平成26(ワ)5064

裁判年月日・裁判所
平成27年3月26日 大阪地方裁判所
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判決文本文16,536 文字)

平成27年3月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第5064号実用新案権侵害差止請求権不存在確認等請求事件口頭弁論終結日平成27年3月5日判決 原告株式会社宮武製作所 訴訟代理人弁護士川村和久 被告株式会社ヤマソロ 訴訟代理人弁護士渡瀬直哉同大村知弘 主文 1 原告の別紙商品目録記載の商品の製造又は販売につき,被告が,原告に対し,実用新案登録第3158266号に係る実用新案権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことを確認する。 2 被告は,文書,口頭又はインターネットにより,原告が別紙商品目録記載の商品を製造又は販売することが,実用新案登録第3158266号に係る実用新案権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨を,第三者に告知してはならない。 3 被告は,原告に対し,金88万円及びこれに対する平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の,その余を被告の各負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1項,2項同旨 2 被告は,原告に対し,金330万円及びこれに対する平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要安 第1 請求 1 主文1項,2項同旨 2 被告は,原告に対し,金330万円及びこれに対する平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要安定高座椅子の考案について実用新案権を有する被告が,高座椅子の製造,販売等を行う原告及びその取引先等に対し,原告の商品は被告の実用新案権に抵触するものと認識していることなどを通知したことから,原告は,被告の実用新案権の無効を主張し,差止請求権等の不存在確認を求めると共に,前記取引先等への通知が,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知,流布)にあたるとして,被告に対し,同法3条1項による差止め及び同法4条による損害賠償を請求した。 1 前提となる事実(争いがない。)(1) 原告は,インテリア・家具・雑貨の企画,製造,卸売,販売及び輸出入等を目的とする会社,被告は,家具類並びに婚礼セット等の卸売及び小売等を目的とする会社である。 (2) 原告は,別紙商品目録記載の商品(以下「本件原告商品」という。)を製造し,販売している(製造,販売の開始時期については争いがある。)。 (3) 被告は,以下の実用新案権を有している(以下「本件実用新案権」といい,実用新案登録請求の範囲【請求項1】記載の考案を「本件考案」,その出願を「本件登録出願」という。)ア実用新案登録番号第3158266号イ出願番号実願2009−9413 ウ出願日平成21年12月25日エ登録日平成22年3月3日オ考案の名称安定高座椅子カ実用新案登録請求の範囲【請求項1】左右の2脚ずつの下端部を脚板上 平成21年12月25日エ登録日平成22年3月3日オ考案の名称安定高座椅子カ実用新案登録請求の範囲【請求項1】左右の2脚ずつの下端部を脚板上に固定し,上端部を手摺り板で固定した左右の脚間の前後部をそれぞれ連結板で橋絡し,連結板上に固定した座面の後部にはラチェット機構を配して連結した背板を設け,背板の長さの3分の1から2分の1の長さを左右の脚板後部に延伸したことを特徴とする安定高座椅子キ前記実用新案登録請求の範囲は,以下の構成に分説される(以下構成(ア)などという。)。 (ア) 左右の2脚ずつの下端部を脚板上に固定し,(イ) 上端部を手摺り板で固定した左右の脚間の前後部をそれぞれ連結板で橋絡し,(ウ) 連結板上に固定した座面の後部にはラチェット機構を配して連結した背板を設け,(エ) 背板の長さの3分の1から2分の1の長さを左右の脚板後部に延伸したことを特徴とする,(オ) 安定高座椅子(4) 被告は,特許庁長官に対し実用新案技術の評価請求を行い,平成23年11月24日付で,本件考案を「2」(この請求項に係る考案は,引用文献の記載からみて,進歩性がない[実用新案法3条2項])と評価する実用新案技術評価書(甲4,以下「本件技術評価書」という。)を得た。 (5) 被告は,原告に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するものと認識しているとして,本件原告商品に関する一切の広告宣伝及び製造,販売行為を中止するよう求める平成26年3月18日付け通知書を送付した(甲6, 以下「本件警告」という。)。 (6) 被告は,楽天市場やAmazonにおいて本件原告商品を販売していた有限会社モモダ家具,ナカバヤシ株式会社,有限会社村田家具,有限会社アークインテ 以下「本件警告」という。)。 (6) 被告は,楽天市場やAmazonにおいて本件原告商品を販売していた有限会社モモダ家具,ナカバヤシ株式会社,有限会社村田家具,有限会社アークインテリアショップ,ウエヤブ家具,株式会社ジェネレーションパス,株式会社マルダイ及び株式会社ホンダ(これら8業者を,以下「本件通知先」という。)に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するものと認識している旨を告知し,その点についての本件通知先の認識の有無,今後の対応,見解について,2週間以内に書面で回答するよう求める旨の平成26年3月18日付け通知書を送付した(以下「本件通知」という。)。 2 争点及び双方の主張(1) 被告の差止請求権等の不存在確認について[原告の主張]ア原告は,品番YS−1515の高座椅子(甲14,以下「1515商品」という。)を平成19年ころから,品番YS−1505の高座椅子(甲15,以下「1505商品」という。)を平成20年8月ころから,品番YS−1503の高座椅子(甲16,以下「1503商品」という。)を平成21年6月ころから,品番YS−1502の高座椅子(甲17,以下「1502商品」という。)を平成23年8月ころから,本件原告商品を平成24年8月ころ,それぞれ販売している。 イ上記各商品は,当初から,本件考案の構成(ア),(イ)及び(オ)と同じ構成を有する高座椅子であり,後者は前者を改良したものに位置付けられる。 1505商品以降,背板がほぼ水平となる機構が採用され,その後,背面をほぼ水平にしても転倒しない商品として製造,販売されているから,平成21年12月の本件登録出願の時点で,本件考案は新規性を欠くものであった。 ウまた,本件考案の構成は,本件技術評価書の引用文献1(乙1,特開2 しない商品として製造,販売されているから,平成21年12月の本件登録出願の時点で,本件考案は新規性を欠くものであった。 ウまた,本件考案の構成は,本件技術評価書の引用文献1(乙1,特開2 004−229925号公報,以下「乙1文献」という。)記載の構成に,同じく引用文献2(乙2,登録実用新案第3147628号公報,以下「乙2文献」という。)または引用文献3記載の構成を採用することで,当業者が極めて容易に想到することのできたものである。 構成(エ)についても,同じく引用文献5(乙3,特開昭55−146117号公報,以下「乙3文献」という。)に,「リクライニング時に背もたれ枠(3)の傾斜をゆるくすると重心が後方に移動するから支持枠(1)の脚部を後方に長く延ばしておかなければならない」,「従って(中略)支持枠(1)の後端までの寸法ℓがかなり大きくなってしまう」と記載されているように,椅子の転倒を防止する方策として脚板後部を後方に延伸しておくことは,当業者に周知な技術である。 エ以上によれば,本件考案は,本件登録出願前に日本国内において公然実施をされた考案と同一であるか(実用新案法(以下単に「法」という。)3条1項2号),これに基づいて,その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものというべきであり(法3条2項),実用新案登録無効審判により無効にされるべきとものと認められるから(法37条1項2号),被告は,原告に対し,本件実用新案権による権利を行使することができない(法30条により準用される特許法104条の3)。 オ被告は,本件実用新案権による権利行使として,原告に本件警告を送付し,本件通知先に本件通知を送付したから,原告には,本件実用新案権に基づく差止請求権,損害 り準用される特許法104条の3)。 オ被告は,本件実用新案権による権利行使として,原告に本件警告を送付し,本件通知先に本件通知を送付したから,原告には,本件実用新案権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権が存在しないことの確認を求める利益がある。 [被告の主張]ア本件原告商品以前の原告の商品は,背面をほぼ水平にできるとの構成を有しておらず,原告が,構成(エ)を有する商品を製造,販売したのも,平 成23年8月以降のことであるから,本件考案が新規性を欠くとの原告の主張は理由がない。 イ本件技術評価書の評価は,本件考案の本質を見誤ったもので妥当でない。 すなわち,本件考案の課題は,「正常な着座時から背板を水平に近い位置までリクライニングする際,広範囲にわたって安定した着座状態を維持」することである。そして,本件考案は,①通常の座椅子より座面が高い位置に設定される高座椅子でありながら,②極めて水平に近い位置まで背板を倒すことによって,高座椅子上で横臥することが可能であるとともに,③そのような場合にでも,後方に転倒することなく,安定した状態を維持することを可能としたものである。 本件技術評価書は,乙1文献について,構造が本件考案と共通する点を指摘するが,乙1文献の課題は,「背もたれを後に倒した状態でも,腰を突き出したような感覚を着座者」に与えないことであり,前記①ないし③の本件考案の課題とは何ら重複しない。 また,乙2文献の課題は,「和室で使用した場合に畳が傷付くことを防ぐ」ものであり,目的はもちろん,座椅子の構造としても,本件考案と共通するところはない。 乙3文献は,背面を後方へリクライニングした際の転倒防止策として,リクライニングと同時に座面が沈み込む構造とすることで重心を はもちろん,座椅子の構造としても,本件考案と共通するところはない。 乙3文献は,背面を後方へリクライニングした際の転倒防止策として,リクライニングと同時に座面が沈み込む構造とすることで重心を下げているのであって,本件考案とは根本的な発想が異なる。 本件技術評価書のその他の引用文献を考慮しても,本件考案に新規性,進歩性があったことは否定されず,本件実用新案権は無効ではない。 (2) 被告の不正競争行為について[原告の主張]ア被告は,本件技術評価書を提示することなく,平成26年3月18日付けで,原告に本件警告を発し,本件通知先に本件通知を発した。 イ本件実用新案権は無効であって,被告は本件実用新案権に基づく権利行使をすることはできないから(法30条,特許法104条の3),本件通知先に対し,本件原告商品の販売等が本件実用新案権に抵触する旨を通知する行為は,不正競争防止法2条1項14号が定める「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知」する不正競争行為にあたる。 ウよって,原告は,被告の不正競争行為によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるから,本件原告商品の製造等が本件実用新案権を侵害し又は侵害するおそれがある旨を,被告が第三者に告知することの差止めを求める。 [被告の主張]本件実用新案権が有効であることは前述のとおりであるから,被告は,同権利に基づく差止請求権を行使し得るのであり,本件通知先に対しては,本件原告商品が本件実用新案権に抵触する可能性があるとして,その見解を照会したにすぎないから,虚偽の事実を告知したことにはならない。 (3) 損害賠償請求について[原告の主張]ア原告は,別件不正競争防止法2条1項3号の事案において,平成26 の見解を照会したにすぎないから,虚偽の事実を告知したことにはならない。 (3) 損害賠償請求について[原告の主張]ア原告は,別件不正競争防止法2条1項3号の事案において,平成26年1月24日付警告書を被告に送付し,要求には応じられない旨の回答を得て,同年3月14日,被告を債務者とする仮処分命令申立事件を大阪地方裁判所に申し立てたところ,被告は,同月18日付け通知書により,本件警告及び本件通知を行ったものであり,前記仮処分命令申立てに対抗するために,原告の営業妨害を企図し,あえて行ったものといわざるを得ない。 イ被告は,本件技術評価書において,本件考案は進歩性がないとの判断を受けつつ,また,法29条の2において,実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ,侵害者等に対する権利行使はできない旨定められているのに,原告及び本件通知先に対し,本件技術評価書を提示するこ となく,本件警告及び本件通知を行っており,故意の営業誹謗行為と評価し得るものである。 ウ原告は,本件通知先から電話等で照会を受け,本件原告商品の販売は何ら違法でないこと等を説明したが,本件通知先のうち,原告と直接の取引のある2社については販売額が減少し,原告と直接の取引のない業者のうち少なくとも3社は,本件原告商品の販売を停止している。 エ以上によれば,被告の行為の違法性は顕著であり,営業誹謗行為による影響も重大であるから,信用毀損による無形損害を金銭に評価するならば300万円を下らず,また,その回復のために要する弁護士費用は30万円が相当であるから,原告は,被告に対し,前記不正競争行為による損害賠償として,330万円及びこれに対する不法行為の後である平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 であるから,原告は,被告に対し,前記不正競争行為による損害賠償として,330万円及びこれに対する不法行為の後である平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 [被告の主張]ア被告が,別件仮処分申立てに対抗するために,営業誹謗行為として本件通知を行った事実はない。被告は,本件原告商品が本件実用新案権に抵触する旨の認識を述べ,本件通知先に対し照会を行ったものであり,本件通知は何ら違法ではない。 イ原告は,本件通知によって原告の売上げが減少した等の事実を立証しておらず,積極損害,消極損害,信用毀損の無形損害は何ら生じていない。 第3 裁判所の判断 1 本件実用新案権の無効について当裁判所は,以下に述べる理由により,本件実用新案権には法3条2項の無効事由があり,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるから,被告はその権利を行使することができないものと思料する(法30条,特許法104条の3)。 (1) 本件考案について(甲3) ア本件考案は,平成21年12月25日に本件登録出願がされ,平成22年3月2日に登録されたものであって,実用新案登録請求の範囲【請求項1】及びその分説は,前記第2の1(3)カ及びキのとおりである。 イ本件考案の登録実用新案公報には,本件考案の【課題】は,「清浄(正常)な着座時から背板を水平に近い位置までリクライニングする際,広範囲にわたって安定した着座状態を維持できる椅子を提供する」ことであること,その【解決手段】は,「脚板を背板の長さの3分の1から2分の1の長さ後部に延伸することによって,背板を水平に近く傾斜した際にも座椅子が後方へ転倒することを防止する」ことであることが記載されるほか,【考案の詳細な説明】として,「本考案は,座椅子 1から2分の1の長さ後部に延伸することによって,背板を水平に近く傾斜した際にも座椅子が後方へ転倒することを防止する」ことであることが記載されるほか,【考案の詳細な説明】として,「本考案は,座椅子に関するものである。 (略)座卓式のコタツは一般的に畳の上に置かれ,その四方に座椅子を配置して使用する(略),座椅子は色々な機会に使用される(略),最近では座面を所定高さに設定した座椅子が普及してきている。いわゆる高座椅子である【0001】」,「このような座椅子には背板のリクライニング機構,つまり段階的あるいは無段階的に背板の角度を調整できるものが多く見られる【0002】」,「背板の角度を調整して出来るだけ水平状態に近づけ,(略)この際,着座者の状態が脚の後方へはみ出し,普通の着座位置より重心が後方へ移動するため,高座椅子が後方へ転倒する危険性があった【0003】」,「本願では以上のような課題を解決するため,脚を後方へ延長してそのような事態を防ぐものである。(略)主として畳の上での使用を想定して,4脚それぞれへの集中荷重による床部の損傷を分散すると共に,安定した設置状態を得るため,4脚のうちそれぞれ左右の2脚を脚板で連結したものであるが,この左右の脚板の後方,つまり背板側の部分を延長して,背板のリクライニング時の重心移動に対処するものである【0004】」,「本願の構成では,背板5の長さの3分の1以上に脚板11,21を後方へ延伸しているため,着座者の重心移動は脚板11, 21の長さ内に収まり,転倒は生じないものである。なお,本願の目的を達成するためには,脚板11,21の長さは長いほど好ましいものであるが,あまりにも長くすることは,設置時,収納時のことを考慮すると好ましくない。よって,背板5の長さの2分の1から3分の1と限定するもの するためには,脚板11,21の長さは長いほど好ましいものであるが,あまりにも長くすることは,設置時,収納時のことを考慮すると好ましくない。よって,背板5の長さの2分の1から3分の1と限定するものである【0011】」ことが記載されている。 (2) 原告商品の構成及び販売時期等(掲記の証拠及び弁論の全趣旨より認められる。)ア原告は,昭和35年の創業当時から,座椅子の製造,販売を行っており(甲22),平成19年8月ころ,「高座椅子」の商品名で,1515商品の製造,販売を開始した(甲14)。 1515商品は,ガス圧による無段階リクライニング機能を有する座椅子を,4本の脚からなる椅子状のフレーム部の上に載せるという形状であり,椅子状のフレーム部は,左右それぞれの2本の脚について,上端を手すりに固定し,下端を水平な底板に固定して,前部と後部のそれぞれ左右の脚間が,高さ調整可能に連結板で連結され,その連結板の上に座椅子を固定する構造である。また,左右の底板は,左右後部の脚より後方に若干延伸されている。 イ原告は,平成20年8月ころから,1505商品を製造,販売した(甲15)。 1505商品は,4本の脚の上端が手すりに,下端が底板に固定され,左右の脚間が連結板で連結され,その上に座椅子を設置する点では1515商品と同じである。 他方,1505商品は,左右の底板が,左右後部の脚より後方に延伸されておらず,角度を6度ずつ調節し得るレバー式の調整金具が新たに採用され,背板をほぼ水平まで倒す機構が採用されている点が,1515商品とは異なる(甲20,21。1515商品のリクライニングの程度は証拠 上不明である。)。 ウ原告は,平成21年8月ころから,1503商品を製造,販売した(甲16)。 1503商品は,レバ る(甲20,21。1515商品のリクライニングの程度は証拠 上不明である。)。 ウ原告は,平成21年8月ころから,1503商品を製造,販売した(甲16)。 1503商品は,レバー式調整金具を有する点では1505商品と同じであるが,左右の底板が左右後部の脚より後方に延伸されている点が異なり,宣伝として,「高座椅子のフレームをより安全,快適,豪華に一新しました。」との文言が付されている。 エ原告は,平成23年8月ころから,1503商品と並んで1502商品を販売した(甲17)。 1502商品は,左右の脚を連結する機構が座椅子本体内に収納されている点が1503商品と異なり,左右の底板が後方に延伸される程度が,1503商品に比してより大きくなっている。 オ原告は,平成24年8月ころから,本件原告商品を製造,販売した(甲18)。 本件原告商品は,左右の脚を連結する機構については1503商品等と同様であり,左右の底板が左右後部の脚より後方に延伸される程度については,1502商品に類似している。 (3) 本件考案の進歩性について前記(1)及び(2)で認定した事実を前提に,本件考案の進歩性について検討する。 ア平成21年12月25日の本件登録出願の際に,畳の上で使用される座椅子を所定の高さに設定して使用する高座椅子が存在すること自体は前提とされており,平成19年8月ころから製造,販売された1515商品においても,本件考案の構成(ア)及び(イ)と同じ構成が採用されている。 1515商品は,ガス圧による無段階リクライニング機能を使用するものであり,これは,本件考案の構成(ウ)のラチェット機構とは異なるもの と解されるが,平成20年8月ころから製造,販売された1505商品には,背板をほぼ 段階リクライニング機能を使用するものであり,これは,本件考案の構成(ウ)のラチェット機構とは異なるもの と解されるが,平成20年8月ころから製造,販売された1505商品には,背板をほぼ水平まで倒すことのできるレバー式の調整金具(甲21の図面より,ラチェット機構を有すると認められる。)が使用されており,この時点で,構成(ウ)と同じ構成が採用されたことになる。 また,1515商品は,左右の底板を左右後部の脚より後方に若干延伸していたが,1505商品はその延伸のない構成となり,平成21年8月ころから製造,販売された1503商品において,「より安全に」との宣伝を付して,左右の底板を左右後部の脚より後方に延伸する構成が再度採用されたことになる。 イ以上によれば,本件登録出願の前である平成21年8月ころから製造,販売された1503商品において,4脚のフレーム上に座椅子を設置し,高座椅子として安定させるという本件考案の構成(ア),(イ)及び(オ)と同じ構成が,また,ラチェット機構により背板を倒す構成(ウ)と同じ構成が採用されており,さらに,構成(エ)のうち左右の底板を左右後部の脚より後方に延伸する構成も採用されているのであって,唯一の相違点は,本件考案の構成(エ)が,脚板の延伸の長さを,背板の長さの3分の1から2分の1と数値で特定しているのに対し,甲第16号証によれば,1503商品の底板の延伸の程度は,背板の長さの3分の1には至らないと認められる点である。 しかしながら,4脚を底板上に置く椅子状のフレームに座椅子を設置する高座椅子において,背板をほぼ水平まで倒すことの出来る機構を採用した場合に,その安全を確保するため,底板を脚部より後方に延伸する構成が既に存する以上,その延伸の長さをどの程度にするかは,機器の構造,重量 子において,背板をほぼ水平まで倒すことの出来る機構を採用した場合に,その安全を確保するため,底板を脚部より後方に延伸する構成が既に存する以上,その延伸の長さをどの程度にするかは,機器の構造,重量,美感,使い勝手等を考慮し,当業者が適宜決め得るところといわざるを得ない。 上記結論は,被告自身が,登録実用新案公報(甲3)の【考案の詳細な 説明】において,「本願の目的を達成するためには,脚板11,21の長さは長いほど好ましいものであるが,あまりにも長くすることは,設置時,収納時のことを考慮すると好ましくない。よって,背板5の長さの2分の1から3分の1と限定する」と記載していること,本件技術評価書(甲4)において,脚部後部をどの程度延伸させるかは,椅子の設置面積を小さくしつつ転倒防止の効果を得られるよう,当業者が適宜決定し得ることであると記載されていることと合致する。 ウ原告は,本件考案について,1503商品等の原告の商品,あるいは本件技術評価書に引用された乙1文献等により,新規性もしくは進歩性を欠き無効である旨を主張するが,前記検討したところによれば,本件考案は,本件登録出願前に公然実施された1503商品に基づいて,当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められるから,その余の無効原因について検討するまでもなく,本件考案は進歩性を欠き,被告は,原告に対し,本件実用新案権に基づく権利行使をすることができないというべきである(法3条2項,37条1項2号,30条,特許法104条の3)。 (4) 不存在確認請求の結論本件実用新案権には無効原因があるのに,前記第2の1(5)及び(6)のとおり,被告は,本件原告商品が,本件実用新案権に抵触する旨を原告及び本件通知先に通知し,原告に対しては製造販売等の差止めを求め 本件実用新案権には無効原因があるのに,前記第2の1(5)及び(6)のとおり,被告は,本件原告商品が,本件実用新案権に抵触する旨を原告及び本件通知先に通知し,原告に対しては製造販売等の差止めを求めているのであるから,本件実用新案権に基づく差止請求権,損害賠償請求権,不当利得返還請求権が存在しないことの確認を求める利益は存するというべきであり,その不存在確認請求は理由がある。 2 不正競争行為の差止め及び損害賠償請求について(1) 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる(前記第2の1の前提となる事実,前記1で既に認定した事実を含む。)。 ア原告と被告は,いずれも家具の販売を目的の一つとする会社である。 イ原告は,昭和35年の創業以来,座椅子の製造,販売を行っており,平成19年8月ころから高座椅子である1515商品を,平成20年8月ころから,背板をほぼ水平まで倒すことのできる,レバー式の調整金具を使用した1505商品を,平成21年8月ころから,前記調整金具を使用し,左右の底板を左右後部の脚より後方に延伸した1503商品を,それぞれ製造,販売した。 ウ被告は,平成21年12月25日,左右の脚板を後方に延伸する長さを背板の長さの3分の1から2分の1と限定し,その余の構成については1503商品と同一となる本件考案について,本件登録出願を行った。 エ原告は,平成23年8月ころから,底板を後方に延伸する度合いを1503商品よりも大きくした1502商品を製造,販売したが,これに対する,本件実用新案権に基づく被告の権利行使はなかった(弁論の全趣旨)。 オ被告は,特許庁長官に対し,本件実用新案権について,実用新案技術の評価請求を行い,平成23年11月24日付で本件技術評価書を得た。 本件 に基づく被告の権利行使はなかった(弁論の全趣旨)。 オ被告は,特許庁長官に対し,本件実用新案権について,実用新案技術の評価請求を行い,平成23年11月24日付で本件技術評価書を得た。 本件技術評価書には,椅子の後方への転倒を防止すること等を目的として,椅子における床面と接する部分を後方に延伸することは,乙3文献ほかに示されているように従来周知であること,乙1文献に記載された考案に乙2文献等に記載された考案及び周知技術を援用することは、当業者がきわめて容易に想到し得たことであること,また,脚板後部を具体的にどの程度延伸させるかは,設置の面積を小さくしつつ転倒防止の効果を得られるよう,当業者が適宜決定し得ることなどが記載され,結論として,本件考案には進歩性がない旨が示されていた(甲4)。 カ原告は,スーパーソフトレザーを使用し,1502商品と同様,底板を後方へ延伸した本件原告商品を開発して,平成24年8月ころからその製造,販売を行ったが,これに対し,被告が直ちに本件実用新案権に基づく権利行使をすることはなかった(弁論の全趣旨)。 なお,原告は,毎年,高座椅子を含む原告の商品を掲載したパンフレットを作成しているが,これには,商品の外観写真や,サイズ等が記載され(甲14〜18),また,高座椅子を含む原告の商品については,原告の商品であることを示して,通信販売業者のカタログやインターネット上で家具等を販売する業者のウェブサイトに掲載されていた(甲19,25の3,26の1)。 キ原告は,平成26年1月24日付けで,被告に対し,被告の販売するフラップ付きレンジ台は,原告の販売するキッチンキャビネットの形態を模倣したものであるとして,直ちに宣伝広告,販売を止めるよう求める旨の警告書を送付した(甲8の1)。 前記 し,被告の販売するフラップ付きレンジ台は,原告の販売するキッチンキャビネットの形態を模倣したものであるとして,直ちに宣伝広告,販売を止めるよう求める旨の警告書を送付した(甲8の1)。 前記警告書に対し,被告が,宣伝,販売の中止には一切応じられない旨を,平成26年2月5日付け通知書により回答したところ(甲9),原告は,同年3月14日,当庁に,被告の上記商品の輸入,販売等の差止めを求める仮処分命令申立事件の申立てをした(同事件は,同年5月13日,和解により終了した。甲10,11)。 ク被告は,同年3月18日付けで,原告に対し本件警告を,本件通知先に対し本件通知を送付したが,その前後を通じ,被告自ら,原告又は本件通知先に対し,本件技術評価書を提示することはなかった(弁論の全趣旨)。 本件警告は,原告に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するものと認識しているとして,本件原告商品に関する一切の広告宣伝及び製造,販売行為を中止するよう求める内容であり,本件通知は,ネット上で本件原告商品を販売する本件通知先に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するものと認識している旨を告知し,その点についての本件通知先の認識の有無,今後の対応,見解について,2週間以内に書面で回答するよう求める内容であって,いずれも代理人弁護士の名義によるものであった(甲6,7)。 ケ原告は,本件通知先より本件通知のあったことを知らされ,同年3月28日付け回答書により,代理人弁護士の名義で,被告に対し,本件考案は進歩性を欠き無効であること,実用新案技術評価書の提示もないまま,原告及び本件通知先に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するとして,原告が違法な行為を行っている旨告知することは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知にあた 技術評価書の提示もないまま,原告及び本件通知先に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するとして,原告が違法な行為を行っている旨告知することは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知にあたるとして,謝罪及び通知の撤回を求めたが(甲12の1),被告はこれに回答することはなかった(甲13)。 コ被告が本件通知を送付した本件通知先には,原告と直接の取引のある2社と,原告と直接の取引はなく,卸売業者等より仕入れてネット上で原告の商品を販売する6業者が含まれており(甲22),被告は,商品名を入力して検索する方法で,本件原告商品をネット上で販売する業者を特定し,本件通知を送付したものである(弁論の全趣旨)。 本件通知の後,原告は,本件通知先に書面を送付するなどして説明したが(甲23),原告と直接の取引のない6業者のうち3業者は,本件原告商品の掲載を取り止めた。また,原告と直接の取引のある2社のうち1社も,本件原告商品のみ不掲載とし,本件通知後,この2社に対する売上は減少した(本件通知と売上の減少の因果関係は不明である。甲22)。 (2) 不正競争行為の差止めについての判断ア前記(1)で認定したとおり,被告は原告と競合する関係にあり,原告が製造,販売する高座椅子の構造,形態については,カタログや販売業者のウェブサイトで常に公開されていたのであるから,その内容については,被告において認識していたものと推認される。 そして,本件登録出願の内容が,当時製造販売されていた1503商品に対応していること,より本件考案の構成に類似する1502商品が製造販売されたころ,被告が,本件考案について技術評価の請求を行っていること,本件技術評価書において進歩性を否定する旨の判断を受けた後,被 告は1502商品に対し権利行使をせ 502商品が製造販売されたころ,被告が,本件考案について技術評価の請求を行っていること,本件技術評価書において進歩性を否定する旨の判断を受けた後,被 告は1502商品に対し権利行使をせず,本件原告商品の製造販売がされても同様であったこと,別件被告商品の関係で,原告から警告書の送付及び仮処分事件の申立てを受けた後に初めて,被告は,本件実用新案権に基づき,本件警告及び本件通知を行ったこと,以上の経緯が認められる。 イ一般に卸売業者等から商品を仕入れてネット等で販売するだけの立場の業者が,弁護士名で,商品が実用新案権に抵触すると認識している旨を通知された場合,その販売を継続すれば,実用新案権を侵害するものとして,損害賠償請求の相手方等にされる可能性がある旨理解するのが通常である。 他方,前記1で判断したとおり,本件考案は,原告の1503商品との関係で進歩性を欠き,無効とされるべきものであるが,前述のとおり,被告は,1503商品については認識していたものと認められるし,理由は異なるとしても,本件技術評価書において,本件考案には進歩性がない旨の評価を受けていたのであるから,前記アの経緯を考慮すると,被告は,本件実用新案権が無効とされ,これに基づく権利行使が否定される蓋然性が高いことを認識しながら,あえて本件警告及び本件通知に至ったものと推認することができる。 このような状態で,被告は,本件技術評価書を提示することなく,換言すれば,有効性に特段の問題もない権利であるかのようにして,本件通知先に前記内容の本件通知を送付したのであるから,これは,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に該当するといわざるを得ない(不正競争防止法2条1項14号)。 ウ被告は,本件実用新案権は無効ではない旨を主張し,被告の認 から,これは,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に該当するといわざるを得ない(不正競争防止法2条1項14号)。 ウ被告は,本件実用新案権は無効ではない旨を主張し,被告の認識を示して相手方の対応を確認することは何ら違法ではない旨を主張するのであるから,被告が今後も同様の行為をするおそれはあるといわざるを得ず,不正競争防止法3条により,被告の上記行為を差し止める必要があるというべきである。 (3) 損害賠償請求についての判断アまず,被告が,本件技術評価書を提示することなく,本件警告及び本件通知を送付したことの評価について検討する。 この点,平成5年の法改正において,発明ではなく考案を対象とする実用新案権については,新規性,進歩性の要件等についての実体審査をせずに登録を認める一方で,これにより,無効事由を含む瑕疵のある実用新案権が登録される可能性が増大することとなるため,これに対応するものとして,特許庁の審査官が実用新案の有効性を評価する実用新案技術評価の制度を設け(法12条1項),実用新案権者は,実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ,実用新案権を侵害する者に対し,権利を行使することができない旨を定めた(法29条の2)。 法が定めるところによれば,実用新案技術評価は,特許庁審査官が行う一種の判定であって,実用新案登録無効審判と同様の効力を有する行政処分にはあたらず,実用新案技術評価において無効原因がある旨の評価を受けたとしても権利行使が禁じられるわけではないが,その場合,一方では,技術評価書の判断を否定して権利行使をするには,相応の根拠が必要というべきであるし,他方では,権利行使に先立って技術評価書を提示することにより,相手方は,技術評価書の記載を参考に権利の有効性 では,技術評価書の判断を否定して権利行使をするには,相応の根拠が必要というべきであるし,他方では,権利行使に先立って技術評価書を提示することにより,相手方は,技術評価書の記載を参考に権利の有効性を争う方向で対応するか,逆に,技術評価書の判断に依拠せず権利を有効なものとして対応するかを判断,選択することができるのであって,法は,そのような趣旨で,権利行使に先立ち,技術評価書を提示して警告することを求めたものと解され,技術評価書の提示は,極めて重要なものと位置付けられる。 イ既に認定したとおり,被告は,本件技術評価書を提示することなく,原告に対しては,本件警告を送付して販売等の差止めを求めており,販売業者である本件通知先に対しては,本件通知を送付して本件原告商品が本件 実用新案権に抵触する旨を指摘し,その対応について回答するよう求めているのであるから,前者については技術評価書の提示のない権利行使,後者については技術評価書の提示のない警告というべきであり,前記(2)のとおり,これは,不正競争行為にあたると同時に,権利が無効となる可能性があることを知る機会を与えないままこれを行ったという意味で,法の趣旨に反する違法な行為というべきである。 ウ原告は,原告と直接の取引のあった2社,及び直接の取引のなかった6業者に本件通知が送付されたことによる信用毀損を主張する。 本件通知は,原告の全取引先に送付されたものではなく,前記認定した売上の減少と本件通知との因果関係も明らかではない。しかしながら,これまで検討したとおり,被告は,本件実用新案権が無効とされ,これに基づく権利行使が否定される蓋然性が高いことを認識しながら,仮処分事件の申立てに対抗するように,法の規定に反し,本件技術評価書を提示することなく,有効性に特段の問題もな 用新案権が無効とされ,これに基づく権利行使が否定される蓋然性が高いことを認識しながら,仮処分事件の申立てに対抗するように,法の規定に反し,本件技術評価書を提示することなく,有効性に特段の問題もない権利であるかのようにして本件通知を送付し,その結果,一部の業者は,本件原告商品の取扱いを停止したのであるから,被告の行為は故意の不正競争行為と評価すべきものであり,その違法性の程度は大きいといわなければならない。 エ以上認定したところを総合すると,本件通知先の半数が本件原告商品の販売を停止したということは,本件通知先が,少なくとも,原告は実用新案権を侵害している可能性があると考えたということであり,これは原告の信用を毀損するものであって,前述した被告の行為の違法性の程度をも考慮すると,これを回復するための損害賠償としては金80万円が相当であり,これと相当因果関係のある弁護士費用としては金8万円が相当である。 3 まとめよって,本件実用新案権に基づく差止請求権等の不存在確認を求める請求, 及び被告に対し,本件原告商品の製造等が本件実用新案権の侵害となる旨を,第三者に告知することの差止めを求める請求は,いずれも理由がある。 また,本件通知に基づく信用毀損に対する損害賠償請求のうち,88万円及びこれに対する不法行為後の平成26年6月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分は理由があるから,原告の請求をその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとする。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 谷 所第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒 裁判官 田原美奈子 裁判官 松阿彌隆 (別紙)商品目録 商品名 スーパーソフトレザー高座椅子−大河−品番 YS−1800

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