平成16(行ウ)292 損害賠償(住民訴訟)

裁判年月日・裁判所
平成18年4月14日 東京地方裁判所
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判決文本文16,161 文字)

- 1 -平成18年4月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(行ウ)第292号損害賠償(住民訴訟)請求事件口頭弁論終結日平成18年2月21日判決主文 被告は,自由民主党品川区議団に対し,769万8995円及び内金442万2042円に対する平成14年4月1日から,内金327万6953円に対する平成15年4月1日から,各支払済みまで年10.95パーセントの割合による金員の支払を請求せよ。 被告は,Aに対し,442万2042円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで年10.95パーセントの割合による金員の支払を請求せよ。 被告は,Bに対し,327万6953円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年10.95パーセントの割合による金員の支払を請求せよ。 原告らのその余の請求に係る訴えを却下する。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 主文1ないし3項と同旨 被告は,Cに対し,769万8995円及び内金442万2042円に対する平成14年4月1日から,内金327万6953円に対する平成15年4月1日から,各支払済みまで年10.95パーセントの割合による金員の支払を請求せよ。 第2事案の概要本件は,品川区の住民である原告らが,同区議会の会派である「自由民主党品川区議団」(以下「本件会派」という。)に対して平成13年度及び平成1- 2 -4年度に交付された政務調査費の各一部(平成13年度分442万2042円,平成14年度分327万6953円)は,区政に関する調査研究の経費以外の飲食の使途に支出(以下「目的外支出」ともいう。)されたから,同区に返還されるべきであると主張して,被告に対し,①本件会派に対しては不当利得返還請求権に基づき,②品川区議会 する調査研究の経費以外の飲食の使途に支出(以下「目的外支出」ともいう。)されたから,同区に返還されるべきであると主張して,被告に対し,①本件会派に対しては不当利得返還請求権に基づき,②品川区議会事務局長のCに対しては,不法行為(品川区長から委任を受け,本件会派及びその代表者らに対して行うべき返還請求を違法に怠り,同区に損害を与えていること)に基づき,各769万8995円,③平成13年度における会派の代表者であるAに対しては,品川区議会における政務調査費の交付に関する条例9条に基づき,442万2042円,④平成14年度における会派の代表者であるBに対しては,同条に基づき,327万6953円の各金員及び上記①ないし④の各金員に対する各支出年度終了日の翌日(平成13年度分については平成14年4月1日,平成14年度分については平成15年4月1日)から支払済みまで品川区補助金等交付規則17条に定める年10.95パーセントの割合による延滞金の支払を請求することを求めている住民訴訟(地方自治法242条の2第1項4号本文)の事案である。 関係法令等の定め(1)地方自治法100条12項(ただし,平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)は,「地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる。」と規定し,これを受けて,品川区議会における政務調査費の交付に関する条例(以下「本件条例」という。)は,「区議会議員の調査研究に資する必要な経費の一部に充てるため」,品川区議会議長に結成を届け出た会派(所属議員が一人の場合を除く。以下「会派」という。)に対し,月額19万円に当該会派の所属議員数を乗じた額の政務調査費を交付すると 必要な経費の一部に充てるため」,品川区議会議長に結成を届け出た会派(所属議員が一人の場合を除く。以下「会派」という。)に対し,月額19万円に当該会派の所属議員数を乗じた額の政務調査費を交付すると規定している(同2条,3条)。 - 3 -(2)そして,本件条例は,会派は,「政務調査費を区政に関する調査研究以外の経費に充ててはなら」ず(6条),代表者は,「当該会派が交付を受けた政務調査費を区政に関する調査研究以外の経費に支出した場合は,当該経費に相当する額を区長に返還しなければなら」ず(9条1項),また,「当該会派が交付を受けた政務調査費の総額から,その年度において支出した政務調査費の総額を控除して残余がある場合は,当該残余の額に相当する額を区長に返還しなければならない。」(同条2項)と規定している。 (3)一方,本件条例は,「政務調査費の使途および経理を明確にするために,当該会派の議員のうちから政務調査費経理責任者(以下「経理責任者」という。)を定めなければなら」ず(同7条1項),「経理責任者は,政務調査費の収支について会計帳簿を調製し,その内訳を明確にするとともに,領収書等を整理しなければならない。」(同条2項)と規定している。更に,「代表者は,当該政務調査費に係る収入および支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を,毎四半期の終了目の翌日から起算して30日以内に議長に提出しなければならない。」と規定している(8条1項)。 (4)品川区議会議長の制定に係る,品川区議会における政務調査費の交付に関する規程(以下「本件規程」という。)は,政務調査費の使途につき,政務調査費の交付を受けた会派は,「別表に定める使途基準に従った経費に充てなければならない」(3条)とし,別表において,研究費,研修費,会議費,資料費,広報活動費,事務費 ,政務調査費の使途につき,政務調査費の交付を受けた会派は,「別表に定める使途基準に従った経費に充てなければならない」(3条)とし,別表において,研究費,研修費,会議費,資料費,広報活動費,事務費,人件費の各支出項目を定め,「研究費」の内容について,「品川区の事務および地方行財政に関する調査研究に要する経費ならびに調査を委託する経費」とした上,「調査委託費,国内視察調査費,海外での調査研究費,翻訳料,交流会経費,交通費,宿泊費,食料費,飲食費等」を例示列挙し,「会議費」の内容につき,「各種会議に要する経費及び参加経費」とし,「会場借上げ費・機材借上げ費,資料印刷費,会議に伴う食費・飲料代,参加費,会費等」を例示列挙している。 - 4 -また,本件規程5条1項は,「条例第8条の規定による収支報告書の提出は,政務調査費収支報告書(第4号様式)により行うものとする」と定め,同条2項は,「前項の政務調査費収支報告書を提出するときは,明細書(第5号様式),領収書および支払証明書を添付しなければならない。」と規定している。 (5)品川区長の制定に係る,品川区議会における政務調査費の交付に関する条例施行規則(甲1の2)は,「議長は,条例第8条の規定により提出された収支報告書の写しを区長に送付するものとする。」(4条),「区長は,当該会派の最終期の収支報告書の写しを議長から送付されたときは,当該年度に交付すべき政務調査費の額を確定するものとする。」(5条1項),「区長は前項の額を確定したときは,政務調査費交付確定通知書(第4号様式)により会派の代表者に通知するものとする。」(同条2項)と規定している。 (6)地方自治法は,地方自治体の長は,その権限に属する事務の一部を当該普通地方公共団体の吏員に委任することができると規定し(153条1項,2項) 知するものとする。」(同条2項)と規定している。 (6)地方自治法は,地方自治体の長は,その権限に属する事務の一部を当該普通地方公共団体の吏員に委任することができると規定し(153条1項,2項),同法施行令159条は,歳出予算の誤払又は過払の額の返還請求については,収入の手続の例により,当該支出をした経費に戻入れを行うとしている。そして,品川区長の制定に係る,品川区会計事務規則5条1項,2条3号,4号は,「区議会事務局に属する収入及び支出の命令に関する事務」を区議会事務局長に委任する旨規定している。 また,行政委員会等事務局の長等に支出負担行為を委任する規則2条1号,3条は,同区長の同区議会事務局長に対する支出負担行為についての委任事項として,議員の報酬,報償費,交際費,負担金補助及び交付金,扶助費,補償補填及び賠償金(見舞金に限る。)に係る事項を規定している。なお,地方自治法施行規則15条別記「歳出に係る節の区分」及び品川区長の制定に係る支出負担行為手続規程は,支出負担行為の整理区分について,報酬,給料,報償費,交際費,食糧費その他の需用費,手数料その他の役務費,負- 5 -担金補助及び交付金,扶助費,補償補填及び賠償金等の区分を設けているが,独立に政務調査費用の区分は設けておらず,上記地方自治法施行規則15条別記の「備考」欄1には「節及びその説明により明らかでない経費については,当該経費の性質により類似の節に区分整理すること」とされている。 (乙1ないし3) 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告らは,いずれも東京都品川区内に居住する住民である。 (2)本件会派は,品川区議会内において自由民主党に所属する議員らが結成した会派である。 本件会派には,平成13年度(平成 れる事実)(1)原告らは,いずれも東京都品川区内に居住する住民である。 (2)本件会派は,品川区議会内において自由民主党に所属する議員らが結成した会派である。 本件会派には,平成13年度(平成13年4月1日から平成14年3月末日までの期間)及び平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月末日までの期間)には,13人ないし14人の議員が所属していた。 (3)アAは,平成13年度における本件会派の代表者として届出がされたものである。 イBは,平成14年度における本件会派の代表者として届出がされたものである。 ウCは,平成17年4月1日から品川区議会事務局長の地位にある者である(乙6)。 (4)本件会派は,品川区議会事務局長から,平成13年度及び平成14年度の各四半期ごとに,政務調査費として,平成13年度計2964万円,平成14年度計3078万円の各金員の交付を受けた(甲2の1ないし8)。 (5)本件会派は,上記各政務調査費を,別紙一覧表のとおり,研究費及び会議費の名目で,飲食費の使途に支出した(以下「本件各支出」という。)(甲3の番号A1ないし182,B1ないし15,C1ないし89,D1ないし65)。 - 6 -平成13年度研究費446万7873円,会議費26万7455円合計473万5328円(のべ店舗数197)平成14年度研究費228万1486円,会議費99万5467円合計327万6953円(のべ店舗数154)平成13年度,平成14年度合計801万2281円(のべ店舗数合計351)(6)原告D及び死亡前原告Eは,平成16年4月16日,原告F及び同Gは,同年5月12日,品川区監査委員に対し,平成13年度及び平成14年度の政務調査費のうち研究費及び会議費合計801万2281円について,支出場所の性格等に照らし, 16年4月16日,原告F及び同Gは,同年5月12日,品川区監査委員に対し,平成13年度及び平成14年度の政務調査費のうち研究費及び会議費合計801万2281円について,支出場所の性格等に照らし,区政に関する調査研究費に当たらないから,品川区長において,上記金額から同区に返還済みの31万3286円及び延滞金6万1372円を差し引いた残りの要返還額769万8995円及び延滞金の支払請求等の措置を行うべきであるとして,住民監査請求を行った。これに対し,同監査委員は,同年6月15日,平成13年度分に関する請求については期間徒過を理由に監査を実施せず,また,平成14年度分に関する請求については監査を実施した上で,違法性を判断するに十分な論拠を見出すことができないなどとして監査請求を棄却した(甲5)。 なお,上記監査請求は,品川区長が本件会派に対して交付した政務調査費の返還請求及び延滞金の支払請求を怠る事実(いわゆる真正怠る事実)を違法な財務会計行為とするものであるから,平成13年度分の支出相当額に係る住民監査請求についても,上記返還請求権が消滅していない以上,監査請求期間を適用する余地はないものと解すべきである。 (7)上記監査請求及び本件訴訟に先立つ平成14年7月23日,品川区の住民(原告ら以外の者)は,品川区監査委員に対し,本件会派が平成13年度に「研究費」の名目で支出した政務調査費(本件各支出のうち平成13年度分)について,上記(6)の監査請求と同様の理由により,会派代表者に対する- 7 -返還請求等の措置を求める住民監査請求を行った上,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,支出当時の本件会派の代表者であった者に対して平成13年度政務調査費として620万4452円(計208件)及び延滞金相当 14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,支出当時の本件会派の代表者であった者に対して平成13年度政務調査費として620万4452円(計208件)及び延滞金相当額の支払を求める住民訴訟を提起した後,平成15年12月に,早期結審を求める趣旨から,29万8286円(計7件,別紙支出一覧表の網掛け部分)及び延滞金を求める内容に請求を減縮した。 このような経緯の中で,平成16年1月13日,本件会派代表者から品川区長宛に合計31万3286円及び同日までの延滞金6万1372円が支払われたことにより同区の損害が填補されたため,上記訴訟については,同年2月12日弁論終結を経て,同年4月13日,請求棄却(ただし,上記経緯から,訴訟費用の2分の1は同事件被告の負担とする)の判決がされた(甲4の1ないし5,7,9)。 上記支払の対象は,別紙一覧表記載の網掛け部分のキャバレー「H商事株式会社・I」,カラオケバー「J」,パブ「K」,ライブハウス「L」であり,上記支払の結果,本件各支出のうち平成13年度分の残額は,442万2042円(のべ店舗数189)となった。 争点 (1)本件の主たる争点は,本件各支出が,本件条例6条,9条に規定する「区政に関する調査研究以外の経費」に充てられたもの(目的外支出)と認められるか否かである。 アこの点に関し,原告らは,政務調査費は使途を限定して交付される公金であり,本件条例が,目的外支出を明確に禁止し,これを防止すべく厳格な規定を設けていることに照らすと,その支出が認められるためには,調査研究目的の達成のための合理的必要性が存することを要するものと解すべきところ,本件各支出の内容をみると,支出の場所が,クラブ・スナッ- 8 -ク・パブ・居酒屋等,主として飲酒を楽しみ,更には女性ホステ 目的の達成のための合理的必要性が存することを要するものと解すべきところ,本件各支出の内容をみると,支出の場所が,クラブ・スナッ- 8 -ク・パブ・居酒屋等,主として飲酒を楽しみ,更には女性ホステスや顧客との歓談やカラオケに興じることを目的とした店舗であったり,割烹・懐石料理・しゃぶしゃぶ・ふぐ・すし・うなぎ・てんぷら・そば・とんかつ等の専門店のほか,中華料理・焼き肉店・ファミリーレストラン・区内高級ホテル内のレストランなど,主として飲食自体を楽しむことを目的とし,更には飲酒を伴うこともある店舗であるなど,その性格上,区政に関する調査研究又は会議を行うにはおよそ不向きな場所となっており,そのような場所で調査研究又は会議が行われたとは考え難く,仮に調査研究又は会議が行われたとしても,当該支出の場所や店舗の性質,支出した金額や回数等から質的,量的にみて,これらの飲食費を政務調査費として支出する必要性,合理性が存したとは認められず,本件各支出は,結局,飲食,交際又は遊興を主たる目的として行われたものとみるほかないから,目的外支出に当たる旨主張する。 イこれに対し,被告は,会派の活動に対する不当な干渉及び萎縮効果を防止し,議会の自律性を確保する見地から,各会派の政務調査費の経理について,被告には,領収書等をもとにした形式的な審査権しか認められず,目的外支出の有無についての判断は,各会派あるいは議会内における自律的なチェックに委ねられるべきであり,使途の適正は,収支報告書,領収書等の資料及び品川区情報公開条例に基づく公開により確保されるとし,本件条例9条も,特段の事情のない限り,交付金の返還の要否の判断を各派の代表者が行うことを明らかにしたものと解することができるから,被告が各派の代表者に対し,交付した政務調査費について,目的外支出であ 条例9条も,特段の事情のない限り,交付金の返還の要否の判断を各派の代表者が行うことを明らかにしたものと解することができるから,被告が各派の代表者に対し,交付した政務調査費について,目的外支出であることを理由に返還を求めることができるのは,領収書等の記載から一見明白に目的外支出に当たると認められる場合に限られると解すべきところ,本件各支出については,一見明白に目的外支出に当たるとまでは立証されていない旨主張する。 - 9 -(2)なお,検討の前提として,地方公共団体の長が委任できる事務の範囲は,事務の性質上,長の専権とされるもの又は長自らの執行を同法が予定しているもの(議会の招集,議案の提案,主要役職員の任免等)を除き,長の権限に属する事務一般と解されるところ,前記1(6)のとおり,品川区長の制定にに係る規則上,区長が区議会事務局長に委任できる事項は,区議会事務局に属する「収入及び支出の命令に関する事務」とされ,また,地方自治法施行令159条により,歳出の誤払又は過払の額の返還請求については,収入の手続の例により,当該支出をした経費に戻入れを行うとされていること,及び,目的外支出の対象金額につき返還請求を行うか否かは,当該使途に関する証拠に基づき法的観点から行われ,その判断に,格別高度の政治的判断を要するわけではないことにかんがみると,上記規則に基づき,目的外使用金の返還請求に関する事務の執行権限は,品川区長から品川区議会事務局長に委任されたものと解するのが相当である。 また,上記(1)の主要争点に付随して,本訴請求のうち,本件会派に対する返還請求を求める部分については,本件会派が権利能力なき社団と認められるか否か,会派の代表者に対する返還請求を求める部分との関係も問題となる。 第3争点に対する判断1(1)前記関係法令等の定 返還請求を求める部分については,本件会派が権利能力なき社団と認められるか否か,会派の代表者に対する返還請求を求める部分との関係も問題となる。 第3争点に対する判断1(1)前記関係法令等の定めによれば,政務調査費は,議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部に充てるために会派に交付することが認められた公金であり(地方自治法100条12項,本件条例2条),その使途について,本件条例は,区政に関する調査研究以外の経費に充てることを禁止し(本件条例6条),これに反して区政に関する調査研究以外の経費に支出した場合には,会派の代表者に対し,当該経費に相当する金額を区長に返還すべき義務を課すとともに(同9条1項,2項),会派において,政務調査費経理責任者を定め(同7条1項),所定の明細書,領収書及び支払証明書を- 10 -添付した収支報告書を作成し,議長に提出することを義務付け,収支報告書の写しの提出を受けた区長において,政務調査費の額を確定するものとしている(本件条例7条2項,本件規程5条)。 このように,法令及び条例が,政務調査費の支出について,区政に関する調査研究のための必要性があることを要求し,目的外の支出を禁止した上,その違反に対しては代表者個人にも返還義務を課す一方,政務調査費の額の確定に当たって,その支出を裏付ける書類を添付した収支報告書の作成,提出を要求しているのは,区民に対する説明責任と財政の健全な運用の見地から,公金の使途として許容される政務調査費の支出について,その適正を確保する趣旨によるものと解される。 他方,区議会議員は,広く区民から付託を受け,その権能の範囲内で,区政の向上のために活動することが求められ,こうした目的を達成するために,議員個人として活動するだけでなく,会派を結成し,会派を通じて区政に関連 議員は,広く区民から付託を受け,その権能の範囲内で,区政の向上のために活動することが求められ,こうした目的を達成するために,議員個人として活動するだけでなく,会派を結成し,会派を通じて区政に関連する広汎な事象等について調査研究をしたり,会議を行うことが認められるものである。このような調査研究活動又は会議の場において,当該研究又は会議の目的達成の上で,関係者との会食等を要する場合あるいは当該研究や会議を行う日時について,昼食時や夕食時以外の日程をとることが困難である場合等に,飲食が必要となる場合もあり得るところであり,このような場合における飲食は,上記調査研究又は会議に伴うものとして,議員個人が日常,私的に行う飲食とは異なる公的性質を帯びるものということができる。 そこで,会派による飲食費の支出については,区政に関連する調査研究又は会議に伴い,社会通念上必要かつ相当と認められる範囲において,区政に関連する調査研究又は会議に伴う一種の経費として,政務調査費の使途による支出と認められると解するのが相当であり,このような必要性,相当性の有無を判断するに当たっては,当該会議又は調査研究の目的,内容と当該飲食の場所及び内容,支出金額,回数等を考慮し,調査研究又は会議に伴うも- 11 -のとして社会通念上適切なものとして許容されることが必要というべきである。 「飲食費」につき,本件規程の別表「政務調査費の使途基準」が,「品川区の事務および地方行財政に関する調査研究に要する経費」(研究費)又は「各種会議に要する経費」(会議費)として支出することを認めているのも,上記の要件を満たす限りにおいて,適法ということができる。 (2)これに対し,被告は,議会の自律性を根拠に,被告が会派の代表者に交付した政務調査費について,目的外支出に当たることを理由に返還 のも,上記の要件を満たす限りにおいて,適法ということができる。 (2)これに対し,被告は,議会の自律性を根拠に,被告が会派の代表者に交付した政務調査費について,目的外支出に当たることを理由に返還を求めることができるのは,当該支出が,領収書の記載等から,一見明白に目的外支出に当たると認められる場合であることを要すると解すべきである旨主張する。 しかしながら,先にみたとおり,地方自治法は,政務調査費を「議員の調査研究に資するため必要な経費」と定め,本件条例は,明文で目的外支出を禁止し,禁止及び返還請求の対象となる目的外支出の内容について,特に明白な場合に限定するとの文言を使用しておらず,政務調査費の支出の適正を確保するために各種具体的な規定を設けている。被告の主張によれば,領収書の記載等から一見明白に目的外支出に当たると認められる場合にのみ目的外支出の有無に関する被告の調査が及ぶこととなり,補充的な調査をすれば目的外支出に当たることが容易に判明する場合や,情報開示請求の結果と総合した結果,目的外支出に当たることが発覚した場合等においても,その支出の適否について第三者機関による審査が及ばないということになるが,事柄の性質上,議会又は会派による自律的解決が現実に機能しない場合も当然にあり得ることからすると,このような結果を,前記地方自治法及び本件条例の規定が許容しているとは考え難い。 むしろ,目的外支出の疑念が生じた場合に,被告において,その点の解明に必要な限度での調査を行うことは,上記規定の目的とする政務調査費の適正な使用の確保の見地からは必要なことというべきであり,それが,会派又- 12 -は会派に属する議員の適正な活動を不当に阻害したり,萎縮させたりするものということはできない(当該研究又は会議と飲食との関係を調査する上で,会合の ことというべきであり,それが,会派又- 12 -は会派に属する議員の適正な活動を不当に阻害したり,萎縮させたりするものということはできない(当該研究又は会議と飲食との関係を調査する上で,会合の際の出席議員の具体的な発言内容や議員以外の相手方の氏名まで明らかにする必要があるわけではなく,また,議員自身の区政に関する調査研究又は会議における活動は,公的なものであって,その性質上秘匿すべきものではないはずのものである。)。 もとより,議会がその機能を十全に発揮する上で,その構成員である議員の所属会派の活動の自由を尊重することは必要なことであり,区政の向上に資する限り,会派による調査研究の対象が相当程度広汎にわたることが許容されるとしても,そのために公金を使用することが適法と認められるかどうかは,別途,公金使用の根拠規定の趣旨及び要件に照らして決せられるべきであり,目的外使用金の返還請求の可否も同様に決せられるべきものであって,議会の自律性を理由に,これらの規定の要件を,目的外支出に係る金員相当額の返還請求を制限する方向で限定的に解釈することはできないというべきである。 よって,被告の前記主張は採用できない。 2(1)前記1(1)の解釈に照らして,本件各支出が目的外支出に当たるか否かを検討するに,本件各支出に関する領収書(甲3)並びに原告ら代理人の作成に係る調査報告書(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,本件各支出の件数は,合計351件,飲食店舗総数154件,支出総額800万円近くに上り,その支出先は,別紙一覧表記載のとおりであることが認められるところ,このような公的施設外の飲食店舗等における飲食は,それ自体では外形上,日常私的に行われる飲食と区別することが困難であるから,その費用の支出については,当該会議の目的,時期,性質及び支出先の場 ころ,このような公的施設外の飲食店舗等における飲食は,それ自体では外形上,日常私的に行われる飲食と区別することが困難であるから,その費用の支出については,当該会議の目的,時期,性質及び支出先の場所,性質,支出の内容,程度等からみて,当該飲食時の活動が,区政に関連する調査研究又は会議として社会通念上必要なものであると認めるに足りる特段の事情が存しな- 13 -い限り,目的外支出に当たると認めるのが相当である。 そこで,以下,このような見地から,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性があったか否かにつき,店舗の種類別に検討する。 アバー・クラブ・スナック・パブ(店番号(甲10の一覧表中の店番号欄記載の番号。以下同じ)5ないし14)これらの店舗は,通常,顧客が女性ホステス等を交えて飲酒,軽食,カラオケなどに興じる場所として利用されており,その性質からみて,社会通念上,「区政に関する調査研究」のための会合を行うのに適切な場所といえないことは明らかであり,本件訴訟における主張・立証活動状況(返還請求又は損害賠償請求の相手方は,補助参加して具体的な反論・反証を行っておらず,被告は,前記解釈論を主張しているものの,事実関係については不知と認否するにとどまっている。以下,単に「本件主張・立証活動状況」という。)にもかんがみると,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性があったとは認め難い。 イ居酒屋・ビヤガーデン(店番号16ないし41)これらの店舗は,通常,顧客が飲酒を伴う食事をし,歓談に興ずる場所として利用されており,その性質からみて,社会通念上,「区政に関する調査研究」のための会合を行うのに適切な場所といえないことは明らかであり(なお,屋形船観光船の船宿(店番号23, ,歓談に興ずる場所として利用されており,その性質からみて,社会通念上,「区政に関する調査研究」のための会合を行うのに適切な場所といえないことは明らかであり(なお,屋形船観光船の船宿(店番号23,支出番号A24,75,C43)での支出も含まれている。),本件主張・立証活動状況にもかんがみると,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性があったとは認め難い。 ウ割烹・懐石料理・うなぎ・しゃぶしゃぶ・すし・ふぐ・かに・そば・うどん・お好み焼その他の和食の店(店番号42ないし94)これらの店舗は,通常,顧客が高価な料理を楽しんだり,飲酒を伴う会- 14 -合を行う場所として利用されており,このうち,回転ずし店(店番号52,支出番号A169,A172)は,その性質からみて,社会通念上,「区政に関する調査研究」のための会合を行うのに適切な場所といえないことは明らかである。その余の店舗における飲食についてみても,当該店舗の性質や領収書から窺われる飲食代金に照らし,飲酒を伴っている場合が多いことが推認され,飲酒を伴わない場合があったとしても,料理の代金の合計額も相当高額に上っている場合が多く,本件主張・立証活動状況にもかんがみると,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性及び社会通念上の相当性があったとは認め難い。 エ天ぷら,とんかつ,中華料理,韓国料理,焼肉店(店番号95ないし131)これらの店舖は,通常,顧客が当該店舗における専門の料理の食事を味わい,顧客において飲酒をすることもある場所として利用されており,このうち,ラーメン店は,その性質からみて,社会通念上,「区政に関する調査研究」のための会合を行うのに適切な場所といえないことは明らかである。その余の店舗における飲食 ある場所として利用されており,このうち,ラーメン店は,その性質からみて,社会通念上,「区政に関する調査研究」のための会合を行うのに適切な場所といえないことは明らかである。その余の店舗における飲食についてみても,当該店舗の性質や領収書から認められる飲食代金等(一度の「会合」につき数万円,高額のものとしては7万4900円(A29)から十数万円(A110)に及ぶ。)に照らすと,飲食(及びこれに伴う飲酒)を楽しむこと自体を主たる目的としていたと推認されてもやむを得ないところであり,本件主張・立証活動状況にもかんがみると,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性及び社会通念上の相当性があったとは認め難い(なお,飲食代金が高額にわたらない場合でも,本件会派の所属議員が,日常,私的に行っている食事と異なる公的性質を帯びた飲食ではないと推認することができる。)。 オ洋食レストラン(店番号15,132ないし147)- 15 -これらの店舗は,品川区近辺の高級ホテル内のレストラン,イタリアンレストラン,ファミリーレストラン等であり,このうち,ファミリーレストランについては,その性質からみて,社会通念上,「区政のための調査研究」のための会合を行うのに適切な場所とはいい難い。 その余の店舗における飲食についてみても,当該店舗の場所や性質等に照らすと,飲食(及びこれに伴う飲酒)を楽しむこと自体を主たる目的としていたとの疑念を抱かれてもやむをえないところであり,本件主張・立証活動状況にもかんがみると,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性及び社会通念上の相当性があったとは認め難い(なお,飲食代金が高額にわたらない場合でも,本件会派の所属議員が,日常,私的に行っている食事と異なる公的性質 目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性及び社会通念上の相当性があったとは認め難い(なお,飲食代金が高額にわたらない場合でも,本件会派の所属議員が,日常,私的に行っている食事と異なる公的性質を帯びた飲食ではないと推認することができる。)。 (2)以上のとおり,本件各支出に係る飲食費については,いずれも,飲食当時の活動が,区政に関連する調査研究又は会議に伴うものとして,社会通念上必要かつ相当なものであると認めるに足りる特段の事情が存しないから,目的外支出に当たるというべきである。 なお,証拠(甲10)によれば,原告ら代理人による店舗の調査ができなかった支出や店舗の種類が不明の支出(店番号20,22,43,74,93,112,114,115,134,146,149ないし156。支出番号A14,36,48,59,82,107,147,153,159,171,173,B4,C2,32,33,56,71,75,85,88,D2,8,13,15,59,60)もあるが,証拠(甲3領収書)から認められる店名等からみて,その大半は,居酒屋・寿司・うなぎ・割烹・中華・ラーメン・洋食レストラン等から成っており,上記(1)で論じたことが妥当する上,本件主張・立証活動状況にもかんがみると,区政に関する調査研究又は会議の目的のために,これらの店舗で飲食をする必要性及び社会通念上の相当性が- 16 -あったとは認め難い。 3(1)上記検討の結果を基に,原告らの請求について判断すると,次のとおりである。 ア本件会派に対する返還請求等を求める部分について本件会派は,本件各支出相当額について,目的外支出として法律上の原因なく利得していることになるから,品川区に対し,合計769万8995円の不当利得返還債務及びこれに対する各支出年度終了日の翌日(平成13年 は,本件各支出相当額について,目的外支出として法律上の原因なく利得していることになるから,品川区に対し,合計769万8995円の不当利得返還債務及びこれに対する各支出年度終了日の翌日(平成13年度分については,平成14年4月1日。平成14年度分については,平成15年4月1日)から支払済みまで品川区補助金等交付規則17条の規定する年10.95パーセントの割合による延滞金の支払義務を負うことになる。 なお,本件会派に対する返還請求を求める部分については,本件会派が権利能力なき社団と認められることが前提となるところ,本件会派は,独自の規約(甲8)を有し,区政の発展に寄与することを目的として設立されたもので(上記規約2条),「自由民主党の党員であり,かつ,会派の目的及び活動に賛同する品川区議会議員」をもって組織され(同3条),その意思決定は総会の決議によることとされている(同5条)ことから,団体としての組織を備え,多数決原理が妥当しているといえる。そして,本件会派の代表者として「幹事長」を置き,副幹事長その他の役員が執行機関となり(同4条),財産管理の方法も規約上明定されている(同7条)。また,本件会派は,政務調査費の交付を受ける限りにおいて,管理すべき財産を有しているとみることができる(なお,本件訴訟に先立ち提起された,前記前提事実(7)の訴訟において,本件会派の代表者は本件会派が権利能力なき社団に該当する旨主張しており(甲7),本訴において,被告も,本件会派が権利能力なき社団に該当することは争っていない。)。したがって,本件会派は権利能力なき社団に当たるということができる(最高裁判所昭- 17 -和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)。 イA及びBに対する返還請求等を求める部分についてAは,本件各支出の 社団に当たるということができる(最高裁判所昭- 17 -和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)。 イA及びBに対する返還請求等を求める部分についてAは,本件各支出のうち平成13年度分の支出額(442万2042円)について,Bは,本件各支出のうち平成14年度分の支出額(327万6953円)について,それぞれ本件会派の代表者として,本件条例9条に基づく返還義務及び各金員に対する各支出年度終了日の翌日から支払済みまで品川区補助金等交付規則17条の規定する年10.95パーセントの割合による延滞金の支払義務を負うことになる。 なお,上記各人の支払義務は,それぞれ,前記アの本件会派の義務とは別個独立の債務ではあるが,目的を共通にすることから,両者が重なり合う額の限度で不真正連帯債務の関係に立つものと解される。 ウCに対する損害賠償請求を求める部分については,品川区議会事務局長として,品川区長から,本件各支出金に係る収C入及び支出の命令に関する事務を行う権限を委任され,その権限に基づき誠実に職務を遂行すべき義務を有するものと解される。 しかし,同人の上記地位は,品川区長の吏員として権限を委任されたものであるから,その財務会計行為の違法を理由とする損害賠償責任については,同法242条の2第1項4号ただし書による職員に対する賠償命令の請求によることを要するものと解される。そして,賠償命令の請求が,本件各支出金の返還と同一目的によるものであることから,その権限につき品川区議会事務局長に委任されたと解しても,本件訴えのうち,Cに対する請求を内容とする部分は,その請求の趣旨が賠償命令を請求するものではない(賠償命令は,当該財務会計行為について,対象となる職員に故意又は重過失があることを要件とする。)点において,不適法な訴え する請求を内容とする部分は,その請求の趣旨が賠償命令を請求するものではない(賠償命令は,当該財務会計行為について,対象となる職員に故意又は重過失があることを要件とする。)点において,不適法な訴えといわざるを得ない。 なお,賠償命令の請求によるべきか否かという点をおいたとしても,債- 18 -権管理を怠る事実の違法を理由とする損害賠償責任が認められるためには,当該怠る事実によって地方公共団体に損害が生じたと認められることを要するところ,本件において,品川区の執行機関又はその委任を受けた職員が,本件会派に対する本件各支出金の返還請求を怠っているという事実から,直ちに同区に対し,未返還額相当額の債権について社会通念上回収不能等による財産的損害を生じさせたと評価することはできないから,本件訴えのうち,債権管理を怠る事実を理由とする損害賠償金の支払の請求を求める部分は,そもそも前提となる品川区の損害について,その事実の主張,立証を欠くものといわざるを得ない。 (2)以上によれば,原告らの請求は主文第1項ないし第3項掲記の限度で理由があるから,認容し,その余の請求に係る訴え(本件訴えのうち,Cに対して金員の支払を請求することを求める部分)は不適法であるから却下し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部大門匡裁判長裁判官関口剛弘裁判官菊池章裁判官- 19 -(別紙)略

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