平成25年4月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第21311号特許権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年1月24日判決広島県三原市<以下略>原告三菱重工印刷紙工機械株式会社同訴訟代理人弁護士大野聖二同飯塚暁夫同清水 亘同訴訟代理人弁理士鈴木 守東京都港区<以下略>被告株式会社東京機械製作所同訴訟代理人弁護士松本好史同鈴木雅人同松井保仁同岸野 正同訴訟代理人弁理士仲 晃一 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録1記載の装置を生産し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録1記載の装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成23年7月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,「印刷物の品質管理装置及び印刷機」との名称の特許権(以下「本件特許権1」という。)及び「オフセット輪転機版 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,「印刷物の品質管理装置及び印刷機」との名称の特許権(以下「本件特許権1」という。)及び「オフセット輪転機版胴」との名称の特許権(以下「本件特許権2」という。)の各特許権者である原告が,被告の製造販売する別紙被告製品目録1記載の製品(以下「被告製品1」という。)は本件特許権1の,同目録2記載の製品(以下「被告製品2」という。)は本件特許権2の各技術的範囲に属すると主張し,①特許法100条1項,2項に基づき,被告製品1の製造,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,②本件特許権1の侵害による不法行為責任(民法709条,特許法102条3項)に基づき,平成18年4月7日から平成23年5月31日までの間の被告製品1の製造,販売等に関する損害賠償請求権1億3440万円の一部である500万円(附帯請求として,本訴状送達日の翌日である平成23年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を,③本件特許権2の侵害による不法行為責任(民法709条,特許法102条3項)に基づき,平成8年2月28日から平成23年3月26日までの間の被告製品2の製造,販売等に関する損害賠償請求権6088万8000円の一部である500万円(附帯請求として,本訴状送達日の翌日である平成23年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を各求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア(ア) 原告は,三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という。)の100%子会社であり,印刷機械・紙工機械の製造販売,据付け,アフターサービス,修理,改造及び保守並びに上記機械の部品の製作 ア(ア) 原告は,三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という。)の100%子会社であり,印刷機械・紙工機械の製造販売,据付け,アフターサービス,修理,改造及び保守並びに上記機械の部品の製作販売等を営んでいる。 (イ) 原告は,平成22年7月1日,会社分割(吸収分割)によって三菱重工の印刷・紙工機械事業を承継し,これと同時に,商号を「三菱重工印刷紙工機械販売株式会社」から現商号へと変更した。 イ被告は,新聞用輪転機,新聞輪転機用自動化・省力化機器,商業用輪転機,商業輪転機用自動化・省力化機器等の製造及び販売等を業とする株式会社である。 (2) 本件各特許権原告は,下記アのとおりの内容の特許(「本件特許1」)を有しており,また,下記イのとおりの内容の特許(「本件特許2」。以下,これらを併せて「本件各特許」という。)を有していた。 ア本件特許1特許番号特許第3790490号発明の名称印刷物の品質管理装置及び印刷機出願日平成14年3月29日出願番号特願2002-97824登録日平成18年4月7日イ本件特許2特許番号特許第2137621号発明の名称オフセット輪転機版胴出願日平成3年3月26日出願番号特願平3-61845登録日平成10年7月31日ウ本件各特許は,原告が,前記(1)ア(イ)のとおり会社分割(吸収分割)により三菱重工から印刷・紙工機械事業を承継した際に,会社分割に基づく一般承継により取得したものである。 エ本件特許2は,平成23年3月26日,存続期間満了により消 おり会社分割(吸収分割)により三菱重工から印刷・紙工機械事業を承継した際に,会社分割に基づく一般承継により取得したものである。 エ本件特許2は,平成23年3月26日,存続期間満了により消滅した。 (3) 本件各特許に係る明細書及び図面(これらを併せて,それぞれ「本件明細書1」などといい,本判決末尾に添付する。)の各「特許請求の範囲」における,次に摘示する各請求項の記載(なお,本件明細書2の請求項1については平成6年法律第116号による改正前の特許法64条による出願公告後の補正がされたもの。)は以下のとおりである。 ア本件特許1の請求項1(以下,同請求項に記載の発明を「本件発明1」という。)「印刷機の印刷部の下流に配置されて上記印刷部で用紙に印刷された印刷絵柄を読み取るラインセンサと,当該ラインセンサで読み取られた印刷絵柄データを記憶する印刷絵柄データ記憶部と,上記印刷絵柄の見本となる見本絵柄データを取得するデータ取得手段と,当該データ取得手段が取得した見本絵柄データを記憶する見本絵柄データ記憶部と,上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した印刷絵柄データと上記見本絵柄データ記憶部が記憶した見本絵柄データとを上記ラインセンサの画素単位或いは所定画素数のブロック単位で比較して上記画素毎或いは上記ブロック毎に濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差を計算し,計算した差と所定の閾値との比較により印刷欠陥を検出する印刷欠陥検出手段と,上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した印刷絵柄データと上記見本絵柄データ記憶部が記憶した見本絵柄データとを上記印刷絵柄の幅方向に上記印刷部のインキキーの幅単位で比較して上記インキキー幅毎に濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差を計算し,計算した差の大きさに応じて上記インキキーの開 本絵柄データとを上記印刷絵柄の幅方向に上記印刷部のインキキーの幅単位で比較して上記インキキー幅毎に濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差を計算し,計算した差の大きさに応じて上記インキキーの開度を調整するインキキー開度制御手段とを備え,上記所定の閾値を,上記インキキー開度制御手段による濃度制御において用いる上記の濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差の範囲よりも大きい値に設定したことを特徴とする,印刷物の品質管理装置。」イ本件特許2の請求項1(以下,同請求項に記載の発明を「本件発明2」 という。)「版を装着して使用するオフセット輪転機版胴において,前記版胴の表面層をクロムメッキ又は耐食鋼で形成し,該版胴の表面粗さRmaxを1.0μm≦Rmax≦100μmに調整したことを特徴とするオフセット輪転機版胴。」(4) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明を構成要件に分説すると,それぞれ次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」などという。)。 ア本件発明1の構成要件A 印刷機の印刷部の下流に配置されて上記印刷部で用紙に印刷された印刷絵柄を読み取るラインセンサと,B 当該ラインセンサで読み取られた印刷絵柄データを記憶する印刷絵柄データ記憶部と,C 上記印刷絵柄の見本となる見本絵柄データを取得するデータ取得手段と,D 当該データ取得手段が取得した見本絵柄データを記憶する見本絵柄データ記憶部と,E 上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した印刷絵柄データと上記見本絵柄データ記憶部が記憶した見本絵柄データとを上記ラインセンサの画素単位或いは所定画素数のブロック単位で比較して上記画素毎或いは上記ブロック毎に濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差を計算し,計算した タ記憶部が記憶した見本絵柄データとを上記ラインセンサの画素単位或いは所定画素数のブロック単位で比較して上記画素毎或いは上記ブロック毎に濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差を計算し,計算した差と所定の閾値との比較により印刷欠陥を検出する印刷欠陥検出手段と,F 上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した印刷絵柄データと上記見本絵柄データ記憶部が記憶した見本絵柄データとを上記印刷絵柄の幅方向に上記印刷部のインキキーの幅単位で比較して上記インキキー幅毎に濃度差 或いは濃度に相関するパラメータ値の差を計算し,計算した差の大きさに応じて上記インキキーの開度を調整するインキキー開度制御手段とを備え,G 上記所定の閾値を,上記インキキー開度制御手段による濃度制御において用いる上記の濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差の範囲よりも大きい値に設定したH ことを特徴とする,印刷物の品質管理装置。 イ本件発明2の構成要件I 版を装着して使用するオフセット輪転機版胴において,J 前記版胴の表面層をクロムメッキ又は耐食鋼で形成し,K 該版胴の表面粗さRmaxを1.0μm≦Rmax≦100μmに調整したL ことを特徴とするオフセット輪転機版胴。 (5) 被告の行為ア被告製品1(ア) 被告は,業として,被告製品1の生産,譲渡及び譲渡の申出を行っている。 (イ) 被告製品1の構成は別紙「被告製品1の構成」記載のとおりである(以下,別紙「被告製品1の構成」記載の構成をそれぞれ「構成a」などという。)(甲9,10,弁論の全趣旨)。 (ウ) 被告製品1の構成a,b,hは本件発明1の構成要件A,B,Hを各充足する。 イ被告製品2(ア) 被告は,本件特許2の存続期間中に,業として被告製品2の製造 9,10,弁論の全趣旨)。 (ウ) 被告製品1の構成a,b,hは本件発明1の構成要件A,B,Hを各充足する。 イ被告製品2(ア) 被告は,本件特許2の存続期間中に,業として被告製品2の製造,販売を行っていた。 (イ) 被告製品の構成jないしlは本件発明2の構成要件JないしLを各充足する。 2 争点(1) 被告製品1が本件発明1の技術的範囲に属するか。 ア 「見本絵柄データ」(構成要件C~F),「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)の充足性イ 「上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した…インキキー開度制御手段」(構成要件F)の充足性(2) 被告製品2が本件発明2の技術的範囲に属するか。 (3) 本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか。 ア記載要件違反の有無イ本件発明2は特許出願前に日本国内において公然実施をされたものに当たるか。 (4) 損害額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)ア(「見本絵柄データ」〔構成要件C~F〕,「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」〔構成要件G〕の充足性)(原告の主張)(1) 本件発明1の技術的意義ア本件発明1は,従来技術において,版掛け誤り判別処理装置,印刷欠陥検査装置,断裁見当制御装置,濃度制御装置などの各種品質管理装置を個別に独立して設けると,多くの設置スペースが必要となり,コストも高くなるという問題点があったことから,印刷物の品質管理に係る複数の機能を一つの装置に統合することにより,上記問題点を解決しようとするものである。 イすなわち,本件発明1の従来技術において,印刷欠陥検出処理とインキ キー開度制御処理(濃度制御処理)は,別個の装置によって行うものとさ とにより,上記問題点を解決しようとするものである。 イすなわち,本件発明1の従来技術において,印刷欠陥検出処理とインキ キー開度制御処理(濃度制御処理)は,別個の装置によって行うものとされていたのであって,これらの二つの機能を一つの装置に統合した印刷物の品質管理装置は,従前,存在しなかった。本件発明1は,このような技術水準の下で,同じラインセンサで読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出及びインキキー開度制御の双方に用いることで,両機能を一つの装置に統合し,上記アでみた設置スペースやコスト等の問題点を解決したものであり,このような点に技術的意義を有する。 ウ上記のとおり,従来技術においては,印刷欠陥検出と濃度制御は別個の装置によって行われており,両処理の検査目的及び対象範囲も全く異なるものであったことから,印刷欠陥検出処理において用いる閾値を濃度制御において用いる濃度差又は濃度に相関するパラメータ値の差(以下「濃度差等」という。)の範囲に関連付けて考えるという知見は存在しなかった。 すなわち,印刷欠陥とは,インキが付くべきところにインキが付いていない場合や,インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっている場合のような,通常の濃度調整では対処できない異常をいい,画素又はブロック単位で印刷絵柄と見本絵柄の濃度差等を比較することによって検出する。なお,比較の単位が小さいほど,小さい印刷欠陥を検出することができる。 これに対し,濃度制御とは,見本と比べて新聞紙面の濃度が異なる場合に,それを補正する制御をいい,具体的には,インキキーの幅の単位で,印刷絵柄と見本絵柄の濃度差を比較し,濃度差がある場合には,濃度差を減らすようインキの供給量を調整する処理をいうのであって,一般的には,数ページにわたる範囲における濃度差の平均値が用いられる。 ,印刷絵柄と見本絵柄の濃度差を比較し,濃度差がある場合には,濃度差を減らすようインキの供給量を調整する処理をいうのであって,一般的には,数ページにわたる範囲における濃度差の平均値が用いられる。 このように,両処理は,検査の目的及び検査対象範囲を全く異にするものであって,濃度制御が必要であるからといって印刷欠陥があるとは限らず,逆に,印刷欠陥があるからといって,紙面が見本より薄い又は濃いという状況になっているとも限らない。 以上のことから,従来技術において,印刷欠陥検出における閾値を濃度制御における濃度差の範囲に関連付けて考えるという知見は存在しなかったのである。 エこれに対し,本件発明1は,印刷欠陥検出とインキキー開度制御(濃度制御)を一つの装置に統合するに当たり,同じラインセンサからのデータを用いて両処理を行うこととしたものである。 インキキー開度制御処理は,印刷欠陥検出処理における検査対象範囲よりも広いインキキーの幅単位という広い範囲での濃度差の平均値を問題とするものであることから,同一のラインセンサで読み取ったデータを用いて印刷欠陥検出処理及びインキキー開度制御処理を行う場合,印刷欠陥検出の閾値がインキキー開度制御処理において用いる濃度差等の範囲より小さい値に設定されていると,濃度差等の平均値が印刷欠陥検出の閾値になった時点で,検査対象範囲内のいずれかの画素が,必ず,印刷欠陥検出の閾値以上となってしまい,インキキー開度制御による対処が可能であるにもかかわらず,印刷欠陥が検出されてしまうことになる。そこで,本件発明1は,印刷欠陥検出において用いる「閾値」を,インキキー開度制御において用いる「差の範囲」よりも大きい値に設定する構成を採用することで,同一のラインセンサで読み取ったデータを印刷欠陥検出処理及び 明1は,印刷欠陥検出において用いる「閾値」を,インキキー開度制御において用いる「差の範囲」よりも大きい値に設定する構成を採用することで,同一のラインセンサで読み取ったデータを印刷欠陥検出処理及びインキキー開度制御処理に併用しても,適切な濃度制御を行えるようにし,両処理を両立させたものである。 これは,本件発明1が公開された現在においては当然の事項に思えるかもしれないが,従来技術においては考えの及ばなかった事項に関するものであり,本件発明1は,両数値のこのような関係を明示した点に技術的意義を有するものである。 オ(ア) この点に関し,被告は,特開2001-353852号公報(乙1。 以下「乙1文献」という。)及び特開平6-115050号公報(乙1 0。以下「乙10文献」という。)を挙げて,本件発明1の従来技術において,同一の読取装置で読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出処理及び濃度制御処理の双方に用いることは公知であったと主張するが,次のとおり,誤りである。 (イ) 乙1文献記載の発明(以下「乙1発明」という。)は,印刷装置補助装置に関するものであり,印刷装置とは別の場所で,サンプル印刷物について検査を行うものである。乙1発明は,本件発明1記載のラインセンサを備えておらず,本件発明1のようなリアルタイムでの濃度制御や印刷欠陥制御を行うものではなく,前提となる装置が全く異なる。 また,乙1発明では,サンプル印刷物についてしか検査を行わないので,個々の印刷物に生じる可能性のある印刷欠陥を検出することはできない。乙1発明では,サンプル印刷物についてしか検査を行わないところからみて,個々の印刷物の合否判定を行うというよりは,印刷装置の設定の調整等を行うことを目的とするものであると解され,検出対象も本件発明1とは異なるもので プル印刷物についてしか検査を行わないところからみて,個々の印刷物の合否判定を行うというよりは,印刷装置の設定の調整等を行うことを目的とするものであると解され,検出対象も本件発明1とは異なるものである。 (ウ) また,乙10文献に記載の発明は,コラム毎に印刷画線濃度等に基づき印刷紙面の濃度判定を行い,その結果に基づき欠陥紙面の排出や欠陥修正制御を行うものであり(【0024】,【0042】),コラム毎の濃度判定と別に,画素単位あるいは所定画素数のブロック単位における印刷欠陥検出を行うものではなく,各処理において別個の閾値等を設けるものでもない。 (エ) したがって,これらの従来技術との関係で本件発明1の技術的意義を論じる被告の主張は失当である。 カ本件発明1の技術的意義は以上のとおりであり,「見本絵柄データ」(構成要件C~F),「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)の意義は,上記技術的意義を前提に検討されるべきである。 (2) 「見本絵柄データ」(構成要件C~F)の意義ア 「見本絵柄データ」(構成要件C~F)については,構成要件Cにおいて,印刷絵柄の見本となる画像データであることが概念的に規定されているのみであり,請求項1には,その取得手段を特定する記載や,これを単一の方法で取得しなければならない旨の記載はない。また,本件明細書1には,「見本絵柄データ」の取得方法として,①印刷部で用いられる版を作製した製版システムから,上記版の作製に用いられたデータ(以下「製版データ」という。)を取得する方法(請求項6)と,②所望の印刷品質を備えた見本印刷物をラインセンサにより読み取って取得する方法(以下「見本印刷物データ」という。)(請求項7)が記載されているが,見本絵柄データがどちらか一方の方法のみに 項6)と,②所望の印刷品質を備えた見本印刷物をラインセンサにより読み取って取得する方法(以下「見本印刷物データ」という。)(請求項7)が記載されているが,見本絵柄データがどちらか一方の方法のみにより取得したものでなければならないことを示す記載はない。加えて,本件明細書1において,請求項7は請求項6の発明を含むものとして記載されており,請求項7の品質管理装置において,上記①及び②の両方の手段によって見本絵柄データを取得してよいことが明らかにされているというべきである。 したがって,「見本絵柄データ」とは,ラインセンサで読み取った印刷絵柄データと比較するものであれば足り,印刷欠陥検出とインキキー開度制御において各用いるデータがそれぞれ異なる方法で取得したものであっても,「見本絵柄データ」を充足すると解するべきである。 イこの点に関し,被告は,本件発明1の技術的意義に照らせば,「見本絵柄データ」は単一のデータであると解するべきであると主張する。しかし,前記(1)のとおり,本件発明1の技術的意義は,同じラインセンサで読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出及びインキキー開度制御の双方に用いることで,両機能を一つの装置に統合することを可能とした点にあるのであって,印刷欠陥検出とインキキー開度制御のそれぞれに,別個の方法により取得した「見本絵柄データ」を用いても,本件発明1の上記趣旨を 損なうことはない。被告が本件発明1の出願経過として指摘する,原告の平成18年2月6日付け意見書(乙5)の記載は,ラインセンサで読み取った「印刷絵柄データ」を印刷欠陥検出及びインキキー開度制御の双方に用いることができること並びに印刷欠陥検出機能とインキキー開度制御機能を一つの装置に統合することにより省スペース化と低コストを実現することができること 」を印刷欠陥検出及びインキキー開度制御の双方に用いることができること並びに印刷欠陥検出機能とインキキー開度制御機能を一つの装置に統合することにより省スペース化と低コストを実現することができることを述べたものにすぎず,「見本絵柄データ」を単一のデータに限定する趣旨を含むものではない。 ウ被告は,本件発明1が,印刷欠陥検出処理における閾値をインキキー開度制御処理における濃度差等の範囲より大きい値に設定するものである(構成要件G)ことを理由に,「見本絵柄データ」が単一のデータであることを要するとも主張するが,両処理において見本絵柄データとして用いるデータが異なるものであったとしても,両者を同一のデータに変換して比較することは可能なのであって,被告の主張は失当である。 (3) 「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)の意義についてア前記(1)のとおり,構成要件Gは,本件発明1が,同じラインセンサから取得したデータを印刷欠陥検出と濃度制御の両処理に併用することとしたことから,従来技術において意識されることのなかった,両処理における「閾値」と「濃度差等の範囲」との関係を明示したものであって,このような点に技術的意義を有するものである。 したがって,構成要件Gを充足するためには,一つのラインセンサで読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出処理手段及びインキキー開度制御処理の両者に用いる品質管理装置において,前者の処理において用いられる「閾値」が,後者の処理において用いられる「差の範囲」よりも客観的にみて大きいものとなっていれば足り,設定に当たっての主観は充足性の議論に関係がない。 イこの点,被告は,印刷欠陥検出処理に用いられるデータとインキキー開度制御処理において用いられ みて大きいものとなっていれば足り,設定に当たっての主観は充足性の議論に関係がない。 イこの点,被告は,印刷欠陥検出処理に用いられるデータとインキキー開度制御処理において用いられるデータが異なる種類のものであった場合,両データの大小関係を比較することができないと主張する。しかし,異なる種類のデータであっても,同一データに変換し比較することが可能であることは,本件明細書1に,「スペクトル値,網点面積率,濃度及び色座標値を互いに関連付けるテーブル…が予め用意されており,印刷絵柄データと見本絵柄データは,それぞれ同内容のデータ…に変換され…」(【0025】)との記載があることから明らかである。そして,上記変換の結果,「閾値」と「差の範囲」が,構成要件G所定の関係となっていれば,構成要件Gを充足するものと解するべきである。 (4) 被告製品1の充足性ア 「見本絵柄データ」(構成要件C~F)被告製品1におけるRGB基準データとCMYK目標濃度データは,画像の保存形式は異なるものの,いずれも印刷絵柄の見本となる画像データであり,紙面監視手段と濃度制御手段にそれぞれ用いるものであるから,「見本絵柄データ」(構成要件C~F)に相当する。 イ 「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)(ア) 被告は,印刷欠陥とは通常の濃度調整では対処できない異常を指すものである以上,同一のデータの組合せの比較を2つの機能に共用する場合,当然に印刷欠陥の閾値は濃度制御において通常生じる差の範囲よりも大きいものとなる旨主張しているのであって,被告製品1において,紙面監視手段において用いる閾値が濃度判定手段において用いる濃度差等の範囲よりも大きいものであることを実質的に認めている。 (イ) 被告は,紙面監視手段に用いる るのであって,被告製品1において,紙面監視手段において用いる閾値が濃度判定手段において用いる濃度差等の範囲よりも大きいものであることを実質的に認めている。 (イ) 被告は,紙面監視手段に用いるRGB基準データはRGBデータであり,濃度判定手段に用いるCMYK目標濃度データはCMYKデータであって,これらの大小関係を比較することはできないと主張する。し かし,RGBデータとCMYKデータは相互に関連性を有するものであり,例えば甲13号証の161頁には,CMYKデータをRGBデータに変換する式(同頁の式(1))及びRGBデータをCMYKデータに変換する式(同頁の式(2))が示されているのであるから,両者が相互に変換可能であることは明らかであるところ,両者を一方に変換すれば大小の比較も可能であることは自明である。本件明細書1に,「スペクトル値,網点面積率,濃度及び色座標値を互いに関連付けるテーブル…が予め用意されており,印刷絵柄データと見本絵柄データは,それぞれ同内容のデータ…に変換され…」(【0025】)との記載があることも,両データを同一データに変換することが可能であることを裏付けている。 したがって,被告製品1において,両データを同一データに変換した上で,「閾値」と「差の範囲」を比較することは当然に可能である。 また,被告は,両データを比較した上での設定を行っていない旨も主張するが,両データの大小関係が客観的にみて構成要件G所定の関係になっていれば構成要件Gを充足するのであるから,被告の主観は被告製品1の構成要件G充足性に無関係である。 (ウ) したがって,被告製品1は,「見本絵柄データ」(構成要件C~F),「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)をいずれも充足する。 (被告の主張)( 無関係である。 (ウ) したがって,被告製品1は,「見本絵柄データ」(構成要件C~F),「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)をいずれも充足する。 (被告の主張)(1) 原告の主張は,事実については否認し,法的主張は争う。 (2) 本件発明1の技術的意義ア本件発明1は,本件発明1の出願当初の明細書(乙11。以下「当初明細書」という。)の段階では,単にラインセンサで読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段において共用することを内容とするもの(当初明細書の【請求項1】)であったところ,拒絶 理由通知書(乙12)において進歩性がないとされたことから,「閾値」と「差の範囲」に大小関係を設定すること等を追記する補正を行って,特許査定を受けるに至ったものである。 イ原告は,上記補正を行うに当たり,平成18年2月6日付け意見書(乙5)において,「引用文献1~5のいずれにも,本願発明(請求項1)のごとく印刷欠陥検出手段410とインキキー開度制御手段408とにおいて,それぞれ同じラインセンサ50で読み取った印刷絵柄データと見本絵柄データとを比較して印刷物の濃度制御及び印刷欠陥の検出を行う構成について記載や示唆はなく…」(3頁下から5行目)と記載しているが,以下のとおり誤りである。 上記拒絶理由通知書における引用文献3であった乙1文献には,【発明の実施の形態】として,印刷装置補助装置である色見台1において,撮像部13で印刷物2を一括読み取りした読取画像データRGB1及びRGB2を,印刷不良検査作業とインキ供給量データ作成作業の両手段に共用することが記載されている。 また,上記拒絶理由通知書に示されていない公知文献である乙10文献 データRGB1及びRGB2を,印刷不良検査作業とインキ供給量データ作成作業の両手段に共用することが記載されている。 また,上記拒絶理由通知書に示されていない公知文献である乙10文献には,【実施例10】として,新聞印刷検査装置(【0103】)が開示されているところ,同装置は,CCD撮像機20で複数の新聞コラムについて測定された画線情報と,対応する原画のスキャナ情報29との比又は差が所定の許容範囲に入っているかどうかを判断し,許容範囲外の印刷紙面をラインから除去することにより,正常印刷時欠陥検出を行うものであり(【0088】,【0103】,【図12】),かつ,上記印刷欠陥検出に用いるのと共通のCCD撮像機20による濃度の測定結果を,原画情報29からの画線面積又はインキ量のデータと比較して,正常印刷時の濃度判定を行い(【0096】~【0100】),インキポンプ送り出し量等の調整による濃度制御に上記判定結果を用いるものである(【004 8】,【0050】,【0051】)。加えて,上記装置において,印刷画像と比較される原画情報29としては,「コンピュータ組版の最終信号」及び「先行して印刷された紙面」が利用できるとされている(【0041】,【0044】)。 以上によれば,乙1文献記載のとおり,本件発明1の出願前の時点で,撮像部(本件発明1の「ラインセンサ」に相当する。)で読み取ったデータ(本件発明1の「印刷絵柄データ」に相当する。)を印刷欠陥検出及び濃度制御の両手段に用いる構成は公知であり,さらに,乙10文献記載のとおり,CCD撮像機(本件発明1の「ラインセンサ」に相当する。)で読み取った画像(本件発明1の「印刷絵柄データ」に相当する。)と,コンピュータ組版の最終信号(本件発明1の「製版データ」に相当す のとおり,CCD撮像機(本件発明1の「ラインセンサ」に相当する。)で読み取った画像(本件発明1の「印刷絵柄データ」に相当する。)と,コンピュータ組版の最終信号(本件発明1の「製版データ」に相当する。)と「先行して印刷された紙面」(本件発明1の「見本印刷物データ」に相当する。)を比較して印刷欠陥検出及び濃度制御を行うことも公知であった。 ウ以上の出願経過及び従来技術を考慮すれば,本件発明1の特徴部分は,乙1文献及び乙10文献に開示されていない構成であり,かつ,原告が補正により追加した構成である,印刷欠陥検出において用いる所定の閾値を,インキキー開度手段において用いる差の範囲よりも大きい値に設定する構成(構成要件G)に収斂することになる。 (3) 上記技術的意義を前提とした「見本絵柄データ」(構成要件C~F)の意義ア本件発明1における「見本絵柄データ」とは,印刷絵柄の見本となるデータとしてデータ取得手段により取得されるデータであり(構成要件C,D),印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段において,基準データとして,印刷絵柄データとの比較に用いられるものである(構成要件E,F)。 イ前記(2)のとおり,本件発明1は,印刷欠陥検出手段における印刷欠陥検出のための「閾値」を,インキキー開度制御手段におけるインキキーの開度調整のための「濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差の範囲」よりも大きい値に設定する構成(構成要件G)としたところに技術的意義を有するものであるところ,上記大小設定を行うためには,その前提として,両手段において同じ内容の比較が行われること,すなわち,両手段において用いられる印刷絵柄データと見本絵柄データが同一のものであることが必要となる。 し うためには,その前提として,両手段において同じ内容の比較が行われること,すなわち,両手段において用いられる印刷絵柄データと見本絵柄データが同一のものであることが必要となる。 しかるに,本件明細書には,「見本絵柄データ」の取得方法として,製版データを取得する方法と見本印刷物データを取得する方法が記載されており,このうち,見本印刷物データは,許容範囲内の品質を備えた印刷結果(OKシート)をラインセンサで読み取ったデータであるから,目標品質そのものである製版データと比較して,版の作成,用紙への印刷及び用紙上の印刷結果の読取りという過程を経て,画像品質が3段階に劣化したものということができる。また,見本印刷物データはRGBデータ,製版データはCMYKデータであるところ,RGBデータとは,レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の原色を用いた色の表現法であり,RGB各色につき0~255の256段階の単位のない数値の組合せでRGBカラースペースが表されるのに対し,CMYKデータとは,シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y),黒(K)の4色の網点面積率(網点階調における網点面積が単位面積に占める割合)による色の表現方法であり,0~100(網%)でCMYKカラースペースが表されるものである。そうすると,見本印刷物データと製版データは,画像品質及びデータ形式の2点において異なるものということになる。 見本印刷物データと製版データが,画像品質及びデータ形式の2点において全く異なるデータである以上,両データにおいてそれぞれ設定されて いる「閾値」等の大小を比較することは意味がなく,また,そもそも,単位の違いから,大小比較をすることが不可能である。そうすると,このような見本印刷物データと製版データを,「見 れ設定されて いる「閾値」等の大小を比較することは意味がなく,また,そもそも,単位の違いから,大小比較をすることが不可能である。そうすると,このような見本印刷物データと製版データを,「見本絵柄データ」として併用することは,本件発明1において予定されていないというべきである。 ウ本件明細書1の実施例の記載も,これを裏付けている。すなわち,本件明細書1には,見本絵柄データの取得方法に関し,製版データを取得する方法と見本印刷物データを取得する方法の「何れかの方法が好ましい。」と記載されており(【0020】),両データを「見本絵柄データ」として併用することについては記載がない。また,実施例として,「上流工程である製版システム70から見本絵柄のデータ(見本絵柄データ)が入力されるようになっている。」(【0022】),「見本絵柄データ記憶部402は,製版システム70から取得した見本絵柄データを記憶する部位である」(【0025】)等の記載の後に,「上述の実施形態では,製版システムから版作成用の画像データを見本絵柄データとして取得しているが,所望の印刷品質を備えた見本印刷物…を読み取ることで見本絵柄データを取得することも可能である。」(【0038】)との記載があり,製版データを使用する実施形態と,見本印刷物データを使用する実施形態が選択的に記載されている。これらの記載からみても,本件発明1において,製版データと見本印刷物データを「見本絵柄データ」として併用することが予定されていないことが明らかである。 エ原告は,本件明細書1の請求項7に請求項6の発明が引用されていることを理由として,本件明細書1には,製版データと見本印刷物データを「見本絵柄データ」として併用する発明が記載されていると主張する。しかし,見本絵柄 細書1の請求項7に請求項6の発明が引用されていることを理由として,本件明細書1には,製版データと見本印刷物データを「見本絵柄データ」として併用する発明が記載されていると主張する。しかし,見本絵柄データの取得方法は,製版データを取得する方法と見本印刷物データを取得する方法のいずれかによることが望ましい旨などの本件明細書1の記載は,当初明細書から変更されていないものであるから,本 件発明1は,「見本絵柄データ」として,製版データと見本印刷物データのいずれか一方を用いる発明として出願されたものというべきである。加えて,本件明細書1における「もう一つは,所望の印刷品質を備えた見本印刷物をラインセンサにより読み取ることで見本絵柄データを取得する方法である(請求項7)。」(【0020】。なお,「(請求項7)」の記載は,当初明細書に加筆して補正されたものである。)との記載からは,請求項7記載の発明が,見本印刷物データを「見本絵柄データ」とする発明であることが明らかなのであるから,請求項7は,「請求項1~6の何れか」ではなく,「請求項1~5の何れか」でなければ,明細書の記載要件に違反することになる。したがって,請求項7の記載を根拠に,本件明細書1に,製版データと見本印刷物データを「見本絵柄データ」として併用する発明が記載されているとみるのは相当ではない。 オ以上によれば,「見本絵柄データ」は,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段において,基準データとして共通に用いられる単一のデータでなければならず,見本印刷物データと製版データを併用する場合を含まないことが明らかである。 (4) 「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)の意義ア 「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)とは,印刷欠陥検 合を含まないことが明らかである。 (4) 「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)の意義ア 「上記所定の閾値を…大きい値に設定した」(構成要件G)とは,印刷欠陥検出において用いる閾値を濃度制御において用いる濃度差等の範囲よりも大きい値に設定するというものであるが,そもそも,印刷欠陥とは,「インキが付くべきところにインキが付いていなかったり,インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっていたりするような,通常の濃度調整では対処できない異常」(本件明細書1の【0004】)を指すものであるから,同一のデータの組合せを印刷欠陥検出とインキキー開度制御の両機能に共用する場合,印刷欠陥検出における閾値がインキキー開度制御において通常生じる濃度差等の範囲より大きい値となるのは当然である。乙10文献 にも,「コラム毎に撮像機による印刷画線の濃度レベルをフィルムスキャナによる画線面積や必要インキ量と比較し,この比較結果が許容指定値範囲内にあれば,印刷濃度が適正であると判断する。また,許容指定値範囲内になければ,印刷濃度が不適正であると判断する。」(乙10文献の【0048】),「印刷紙面の各コラムの印刷濃度が適性範囲内にあっても,印刷紙面全体として,コラム間の濃度ばらつきが許容できない程になる場合がある。このような状態を防止するために,コラム間の濃度ばらつきを小さくするように制御する。」(同【0052】)と記載されており,印刷欠陥検出のための閾値(許容指定値範囲)が濃度制御を行う濃度差の範囲(許容指定値内での濃度制御となる範囲)よりも大きいことが記載されている。 そうすると,単に「所定の閾値」が「濃度差等の範囲」よりも大きいことは各機能から自明の事項であって,印刷欠陥検出のための閾値をインキキー開度制御にお )よりも大きいことが記載されている。 そうすると,単に「所定の閾値」が「濃度差等の範囲」よりも大きいことは各機能から自明の事項であって,印刷欠陥検出のための閾値をインキキー開度制御における濃度差等の範囲よりも小さい値に設定することは考えられない。ただ,印刷欠陥検査装置と濃度制御装置が別個に設けられている従来装置では,印刷欠陥検出のための閾値と濃度制御のための濃度差の範囲がそれぞれ別々に設定されており,見本絵柄データもそれぞれ別々に取得するので,閾値と濃度差等の範囲を比較する必要がなかっただけである。 これに対し,本件発明1は,ラインセンサを一つにまとめ,印刷欠陥検出処理とインキキー開度制御処理を一体化品質管理装置にまとめ,さらに,両処理において用いる見本絵柄データも同一のものとしたため,印刷欠陥検出において用いる「閾値」を,インキキー開度制御における「濃度差等の範囲」よりも大きい値に設定することが必要となったものである。 イしたがって,「上記所定の閾値を…大きい値に設定する」(構成要件G)とは,印刷欠陥検出及びインキキー開度制御に各同一の見本絵柄デー タと印刷絵柄データを用いることを前提に,「閾値」と「濃度差等の範囲」を関連付け,その大小関係を積極的に設定することを意味するとみるほかない。 (5) 被告製品1の充足性についてア被告製品1の構成について(ア) 紙面監視手段被告製品1は,印刷部で用紙に印刷された絵柄を読取センサで読み取るが(構成a),これは,印刷された絵柄について,一定の画素単位で,反射光の種類及び量を測定・変換する動作を指しており,印刷絵柄データ(構成b)とは,上記のとおり測定・変換されたRGBデータを指す。 被告製品1は,上記のとおりRGBデータである印刷絵柄データを で,反射光の種類及び量を測定・変換する動作を指しており,印刷絵柄データ(構成b)とは,上記のとおり測定・変換されたRGBデータを指す。 被告製品1は,上記のとおりRGBデータである印刷絵柄データをRGBデータ用メモリに記憶し(構成b),その中で,印刷結果が良好な場合(良紙)のRGBデータをRGB基準データとして設定し,記憶した上で(構成c及びdの各前段),順次印刷される用紙から読み取った印刷絵柄データ(RGBデータ)を,上記RGB基準データと比較してR,G,Bそれぞれについて差分を求め,被告製品1の納入前に予め設定されている不良紙判定用閾値を超えるものについて,不良紙と判定するものである(構成e)。 (イ) 濃度判定手段被告製品1は,製版データをTIFF形式でCTPサーバーのメモリに記憶し,当該TIFFデータからCMYK目標濃度データを作成し,画像サーバーのメモリに記憶した上で(構成c及びdの各後段),順次印刷される用紙から読み取った印刷絵柄データ(RGBデータ)をCMYK濃度データ(面積率)に変換し,CMYK目標濃度データと画素単位で比較してC,M,Y,Kのそれぞれについて差分を求め,被告製品1の納入前に予め設定されるインキ制御用閾値を超える場合には,各イ ンキにつきインキキーの開度制御を行うものである(構成f)。 イ 「見本絵柄データ」(構成要件C~F)の充足性について上記のとおり,被告製品1は,紙面監視手段において,印刷絵柄データと比較すべきデータとしてRGB基準データを用いるのに対し,濃度判定手段においては,印刷絵柄データと比較すべきデータとしてCMYK目標濃度データを用いるものである。RGB基準データはRGBデータ,CMYK目標濃度データはCMYKデータであり,両者はデータ形式 判定手段においては,印刷絵柄データと比較すべきデータとしてCMYK目標濃度データを用いるものである。RGB基準データはRGBデータ,CMYK目標濃度データはCMYKデータであり,両者はデータ形式において異なるものであるから,被告製品1は単一のデータを印刷絵柄の見本として用いるものではなく,「見本絵柄データ」(構成要件C~F)を充足しない。 ウ 「上記所定の閾値を…大きい値に設定する」(構成要件G)の充足性について(ア) 被告製品1において,紙面監視手段において用いられる「閾値」と,濃度判定手段における「濃度差等の範囲」は,被告製品1納入前の段階で別個に設定されるものであり,一方の設定に当たり他方との比較は行われておらず,両者を関連付けた設定は行われていない。 (イ) そもそも,被告製品1において紙面監視手段に用いられる基準データはRGBデータであり,濃度判定手段に用いられる基準データはCMYKデータであって,両データは単位において異なるものであり,前者において用いられる「所定の閾値」と,後者において用いられる「濃度差等の範囲」の大小比較をすることができない。また,前者において用いられるデータは,後者において用いられるデータに比べて,版の作成,用紙への印刷及び印刷結果の読取りにより,品質が3段階に劣化したものであり,このように品質の異なる両データにおいてそれぞれ設定される「閾値」等の大小を比較することは意味がない。被告製品1は,このような理由から,紙面監視手段及び濃度判定手段において各用いる「閾 値」等の大小を関連付けていないのである。なお,被告製品1において,紙面監視手段と濃度判定手段が別個のシステムとして運用され,閾値等も各別に設定されている以上,その大小を比較設定しなくとも何ら支障がない。 (ウ) したがっ いのである。なお,被告製品1において,紙面監視手段と濃度判定手段が別個のシステムとして運用され,閾値等も各別に設定されている以上,その大小を比較設定しなくとも何ら支障がない。 (ウ) したがって,被告製品1は,紙面監視手段における「所定の閾値」を,濃度制御手段における「濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差の範囲よりも大きい値に設定した」ものではないから,構成要件Gを充足しない。 (6) 被告製品1の構成が従来技術と同一であることア乙10文献には,印刷装置が印刷版を形成する際に使用される画像データ(CMYKデータ)と,印刷装置から出力される印刷物を読み取った画像読取信号(RGBデータをCMYKデータに変換したもの)とを比較し,インキ供給量を調整する処理(【0106】,【0079】~【0085】)が記載されているが,上記処理は,被告製品1における濃度判定手段と同一である。また,乙1文献には,「画像データ作成手段3」で作成されたデータ(CMYKデータ)と印刷物の画像データ(RGBデータ)を,いずれもCIEL*a*b*データに変換し,比較して印刷不良検査を行う処理(【0057】~【0059】)が記載されているが,上記CMYKデータの代わりに良紙のデータを用いることは,従来技術であるとされており(【0009】),被告製品1の紙面監視手段は,上記従来技術と同一である。 イしたがって,RGB基準データ及びCMYK目標濃度データを用いる被告製品1の紙面監視手段及び濃度判定手段は従来技術を組み合わせたものにすぎず,本件発明1の技術的範囲に属しない。 2 争点(1)イ(「上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した…インキキー開度制御手段」〔構成要件F〕の充足性) (原告の主張)(1) 被告製品1の濃度判定手段 の技術的範囲に属しない。 2 争点(1)イ(「上記印刷絵柄データ記憶部が記憶した…インキキー開度制御手段」〔構成要件F〕の充足性) (原告の主張)(1) 被告製品1の濃度判定手段が,被告の主張する「画素」単位でデータを比較するものであるとしても,インキキー開度制御をする以上,最終的にはデータをインキキーの幅単位で集計しなければ(結果としてインキキーの幅単位で比較することと同じ),インキキー開度制御を通じた濃度制御をすることは不可能である。また,インキキーの幅単位で濃度比較を行っていると評価できる限り,インキキーの幅単位でデータを集計するに当たり,インキキー内における全画素の平均をとってもよいし,いくつかの画素の平均をとってもよいことはいうまでもない。 (2) したがって,被告製品1は,CMYK目標濃度データと印刷絵柄データとの比較をインキキーの幅単位で行うものであり,構成要件Fを充足する。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 被告製品1が「インキキーの幅単位」で比較を行うものではないことア被告製品1における濃度判定手段は,構成fのとおり,印刷絵柄データ(RGBデータ)をCMYKデータ(面積率)に変換した上で,目標濃度画像サーバーが,製版データをもとに,計算によって予め制御に適した画素(印刷用紙を,紙面進行方向とその垂直方向にそれぞれ複数に分割した,縦7.28mm×横12.7mmの領域)を選び出し,当該画素についてのみ,上記変換済みの印刷絵柄データとCMYK目標濃度データとの比較を行ってC,M,Y,Kの各差分を求め,特定のインキキーの幅に属する各画素における上記差分の平均を,インキ制御用閾値と比較することで,インキキーの開度制御(濃度判定)を行うものである。 イ以上のとおり,被告製品1 ,Kの各差分を求め,特定のインキキーの幅に属する各画素における上記差分の平均を,インキ制御用閾値と比較することで,インキキーの開度制御(濃度判定)を行うものである。 イ以上のとおり,被告製品1は,「画素単位」で基準となる濃度データと実際の濃度データとの比較を行い,C,M,Y,Kの差分を求めた上で,特定のインキキーの幅に属する上記各画素における差分の平均をインキ制 御用閾値と比較することで開度制御を行うものであり,「画素単位」で「比較」した上で,「インキキーの幅単位」で「制御」するものであり,「インキキーの幅単位」で「比較」を行うものに当たらず,構成要件Fを充足しない。 ウこの点,原告は,インキキーの開度制御をする以上,最終的にはデータの比較結果をインキキーの幅単位で集計して,インキキー開度制御を行うことが不可避であり,結果としてインキキーの幅単位で比較することと同じであると主張するが,本件発明1は,特許請求の範囲の記載において,印刷欠陥検出処理については「画素単位或いは所定画素数のブロック単位で比較して」(構成要件E)行うのに対し,インキキー開度制御処理については「インキキーの幅単位で比較して」(構成要件F)行うと記載しているのであって,原告の主張は,特許請求の範囲の記載におけるこのような書き分けを無視するものである。 3 争点(2)(被告製品2が本件発明2の技術的範囲に属するか。)(原告の主張)(1) 「版」(構成要件I)の意義について本件特許2の請求項1は,「版」について限定を加えておらず,本件明細書2の発明の詳細な説明にも「版」を限定する記載はない。また,CTP版もPS版の一種であり,刷版であることに変わりはない。したがって,「版」(構成要件I)を限定解釈するべきではなく,「版」(構成要件I) の発明の詳細な説明にも「版」を限定する記載はない。また,CTP版もPS版の一種であり,刷版であることに変わりはない。したがって,「版」(構成要件I)を限定解釈するべきではなく,「版」(構成要件I)とは,刷版であればPS版,CTP版のいずれも含むと解するべきである。 (2) 被告製品2は,版を装着して使用するオフセット輪転機版胴であるから,構成要件Iを充足し,本件発明2の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2)ア本件明細書2によれば,本件発明2は,「従来のオフセット輪転機の 版胴は耐食性,耐摩耗性,汚れ除去性等の観点から,…Rmax<1.0μmに調整されたもの…が用いられていた」(【0002】)が,このような版胴に版を装着して印刷する場合,版2と版胴1の相対位置が変化するいわゆる版ずれトラブルが発生する(【0004】)ことから,「上記の版ずれトラブルを容易に防止できる版胴を提供することを目的」とし(【0005】),版胴の表面粗さRmaxを1.0μm≦Rmax≦100μmに調整した(【請求項1】)ものである。 イオフセット輪転機の刷版としてはPS版(印刷版材にフィルムを密着させて使用するもの)とCTP版(印刷版材に直接データを焼き付けることによって作成するもの)があるが,CTP版は平成5年頃から普及し始めたものであり,本件発明2の出願当時,刷版とはPS版を指すものであった。したがって,本件発明2は,PS版を使用する版胴について,上記アのとおり,版ずれトラブルを防止しようとする技術であるということができる。 そうすると,本件発明2の技術的範囲が,その出願時には存在しなかったCTP版にも及ぶというためには,CTP版における版ずれの問題が,本件発明2が解決しようとした であるということができる。 そうすると,本件発明2の技術的範囲が,その出願時には存在しなかったCTP版にも及ぶというためには,CTP版における版ずれの問題が,本件発明2が解決しようとしたPS版における版ずれの問題と技術的に同質のものでなければならない。 ウそもそも,版ずれ(版胴のくわえ部から印刷版がずれる現象)は,CTP版が普及し,また,カラー印刷の多用及び印刷スピードの高速化に伴い,色ずれの原因として考えられるようになった問題であり,CTP版の導入以前の,PS版を使用していた時期には,ほとんど起こらないものとされていた(甲11,乙7の【0006】)。これは,原告が従前製造していたPS版用オフセット輪転機の版胴表面は,独自にRmax<1.0μmまで研磨されていたものと考えられるところ(本件明細書2の【0002】),他社が製造していたPS版用オフセット輪転機の版胴表面は,そ こまで平滑ではなかったためであると考えられる。 本件発明2は,このようにほとんど起こらないものとされていたPS版における版ずれについて,単に版胴の表面粗さを従来品よりも粗くすることで防止しようとする技術であるということができるところ,CTP版における色ずれは,印刷機,印刷速度,印刷部数,ブランケットの種類,インキや湿し水の種類等の印刷条件によって,版伸び又は版ずれに起因して生じるものとされているのであって(乙7の【0006】),単に版胴の表面粗さを調整することで解決できる問題ではない。これは,もともとRmax≧1.0μmであった版胴でも,CTP版への変更に伴って版ずれが起こるようになったことからも明らかである。 エしたがって,CTP版における版ずれの問題は,本件発明2が解決しようとしたPS版における版ずれの問題とは技術的に異質のもので の変更に伴って版ずれが起こるようになったことからも明らかである。 エしたがって,CTP版における版ずれの問題は,本件発明2が解決しようとしたPS版における版ずれの問題とは技術的に異質のものであるというべきであるから,本件発明2の技術的範囲は,CTP版には及ばず,本件発明2にいう「版を装着して使用するオフセット輪転機版胴」(構成要件I)とは,PS版用の版胴に限定して解釈されるべきである。 (3) 被告製品2のうち,別紙被告製品目録記載(1)の版胴については平成22年8月に,同目録記載(2)の版胴については平成20年3月に,同目録記載(3)の版胴については平成19年11月に,完全にCTP版用に変更されている。したがって,これらの被告製品2は,構成要件Iを充足せず,本件発明2の技術的範囲に属しない。 4 争点(3)ア(記載要件違反の有無の有無)(被告の主張)(1) 実施可能要件違反ア本件発明2は,オフセット輪転機版胴においてRmaxを1.0μm≦Rmax≦100μmの範囲に調整したことにより版ずれ防止効果を奏することを内容とするものであるところ,本件明細書2には,版胴のどの部 分をどのように計測してRmaxの値を算出するのか,また,どの部分のRmaxが本件発明2の範囲内に入っていれば上記効果を奏することができるのかについて手がかりとなる記載は一切ない。 イ本件特許2の出願当時のJIS規格(乙2)において,最大高さRmaxは,「断面曲線から基準長さだけを抜き取った部分(「抜取り部分」)の平均線に平行な2直線で抜取り部分を挟んだとき,この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定して,この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。」と定義されており,また,Rmaxが100μm以下の場合の基準長さ 抜取り部分を挟んだとき,この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定して,この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。」と定義されており,また,Rmaxが100μm以下の場合の基準長さは8mmと定められているから,本件発明2は,版胴のうち,基準長さである8mmについて計測した数値をクレームしたものということになる。本件発明2が版を装着する部分の表面粗さを問題とするものであることが当業者にとって自明であるとしても,版胴表面の幅は約1800mm,周長は約1100mmもあり,このうち「版を装着する部分」といってもなお広範であるから,上記基準長さである8mmの取り方は無限に存在するというべきである。加えて,本件発明2の出願当時において,研削加工精度の問題から,版胴の表面粗さを均一にすることは困難であり,実際,同じ版胴でも測定箇所により表面粗さにかなりのばらつきがみられることからすれば(乙16,17),このような表面粗さのばらつきにも配慮した測定方法の記載なくして,当業者が本件発明2を実施することは不可能である。 ウしたがって,本件特許2は,特許法36条6項1号(実施可能要件)に違反する。 (2) サポート要件違反ア本件発明2は,争点(2)に関する被告の主張(2)アのとおり,オフセット輪転機版胴においてRmaxを1.0μm≦Rmax≦100μmの範囲に調整したことにより版ずれ防止効果を奏することを内容とするものであ り,表面粗さRmaxを上記範囲に限定したことにのみ特徴のある発明である。このように,従来技術の構成の数値,形状,配列等を限定ないし変更することにより生じた発明については,その限定,変更等による効果が従来技術と異質のものであるか,又は同質の効果でも顕著な優位性があり,それが当業者にとって容 構成の数値,形状,配列等を限定ないし変更することにより生じた発明については,その限定,変更等による効果が従来技術と異質のものであるか,又は同質の効果でも顕著な優位性があり,それが当業者にとって容易でなく,かつ,その効果も予測が困難な場合にのみ進歩性が認められる。したがって,本件発明2においては,Rmaxの上記上限値及び下限値が,従来技術との関係で臨界的意義をもつものでなければなければならず,かつ,本件発明2の作用効果が上記のとおり従来技術と異質又は顕著な優位性を有するものでなければならないことが明らかである。 イしかるに,本件明細書2には,【図2】のグラフ及びその説明(【0009】)が示されているが,Rmaxをいかなる値にした版胴をいくつ実験に用いたのか,図2の3つの丸印からなぜ実線のグラフが得られるのか,いかなる条件をどのように変更して破線のグラフ及び「実験条件によるデータの変更範囲」が得られたのかについては開示・示唆がない。また,「Rmax>100μmでは,版胴の寸法精度や汚れ除去特性に問題が生じることが考えられる」(【0010】)との記載からも明らかなとおり,上限値については実験例がないようである。そうすると,【図2】のグラフは根拠のないものであり,本件明細書には,Rmaxの上限値及び下限値の臨界的意義を基礎付ける実験例や理論的根拠の記載がないということになる。なお,本件明細書2の【0011】には,「Rmax≒6.0μm」の値が実験結果として記載されているが,この実験が【図2】記載の実験例の一部であるのかどうかすら明確ではなく,使用した版胴が4枚であるのに破線が2本であることの説明も一切ない。 ウしたがって,本件明細書2には,Rmaxの範囲の記載と得られる版ずれ防止効果との関係の技術的意味に関し,本件発 はなく,使用した版胴が4枚であるのに破線が2本であることの説明も一切ない。 ウしたがって,本件明細書2には,Rmaxの範囲の記載と得られる版ずれ防止効果との関係の技術的意味に関し,本件発明2に接した当業者が, 本件発明2に示されたRmaxの範囲であれば,所望の(上限値及び下限値において従来技術との関係で臨界的意義があるような,異質又は顕著な)版ずれ防止効果が得られると認識できる程度の具体例を示した記載がされているものとはいえないから,本件特許2は,特許法36条6項1号(サポート要件)に違反するものである。 (3) したがって,本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものに当たる。 (原告の主張)(1) 被告の主張は争う。 (2) 実施可能要件違反について本件発明2は,版胴の版ずれ防止を技術的課題とする発明である以上,版を装着する部分のRmaxを問題としていることは当業者にとって自明であり,版胴のどの部分のRmaxであるかを全て具体的に明示しなかったからといって,本件特許2が実施可能要件に違反するものではない。 (3) サポート要件違反について本件明細書2には,Rmaxの数値範囲に関し,「Rmax≧100μmでは,版胴の寸法精度や汚れ除去特性に問題が生じることが考えられるので,Rmaxの上限値をRmax≦100μmとする」,「Rmax<1.0μmでは従来版胴に比べて版ずれ防止効果が小さいので,その下限をRmax≧1.0μmとする。」との記載がある。したがって,本件特許2にサポート要件に違反する点はない。 (4) したがって,本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものではない。 5 争点(3)イ(本件発明2は特許出願前に日本国内において公然実施をされたものに当 反する点はない。 (4) したがって,本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものではない。 5 争点(3)イ(本件発明2は特許出願前に日本国内において公然実施をされたものに当たるか。)(被告の主張) (1)ア本件特許2の出願前である,昭和62ないし63年に被告が製造し,昭和63年8月に東日印刷株式会社(以下「東日印刷」という。)に納入したオフセット輪転機「ET-1」(以下「ET-1機」という。)の版胴の表面粗さRmaxは,同機の「版胴追加工図」(乙15の1)によれば1.5μmに設計されていた。 また,平成23年1月31日及び同年2月24日,ET-1機のA列14Pの版胴2本を測定したところ,表面粗さRzは2.47~4.02μmであった。ET-1型機の版胴の表面層は耐食鋼で形成されており(乙22の1及び乙23の1の「同表面にステンレス鋼溶着のこと」との記載),表面が腐食しないものである上,上記測定は,刷版の掛け替えや印刷時の摩擦のない周縁部を測定したものであり,このような部分の表面粗さが20年程度で変化するものではないことは自明である。 以上に加えて,ET-1型機の版胴について,納入後の入替えや改造が行われていないこと(乙26)にも照らせば,同機の版胴は,昭和63年8月当時において,表面層の表面粗さRmaxを1.0μm≦Rmax≦100μmに調整したものであったということになる。 イ新聞印刷機業界の慣行として,新聞社や印刷会社との間でオフセット輪転機について秘密保持契約が締結されることはなく,新聞社や印刷会社は,オフセット輪転機が設置された工場を一般にも広く公開している。このことは,株式会社高速オフセット摂津工場が,原告による被告製品1の表面粗さの測定調査(乙20)を拒 ることはなく,新聞社や印刷会社は,オフセット輪転機が設置された工場を一般にも広く公開している。このことは,株式会社高速オフセット摂津工場が,原告による被告製品1の表面粗さの測定調査(乙20)を拒んでいないことからも明らかである。 (2) 以上のとおり,被告は,本件特許2の出願前から,本件発明2に記載の版胴と同一の構成のオフセット輪転機版胴を製造販売し,上記版胴は納入先工場において広く公開されていたから,本件特許2は,特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)に該当し,特許無効審判により無効とされるべきものに当たる。 (原告の主張)(1) 被告の主張は,事実については否認し,法的主張については争う。 (2) Rmax1.5μmの機械が納入されたことの立証がないことア被告は,東日印刷に納入されたET-1型機が乙14号証記載の輪転機であり,乙15号証記載の版胴及び乙21ないし23号証記載の版胴が,乙14号証記載の輪転機に設置されるものであることを前提として主張する。 (ア) しかし,そもそも,被告からは,ET-1型機の注文,販売,納入等の取引関連書類が一切提出されておらず,東日印刷に納入されたET-1型機が乙14号証記載の輪転機であることについては,東日印刷従業員の陳述書(乙26)しか証拠がない。上記陳述書は,約24年前の取引について,具体的な参照資料も示さず述べるものであり,乙14号証自体から得られる情報以上の情報に基づき陳述されたものであるとは解されない。 (イ) また,乙14,15号証は設計図面にすぎず,かつ,その作成日は,ET-1型機の納入時期であるとされる昭和63年8月の約1年前であるところ,図面の完成から納入までの期間が1年というのは通常より (イ) また,乙14,15号証は設計図面にすぎず,かつ,その作成日は,ET-1型機の納入時期であるとされる昭和63年8月の約1年前であるところ,図面の完成から納入までの期間が1年というのは通常よりも長いものであり,その間に乙14,15号証が修正されている可能性も大きい。加えて,乙14号証に東日印刷の承認印等が見当たらないことも考慮すれば,乙14号証が,最終的に納入された製品の図面であるとの保証は全くない。 (ウ) 加えて,被告は,乙22及び23号証は,乙21号証の詳細図面であると説明するが,その根拠とする「L05-39003A-1」などの記載は,版胴の部番にすぎない。乙22の2及び乙23の2には,乙21とは異なる発注番号及び顧客番号が記載されている上,「ステンレスコート処理追加」の日付が,ET-1型機納入の約3年半も前である 「60.3.19」と記載されているのであるから,乙22,23号証が乙21号証の詳細図面であることの立証にも欠けるものである。 (エ) さらに,被告自身,同一部番の版胴について納入先が変更になる場合があることを認めているのであり(乙21ないし23の表題部の記載変更に関する被告の主張参照),乙21号証の表題部に「ET-1」等の表示があっても,これが最終的に変更されている可能性もあるというべきである。 (オ) 以上のとおり,乙14,15,21ないし23には多数の問題点が存在するから,これらの証拠に基づきET-1型機の納入時の状態(表面粗さ)を認定するべきではない。 イ平成23年における測定結果について(ア) 版胴の表面粗さが,約22年間にわたり使用されることによりどのように変化するのかは不明であり,平成23年における表面粗さの測定結果をもって,昭和63年における納入当時の表面粗さを推測する (ア) 版胴の表面粗さが,約22年間にわたり使用されることによりどのように変化するのかは不明であり,平成23年における表面粗さの測定結果をもって,昭和63年における納入当時の表面粗さを推測することは不可能である。また,刷版のかかる部分の測定結果が1箇所を除きいずれも1.0μm未満であること及び刷版のかからない部分の測定結果において,最小値と最大値との間に2倍以上のずれが生じていることに照らせば,上記版胴がRmax≧1.5μmに設計されたものであるとは考えられない。 (イ) なお,被告は,乙16の1を平成23年1月31日の測定結果,乙17の1を同年2月24日の測定結果をそれぞれ集計したものであると主張する。しかし,乙16の2には,測定日として「2000年(平成12年)4月25日」と表示されているところ,測定器の測定日を合わせるのを失念した旨の主張自体不自然なものである上,全測定箇所について測定結果が保存されていないことも不自然である。これに加えて,乙16の1と乙17の1の各測定結果が大きく相違していることからす れば,乙16の1の測定結果は,表示日付のとおり平成12年4月25日に測定されたものであるとも考えられる。これを前提に両測定結果を比較すると,乙16の1の測定結果より乙17の1の測定結果の方が表面粗さの数値が増加している箇所が複数箇所においてみられるのであり,時間の経過により表面粗さの数値がどのように変化するかが不明であることは,この点においても明らかである。 (3) 公然性についての立証がないこと被告は,ET-1型機に関する売買契約書等の取引書類を何ら提出しておらず,納入先である東日印刷が守秘義務を負わないことについて立証できていない。 (4) 以上によれば,公然実施の主張 被告は,ET-1型機に関する売買契約書等の取引書類を何ら提出しておらず,納入先である東日印刷が守秘義務を負わないことについて立証できていない。 (4) 以上によれば,公然実施の主張は立証不十分であり,本件特許2が特許法29条1項2号により特許無効審判により無効とされるべきものであるとは認められない。 6 争点(4)(損害額)(原告の主張)(1) 本件発明1に係る損害額被告は,遅くとも平成18年4月7日から平成23年5月末日までの間に,被告製品1の製造販売等により,少なくとも11億2000万円を売り上げた。これにより本件特許1の特許権者が受けるべき金銭の額(特許法102条3項)は,1億3440万円を下らない。 (2) 本件発明2に係る損害額被告は,遅くとも平成8年2月28日から平成23年3月26日までの間に,被告製品2の製造販売等により,少なくとも5億0740万円を売り上げた。これにより本件特許2の特許権者が受けるべき金銭の額(特許法102条3項)は,6088万8000円を下らない。 (3) 原告は,前記前提事実(1)ア(イ)の三菱重工からの会社分割により,被告 に対する上記(1)及び(2)の損害賠償請求権(上記会社分割時までのもの)を承継した。 (4) 原告は,本訴において,上記(1)の損害のうち500万円及び上記(2)の損害のうち500万円(附帯請求として,上記各金額に対する訴状送達日の翌日である平成23年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)を請求する。 (被告の主張)被告製品1及び2の売上高については否認し,その他の点については争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告製品1が本件発明1の技術的範囲に属するか。)(1) 「見本絵 告の主張)被告製品1及び2の売上高については否認し,その他の点については争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告製品1が本件発明1の技術的範囲に属するか。)(1) 「見本絵柄データ」(構成要件C~F)の充足性(争点(1)ア前段)ア 「見本絵柄データ」の意義(ア) 本件発明1に係る特許請求の範囲の記載によれば,「見本絵柄データ」(構成要件C~F)とは,印刷機の印刷部で用紙に印刷された印刷絵柄の見本となるデータであり(構成要件C),印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段において,印刷絵柄データとの比較に用いるものである(構成要件E,F)と解される。 しかし,上記特許請求の範囲の記載からは,「見本絵柄データ」の具体的内容は明らかではない。そこで,本件明細書1の記載を参酌する。 (イ) 本件明細書1には,次の記載がある。 a 【従来の技術】【0003】「…輪転印刷機で生産される印刷物の品質管理装置としては,…版掛け誤り判別処理装置20,印刷欠陥検査装置21,断裁見当制御装置22及び濃度制御装置23が知られている。版掛け誤り判別処理装置20は,…バーコード5aをバーコードリーダ(或いはカメラ)10で読み取ることで,正しく版5が装着されているか判別するようになっている。」 b 【0004】「印刷欠陥検査装置21は,…ラインセンサ11で印刷絵柄2を読み取って,得られた印刷絵柄2の画像データと予め印刷開始後に取込んだ印刷絵柄(正常な印刷絵柄の印刷物)の画像データとを所定のエリア毎に比較し,濃度差が所定の閾値を超えているエリアについては,印刷欠陥が有ると判断するようになっている。」c 【0005】「断裁見当制御装置22は,…CCDカメラ12を用いて用紙1の印刷絵柄領域2外の領域に が所定の閾値を超えているエリアについては,印刷欠陥が有ると判断するようになっている。」c 【0005】「断裁見当制御装置22は,…CCDカメラ12を用いて用紙1の印刷絵柄領域2外の領域に印刷されたマーク(断裁見当マーク)2aを撮影し…基準位置に対するずれを計測する。」d 【0006】「濃度制御装置23は,…濃度制御用の濃度センサ11により印刷絵柄2を読み取り,得られた印刷絵柄2の濃度データと予め読み取っておいたOKシートの濃度データとをインキキー7の幅単位で比較し,その濃度差に応じて各インキキー7の開度を調整するようになっている。」e 【0007】【発明が解決しようとする課題】「上記の品質管理装置20,21,22,23は,…用紙1の走行経路に沿って複数の入力装置10,11,12,13が設置されることになるため,輪転印刷機内に多くの設置スペースが必要になってしまう。また,各品質管理装置20,21,22,23は独立しており,且つそれぞれに専用の表示器30,31,32,33を有しているために,これらの品質管理装置20,21,22,23や表示器30,31,32,33を設置するための多くの設置スペースも必要になってしまう。さらに,このように多くの装置類が必要となるためにコストも高くなってしまう。」f 【0008】「本発明は,このような課題に鑑み創案されたもので,無駄の無い構成により省スペース且つ低コストで印刷物の品質管理できるようにした,印刷物の品質管理装置及び印刷機を提供することを 目的とする。」g 【0009】【課題を解決するための手段】「上記目的を達成するための手段として,本発明は,品質管理のためのデータ入力手段としてラインセンサを用い,このラインセンサで読み取った印刷絵柄データを利 g 【0009】【課題を解決するための手段】「上記目的を達成するための手段として,本発明は,品質管理のためのデータ入力手段としてラインセンサを用い,このラインセンサで読み取った印刷絵柄データを利用して各種の品質管理処理を行うことで,印刷物の品質管理にかかる複数の機能を一つの装置に統合した。」h 【0010】「…本発明の印刷物の品質管理装置は,…大きい値に設定する(請求項1)。このような構成によれば,ラインセンサが読み取った画像データを印刷欠陥の検出とインキキー開度の調整に有効活用することができ,印刷欠陥の検出機能とインキキー開度の調整機能(印刷物の濃度制御機能)とを一つの装置に統合して省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」i 【0011】「上記の印刷物の品質管理装置は,…印刷絵柄データと…見本絵柄データとの比較を複数のエリアで行い,その全体的な一致/不一致により版の掛け誤りを判別する版掛け誤り判別手段をさらに備えることもできる(請求項2)。これにより,ラインセンサが読み取った画像データを…版の掛け誤りの判別にも有効活用することができ,印刷欠陥の検出機能,インキキー開度の調整機能,及び版の掛け誤り判別機能を一つの装置に統合してさらに省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」j 【0013】「上記の印刷物の品質管理装置が版掛け誤り判別手段を備える場合,版掛け誤り判別手段による判別処理は次のような処理方法が好ましい。すなわち,…印刷絵柄データの濃度ヒストグラムと…見本絵柄データの濃度ヒストグラムとを印刷欠陥検出手段での比較単位よりも広いエリア単位で比較して,…版の掛け誤りを判別する(請求項3)。このように…処理を行うことで比較計算の計算量を少 なくすることができ,版掛け誤り判 ムとを印刷欠陥検出手段での比較単位よりも広いエリア単位で比較して,…版の掛け誤りを判別する(請求項3)。このように…処理を行うことで比較計算の計算量を少 なくすることができ,版掛け誤り判別機能の統合に伴う計算負荷を低減することができる。」k 【0014】「また,上記の印刷物の品質管理装置において,…ラインセンサを印刷部と断裁部との間に配置するとともに,印刷部から断裁部までの用紙の走行長を調整する走行長調整手段と,走行長調整手段を制御して上記走行長を修正する断裁見当制御手段とをさらに備える。断裁見当制御手段は,ラインセンサの印刷絵柄データから印刷絵柄の天地方向の境界位置と断裁基準位置とのずれを検出し,検出したずれを打ち消す方向に走行長調整手段を制御する(請求項4)。これにより,ラインセンサが読み取った画像データを断裁見当の制御にも有効活用することができ,断裁見当の制御機能も一つの装置に統合してさらに省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」l 【0016】「なお,上記の印刷物の品質管理装置が断裁見当制御手段を備える場合において,ラインセンサによる印刷絵柄の読み取りは次のような方法で行うのが好ましい。すなわち,印刷絵柄の少なくとも一方の天地方向の境界近傍は細かい分解能で読み取り,この境界近傍を除く印刷絵柄上の領域は境界近傍よりも粗い分解能で読み取る(請求項5)。…このように…読み取ることで解析に伴う計算量を少なくすることができ,断裁見当制御機能の統合に伴う計算負荷を低減することができる。」(ウ) 本件明細書1の上記記載に照らすと,本件発明1は,従来技術においては,版掛け誤り判別処理装置,印刷欠陥検査装置,断裁見当制御装置及び濃度制御装置のそれぞれについて,①各装置の入力装置が用紙の走行経路 件明細書1の上記記載に照らすと,本件発明1は,従来技術においては,版掛け誤り判別処理装置,印刷欠陥検査装置,断裁見当制御装置及び濃度制御装置のそれぞれについて,①各装置の入力装置が用紙の走行経路に沿って複数設置され,②各装置の品質管理装置がそれぞれ独立しており,そのため各装置の品質管理装置毎に表示器が設けられ,多くの設置スペースが必要となり,コストも高くなってしまうということ を解決課題としたものである(【0007】)。 上記解決課題を解決するためには,入力装置と品質管理装置の両面にわたって,スペースの削減を図る必要があることになる。 本件発明1は,このうち,印刷絵柄データ入力装置の改善について,各装置の印刷絵柄データ入力手段を統合したものとしてラインセンサを用い,各装置が共通してこのライセンサによって読み取られたデータを使用することとした(【0009】),すなわち,印刷絵柄データ入力手段を一体化したものである。 他方,品質管理装置の一体化については,明確な記載はないものの,「印刷物の品質管理にかかる複数の機能を一つの装置に統合した」(【0009】),「印刷欠陥の検出機能とインキキー開度の調整機能(印刷物の濃度制御機能)とを一つの装置に統合して省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」(【0010】),「印刷欠陥の検出機能,インキキー開度の調整機能,及び版の掛け誤り判別機能を一つの装置に統合してさらに省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」(【0011】),「断裁見当の制御機能も一つの装置に統合してさらに省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」(【0014】)との記載のほか,実施例に関する「本実施形態にかかる印刷物の(品)質管理装置は,本体である一体 御機能も一つの装置に統合してさらに省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」(【0014】)との記載のほか,実施例に関する「本実施形態にかかる印刷物の(品)質管理装置は,本体である一体化品質管理装置40にラインセンサ50と表示器60とが組み合わせられている。」(【0022】),「一つの一体化品質管理装置40内に全ての機能(掛け誤り判別,断裁見当制御,インキキー開度制御及び印刷欠陥検出)が集約されているので,一体化品質管理装置40と表示器60を一つずつ備えるだけで従来通りの品質管理を行うことができる。」(【0034】),「一体化品質管理装置40は,上記全ての機能を集約して備えることが必須ではなく,要求される品質管理項目に応じて必要な機 能のみを備えることは勿論可能である。」(【0036】)との記載も参酌すれば,備えられるべき品質管理装置については,各装置が一体化されることが前提となっているものと解される。このように品質管理装置を一体化することにより,表示器も一本化されることになる(【0034】参照)。 (エ) 上記のとおり,本件発明1は,印刷絵柄データの入力手段を一体化するとともに,品質管理装置(それに伴う表示器)も一体化する発明であると認められるが,このような装置面での一体化に加えて,取得される見本絵柄データについても一本化(被告のいう単一化)したものであるかについて,次に検討する。 a 本件明細書1には,次の記載がある。 「本発明は,品質管理のためのデータ入力手段としてラインセンサを用い,このラインセンサで読み取った印刷絵柄データを利用して各種の品質管理処理を行うことで,印刷物の品質管理にかかる複数の機能を一つの装置に統合した。」(【0009】)「なお,上記の印刷物の品 を用い,このラインセンサで読み取った印刷絵柄データを利用して各種の品質管理処理を行うことで,印刷物の品質管理にかかる複数の機能を一つの装置に統合した。」(【0009】)「なお,上記の印刷物の品質管理装置において,データ取得手段による見本絵柄データの取得方法は以下の何れかの方法が好ましい。一つは,印刷部で用いられる版を作製した製版システムから,版の作製に用いられた版作製用の画像データを見本絵柄データとして取得する方法である(請求項6)。もう一つは,所望の印刷品質を備えた見本印刷物をラインセンサにより読み取ることで見本絵柄データを取得する方法である(請求項7)。」(【0020】)「見本絵柄データ記憶部402は,製版システム70から取得した見本絵柄データを記憶する部位である。製版システム70から見本絵柄データ記憶部402への見本絵柄データの入力は,通信ネットワークを介したオンライン入力でもよく,磁気ディスク等の記録媒体を介 したオフライン入力でもよい。なお,ラインセンサ50では一般にスペクトル値が計測される一方,見本絵柄データのデータ形式としては,各色(C,M,Y,K)の網点面積率や濃度や色座標値(L,a,b)が用いられる。一体化品質管理装置40には,これらスペクトル値,網点面積率,濃度及び色座標値を互いに関連づけるテーブル(図示略)が予め容易ママされており,印刷絵柄データと見本絵柄データは,それぞれ同内容のデータ,ここでは濃度に変換された上でそれぞれの記憶部401,402に記憶される。」(【0025】)b 上記【0020】の記載は,請求項6が製版システムから見本絵柄データを取得する場合であり,請求項7が見本印刷物をライセンサで読み取ることにより見本絵柄データを取得する場合であって,両請求項について, 記【0020】の記載は,請求項6が製版システムから見本絵柄データを取得する場合であり,請求項7が見本印刷物をライセンサで読み取ることにより見本絵柄データを取得する場合であって,両請求項について,いずれも単一の見本絵柄データを取得する方法を記載する方法として説明されているようにも見える。 そこで,上記各請求項の記載を見てみると,本件明細書1の【請求項6】の記載は,「上記データ取得手段は,印刷部で用いられる版を作製した製版システムから,上記版の作製に用いられた見本絵柄のデータを取得することを特徴とする,請求項1~5の何れか1項に記載の印刷物の品質管理装置」というものであり,また,【請求項7】の記載は,「上記データ取得手段は,所望の印刷品質を備えた見本印刷物を上記ラインセンサにより読み取ることで上記見本絵柄データを取得することを特徴とする,請求項1~6の何れか1項に記載の印刷物の品質管理装置」というものである。 ここでの【請求項7】の記載は,【請求項6】を引用する部分を含むものであるから,その場合には,請求項6の製版システムから見本絵柄データを取得する方法と見本印刷物から見本絵柄データを取得する方法が併用されることになる。 そこで,前記の発明の詳細な説明の【0020】の記載に基づいて請求項7が請求項6を引用する部分を除外して限定的に解釈すべきか,ひいては,主たる請求項に記載された本件発明1がデータの取得方法を併用する形態を否定しているものかが問題となる。 c そこで,まず,本件発明の解決課題との関係で上記限定解釈が導かれるかについて考えてみると,前記のとおり,本件発明1は,印刷物の状態に関するデータの入力装置及び表示装置を含む品質管理装置を機能毎に各別に設けることにより,装置類が物理的に増加し,設置スペースやコストの増 いて考えてみると,前記のとおり,本件発明1は,印刷物の状態に関するデータの入力装置及び表示装置を含む品質管理装置を機能毎に各別に設けることにより,装置類が物理的に増加し,設置スペースやコストの増加につながることを従来技術における問題とし,入力装置をラインセンサのみとし,品質管理装置も統合することにより,上記課題を解決しようとするものであるということができる。したがって,本件発明1は,見本絵柄データの取得手段に起因する設置スペースやコストの問題を解決すべき課題とするものではなく,また,従来技術における上記課題を解決するための手段として,見本絵柄データの入力手段に関し言及するものでもない。 見本絵柄データの取得手段を各種品質管理機能において使い分けた場合に,本件発明1における,品質管理装置を一つに統合し,省スペースかつ低コストの品質管理装置を提供するという上記作用効果が阻害されるものであれば,そのような構成は,本件発明1において予定されていない構成であるとみるべきことになる。しかし,本件明細書1において,見本絵柄データとして製版データを用いる場合のデータ取得手段は,「通信ネットワークを介したオンライン入力でもよく,磁気ディスク等の記録媒体を介したオフライン入力でもよい。」(【0025】)とされているのであって,設置スペースやコストの増加につながるような装置を必要とするものではない。また,見本印刷物データを用いる場合のデータ取得手段は,ラインセンサからの読 み取りによるものとされる(【0038】)のであって,ラインセンサを,印刷絵柄データ及び見本印刷物データの取得装置として併用するものであり,新たな装置を必要とするものではない。したがって,これらの取得手段を併用したとしても,装置が物理的に増加し,設置スペースやコストの増加 データ及び見本印刷物データの取得装置として併用するものであり,新たな装置を必要とするものではない。したがって,これらの取得手段を併用したとしても,装置が物理的に増加し,設置スペースやコストの増加をもたらすものではないと解されるから,本件発明1に係る作用効果を阻害することはない。 したがって,本件発明の解決課題との関係で限定解釈が導かれるものではない。 d 次に,本件明細書1の他の記載について見る。 本件明細書1の【発明の実施の形態】には,製版データを見本絵柄データとして取得する例が記載された上で(【0022】~【0035】),「上述の実施形態では,製版システムから版作成用の画像データを見本絵柄データとして取得しているが,所望の印刷品質を備えた見本印刷物(いわゆるOKシート)をラインセンサ50で読み取ることで見本絵柄データを取得することも可能である。」(【0038】)との記載がされている。 したがって,本件明細書1において,製版システムから取得されたデータ(製版データ)又は所望の印刷品質を備えた見本印刷物をラインセンサで読み取ったデータ(見本印刷物データ)を取得し,「見本絵柄データ」とすることが開示されているものということができ,少なくとも製版データ及び見本印刷物データは,本件発明1の「見本絵柄データ」(構成要件C~F)として予定されているものであるということができる(なお,この点については,当事者間に争いがない。)。 また,製版データを見本絵柄データとして使用する実施例の記載(【0022】~【0035】)の後に,「なお,上述の実施形態で は,製版システムから版作成用の画像データを見本絵柄データとして取得しているが,所望の印刷品質を備えた見本印刷物(いわゆるOKシート)をラインセンサ50で読み取ることで見本絵柄デ 施形態で は,製版システムから版作成用の画像データを見本絵柄データとして取得しているが,所望の印刷品質を備えた見本印刷物(いわゆるOKシート)をラインセンサ50で読み取ることで見本絵柄データを取得することも可能である。」(【0038】)との記載がされている点については,製版データと見本絵柄データを併用する構成を排除する趣旨のものとまでは解されない。 これらの点のほかに,本件明細書1に,上記データを併用する構成を排除するものとみるべきような記載は見いだせない。 e 以上に基づき,本件明細書1の【0020】欄の記載に基づいて請求項7を限定解釈するべきかを検討すると,同欄の記載においては,製版データを見本絵柄データとして取得する方法と,見本印刷物データを見本絵柄データとして取得する方法は,いずれも,見本絵柄データの取得方法として「好ましい」ものとして挙げられているものにすぎず,本件明細書1の上記記載が,「見本絵柄データ」として,製版データ又は見本絵柄データのいずれか一方のみを用いる構成に限定する趣旨までも含むものであるとは解されない。また,同欄の「所望の印刷品質を備えた見本印刷物をラインセンサにより読み取ることで見本絵柄データを取得する方法である(請求項7)。」との記載については,請求項7記載の発明が,請求項6を引用する場合を除き,見本印刷物データのみを見本絵柄データとする構成を示すものであり,上記記載は,このような場合における構成を示したものにすぎないものと解されるのであって,請求項7が請求項6を引用する場合を排除する趣旨の記載であるとまでは解されない。 f 以上によれば,本件明細書1の請求項7記載の発明は,「(見本印刷物データを見本絵柄データとして取得する)請求項1~6の何れか1項に記載の印刷物の品質管理装置」という であるとまでは解されない。 f 以上によれば,本件明細書1の請求項7記載の発明は,「(見本印刷物データを見本絵柄データとして取得する)請求項1~6の何れか1項に記載の印刷物の品質管理装置」というものであり,請求項6記 載の発明は,「(製版データを見本絵柄データとして取得する)請求項1~5のいずれか1項に記載の印刷物の品質管理装置」というものであるから,本件明細書1の請求項7には,請求項6を引用する発明として,製版データを取得する手段と見本印刷物を取得するデータの両方を見本絵柄データの取得手段として併用する構成が記載されているものと解される。請求項2ないし5は,いずれも本件発明1である請求項1に従属するものであるところ,本件発明1は,見本絵柄データを,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段に用いるものであるから(構成要件E及びF),本件発明1において,見本絵柄データの取得方法として,製版データ及び見本印刷物データを併用する構成とは,製版データと見本印刷物データを,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段における「見本絵柄データ」としてそれぞれ用いる構成を意味するものと解することになる。したがって,本件明細書1において,本件発明1は,このような発明を含むものとして記載されているものと解するのが相当である。 (オ) この点に関し,被告は,製版データと見本印刷物データを,印刷欠陥検出手段とインキキー開度制御手段において,「見本絵柄データ」としてそれぞれ用いる構成は,①本件明細書1の記載に反するものであり,また,②本件発明1の技術的意義にも反するものであるから,請求項7はサポート要件に反するものであり,同記載を参酌して「見本絵柄データ」の意義を解釈するのは相当ではなく,また,③本件発明1が構成要件Gを含むものである以上, 的意義にも反するものであるから,請求項7はサポート要件に反するものであり,同記載を参酌して「見本絵柄データ」の意義を解釈するのは相当ではなく,また,③本件発明1が構成要件Gを含むものである以上,上記構成は採り得ず,かつ,④上記構成は,本件発明1の出願経過において原告により除外されたものであると主張する。このうち,①,②については,前記のとおりであるから,以下では,③構成要件Gとの関係及び④出願経過に関する点について検討する。 a(a) まず,③構成要件Gとの関係についてみると,被告は,この点 について,本件発明1において,印刷欠陥検出手段において用いられる「所定の閾値」を,インキキー開度制御手段においてインキキー開度制御が行われる「濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差の範囲」(「濃度差等の範囲」)よりも大きい値に設定することが必須である(構成要件G)ところ,そのためには,前提として,両処理において同じ内容の比較が行われること,すなわち,両処理において用いられる印刷絵柄データと見本絵柄データが同一のものであることが必要であると主張する。そして,(i)データ形式において異なるものである製版データと見本印刷物データとを印刷欠陥検出手段とインキキー開度制御手段にそれぞれ用いると,両処理における比較結果に大小関係を設定することができず,また,(ii) 見本印刷物データは,製版データと比較して品質の劣るデータであるから,これらを印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段にそれぞれ用いた場合,両手段において同一の内容の比較が行われていると評価することができないと主張する。 (b) 上記(i)について確かに,本件明細書1には,「ラインセンサ50では一般にスペクトル値が計測される一方,見本絵柄データのデータ形式として と評価することができないと主張する。 (b) 上記(i)について確かに,本件明細書1には,「ラインセンサ50では一般にスペクトル値が計測される一方,見本絵柄データのデータ形式としては,各色(C,M,Y,K)の網点面積率や…色座標値(L,a,b)が用いられる。」(【0025】),「…見本印刷物(いわゆるOKシート)を…読み取ることで見本絵柄データを取得することも可能である。この場合は見本絵柄データも印刷絵柄データと同じくスペクトル値となるので…」(【0038】)との記載があり,製版データと見本印刷物データがデータ形式において異なるものであることが予定されているものと解することができる。 しかし,本件明細書1には,「…一体化品質管理装置40には, これらスペクトル値,網点面積率,濃度及び色座標値を互いに関連づけるテーブル…が予め容易ママされており,印刷絵柄データと見本絵柄データは,それぞれ同内容のデータ,ここでは濃度に変換された上でそれぞれの記憶部401,402に記憶される。」(【0025】)と記載されているのであって,印刷絵柄データ及び見本絵柄データのデータ形式を変換することが可能であることが記載されているものということができる。また,本件明細書1は,請求項1(本件発明1)において,見本絵柄データと印刷絵柄データを「濃度」又は「濃度に相関するパラメータ値」により比較して印刷欠陥検出及びインキキー開度制御を行う旨記載しているところ,請求項3(請求項2を引用するものであり,請求項2は請求項1を引用するものである。)においては,見本絵柄データと印刷絵柄データを「濃度ヒストグラム」により比較して版掛け誤り判別を行う旨が記載されているのであって,見本絵柄データ及び印刷絵柄データを,各制御に適したデータ形式に 。)においては,見本絵柄データと印刷絵柄データを「濃度ヒストグラム」により比較して版掛け誤り判別を行う旨が記載されているのであって,見本絵柄データ及び印刷絵柄データを,各制御に適したデータ形式に変換して制御を行うことが,むしろ予定されているものということができる。 そうすると,本件発明1が,構成要件Gとの関係で,印刷欠陥検出手段とインキキー開度制御手段において,同じ比較単位による比較がされていることを必要とするものであるとしても(なお,この点については,構成要件Gの解釈において検討する。),データ形式の変換により,両手段におけるデータ形式を同一のものとし,両手段における比較単位を同じものとすることは可能であり,かつ,データ形式の変換を行うこと自体は,本件明細書1においても予定されているものと解されるのであるから,印刷欠陥検出手段とインキキー開度制御手段において用いられる見本絵柄データが,当初からデータ形式において同一のものであることを要するものではない。 (c) 上記(ii)について見本印刷物データは,「所望の印刷品質を備えた見本印刷物」を読み取ることで取得されたデータであるから(【請求項7】),その品質において製版データとほぼ同一のものであると解されるのであって,被告の主張はその前提を欠くものというべきである。 b また,④出願経過に関する点についてみると,原告は,本件特許1の出願経過において,特許庁審査官による拒絶理由通知(乙12)を受けて,平成18年2月6日付け手続補正書において,請求項の一部について削除し,また,請求項1に関し,本件発明1の構成要件Gに相当する部分を追加するなどの補正を行い,これと同日付けで,意見書(乙5)を提出していることが認められる(乙5,11,12)。 の一部について削除し,また,請求項1に関し,本件発明1の構成要件Gに相当する部分を追加するなどの補正を行い,これと同日付けで,意見書(乙5)を提出していることが認められる(乙5,11,12)。 しかし,上記補正の内容や,上記意見書の内容を見ても,「見本絵柄データ」として製版データと見本印刷物データを併用する構成を排除したものとみるべきような記載は見いだせない。 c したがって,被告の主張はいずれも相当ではなく,構成要件Gとの関係で「見本絵柄データ」を限定解釈することはできない。 (カ) 以上によれば,製版データ及び見本印刷物データを,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段における「見本絵柄データ」としてそれぞれ用いる構成であっても,「見本絵柄データ」(C~F)を充足するものと解するのが相当である。 イ被告製品1の「見本絵柄データ」(構成要件C~F)の充足性別紙「被告製品1の構成」記載のとおり,被告製品1は,紙面監視手段において,良紙時点でティーチング(基準値取り込み)をして取得したRGB基準データを印刷絵柄の見本として用いるものであるから(構成e),本件明細書1における見本印刷物データを紙面監視手段における見本絵柄データとして使用するものである。また,被告製品1は,濃度判定手段に おいて,製版システムから取得したCMYK目標濃度データを印刷絵柄の見本として用いるものであるから(構成f),本件明細書1における製版データを濃度判定手段における見本絵柄データとして使用するものである。 したがって,RGB基準データとCMYK目標濃度データは,いずれも「見本絵柄データ」(構成要件C~F)を充足する。 (2) 構成要件C,D充足性RGB基準データ及びCMY したがって,RGB基準データとCMYK目標濃度データは,いずれも「見本絵柄データ」(構成要件C~F)を充足する。 (2) 構成要件C,D充足性RGB基準データ及びCMYK目標濃度データがいずれも「見本絵柄データ」に相当することは前記(1)イのとおりであるところ,被告製品1は,これらを各取得する手段と(構成c),各記憶するメモリ(紙面監視用データ用メモリ及び濃度制御用データ用メモリ。構成d)を備えるのであるから,構成要件C及びDを充足する。 (3) 構成要件E充足性ア証拠(甲9,10)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1の紙面監視手段(構成e)は,具体的には,①読取センサにより,用紙に印刷される絵柄につき,一定の画素単位で,R,G,Bがそれぞれ0~200の範囲のどの段階にあるかを測定・変換し,②このうち,良紙時点においてティーチング(基準値取り込み)したもの(RGB基準データ)を紙面監視用データ用メモリに記憶し,また,③印刷される用紙から順次読み取ったもの(印刷絵柄データ)をRGBデータ用メモリに記憶した上で,④印刷絵柄データのスペクトル値(R,G,Bを0ないし200の間で読み取った数値)とRGB基準データのスペクトル値(同)を,読取センサの画素単位でR,G,Bそれぞれについて比較し,その差分を上記画素毎に計算した上で,⑤上記差分が不良紙判定用閾値を超える場合には,不良紙と判定するものであると認められる。 イ被告製品1の「RGB基準データ」,「紙面監視用データ用メモリ」,「印刷絵柄データ」,「RGBデータ用メモリ」が,構成要件Eの「見本 絵柄データ」「見本絵柄データ記憶部」,「印刷絵柄データ」,「印刷絵柄データ記憶部」に各相当することは前述のとおりである。また,被告製品1における比較及 タ用メモリ」が,構成要件Eの「見本 絵柄データ」「見本絵柄データ記憶部」,「印刷絵柄データ」,「印刷絵柄データ記憶部」に各相当することは前述のとおりである。また,被告製品1における比較及び差分の計算は,「画素或いは所定画素数のブロック単位で」行われているものであると認められる。さらに,「濃度に相関するパラメータ値」とは,スペクトル値,網点面積率,色座標値等を指すものと解されるところ(【0025】),被告製品1の紙面監視手段においてその差を算出する「スペクトル値」は,「濃度に相関するパラメータ値」に相当し,「不良紙判定用閾値」は「所定の閾値」に相当する。 ウ以上によれば,被告製品1の構成eは,構成要件Eを充足する。 (4) 構成要件F充足性(争点(1)イ)ア証拠(甲9,10)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1の濃度判定手段(構成f)は,①RGBデータ用メモリが記憶した印刷絵柄データをRGBデータからCMYK濃度データ(面積率)に変換してCMYK濃度データ(面積率)メモリに記憶し,②画像サーバーが,製版データをもとに計算によって予め制御に適した領域(印刷用紙を,紙面進行方向7.28mm×その垂直方向12.7mmに分割したもの)を選び出した上で,③この領域毎に,上記のとおりCMYK濃度データ(面積率)に変換済みの印刷絵柄データと,濃度制御用データ用メモリに記憶されているCMYK目標濃度データを比較し,C,M,Y,Kそれぞれについて網点面積率の差分を計算した上で,④特定のインキキーの幅に属する上記各領域における差分の平均を,インキ制御用閾値と比較することにより,インキキーの開度制御を行うものであると認められる。 イ被告製品1の「印刷絵柄データ」,「CMYK濃度データ(面積率)メモリ」,「CMYK目標濃度デー インキ制御用閾値と比較することにより,インキキーの開度制御を行うものであると認められる。 イ被告製品1の「印刷絵柄データ」,「CMYK濃度データ(面積率)メモリ」,「CMYK目標濃度データ」,「濃度制御用データ用メモリ」が,構成要件Fの「印刷絵柄データ」,「印刷絵柄データ記憶部」,「見本絵柄データ」,「見本絵柄データ記憶部」に各相当することは前述のとおり である。また,被告製品1の濃度判定手段においてその差が算出される「網点面積率」は,「濃度に相関するパラメータ値」に相当する。 ウ(ア) 被告は,被告製品1の濃度判定手段が,上記のとおり,紙面から選び出された複数の領域において印刷絵柄データとCMYK目標濃度データとの比較を行い,差分を計算するものであることから,「インキキーの幅単位で」印刷絵柄データと見本絵柄データとの比較を行い,濃度差等を計算するものではなく,構成要件Fを充足しないと主張する。 (イ) しかし,構成要件Fが,印刷絵柄データと見本絵柄データを「インキキーの幅単位で」比較し,「インキキーの幅毎に」濃度差等を計算するものとしているのは,インキ供給量がインキキーの開度によって調整されるものであり,インキキーの幅単位でしか,インキ供給量(濃度)を調整できないものであることから(【0006】,【0031】),濃度の制御をするためには,インキキーの幅における濃度差が,全体としてどのようなレベルにあるのか(見本絵柄データと比較して,印刷絵柄データが薄いのか,濃いのか,その差はどの程度か)を把握する必要があるためであると解される。そうすると,構成要件Fを充足するためには,印刷絵柄データと見本絵柄データの濃度差が,最終的にインキキーの幅毎に計算されていると評価できれば足りると解するのが相当である。 ( であると解される。そうすると,構成要件Fを充足するためには,印刷絵柄データと見本絵柄データの濃度差が,最終的にインキキーの幅毎に計算されていると評価できれば足りると解するのが相当である。 (ウ) 上記アのとおり,被告製品1は,紙面から複数の領域を選び出して印刷絵柄データとCMYK目標濃度データとの比較を行い,C,M,Y,Kの各差分を計算するものであるが,上記のとおり計算した差分を,インキキーの幅毎に集計し,インキキーの幅における上記差分の平均値を算出するものであるから,インキキーの幅毎に,印刷絵柄データとCMYK目標濃度データの濃度差等が計算されていると評価することができる。 なお,上記のとおり,被告製品1は,紙面から複数の領域を選び出して,当該領域についてのみ,印刷絵柄データとCMYK目標濃度データの差分を算出するものである。しかし,構成要件Fは,上記ウ(イ)のとおり,インキキーの幅における濃度差が,全体としてどのようなレベルにあるのかを把握し,上記濃度差に応じてインキキーの開度を制御することにより,濃度制御を行うというものであって,印刷絵柄データと見本絵柄データとの比較及び濃度差等の計算は,上記濃度差の把握に必要な程度でされていれば足り,インキキーの幅に属する紙面全体について比較及び濃度差等の計算をすることは必ずしも必要ではないものと解される。そして,被告製品1の濃度判定手段(構成f)は,上記アのとおり,制御に適した領域を選び出し,比較及び差分の計算をすることで,濃度制御を行うというものであるから,上記領域における比較及び差分の計算は,上記程度の濃度差の把握に十分なものであると評価することができる。 (エ) 以上によれば,被告製品1の構成fは,構成要件Fを充足する。 (5) 構成要件G充足性(争 及び差分の計算は,上記程度の濃度差の把握に十分なものであると評価することができる。 (エ) 以上によれば,被告製品1の構成fは,構成要件Fを充足する。 (5) 構成要件G充足性(争点(1)ア後段)ア構成要件Gの意義について(ア) 構成要件Gは,印刷欠陥検出手段において,見本絵柄データと印刷絵柄データの比較により,濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差(「濃度差等」)を計算し,上記濃度差等と「所定の閾値」との比較により印刷欠陥を検出し(構成要件E),また,インキキー開度制御手段において,見本絵柄データと印刷絵柄データとの比較により,濃度差等を計算し,上記濃度差等の大きさに応じて,インキキー開度制御を行うところ(構成要件F),印刷欠陥検出手段における上記「所定の閾値」を,「濃度制御において用いる上記の濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値の差の範囲」(以下「濃度差等の範囲」という。)よりも 大きい値に設定することを記載したものである。 (イ) このうち,「濃度制御において用いる濃度差等の範囲」の意義については,構成要件Fにおいて対応する記載がなく,その意義が明確ではない。 そこで,本件明細書1の記載を参酌すると,本件明細書1には,「印刷欠陥とは,…通常の濃度調整では対処できない異常を指している。」(【0004】),「インキキー開度の変化に伴うインキ供給量の変化が,印刷絵柄2と見本絵柄との濃度差を解消する方向にインキキー7を作動させる」(【0031】),「印刷欠陥検出部410は,画素別濃度比較部409で計算された濃度差を所定の閾値と比較する。ここでは,インキが付くべきところにインキが付いていない場合や,インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっている場合のように印 部410は,画素別濃度比較部409で計算された濃度差を所定の閾値と比較する。ここでは,インキが付くべきところにインキが付いていない場合や,インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっている場合のように印刷濃度に異常が生じる欠陥を検出するため,上記の閾値は,インキキー幅別濃度比較部407及びインキキー開度制御部408による濃度制御において通常生じる濃度差の範囲よりも,格段に大きい値に設定されている。…」(【0033】)との記載がある。 本件明細書1の上記記載に照らすと,本件発明1において,インキキー開度制御は,インキキーの開度の大小によって通常生じ得る濃度差の範囲において,上記濃度差を解消するようインキキー開度を調整するものであり,このような通常の濃度調整では対処できないような,大きな濃度差が存在する場合は,濃度調整によるのではなく,印刷欠陥があるものと判定することが予定されているものと解することができる。そうすると,「濃度制御において用いる濃度差等の範囲」とは,インキキー開度制御が,同制御により対処可能な程度の一定の濃度差等の範囲でのみ行われるものであることを前提として,インキキー開度制御を行う濃度差等の範囲,すなわちインキキー開度制御を行う濃度差等の差分の範 囲の上限値を意味するものとして記載されているものと解するのが相当である。 (ウ) なお,「濃度差等」(濃度又は濃度に相関するパラメータ値の差の範囲)として,具体的には,濃度,スペクトル値,網点面積率,色座標値等が想定されることは前記(3)イのとおりである。「所定の閾値」とは,印刷欠陥検出手段において,印刷絵柄データと見本絵柄データとの間の濃度差等につき,当該数値を超えた場合に印刷欠陥を検出するものとして設定されるものであり,「濃度差等の範囲」とは,インキキー 」とは,印刷欠陥検出手段において,印刷絵柄データと見本絵柄データとの間の濃度差等につき,当該数値を超えた場合に印刷欠陥を検出するものとして設定されるものであり,「濃度差等の範囲」とは,インキキー開度制御を行う濃度差等の差分の範囲の上限値を意味するものと解されるのであるから,「所定の閾値」及び「濃度差等の範囲」は,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段において各用いられる「濃度差」又は「濃度に相関するパラメータ値」のデータ形式(濃度,スペクトル値,網点面積率,色座標値等)に応じて,これに対応する単位によってそれぞれ設定されるものと解される。 (エ) 以上を前提に,構成要件Gの意義について検討するに,原告は,構成要件Gは,「所定の閾値」が,「濃度差等の範囲」よりも客観的にみて大きいものであるという両者の関係を明示した点に意義があるものであるから,構成要件Gを充足するためには,「所定の閾値」と,「濃度差等の範囲」が単位において異なるものであったとしても,両者を同一の単位に換算して比較した結果,前者が後者より大きい値になっていれば足り,両者の単位が同一であることや,上記大小関係が予め意識的に設定されているものであることを要しないと主張する。 (オ) そこで検討するに,本件明細書1には,「このような構成によれば,ラインセンサが読み取った画像データを印刷欠陥の検出とインキキー開度の調整に有効活用することができ,印刷欠陥の検出機能とインキキー開度の調整機能(印刷物の濃度制御機能)とを一つの装置に統合して省 スペース化と低コスト化とを実現することができる。」(【0010】)との記載がある。 この記載から見れば,「所定の閾値」と「濃度差等の範囲」は,印刷欠陥の検出とインキキー開度の調整に用いられるのであるから,印刷欠陥の検出やイ することができる。」(【0010】)との記載がある。 この記載から見れば,「所定の閾値」と「濃度差等の範囲」は,印刷欠陥の検出とインキキー開度の調整に用いられるのであるから,印刷欠陥の検出やインキキー開度の調整のために,その大小関係が予め意識的に設定されているものと解される。 また,【発明の実施の形態】を見ると,「…ラインセンサ50では一般にスペクトル値が計測される一方,見本絵柄データのデータ形式としては,各色(C,M,Y,K)の網点面積率や濃度や色座標値(L,a,b)が用いられる。一体化品質管理装置40には,これらスペクトル値,網点面積率,濃度及び色座標値を互いに関連づけるテーブル…が予め容易ママされており,印刷絵柄データと見本絵柄データは,それぞれ同内容のデータ,ここでは濃度に変換された上でそれぞれの記憶部401,402に記憶される。」(【0025】)との記載があり,見本絵柄データ及び印刷絵柄データが,同内容の濃度又は濃度に相関するパラメータ値(スペクトル値,網点面積率又は色座標値等)に変換された上で記憶部に記憶されることが記載されている。本件明細書1には,上記記載に引き続き,上記のとおり変換された印刷絵柄データ及び見本絵柄データを印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段の双方に用いることが記載されており(【0030】,【0032】),さらに,「印刷欠陥検出部410は,画素別濃度比較部409で計算された濃度差を所定の閾値と比較する。ここでは,インキが付くべきところにインキが付いていない場合や,インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっている場合のように印刷濃度に異常が生じる欠陥を検出するため,上記の閾値は,インキキー幅別濃度比較部407及びインキキー開度制御部408による濃度制御において通常生じる濃度差の範囲よりも,格 しまっている場合のように印刷濃度に異常が生じる欠陥を検出するため,上記の閾値は,インキキー幅別濃度比較部407及びインキキー開度制御部408による濃度制御において通常生じる濃度差の範囲よりも,格段に大きい値に設定 されている。…」(【0033】)との記載がされているのであるから,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段においてそれぞれ比較に用いられる「濃度差」又は「濃度に相関するパラメータ値」は,両手段において同一のものであり,印刷欠陥検出手段及びインキキー開度制御手段における「所定の閾値」と「濃度差等の範囲」も,同一の単位によって設定されるものであって,所定の閾値を濃度差等の範囲よりも「大きい値に設定」するとは,前者を後者よりも数字として大きい値に設定することを意味するものと解するのが合理的であり,上記解釈が,構成要件EないしG全体の解釈としても自然なものであるということができる。 なお,上記解釈は,本件発明1が,所定の閾値が濃度差等よりも大きい「値」に設定する旨記載するものであり,両者の数値自体の大小関係を問題とするものと解されることとも整合するものというべきである。 (カ) また,構成要件Gの技術的意義に鑑みても,所定の閾値を濃度差の範囲よりも「大きい値に設定した」とは,両者が同一の単位によって設定されるものであることを前提に,前者を後者よりも数値として大きい値に積極的に設定することを意味すると解するのが相当である。 すなわち,本件発明1は,前記のとおり,省スペース及び省コストの実現を課題とし,印刷物の状態に関するデータの入力手段をラインセンサに統一し,印刷欠陥検出機能とインキキー開度制御機能を一つの装置に統合することを目的とするものであり,上記場合における品質管理の具体的方法について開示したものと解される。 タの入力手段をラインセンサに統一し,印刷欠陥検出機能とインキキー開度制御機能を一つの装置に統合することを目的とするものであり,上記場合における品質管理の具体的方法について開示したものと解される。加えて,原告が,本件特許1の出願経過において,特許庁審査官による拒絶理由通知(乙12)を受けて,上記拒絶理由解消のため,平成18年2月6日付け補正書とともに提出した意見書(乙5)において,「…本願発明(請求項1)の印刷物の品質管理装置及び本願発明(請求項8)の印刷機によれば,印 刷欠陥検出手段410及びインキキー開度制御手段408が印刷絵柄データ記憶部401が記憶した印刷絵柄データと見本絵柄データ記憶部が記憶した見本絵柄データ40とを比較する際に,印刷欠陥検出手段410が用いる所定の閾値を,インキキー開度制御手段408による濃度制御(インキキー開度制御)において用いる差の範囲よりも大きい値に設定するので,本来,専ら印刷物の濃度制御にのみ用いられるラインセンサ50で読み取った情報をインキキー開度の調整に加えて,インキが付くべきところにインキが付いていない場合や,インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっている場合のような印刷欠陥の検出にも有効に活用することができ,印刷欠陥の検出機能とインキキー開度の調整機能(印刷物の濃度制御機能)とを一つの装置に統合して省スペース化と低コスト化とを実現することができる。」(3頁8行目~18行目),「引用文献1~5のいずれにも,本願発明(請求項1)のごとく印刷欠陥検出手段410とインキキー開度制御手段408とにおいて,それぞれ同じラインセンサ50で読み取った印刷絵柄データと見本絵柄データとを比較して印刷物の濃度制御及び印刷欠陥の検出を行う構成について記載や示唆はなく,さらにこのとき,印刷欠陥検出手段410 て,それぞれ同じラインセンサ50で読み取った印刷絵柄データと見本絵柄データとを比較して印刷物の濃度制御及び印刷欠陥の検出を行う構成について記載や示唆はなく,さらにこのとき,印刷欠陥検出手段410が用いる所定の閾値を,インキキー開度制御手段408による濃度制御(インキキー開度制御)において用いる差の範囲よりも大きい値に設定する構成についての記載や示唆は見られない。」(3頁46行目~4頁2行目)と記載していることに鑑みれば,構成要件Gに記載された構成は,一つのラインセンサで読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出とインキキー開度制御の双方に用いることを可能とする具体的方法として記載されているものであることが明らかというべきである。 しかるに,本件発明1は,前記(5)ア(イ)のとおり,見本絵柄データと印刷絵柄データの濃度差等が,インキキー開度の調整によって対処可 能な一定の範囲内にある場合に,インキキー開度制御による濃度調整を行うものであり,上記濃度差等が,上記濃度調整によって対処可能な範囲を超えるほどに大きい場合に,印刷欠陥を検出するものであると解されるのであるから,印刷欠陥を検出するための「所定の閾値」が,濃度調整を行う範囲である「濃度差等の範囲」よりも客観的にみて大きいものであることは自明の事項であるというべきである。にもかかわらず,構成要件Gを,「所定の閾値」と「濃度差等の範囲」が,それぞれ異なる単位により,相互に無関係に設定されている場合でも,両者を同一の単位に換算した結果,前者が後者よりも大きい数値となっていることで足りるものと解釈するとすれば,構成要件Gは,当然の事項を確認的に記載したのみということになり,一つのラインセンサから入力した情報を印刷欠陥検出及びインキキー開度制御の双方に用いる具体的構成を何ら開示し ものと解釈するとすれば,構成要件Gは,当然の事項を確認的に記載したのみということになり,一つのラインセンサから入力した情報を印刷欠陥検出及びインキキー開度制御の双方に用いる具体的構成を何ら開示したことにならない。 そうすると,構成要件Gを,単に上記のような自明の事項を確認的に記載したものと解することは相当ではなく,構成要件Gは,印刷欠陥検出及びインキキー開度制御を同一の比較単位(濃度又は濃度に相関するパラメータ値)で行うことを前提として,同一の単位によって設定される「所定の閾値」と「濃度差等の範囲」に関し,前者が後者より大きい数値に積極的に設定されていることを意味するものと解するのが相当である。 (キ) さらに,従来技術との関係をみても,構成要件Gは,単に「所定の閾値」が「濃度差等の範囲」よりも結果的に大きいものであることでは足りず,その単位が同一であり,大小関係が積極的に設定されているものであることを要するものと解するべきである。 すなわち,①乙10文献に記載されている印刷検査装置は,印刷胴の後に配置した撮像機が撮影する画像に基づき,印刷紙面の印刷画線濃度 を測定した上で,原画情報から測定した画線濃度と比較するものであるところ(【請求項1】,【請求項10】,【0032】等),「コラム毎に撮像機による印刷画線の濃度レベルをフィルムスキャナによる画線面積や必要インキ量と比較し,この比較結果が許容指定値範囲内にあれば,印刷濃度が適正であると判断する。また,許容指定値範囲内になければ,印刷濃度が不適正であると判断する。そして,不良印刷紙として排出したり,インキポンプ送出し量や湿し水送出し量を調整する。」(【0048】)との記載に照らし,上記印刷検査装置は,許容指定値(所定の閾値)との比較により,上記のと する。そして,不良印刷紙として排出したり,インキポンプ送出し量や湿し水送出し量を調整する。」(【0048】)との記載に照らし,上記印刷検査装置は,許容指定値(所定の閾値)との比較により,上記のとおり,印刷濃度の適正・不適正(印刷欠陥の有無)を判断するものであると解される。また,②乙10文献には,上記印刷検査装置において,上記撮像機から得られる映像信号から,1紙面当たり3つ以上の印刷単位領域毎に画線濃度を測定し,原画情報から得られる必要インキ量に関する情報と比較して,上記印刷単位領域毎の比較結果のばらつきが大きいときには,インキ送り量等を調整することも記載されている(【請求項14】,【0033】)。そして,乙10文献には,上記②のインキ送り量調整処理に関し,「印刷紙面の各コラムの印刷濃度が適性範囲内にあっても,印刷紙面全体として,コラム間の濃度ばらつきが許容できない程になる場合がある」ため,「このような状態を防止するために,コラム間の濃度ばらつきを小さくするように制御する」(【0052】)ものである旨記載されているのであるから,乙10文献記載の上記①の処理における許容指定値(印刷濃度が適正であるか否かを判断するもの)は,乙10文献記載のインキ送り量調整処理を行う範囲(印刷濃度が適正である範囲内での濃度ばらつきを制御するもの)よりも,客観的にみた場合,大きいものであると解されるところである。 本件発明1が,上記のような従来技術が存在する中で,一つのライン センサで読み取った印刷絵柄データを印刷欠陥検出とインキキー開度制御の双方に用いることを可能とする具体的方法を開示するものとして特許査定されたものであることを考慮すれば,構成要件Gの意義を前記のとおり解するのが相当である。 イ被告製品1の充足性につい 御の双方に用いることを可能とする具体的方法を開示するものとして特許査定されたものであることを考慮すれば,構成要件Gの意義を前記のとおり解するのが相当である。 イ被告製品1の充足性について(ア) 前記のとおり,被告製品1の紙面監視手段(構成e)は,印刷絵柄データのスペクトル値(R,G,Bを0ないし200の間で読み取った数値)とRGB基準データのスペクトル値(同)を,読取センサの画素単位でR,G,Bそれぞれについて比較し,その差分を上記画素毎に計算し,上記差分が不良紙判定用閾値を超える場合には,不良紙と判定するものであるから,不良紙判定用閾値(「所定の閾値」に相当する。)は,スペクトル値として設定されるものであると解される。 (イ) 他方,被告製品1の濃度判定手段(構成f)は,前記のとおり,CMYK濃度データ(面積率)に変換済みの印刷絵柄データと,濃度制御用データ用メモリに記憶されているCMYK目標濃度データを比較し,C,M,Y,Kそれぞれについて網点面積率の差分を計算し,特定のインキキーの幅に属する上記各領域における差分の平均を,インキ制御用閾値と比較することにより,インキキーの開度制御を行うものである。 なお,「濃度差等の範囲」が,インキキー開度制御を行うべき濃度差等の差分の範囲の上限値を意味するものと解されることは前記のとおりであるところ,「各画素における差分の平均をインキ制御用閾値と比較することにより,インキキー開度制御を行っている。」(被告準備書面(2)10頁)との被告の主張に照らせば,被告製品1におけるインキ制御用閾値は,本件発明1にいう「濃度差等の範囲」とは異なるものであると解される。しかし,被告が,被告製品1に関し,「比較された濃度差が設定された一定の範囲にあればインキキーの開度 1におけるインキ制御用閾値は,本件発明1にいう「濃度差等の範囲」とは異なるものであると解される。しかし,被告が,被告製品1に関し,「比較された濃度差が設定された一定の範囲にあればインキキーの開度を制御して補正」 するものである旨主張していること(被告準備書面(4)3頁)に照らせば,被告製品1において,インキキー開度制御を行う範囲を一定の差分(C,M,Y,Kそれぞれについての網点面積率の差分)の範囲に限定していることがうかがわれるというべきであり,上記のとおり被告製品1においてインキキー開度制御を行う差分の範囲の上限値は,「濃度差等の範囲」に相当するものであると解することができる。 上記上限値は,上記のとおり,C,M,Y,Kそれぞれについての網点面積率の上限値であるから,網点面積率により設定されるものであると解される。 (ウ) 以上によれば,被告製品1は,紙面監視手段においてスペクトル値,濃度判定手段において網点面積率を比較単位とするものであり,「濃度差或いは濃度に相関するパラメータ値」として異なるものを採用しているものであって,これにより,紙面監視手段における不良紙判定用閾値と,濃度判定手段における前記上限値が,前者はR,G,Bの各スペクトル値,後者はC,M,Y,Kの網点面積率を単位として設定されているものであると認められる。 したがって,被告製品1は,同一の単位によって設定される「所定の閾値」と「濃度差等の範囲」に関し,前者が後者より大きい数値に設定されているものではなく,構成要件Gを充足しない。 (6) 以上によれば,被告製品1は,本件発明1の技術的範囲に属しない。 2 小括よって,その余の点について検討するまでもなく,本件特許権1に基づく原告の請求はいずれも理由がない。 3 争点( によれば,被告製品1は,本件発明1の技術的範囲に属しない。 2 小括よって,その余の点について検討するまでもなく,本件特許権1に基づく原告の請求はいずれも理由がない。 3 争点(2)(被告製品2が本件発明2の技術的範囲に属するか。)(1) 「版」(構成要件I)の意義についてア被告は,本件発明2は版ずれの防止を解決課題とするものであるところ, CTP版における版ずれの原因は,PS版における版ずれの原因とは異なるものであり,本件発明2によってCTP版における版ずれを防止することはできないから,「版」(構成要件I)はPS版を指すものとして限定解釈されるべきであると主張するので,この点について検討する。 イ本件明細書2(甲7)には,従来技術における問題点及び上記課題を解決するための手段に関し,次の記載がある。 (ア) 【0002】【従来の技術】「従来のオフセット輪転機の版胴は…その表面にCrメッキ施工後,研磨加工によりRmax<1.0μmに調整されたもの,又は耐食材を肉盛溶接後研磨加工されたものが用いられていた。」(イ) 【0003】【発明が解決しようとする課題】「前述の従来技術には,次のような問題点がある。図4に示すように,従来の版胴1に版2を装着して印刷する場合,印圧Pを負荷して接触・回転する相手ブランケット胴3との間で相互に周長差があると,版胴1に装着された版2に接線力Fが作用することになる。」(ウ) 【0004】「このため,この接線力Fによって,版2と版胴1間で,上記周長差に対応した微少すべりを発生し,印刷作業の進行と共に,このすべりが蓄積され,版2と版胴1の相対位置が変化するいわゆる版ずれトラブルが発生する。…」(エ) 【0005】「本発明は,上記の版ずれトラブ 対応した微少すべりを発生し,印刷作業の進行と共に,このすべりが蓄積され,版2と版胴1の相対位置が変化するいわゆる版ずれトラブルが発生する。…」(エ) 【0005】「本発明は,上記の版ずれトラブルを容易に防止できる版胴を提供することを目的とするものである。」(オ) 【0006】【課題を解決するための手段】「従来,Crメッキあるいは耐食鋼を肉盛溶接後,研磨加工によりRmax<1.0μm程度に仕上げ加工されていた版胴表面粗さを,1.0μm≦Rmax≦100μmに調整する。」(カ) 【0007】【作用】「版胴の表面粗さを1.0μm≦Rmax≦ 100μmとすることによって,版と版胴間の摩擦係数を増加させることができ,これにより版ずれトラブルが防止できる。」ウ本件明細書2の上記記載によれば,本件発明2は,版を装着した版胴と相手ブランケット胴との間に周長差があることにより,版に接線力が作用し,版と版胴との間ですべりが生じ,このすべりが印刷作業の進行に伴い蓄積することにより,版と版胴の相対位置が変化すること(版ずれトラブルの発生)を従来技術における課題とし,版胴の表面粗さを従来技術におけるものよりも粗くすることで,版と版胴との間の摩擦係数を増加させ,上記課題を解決しようとするものであると解することができる。 エ 「PS版」(Pre-SensitizedPlate)とは,予め感光性物質を支持体に塗布した印刷版の総称であり,このうち,組版システムからの画像データを直接描画する製版方式によるものを「CTP版」(ComputerToPlate)と呼び,これと区別する意味で,フィルムを用いる製版方法によるものを「PS版」と呼ぶものとされる(乙6)。そうすると,両者は製版方法において異なるものにすぎず,刷版としての erToPlate)と呼び,これと区別する意味で,フィルムを用いる製版方法によるものを「PS版」と呼ぶものとされる(乙6)。そうすると,両者は製版方法において異なるものにすぎず,刷版としての性質や使用方法が異なるものではないと解することができ,上記のような製版方法の違いが,上記ウでみた版ずれトラブルの原因において違いを生じるものであるとは解されない。 オなお,被告は,甲11号証及び乙7号証の記載から,CTP版における版ずれの原因は,PS版におけるものとは異なるものであり,その解消方法もPS版におけるものとは異なることが明らかである旨主張する。しかし,甲11号証には,CTP版における版ずれトラブルの解消方法として,版胴表面にヘアーライン加工(研磨材を用いて一定方向に連続的な条痕を付ける金属表面加工)を施し,版胴表面と刷版裏面との摩擦力を高める方法が記載されており,このような版ずれの解消方法は,版と版胴との間の摩擦係数を増加させて版ずれを防止しようとする本件発明2と同種のもの であるということができ,CTP版における版ずれの原因が,本件発明2が解決しようとする版ずれの原因と同一のものであることが,むしろうかがわれるというべきである。また,乙7号証には,CTP版における版ずれの原因に関し,「高速に回転するブランケットとの摩擦によって,版胴に装着した版そのものが伸びるか,版胴に装着するために折り曲げた版の銜え(くわえ)部分が伸びるかずれるかして,版ずれが生じ…」(【0007】)との記載がされているのであり,上記記載からも,CTP版における版ずれの原因が,本件明細書2に記載された上記版ずれの原因と同一であることがうかがわれるというべきである。 さらに,被告は,版ずれの問題はCTP版の導入により問題視されるようになったも おける版ずれの原因が,本件明細書2に記載された上記版ずれの原因と同一であることがうかがわれるというべきである。 さらに,被告は,版ずれの問題はCTP版の導入により問題視されるようになったものであり,PS版において版ずれは生じないものとされていたものであることからも,両者における版ずれの原因が異なることがうかがわれる旨主張するが,乙7号証には,「従来の白黒印刷においては重ね刷りの必要がなかったため,このような色ずれの問題は生じることはなかった。一方で,高速輪転機による新聞オフセットカラー印刷においては色ずれが生じることが確認され…」(【0006】)と記載されているのであって,PS版とCTP版の性質上の違いを版ずれの発生原因として指摘するものではない。また,乙8号証の2頁には,「PS版と比較し…ある条件下では版ズレ(ノビ)現象も見られ,…」との記載があるが,CTP版とPS版において版ずれの原因が異なることを具体的に指摘するものではない。 カ以上によれば,CTP版における版ずれの原因が,PS版における版ずれの原因と異なるものであるとは解されず,「版」(構成要件I)を,CTP版を除くものに限定解釈すべき理由はないものであって,CTP版も「版」に含まれるものと解するのが相当である。 (2) 被告製品2の充足性 ア被告製品2は,版を装着して使用するオフセット輪転機版胴であるところ,上記「版」からCTP版が除かれないことは上記(1)のとおりであるから,被告製品2は構成要件I,Lを充足する。 イ被告製品2が構成要件J,Kを充足することは前記前提事実(5)イ(イ)のとおりである。 ウしたがって,被告製品2は本件発明2の技術的範囲に属する。 4 争点(3)(本件特許2は特許無効審判により無効にされ 件J,Kを充足することは前記前提事実(5)イ(イ)のとおりである。 ウしたがって,被告製品2は本件発明2の技術的範囲に属する。 4 争点(3)(本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか。)(1) 記載要件違反の有無(争点(3)ア)ア被告は,本件特許2が特許法36条4項1号又は同条6項1号に違反する旨主張するが,本件特許2は平成3年3月26日に出願されたものであるところ,平成6年法律第116号附則第6条2項により,同号により改正された特許法36条の規定は,上記法律の施行後にする特許出願について適用するとされているから,本件特許2には,同号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)36条が適用される。したがって,被告の主張は,旧特許法36条4項・同条5項1号違反を主張する趣旨であると解されるのであって,以下,これを前提に検討する。 イ被告は,本件特許2の出願当時のJIS規格(乙2)によれば,Rmax100μm以下を測定する場合の基準長さは8mmであり,版胴の大きさ及び表面粗さのばらつきに鑑み,Rmaxの具体的測定方法の記載なくして当業者が本件発明2を実施することは不可能であるところ,本件明細書2の発明の詳細な説明には,上記具体的測定方法の記載がない旨主張する。 しかしながら,前記3(1)イでみたとおり,本件明細書2の発明の詳細な説明には,本件発明2が,版胴の表面粗さを1.0μm≦Rmax≦100μmに調整するという構成を採用することにより,版と版胴間の摩擦係数を増加させ,版ずれトラブルを防止するという作用効果を奏するもの であることが記載されているのであり,上記記載に接した当業者は,本件発明2が,版胴表面のうち,版のかかる任意の部分におけるRmaxを上記の範囲 トラブルを防止するという作用効果を奏するもの であることが記載されているのであり,上記記載に接した当業者は,本件発明2が,版胴表面のうち,版のかかる任意の部分におけるRmaxを上記の範囲に調整することで,上記作用効果を奏するものであることを容易に理解できるものというべきである。 また,Rmax(最大高さ)については,日本規格協会の発行に係るJIS規格(「表面粗さの定義と表示」。乙2)により,断面曲線から基準長さだけを抜き取った部分(以下「抜取り部分」という。)の平均線に平行な2直線で抜取り部分を挟んだとき,この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定して,この値をマイクロメートルで表したものを指すことや,基準長さの標準値,上記最大高さを求める場合,きずとみなされるような並外れて高い山や深い谷のない部分から基準長さだけを抜き取ること等が示されているのであるから,当業者であれば,上記規格に示された測定方法等に従い,版胴表面のうち,上記のとおり,版のかかる任意の部分のRmaxを測定し,これが全体として1.0μm≦Rmax≦100μmとなるよう調整することは十分に可能であるというべきである。 したがって,本件明細書2の発明の詳細な説明には,当業者が容易に本件発明2の実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果の記載があるものと認められる。 ウまた,被告は,本件明細書2の発明の詳細な説明には,Rmaxの範囲の記載と得られる版ずれ防止効果との関係の技術的意味に関し,本件発明2に接した当業者が,本件発明2に示されたRmaxの範囲であれば,所望の版ずれ防止効果が得られると認識できる程度の具体例を示した記載がされていないとも主張する。 特許請求の範囲の記載がいわゆるサポート要件に適合するもので されたRmaxの範囲であれば,所望の版ずれ防止効果が得られると認識できる程度の具体例を示した記載がされていないとも主張する。 特許請求の範囲の記載がいわゆるサポート要件に適合するものであるか否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,発明の詳細な説明に,当業者において,特許請求の範囲に記載され た発明の課題が解決されるものと認識し得る程度の記載ないし示唆があるか否か,又は,その程度の記載や示唆がなくても,特許出願時の技術常識に照らし,当業者において,当該課題が解決されるものと認識し得るか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。 本件明細書2には,版胴のRmaxと約20万部印刷後の版ずれ量を測定した実験例(【0009】,【図2】)が示されており,上記実験結果において,Rmaxが1.0μmを概ね上回る範囲において,版ずれ量が減少することが示されている。また,本件明細書2には,表面粗度Rmax≒6.0μmの版胴における版ずれ量と,これと同寸法・形状の従来版胴における版ずれ量をそれぞれ調査した実験例(【0012】,【0013】,【図3】)も示されており,上記実験結果において,従来版胴に版ずれが発生しているのに対し,Rmax≒6.0μmの版胴には版ずれの発生が少ないことが示されている。 さらに,本件明細書の【0010】には,「なお,図2において,Rmaxが大きい程,版ずれ防止効果も優れていることが容易に推測されるが,Rmax>100μmでは,版胴の寸法精度や汚れ除去特性に問題が生じることが考えられるので,Rmaxの上限値をRmax≦100μmとする。また,Rmax<1.0μmでは従来版胴に比べて版ずれ防止効果が小さいので,その下限をRmax≧1.0μmとする。 に問題が生じることが考えられるので,Rmaxの上限値をRmax≦100μmとする。また,Rmax<1.0μmでは従来版胴に比べて版ずれ防止効果が小さいので,その下限をRmax≧1.0μmとする。」との記載があり,Rmaxの上限値及び下限値の技術的意義について記載がされているものということができる。 以上によれば,本件明細書に接した当業者は,本件明細書2の上記各記載から,本件特許2の特許請求の範囲の記載が示す範囲と得られる効果との間の技術的意義を理解し,また,上記範囲であれば所望の効果が得られると認識することが可能であるものと解される。 エしたがって,本件特許2に,旧特許法36条4項及び同条5項1号に反 する点は認められない。 (2) 本件発明2は特許出願前に日本国内において公然実施をされたものに当たるか。(争点(3)イ)ア被告は,本件特許2の出願前である昭和63年8月に東日印刷の越中島工場に納入したVBW型オフセット輪転機の版胴は,表面をステンレス鋼で形成したものであり,表面粗さRmaxを1.5μmに調整したものであるから,本件発明2はその出願前に日本国内において公然と実施されたものに当たると主張する。 イ(ア) そこで検討すると,被告は,乙14号証の図面(以下「乙14図面」という。)が,上記のとおり東日印刷に昭和63年8月頃納入されたVBW型オフセット輪転機の外面視図であると主張する。 「東日印刷50年史」(乙13)には,昭和63年7月8日に東日印刷社屋を越中島に移転し,輪転機フロアに被告製作のVBW型オフセット輪転機等を設置し,3列に並ぶ輪転機のうち,A列がまず完成した旨が記載されているところ,乙14図面の「東日印刷株式会社殿」,「A列O.S外面視」との記載はこれと整 ロアに被告製作のVBW型オフセット輪転機等を設置し,3列に並ぶ輪転機のうち,A列がまず完成した旨が記載されているところ,乙14図面の「東日印刷株式会社殿」,「A列O.S外面視」との記載はこれと整合するものということができる。 また,その作成年月日が昭和62年8月と記載されていることも,これと矛盾するものではない。加えて,東日印刷従業員Pは,乙14図面は,上記社屋移転時にA列に納入されたオフセット輪転機等の外面視図に間違いない旨陳述しているのであるから(乙26),乙14図面に関する被告の上記主張は信用できるものということができ,乙14図面は,昭和63年8月頃東日印刷に納入されたVBW型オフセット輪転機(以下「本件輪転機」という。)の外面視図であると認められる。 (イ) これを前提に乙14図面を見ると,乙14図面右下には,「WO」欄に「P-02531L」(ただし,「L」はレールフレーム部を示す記号であり,輪転機を示す番号部分は「P-02531」であるとされ る。),「社名」欄に「ET-1」,「年月日」欄に「昭和62年8月26日」と表示されているから,本件輪転機の発注番号が「P-02531」,東日印刷の略称が「ET-1」,図面作成年月日が昭和62年8月26日であると認めることができる。そして,乙15号証の図面(以下「乙15図面」という。)左下の表の「出図年月日」欄「62. 8.24」と記載されている行から下2行までには,「WO」欄に「P-02531」,「社名」欄に「ET-1」と表示されているのであるから,乙15図面は,乙14図面記載の本件輪転機の版胴追加工図として,昭和62年8月に出図されたものであると認められる。 (ウ) そこで,乙15図面を更に見ると,乙15図面の左上には,版胴を示すとみられる図面が表示され, 載の本件輪転機の版胴追加工図として,昭和62年8月に出図されたものであると認められる。 (ウ) そこで,乙15図面を更に見ると,乙15図面の左上には,版胴を示すとみられる図面が表示され,その上部中央付近に,「1.5-S」,「▽▽▽」の表示があることが認められる。 昭和57年6月15日改正に係る「表面粗さの定義と表示」に関する「JISB-0601-1982」(乙2。以下「乙2規格」という。 なお,乙19によれば,昭和62年当時は,乙2規格が有効であったものと認められる。)によれば,Rmaxはμmで表されるものとされ(乙2規格3頁),最大高さの許せる最大値によって表面粗さを指示する場合には,数値の後に「S」を付けて表すものとされる(乙2規格5頁)。また,「▽▽▽」は,標準数列から選択された数値である最大高さRmax1.6S,3.2S及び6.3Sに対応するものであるとされる(乙2規格17頁の解説表1)。そうすると,乙15図面の前記表示は,Rmaxの「許せる最大値」が1.5μmであることを示すものと解することができるところ,乙2規格5頁の「備考1」によれば,ここでいう「許せる最大値」とは,指定された表面からランダムに抜き取った数か所のRmaxの算術平均値であるとされるのであるから,乙15図面は,Rmaxを1.5μmに調整することを記載したものと解す るのが相当である。 (エ) したがって,本件輪転機の版胴は,その納入時において,乙15図面に従い,Rmaxを1.5μmに調整して加工されたことが推認される。 また,被告による本件輪転機の測定結果(乙16の1・2,17の1・2)によれば,本件輪転機(A列14P。乙14図面の「14」と表示された部分に設置された版胴であると認められる。)の版胴2本の表面粗さR ,被告による本件輪転機の測定結果(乙16の1・2,17の1・2)によれば,本件輪転機(A列14P。乙14図面の「14」と表示された部分に設置された版胴であると認められる。)の版胴2本の表面粗さRzは,版胴のかからない部分において,2ないし4μmであり,版胴のかかる部分においても,大半が1.0μmを超えるものであり,その平均値は平成23年1月31日測定結果においてLS版胴につき約2.03μm,RS版胴につき約2.09μm,同年2月24日測定結果においてLS版胴につき約2.24μm,RS版胴につき約2.18μmであることが認められる。 なお,原告は,乙16の2の測定結果に,測定日付として「2000-4-25」と表示されていることから,乙16の1記載の測定結果は平成12年4月25日に測定されたものである旨主張する。しかし,被告は,上記日付表示は測定機器の日付設定の誤りによるものであると主張しているところ,上記主張が不合理とまではいえず,乙16の1の測定結果報告書に測定日として平成23年1月31日との記載があることにも鑑み,上記測定は同日に行われたものと認められる。 また,乙16の1・2及び17の1・2は,Rzについて測定されたものであるが,乙2規格における「Rmax」は,規格の改正により,平成13年以降,「Rz」と表示するものと改められたことが認められ(乙19),乙16の1・2及び17の1・2におけるRzは,本件発明2におけるRmaxに相当するものであると認められる。 さらに,ステンレス鋼により形成された版胴の表面(なお,この点については後述する。)は,20年程度の使用期間で腐食することはないとさ れており(乙26),かつ,版のかからない部分は,使用による摩耗等の影響も少ないものと解される 胴の表面(なお,この点については後述する。)は,20年程度の使用期間で腐食することはないとさ れており(乙26),かつ,版のかからない部分は,使用による摩耗等の影響も少ないものと解される。加えて,本件輪転機の版胴につき,納入後の入れ替えや表面加工,改造等は行われていないものと認められる(乙26)。 以上の事情を考慮すれば,本件輪転機の版胴は,その納入時において,表面粗さが1.0μm≦Rmax≦100μmに調整されたものであったと認めるのが相当である。 (オ) また,乙21の1のプレートシリンダー組立図面(乙21の2はその右下欄を拡大表示したものである。)には,「WO」欄に「P-02531」,「社名」欄に「ET-1」との表示があるので,本件輪転機のプレートシリンダー(版胴)組立図面であると認められる。乙21の1には,版胴部分に向けて「L05-39004A-1」,「L05-39003A-1」との表示がされており,上記表示は詳細図面番号を表示したものと認められるところ,乙22の1及び23の1(乙22の2,23の2は,各図面の右下欄を拡大表示したものである。)には,「機種」欄に「L05-39003A-1」,「L05-39004A-1」との表示がされているのであるから,乙22の1及び23の1は,本件版胴の詳細図面であると認められる。 乙22の1,23の1には,「胴表面にステンレス鋼溶着のこと。」との表示がされているのであるから,本件版胴の表面はステンレス鋼によって形成されているものと認めることができる。 (カ) 以上によれば,本件輪転機の版胴は,その納入時において,i 版を装着して使用するオフセット輪転機版胴において,j 前記版胴の表面層をステンレス鋼で形成し, (カ) 以上によれば,本件輪転機の版胴は,その納入時において,i 版を装着して使用するオフセット輪転機版胴において,j 前記版胴の表面層をステンレス鋼で形成し,k 該版胴の表面粗さを1.0μm≦Rmax≦100μmに調整したl ことを特徴とするオフセット輪転機版胴 であったものと認められ,本件発明2の構成要件を充足するものであったと認められる。 ウ本件版胴は,前記イ(ア)のとおり,東日印刷の越中島工場に納入されたものであるところ,東日印刷において,本件輪転機版胴の形状が秘密として管理されていたことをうかがわせる事情は存在しない。また,版胴の表面層がステンレス鋼で形成されていることや,表面粗さRmaxの数値は,当業者が利用可能な分析技術を用いることにより,容易に判明するものであると認められる。したがって,本件発明2は,本件輪転機の納入により,その内容を不特定多数の者が知り得る状況となったものであり,本件特許2の出願前に公然実施されたものであると認められる。 エ以上によれば,本件特許2は,平成11年法律第41号による改正前の特許法29条1項2号に違反して特許されたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められ,原告が,被告に対し,本件特許2に基づきその権利を行使することはできない(特許法104条の3)。 5 小括したがって,本件特許権2に基づく原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく理由がない。 第5 結論したがって,原告の被告に対する請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 したがって,原告の被告に対する請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき (別紙)被告製品目録1 「カラー・モニター・アンド・コントロール・システム CMAC(シーマック)」を商品名とする新聞用色濃度監視制御装置 (別紙)被告製品目録2 被告が販売して下記の場所に納入し,ヘアライン加工又はショットブラスト加工が施されたオフセット輪転機版胴記(1) 大阪府摂津市<以下略>株式会社高速オフセット摂津工場内(2) 埼玉県八潮市<以下略>株式会社日経首都圏印刷八潮工場内(3) 千葉県八千代市<以下略>株式会社日経首都圏印刷千葉工場内以上 (別紙)被告製品1の構成 a 印刷機の印刷部の下流に配置され,上記印刷部で用紙に印刷された印刷絵柄を読み取るセンサ(以下「読取センサ」という。)と,b 読取センサで読み取られた印刷絵柄のデータ(以下「印刷絵柄データ」という。)を記憶するRGBデータ用メモリと,c 読取センサで読み取ったデータに基づき,良紙時点でティーチング(基準値取り込み)を行い,RGB基準データを取得する手段と,製版データから作成されるCMYK目標濃度データをCTPサーバーから取得する手段と,dRGB基準データを記憶する紙面監視機能用の基準データ用メモリ(以下「紙面監視用基準データ用メモリ」という。)と,CMYK目標濃度データを基準濃度データ(面積率)として記憶する濃度判定機能用の基準濃度データ(面積 タを記憶する紙面監視機能用の基準データ用メモリ(以下「紙面監視用基準データ用メモリ」という。)と,CMYK目標濃度データを基準濃度データ(面積率)として記憶する濃度判定機能用の基準濃度データ(面積率)用メモリ(以下「濃度判定用基準データ用メモリ」という。)と,e 上記RGBデータ用メモリが記憶した印刷絵柄データと,上記紙面監視用基準データ用メモリが記憶したRGB基準データとを読取センサの画素単位で比較して差分を計算し,当該差分と所定の閾値との比較により印刷欠陥を検出する紙面監視手段と,f 上記RGBデータ用メモリが記憶した印刷絵柄データをRGBデータからCMYK濃度データ(面積率)に変換してCMYK濃度データ(面積率)用メモリに記憶し,濃度判定用基準データ用メモリに保存されたCMYK目標濃度データと画素毎に差分を計算し,当該差分と所定の閾値との比較により,インキキーの開度を調整する濃度判定手段とを備えるhCMAC(新聞用色濃度監視制御装置)。 (別紙)被告製品2の構成 i 版を装着して使用するオフセット輪転機版胴において,j 前記版胴の表面層をクロムメッキ又は耐食鋼で形成し,k 前記版胴にヘアライン加工又はショットブラストを施して表面粗さRmaxを約10μmに調整したl ことを特徴とするオフセット輪転機版胴。
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