平成25年7月4日判決言渡平成25年(行コ)第71号不作為の違法確認請求控訴事件主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 厚生労働大臣が平成22年4月15日付けで控訴人に対してした被保険者期間を411月,年金額を179万4500円とする老齢厚生年金支給処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人(原告)が被控訴人(被告)に対し,控訴人が60歳に達したことにより厚生年金保険法(厚生年金法)附則8条に基づき60歳から65歳に達するまでの間特別支給される老齢厚生年金(特別老齢厚生年金)の受給権を取得したが,引き続き適用事業所に在職して厚生年金保険の被保険者であったために,同法附則11条1項に基づき特別老齢厚生年金の支給が停止されていたところ,適用事業所を退職したことにより,平成22年2月28日に被保険者の資格を喪失したとして厚生労働大臣がした,特別老齢厚生年金の支給停止を解除し,同年3月分から,被保険者期間を411月,年金額を179万4500円とする特別老齢厚生年金を支給する旨の処分(本件処分)の取消しを求めた事案である。 2 厚生年金法43条3項によれば,適用事業所を退職することにより被保険者資格を喪失し,かつ,被保険者となることなくして被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過すると,資格を喪失した月前における被保険者期間を計算の基礎として年金額を改定するものとされている(退職改定)。 控訴人は,控訴人にも上記の退職改定をした上で平成22年3月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが,被控訴人は,退職改 年金額を改定するものとされている(退職改定)。 控訴人は,控訴人にも上記の退職改定をした上で平成22年3月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが,被控訴人は,退職改定の要件として,被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ,控訴人は,同年▲月▲日に65歳に達したために,被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点である同月28日の時点では特別老齢厚生年金の受給権が消滅しているから,上記の要件を満たさず,退職改定をすることはできないと主張した。 3 原審は,被控訴人の主張と同旨の判断をして,控訴人の請求を棄却した。 これに対し,控訴人が控訴した。 4 関係法令の定め,争いのない事実等,争点及びこれに関する当事者の主張は,原判決2頁24行目の「平成▲年▲月▲日生」を「昭和▲年▲月▲日生」と改め,5において当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1~4に記載のとおりであるから,これを引用する。 5 当審における控訴人の主張(1) 原審は,「65歳の誕生日前1か月以内に退職した者が被る実質的な不利益は,退職改定をした特別老齢厚生年金と退職改定をしない特別老齢厚生年金の1か月分の差額にとどまるから,著しい不利益を及ぼすものとまではいえない」(原判決13頁)としたが,誤りである。年金制度について,国が国民から信頼を得るためには,たとえ1円であっても誤差を生ずることがあってはならないものであり,不利益が著しくないからといって,許されるものではないはずであり,原審の考え方は不当である。 (2) 原審は,被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点である平成22年2月28日 不利益が著しくないからといって,許されるものではないはずであり,原審の考え方は不当である。 (2) 原審は,被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点である平成22年2月28日の時点では特別老齢厚生年金の受給権が消滅しているから,厚生年金法43条3項所定の要件を満たさず,退職改定をすることはできないとしたが,誤りである。被保険者である受給権者が資格を喪失した日から起算して1か月を経過した日において,特別老齢厚生年金の受給権者でなく,厚生年金法42条に基づいて支給される老齢厚生年金(本来支給の老齢厚生年金)の受給権者である場合などでも退職改定をすべきである。 (3) 本来支給の老齢厚生年金と特別老齢厚生年金とを別個の老齢厚生年金であるとする被控訴人の主張は,場面によって,別個の老齢厚生年金と解釈したり,しなかったりするもので,ご都合主義的であって許されるものではない。原審は,このような被控訴人の主張をそのまま採用したものであって,到底是認し得るものではない。 (4) 昭和60年法律第34号(昭和60年改正法)による国民年金法及び厚生年金法等の改正法は,厚生年金保険制度全体の均衡を保つことからいって,上記(2)のとおり解釈すべきである。仮に上記の法律の改正が控訴人のように退職改定のされない事案があることを見落としたものであるとしても,何の落ち度もない者が一方的に不利益を被るような法律解釈をすべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,2において当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断 当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 控訴人は,原判決が「65歳の誕生日前1か月以内に退職した者が被る実質的な不利益は,退職改定をした特別老齢厚生年金と退職改定をしない特別老齢厚生年金の1か月分の差額にとどまるから,著しい不利益を及ぼすものとまではいえない」としたことに関し,年金制度について,国が国民から信頼を得るためには,たとえ1円であっても誤差を生ずることがあってはならないものであり,不利益が著しくないからといって,許されるものではない旨主張する。 確かに,国民の年金制度に対する信頼を維持するためには,計算上の誤りは許されないというべきであるが,原審が,あえて65歳の誕生日前1か月以内に退職した者が被る実質的な不利益に言及する説示をしたのは,厚生年金法43条3項が被保険者資格の喪失日から退職改定をするまでの間に1か月という期間を設けたこと及びその期間の長さは合理的なものということができるとした上で,その結果,上記のように不利益を被る者の生ずることがあっても,制度を設ける一般的な観点から見て,原審の示す厚生年金法43条3項の解釈が不相当なものということはできない旨を示そうとしたためであり,単にその者の被る不利益が著しいものではないという理由で,被控訴人の主張に沿う判断をしたものではないから,控訴人の上記主張は,原判決に対する批判としては当を得ないものであるといわざるを得ない。 (2) 控訴人は,被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点である平成22年2月28日の時点では特別老齢厚生年金の受給権が消滅しているから,上記 ものであるといわざるを得ない。 (2) 控訴人は,被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点である平成22年2月28日の時点では特別老齢厚生年金の受給権が消滅しているから,上記の要件を満たさず,退職改定をすることはできないとした原審の判断が誤りであるとして,被保険者である受給権者が資格を喪失した日から起算して1か月を経過した日において,特別老齢厚生年金の受給権者でなくとも退職改定をすべきである旨主張する。しかし,厚生年金法43条3項の文言上そのような解釈をすることができないことは,原判決の説示するとおりであって,控訴人の主張は,採用することができない。 (3) 控訴人は,本来支給の老齢厚生年金と特別老齢厚生年金とを別個の老齢厚生年金であるとする被控訴人の主張について,場面によって,別個の老齢厚生年金と解釈したり,しなかったりするもので,ご都合主義的であって許されるものではないと主張する。 同主張は,結局のところ,本件に関し,特別老齢厚生年金について退職改定がされるためには,被保険者となることなくして被保険者資格を喪失した日から1月を経過した時点において,本来支給の老齢厚生年金ではなく,特別老齢厚生年金の受給権者である必要があるとした原審の判断が不当であると主張するものと解される。しかし,退職改定について定めた厚生年金法43条3項の「受給権者」とは,受給していた老齢厚生年金についての受給権者であることをいうものと解されるから,特別老齢厚生年金の受給権者であった控訴人について,退職改定をするためには,被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過した時点で特別老齢厚生年金の受給権者であることが必要であるとした原審の判断に誤りはない。 (4) 控訴人は,昭和60年改正法について,控訴人については退職 の資格を喪失した日から起算して1月を経過した時点で特別老齢厚生年金の受給権者であることが必要であるとした原審の判断に誤りはない。 (4) 控訴人は,昭和60年改正法について,控訴人については退職改定がされるように解釈すべきである旨主張するが,既に判示したところから明らかなとおり,控訴人の主張を採用することはできない。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であるから,本件控訴は理由がない。よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。東京高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官佐久間邦夫 裁判官蓮井俊治 裁判官岡田幸人
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