【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人西村浩、内海静雄の上告趣意書第一点は「原審判決は採証の法則を誤り違 法なる裁判をなしたるものなり何となれば原審判決
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人西村浩、内海静雄の上告趣意書第一点は「原審判決は採証の法則を誤り違法なる裁判をなしたるものなり何となれば原審判決は理由第一(ロ)の犯罪事実即ち「大阪府泉南郡a町b番地Aから金品を強奪し(中略)右A所有の洋服オーバ等衣類数十点を強奪し」なる判示第一の(ロ)の事実を認定するに当りその証拠として採用したる被告人の第二審公判廷に於ける「自分はB等判示の者から判示A方へ金品を取りに行こうと勧誘されこれは窃盗に入るのだと思込んでその勧誘に応じ同人等と共に判示の日時右A方に赴いて自分は屋外で見張をしB、C、D等が屋内に入つて約二十分間程たつてから判示の衣類を持ち出して来て自分に渡したので自分はそれを持つて他の者等よりも一足先に帰つた、なほ右の見張中屋内の様子は全く判らなかつたがB等が引揚げて来てからの話で屋内に入つた連中が家人に出刃庖丁などを突き付け手荒なことをして右の衣類を強奪して来たのだと言ふことを始めて知つた旨の供述」なる旨の被告人の供述は第二審公判廷に於てもなされおらざるものなり、然るに被告人の供述せざる事実を供述せる如く認定せんとして虚無の証拠を採用して犯罪事実を認定したるは採証の法則を誤りたるものと言ふべし、これを詳言すれば第二審公判廷の供述として公判調書に左の如き記載あり「金品を取りに行こうと勧誘されこれは窃盗に入るのだと思込んでその勧誘に応じ……」「只物を盗りに行こうと言つて同人等から頼まれたので行つただけです」右によれば上告人は窃盗につき同意したるも上告人自らが実行々為を分担する意思ありたりとの何等積極的の証拠なし次に同公判廷に於ける供述として調書には、問此所へ行くときの話し合はどうだつたか、答只物を盗りに行かうと言つて同人等から頼まれたので行つ 自らが実行々為を分担する意思ありたりとの何等積極的の証拠なし次に同公判廷に於ける供述として調書には、問此所へ行くときの話し合はどうだつたか、答只物を盗りに行かうと言つて同人等から頼まれたので行つただけです、問行つてからの模様を述べて見よ、答私も同人等と一緒に行きまし- 1 -たけれども私は外で待つてゐましたから他の者は何を盗つたか知りません、又C、Eが中に入つたことは見てゐましたが他の者等が入つたかどうかは知りません、問被告人は見張りの為に外に居たのか、答見張という訳ではありません私は中に入るのが嫌だから外で待つてゐましたそして他の者が盗つた品物を運べと言ふたのでこれを運んだのであります」なる記載あり、これによれば上告人は右A方に赴ひて「自分は屋外で見張りをし」なる供述をしたるという原審公判廷の陳述は全くなきにかかわらずその供述ありとしてこれを証拠に採用し、更に「尚右の見張り中屋内の様子は全く判らなかつた」なる供述は全然なきにかゝはらずこれあるが如く虚無の証拠を採用し上告人の否定したる供述を肯定したる供述の如く証拠として採用せるは全く採証の方法を誤りたるものと言ふべしこれを要するに右第二審公判廷に於ける陳述を録取したる調書を証拠として採用すれば上告人の犯罪は賍物運搬罪となる何となれば(1)他の同行者が窃盗に入ることは認識し居りたるも之に加担する意思なく又窃盗の実行々為の分担もなし(2)又窃盗の謀議をなしたるにもあらざるものなり、故に前記第二審公判廷の上告人の供述を以てすれば賍物運搬罪としてこれを認定するの外なきものなり」と云うにある。 按ずるに原判決は原審公判廷における被告人の供述を引用しこれを他の証拠と綜合して判示第一の(ロ)の事実を認定しておるのである、ところが原審公判調書によれば被告人の供述として論旨摘録の如き記載があるので ずるに原判決は原審公判廷における被告人の供述を引用しこれを他の証拠と綜合して判示第一の(ロ)の事実を認定しておるのである、ところが原審公判調書によれば被告人の供述として論旨摘録の如き記載があるのであるから原判決に引用されたような「自分は屋外で見張りをし」なる供述をしていないことは明白である、然らばその点において原判決は被告人の供述しないことを供述したようにその趣旨を変更して引用しているのであるから虚無の証拠によつて事実を認定した違法があることは所論の通りである、しかし原判決の引用する第一審第一回公判調書中の第一審相被告人Eの供述記載を見ると「Fから此の家の倉に品物があるから取りに行こうと誘はれたので行く様になりました私とFと二人で見張をし他の三名が中に這- 2 -入つて物を取りました見張をしていたのはA方の裏側であつた」とあるから原判決の引用する他の証拠と綜合すると判示事実は充分に認定することができるのであつて前記違法は少しも原判決に影響を及ぼすものではない従つて論旨は採用することはできない。 同第二点は「原審はその法律の擬律に際りて次の如き記載あり「法律に照すと被告人の判示所為中第一の(イ)の点は刑法第二百三十五条第六十条に第一の(ロ)の点は同法第二百三十六条第一項第六十条に第二の点は同法第二百五十六条第二項に当るから右の第一の(ロ)の点については被告人は犯行当時窃盗の犯意しか持つて居らず共犯者である判示B等の強盗の行為は被告人の予期しないところであつたから」なる記載の如く第一の(ロ)の事実について原審判決は刑法第二百三十六条第一項第六十条を適用せるも右は全く法律の適用を誤りたるものにして上告人の所為に対しては刑法第二百三十五条の窃盗罪を適用すべきものなるにかゝはらず右の如く誤りて強盗罪の法条を適用せるものなり。」というにある。 十条を適用せるも右は全く法律の適用を誤りたるものにして上告人の所為に対しては刑法第二百三十五条の窃盗罪を適用すべきものなるにかゝはらず右の如く誤りて強盗罪の法条を適用せるものなり。」というにある。 然し原判決の法律適用の部分を見るとその最初の所に「第一の(ロ)の点は刑法第二百三十六条第一項第六十条に当るが」とあるが結局は刑法第三十八条第二項により窃盗罪として同法第二百三十五条を適用し判示第一の(イ)と連続犯をなすものとして処分するものであることは判文上明白であつて右最初の記載は要するに「生じた結果の点からすれば本来は刑法第二百三十六条第一項第六十条に当るべき場合なのであるが」と云う意味に過ぎないので同法条を適用した趣旨でないことは疑を容れない、而も判示第一の(ロ)について被告人以外の共犯者は最初から強盗の意思で強盗の結果を実現したのであるがただ被告人だけは軽い窃盗の意思で他の共犯者の勧誘に応じて屋外で見張をしたと云うのであるから被告人は軽い窃盗の犯意で重い強盗の結果を発生させたものであるが共犯者の強盗所為は被告人の予期しないところであるからこの共犯者の強盗行為について被告人に強盗の責任と問うこと- 3 -はできない訳である。然らば原判決が被告人に対し刑法第三十八条第二項により窃盗罪として処断したのは正当であつて原判決には毫も所論の如き擬律錯誤の違法はない。論旨は理由なきものである。 よつて本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六条により主文の如く判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官松岡佐一関与昭和二十三年五月一日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一 昭和二十三年五月一日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 4 -
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