許可ないし起業の認可の申請に対する不許可ないし不認可処分については,被控訴人県知事が漁業法により委ねられた裁量権を逸脱又は濫用したと評価される場合に違法となるというべきである。 - 20 -(3)底びき網漁業については,農林水産大臣によって漁業法66条3項に基づき原判決別紙6最高限度・許可数一覧表の最高限度欄記載のとおり許可ないし起業の認可をすることができる船舶の隻数の最高限度が定められ,被控訴人県知事が上記最高限度を超えて許可ないし起業の認可をすることができないこととして(漁業法66条5項),水産資源の保護や漁業調整が図られている。そして,前記(1)の認定事実によれば,被控訴人県知事は,底びき網漁業について,従前から減船の方針を採用しており,底びき網漁業の許可ないし起業の認可において,前回の許可数から廃業等により減少した許可件数分について新規に許可ないし起業の認可をせず,いったん減少した許可数を増加させない取扱いを採用し,水産資源の保護や漁業調整を図ってきていたところ,平成16年5月,海区委員会との協議を経て,旧県取扱方針を改定して新県取扱方針を定め,その中で,被控訴人県知事が県調整規則8条2項に基づき定める許可の申請期間の開始日の前日現在において許可又は起業の認可がされていない許可枠については許可しない旨(4-1)を明定したものである。このような新県取扱方針の定めは,減少した許可数分を増加させないという従前から採用されていた取扱いについて,許可の申請期間の開始日の前日現在の許可数を基準とする点で,その趣旨を徹底し,これを明確化したものということができる。被控訴人県知事が底びき網漁業について減船の方針を採用する ていた取扱いについて,許可の申請期間の開始日の前日現在の許可数を基準とする点で,その趣旨を徹底し,これを明確化したものということができる。被控訴人県知事が底びき網漁業について減船の方針を採用すること自体は,水産資源の保護や漁業調整上の観点から,不合理であるとはいえず,上記の減船の方針に基づく具体的な取扱いとして,いったん減少した許可数を増加させないことにすることについても,これによって底びき網漁業への新規参入が事実上不可能となるものの,減船の方針を推進するに当たって当面の間はやむを得ない措置であるということができるのであって,徳島県内の底びき網漁業の許可ないし起業の認可数が農林水産大臣によって定められた最高限度数を下回っていること等の事情があるとしても,上記新県- 21 -取扱方針4-1等が,漁業法等に照らして不合理であるということはできない。なお,前記のとおり,新県取扱方針が従前から採用されていた取扱いを明確化したものであると認められる以上,新県取扱方針が控訴人の本件起業認可申請の前月に定められたものであるからといって,控訴人の主張するように,本件起業認可申請を不認可とすることを目的として定められたものと認めることはできない。 そうすると,被控訴人県知事が,α海域における底びき網漁業につき減船の必要性が大きいとして,被控訴人県から外郭団体を通じて減船のための補助を行うなどして減船事業を推進する一方で,従来から,底びき網漁業の許可ないし起業の認可において,前回の許可数から廃業等により減少した許可件数分について新規に許可ないし起業の認可をせず,いったん減少した許可数を増加させない取扱いを採用していることには,水産資源の保護及び漁業調整上の必要性及び合理性があるというべきであって,上記取扱いを明確化した新県取扱方針についてもその合 せず,いったん減少した許可数を増加させない取扱いを採用していることには,水産資源の保護及び漁業調整上の必要性及び合理性があるというべきであって,上記取扱いを明確化した新県取扱方針についてもその合理性を肯認することができる。なお,α海域における底びき網漁業につき,減船の方針が採られてきており,減船に伴って原判決別紙6の農林水産大臣が定める船舶隻数の最高限度と実際の許可数との間の乖離が大きくなっているものの,水産資源の保護及び漁業調整上の観点に基づく減船の必要性が乏しくなっているとは認められない。 前記(1)の認定事実によれば,本件においては,許可申請期間の開始日の前日である平成16年5月31日現在において,α海域を操業海域とする底びき網漁業の許可数(起業認可数を含む。)は220であったのに対し,上記の底びき網漁業の許可ないし起業の認可の申請数は本件起業認可申請を含めて221であり,上記許可の申請期間の開始日の前日現在の許可数よりも1件多くなったため,被控訴人県知事は,新県取扱方針に従って,上記の底びき網漁業の許可ないし起業の認可の申請数(本件起業認可- 22 -申請を含む。)のうち1件について,県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当するものとして,不許可ないし不認可とすることにし,その際に,新県取扱方針には,上記の場合にどの申請を不許可ないし不認可にするかについて定めがないことから,実績者(現に当該漁業の許可又は起業の認可を受けている者)を優先する旨の県調整規則26条2項等に基づき,本件起業認可申請以外の申請が実績者からの申請であったため,本件起業認可申請を不認可とすることにし,県調整規則23条4項に基づき,海区委員会からも,本件起業認可申請について県調整規則23条1項3号に基づき認可しないものとする被控訴人県知事との協議の ため,本件起業認可申請を不認可とすることにし,県調整規則23条4項に基づき,海区委員会からも,本件起業認可申請について県調整規則23条1項3号に基づき認可しないものとする被控訴人県知事との協議のとおりで異議がない旨の意見を徴した上で,本件起業不認可処分をしたものである。このように県調整規則及び新県取扱方針に従ってされた本件起業不認可処分は,特段の事情がない限り,違法となるものではないというべきである。 確かに,前記2に説示したとおり,本件先行承継不許可処分は,aの副申書が添付されていないことのみをもって直ちに県調整規則23条1項3号所定の事由があると即断してされたものであり,被控訴人県知事が必要な手続を尽くすことなく不許可処分をした点において,裁量権の逸脱又は濫用があるために違法とされるべきものであるけれども,他方で,本件先行承継許可申請について,控訴人から説明等を受けた上で,漁協やaに対する所要の確認や調査を行うなどしていれば,県調整規則23条1項3号所定の事由が存しなかったと確実に判断されたであろうとまでは断じ難いところである。本件先行承継許可申請に対する許可の可能性が相当程度あり,かつ,底びき網漁業について一度許可を得た者が有効期間満了時に新たに許可の申請をした場合に許可されなかった者はいないと認められる(証人e)としても,本件起業認可申請について,県調整規則23条1項3号所定の事由がないと判断すべきであるとまではいえないから,本件起業不認可処分を違法とすべき特段の事情があるとは認められないというべ- 23 -きである。 (4)以上によれば,被控訴人県知事が控訴人に対して本件起業認可申請について新県取扱方針4-1等に従って県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当することを理由に本件起業不認可処分をしたことにつき,被控 以上によれば,被控訴人県知事が控訴人に対して本件起業認可申請について新県取扱方針4-1等に従って県調整規則23条1項3号の不許可事由に該当することを理由に本件起業不認可処分をしたことにつき,被控訴人県知事に裁量権の逸脱又は濫用があったとまでは認められないというべきであるから,本件起業不認可処分が違法であるとはいえない。 本件登録不許可処分の違法性についてこの点に関する当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の5に記載のとおりであるから,これを引用する。 損害賠償請求の可否についてこの点に関する当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の6に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決48頁11行目から12行目及び同18行目の「旧取扱方針」をいずれも「旧県取扱方針」に改め,同25行目から49頁10行目までを削り,同11行目の「(3)」を「(2)」に,同12行目の「(4)」を「(3)」にそれぞれ改める。 結論 以上の次第で,控訴人の本件各請求のうち,本件起業不認可処分取消請求及び本件承継不許可処分取消請求に係る訴えについては不適法として却下を免れず,その余の請求についてはいずれも理由がないから棄却すべきところ,これと一部異なる原審の判断は相当でないから,原判決中本件起業不認可処分取消請求及び本件承継不許可処分取消請求に関する部分を取り消して同請求に係る訴えをいずれも却下することとし,控訴人のその余の控訴はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 高松高等裁判所第4部- 24 -裁判長裁判官馬渕勉裁判官豊澤佳弘裁判官齋藤聡 裁判所第4部- 24 -裁判長裁判官馬渕勉裁判官豊澤佳弘裁判官齋藤聡

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る