【DRY-RUN】○ 主文 一 原告らの本件訴えを却下する。 二 訴訟費用は、原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の申立 一 原告ら 被告は、原告らに対し、建設大臣が昭和五一年九月二八日付けで認可し、同月三〇
○ 主文一原告らの本件訴えを却下する。 二訴訟費用は、原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の申立一原告ら被告は、原告らに対し、建設大臣が昭和五一年九月二八日付けで認可し、同月三〇日付け建設省告示第一三二三号により公示した「徳山ダム建設事業に関する事業実施計画」に基づく徳山ダム建設の一切の行為をしてはならない。 訴訟費用は、被告の負担とする。 二被告原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は、原告らの負担とする。 第二請求原因一当事者原告Aは、岐阜県揖斐郡<地名略>に別紙物件目録一記載の土地を所有し、妻子孫五人とともに肩書住所地に居住して飲食業を営み、原告Bは、同村内に別紙物件目録二記載の家屋を賃借し、妻子三人とともに肩書住所地に居住して農業を営み、原告Cは、同村内に別紙物件目録三記載の土地を所有し、妻子三人とともに肩書住所地に居住して農業を営む者である。 被告は、水資源開発公団法により設立され、水資源開発促進法の規定による水資源開発基本計画に基づく水資源の開発または利用のための事業を実施し、これらにより国民経済の成長と国民生活の向上に寄与することを目的とする公団である。 二徳山ダム建設計画昭和三二年電源開発促進法により電源開発計画が決定され、揖斐川が電源開発株式会社の調査河川に指定されて、同社による調査が着手され、昭和四五年には多目的ダム建設計画が発表され、ついで昭和四六年建設省が<地名略>に徳山ダム調査事務所を設置して実施調査を開始したが、昭和四八年四月一日徳山ダム建設事業が建設省から被告に仮継承され、建設大臣は、昭和四九年六月二四日河川法五六条に基づき徳山ダム水没予定地を河川予定地として指定し、昭和五一年九月二八日徳山ダム建設事業に関する事業実施計画を認可し、同月三〇日建設省告示一三二三号により公示し、かつまた 年六月二四日河川法五六条に基づき徳山ダム水没予定地を河川予定地として指定し、昭和五一年九月二八日徳山ダム建設事業に関する事業実施計画を認可し、同月三〇日建設省告示一三二三号により公示し、かつまた、徳山ダムは、昭和五二年三月二三日には水源地域対策特別措置法(昭和四八年法律第一一八号、以下水特法という。)二条二項による指定ダムとなつた(政令第三四号)。被告は、右による建設大臣の公示した「徳山ダム建設事業に関する事業実施計画」に基づく事業の事業主体であつて、つぎの如きダムの建設事業に着手しようとしている。すなわち、建設位置を岐阜県揖斐郡<地名略>・<地名略>の村境の揖斐川本流とし、型式ロツクフイルダム、堤高一六一メートル、総貯水量六・六億立方メートル、水没面積約一三平方キロメートル(<地名略>八部落中七部落が水没。)、水没世帯<地名略>内の約四七〇世帯。 三原告らの権利の侵害(訴の利益)右ダムの建設事業により、原告らは、つぎのような回復しがたい権利の侵害を被る。 (一) 環境権、人格権の侵害。 環境権は、人間が生活環境を享受し、かつ、これを支配しうる権利であり、環境権の実定法上の根拠は、憲法一三条の幸福追求権、同法二五条の生存権の両規定に求めることができるし、また環境破壊の悲観的現状から私法的環境権なしでは、終局的に人間の生存を守れないという危機意識が現存し、これが権利の裏付けであつて、明文の根拠がなくとも、社会的意識の承認によつて権利は生成するものであり、本件におけるその具体的内容は、つぎのとおりである。 (1) 自然環境現に原告らが享受している<地名略>の恵まれた自然動植物・景観などを指す。すなわち、<地名略>は、東経一三六度二分、北緯三五度四〇分、海抜三二〇メートル(村役場の位置)に位置し、揖斐川最上流部にあり、揖斐川本流・支流に沿 る<地名略>の恵まれた自然動植物・景観などを指す。すなわち、<地名略>は、東経一三六度二分、北緯三五度四〇分、海抜三二〇メートル(村役場の位置)に位置し、揖斐川最上流部にあり、揖斐川本流・支流に沿つて八部落が点在している。すなわち、本流の下から、下聞田、徳山(本郷)、上開田(支流との分岐点にある)、山手、櫨原、塚があり、支流(戸入川)に沿つては、戸入、門入とがあつて、同村の総面積は二万五三五六ヘクタールで、その九九%が山林であり、残りが農地・宅地である。<地名略>の植物群落は、大きくは落葉広葉樹であるが、常緑針葉樹を主体とした群落としては槍を主としたものがあるが、各部落の神社にある木は、殆んど大木となつており、保存したい木ばかりである。 特に、下開田の春日神社には樹周八・五メートルや六・八メートルの杉の大木があり、塚の白山神社には栃の木で七メートル、四メートル他に三本、他に杉、桂、欅があるし、櫨原では白山神社に杉五・五メートル二本、他に二~三メートル四本があり、山手の加茂神社には杉五・八メートル、五・五メートルの大木がある。また、野獣類は、熊、日本猿、兎、かも鹿、猪、狸、狐、いたち、てん、穴熊などが棲息し、魚類としては、あゆ、あまご、いわな、にじますなどの渓流魚が多い。 (2) 社会環境<地名略>では、農耕、わさびや椎葺の裁培、林業などが行なわれており、原告らは永年<地名略>で生活を営んできたが、これは各種の社会施設や社会的組織に負うところが多大である。すなわち、大正七年には、徳山村農業協同組合の前身である徳山信用購買組合が設置され、林業については林業組合が、漁業については漁業組合がそれぞれ設置されており、林業、漁業の資源の保護、増産に当つている。また、<地名略>の診療所は明治二四年開設され、昭和二三年に国保診療所となつて今日に至つて ては林業組合が、漁業については漁業組合がそれぞれ設置されており、林業、漁業の資源の保護、増産に当つている。また、<地名略>の診療所は明治二四年開設され、昭和二三年に国保診療所となつて今日に至つており、その他、消防団組織、保育所、駐在所、児童館、老人クラブ、小中学校などの各種施設がある。 (3) 文化環境<地名略>の人々が住み始めたとされる縄文中期末(約四千年前の宮が原縄文遺跡)以来、原告らが祖先から受け継ぎ子孫に伝えるべき文化・遺産を指す。すなわち、<地名略>の人々は、正月、春夏秋冬の各行事、衣食住についての独特の生活の知恵、村人どおしの相互扶助、民族芸能、民謡、伝説、昔話など独特の習俗を祖先から受け継いでいる。 (4) 原告らは、以上(1)ないし(3)の環境の中で生活を営んでいるが、徳山ダム建設により<地名略>が水没するとき、これらの環境は全て破壊喪失される。 (二) 財産権の侵害。 原告らは、前記のとおり、<地名略>内に土地家屋を所有または賃借しているが、本件ダム建設により、それらが水没し、以上の財産権を喪失するところ、これに対する被告の提示する損失補償基準は低い上に加えて、被告は、後記四のとおり、水特法八条所定のダム建設により生活の基礎を失う者に対する生活再建のためのあつせん等の適切な措置を講ずべき義務があり、右あつせん行為は憲法二九条三項にいう正当な補償に含まれるというべきところ、被告は右あつせんの措置すら講じようとしない。かくては、原告らの生活再建は不可能であり、結局は憲法二九条で保障された正当な補償なくして原告らの財産権が喪失される結果となり、回復しがたい損害を被ることになる。 四徳山ダム建設の違法性(一) 被告の前記徳山ダム建設行為は、行政庁の公権力の行使に当る行為に該当するというべきところ、被告の徳山ダム建設行為は る結果となり、回復しがたい損害を被ることになる。 四徳山ダム建設の違法性(一) 被告の前記徳山ダム建設行為は、行政庁の公権力の行使に当る行為に該当するというべきところ、被告の徳山ダム建設行為は、つぎのとおり違法なものであつて、許されない。 (1) 水特法違反水特法八条は、「関係行政機関の長、関係地方公共団体、指定ダム等を建設する者及び整備事業を実施する者は、指定ダム等の建設又は整備事業の実施に伴い生活の基礎を失うこととなる者について、次に掲げる生活再建のための措置が実施されることを必要とするときは、その者の申出に基づき、協力して、当該生活再建のための措置のあつせんに努めるものとする。一宅地、開発して農地とすることが適当な土地その他の土地の取得に関すること。二住宅、店舗その他の建物の取得に関すること。三職業の紹介、指導又は訓練に関すること。四他に適当な土地がなかつたため環境が著しく不良な土地に住居を移した場合における環境の整備に関すること。」と規定しているところ、原告らは、徳山ダム建設によつて水没しない<地名略>内の門入地区に移住して生活を再建したいと考え、右規定に基づき、昭和四九年六月一六日徳山村徳山ダム対策委員会、委員長D(昭和五二年二月九日付、五二徳対第八号)及び岐阜県(昭和五二年二月二五日付水資第二四九号)を経由して、被告に対し、「徳山ダム実施調査に関する申入書」と題する文書を提出し、「<地名略>に従来どおり居住することを希望する者に対し生活再建のための措置が実施されることが必要である」として環境整備の各措置の申出をした。しかるに、被告は、昭和五二年三月二三日徳山ダム建設所長名(水公中徳第一六一号)をもつて、<地名略>内での集落再編成の措置については必要がないむねを表明した。被告が右のように何らの措置も講じないのは かるに、被告は、昭和五二年三月二三日徳山ダム建設所長名(水公中徳第一六一号)をもつて、<地名略>内での集落再編成の措置については必要がないむねを表明した。被告が右のように何らの措置も講じないのは、違法である。すなわち、水特法八条によれば、徳山ダムの建設主体である被告は、同法二条二項の指定ダムである徳山ダムの建設に伴い生活の基礎を失うこととなる者が、同法八条各号に掲げられている生活再建のための措置が実施されることが必要であるとして申出たときは、協力して当該生活再建のための措置のあつせんに努力しなければならない義務がある。そして、財産権の補償の具体的内容としては、(イ)建物移転等の通常損失、(ロ)労務、(ハ)副業、(ニ)天恵物、(ホ)残存地の各金銭補償等が挙げられるが、これらによつても、なお水没地域住民の享受する諸権利、諸利益を十全にカバーできない部分が残るが、生活再建の措置中、これらに関する水特法八条一号、二号の規定する土地、建物の取得に関するものは、憲法二九条により保障される正当な補償にほかならず、そして、それらはダムの建設着工前からなされなければ意味がなく、それらの措置のあつせんに努力しなければならない被告の前記義務は、ダム建設に当たり事前に履践されるべきものと解せられ、右義務に基づく具体的なあつせん行為が全くなされないまま、ダム建設行為を進捗させることは違法なものとなる。水特法八条に定める生活再建措置のあつせんは、ダム建設自体の進捗状況と別個に切り離して考慮されるべきではないのであつて、原告らの生活はダム建設により大きな変更を余儀なくされるのであるから、それの填補処置である水特法八条掲記の各措置がダム建設工事と無関係に成立するはずはない。被告は、前述のとおり、水没しない<地名略>門入部落での原告らの生活再建さえ認めず、水特法八 れるのであるから、それの填補処置である水特法八条掲記の各措置がダム建設工事と無関係に成立するはずはない。被告は、前述のとおり、水没しない<地名略>門入部落での原告らの生活再建さえ認めず、水特法八条の義務を履行しない旨を当初より予め表明し、同条の義務を放てきするものであるので、被告の本件ダム建設行為は右規定に反して違法である。 (2) 憲法二九条違反憲法二九条は、私有財産制度を保障し、私有財産は正当な補償の下においてのみこれを公共のために用いることができる旨を定めている。水特法八条にいう生活再建措置は、正に憲法二九条に規定する「補償」の内容に該当し、この措置を怠ることは憲法二九条に違反する。けだし、財産権の保障の具体的内容として金銭補償が挙げられるが、これによつては水没地域住民が享受してきた諸権利、諸利益を十全にカバーできない部分が残るから、それを補填する方策として水特法八条の生活再建措置がなされるのである。換言すれば、右生活再建措置は、右金銭補償と相互に補完的な関係にあり、これがなされなければ正当な補償がなされたものといえないからである。これを本件に即して見れば、憲法二九条により認められる「適正な法手続に従う正当な補償」の一つとして水特法八条の手続が履践されなければならず、同条に定める生活再建措置のあつせんは、ダム建設自体の進捗状況に関連し、密接不可分の範ちゆうに立つものである。したがつて、被告の前記(1)項掲記の義務違反は、単に前記のとおり水特法八条に違反するばかりでなく、すなわちまた、財産権の侵奪として、結果的に憲法二九条に違反するものといわなければならない。 (二) 前記のとおり、原告らは、徳山ダム建設により、環境権、人格権、財産権を侵害される。しかして、これら諸権利の侵害自体もまた、ダム建設を違法にするものとして、ダム建設工事 いわなければならない。 (二) 前記のとおり、原告らは、徳山ダム建設により、環境権、人格権、財産権を侵害される。しかして、これら諸権利の侵害自体もまた、ダム建設を違法にするものとして、ダム建設工事の差止を請求し得るといわなければならない。 五よつて、原告らは、被告に対して、そのなさんとしている徳山ダム建設の一切の事実行為を差止めるため、ここにいわゆる無名抗告訴訟として、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。 第三請求原因に対する認否一請求原因一の事実は認める。 二詩求原因二の事実は認める。 三請求原因三の事実は争う(ただし、三の(二)のうち、原告らの土地家屋の所有及び賃借関係は認める。)。 四請求原因四の事実中、原告らから、昭和四九年六月一六日原告ら主張のとおり、徳山村徳山ダム対策委員会及び岐阜県を経由して、被告に対し、「徳山ダム実施調査に関する申入書」と題する文書の提出がなされたこと(ただし、右申入書による申入れは、単なる一般的要望であつて、水特法八条の規定に基づく申出ではない。)、右申入れに対し、被告が、昭和五二年三月二三日徳山ダム建設所長名をもつて、<地名略>内での集落再編成の措置について必要がないむねを表明したことは認める。なお、<地名略>地内での集落再編成は事実上不可能であるが、被告は右回答において<地名略>地内に残存を希望する者があれば、その者と今後とも話し合いを続ける旨の意思を表示しているのであつて、被告としては、原告らから具体的な申出があれば、生活再建のための措置のあつせんに努めるにやぶさかではなく、現に徳山ダム建設に伴つて生活の基礎を失う者に対しては具体的なあつせんをしているのであつて、被告が水特法八条の義務を放てきしたものではない。請求原因四のその余の事実及び原告らの見解は、すべて争う。 第四被告の主張 伴つて生活の基礎を失う者に対しては具体的なあつせんをしているのであつて、被告が水特法八条の義務を放てきしたものではない。請求原因四のその余の事実及び原告らの見解は、すべて争う。 第四被告の主張一水特法八条違反の主張について(一) 水特法は、「ダム又は湖沼水位調節施設の建設によりその基礎条件が著しく変化する地域について、生活環境、産業基盤等を整備し、あわせて湖沼の水質を保全するため、水源地域整備計画を策定し、その実施を推進する等特別の措置を講ずることにより関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もつてダム及び湖沼水位調節施設の建設を促進し、水資源の開発と国土の保全に寄与することを目的」(同法一条)としているが、このような立法趣旨のもとに、同法においては、指定ダム等の建設により水源地域が受ける影響を緩和するため、水源地域整備計画の策定(四条、五条)と右計画に基づく整備事業の実施(六条、七条)を規定しており、一方で指定ダム等の建設に伴い生活の基礎を失うこととなる者のための生活再建措置のあつせんについて規定している(八条)。同法八条の規定する生活再建措置のあつせんは、ダム建設により生活基盤を失う個々の者に対しその具体的な事情に応じてなされるべきもので、各号列記の諸措置(特に三号、四号)の内容からも窺われるように、その性質上ダム建設自体の進捗状況とは別個に切り離して考慮されるべきものである。右のような趣旨は、水特法が可決された第七一回国会の参議院建設委員会において、全会一致で決議された附帯決議からも窺い知ることができる。すなわち、同決議はその二項において、「ダム等の建設により、水源地域がうける影響をすみやかに緩和するため、整備事業は原則としてダム等の建設が完了するまでに完成するよう十分に配慮すること」としているのに対し、その三項において において、「ダム等の建設により、水源地域がうける影響をすみやかに緩和するため、整備事業は原則としてダム等の建設が完了するまでに完成するよう十分に配慮すること」としているのに対し、その三項においては、「ダム等を建設する者は、事業の実施にあたり、極力、任意の協議による土地取得等に努め、強制的措置は避け、ダム等の建設により生活の基盤を失うこととなる者と、その生活再建の対策について積極的に協議し、適切な措置を講ずること」としているのであつて、右決議の内容からも明らかなように整備計画に基づく整備事業は原則としてダム等の建設が完了するまでに完成するよう配慮すべきであるのに対し、水特法八条による生活再建措置のあつせんについては右のようにダム等の建設が完了するまでに終了することまでは予定されていないものというべきである。そして、当然のことながら、法令上も、生活再建の措置についてのあつせんがダム建設工事の事前の措置として規定されているものでないことはもちろん、これをなすべき時期についてもダム建設工事の開始若しくはダムの完成までになされなければならないという制限は一切設けられていない。すなわち、水特法は、個人の具体的事情に応じて場合によつては長期にわたりなされるべき生活再建措置のあつせん努力のいかんをもつて、公共の利害に係るダム建設そのものを許さないとすることを予定していないものというべきである。かえつて、水特法八条所定の生活再建措置のあつせんは、ダムを建設することを前提としてなされるものであり、ダム建設の進捗状況とは別個の場面において関係機関がなすものであるから、ダム建設工事自体を差し止めるまでもなく、原告らの生活再建を図りその利益を保護していくことは十分可能である。以上を要するに、水特法八条に定める生活再建措置のあつせんとダム建設それ自体とは別個の ら、ダム建設工事自体を差し止めるまでもなく、原告らの生活再建を図りその利益を保護していくことは十分可能である。以上を要するに、水特法八条に定める生活再建措置のあつせんとダム建設それ自体とは別個の問題であつて、原告らが主張するように水特法八条を根拠にしてダム建設工事自体の差止めを請求することはできないというべきである。 (二) ダムの建設によつて、従来地域住民が享受していたいわゆる環境権等への影響がたとえ問題になるとしても、それはダム建設自体に基づくものであり、原告らが侵害されるとして主張するような環境権、財産権は、直接には何ら水特法八条とは結び付かない。けだし、原告らが主張するようなダム建設に伴つて水没する個人の財産上の損失については、法令に基づく適正な補償をすることにより填補されるものであり、一方水特法八条に基づく生活再建措置のあつせんは、財産権の補償によつてカバーできない部分について補完的に行われるものであるが、あくまでも補償そのものとは別個のものであつて、この面においてはそもそも水特法は直接の関係はないし、生活環境、産業基盤の面については、水特法が整備事業や個別の生活再建に関する規定を置いているが、これらがダム建設による影響の緩和を目的とするものであることは水特法一条、五条及び八条の文言等から明らかであり、原告らが主張するように従前と同等の代替物を与えること、を予定しているものではない。水特法八条違反による損害というべきものを観念し得るとすれば、それはダム建設によつて地域の生活環境等が影響を受けることを前提として甘受認容した上で、生活再建という新たな措置が採られないことによる損害というべきであつて、その損害とダム建設自体に基づく損害とは根本的に異なるのである。 (三) さらに、水特法八条所定の義務は、関係行政機関の長、関係地方公 再建という新たな措置が採られないことによる損害というべきであつて、その損害とダム建設自体に基づく損害とは根本的に異なるのである。 (三) さらに、水特法八条所定の義務は、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び指定ダム等を建設する者等に対する行政的な責務を定めたものであつて、法律上の義務ではなく、その義務違反をもつてその違法を訴求し、あるいはダム建設の差止めを求めることはできない。そもそも生活再建措置は、同条各号に列挙のとおり、土地の取得から職業訓練、さらには移住先の環境整備に至るまで広範囲かつ多岐にわたる内容を有するものであり、水特法八条で義務が課されている行為の対象は、具体的な法律上の義務にはなじまない包括的なものといわざるを得ない。また、その内容が多岐であることは、「あつせん」という行為についても同様であつて、何をもつてあつせんというのか一義的に解することは困難であり、このような行為が法律上の義務とするに適しないことは明らかである。さらに、生活再建措置のあつせんは、生活の基礎を失うこととなる者の申出に基づき行うものであるが、申出があつたからといつて、直ちにこれをそのまま履践できるものではない。その申出の内容がそれ自体客観的に不可能である場合はもちろんのこと、たとえ申出のあつた行為そのものは必ずしも不可能とはいえなくても、それによつては生活再建が困難と判断される場合にまでそのあつせんをすべきものとはいえないからである。水特法が関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もつてダム等の建設を促進することを目的としている以上、生活再建措置のあつせんを行う者が、その者の申出の内容が住民の福祉にかなうものでないと判断したときは、関係住民にその趣旨を徹底させ、他のより良き代替案を示す等して、その福祉を図るは格別、前記のような申出に拘束されることを 行う者が、その者の申出の内容が住民の福祉にかなうものでないと判断したときは、関係住民にその趣旨を徹底させ、他のより良き代替案を示す等して、その福祉を図るは格別、前記のような申出に拘束されることを法は予定していないものというべきである。たとえば、原告らは、本訴において門入地区での生活再建を希望する旨述べているが、仮に従前このような申出があり、門入地区での土地の取得のあつせんそのものが可能であるとしても、行政機関、公的サービス機関の集中する本郷地区をはじめ門人地区を除く全村が水没する<地名略>の、しかも隣接市町村と離れた門入地区において、原告ら三名のみが残存して生活再建措置を行うことは事実上不可能であり、法がこのような申出の内容を履践することまで義務づけているものとはとうてい考えられない。しかも、「あつせん」は、事柄の性質上第三者の介在を予定し、当事者間(関係住民と第三者)の合意の如何によつてその成否が決せられるにもかかわらず、「あつせん」だけを取り出して法律上の義務と解するのは右の理に反するものであり、首肯しがたいものがある。これに加うるに、もともと水特法八条に定める生活再建措置は、前述したとおり広範囲かつ多岐にわたる内容を有するものである上、その性質からしても単に一関係機関のみの努力では、自ら限界があり、その目的を達し難い面もあるところから、同条では、あつせん努力義務の主体を関係行政機関の長、関係地方公共団体及び指定ダム等を建設する者等関係住民の生活再建のため尽力しうる立場のすべての機関とし、しかもこれらの関係機関が協力して努力すべき旨を定めているのであつて、このように、あつせん努力義務を複数関係機関の相互協力に委ねていることからしても、右義務は、もともと法律上の義務にはなじまない性質を有するものである。以上要するに、水特法八条所 めているのであつて、このように、あつせん努力義務を複数関係機関の相互協力に委ねていることからしても、右義務は、もともと法律上の義務にはなじまない性質を有するものである。以上要するに、水特法八条所定の義務は、その主体、対象等あらゆる点において、法律上の義務にはなじまないものである。 (四) 水特法八条の右のような解釈は、また、法体系にも反しない。原告らは、生活再建措置のあつせんは、憲法二九条三項にいう正当な補償の内容に該当すると主張するが、補償と生活再建措置のあつせんとは自ら別個のものである。すなわち、ダム建設に伴い生活の基礎を失うこととなる者についても、公共用地の取得に伴う損失補償の根本原則に基づき、これが行政救済措置の根本は、あくまでも財産権の保障に由来する財産的損失に対する補償、なかんずくその基本は金銭補償(土地収用法七〇条参照)であつて、立法論としては格別、現行の補償体系のもとにおいては、本来これをもつて足りるところ、これのみでは、財産権上の損失以外の社会的摩擦、生活上の不安も考えられるため、これらを緩和ないし軽減するため、財産権の保障とは別に水特法八条において、生活再建措置のあつせん規定を定めたものであり、要するに右規定は関係住民の福祉、サービスのため、補償とは別個に、これを補完する意味において採られる行政措置であるというべきである。水特法八条が法律上の義務を規定したものでないことは、その法形式からみても明らかである。すなわち、同条は、前述のように生活再建措置のあつせんが必ずしも申出のとおりには履践しがたいこと、あつせんという行為は、その成否の不確実性を内包するものであることに鑑み、「あつせんに努めるものとする。」と規定し、その義務の限界をあつせんの努力義務にとどめているのである。右のような解釈は、水特法八条類似の規定、とい その成否の不確実性を内包するものであることに鑑み、「あつせんに努めるものとする。」と規定し、その義務の限界をあつせんの努力義務にとどめているのである。右のような解釈は、水特法八条類似の規定、というよりその規定のもととなつた他の法令の条項の解釈とも矛盾するものではない。公共事業の施行に伴う生活再建措置を規定している立法例は、国土開発幹線自動車道建設法九条、公共用地の取得に関する特別措置法四七条、都市計画法七四条一琵琶湖総合開発特別措置法七条があるが、これらは財産上の損失以外の社会的摩擦の緩和のための措置について規定したものと解されており、その規定の性質は倫理規定とも説明されているのであつて、立法過程における国会の審議においても訓示規定であること、また、その義務には努力義務としての限界があり、法律上の義務ではないことを前提として審議されている。水特法八条は、これらの法条をもとに規定されたものであり、根本においてその趣旨を同じくするものである以上、その解釈もこれらの法条の解釈と異なるものではないというべきであり、現に水特法の立法過程における国会の審議においても、これを前提として審議されており、この点においても同条は法律上の義務を規定したものと解することはできない。 (五) 以上のとおりであつて、水特法八条所定の生活再建措置のあつせん努力義務は、行政上の責務を定めたものとはいい得ても、これを法律上の義務と解することは困難であるというべく、したがつて、右義務が法律上の義務であることを前提とする原告らの主張は、その余の点につき検討を加えるまでもなく、理由のないことが明らかである。 二憲法二九条違反の主張について水特法八条に基づく生活再建措置のあつせんは、前記のとおり財産権の補償によつてカバーできない部分について補完的に行なわれるものであつて、 のないことが明らかである。 二憲法二九条違反の主張について水特法八条に基づく生活再建措置のあつせんは、前記のとおり財産権の補償によつてカバーできない部分について補完的に行なわれるものであつて、補償そのものとは別個のものである。そしてまた、水特法八条による生活再建措置のあつせんを、いわゆる事前手続、あるいはダム建設事業の前提としての手続としてとらえることもできない。すなわち、告知、聴聞等のいわゆる事前手続は、それが法定されている場合には、ある行政処分等を行うに当たつて文字どおり事前の手続としてなされなければならず、その手続の欠缺は処分自体の瑕疵となる場合もあるのに対し、すでに述べたとおり、水特法八条の生活再建措置のあつせんとダム建設自体とは別個に考慮されるべきものであり、時期的関連もない以上、憲法二九条違反ということもあり得ない。 三環境権、人格権の侵害を理由とする差止め請求について原告らの環境権、人格権侵害についての主張は、環境権の法的権利性を論ずるまでもなく、本件ダム建設工事の違法事由とはなり得ない。すなわち、行政処分等が違法であるというためには、単にその環境等が処分によつて影響を受けるというだけではなく、その処分等が法の定める要件や手続に違反して客観的に違法性を帯びるに至つたものでなければならないのであつて、かりに環境権が法的な権利として認められるとしても、単なる環境権等の侵害の主張はそれ自体理由がない。しかも、ダムの建設により、その水源地域がその生活環境等の基礎条件に多かれ少かれ影響を受けるのは当然のことであり、原告らのいう環境権等の侵害とは、徳山ダムの水源地域である<地名略>の生活環境等についてのダム建設に伴うこの当然の変化に尽きるのである。またかりに、水源地域の生活環境、産業基盤等に影響を与えることが環境権の侵害に当 等の侵害とは、徳山ダムの水源地域である<地名略>の生活環境等についてのダム建設に伴うこの当然の変化に尽きるのである。またかりに、水源地域の生活環境、産業基盤等に影響を与えることが環境権の侵害に当たりダム建設が違法となるというのであれば、ダム建設工事はすべて違法ということになりかねないのであつて、このような影響、変化は法が当然に予定しているものといわざるをえない。水特法は、これを前提としたうえで、関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もつてダム建設を促進するため、その基礎条件の変化が著しい地域について、整備事業を実施する等の措置を講ずる旨を規定しているのである。原告らは、原告らの財産が水没等により失われることをもつて、財産権の侵害として主張するが、ダム建設という公共事業のために私有財産に対し特別の犠牲郎課される場合には、それに対し原告らも認めているとおり損失補償がなされるのであつて、そのような犠牲をもたらすからといつて、ダム建設工事そのものが違法となるものでない。なお、原告らは、右の損失補償基準が低すぎる旨を主張しているが、現段階においては、補償額はまだ確定しておらず、また、補償額が適正か否かは、ダム建設工事自体の適法性とは別個の問題として判断されるべきものである。 第五証拠関係(省略)○ 理由請求原因一の事実(原告らがいずれも岐阜県摂斐郡<地名略>に居住し、同村内にその主張のとおり、土地を所有し、あるいは家屋を賃借して、農業や飲食業を営んでいる者であり、被告が水資源開発公団法により設立され、水資源開発促進法に基づく水資源の開発、利用のための事業を実施する等を目的とする公団であること。)及び請求原因二の事実(被告が原告ら主張どおり、建設大臣の事業実施計画の認可、公示を経て、<地名略>に原告ら主張どおりの徳山ダムを建設しようとし ための事業を実施する等を目的とする公団であること。)及び請求原因二の事実(被告が原告ら主張どおり、建設大臣の事業実施計画の認可、公示を経て、<地名略>に原告ら主張どおりの徳山ダムを建設しようとしていること。)については、いずれも本件当事者間に争いがない。 ところで、本訴は、徳山ダム建設により原告らがその主張する環境権、人格権、財産権を侵害されるとし、右ダム建設に関し、水特法八条違反、憲法二九条違反ないしは前記の諸権利の侵害それ自体を違法として、行政庁たる被告に対し、いわゆる無名抗告訴訟として、徳山ダム建設事業の差止を求めるものであることは、原告らの主張自体に徴して明らかである。右ダム建設事業が行政事件訴訟法三条二項にいう公権力の行使に当たるといえるかどうかについてはしばらく措き、かように、行政庁に対し、一定の不作為を求める給付訴訟は、裁判所に対し行政庁に代つて不作為処分を求める結果となるから三権分立の原則に反し、原則的には許されないといわなければならない。ただ、行政庁が将来行なうこと明白確実な処分について、行政庁の第一次的判断権を侵害せず、当該差止を認めないと、回復しがたい損害が生じる恐れがあり、かつ、原告の損害につき、他に適切な救済方法もないときは、かかる訴訟も認められる場合があり得ると解するのを相当とする。しかして、原告らは、徳山ダムの建設により、いわゆる環境権、人格権、財産権を侵害され、回復しがたい損害を被ると主張するので、以下右各侵害の有無につき判断する。 まず、原告ら主張の環境権についてであるが、環境権なるものは、未だ実定法上の規定によつて認められた権利でないことはいうまでもない。のみならず、本件において、原告らの主張する一定地域の自然環境破壊の内容自体を検討しても、地域住民としてその侵害の差止めを請求し得る住民自身の具体的な よつて認められた権利でないことはいうまでもない。のみならず、本件において、原告らの主張する一定地域の自然環境破壊の内容自体を検討しても、地域住民としてその侵害の差止めを請求し得る住民自身の具体的な権利としてこれを承認すべき何らの根拠も見出し得ない。原告らは、環境権の根拠として環境侵害につき、るる述べているが、当裁判所はこれを採用しない。したがつて、原告らの環境権の侵害ないし環境破壊自体の侵害を理由とするその主張の如き回復しがたい損害があるとは認められない。 また、原告らは、徳山ダムの建設により、人格権を侵害されるというが、右ダムの建設により、原告らの生命、身体の侵害その他健康上の被害を被ることなどについては、何らの主張立証もないから、原告らのこの点に関する主張も前同様採用できない。 つぎに、原告らは、本件徳山ダム建設工事に関し、被告においては水特法八条に定める生活再建措置を事前に講ずべき義務があり、しかも右措置は憲法二九条に定める正当な補償に該当するというべきところ、これを尽さなかつた違法があり、かくては同法条により保障された正当な補償なくして財産権を喪失するという損害を被ると主張するので、以下この点について判断する。 水特法は、ダムまたは湖沼水位調節施設の建設により、その基礎条件が著しく変化する地域について生活環境、産業基盤等を整備し、あわせて湖沼の水質を保全するため、水源地域整備計画を策定し、その実施を推進する等特別の措置を講ずることにより関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もつてダム及び湖沼水位調節施設の建設を促進し、水資源の開発と国土の保全に寄与することを目的とし(水特法一条)、同法四条、五条では、指定ダム等の建設により水源地域が受ける影響を緩和するため、水源地域整備計画の策定を、同法六条、七条では、右計画に基づく整備事業 土の保全に寄与することを目的とし(水特法一条)、同法四条、五条では、指定ダム等の建設により水源地域が受ける影響を緩和するため、水源地域整備計画の策定を、同法六条、七条では、右計画に基づく整備事業の実施を規定しており、同法八条において、指定ダム等の建設に伴い生活の基礎を失うこととなる者のための生活再建措置のあつせんについて規定している。 ところで、憲法二九条三項にいう正当な補償とは、公共のために特定の私有財産を収用または使用されることによる損失補償であり、それはあらゆる意味で完全な補償を意味するものではなく、当該収用または使用を必要とする目的に照らし、社会的経済的見地から合理的と判断される程度の補償をいうと解すべきであり、本件において、ダム建設に伴い生活の基礎を失うことになる者についての補償も公共用地の取得に伴う一般の損失補償の場合と異ならず、あくまでも財産権の保障に由来する財産的損失に対する補償、すなわちその基本は金銭補償であり、本来これをもつて右にいう合理的な補償というべきであり、かつ、これをもつて足りるところ、これのみでは、財産権上の損失以外の社会的摩擦、生活上の不安も考えられるため、前記水特法の諸規定により、これらを緩和ないし軽減する配慮に出て、財産上の損失、補償とは別にとくに水特法八条において、生活再建措置のあつせん規定を定めたものであり、要するに右規定は関係住民の福祉のため、補償とは別個に、これを補完する意味において採られる行政措置であるにすぎないと解すべきである。すなわち、右生活再建措置のあつせんは、憲法二九条三項にいう正当な補償には含まれず、したがつて、これが懈怠による何らかの損害を観念し得るとしても、それをもつて、憲法二九条違反による損害といえず、無名抗告訴訟として本件ダム建設行為差止の根拠となし得ない。この理は、水特 は含まれず、したがつて、これが懈怠による何らかの損害を観念し得るとしても、それをもつて、憲法二九条違反による損害といえず、無名抗告訴訟として本件ダム建設行為差止の根拠となし得ない。この理は、水特法八条所定の生活再建措置のあつせんは、ダム建設を前提としながらも、水特法が右あつせんにつき個人の具体的事情に応じて、場合により長期にわたりなされる生活再建措置のあつせん努力のいかんをもつて、ダム建設自体を許さないとすることを予定しておらず、ダム建設の進捗自体とは別個の場面で考慮されると解されることに照らしても首肯することができる。以上の解釈は、また、同条にいう生活再建措置のあつせんの実践運用面を考慮しても是認し得るところである。すなわち、水特法八条が定める生活再建措置は、同条各号に列挙するところを見れば、土地の取得から職業訓練、さらには移住先の環境整備に至るまで広範囲かつ多岐にわたる内容を有するものであり(しかも、土地の取得ひとつをとつてみても、物件の捜索、資金の確保等様々の行為を必要とする。)、同条で義務が課せられている行為の対象は、具体的な法律上の義務にはなじまない包括的なものといわざるを得ず、また、その内容が多岐であることは、「あつせん」という行為についても同様であつて、何をもつてあつせんというのか一義的に解することは困難であり、生活の基礎を失うこととなる者の申出に基づき行なう生活再建措置のあつせんといつても、申出があつたからといつて、直ちにこれをそのまま履践できるものばかりではないのであつて、その申出の内容がそれ自体客観的に不可能である場合はもちろんのこと、たとえ申出のあつた行為そのものが必ずしも不可能とはいえなくても、それによつては生活再建が困難と判断される場合にまでそのあつせんをすべきものとはいえないからである。しかも、あつせん もちろんのこと、たとえ申出のあつた行為そのものが必ずしも不可能とはいえなくても、それによつては生活再建が困難と判断される場合にまでそのあつせんをすべきものとはいえないからである。しかも、あつせんは、事柄の性質上第三者の介在を予定し(水特法八条は、同条の義務の主体が直接土地等を提供したり住民を雇用することを要求しているのではなく、第三者による土地の提供や雇用についてあつせんすることを規定している。)当事者間(関係住民と第三者)の合意の如何によつてその成否が決せられるものである上、広範囲多岐にわたる内容を有し、その性質からしても単に一関係機関のみの努力では、自ら限界があり、その目的を達し難い面もあるところから、同条では、あつせん努力義務の主体を関係行政機関の長、関係地方公共団体及び指定ダム等を建設する者等関係住民の生活再建のため尽力しうる立場のすべての機関とし、これら複数関係機関が協力して努力すべき旨を定めているのである。そして、以上の諸点からすると、あつせん努力義務はもともと法律上の義務にはなじまない性質を有するものといえるのであり、水特法八条の規定形式自体も「あつせんに努めるものとする。」と規定するに止まり、生活再建措置のあつせんが必ずしも申出のとおりには履践しがたいこと、あつせんという行為それ自体その成否の不確実性を内包するものであつて、その義務の限界をあつせんの努力義務に止めているものと解せられ、つまるところ、同条は憲法二九条にいう正当な補償を実現すべきための法律上の義務を規定したものではないといわざるを得ない。なお、原本の存在とその成立に争いのない乙第一号証、第八ないし第一〇号証によれば、以上の解釈は国会における水特法の立法過程での審議における立法者の意思も、訓示規定であつて法律上の義務ではないこととされていることが認められる に争いのない乙第一号証、第八ないし第一〇号証によれば、以上の解釈は国会における水特法の立法過程での審議における立法者の意思も、訓示規定であつて法律上の義務ではないこととされていることが認められることによつても明らかである。もつとも、右法文上、生活再建措置のあつせんがダム建設工事の事前の措置としては規定されておらず、これをなすべき時期についてもダム建設工事の開始若しくはダムの完成までになされなければならないという制限はないところ、あつせんの対象となる事柄如何によつては、生活再建措置の申出があつたときは、可及的速かにあつせん措置に出るのが望ましいが、ひつきよう行政上の努力義務である以上、右あつせんの時期如何をもつて、以上の判断を左右しない。 以上説示したところによれば、水特法八条に定める生活再建措置のあつせんとダム建設それ自体とは別個の問題であり、同条所定の義務は、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び指定ダム等を建設する者等に課せられた行政的な責務を定めたにすぎず、結局その義務違反をもつて、原告らが主張する如き憲法二九条にいう正当な補償なくして財産権を喪失することには当らず、したがつて、あつせん義務懈怠の有無を問うまでもなく、その主張の如き回復しがたい損害があるとはいいがたい(右行政上の努力義務懈怠の場合、これにより原告らにとつて何らかの損害が考えられるとしても、前説示のとおりあつせん行為がダム建設自体とは別の場で考慮されるべきものであるから、努力義務の懈怠ひいてそれによる損害の有無を探究するまでもなく、本件ダム建設行為差止請求の根拠となし得ないこともちろんである。)。 叙上によれば、原告らについては、徳山ダム建設により回復しがたい損害を被るとはいいがたいから、その余の点について判断するまでもなく、いわゆる無名抗告訴訟としてこれを許容 いこともちろんである。)。 叙上によれば、原告らについては、徳山ダム建設により回復しがたい損害を被るとはいいがたいから、その余の点について判断するまでもなく、いわゆる無名抗告訴訟としてこれを許容し得るに由なく、本訴は不適法と断ぜざるを得ない。 以上の次第で、原告らの本件訴えは、不適法として却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官菅本宣太郎三宅俊一郎水谷正俊)物件目録(省略)
▼ クリックして全文を表示