平成14年9月26日判決言渡平成14年(少コ)第1761号旅行代金返還請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告は原告に対し,金26万1805円を支払え。 第2 事案の概要 1 請求原因の要旨(1) 原告は被告との間で,平成14年4月上旬ころ,被告が主催する「Aをめぐる旅11日間(平成14年4月19日出発)」(以下「本件旅行」という。) に参加する旨の契約を締結し,本件旅行に参加した。 (2) 本件旅行における原告の主要な目的の一つはB博物館(以下「本件博物館」 という。)を見学することであり,そのことは出発前の4月16日ころに被告会社添乗員C氏(以下「C」という。)に伝えた。 (3) 4月24日,本件博物館に到着したところ,「3月1日から4月末日まで工事のため休館」との看板表示があり,結局入場,見学ができなかった。代替の見学地に案内されたので,Cに対し,「この入場で被告が免責されるのなら入場しない」と断ったが,Cは「そんなことは言いません」と述べた。 (4) 帰国後被告に対してクレームを申し出たが,被告は,4月19日までは入場できたが4月20日から30日までの間,急遽休館となったこと,代替見学地に案内したこと,を理由として原告のクレームを拒否した。 (5) 仮に4月19日までは入場できたとしても,2ヶ月間工事中である本件博物館を見学させること自体が本件旅行の目的を著しく阻害するものであり, 原告は工事中であることを告知されていたら本件旅行への参加を見合わせていた。本件博物館が工事中であることを知りながら原告に告知しなかっ 学させること自体が本件旅行の目的を著しく阻害するものであり, 原告は工事中であることを告知されていたら本件旅行への参加を見合わせていた。本件博物館が工事中であることを知りながら原告に告知しなかったか, あるいは工事中であることを知らなかった被告には,旅行業者として重大な過失がある。 (6) よって,原告は被告に対し,本件契約の債務不履行に基づき,次のとおりの本件旅行代金等合計金26万1805円の返還支払を求める。 旅行代金 25万5275円銀行振込手数料 210円a-b間バス代 6000円(3000円×2)c-a間電車代 320円(160円×2) 2 被告の主張の要旨(1) 本件博物館の見学ができなかった原因は,本件博物館が工事の完成を5月1日からの連休に間に合わせたいとの一方的な都合で,4月20日に急遽同日から30日までの休館を決定したことにあり,しかも本件博物館はこの決定を現地手配会社にも知らせなかった。被告は本件旅行出発前に現地手配会社に各観光地の開閉館を確認し,本件博物館を含めすべての旅程に問題がない旨の回答を得ていた。現地手配会社の下請会社は,本件博物館から3月1日から4月30日まで工事をするが観光には影響ないとの通知を受けていたので,現地手配会社には知らせなかった。見学予定であった4月24日当日も,現地ガイドが本件博物館の係員と交渉したが,見学を拒否されたものである。被告にとっては見学不能の事態は不可抗力であって,被告に過失はない。 (2) 被告は,次のとおり代替サービスを提供して,旅行業約款20条に基づく旅程管理義務を果たした。 4月24日重要文化財「D」 不可抗力であって,被告に過失はない。 (2) 被告は,次のとおり代替サービスを提供して,旅行業約款20条に基づく旅程管理義務を果たした。 4月24日重要文化財「D」入場観光,土産提供4月26日 E寺及びF寺入場観光4月27日 G館見学(学芸員案内付き)夕食時飲み放題サービス提供代替サービス料代金合計は36元であり,本件博物館入場料30元を上回っている。 (3) 原告が「この入場で被告が免責されるのなら入場しない」と断ったのに対し,Cが「そんなことは言いません」と答えた事実はない。原告も他の旅行者と同様に代替サービスの見学等に参加している。 (4) よって,被告には旅行代金等の返還義務はなく,原告の請求は理由がない。 3 争いのない事実及び前提事実原告は被告主催の本件旅行に参加したが,楽しみにしていた本件博物館の見学は,見学予定日の4月24日が休館であったためできなかった。被告は代替サービスとして被告主張の入場観光等を提供し,原告もこれに参加した。原告は本件旅行に際して,原告主張のとおり旅行代金等合計金26万1805円を支出した。 4 本件の争点(1) 本件博物館に入場見学できなかったこと,及び本件博物館が工事中であることを被告に告げなかったことについて被告の過失があるか。 (2) 被告は旅程管理義務の一環としての代替サービス提供義務を尽くしたか。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告の過失)について(1) 証拠によれば次の事実が認められる。本件旅行は,被告が主催するいわゆるパッケージツアー(主催旅行)である。被告は本件旅行出発前に現地手配 争点(1)(被告の過失)について(1) 証拠によれば次の事実が認められる。本件旅行は,被告が主催するいわゆるパッケージツアー(主催旅行)である。被告は本件旅行出発前に現地手配会社に各観光地の開閉館を確認し,本件博物館を含めすべての旅程に問題がない旨の回答を得ていた(甲2の2,乙9)。現地手配会社の下請会社は,本件博物館から3月1日から4月30日まで工事をするが観光には影響ないとの通知を受けていたので現地手配会社には知らせなかった(乙6)。本件博物館は4月19日まで見学が可能であったところ,同20日になって急遽同3 0日までの休館が決定されたが,そのことは現地手配会社にも被告にも知らされなかった(甲2の2,乙3,乙4,乙5,乙6)。見学予定であった4月 24日当日に,現地ガイドが本件博物館の係員と交渉したが,結局見学を拒否された(乙3,乙6)。 (2) 以上の事実を踏まえて判断すると,本件のような主催旅行においては,旅行業者は契約内容である旅行計画の実施に必要な交通機関,宿泊先,見学場所等について円滑に実施できるように手配する債務(手配債務)を負担していると解される。そして,被告が本件旅行契約に基づいて負担していた本件博物館見学の手配債務は不履行となったことが明らかである。しかし,被告ないしその手配代行者(現地手配会社及びその下請会社は,被告の手配債務の履行補助者と考えられる。)は,主催旅行会社として取るべき措置を尽くしていると評価することができ,本件不履行の原因は,急遽休館を決定しそれを現地手配会社にも被告にも知らせなかった本件博物館の措置にあるから,被告には責めに帰すべき事由はないというべきである。また,本件博物 とができ,本件不履行の原因は,急遽休館を決定しそれを現地手配会社にも被告にも知らせなかった本件博物館の措置にあるから,被告には責めに帰すべき事由はないというべきである。また,本件博物館から3月1日から4月30日まで工事をすることを下請会社が現地手配会社に知らせず,結果として被告も知らなかったことから原告等旅行契約者に告知しなかった点は,本件博物館からの通知が観光には影響ないとの内容であったことに照らすと,原告等に告知しなかったことをもって被告の過失とすることはできない。よって,本件不履行についての被告の帰責事由は認められない。 2 争点(2)(被告の代替サービス提供義務)について(1) 本件のような主催旅行においては,旅行業者は前記の手配債務が何らかの事由で不履行となった場合には,旅行業約款20条に基づく旅程管理債務の一環として,代替サービスの手配を行うことが義務づけられる。 (2) 本件旅行においては,被告主張のような代替サービスが提供され,原告もこれに参加したことは当事者間に争いがない。代替サービスの内容は,前後3日間にわたり,見学場所4カ所のほか飲食等の提供も含まれ,その総額は不履行となった本件博物館見学の費用を上回っていることが認められる。以上の事実に照らすと,被告は代替サービス提供義務を尽くしたものと認めるのが相当である。 (3) 原告は,代替サービスの提供は受けたものの,被告に対するクレームの権利は留保する旨を被告会社添乗員Cに告げ,Cもこれを了承したと主張する。 しかし,Cが了承したことを認めるに足りる証拠はなく,仮にCが了承した事実があるとしても,旅程変更に伴うクレームの一環として旅行代金等の全 Cに告げ,Cもこれを了承したと主張する。 しかし,Cが了承したことを認めるに足りる証拠はなく,仮にCが了承した事実があるとしても,旅程変更に伴うクレームの一環として旅行代金等の全額返還に応じる趣旨の合意をする権限がCにあったと認めるべき事情はない。 3 まとめ以上のとおりであって,本件博物館の見学ができなかったことについての被告の過失は認められず,かつ被告は旅程管理義務の一環としての十分な代替サービスを提供していると認められるので,被告に本件旅行代金等の返還義務は認められない。結局,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第1室裁判官藤岡謙三
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