平成13(ワ)2224 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年1月31日 名古屋地方裁判所
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判決文本文88,233 文字)

平成18年1月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成13年(ワ)第2224号損害賠償請求事件〔甲事件〕平成15年(ワ)第3784号損害賠償請求事件〔乙事件〕口頭弁論終結日平成17年7月12日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり(以下,当事者名に付する事件の表示は省略する) 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告らに対し,別紙損害額一覧の合計請求額欄記載の各金員及びこれに対する平成12年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,平成12年9月11,12日に愛知県を中心とする東海地方において発生した集中豪雨(以下「本件豪雨」という)に伴う名古屋市天白区野並一丁目,同二丁目,古川町,井の森町,中坪町,福池一丁目及び同二丁目(ただし,野並一丁目,同二丁目及び福池二丁目については郷下川の西側部分。以下「野並地区」と総称する)における浸水被害(以下「本件水害」という)につき,同地区に居住し又は店舗等を保有する原告らが,河川,雨水ポンプ等の設置管理者又は費用負担者である被告に対し,その設置又は管理に瑕疵があったなどとして,国家賠償法2条,3条に基づく損害賠償(損害発生の日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む)を求めた事案である。(以下,名古屋市内の区については市名を,天白区内の土地については区名を,それぞれ省略して表示することがある) 1 争いのない事実等(証拠等を掲記しない部分は当事者間に争いがない)(1) 当事者ア原告ら(ただし,別紙被承継人等一覧表の承継人欄記載の原告らについては,同表の被承継人欄記載の被承継人ら)は,平 争いのない事実等(証拠等を掲記しない部分は当事者間に争いがない)(1) 当事者ア原告ら(ただし,別紙被承継人等一覧表の承継人欄記載の原告らについては,同表の被承継人欄記載の被承継人ら)は,平成12年9月11日当時,野並地区に居住し,又は店舗,事務所,工場等を保有していた者で,本件豪雨により,その自宅,店舗等に浸水被害を被った者らである(ただし,別紙「居住等に争いのある原告ら一覧表」記載の原告ら(以下「居住等に争いのある原告ら」という)については,争いがある)。 上記被承継人らは,それぞれ別紙被承継人等一覧表の死亡日欄記載の日に死亡し,その相続人らの間で,本訴請求債権に関する当該被承継人の地位を,各承継人たる原告が承継する旨の合意がされた(ただし,別紙被承継人等一覧表記載の番号11及び16の被承継人については,同表の備考欄を参照)。 イ被告は,野並地区付近を流れる郷下川(普通河川)について,地方自治法2条及び名古屋市水路等の使用に関する条例1条により管理している。 被告代表者である名古屋市長は,同様に野並地区付近を流れる藤川について,藤川橋(別紙位置図参照)の上流端から河上である準用河川の部分を,河川法100条1項の規定による同法10条1項の読替えにより管理しているものであり,その管理費用は,同法100条1項,59条により,被告が負担している。一方,藤川橋の上流端から天白川合流点までの藤川は,河川法により二級河川の指定を受けており,同法10条1項により愛知県知事が管理している(以下,藤川のうち,準用河川部分を「準用河川藤川」,二級河川部分を「二級河川藤川」ということがある)。 この他,被告は,地方自治法2条2項,同条3項,下水道法3条1項による野並排水区(別紙位置図参照)の都市排水路(中坪町74番地の2所在の野並ポンプ所の施 分を「二級河川藤川」ということがある)。 この他,被告は,地方自治法2条2項,同条3項,下水道法3条1項による野並排水区(別紙位置図参照)の都市排水路(中坪町74番地の2所在の野並ポンプ所の施設及び管渠を含む)の管理者であり,かつ別紙位置図記載のとおり,菅田排水区,郷下川流域及び準用河川藤川流域を設定している。なお,排水区域とは,公共下水道により,下水を排除することができる区域で,被告が区域を定め,公示するものであり(下水道法2条7号,9条1項),流域区域とは,被告が設定する,域内の降雨を河川に集水排除する区域である。 (2) 野並地区野並地区は,天白川河口よりおおよそ6.5ないし8.5キロメートルの地点にあり,別紙位置図記載のとおり,その大半が天白川(同地区西側,北側),二級河川藤川(同南側)及び郷下川(同東側)に囲まれ,かつ,相生山(同北東,東側)等の丘陵地帯の谷間に位置し,隣接する他地区より標高が低く,鉢状にくぼんだ地形となっている地域である。? (3) 野並地区付近の河川ア野並地区の北及び西側を流れる天白川は,愛知県日進市三峰峠に源を発し,名古屋市南東部を流下する,延長約23キロメートル,流域面積約118. 8平方キロメートルの二級河川であり,愛知県知事が管理している。天白川は,上流から順に植田川,藤川,扇川等を合流して名古屋港へ流出しているが,野並地区付近において,上流からの勾配が急に緩やかになり,かつ同河川の河床高が堤内(野並地区)地盤高より高い,いわゆる天井川となっている。天白川を中心とし,藤川,郷下川を含む天白川水系は,名古屋市南東部の丘陵地及び南部低平地一帯にわたり,市域の約4分の1を占めている。(乙1)イ藤川は,天白川の支流で,合流点付近は勾配500分の1,上流は同220分の1の急勾配都市河川であり,緑区 古屋市南東部の丘陵地及び南部低平地一帯にわたり,市域の約4分の1を占めている。(乙1)イ藤川は,天白川の支流で,合流点付近は勾配500分の1,上流は同220分の1の急勾配都市河川であり,緑区鳴海町と天白区久方三丁目にまたがる戸笠池(野並地区の東に位置する)を源とし,両区の区界付近を西方向へ流下して郷下川と合流した後,野並地区の南側を流れ,天白川へ合流しており,延長は約3キロメートルである。 二級河川藤川は,昭和45年8月24日,準用河川藤川は,昭和49年4月1日,それぞれ河川法による指定を受けたものであり,二級河川藤川の延長は約0.7キロメートル,流域面積は約5.27平方キロメートルで,準用河川藤川の延長は約2.3キロメートル,流域面積は約3.36平方キロメートルである。 準用河川藤川の流域内には鳴子池(緑区相川一丁目1所在),螺貝池(同区相川三丁目101所在)及び四郎曽池(同区長根町164所在)が存在し,鳴子池は藤川の河道の一部となり,螺貝池及び四郎曽池は排水管を通じて藤川につながっている。(甲15の1,甲69,乙1)ウ郷下川は,藤川の支流であり,菅田排水区と野並排水区との境界線付近である福池二丁目に端を発し,南方へ流れ,市営地下鉄桜通線野並駅(以下「野並駅」という)付近を通過した後,古川町において二級河川藤川に合流している。その起点部分から約1100メートルは暗渠であり,その後二級河川藤川との合流点までの約1140メートルは開渠である。 郷下川の河道は直線的であり,断面は下辺が短く上辺が長い台形状で,両側面はコンクリートの堤防に囲まれ,河床勾配730分の1,幅約5メートル,水深約4メートル程度である。郷下川の堤防高は,二級河川藤川との合流点付近においては,パラペットの設置によりTP(東京湾平均海面を基準とする高さ)+8.3 れ,河床勾配730分の1,幅約5メートル,水深約4メートル程度である。郷下川の堤防高は,二級河川藤川との合流点付近においては,パラペットの設置によりTP(東京湾平均海面を基準とする高さ)+8.37メートルと一定となっている。 郷下川の上記の開渠部分には,別紙位置図2記載のとおり,9か所に橋が架けられ,各橋の構造は,周囲の道路面上と橋の道路面とを同一平面にするために,各橋の道路面より下部にコンクリート製の橋桁が設置されている。 エ藤川及び郷下川の堤防高は,いずれも天白川の堤防高よりも1メートル程度低くなっている。 (4) 野並地区における過去の水害歴ア野並地区については,一帯の開発が始まった昭和40年ころから約30年間において大規模な水害がほぼ10年に1度の割合で発生しており,内水排水不良に起因する内水氾濫が多い。 イ平成3年の豪雨(ア) 野並地区における過去の水害のうち,被害が大きかったものに,平成3年9月19日の集中豪雨(以下「平成3年豪雨」という)による浸水被害がある。 (イ) 被告は,平成3年豪雨当時,別紙排水区図記載の野並排水区(以下「従来の野並排水区」という)で生じた雨水を排除し,その区域の浸水を防止するための施設として井の森町58番地にポンプ施設(昭和44年7月から稼働。 以下「旧野並ポンプ所」という)を有し,同所に設置した合計排水量6.18立方メートル/秒の4台の雨水ポンプにより,雨水を天白川へ強制排水していたが,平成3年豪雨の際には,旧野並ポンプ所にも浸水があり,電気系統の機器が故障したため,雨水ポンプ全台が運転不能となった。 また,郷下川が溢水し,野並交差点(別紙位置図2参照)付近の市道東海橋線(以下「東海通」という)の道路占用地内に覆工板を取り除いて設置されていた野並駅(平成3年豪 台が運転不能となった。 また,郷下川が溢水し,野並交差点(別紙位置図2参照)付近の市道東海橋線(以下「東海通」という)の道路占用地内に覆工板を取り除いて設置されていた野並駅(平成3年豪雨当時は工事中)開口部から,野並交差点付近の道路上に滞留した雨水が16万トン程度同駅構内に流入した。 (5) 野並ポンプ所等アその後,愛知県が進めている天白川河川改修計画に伴い,旧野並ポンプ所の移転が必要となったことから,被告は,平成6年度の野並地区排水基本計画に基づき,平成7年5月29日になされた都市計画事業認可申請の認可により,現在の野並ポンプ所を建設し,同所内に貯留量5400立方メートルの野並雨水調整池と称する雨水貯留施設(浸水対策のために雨水を貯留する施設)を設け,平成11年5月から運用を開始した。(乙4)イ野並ポンプ所全体の構造は,別紙ポンプ所等断面図記載のとおりであり,流入渠に流入してきた雨水を沈砂池を通した後にポンプ井から連絡井へとくみ上げ,天白川水位とポンプ所連絡井水位との落差による自然流下により,連絡井内にある水を天白川に排出する方式を採用しているが,同ポンプ所の連絡井内には,下端SP(TPマイナス1.412メートルに位置する名古屋港基準面マイナス10メートルの高さを基準面とする高さ)22.12メートル(野並ポンプ所周辺道路面から5.92メートル)の高さに80センチメートル(以下「センチ」と略記する)四方の3個の空気口(以下「本件空気口」という)が設置されていた。また,沈砂池に流入してきた雨水が一定の水位に達すると,雨水調整池の方にも水が流入し,一時的に雨水を貯めるようになっていた。(甲6の5,6,乙3,乙5の5,6,乙6,乙10の1,2,乙51)ウ野並ポンプ所には,雨水ポンプ(以下「本件雨水ポンプ」という)5台が設 の方にも水が流入し,一時的に雨水を貯めるようになっていた。(甲6の5,6,乙3,乙5の5,6,乙6,乙10の1,2,乙51)ウ野並ポンプ所には,雨水ポンプ(以下「本件雨水ポンプ」という)5台が設置されていたが,そのうち1台(5号ポンプ)は電気ポンプで,他の4台(1ないし4号ポンプ)は重油を燃料とするディーゼルポンプであり,5台の合計排水量は,約8.55立方メートル/秒(約514立方メートル/分,約3万0840立方メートル/時間)である。 上記ディーゼルポンプの燃料である重油は,野並ポンプ所の敷地の地下にある重油メインタンクに貯蔵され,同タンク上方のSP18.00メートル(周辺道路面から1.8メートル)の高さに設置されていた燃料供給ポンプ(以下「本件燃料供給ポンプ」という)によりポンプ室にある重油サービスタンク(容量1000リットル)にくみ上げられ,ここから各ディーゼルポンプに供給されていた。 (6) 本件豪雨ア平成12年9月11日から翌12日にかけて,日本付近に停滞していた秋雨前線に台風14号からの暖かく湿った空気が流れ込み,前線を活発化させ,次々と発生した雨雲が愛知県を中心とする東海地方に本件豪雨をもたらした。 本件豪雨時の天白土木事務所(天白区横町714番地所在。別紙位置図参照)における観測結果によれば,最大1時間雨量は同月11日午後8時10分から午後9時10分までの84.5ミリメートル(以下「ミリ」と略記する),3時間最大雨量は同日午後6時20分から午後9時20分までの215ミリ,同日午後1時から翌12日午前7時までの累計雨量は508ミリであった。 イ本件豪雨により,藤川,郷下川双方から堤防溢水が発生し,野並排水区の降雨に限らず,上記両河川の流域の雨水が,大量に野並地区に流入した。 ウ野並ポンプ所においては,本件燃料供給 08ミリであった。 イ本件豪雨により,藤川,郷下川双方から堤防溢水が発生し,野並排水区の降雨に限らず,上記両河川の流域の雨水が,大量に野並地区に流入した。 ウ野並ポンプ所においては,本件燃料供給ポンプが水に浸ったため,平成12年9月12日午前1時40分ころ,同ポンプは停止し,本件雨水ポンプへの重油供給が不可能となった。このため,本件雨水ポンプのうち1台のディーゼルポンプは同日午前1時59分,他の3台のディーゼルポンプは午前3時41分,それぞれ遠隔操作により停止され,再稼働したのは,1台が午前8時27分,他の3台が午前10時ころであった。また,本件雨水ポンプでくみ上げた雨水が,本件空気口から溢水した。(乙51) 2 争点(1) 本件水害発生の機序(2) 準用河川藤川の河川管理の瑕疵の有無(3) 郷下川の河川管理の瑕疵の有無(4) 野並ポンプ所の設置・管理の瑕疵の有無(5) 排水区の設置の瑕疵の有無(6) ため池等の管理の瑕疵の有無(7) 排水路等の設置・管理の瑕疵の有無(8) 野並ポンプ所の設置・管理の瑕疵と損害との因果関係(9) 居住等に争いのある原告らの野並地区における居住等の有無(10)損害額 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件水害発生の機序)について(原告らの主張)本件水害は,本件豪雨によって,次のような経路を経て雨水が野並地区に流入したことにより,発生したものである。 ア郷下川流域からの雨水流入(ア) 雨水が郷下川から溢水して,野並地区に流入した。 (イ)県道名古屋第二環状線(以下「第二環状線」という)が川の役割を果たして雨水が南下し,野並交差点を経て野並地区に流入した。 (ウ) 相生山から雨水が第二環状線へ流入し,同線と交差する東西の道路を経て,郷下川の橋を超えて野並地区に流入した。 イ う)が川の役割を果たして雨水が南下し,野並交差点を経て野並地区に流入した。 (ウ) 相生山から雨水が第二環状線へ流入し,同線と交差する東西の道路を経て,郷下川の橋を超えて野並地区に流入した。 イ藤川流域からの雨水流入(ア)東海通に流出した雨水が藤川に流入せず,同通を通り野並交差点を経て,野並地区に流入した。 (イ) 藤川の堤防高が最も低い野並三丁目A番地所在のC付近から溢水した雨水が,野並交差点を経て,野並地区に流入した。 ウ菅田排水区からの雨水流入菅田排水区が野並地区より標高が高いため,菅田ポンプ所(別紙位置図参照)に流入する前に雨水が野並地区に流入した。 (被告の主張)野並排水区の降雨のみならず,郷下川流域,藤川流域及び菅田排水区からの雨水が野並地区に流入したことは認めるが,その余は不知。 (2) 争点(2)(準用河川藤川の河川管理の瑕疵)について(原告らの主張)ア(ア) 準用河川藤川及び郷下川の河川管理に瑕疵があるか否かは,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等,諸般の事情を総合判断して決すべきである。そして,以下の理由から,野並地区については,被告の一律的整備水準を超えて,より高レベルでの治水計画を策定し,想定外の降雨についても超過洪水対策をとるべきであったのであり,また,天白川河川改修が遅れていたとしても,野並地区には,先行的に下水道事業を実施し,内水氾濫被害を防止すべき必要性があった。 a 国の第8次治水事業五箇年計画(平成4年9月1日付閣議決定)において,中小河川であっても地域の利用状況に照らし,50ないし100年確率での整備が必要であり,過去に甚大な被害を被った地域について a 国の第8次治水事業五箇年計画(平成4年9月1日付閣議決定)において,中小河川であっても地域の利用状況に照らし,50ないし100年確率での整備が必要であり,過去に甚大な被害を被った地域については緊急の対策が必要であること,河川改修の遅れがある場合であっても,下水道事業を先行的に整備して効果的な内水対策を行うべきであり,特に河川周辺の低平地で人口・産業が集積しているにもかかわらず内水被害が絶えない地域については,下水道事業と河川治水事業との効果的な協働が必要であること,計画想定降雨を超える降雨についても,閉鎖型氾濫地域における水害被害の甚大性・壊滅性にかんがみ,時機を失することなく,超過洪水対策を講ずべきこと,との指針が示されており,上記のような条件に該当する地域においては,一律的水準での整備をもっては足りず,より高度な水準での河川整備,下水道事業の先行的な整備,壊滅的被害を回避するための超過洪水対策を講ずべきものとされていた。 b 被告が昭和63年度に見直した名古屋市総合排水計画によれば,1時間50ミリの降雨に対処し得る治水施設を計画目標としてはいるものの,さらに重要な河川については河川ごとの特性に応じて必要となる安全度の確保に向け,原則として1時間60ないし80ミリ程度の降雨に対処し得る規模の施設の整備を進めることともされている。 c 野並地区は,天白川,藤川及び郷下川に囲まれた,いずれの河川の河床高よりも標高の低い窪地状の地域であり,地形上自然排水は不可能であることから,雨水の流入を防止する必要があり,かつポンプにより排水する必要があった。 d 野並地区は,人口,産業,資産の集積した成熟した市街地域であり,一旦水没すれば甚大な被害が生じるのは必至であった。 e 被告が平成6年度に策定した野並地区排水基本計画は,藤川, 必要があった。 d 野並地区は,人口,産業,資産の集積した成熟した市街地域であり,一旦水没すれば甚大な被害が生じるのは必至であった。 e 被告が平成6年度に策定した野並地区排水基本計画は,藤川,郷下川及び野並ポンプ所がその想定どおりの排水能力があることを前提としている。 しかしながら,藤川及び郷下川の堤防高は,天白川についての将来計画に対応して天白川の現行の堤防高よりも低いままで放置されていた。 そして,野並地区で時間雨量50ミリの雨が降る場合は,天白川上流域においてもこれに匹敵する降雨があるのが通常であるから,天白川の水位は上昇するが,上記の堤防高の差により,藤川と天白川の合流点では,両河川の水位の高低が逆転するため,藤川及び郷下川の流下能力が失われ,周辺地域の地形特性から,藤川及び郷下川の雨水が道路等を伝い,野並地区に集中するものである。 上記の過程は十分予想できるものであり,被告が主張する時間雨量50ミリ対応という防災計画の前提となっている,天白川増水時の藤川及び郷下川の現実的な排水量の認識,把握に重大な誤りが存したものである。 f 野並地区は,平成3年豪雨の際も本件水害と同様の機序で甚大な水害を被っている。 すなわち,平成3年豪雨の際には,相生山に降った雨水が東海通と第二環状線をそれぞれ流下し,野並交差点において衝突・滞留した後,工事中であった野並駅の開口部から流入し,流入し切れなかった滞留雨水は,勾配と水量の関係から,東海通の路上を西側に流れ,古川町に向かい,野並地区に流入し,同地区に浸水被害をもたらしたものであるところ,本件水害も同一の機序により発生したものであり,被告は,少なくとも平成3年以降は,野並地区において水害が発生する機序,水害発生の蓋然性,被害規模,回避措置を認識・理解していたものである。 g 被告緑 本件水害も同一の機序により発生したものであり,被告は,少なくとも平成3年以降は,野並地区において水害が発生する機序,水害発生の蓋然性,被害規模,回避措置を認識・理解していたものである。 g 被告緑政土木局の所管する藤川及び郷下川の河川管理と,同上下水道局の所管する野並排水区整備計画とは,基本的に別個の作業として遂行されており,相互の調整は必ずしも十分になされていなかった。 (イ)仮に被告の計画規模が合理的であったとしても,想定している計画降雨規模を超えた場合に排水治水システムが瓦解するのでは,そのシステムはシステム自体に瑕疵が存在するものであるから,被告は,予想降雨強度を超える降雨の際にも,少なくとも計画上の降雨強度分については排水を確保できるようにしなければならなかったものである。 イ藤川の堤防高は,別紙堤防高図記載のとおりであり,藤川橋から約120メートル上流にあるC付近においてTP8.23メートルと最も低くなっているが(藤川堤防高最下点),同点は,藤川橋の堤防高より約1メートル低く,天白川現況堤防高,本件豪雨時の天白川痕跡(最高水位痕跡)よりも低い位置にある。 本件豪雨時においては,天白川が増水して水位が上がり,藤川が河川としての排水機能を喪失し,藤川に流れ込んだ雨水は行き場を失い,藤川堤防高最下点から溢水し,東海通に流入し,野並交差点を通って野並地区に流入したものである。 この堤防高の低さは,藤川の改修の遅れに当たり,被告は,上記流入を予測できたにもかかわらず,その対策を怠ったものである。 (被告の主張)河川の管理についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等 についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し,河川管理における財政的,技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである。そして,準用河川藤川については,計画段階において河道の1時間計画降雨量50ミリの一次整備が完了しており,また,戸笠池を始めとするため池の洪水調節能力を合わせて同60ミリの整備が完了していたものであるところ,これは名古屋市総合排水計画の基準に沿うものであり,同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていたものであるから,その管理について瑕疵があったということはできない。以下,詳述する。 ア名古屋市総合排水計画について(ア) 被告は,昭和63年度に見直された名古屋市総合排水計画において,河川の重要度,既往洪水による被害の実態,流域の開発状況,経済効果等を総合的に判断して,以下のとおり,名古屋市における河川の整備計画(計画降雨量)を策定している。 a 都市小河川地域排水の根幹的治水施設としての重要性にかんがみ,基本的には30ないし50年に1回程度生起する降雨(1時間80ミリ程度)に対処できる規模の計画とするが,財政能力・整備の緊急度・経済効果等を勘案して,暫定的に1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画を策定し,当面の整備をはかる。 なお,ここでいう都市小河川とは,一級河川守山川,二級河川扇川など14河川で,河川法16条の2(平成9年6月に16条の3に繰下げ)の規定に基づき,市町村長 模の計画を策定し,当面の整備をはかる。 なお,ここでいう都市小河川とは,一級河川守山川,二級河川扇川など14河川で,河川法16条の2(平成9年6月に16条の3に繰下げ)の規定に基づき,市町村長があらかじめ河川管理者と協議して河川工事又は河川の維持を行っている河川のことである(ただし,平成9年4月に「都市基盤河川」と名称変更されている)。 b 準用河川原則として10年に1回程度生起する降雨(1時間60ミリ程度)に対処できる規模の計画とするが,財政能力・整備の緊急度・合流先河川との整合性等を勘案して,暫定的に1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画を策定し,当面の整備をはかる。 c 普通河川1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画とする。 (イ)上記の計画は,国が作成した第7次治水事業五箇年計画(昭和62年度から昭和66年度まで)においては,中小河川の整備目標として,時間雨量50ミリ相当の降雨による浸水被害を防止することを掲げているが,全国の50ミリ対応の整備率については,昭和61年度末においては28%で,昭和66年度(平成3年度)末の整備目標も未だ35%にすぎなかったこと,その後の第8次治水事業五箇年計画(平成4年度から平成8年度まで)及び第9次治水事業七箇年計画(平成9年度から平成15年度まで)においても依然として時間雨量50ミリ相当の降雨に対応することを河川についての当面の目標として掲げており,その整備率(氾濫防御率)は,平成3年度末においては35%,平成8年度末においては52%であり,平成15年度末の基本目標も未だ59%にすぎなかったことにかんがみると,全国の一般的な整備水準と比べて遜色のないものであり,河川管理における財政的,技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照 にすぎなかったことにかんがみると,全国の一般的な整備水準と比べて遜色のないものであり,河川管理における財政的,技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得るものである。 (ウ) 原告らは本件豪雨のように計画降雨強度を超える降雨(超過降雨)があっても,少なくとも計画上の降雨強度(時間雨量50ミリ)分については,常に排水を確保できなければならない旨主張している。 しかしながら,治水施設が,5年に1回程度の確率で発生する降雨,すなわち,1時間の降雨量が50ミリの降雨に対応しているということは,一つのピークを持つ降雨モデルにおいて,ピーク時の1時間の量,つまり1時間当たりの最大量が50ミリで,その前後の時間帯の降雨は少なくなっていくという山形の降雨モデルに対応しているということである。したがって,ピーク時の降雨量が1時間50ミリを超えるような降雨はもちろんであるが,1時間50ミリの雨が長時間続くような降雨もまた想定外であり,5年に1回程度の確率で発生する事象ではない。 通常,河川は本川と支川によって構成されており,本川の洪水到達時間は支川のそれよりも長いため,本川の洪水到達時間内降雨強度は支川のそれよりも小さい。したがって,支川の洪水到達時間内降雨強度に相当する降雨が長時間続けば,それは本川にとって超過洪水であり,さらに本川と支川のピークが重なり合うことによって本川の異常な水位上昇などが発生し,支川の計画流量の流下に支障をきたすものである。原告らの主張は,放流先(流下先)の河川や雨水貯留施設について,5年確率の整備水準を超える整備を要求するものであって,妥当ではない。 イ河川計画の一般について一般に河川計画を策定する場合,以下のとおり,①その河川の重要度に応じた計画規模を設定 いて,5年確率の整備水準を超える整備を要求するものであって,妥当ではない。 イ河川計画の一般について一般に河川計画を策定する場合,以下のとおり,①その河川の重要度に応じた計画規模を設定し,②その計画規模に見合った雨が流域に降った場合の河川への洪水流出量を求め,③その洪水流出量を処理するために河道計画や洪水調節池計画等をたてるという手順で行うものである。 (ア) 河川の計画規模は,通常,「何年に1回発生する雨に対応できる規模」と言い表される計画降雨で評価され,河川の重要度,上下流や本支川とのバランス,さらには全国的な水準などを考慮して決定している。 (イ) 次に,計画降雨時の流域からの洪水流出量を求める必要があるが,この値は基本高水流量とも呼ばれ,河川計画において基本となる値である。その算出手法については多くの手法があるが,被告においては,流域の大きさ等の観点から,主に合理式を採用している。 合理式とは,流域に降った雨が地表を流れ,河川に流入し,そして流下するという雨水の基本現象を踏まえて,同じ雨が流域全体に一定量降った場合,河川のどの地点においても流域の最遠点に降った雨が到達したときに,その地点の流量がピークになるという考えに基づいており,このピーク流出量を河川の地点ごとに求めることで,基本高水流量が設定される。合理式は,次に示す算式で表される。 Q=1/360・f・r・AQ:ピーク流出量(立方メートル/秒)f:流出係数r:洪水到達時間内の降雨強度(ミリ/時間)A:流域面積(ヘクタール)1/360:1ミリ・1ヘクタール/1時間=0.001メートル・10,000平方メートル/3,600秒ここにいう降雨強度とは,流域に1時間当たりに降る雨の量を示しており,対象地域における過去の降雨量の資料を降雨 リ・1ヘクタール/1時間=0.001メートル・10,000平方メートル/3,600秒ここにいう降雨強度とは,流域に1時間当たりに降る雨の量を示しており,対象地域における過去の降雨量の資料を降雨継続時間ごとに確率処理した結果によって得られる。5年確率における1時間当たりの降雨量は,約50ミリであり,降雨強度は,同じ計画規模の雨であれば,降雨継続期間が長くなるほど小さくなり,逆に短くなるほど大きくなる。 このようにして河川の基本高水流量が設定されるが,通常,河川は水系を構成しており,本川とそれに流れ込む支川,さらにその支川というような形で存在している。このような場合,本川については本川の洪水到達時間から算出したピーク流出量にて設定し,それぞれのピーク流出量の和ではないのが一般的である。これは,実際には支川の洪水到達時間が本川に比べて短いために,合流時点では,本川の洪水流出のピークが発生する前に,支川のピークが発生しているという考えに基づいている。 (ウ) 次に,合理式で算出された基本高水流量を河道によって処理するわけであるが,このうち一般に河道で流し得る流量を計画高水流量といい,河道計画の策定では,この流量を流し得る流下能力を持つ河道断面,形状及び勾配を決定する。河道断面において計画高水流量を流し得る水位を計画高水位といい,その高さに洪水時の風浪,うねりなどによる一時的な水位上昇に対しての一定の余裕を加えて堤防高を決定する。 ウ準用河川藤川について準用河川藤川については,周辺の土地区画整理事業に合わせてブロック積み護岸あるいはコンクリート三面張の河川として整備されたものの,両岸が生活道路として利用されていることなどから再改修が困難な状況であったため,流域内に点在するかつての農業用のため池である戸笠池,螺貝池及び鳴子池を ンクリート三面張の河川として整備されたものの,両岸が生活道路として利用されていることなどから再改修が困難な状況であったため,流域内に点在するかつての農業用のため池である戸笠池,螺貝池及び鳴子池を洪水調節施設(雨水貯留施設)として活用して,洪水時における同河川へのピーク流出量を減少させ,同河川の治水安全度を高める手法を用いている。 そして,準用河川藤川は,以下のとおり,昭和63年度の名古屋市総合排水計画見直しの段階において,河道の1時間計画降雨量50ミリの一次整備が既に完了しており,本件豪雨時においては,二次整備目標である1時間計画降雨量60ミリの降雨に対する対応についても,河道の流下能力と流域にある戸笠池,鳴子池及び螺貝池の洪水調節機能を合わせて,既に達成していたものである。 (ア) 準用河川藤川については,流域にあるため池の時間ごとの放流量や流域からため池を経ずに河道に流入する流出現象の時間変化を考慮するため,ため池や排水系統などを考慮して流域を8排水区に区分し,それらの排水区ごとに流出ハイドログラフ(排水区の流出量を時間ごとに表すグラフ)を作成している。次に,流下時間を考慮して河道に5基準点を設定し,それらの基準点ごとに排水区の流出ハイドログラフを合成し,各基準点の流出ハイドログラフ(河道の流出量を時間ごとに表すグラフ)を作成する。ここで,ため池のハイドログラフの作成に当たっては,時々刻々と変動する池水位を変数とする水理学の関数式により洪水調節計算(時間ごとに池への流入量と池からの放流量の差を求める)を行って下流へ流下する流出量を算定している。なお,計画降雨は,10年確率中央集中型24時間連続降雨波形を用いている。 その上で,算出した流出量の最大値をもって計画高水流量としており,例えば,最下流の二級河川藤川との合流地点では 定している。なお,計画降雨は,10年確率中央集中型24時間連続降雨波形を用いている。 その上で,算出した流出量の最大値をもって計画高水流量としており,例えば,最下流の二級河川藤川との合流地点では,計画高水流量は46立方メートル/秒となる。 そして,この計画高水流量を現況河道に流した場合の水位を水理計算で求めると,その水位は,橋梁の桁下高や護岸高以下となる。したがって,準用河川藤川は,流域にあるため池の洪水調節機能を合わせると10年確率(時間雨量60ミリ)に対処できる流下能力を備えていたものである。 (イ) 被告は,雨水流出抑制対策として,学校の校庭や公園等の地下に砕石等を敷き詰め,それらの隙間を利用して雨水を貯留し,放流施設の流出口を小さくすることで,学校の校庭や公園等に降った雨が外部へ流出するのを抑制する事業(流域貯留浸透事業)として雨水貯留施設の整備も行っているが,藤川及び郷下川流域並びに野並排水区については,総事業費約3億円をかけ,平成3年度に南天白中学校,平成5年度に天白学校体育センター及び野並公園,平成7年度に高坂小学校及び戸笠小学校において整備を行ってきており(総貯留量3569立方メートル),全市的に見ても比較的早い時期に雨水流出抑制対策を行ったものである。 (ウ) 本件豪雨時において名古屋市内の時間雨量50ミリの雨水整備率は約8割程度であった中で,野並地区は既にその水準を達成していたのであるから,むしろ他の地域よりも手厚い措置がなされてきたものである。 エ原告らの主張に対する反論(ア) 被告の想定している1時間計画降雨量50ミリというのは,雨のピーク時を挟んだ1時間の量,すなわち,想定している雨の1時間の最大量のことを指している。平成3年豪雨についても,平成3年9月19日午前5時から7時までの間の降雨強度のピークの ミリというのは,雨のピーク時を挟んだ1時間の量,すなわち,想定している雨の1時間の最大量のことを指している。平成3年豪雨についても,平成3年9月19日午前5時から7時までの間の降雨強度のピークの時刻を挟んだ1時間の降水量の値は50ミリを超えていた上,被告の想定している1時間計画降雨量50ミリにおける雨のピーク時を挟んだ3時間の降雨量は75.29ミリを想定しているところ,同日午前5時から8時までの3時間に,野並駅工事現場事務所においては121ミリの降雨量を記録しているのであり,被告の治水対策上の想定である1時間計画降雨量50ミリを超えていたものである。 本件豪雨は,上記のような平成3年豪雨と比べても,1時間当たりの降雨量,3時間当たりの降雨量がはるかに多く,治水対策の想定範囲を大幅に超えていたため,本件水害発生の有無及びその被害規模は予測不可能であった。 (イ) また,平成6年から本件豪雨前までの間に数回あった最大1時間降雨量50ミリ程度あるいはそれ以上となった過去の降雨において,浸水被害は発生していない。 (3) 争点(3)(郷下川の河川管理の瑕疵)について(原告らの主張)ア郷下川流域については,藤川流域や野並排水区と異なり,被告の計画上,洪水調節機能は考慮されておらず,また,支川も存在しないため,計画の前提として降雨波形モデル(中央集中型降雨波形)は想定されておらず,どのような降雨状況においても1時間当たり64ミリの降雨については安全に流下させ得る能力を有しているものとされている。 しかしながら,野並地区においては,過去30年に3度にわたり,降雨による郷下川からの溢水による水害が起き,また,溢水した(郷下川からの溢水を含む)雨水が道路等の地表面を伝わり低地区に集まることによる浸水が年に1,2回は起こっている状況であった 3度にわたり,降雨による郷下川からの溢水による水害が起き,また,溢水した(郷下川からの溢水を含む)雨水が道路等の地表面を伝わり低地区に集まることによる浸水が年に1,2回は起こっている状況であったから,郷下川については,より高度の改修を行うべきであったにもかかわらず,被告はこれを怠った。 イ郷下川は,以下のとおり,被告が予定する排水能力を有していない。 (ア) 郷下川は,藤川に直交し,降雨により藤川の水位が上がれば次第に郷下川の排水口もふさがれ,ついには郷下川の排水口は完全に遮蔽され,郷下川の排水量はゼロになってしまう。被告の主張する郷下川の流下能力は,藤川への排水が行われることが前提となっており,被告が行ったと主張するパラペットの設置,河道断面の拡大は,藤川の水位上昇に伴い郷下川の流下能力が低減・喪失されるということについては有効な対策とはいえない。 また,藤川は,戸笠池と藤川下流との高低差がかなりあること及び戸笠池・鳴子池に貯留された水の圧力により,水を押し流す力はかなり強いのに対し,郷下川は,勾配がほとんどなく,しかもポンプの役割を果たすため池もないことから,水を押し流す力は弱い。 (イ)郷下川の開渠部分には9か所に橋が架けられており(別紙位置図2参照),その橋桁は道路面より下部に設置されているが,郷下川は,断面が台形状をなしており,川幅は広いところで上辺は6メートル,下辺は3メートル程度であるから,橋桁により上部が40センチないし1.2メートルふさがれ,相当の流下量が減殺されている結果,行き場を失った雨水が,道路面に噴水のように噴き出すものである。 例えば,野並3号橋,野並5号橋,郷下橋についての,それぞれの堤防高,水路下辺幅,水路上辺幅,橋桁の高さ,排水可能な水路の高さは,以下のとおりであり(単位はメートル),そ に噴き出すものである。 例えば,野並3号橋,野並5号橋,郷下橋についての,それぞれの堤防高,水路下辺幅,水路上辺幅,橋桁の高さ,排水可能な水路の高さは,以下のとおりであり(単位はメートル),その結果,別紙断面図①記載1~3のように,それぞれ,流下量減殺率が約13.33%,22.85%,27.59%に及ぶ等,かなりの流下量が減殺されている。 a 野並3号橋堤防高4.5, 水路下辺幅2.4, 水路上辺幅5.4,橋桁高0.45, 排水可能な水路高4.05b 野並5号橋堤防高5.5, 水路下辺幅3.0, 水路上辺幅6.0,橋桁高1.0, 排水可能な水路高4.5c 郷下橋堤防高5.4, 水路下辺幅3.0, 水路上辺幅6.0,橋桁高1.2, 排水可能な水路高4.2(ウ) 郷下川は,藤川との合流点にある排水口において,幅がかなり狭くなっており,流水量はこの排水口で約半分に減殺され,行き場を失った水が上部へ溢れ出している。排水口は,別紙断面図①記載4のとおり,ほぼ長方形の形をしており,幅4.2メートル,高さ4.6メートルで,排水口の上部には橋が架けられているが,この橋桁の幅は1.5メートルであるので,合流点直前部分の断面積が約36.6平方メートルであるのに対し,橋桁の下の排水口断面積は約19.32平方メートルであるので,流下量減殺率は約47. 21%である。 ウしたがって,被告は,以下の改修を行うべきであったにもかかわらず,これを行っていない。 (ア) バイパス計画被告は,郷下川のバイパス川を造るべきであった。現に,被告は,平成3年3月24日 る。 ウしたがって,被告は,以下の改修を行うべきであったにもかかわらず,これを行っていない。 (ア) バイパス計画被告は,郷下川のバイパス川を造るべきであった。現に,被告は,平成3年3月24日,野並東町内会に対して,郷下川のバイパス川を造り,水害の心配を減らすことができると,バイパス計画を説明しているが,実現しなかったものである。 (イ) また,被告は,郷下川と藤川との合流点に逆流防止水門を設置すべきであった。被告は,水門の設置を検討していたが,これについても実際には行われなかったものである。 (被告の主張)ア郷下川は,野並土地区画整理組合施行の土地区画整理事業に合わせて1時間計画降雨量50ミリの整備が行われており,昭和63年度に見直された後の名古屋市総合排水計画の基準に沿った整備水準であった上,平成3年から平成10年にかけて行った環境整備事業において河道断面の拡大を図るとともに,パラペットによるかさ上げも行ったのであるから,同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていたものであり,その管理について瑕疵があったということはできない。 野並地区において浸水が年に1,2回起こっている状況にあったとの事実は否認する。 イ郷下川の流下能力(ア) 流出量郷下川に関しては,流出量(降雨時に流域から河川に流入する雨量)は,次の合理式から求める。 Q=1/360・f・r・AQ:ピーク流出量(立方メートル/秒)f:流出係数r:洪水到達時間内の降雨強度(ミリ/時間)5年確率の降雨強度:r=389.l/(√t+0.163)t:洪水到達時間(分)A:流域面積(ヘクタール)名古屋市総合排水計画では,183ヘクタールの郷下川流域を,別紙流域図記載のとおり,①郷 (√t+0.163)t:洪水到達時間(分)A:流域面積(ヘクタール)名古屋市総合排水計画では,183ヘクタールの郷下川流域を,別紙流域図記載のとおり,①郷下川上流端から湾曲部(藤川合流点から約910メートル上流)の区間に雨水が流入する98.54ヘクタール,②湾曲部から野並3号橋の区間に雨水が流入する156.17ヘクタール(98.54ヘクタール+57.63ヘクタール),③野並3号橋から藤川合流点の区間に雨水が流入する流域183.00ヘクタール(156.17ヘクタール+26.83ヘクタール)の範囲に3分割し,5年確率(時間雨量50ミリ)の降雨があった場合に,それぞれの区間に流出して来る雨量を合理式によって求めているが,その結果は,別紙流出量計算表記載のとおりである。以下,計算に用いた数値について説明する。 a 流域面積(A)「湾曲部から上流端」に流入する区域は98.54ヘクタール(市街地47.59ヘクタール,緑地50.95ヘクタール),「野並3号橋から湾曲部」は57.63ヘクタールを加えて156.17ヘクタール(市街地57.68ヘクタール,緑地98.49ヘクタール),「藤川合流点から野並3号橋」はさらに26.83ヘクタールを加えて183.00ヘクタール(市街地84.51ヘクタール,緑地98.49ヘクタール)である。 b 流出係数(f)市街地の流出係数を0.8,緑地の流出係数を0.6として,流域面積による加重平均値を採用する。「湾曲部から上流端」は0.70,「野並3号橋から湾曲部」は0.67,「藤川合流点から野並3号橋」は0.69となる。また,採用する数値は,建設省河川砂防技術基準(案)同解説計画編の「一般市街地」及び「畑,原野」を適用している。 c 洪水到達時間内の降雨強度(r)合理式に 流点から野並3号橋」は0.69となる。また,採用する数値は,建設省河川砂防技術基準(案)同解説計画編の「一般市街地」及び「畑,原野」を適用している。 c 洪水到達時間内の降雨強度(r)合理式に用いる降雨強度は,流量算定地点と最遠点の間の洪水到達時間によって異なるため,「湾曲部から上流端」及び「野並3号橋から湾曲部」は洪水到達時間30分で,5年確率の降雨強度式から時間当たり69.0ミリ,「藤川合流点から野並3号橋」は洪水到達時間35分で時間当たり64.0ミリとなる。 d 流出量(Q)それぞれの区間について,上記aないしcを合理式に代入し,後で求める河道の流下能力が流出量を下回ることがないよう,求められた値を切り上げて整数としたものを1秒当たりの流出量とした結果,以下のとおりである。 ① 湾曲部から上流端まで 14立方メートル/秒② 野並3号橋から湾曲部まで 21立方メートル/秒③ 藤川合流点から野並3号橋まで  23立方メートル/秒(イ) 郷下川の河道は,昭和63年度に名古屋市総合排水計画を見直した当時から,上記(ア)により計算された流出量を流下させる能力を有していた。郷下川の流下能力の算定は,次の等流計算式で行っているが,別紙流域図記載のとおり,200メートルごとに5か所の断面(以下,この5か所の断面を下流から順に「代表断面①ないし⑤」とする)を選んでその流下能力を求めた結果,別紙断面図②記載のとおり,すべての箇所で流下能力がピーク流出量を上回っており,郷下川は5年確率(時間雨量50ミリ)の降雨による洪水に対処できる能力を備えていた。 等流計算式Q=A・VQ:流量(立方メートル/秒)A:流水断面積(平方メートル)V:流水断面の平均流速 に対処できる能力を備えていた。 等流計算式Q=A・VQ:流量(立方メートル/秒)A:流水断面積(平方メートル)V:流水断面の平均流速(メートル/秒)V=1/n・R2/3I1/2n:粗度係数R:径深(メートル)(流水断面積A/潤辺長P)I:動水勾配a 流水断面積(A)洪水が流下する断面の面積である。計画流量を流す際の断面積は,代表断面①及び②では10.774平方メートル,代表断面③及び④では10.061平方メートル,代表断面⑤では7.560平方メートルである。 b 粗度係数(n)流水が接する壁面の粗さの程度を表す係数で,両岸及び河床にコンクリートやブロックなどが施されている河道では,建設省河川砂防技術基準(案)同解説調査編のコンクリート人工水路(n=0.014~0.020)を適用し,0.020を採用している。 c 潤辺長(P)流水と固体壁面との接する周辺長である。計画流量を流す際の潤辺長は,代表断面①及び②では8.652メートル,代表断面③及び④では8.374メートル,代表断面⑤では7.486メートルである。 d 径深(R)流積と潤辺の比で,開水路(上面が大気にさらされている水路)の水理学で使われる。 e 動水勾配(I)水路におけるエネルギー線の流水方向の変化率で,等流では一般的に河床勾配を用い,郷下川では現状の勾配からその値は「730分の1」である。 f 平均流速(V)及び流量(Q)代表断面①及び②の計画流量は毎秒23立方メートルであり,水深2.55メートル,流速毎秒2.142メートルで流下能力は計画流量を上回り,水面から護岸天端までは1.46メートル程度の余裕がある。代表断面③及び④の計画流量は毎秒21立方メートルであり,水深2. 2.55メートル,流速毎秒2.142メートルで流下能力は計画流量を上回り,水面から護岸天端までは1.46メートル程度の余裕がある。代表断面③及び④の計画流量は毎秒21立方メートルであり,水深2.56メートル,流速毎秒2.091メートルで流下能力は計画流量を上回り,水面から護岸天端までは0.96メートル程度の余裕がある。代表断面⑤の計画流量は毎秒14立方メートルであり,水深2.70メートル,流速毎秒1.862メートルで流下能力は計画流量を上回り,水面から護岸天端までは0.60メートル程度の余裕がある。 ウ排水能力についての原告らの主張に対する反論(ア) 藤川との関係通常予想される規模の降雨(時間雨量50ミリ程度)であれば,郷下川の流下能力に影響を及ぼすほどに藤川の水位が上昇するようなことはない。 本件豪雨において藤川の水位が上昇したのは,本件豪雨が通常予想される規模をはるかに超える降雨であったからである。 原告らは,郷下川を藤川と比較して,藤川は,戸笠池と藤川下流との高低差がかなりあること及び戸笠池・鳴子池に貯留された水の圧力により,水を押し流す力はかなり強いのに対し,郷下川は,勾配がほとんどなく,しかもポンプの役割を果たすため池もないことから,水を押し流す力は弱いと主張する。しかしながら,まず,河川は,必要に応じて落差を設けて縦断勾配を調整し,河床の洗掘など有害な現象が発生しにくいよう対策を講じているため,地形上の勾配が急な地域であるからといって,必ずしも河川の勾配が同様に急であるとは限らない。また,河川の流下能力を算定する際に使用する等流計算式には動水勾配(河床勾配)に関する要素が含まれており,勾配の緩急を勘案した上で計画流量を流し得ることを確認しているので,勾配がほとんどないことを理由に構造上の欠陥があるということはでき する等流計算式には動水勾配(河床勾配)に関する要素が含まれており,勾配の緩急を勘案した上で計画流量を流し得ることを確認しているので,勾配がほとんどないことを理由に構造上の欠陥があるということはできない。さらに,戸笠池・鳴子池など,ため池の治水機能は,貯留された水の圧力により河川の水を押し流すことにあるのではなく,洪水を一時的に貯留して下流へ流す量を抑制することなのである。このような効果を向上させるために,被告は,ため池を掘削して洪水調節容量を増加させたり,放流施設を改良して放流量をおさえたりして改良してきた。 (イ) 橋桁部分について原告らは,橋桁の幅の分が郷下川の水路をふさぎ,流下量を減殺している旨主張するが,原告らの主張する橋桁の部分における河道断面寸法を利用して等流計算式により算出した同部分の流下能力は,別紙断面図③記載2~4のとおりであり,郷下橋で1.47メートル,野並5号橋で1.73メートル,野並3号橋で0.96メートルの余裕があり,現在の断面で十分に計画流量を流下させることができるから,通常予想される規模の降雨(時間雨量50ミリ程度)による洪水が流下するために必要な断面は橋桁より低い位置で確保されているものである。 また,一般部の護岸の高さは計画流量を流下させる水位よりかなり高い位置にあるので,計画を上回る降雨時にはさらに水位が上昇し,橋桁より高くなるような状況となる場合がある。このように水位が溢水するような高い位置になれば,橋桁の下はいわゆる「もぐり」になって流速が速くなり,若干の損失は生じるものの,流下する水量は計画流量よりはるかに大きくなるものである。 (ウ) 藤川との合流点について藤川との合流点についても,原告らは一般部に比べて断面が狭く,流下量が減殺されると主張するが,橋梁部と同様,計画流量の流下に何ら問題 はるかに大きくなるものである。 (ウ) 藤川との合流点について藤川との合流点についても,原告らは一般部に比べて断面が狭く,流下量が減殺されると主張するが,橋梁部と同様,計画流量の流下に何ら問題はないし,計画を上回る降雨時には流下する水量は計画流量よりはるかに大きくなる。したがって,通常予想される規模の降雨による洪水が流下するために必要な断面は確保されており,行き場を失った水が上部へ溢れ出すということはない。具体的な計算については,別紙断面図③記載1のとおりであり,約27立方メートル/秒の流下能力があり,1.94メートルの余裕があるものである。 エ原告らが行うべきであったと主張する溢水対策について(ア) バイパス工事について平成3年当時の郷下川は,現在と同じ位置にあって両側を道路に挟まれていた上に,川沿いに人が歩く散策路もなく,雑草が繁茂しており,市民に親しまれる河川ではなかった。そこで被告は,地元の人たちが散歩や通勤などで川沿いを歩いたり,水面に近づいたりできる良好な水辺空間を創出するとともに,従来の治水機能を確保した整備を行うため,郷下川の河道を暗渠化してその上を道路として利用する代わりに,西側道路部分に新たな川(いわゆるバイパス)を造ることを企画した。そして平成3年3月24日の説明会において,この案(暗渠化案)を地元住民に提示して意見を聴いた。しかし,その後,同年4月11日及び21日に再度説明会を開催して意見を聴いたところ,西側(新たな川をつくる側)の住民から,地先道路が狭く,自動車の出入りがしづらくなるなどの理由で強い反対意見が出て,この案は実現に至らなかった。その後の調整の結果,最終的には現河道の位置で環境整備を行う案(現行整備案)で地元の了承を得,現在のように実施されたものである。同年3月2 どの理由で強い反対意見が出て,この案は実現に至らなかった。その後の調整の結果,最終的には現河道の位置で環境整備を行う案(現行整備案)で地元の了承を得,現在のように実施されたものである。同年3月24日の説明会で提示した整備案(バイパス計画)と最終的に地元と合意して実施した現行整備案(ただし,パラペット設置前の状態)とは,治水能力に差はない。 (イ) 逆流防止水門について平成3年豪雨の経験から,被告は,当時予定されていた河川環境整備事業で設置する護岸をパラペットによりかさ上げして溢水に対応することとし,上記豪雨における溢水時の水位は,TP+8.19メートルと推定されたことから,これに0.2メートルの余裕を加えたTP8.39メートルを護岸の高さとして,総事業費約22億円をかけ,平成3年度に工事に着手し,平成10年度に完了した。 下流河川の異常な水位上昇による支川の溢水防止対策としては,他に下流河川との接続点に逆流防止水門を設置する手法があるが,郷下川上流から流下する雨水は全く排水できなくなるため,水門の設置と合わせて雨水ポンプを設置することが必要となること,特に平成3年豪雨のように,流域での降雨と下流河川の水位上昇が同時に発生するような場合には,水門の閉鎖がより大きな溢水を起こすことが考えられたこと,ポンプ所の築造には多大な予算の確保が必要となり,効果発現までに非常に長い時間を要すること,水門を閉鎖するような場合は,天白川及び藤川の水位が非常に高く危機的な状況であり,郷下川からポンプ排水を続けることは,下流河川に深刻な影響を与えることになって,施設があっても稼働できないおそれがあったこと,パラペットの設置ならば既に実施が予定されていた郷下川環境整備事業と同時に実施することにより,早急の対応ができること等から,被告は逆流防止水 になって,施設があっても稼働できないおそれがあったこと,パラペットの設置ならば既に実施が予定されていた郷下川環境整備事業と同時に実施することにより,早急の対応ができること等から,被告は逆流防止水門を設置する手法を採用しなかったものである。 (4) 争点(4)(野並ポンプ所の設置・管理の瑕疵)について(原告らの主張)野並ポンプ所には,①本件雨水ポンプの排水能力,②本件燃料供給ポンプの設置位置及び設計,③ポンプ所の設計,④ポンプ所の管理について,それぞれ瑕疵がある。以下,順次述べる。 アポンプ所,ポンプ,下水管渠などの排水システム,ため池等の人工公物については,河川のように自然的原因による災害発生の危険性を内在させているため通常備えるべき安全性の確保について治水事業の実施による段階的達成を予定したものではなく,当初から通常予測される災害に対応した安全性を備えたものとして設置されて公用開始されていることから,営造物が通常有すべき安全性を欠き他人に危害を及ぼす状態にあるかどうかについて,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況など諸般の事情を総合考慮して,個別具体的に判断すべきである。 そして,上記の施設が通常有すべき安全性を備えているというのは,当該地域の雨水を迅速かつ滞りなくポンプ所に集水した上で全量を河川などに放流することができ,内水滞留を生じさせない機能を具備していることを意味しており,上記(2)(原告らの主張)ア記載の理由から,被告は,平成6年度の排水区計画策定の際に,5年確率の降雨(50ミリ対応)よりも高レベルの計画規模に基づき排水区計画を策定・実施する必要があったものであり,予想降雨強度を超える降雨の際にも,少なくとも計画上の降雨強度(50ミリ)分については排水を確保できるようにしなければならなかったものであ に基づき排水区計画を策定・実施する必要があったものであり,予想降雨強度を超える降雨の際にも,少なくとも計画上の降雨強度(50ミリ)分については排水を確保できるようにしなければならなかったものである。 イ本件雨水ポンプの排水能力について(ア) 流出係数都市化の急速な進展に伴い,野並地区の流出係数は0.7以上とすべきであった。 (イ) 排水面積以下の理由から,①郷下川流域の野並三,四丁目,②藤川流域,③菅田排水区を全体的に一つの地域として考慮するか,あるいは野並排水区に上記区域からの落ち水量を加算して設定すべきであった。 すなわち,上記区域から野並地区への雨水流入は,時間雨量50ミリに達する以前に大量に発生しており,このことは本件豪雨以前においても毎年のように確認されていたものである。野並地区においては梅雨又は秋雨時にちょっとした大雨になると,道路上10ないし20センチくらい,水が川のように流れたり,たまったりすることは毎年のように発生していた。 中でも,野並三,四丁目については,東から西へ低下しており,第二環状線から郷下川にかけて,野並三丁目あたりは120メートルにつき6ないし7メートル低くなり,野並四丁目あたりは100メートルにつき5メートルくらい低くなっている上,郷下川の西側に関しても120メートルにつき3メートルくらい低くなっており,さらに,郷下川には道路ごとにほぼ道路幅以上の橋が架けられているため,雨水は各道路及び橋を通って野並地区へと流入したものである。 (ウ) 被告は,上記(ア)の流出係数及び同(イ)の排水面積を前提として雨水ポンプを設計すべきであり,その場合,本件雨水ポンプの2倍程度の排水能力が必要であったのであるから,本件雨水ポンプには,その排水能力の点に瑕疵が存在した。 ウ本件燃料供給ポンプの設置位置及び設計 ポンプを設計すべきであり,その場合,本件雨水ポンプの2倍程度の排水能力が必要であったのであるから,本件雨水ポンプには,その排水能力の点に瑕疵が存在した。 ウ本件燃料供給ポンプの設置位置及び設計について(ア) 設置位置名古屋市防災会議は,燃料供給ポンプ等は風水害等に耐えられる構造とし,ポンプ所の一部に浸水があっても機能が停止しないように計装及び電気設備類を浸水安全レベルに設置するものとしているが,野並地区は,すり鉢状の低地であり,容易に浸水する場所であるので,本件燃料供給ポンプは,地上3メートルの位置に設置すべきであったにもかかわらず,これを漫然と地上1.8メートルの位置に設置した点に瑕疵が存在した。 (イ) 設計本件燃料供給ポンプは,仮に水に浸っても運転可能な設計がなされるべきであったのに,それがなされなかったのは,同ポンプの設計上の瑕疵に当たる。 エポンプ所の設計について(ア) 天白川水位との関係野並ポンプ所は,天白川の水位とポンプ所井堰との落差による自然流出により,井堰内にある水を天白川に排出する方式が採用されているが,大雨が降った場合に天白川の水位が高くなるため,排水能力が極端に減少するという点に設計上の瑕疵が存在した。 (イ) 本件空気口の設置位置本件豪雨においては,本件雨水ポンプがくみ上げた雨水が,平成12年9月11日午後8時ころから天白川に排水されずに本件空気口から大量に溢水してしまい,排水の効果を減少させてしまったものである。野並ポンプ所においては,本件空気口をもっと高い位置に設置すべきであったにもかかわらず,これが行われなかった点に設計上の瑕疵が存在した。 オポンプ所の管理について野並ポンプ所には雨水ポンプ室に重油サービスタンクが設置されており,このサービスタンクに重油を供給すれば本件 ず,これが行われなかった点に設計上の瑕疵が存在した。 オポンプ所の管理について野並ポンプ所には雨水ポンプ室に重油サービスタンクが設置されており,このサービスタンクに重油を供給すれば本件雨水ポンプのうちディーゼルポンプ4台は稼働できるのであるから,被告は,本件燃料供給ポンプが故障した後直ちに重油をポンプ所に運搬し,サービスタンクに重油を入れて,ディーゼルポンプ4台を稼働させるべきであったのに,それを怠り,平成12年9月12日午前10時ころになって同ポンプを稼働させたものであり,この点に同ポンプ所管理の瑕疵が存在した。 (被告の主張)野並ポンプ所は,公共下水道として被告が管理しているものであるが,①下水道事業計画において設定された降雨量(時間雨量)が不合理でなく妥当性のあるものであったかどうか,②その計画降雨量(時間雨量)に対応した雨水流出量を迅速かつ滞りなくポンプ所に集水した上で,全量,河川等に放流することができ,内水滞留(受忍限度内の軽度なものを除く)を生じさせない機能を具備していたかどうかという点から,ポンプ所の瑕疵の有無について判断がなされるべきである。野並ポンプ所については,上記①②のいずれにおいても何ら不合理な点や機能が不十分な点はなかったものであるから,瑕疵は存在しなかった。以下,詳述する。 ア設定降雨量について(ア) 下水道の施設をあらゆる降雨に対応できるものとすると,著しく膨大な費用を必要とすることになり,実際には不可能であることから,一般的には,施設計画は何年かに一度の頻度で発生する降雨強度の雨に対処できれば足りる(この「何年かに一度の頻度」のことを確率年という)。 そして,都市計画中央審議会平成7年7月18日答申や,都市計画法施行規則(昭和44年8月25日建設省令第49号。開発行為の に対処できれば足りる(この「何年かに一度の頻度」のことを確率年という)。 そして,都市計画中央審議会平成7年7月18日答申や,都市計画法施行規則(昭和44年8月25日建設省令第49号。開発行為の許可基準のうち排水施設の管渠の勾配及び断面積の基準である)22条の規定から,5年確率の降雨に対応できれば足りるものである。 (イ)被告においては,昭和63年度に名古屋市総合排水計画の見直しを行い,これに基づき1時間計画降雨量50ミリに対応できるよう雨水ポンプ所を設計・設置し,同50ミリの降雨であれば,ポンプ所付近が浸水することなく,安全に放流先の河川に放流することができるように下水道施設を整備しているものである。 (ウ) 原告らは,本件豪雨のように計画降雨強度を超える降雨(超過降雨)があっても,少なくとも計画上の降雨強度(時間雨量50ミリ)分については,常に排水を確保できなければならないといった主張をしている。 しかしながら,治水施設が,5年に1回程度の確率で発生する降雨,すなわち,時間雨量50ミリの降雨に対応しているということは,一つのピークをもつ降雨モデルにおいて,ピーク時の1時間の量,つまり1時間当たりの最大量が50ミリで,その前後の時間帯の降雨は少なくなっていくという山形の降雨モデルに対応しているということである。したがって,ピーク時の降雨量が1時間50ミリを超えるような降雨はもちろんであるが,1時間50ミリの雨が長時間続くような降雨もまた想定外であり,5年に1回程度の確率で発生する事象ではない。 通常,河川は本川と支川によって構成されており,本川の洪水到達時間は支川のそれよりも長いため,本川の洪水到達時間内降雨強度は支川のそれよりも小さい。したがって,支川の洪水到達時間内降雨強度に相当する降雨が長時間続 と支川によって構成されており,本川の洪水到達時間は支川のそれよりも長いため,本川の洪水到達時間内降雨強度は支川のそれよりも小さい。したがって,支川の洪水到達時間内降雨強度に相当する降雨が長時間続けば,それは本川にとって超過洪水であり,さらに本川と支川のピークが重なり合うことによって本川の異常な水位上昇などが発生し,支川の計画流量の流下に支障をきたすものであり,原告らの主張は,放流先(流下先)の河川や雨水貯留施設について,5年確率の整備水準を超える整備を要求するものであって,妥当ではない。 イ本件雨水ポンプの排水能力について下水道計画では,雨水ポンプの排水能力は,計画降雨においてポンプ所に到達して来るピーク時の雨水流出量(最大計画雨水流出量)を,以下のとおり,合理式を用いて算出し,それを雨水ポンプの排水能力とする。 合理式 Q=1/360×C×I×AQ:最大計画雨水流出量(立方メートル/秒)C:流出係数I:流達時間内の平均降雨強度(ミリ/時間)A:ポンプ所の排水面積(ヘクタール)野並ポンプ所では,C:流出係数を0.6,I:流達時間内の平均降雨強度を65.4ミリ/時間,A:ポンプ所の排水面積を78.5ヘクタールとして計算し,その結果算出された8.55立方メートル/秒を雨水ポンプの排水能力とした。本件雨水ポンプは,天白川の最高水位の時点においても,計画排水量である8.55立方メートル/秒(514立方メートル/分)を上回って排水していたものであり,その排水能力に瑕疵はなかった。 (ア) C:流出係数流出係数とは,当該地域に降ったピーク時の雨水のうちどれだけが地面に吸収されずに流出するかという割合であり,野並地区については,以下のとおり,0.6とした。 a 流出係数は,調査区域内における都市計画法8条1項1号に定める用途 ク時の雨水のうちどれだけが地面に吸収されずに流出するかという割合であり,野並地区については,以下のとおり,0.6とした。 a 流出係数は,調査区域内における都市計画法8条1項1号に定める用途地域別に道路,建物,空地面積(工種別面積)の割合を算定し,それに工種別基礎流出係数を用いて算定する。 野並地区排水基本計画では,将来野並地区全体が市街化し,雨水流出量が増えても対応できるようにするため,野並地区の中から比較的住宅が密集し市街化が進んでいる場所をモデル地区として抽出し,そのモデル地区の工種別の面積比率(屋根,道路,空地面積の割合)に,その工種別の基礎流出係数(建設省都市局下水道部監修の「下水道施設計画・設計指針と解説・前編-1994年版-」に示された工種別基礎流出係数の標準値に基づき,屋根0.9,道路0.85,空地0.2とした)を乗じて,それらの計算結果を合計したものをその用途地域の流出係数とし,それぞれの用途地域ごとの流出係数を当該用途地域の面積に応じて加重平均して野並地区全体の流出係数を算定した。 b なお,上記の「下水道施設計画・設計指針と解説・前編-1994年版-」には空地の標準値は記載されていないが,これに相当するものとして「間地」の標準値が0.2と記載されているので,これに従い,空地の基礎流出係数を0.2として取り扱った。 (イ) I:到達時間内の平均降雨強度野並ポンプ所の雨水ポンプの排水能力を計算する際には,5年確率(時間雨量50ミリ)の降雨に対処するため,5年確率の降雨強度式I=430/(√t+0.86)の「t」に野並ポンプ所の流達時間(32.7分)を代入し,流達時間内の平均降雨強度65.4ミリ/時間を算出した。 (ウ) A:ポンプ所の排水面積a 野並ポンプ所の雨水ポンプの排水能力を算出するに当 )の「t」に野並ポンプ所の流達時間(32.7分)を代入し,流達時間内の平均降雨強度65.4ミリ/時間を算出した。 (ウ) A:ポンプ所の排水面積a 野並ポンプ所の雨水ポンプの排水能力を算出するに当たっては,旧野並ポンプ所時代の野並排水区の面積である78.5ヘクタールを基準としている。 もっとも,以下のとおり,野並ポンプ所には雨水調整池(貯留量は約5400立方メートル)が設けられており,この調整池により,郷下川上流の暗渠となっている区域(35.5ヘクタール)及び落ち水区域(60ヘクタール)からの雨水流入についても対応しているものである。雨水調整池の貯留量は,5年確率の降雨強度を計画降雨として定め,それに対する流出ハイドログラフ(計画降雨において,ポンプ所に到達して来る雨水流出量の時間的変化をグラフで表したもの)を作成し,そこから雨水ポンプの排水能力を差し引いた量を容量として算定したものである。 (a) 郷下川上流の暗渠となっている区域郷下川上流の暗渠となっている区域については,当初,郷下川流域としてのみ位置付けられ,野並排水区としての位置付けはされていなかったが,平成6年度に野並地区排水基本計画を策定するに当たり,野並排水区に雨水が流れ込んで来る区域として想定し,当該区域を郷下川流域として位置付けたまま,野並排水区にも重複して取り込んだものである。 この郷下川上流の暗渠となっている区域は,実際には,野並排水区に算入するまでもなく,もともと郷下川によって50ミリ対応ができていた区域であり,時間雨量50ミリを超える雨が降らなければ,当該区域に降った雨は郷下川によって排水され,野並地区には流れて来ないものであるが,平成3年の豪雨の時に野並地区に大きな浸水被害が発生したので,同程度の豪雨が再来しても被害を軽減できるよう ければ,当該区域に降った雨は郷下川によって排水され,野並地区には流れて来ないものであるが,平成3年の豪雨の時に野並地区に大きな浸水被害が発生したので,同程度の豪雨が再来しても被害を軽減できるよう当該地区の浸水に対する安全性に余裕を持たせたものである。 (b) 落ち水区域について野並地区排水基本計画では,大雨が降った際に,道路等の地表面を流れた雨水が野並地区に流れ込んで来る可能性のある区域として,落ち水区域(60ヘクタール)を設定した。落ち水区域からどの程度の雨水流入を見込むかについて全国的な基準はないが,被告の下水道計画においては,丘陵地から落ち水を想定する場合は,その3割を見込むという先例がいくつかあったので,それらの先例に従い,野並地区排水基本計画においても,落ち水区域(60ヘクタール)の3割相当の18ヘクタールを排水区に加えた。 もともと落ち水区域は,野並排水区に算入するまでもなく,郷下川によって50ミリ対応ができていた区域であり,野並排水区に3割相当を算入した後も従前どおり郷下川流域として位置付けたままであるから,時間雨量50ミリを大幅に超える雨が降らなければ,この区域に降った雨の大部分は,郷下川によって排水されるものである。したがって,その全域を野並排水区に取り込まなかったとしても,安全性には何ら問題がない。 b 野並三,四丁目区域,藤川流域及び菅田排水区原告らは,本件豪雨においては,野並三,四丁目区域,藤川流域及び菅田排水区から大量の雨水が野並地区に流入し,浸水被害を拡大させたが,このような現象が起こることは,平成3年の水害被害以降は十分に予見可能であり,それを回避する措置を講ずべき必要性,緊急性及び重要性は明白であったと主張している。 しかしながら,以下のとおり,野並三,四丁目区域,藤川流域及び菅 は,平成3年の水害被害以降は十分に予見可能であり,それを回避する措置を講ずべき必要性,緊急性及び重要性は明白であったと主張している。 しかしながら,以下のとおり,野並三,四丁目区域,藤川流域及び菅田排水区からの雨水流入は本件豪雨前にはみられなかった現象であり,また,それを想定しなかったことについても十分な合理性があるから,被告には,これらの区域からの雨水流入を想定し,それを防止するための措置を講じる義務はなかったというべきである。 (a) 野並三,四丁目区域計画降雨であれば,野並三,四丁目区域に降った雨は,すべて当該区域に設置された側溝や雨水管などを通じて郷下川に排水されるので,雨水が道路に溢れるようなことは起こらない。短時間に非常に強い雨(計画降雨外の雨)が降った場合には,雨水管の流下能力を超えるので,集水し切れない雨水が道路に流れることはあり得るが,そのような雨水が野並三,四丁目区域から野並地区に流入するためには,野並三,四丁目区域沿いを南北に走っている第二環状線を雨水が横切る必要がある。ところが,この第二環状線には,中央分離帯が設置されており,これが第二環状線を雨水が横断することを防いでいるので,野並三,四丁目区域からは雨水流入の可能性は極めて低い上,道路は,雨水排水のために中央部分が高く道路端が低くなるように設計されている(道路構造令24条)ことから,仮に第二環状線を雨水が横切ったとしても,通常は,郷下川に架かっている橋にたどり着く前に,道路端に流れ,その道路端に設定されている側溝に集水された後,雨水管を通じて郷下川に排水されて行くものである。したがって,本件豪雨のように計画降雨をはるかに超える異常な雨が降らない限り,野並地区に浸水被害をもたらすほどの大量の雨水が野並三,四丁目区域から道路を伝い,さらに郷 川に排水されて行くものである。したがって,本件豪雨のように計画降雨をはるかに超える異常な雨が降らない限り,野並地区に浸水被害をもたらすほどの大量の雨水が野並三,四丁目区域から道路を伝い,さらに郷下川に架かっている橋を渡って野並地区に流入するとは考えられない。 ちなみに,平成3年豪雨においても,野並三,四丁目区域から野並地区に雨水流入があり,それが浸水被害をひき起こしたというような事実は一切確認されていないものである。原告らは,本件豪雨前から道路冠水が毎年のようにあったことをもって,野並三,四丁目区域からの雨水流入も以前から頻繁に発生していたかのような主張をしているが,道路冠水というのは,他地区からの雨水流入がなくとも,当該地区自体に管渠の流下能力を超える雨が降れば,理論上,起こり得るものである。 例えば,1時間に50ミリの雨が降らなくても,雷雨のように突発的に10分間に20ミリぐらいの雨が降ってしまえば,それは計画降雨外の降雨であり,そのような雨が野並地区に降れば,管渠に集水し切れない雨水が一時的に道路上に滞留することはあり得る。したがって,道路冠水は,野並三,四丁目区域からの雨水流入が原因というよりは,野並地区自体に降った雨が滞留したことにより生じたものであると考えられる。 (b) 藤川流域藤川流域から東海通を伝って流れて来た水が野並地区に入るためには,野並交差点より100メートルほど西に位置する郷下橋を超えなければならない。この郷下橋の地盤高は野並交差点よりも少なくとも20センチは高いので,野並交差点までは水が来たとしても,その水が郷下橋を超えて野並地区に入るとは考えにくい。 平成3年豪雨の際の野並交差点での冠水位は歩道の高さ程度(約20センチ)であったが,仮に,当時,野並交差点まで来た水が郷下橋を超えて野並地区 その水が郷下橋を超えて野並地区に入るとは考えにくい。 平成3年豪雨の際の野並交差点での冠水位は歩道の高さ程度(約20センチ)であったが,仮に,当時,野並交差点まで来た水が郷下橋を超えて野並地区に大量に流入していたとしたら,野並交差点の冠水位はもっと高くなっていたはずである。 (c) 菅田排水区からの流入について菅田排水区では,平成3年豪雨においても大きな浸水被害はなかった。また,菅田排水区は野並地区と隣接した区域ではなく,本件豪雨の時を除けば,菅田排水区から野並地区に雨水流入があったというような事実は一切確認されておらず,菅田排水区から大量の雨水が流入するとは想定しにくい。 ウ本件燃料供給ポンプの設置位置及び設計について(ア) 設置位置本件燃料供給ポンプの位置は,以下の理由から決められた合理的なものである。 a 本件燃料供給ポンプは,現存する統計において野並地区における被害戸数が最大であった平成3年豪雨による浸水レベルが現在の野並ポンプ所の周辺道路面より0.74メートル高いSP16.940メートルであったこと,当時工事中であった地下鉄にたまった約16万立方メートルの水が工事中の地下鉄に滞留しないで野並地区に流入していたとすると,野並地区の浸水高は40ないし50センチほど高くなっていたと思われることを考慮し,SP18メートルの高さに設置した。これは,我が国における一般的な公共下水道全般の技術上の基準である上掲の「下水道施設計画・設計指針と解説・前編-1994年版-」の基準も満たしているものであり,かつ過去の教訓も生かしたものであるので,この点に関して設計上の瑕疵は存在しなかった。 b 被告は,ポンプ所敷地内の地下に重油メインタンクを設置したが,燃料供給ポンプの設置位置を高くすると,重油メインタンクと燃料供給ポン たものであるので,この点に関して設計上の瑕疵は存在しなかった。 b 被告は,ポンプ所敷地内の地下に重油メインタンクを設置したが,燃料供給ポンプの設置位置を高くすると,重油メインタンクと燃料供給ポンプとの距離が離れ,配管の継ぎ目から吸い込み管の中へ外の空気が入り込んだり,燃料の吸い込みが悪くなったりする可能性があるなど,燃料供給ポンプの運転が不安定になるという問題が生じるものであり,必要以上に燃料供給ポンプの位置を高くすることは困難であった。 なお,本件雨水ポンプの燃料となる重油を貯蔵するタンクについては,消防法2条7項,危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)により屋内タンク,屋外タンク及び地下タンクの3形式が定められているが,そのうち屋外タンクについては,住居等から一定の保安距離を確保しなければならず(同政令11条1項1号),加えて,貯蔵タンクの周囲に一定の空地を保有しなければならず(同項2号),野並ポンプ所の設置用地が狭小であったこと,屋内タンクについては,雨水調整池も併せて設置することになっていたこともあり,設置場所の確保が困難であったことから,採用できなかったものである。 (イ) 設計確かに,本件燃料供給ポンプは水密性を備えていないが,上記(ア)記載のような高さに設置した以上,被告が同ポンプが水に浸かることを想定していなかったとしても,通常予想される規模の降雨に対応することはもちろん,さらに高い安全性を備えたものとして設計・設置されていたのであるから,同ポンプに設計上の瑕疵は存しなかった。 エポンプ所の設計について(ア) 天白川水位との関連本件豪雨により天白川の水位は想定を超えた高さになったが,以下のとおり,本件雨水ポンプは,排水能力が極端に減少することはなく,実際には計画排水量以上の量を自然流下で天白川に ア) 天白川水位との関連本件豪雨により天白川の水位は想定を超えた高さになったが,以下のとおり,本件雨水ポンプは,排水能力が極端に減少することはなく,実際には計画排水量以上の量を自然流下で天白川に排水しており,被告に野並ポンプ所の設計上の瑕疵は存しなかった。 a 連絡井内の本件空気口の下端から縦幅の約半分の高さの位置までの所の防虫網の部分に,連絡井内の雨水が外へ溢水したと見られる痕跡があり,そこから本件水害の際の連絡井内の最高水位は,SP22.466メートルであったものと思われる。そして,平成12年9月11日午後9時33分には天白川が最高水位SP22.010メートルを記録したが,水理計算上,その時点において連絡井から天白川に雨水が自然流下するのに必要な連絡井水位と連絡井内の最高水位の数値とは,ほぼ一致するため,十分に自然流下していたものである。 b また,天白川が最高水位を記録した時のポンプ井水位はSP16.500メートルであったが,ポンプ井水位が上昇すると揚程(ポンプが水をくみ上げる高さ)が小さくなり,天白川が最高水位となった時の実揚程(ポンプが実際に水をくみ上げる高さ)は,その時の連絡井水位(SP22.466メートル)とポンプ井水位(SP16.500メートル)との差である5.966メートルとなった。 ポンプ排水量については,ポンプ性能曲線図(株式会社酉島製作所において実施した5台の雨水ポンプの排水能力試験成績図)から,1号ないし4号ポンプが毎分各123立方メートル,5号ポンプが毎分95立方メートルとなり,5台合わせて毎分587立方メートルのポンプ排水量であり,計画排水量の514立方メートルを上回って排水していた。 (イ) 本件空気口の設置位置確かに,本件豪雨の際に,本件空気口から雨水が溢水してはいたものの,以下の理由から,本件空 のポンプ排水量であり,計画排水量の514立方メートルを上回って排水していた。 (イ) 本件空気口の設置位置確かに,本件豪雨の際に,本件空気口から雨水が溢水してはいたものの,以下の理由から,本件空気口の設置位置に設計上の瑕疵は存しなかった。 a 野並ポンプ所の場合,連絡井の水位が最も高くなるのは,放流先の天白川の水位が最も高くなる計画高水位(SP21.262メートル)となった時であり,同時点で野並ポンプ所の連絡井の水位がどれぐらいの高さになっているかを,以下のとおり水理計算によって求めたSP21.611メートルが,野並ポンプ所の計画上の連絡井最高水位である。 連絡井の水位=天白川の計画高水位+放流渠の損失水頭=SP21.262メートル+0.349メートル=SP21.611メートル(放流渠の損失水頭とは,水が放流渠を通る際に摩擦などで失われるエネルギーを高さに置き換えて表現した値である)そして,本件空気口は,その下端が連絡井内の計画上の最高水位SP21.611メートルよりも約51センチ高いSP22.120メートルの高さになるように設置されていた。 b 本件空気口から外へ溢水していたのは,本件豪雨時の河川水位,ポンプ井水位等から計算すると,平成12年9月11日午後9時ころから翌12日午前1時過ぎにかけてと推定される。そして,溢水し始めた時の天白川の河川水位は,SP21.670メートルであり,計画高水位であるSP21.262メートルを約40センチ超えた値であった。また,河川水位が最高水位SP22.010メートルを記録した時点において,連絡井内の水位はSP22.466メートルとなったため,本件空気口の約半分の高さから溢水したが,その時の溢水量は,毎分約37.7立方メートルと最大であった。そして,最大溢水量時には,計画排水量の毎分514立方 位はSP22.466メートルとなったため,本件空気口の約半分の高さから溢水したが,その時の溢水量は,毎分約37.7立方メートルと最大であった。そして,最大溢水量時には,計画排水量の毎分514立方メートルを超える毎分587立方メートルのポンプ排水量であり,溢水量の毎分37. 7立方メートルを差し引いてもなお計画排水量を毎分約35立方メートル上回っていた。 水理計算により推計した連絡井水位と本件空気口の設置位置(高さ)との関係から本件空気口から溢水した雨水量を計算すると,その総合計は約1409立方メートルであり,この間の総ポンプ排水量は約14万6660立方メートルであるので,溢水量は約1%程度であったと推定される。 したがって,本件空気口から雨水が溢水してはいたものの,量はわずかであり,当時の野並ポンプ所は,ポンプ5台が稼働した場合の計画放流量である毎分514立方メートルを超える量の雨水を天白川に放流しており,排水能力は減少していなかった。 オポンプ所の管理について以下のとおり,燃料供給ポンプが停止した時,被告は,全市域で浸水等が起きている状況の中で行うことのできた最大限の対応をしたものであり,野並ポンプ所の管理について瑕疵は存在しなかった。 (ア) 本件豪雨においては,野並ポンプ所構内の水位上昇に伴って本件燃料供給ポンプの冷却用モーターのファンが水をかき回すようになり,それが原因で過負荷の保護装置が働き,平成12年9月12日午前1時40分,同ポンプが停止した。被告職員は,野並ポンプ所の親局(集中管理運転を行うポンプ所)である被告上下水道局内浜ポンプ所(南区豊4-18-15所在)の監視装置で同ポンプの停止を確認した。 被告職員は,本件燃料供給ポンプの停止を確認したとき,まず,重油サービスタンクの残量での運転となるため,運転時間を延ばそ 浜ポンプ所(南区豊4-18-15所在)の監視装置で同ポンプの停止を確認した。 被告職員は,本件燃料供給ポンプの停止を確認したとき,まず,重油サービスタンクの残量での運転となるため,運転時間を延ばそうと,4台あるディーゼルポンプのうち1台を同日午前2時ころに内浜ポンプ所からの遠隔操作により停止させた。また,同日午前3時41分には,残り3台のディーゼルポンプも,監視装置に「低油面」の警告が表示されたので,やむを得ず同様に内浜ポンプ所から停止させた。このようなディーゼルポンプの停止は,サービスタンクの残量が少なくなったにもかかわらず運転を継続すると,供給ラインパイプに空気が入り,重油補給後のポンプ再運転に支障が出るので,そのような事態を避けるためのやむを得ない選択であった。 (イ) 本件燃料供給ポンプの停止を確認した際,監視装置には「燃料供給ポンプ故障」との表示が出たことから,被告職員は,この時点では,同ポンプを動かすことはもう無理であり,重油を外部から補給するしか手立てはないと考えた。しかしながら,野並ポンプ所周辺が浸水していたため,被告職員がさまざまに試みたにもかかわらず,同ポンプ所には容易に近づけず,ゴムボートの手配が済んだ直後である同日午前8時27分,ディーゼルポンプ1台の運転を再開し,その後同日午前10時ころに同ポンプ所に到着した職員が,現地で本件燃料供給ポンプの強制運転を試みたところ,断続的ではあるが,奇跡的に同ポンプが動いたため,他の3台のディーゼルポンプの運転を再開し,また,そのころ重油を同ポンプ所に運ぶことも可能となったものである。 (5) 争点(5)(排水区の設置の瑕疵)について(原告らの主張)被告が定める各排水区域・流域内の降雨は,当該区域内の降雨を他区域に流出させてはならないものであるが,上記(4)(原告らの主張 る。 (5) 争点(5)(排水区の設置の瑕疵)について(原告らの主張)被告が定める各排水区域・流域内の降雨は,当該区域内の降雨を他区域に流出させてはならないものであるが,上記(4)(原告らの主張)イ(イ)記載のとおり,被告は,郷下川流域の野並三,四丁目,藤川流域及び菅田排水区からの雨水の流入を考慮し,これらの地区を野並排水区と全体的に一つの地域として考慮するか,あるいは野並排水区に郷下川流域,藤川流域及び菅田排水区からの落ち水量を加算して設定すべきであった。 (被告の主張)被告は,通常予想される規模の降雨に対して,土地の形状等を考慮して,野並ポンプ所が集水する排水区域を設定している。上記(4)(被告の主張)イ(ウ)b記載のとおり,通常予想される規模の降雨(時間雨量50ミリ程度)であれば,野並三,四丁目区域,藤川流域及び菅田排水区に降った雨は,そもそも野並地区の市民生活に重大な影響を及ぼすほどには同地区に流入して来ない。したがって,他地区から雨水が野並地区に流入することを被告が想定していなかったとしても,何ら不合理ではない。 (6) 争点(6)(ため池等の管理の瑕疵)について(原告らの主張)ア藤川流域にある戸笠池,螺貝池,鳴子池及び四郎曽池は,いずれも都市化の影響を被り,被告の公共事業により貯水機能が甚しく低下させられた状態となっていた。扇川流域のため池は,池や水門の構造上,平水位が低く高水位が高く設定してあり,その高低差が大きいので十分な洪水調節機能があったが,藤川流域のため池は,池や水門の構造上,平水位と高水位の高低差があまりなく,洪水調節機能が少なかった。被告が,扇川流域に存在するため池と同様の改修を行っていれば,藤川流域のため池は,概算でさらに10万立方メートル程度の洪水調節機能を持たせることが可能であった。以下,詳述 洪水調節機能が少なかった。被告が,扇川流域に存在するため池と同様の改修を行っていれば,藤川流域のため池は,概算でさらに10万立方メートル程度の洪水調節機能を持たせることが可能であった。以下,詳述する。 (ア) 戸笠池について戸笠池は,改修工事が昭和54年度に行われた後,その後は行われず,同池の東側には葦が生え,池全体にかなりの量の汚泥等が蓄積されているにもかかわらず,浚渫したことがなく,被告が計画したとおりの貯留容量はない上に,改修後,同池の北側・東側は都市化が進み,住宅地として多くの住宅が建てられたにもかかわらず,雨水が同池に流入する水路は2か所のみであって,そのほかには流入しない状態となっていたが,被告は,このような状況を何らの整備をすることなく放置していた。また,戸笠池の放出口については,さらに放出口を高くすることにより,その洪水調節機能を高めることができたにもかかわらず,被告はこれを行わなかった。 戸笠池は,過去の半分程度に埋め立てられ,市民の休息用公園となっていたため,洪水調節機能が低下していたものであるが,被告は,同池の西隣の野球場を掘り下げ,雨水貯留池とすることが可能であった。 (イ) 鳴子池について鳴子池は,北側半分程度が埋め立てられ,市バスの停留場,被告交通局の野並車庫及び市営団地として利用されたため,同池の洪水調節効果が減少していた。被告は,少なくとも相生山から南下する雨水等を下水管に流入させるための集水桝を設置し,鳴子池等へと貯留させるような設備を設けるべきであったのに,実際にはこれがなかったため,上記雨水等は,東海通を野並交差点へと流下し,この結果,鳴子池は,洪水調節機能を果たせない状態になっていた。 (ウ) 螺貝池について螺貝池も,半分程度埋め立てられ,運動場として利用されている。昭和55,56年度に行 通を野並交差点へと流下し,この結果,鳴子池は,洪水調節機能を果たせない状態になっていた。 (ウ) 螺貝池について螺貝池も,半分程度埋め立てられ,運動場として利用されている。昭和55,56年度に行われたという改修の内容は不明であるが,改修方法次第でより大きな洪水調節機能を持たせることが可能であったと考えられる。 (エ) 四郎曽池について藤川の流域に限ってみれば,四郎曽池の洪水調節機能はさほど重要ではないかもしれないが,藤川から溢水した水は野並地区に流入するのであり,四郎曽池の洪水調節機能をおろそかにすべきではなく,改修方法を工夫することによって,同池の洪水調節機能を高めることはできたものである。 イ扇川との比較平成3年豪雨の際には,藤川排水区の南側に隣接する扇川排水区においても床上浸水の被害があったが,扇川流域においては,平成3年豪雨の後,扇川河川改修のみならず,洪水調整池,防災調整池,校庭貯留など,約103万立方メートルもの雨水貯留施設が整備された結果,本件豪雨の際には浸水被害が生じていない。 (被告の主張)ア被告は,戸笠池,螺貝池,鳴子池及び四郎曽池について,以下のとおり,合計約6億円の事業費をかけて整備を行い,その結果合計14万6500立方メートルの洪水調節容量を確保し,30ないし50年確率(時間雨量80ミリ)の降雨に対して雨水を貯留する機能を備えたものである。その後,被告は,状況に応じてため池へ雨水を導くための管路の整備や改良を実施し,堆積土の浚渫等を行っている。なお,上記の四つのため池は,10年に1回起こる洪水が発生しても,その洪水調節効果によって準用河川藤川の氾濫を防止するように計画されているが,これを超える降雨があり,準用河川藤川が氾濫する事態になっても,雨水を貯留し続け,氾濫する水量を抑制している。 (ア) 戸 その洪水調節効果によって準用河川藤川の氾濫を防止するように計画されているが,これを超える降雨があり,準用河川藤川が氾濫する事態になっても,雨水を貯留し続け,氾濫する水量を抑制している。 (ア) 戸笠池について戸笠池については,昭和30年以降に埋め立てられた事実は存在しない。同池は,従前約3万2000立方メートルの洪水調節能力を有していたと推定されるところ,被告は,昭和54年度に,護岸の改良と合わせて,放流量を低減させるよう洪水吐の断面を縮小し,1時間計画降雨量60ミリに対して約4万6300立方メートルの洪水調節能力を有するため池とした。 (イ) 鳴子池について鳴子池については,民間所有であった同池の北側部分を昭和41,42年に被告交通局が用地買収し,当該部分を埋め立てて同交通局野並営業所等を建設した。また,同池の南側部分は,土地区画整理事業や被告の道路築造によって4割ほど埋め立てられた。他方,被告は,昭和58年度から昭和61年度にかけて,雨水貯留事業により,護岸の改良や池底土砂の掘削などと合わせて,ため池からの放流量が低減するよう洪水吐の断面を縮小させるとともに,改修前TP17.1メートルであった常時水位をTP16. 4メートルに低下させ,また,ため池の洪水調節容量を増加させることができるよう,放流施設を改良する整備を行い,1時間計画降雨量60ミリに対して約3万1600立方メートルの洪水調整能力を有するため池とした。 (ウ) 螺貝池について螺貝池は,ため池の管理用通路を確保するための築堤や民間の土地区画整理事業によって3割ほど埋め立てられた。しかしながら,螺貝池は,従前約1万9000立方メートルの洪水調節能力を有していたと推定されるが,被告は,昭和55年度から昭和60年度にかけて,雨水貯留事業により,護岸の改良,池底土砂の掘削などと しかしながら,螺貝池は,従前約1万9000立方メートルの洪水調節能力を有していたと推定されるが,被告は,昭和55年度から昭和60年度にかけて,雨水貯留事業により,護岸の改良,池底土砂の掘削などと合わせて,ため池からの放流量を低減させるよう洪水吐の断面を縮小し,堤防を盛土することで,1時間計画降雨量60ミリに対して約2万7000立方メートルの洪水調整能力を有するため池とした。 (エ) 四郎曽池について四郎曽池についても,被告は,昭和55年度から昭和56年度にかけて,ため池整備事業などによって護岸などの整備を行い,洪水吐の断面を縮小して,1時間計画降雨量50ミリに対して約1万1000立方メートルの洪水調節機能を持たせた。 イ扇川との比較原告らは,扇川流域に約103万立方メートルもの雨水貯留施設があることや,藤川流域のため池は平水位と高水位の高低差があまりないのに対し,扇川流域のため池は差が大きいことから,藤川流域の雨水貯留施設は扇川流域のそれと比べて洪水調節機能が劣っていた旨主張している。 しかし,平水位と高水位の高低差はその洪水調節機能とは関係がなく,むしろ洪水調節容量との関係の方が深い。また,扇川流域3010ヘクタールに所在するため池等の雨水貯留施設は,本件豪雨当時,施工中,計画中の施設も含めて約103万立方メートルであり,流域1ヘクタール当たりの容量は,342立方メートルであるのに対し,藤川流域の336ヘクタールに所在する雨水貯留施設は,約15万6000立方メートルであり,流域1ヘクタール当たりの容量は464立方メートルである。すなわち,藤川流域の雨水貯留施設は,扇川流域のそれと比べても決して劣ることはなく,むしろ,より大きな洪水調節機能を有していたものである。扇川は,準用河川藤川や郷下川に比べ,はるかに規模の大きい河川であ ち,藤川流域の雨水貯留施設は,扇川流域のそれと比べても決して劣ることはなく,むしろ,より大きな洪水調節機能を有していたものである。扇川は,準用河川藤川や郷下川に比べ,はるかに規模の大きい河川であるばかりか,流域内に存在する支川やため池も多い。 本件豪雨時における,藤川と扇川の溢水等の差は,扇川が天白川に合流する部分の改修が完了していたのに対し,藤川が天白川に合流する部分は未整備であったことが溢水等の状況の違いに大きく影響したものであって,ため池の整備の差によるものではない。 また,扇川流域においても,本件豪雨の際には,平成3年豪雨のときと比較しても広範な浸水被害が生じた。 ウ上記アの四つのため池及び双子池(天白区海老山町208所在)については,総額6億円の事業費をかけて整備は完了しており,これらの洪水調節容量を合わせると約11万9000立方メートルである。 校庭等に設置する雨水貯留施設についても,これまでに整備済みの5か所を合わせて約3500立方メートルの貯留容量を有する一方,費やした事業費は約3億円であることを踏まえれば,野並地区に流入した雨水の総流入量が約180万ないし200万立方メートルだと想定すると,雨水貯留施設を約2700か所造らなければならない計算になり,それらを造るための場所の確保と整備費用約1600億円が必要となるところ,被告の平成14年度一般会計歳出予算のうち治水費は約110億円であるという現状を考えれば,本件洪水発生前までに実現することは不可能であった。 (7) 争点(7)(排水路等の設置・管理の瑕疵)について(原告らの主張)ア本件豪雨当日の天白土木事務所の降雨データに基づき算出された最大流出量の推移と実際の排水区内における浸水開始時刻とを比較した結果,野並ポンプ所の計画上の処理能力の限界値に達する以前に,既 主張)ア本件豪雨当日の天白土木事務所の降雨データに基づき算出された最大流出量の推移と実際の排水区内における浸水開始時刻とを比較した結果,野並ポンプ所の計画上の処理能力の限界値に達する以前に,既に野並排水区内に浸水被害が生じていたことが明らかとなっている。このことは,野並排水区内に降った雨水が所定の排水経路に集水されず野並地区内に滞留したことを示しており,計画想定内5年確率降雨にすら,被告の整備した集排水システム・設備が対応していなかったことを意味している。 イ被告は,野並地区においては,50ミリ対応ではなく,野並地域だけに特別に過酷な被害が生じないように対策をとる必要があった。被告は,本件水害発生後に緊急雨水整備基本計画を策定し,①貯留管の増設,②貯留管を藤川の下を通して,雨水を南の方(緑区鳴海町方面)へ流下させる施策(これは,降雨強度が50ミリを超えると,郷下川の流下能力がなくなり,藤川へ流入できないので,藤川を超えてその南方へ流下させる方策である),③郷下川の東側の道路に集水口を設置する施策(これは,道路を伝って野並地区に雨水が流入しないようにする方策である)等を実施しているが,被告は平成3年豪雨で水害の発生機序が分かっていたのであるから,これらの施策を本件豪雨以前に実施すべきであったのに,これを行わなかった。 この貯留管設置を含む緊急雨水整備事業は,3か月で策定され,また,貯留管設置に要する費用は契約金額で約6億2000万円強であり,郷下川の環境整備事業の総事業費約25億円と比較すれば,相当に安価なものである。 (被告の主張)ア(ア) 本件豪雨は,平成12年9月11日未明から降り始め,午前6時ころに一時的に強い雨が降り,その後弱い雨がほぼやむことなく降り続き,午後5時ころから一気にその強さを増したものである。したがって, (ア) 本件豪雨は,平成12年9月11日未明から降り始め,午前6時ころに一時的に強い雨が降り,その後弱い雨がほぼやむことなく降り続き,午後5時ころから一気にその強さを増したものである。したがって,降雨の一部の時間を区切って,その時間帯の降雨量が被告の想定している計画降雨以下であり,その時点で浸水があったからといって,直ちに被告の施設に瑕疵があったとはいえないものである。また,天白土木事務所の雨量計による降雨データは,野並地区における当日の降雨を正確に反映するものではない。 (イ) 被告は,野並排水区において,雨水排水の能力を増強させるために,平成3年以降,事業費約2470万円を投じ,道路の側方に側溝(U形側溝)等を668メートルにわたって布設した。野並排水区の面積は市域全体の約0.24%であるが,平成3年以降市域全体で整備したU形側溝の施工延長及びそれに要した事業費に占める野並排水区の割合は,それぞれ約0.37%であり,排水区の広さに比して,事業費を多く投入している。また,雨水管の整備についても,被告は,野並地区において,事業費約3億7400万円を投じ,雨水管などを1624メートルにわたり埋設している。野並排水区は,分流区域のうちで被告緑政土木局が雨水管などを整備する区域全体の約0.71%に当たる面積を占めているが,平成3年以後対象区域全体内で整備された雨水管の施工延長に占める野並排水区の割合は約2.10%,要した事業費に占める野並排水区の割合は約1.21%であり,排水区の広さに比して,事業費を多く投入している。(以上については,別紙「野並排水区における治水対策整備の実績」(1),(2)を参照)イ排水管理施設の設置又は管理の瑕疵の有無の判断基準については,本件豪雨当時の知見に基づいて判断されるべきものである。そして,被告が平成1 排水区における治水対策整備の実績」(1),(2)を参照)イ排水管理施設の設置又は管理の瑕疵の有無の判断基準については,本件豪雨当時の知見に基づいて判断されるべきものである。そして,被告が平成12年12月に策定した緊急雨水整備計画及び緊急雨水整備基本計画は,未曾有の豪雨であった本件豪雨を経験した上で,同豪雨により甚大な浸水被害をもたらした地域において浸水被害を少しでも軽減するために,被告が従来から進めている雨水排水対策とは別に,これとの整合性を図りながら策定された計画であって,本件豪雨前に行わなかったからといって,野並地区の排水路等の設置・管理に瑕疵があったというものではない。 (8) 争点(8)(野並ポンプ所の設置・管理の瑕疵と損害との因果関係)について(原告らの主張)本件水害は,野並ポンプ所のポンプの故障,郷下川からの溢水,藤川からの溢水等が相まって発生したものであり,野並ポンプ所のポンプの故障による排水不能が原告らの損害の発生や拡大の一因となったことは明らかである。 (被告の主張)ア本件燃料供給ポンプの停止によりディーゼルポンプが停止した時には,野並地区の浸水被害の件数は,既にピークを過ぎており,減少傾向にあったので,ディーゼルポンプの停止は浸水被害の拡大につながったとは考えられない。 すなわち,野並地区周辺では平成12年9月11日午後6時ころから家屋の浸水被害が始まっており,浸水被害を被った世帯数のピークは同月12日午前2時ころで,床上浸水に関しては午前4時ころとなっているが,一方で,野並ポンプ所の4台のディーゼルポンプを止めたのは,これらのピークを過ぎて浸水世帯数が減少し始める午前4時ころ(1台は午前2時ころ)であり,ディーゼルポンプの停止と浸水被害の拡大との間に因果関係は存在しない。 イまた,被告職員が同月12日午 のは,これらのピークを過ぎて浸水世帯数が減少し始める午前4時ころ(1台は午前2時ころ)であり,ディーゼルポンプの停止と浸水被害の拡大との間に因果関係は存在しない。 イまた,被告職員が同月12日午前10時ころ,野並ポンプ所において本件燃料供給ポンプの強制運転を試みた際,同ポンプは一旦起動しても,水の抵抗によりすぐに停止してしまい,強制運転を始めてから1時間くらいの間は,断続的にしか運転することができなかったことにかんがみると,仮に被告職員が上記よりも早い時点で同ポンプの強制運転を試みたとしても,水位が未だ高いため冷却用モーターのファンが水の抵抗を受け,同ポンプを起動させることはできなかったものと考えられるので,被告職員が重油を早期に供給しなかったことと浸水被害の拡大との間に因果関係は存在しない。 (9) 争点(9)(居住等に争いのある原告らの居住等の有無)について(原告らの主張)居住等に争いのある原告らも,平成12年9月11日当時,野並地区に居住し,あるいは店舗,事務所,工場等を保有していたものである。 (被告の主張)居住等に争いのある原告らの住民票の記載内容及び家屋課税台帳の内容は,別紙「居住等に争いのある原告一覧表」の各該当欄に記載のとおりであり,同原告らの野並地区における居住又は店舗等保有の事実は知らない。 (10) 争点(10)(損害額)について(原告らの主張)原告らが本件豪雨によって被った損害は,それぞれ別紙損害額一覧記載のとおりであるが,本訴においては,以下のような基準により,1人当たり110万円を上限として損害賠償を請求するものである。 ア財産的損害(ア) 建物修繕費用(建替の場合は建築費の一定の割合)(イ) 自動車中古車の推定査定価額(修理の場合は修理費)(ウ) 家電製品,家 るものである。 ア財産的損害(ア) 建物修繕費用(建替の場合は建築費の一定の割合)(イ) 自動車中古車の推定査定価額(修理の場合は修理費)(ウ) 家電製品,家具,衣類同程度の製品の再購入価格(エ) 機械等の重要な動産現実の損害額イ慰謝料(自然人たる原告らに限り請求する)(ア)原告らのうち何人かは,短時間に濁流が家の天井近くまで及び,生命の危険にさらされながら濁流の中を逃げ延びた。本件豪雨の間,被告は全く避難勧告を出さなかったため,原告らは,何らの事前情報もなしに浸水の被害を被り,浸水が増えるのか減るのか全く情報が得られないまま,大きな不安や恐怖感を持たされた。原告らは,眠る場所がなかったり,寝具や衣類がなかったり,あるいは寒さや不安感や悪臭などから,約3日間睡眠をほとんどとることができず,食事,着替え等ができなかった。本件豪雨後に原告らの居宅,店舗等には,多量の汚泥や悪臭等が残留した。 (イ) 以上のような事情によって,原告らは多大な精神的苦痛を被ったものであり,それに対する慰謝料としては,各50万円が相当である。 ウ原告らは,上記ア,イの損害額合計のうち,1人当たり100万円を上限として,損害賠償を請求するものである。 エ弁護士費用原告らが委任した訴訟代理人弁護士に対する弁護士費用は,原告1人当り10万円(ただし,原告Dについては9万6517円)が相当である。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実関係(争点(1)〔本件水害発生の機序〕を含む)について後掲各証拠及び弁論の全趣旨に前掲争いのない事実等を総合すれば,次の各事実が認められる。 (1) 野並地区周辺の自然条件及び社会的条件ア開発経過野並地区及びその隣接区域は,従前は低湿な田園地帯であ 掲各証拠及び弁論の全趣旨に前掲争いのない事実等を総合すれば,次の各事実が認められる。 (1) 野並地区周辺の自然条件及び社会的条件ア開発経過野並地区及びその隣接区域は,従前は低湿な田園地帯であったところ,郷下川流域の約半分は相生山緑地として都市計画決定がされ開発が制限されているが,残る地域は土地区画整理事業によって宅地開発が進められ,昭和40年ころを境に一気に宅地化された。 野並地区は,従前は100戸足らずの農村であり,人口は1000人足らずであったが,昭和38年度から施行面積93.93ヘクタールにつき土地区画整理事業が開始され,野並,福池町,中坪町,井の森町,古川町の各町区が形成され,昭和49年ころには,人口約1万人となった(事業終了年度昭和51年)。 野並地区の近隣区域についても,昭和40年ころから区画整理により宅地開発がされ,昭和52年度からは,菅田地区においても50.46ヘクタールの地域が区画整理により宅地開発されて,菅田,保呂町,笹原町の各町区が形成された(事業終了年度平成元年)。(甲8,弁論の全趣旨)イ雨量名古屋市は,濃尾平野の南東端,丘陵地と沖積平野が境を接する地点に位置しており,おおむね北東から南西にかけて標高が低くなる,なだらかな勾配を持つ地形となっている。同市の年間降水量は1200ないし1800ミリ程度であり,その多くは6月から10月にかけて梅雨前線・雷・台風などによってもたらされ,市内の浸水被害の大半はこの時期に発生している。昭和36年から平成2年までの年間降水量の平均は1534.9ミリであり,同期間の月間降水量の平均は,以下のとおりである。(乙1,35)6月 217.9ミリ7月 212.5ミリ8月 145.1ミリ9月 211.0ミリ10月 の平均は,以下のとおりである。(乙1,35)6月 217.9ミリ7月 212.5ミリ8月 145.1ミリ9月 211.0ミリ10月 114.1ミリウ地形野並地区は,隣接する他地区より標高が低く,すり鉢状にくぼんだ地形となっているが,特に野並地区周辺部と他地区との標高の差は大きく,天白川及び藤川の堤防に接していない同地区の北東方向,東方向のうち,野並地区の北東方向では南天白中学校(別紙位置図2参照)の東付近から西に向かって,東方向では郷下川西岸から西に向かって,それぞれ急に標高が低くなった後,地区内で最も標高が低い井の森町付近に向かって,周辺部と比較して緩やかに傾斜している。 野並地区の東側には,郷下川と平行して第二環状線(中央分離帯がある)が南北に走り,同地区の南方には,藤川に沿うように東海通が東西に走り,両者が野並交差点において交差している。第二環状線は北から南に向かって,東海通は東から西に向かって,それぞれ標高が低くなっており,両線とも野並交差点付近で最も低くなった後,それぞれ南又は西に向かってわずかに高くなり,その後また低くなっている。ただし,第二環状線が藤川橋付近で野並交差点よりも1メートル以上標高が上がるのに対し,東海通は郷下橋付近で約20センチ上がるにすぎない。(甲15の1,検甲1,弁論の全趣旨)エ人口・産業平成12年国勢調査結果確定値によれば,野並地区を含む野並学区の平成12年当時の世帯数は4527世帯,人口は1万1359名であるが,平成7年国勢調査結果確定値による人口は1万1366名であり,この間人口がほとんど変化していないことから,野並地区は既に開発の完了した市街地域であるといえる。 平成12年国勢調査結果確定値によれば,野並学区世帯数のうち 確定値による人口は1万1366名であり,この間人口がほとんど変化していないことから,野並地区は既に開発の完了した市街地域であるといえる。 平成12年国勢調査結果確定値によれば,野並学区世帯数のうち,半数近くに当たる2144世帯が持家を有しており,全世帯に対する比率は約47.4%で,名古屋市平均の約44.8%を上回っている。 野並地区は,住宅のみならず,商店や小規模工場等が混在密集する地域であり,野並地区を含む野並学区についてみると,平成12年工業統計調査結果によれば,工業事業所数168か所,従業員数1581人,年間生産額約221億円,有形固定資産投資額約2億7000万円であって,平成14年商業統計調査結果によれば,商業事業所数は約200か所,従業員数約1500人,年間商品販売額約500億円である。(甲50の1~4)オ下水道の方式下水道の収集・排除には,汚水と雨水とを同じ管で流す合流式と,汚水と雨水を別々の管で流す分流式とがあるが,野並地区,郷下川流域及び藤川流域においては,分流式が採用されており,雨水については,道路の側方に布設されている側溝(U形側溝)に集水され,雨水桝を通って道路の地下に埋設されている雨水管を流下し,最終的に河川へ直接又はポンプ施設を介して強制的に排水することが予定されている。そして,上記の区域のうち,野並地区は,上記ウ記載のようなすり鉢状の窪地であるため,河川への自然排水を行うことができず,ポンプにより雨水を強制排水するほかはない地域である。 (乙2,弁論の全趣旨)(2) 平成3年豪雨以前の水害ア野並地区は,土地区画整理事業完了以前から,10年に1度は水害が起きると言われていた地域であり,同事業による開発が始まった後も,昭和45年7月30日の名古屋東南部局地豪雨,昭和46年8月30,31日の台風23号, 区画整理事業完了以前から,10年に1度は水害が起きると言われていた地域であり,同事業による開発が始まった後も,昭和45年7月30日の名古屋東南部局地豪雨,昭和46年8月30,31日の台風23号,昭和58年9月28日の秋雨前線と温帯低気圧化した台風10号が一体化した集中豪雨,平成3年9月19日の平成3年豪雨により,それぞれ浸水被害を受けるなど,ほぼ10年に1度の割合で大規模な浸水被害が発生していた。特に,昭和58年9月28日の豪雨の際には,郷下川の開渠部分が全域にわたり溢水し,郷下川西岸から雨水が道路沿いに低地部へと流下した結果,井の森町においては23戸,中坪町においては1戸,野並二丁目においては13戸の床下浸水被害が生じた。(甲8,乙1,30)イ名古屋市においては,昭和52年9月8日から昭和58年9月28日までの間に,主な浸水被害は7回生じているが,そのうち野並地区全体では2,3回,同地区の一部では4回以上にわたり,浸水被害が生じている(ただし,同様に4回以上の浸水被害を受けている地域は名古屋市内で数十か所存在する)。 (乙1)ウこのように,野並地区は,名古屋市の中でも浸水被害の多い地域の一つであった。また,上記アの各水害のうち,天白川流域で堤防の決壊が発生したのは昭和46年のみであり,他はいずれも内水排水不良に起因する浸水であって,内水氾濫が多いのが特徴である。 もっとも,昭和60年7月18日,被告上下水道局が野並地区の住人に聞き取り調査を行ったところ,年に1,2回は2ないし3時間にわたる道路冠水があるが,梅雨の長雨,雷雨程度では浸水被害はないとのことであった。(甲24,乙30)(3) 平成3年豪雨以前の河川改修等ア名古屋地区の,1時間当たりの確率年別降雨量は,以下のとおりである。 (乙1,52の1)(確率年) ( 被害はないとのことであった。(甲24,乙30)(3) 平成3年豪雨以前の河川改修等ア名古屋地区の,1時間当たりの確率年別降雨量は,以下のとおりである。 (乙1,52の1)(確率年) (降雨量)100年 98ミリ50年 86ミリ30年 76ミリ10年 58ミリ5年 49ミリイ藤川流域については,昭和35年ころから土地区画整理事業など大規模な宅地開発が盛んに進められてきた結果,住宅地として市街化が進展し,準用河川藤川は,土地区画整理事業に伴い,昭和58年3月までには,全区間について,コンクリート護岸あるいは3面張河道とする整備,改修が行われた。 また,二級河川藤川については,昭和45年度に都市小河川改修事業によって改修が行われ,未改修の天白川合流点付近を除いては,50年確率相当の規模で改修が完了したが,未改修区間については,合流先である天白川の改修に合わせて工事を実施することとされた。(甲34の3)一方,郷下川については,野並土地区画整理組合による土地区画整理事業に合わせ,昭和49年10月までに,3335万円をかけて鉄筋コンクリート開渠水路に改築された。(甲8)ウ被告は,昭和54年6月,河川,下水道等の治水施設整備計画の総合調整を行い,全市的な視野に立った統一的な整備計画として,「名古屋市総合排水計画」を策定した。(乙1)エ準用河川藤川の計画(甲34の3)(ア) 被告は,藤川流域については,上記イ記載の改修に加え,戸笠池及び螺貝池を雨水貯留池として整備し,下水管渠の整備も行ってきたものの,全市的な整備計画の基準と比較すると流下能力は十分でなく,5年確率相当の降雨に対しては流下能力が不足しており,しばしば浸水被害の発生があるとの認識のもとに,昭和58年3月,同河 も行ってきたものの,全市的な整備計画の基準と比較すると流下能力は十分でなく,5年確率相当の降雨に対しては流下能力が不足しており,しばしば浸水被害の発生があるとの認識のもとに,昭和58年3月,同河川の流下能力の解消を図るべく,鳴子池を雨水調整池として改修する計画を策定し,これら貯留池群の洪水調節効果を加味した同河川の全体計画を策定することとした。 (イ)具体的には,準用河川藤川は,堤防高の不足する一部の区間を除いては,戸笠池及び螺貝池の洪水調節効果を活用することによって5年確率相当の整備が完了しているとされているが,①現行の計画高水流量は,合理式で求められているものの,洪水到達時間1時間未満は1時間として扱うことを前提として計算されているため,洪水到達時間が30ないし40分程度と短い藤川にあっては,実際には5年確率相当よりもかなり低い整備水準にすぎないと評価されること,一方,②現況流下能力は余裕高を60センチ考慮して評価されているが,準用河川区間は,全川埋込河道とみなせるため,余裕高は30センチで十分と考えられるため,全体計画よりも大きく評価して差し支えないと判断されること,③戸笠池及び螺貝池の洪水調節効果についても,時間的な評価(ピークを遅れさせる効果)がされていないため,実際の効果より小さく評価されていると考えられることを理由として,同河川の流域をいくつかの排水区に分割し,おのおのの排水区から河道への到達時間及び河道内の流下時間を考慮して,流出量を求め直し,現況流下能力を余裕高30センチとして再評価し,貯留池群の洪水調節効果についても,時間的な評価を取り入れた上での評価を行うこととなった。 (ウ) 改修内容は,以下のとおりである。 a 規模としては,①流域の都市化が進み,資産の増大も著しいため,なるべく大きな計画規模とすること も,時間的な評価を取り入れた上での評価を行うこととなった。 (ウ) 改修内容は,以下のとおりである。 a 規模としては,①流域の都市化が進み,資産の増大も著しいため,なるべく大きな計画規模とすることが望ましいこと,②河道の現況流下能力が比較的大きいこと,③貯留池群の洪水調節効果がかなり期待できること等を理由として,準用河川藤川の計画規模は,現行計画の5年確率相当より1ランク上げた10年確率相当とし,計画確率年の降雨強度式を用いて作成した中央集中型24時間連続降雨を計画対象降雨とする。 b 河道状況から判断して藤川自体の改修は困難であるため,鳴子池の池掘下げ,洪水吐改良を行い,同池を新たに雨水貯留池として整備し,既に整備の完了している戸笠池及び螺貝池とともに,一連の貯留池群としてその洪水調節効果を活用することとして,基本的には河道の再整備は行わない方針とする。 また,堤防高の不足する一部区間の河道については,溢水防止のためにパラペットの設置を計画する。 上記計画案に対する10年確率降雨時の,準用藤川の流量及び計画高水流配分は,以下のとおりである。 藤川橋上流端からの距離計画流出量基本高水流量(キロメートル) (立方メートル/秒) (同)1.795~2.293 81~1.795 330.480~1 350~0.480 45c なお,昭和58年の時点で,鳴子池は,周辺の開発に伴ってその一部が埋め立てられ,法面の残る西側を除いては,コンクリート直擁壁あるいはコンクリートブロック積護岸で整備されており,上記見直し計画はその点を前提としている。 また,上記見直し 辺の開発に伴ってその一部が埋め立てられ,法面の残る西側を除いては,コンクリート直擁壁あるいはコンクリートブロック積護岸で整備されており,上記見直し計画はその点を前提としている。 また,上記見直しの際,四郎曽池については,流域の下流部に位置し,池の規模も比較的小さいため,藤川の全体計画上はその効果を考慮しないこととされていた。 オ名古屋市総合排水計画(乙1,乙52の1,2,証人E(ア) 被告は,昭和63年10月,名古屋市総合排水計画において当初設定した計画ベースに遅れが生じてきたこと,市街化の進展に伴い浸透域の減少や流出時間の短縮等により雨水流出量が増大したこと,昭和58年9月26日から28日にかけて名古屋市を襲った集中豪雨により死者が発生するなどしたことから,同計画の見直しを行い,治水行政の指針とすることとした。 (以下「名古屋市総合排水計画」という場合には,上記見直し後のものをいう)同計画の目標は,1時間50ミリの降雨に対処し得る規模の治水施設を昭和75年度を目標に整備すること,さらに重要な河川については,河川ごとの流域特性に応じて必要となる安全度の確保に向け,原則として1時間60ないし80ミリ程度の降雨に対処し得る規模の施設の整備を進めることにあった。 (イ) 河川について名古屋市総合排水計画における河川改修の計画及び整備の具体的計画については,以下のとおりであった。 a 一級河川(16河川)及び二級河川(13河川)のうち,堀川・新堀川・山崎川・扇川など河川法に基づいて市長が河川改修事業を実施できる都市小河川(14河川)については,地域排水の根幹的治水施設としての重要性にかんがみ,基本的には30ないし50年に1回程度生起する降雨(1時間80ミリ程度)に対処できる規模の計画とするが,財政能力・整備の緊急度・経済効果等を勘案し 地域排水の根幹的治水施設としての重要性にかんがみ,基本的には30ないし50年に1回程度生起する降雨(1時間80ミリ程度)に対処できる規模の計画とするが,財政能力・整備の緊急度・経済効果等を勘案して,暫定的に1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画を策定し,当面の整備をはかるものとする。 b 上記の都市小河川を除く一級河川及び二級河川(15河川)については,国あるいは愛知県が改修計画を策定し,整備を実施しているが,このうち,建設大臣管理の庄内川及び矢田川下流部については,破堤時に未曾有の災害が予想されるため,200年確率洪水に対処できる規模の計画とする。 c 矢田川上流部・天白川など愛知県知事管理河川は,河川の重要度に応じて30ないし150年確率規模の計画とするが,大部分の河川については,整備の緊急度,水系全体の水理調整などを勘案して,暫定的に5ないし10年確率規模の計画が策定され,当面の整備がはかられている。 d 準用河川(指定予定の3河川を含む29河川)については,原則として10年に1回程度生起する降雨(1時間60ミリ程度)に対処できる規模の計画とするが,財政能力・整備の緊急度・合流先河川との整合性等を勘案して,暫定的に1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画を策定し,当面の整備をはかるものとする。 e 普通河川(22河川)については,1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画とする。 (ウ) 下水道について流域内の下水道整備は,1時間50ミリの降雨に対処できる規模の計画とし,公共下水道事業,都市下水路事業等により,下水管きょ・ポンプ所などの整備をはかることとされた。 (エ) 事業費について整備計画の実施に当たっては,昭和62年度以降,河川改修に関して当面の整備目標を達成するために,約640億円の事業費を要し,最終の整備目標 などの整備をはかることとされた。 (エ) 事業費について整備計画の実施に当たっては,昭和62年度以降,河川改修に関して当面の整備目標を達成するために,約640億円の事業費を要し,最終の整備目標を達成するまでには,さらに3800億円,合計約4440億円の事業費が必要であるとされた。 一方,下水道整備(公共下水道,都市下水路等)については,当面の整備目標を達成するために,約3330億円の事業費が必要であり,その他河川改修費に含まれていないため池など雨水貯留施設の整備,丘陵地雨水対策に約70億円の事業費が必要であるとされた。 (オ) 野並地区について野並地区は,名古屋市総合排水計画においても浸水の多い区域として把握され,同地区を含む天白川上流域については,「流域の開発に伴って,藤川・繁盛川などの河川改修,大根池・細口池・螺貝池など雨水貯留施設の整備および,下水管きょ,野並・菅田ポンプ所などの整備を進めてきた結果,浸水被害はかなり軽減してきた。しかしながら,天白川の洪水時の水位が高く,またそれに対する対策が不十分であるため,天白区井の森町,中坪町など天白川沿いの低平地を中心に,浸水被害がなお発生している現状である。したがって,下水道幹線管きょ,ポンプ所の増強など治水対策を進めると同時に,抜本的解消をはかるため,天白川改修を強力に推進するよう関係機関に働きかけていく必要がある。また,流域内には雨水調整施設として整備したものの他にも,荒池など大規模なため池があり,相当の洪水調節効果が期待できるため,保全につとめるとともに,治水施設として整備をはかる必要がある。」とされている。 (カ) 準用河川藤川及び郷下川について名古屋市総合排水計画において,準用河川藤川については10年に1度の降雨に対応し得る規模の改修が目標であり,計画高水流量は,一次整 必要がある。」とされている。 (カ) 準用河川藤川及び郷下川について名古屋市総合排水計画において,準用河川藤川については10年に1度の降雨に対応し得る規模の改修が目標であり,計画高水流量は,一次整備目標46立方メートル/秒,二次整備目標84立方メートル/秒であるが,既に改修済みであり,戸笠池,螺貝池及び鳴子池で洪水調節を行うこととなった。なお,四郎曽池については,同排水計画の中には組み込まれていない。 一方,郷下川については,名古屋市総合排水計画においては,5年に1度の降雨に対応し得る規模の改修が目標であり,計画高水流量23立方メートル/秒とされた。また,逆流防止水門の新設が計画されたが,これは天白川が改修途上であることから,天白川の異常出水の際に,天白川又は藤川の水が逆流しないように設けることが予定されたものであった。 カため池(甲34の4,弁論の全趣旨)藤川の流域に存在する戸笠池,鳴子池,螺貝池及び四郎曽池のうち,鳴子池については,民間所有地であった池の北側部分は,昭和41,42年に被告交通局が用地買収して,この部分を埋め立てて市営南相生荘と同交通局野並営業所を建設し,農業用ため池であった南側部分は,昭和58年度に改修工事が始まる前に土地区画整理事業や名古屋市の道路築造によって4割ほどが埋め立てられていた。四郎曽池については,被告が,昭和55年度からため池整備事業によって改修に着手し,約8900万円の事業費を投入して,放流施設,護岸,高水敷等の整備を行い,昭和56年度に事業を完了しており,これにより放流施設,護岸,高水敷の整備等を行った。 (4) 平成3年豪雨ア平成3年9月18日,台風18号の接近とそれに伴う本州南岸沿いに停滞していた秋雨前線の活発化により,東海地方には未明から強い雨が降り続き,特に同日午前5時から7時まで た。 (4) 平成3年豪雨ア平成3年9月18日,台風18号の接近とそれに伴う本州南岸沿いに停滞していた秋雨前線の活発化により,東海地方には未明から強い雨が降り続き,特に同日午前5時から7時までの2時間に100ミリ近い集中豪雨が観測された。 その結果,名古屋市内の各地で崖崩れ,堤防崩壊,浸水などの大きな被害が生じた。 同日及び翌19日の名古屋市雨量観測所における雨量データ(1時間当たりの降雨量)は,別紙雨量日報(平成3年豪雨)記載のとおりである。同月19日の具体的な総降雨量,最大1時間降雨量は,それぞれ以下のとおりであり,名古屋地方気象台(名古屋市千種区日和町2の18所在。明治23年7月,愛知県名古屋測候所として開設)においては,統計を開始した明治24年以降,明治29年9月9日の240.1ミリに次ぐ,観測史上2番目の日降雨量を観測した。 総降雨量 231.5ミリ(天白土木事務所)247.5ミリ(緑土木事務所)217.5ミリ(名古屋地方気象台)最大1時間降雨量 52.0ミリ(天白土木事務所)62.5ミリ(緑土木事務所)また,建設工事中であった野並駅の工事現場事務所(天白区野並二丁目363番地所在)及び旧野並ポンプ所に設置された雨量計が平成3年9月19日午前0時から10時にかけて観測した雨量は,以下のとおりである。(甲18,乙22の2)工事現場事務所旧野並ポンプ所午前0~1時 4ミリ 4ミリ1~2時 5ミリ 7ミリ2~3時 16ミリ 15ミリ3~4時 14ミリ 14ミリ4~5時 5ミリ 7ミリ2~3時 16ミリ 15ミリ3~4時 14ミリ 14ミリ4~5時 20ミリ 26ミリ5~6時 50ミリ 40ミリ6~7時 50ミリ 57ミリ7~8時 21ミリ 17ミリ8~9時 12ミリ 14ミリ9~10時 16ミリ 5ミリ合計  208ミリ 199ミリイ平成3年豪雨時点において,野並地区付近の天白川の堤防高は,同地区付近の藤川及び郷下川の堤防高よりも高かったため,平成3年豪雨による天白川の水位上昇に伴い,藤川及び郷下川の流水機能が抑制され,両河川の水位が上昇し,ともに溢水した。 また,野並交差点より東の区域については,東海通の北に丘陵地が隣接し,住宅地が密集する立地条件にあったが,同丘陵地及び東海通より雨水が流下し,野並交差点に流入した。同交差点における主要排水施設として藤川へ放流される径700ミリの雨水管が第二環状線下に布設されているが,放流先である藤川そのものの水位上昇に伴って,排水能力が阻害された。 郷下川については,当時架設中の水路橋の天端等から大量に溢水し,雨水が野並交差点付近の野並駅(工事中)開口部から地下鉄坑内に流入した。 その結果,約16万トンの雨水が工事中の地下鉄坑内に流入したほか,野並交差点には雨水が集中し,古川町交差点(別紙位置図2参照)付近では地上70ないし80センチまで冠水するなどした。(甲6の3,甲18,20,乙5の3,乙50,乙52の1,2,証 内に流入したほか,野並交差点には雨水が集中し,古川町交差点(別紙位置図2参照)付近では地上70ないし80センチまで冠水するなどした。(甲6の3,甲18,20,乙5の3,乙50,乙52の1,2,証人E)ウ野並地区においても,標高が低い地域に雨水が集まり,旧野並ポンプ所(現在のポンプ所の約150メートル南)の施設にSP16.94メートル(周辺道路から74センチ)まで浸水し,電気系統の機器が故障したため,4台すべての雨水ポンプが運転不能となった。(乙50,51,証人F,同G)エ名古屋市全体での,平成3年豪雨による被害は,北区,緑区,天白区を中心として,床上浸水1955世帯,床下浸水6731世帯であり,天白川流域では,野並地区のほか,扇川の溢水等により扇川流域にも浸水被害が生じた。(甲23の2,乙52の1,証人E)オ一方,平成3年豪雨による野並地区の住宅等の被害は,以下のとおりである。(乙33)井の森町床上浸水90世帯床下浸水2世帯会社・商店工場等の被災件数55件中坪町床上浸水45世帯床下浸水36世帯会社・商店工場等の被災件数37件野並一丁目床上浸水16世帯床下浸水67世帯会社・商店工場等の被災件数23件野並二丁目床上浸水106世帯床下浸水188世帯会社・商店工場等の被災件数63件福池一丁目床下浸水23世帯会社・商店等の被災件数6件福池二丁目床上浸水3世帯床下世帯1世帯会社・商店工場等の被災件数29件古川町床上浸水49世帯床下浸水2 の被災件数6件福池二丁目床上浸水3世帯床下世帯1世帯会社・商店工場等の被災件数29件古川町床上浸水49世帯床下浸水2世帯会社・商店工場等の被災件数24件(5) 平成3年豪雨以降本件豪雨までの水害平成3年豪雨以降本件豪雨までに野並地区において浸水被害が生じたとの記録はなく,平成6年9月15日から18日にかけて,名古屋気象台において総降水量197ミリ,最大1時間降水量53ミリ(同月17日),最大10分間降水量15ミリの大雨(以下「平成6年豪雨」という)が観測された際にも,名古屋市内各所で浸水被害が生じ,天白川下流域の南区三吉町,鳴尾二丁目,元鳴尾町などで浸水被害が発生したものの,野並地区においては浸水被害が生じていない。 (乙19,35)(6) 平成3年豪雨以降本件豪雨までの河川改修等ア天白川天白川については,愛知県が改修に着手しており,本件豪雨当時は,第1期区間として河口から約4キロメートル上流の大慶橋付近(別紙位置図参照)まで河床掘削を行い,狭窄部の改修を進めた上で,昭和63年度から,第2期計画として,平子橋(別紙位置図2参照)までの区間の拡幅と河床掘削を目的とした用地買収に着手していた。上記計画に基づく改修工事が完成した場合,天白川の水位は約3メートル下がる予定であった。(甲24,乙4,乙52の1,証人E)イ郷下川(ア) 平成3年豪雨の後,被告は,郷下川の溢水対策について検討したが,名古屋市総合排水計画において計画されていた逆流防止水門設置については,これを郷下川の河口(藤川合流点)に設けることにより,二級河川藤川からの逆流を確実に防止できるものの,郷下川流域の雨水は流下不能になるため,たまった雨水を排除するためにはポンプ 水門設置については,これを郷下川の河口(藤川合流点)に設けることにより,二級河川藤川からの逆流を確実に防止できるものの,郷下川流域の雨水は流下不能になるため,たまった雨水を排除するためにはポンプ所の設置が必要となるが,用地買収と設置工事のために多額の費用と長い時間を要することから,これを断念した。そこで,被告は,平成3年から平成10年にかけて行われた郷下川の環境整備事業と同時に,同河川の両岸にTP8.39メートルの高さまでパラペットを設置したが,これは,平成3年豪雨の後,郷下川に架けられた橋のうちの1か所において,TP8.19メートルの位置に溢水の痕跡らしき跡が残されていたため,これを平成3年豪雨の際の溢水の高さと考え,それに20センチを加えたものであった。(甲38,乙50,乙52の1,2,証人E,同F)(イ) 郷下川については,被告は,平成3年3月から7月にかけて,環境整備のため,郷下川河道にふたをかけて暗渠化するとともに,これにより同河川の断面が小さくなり,流下能力が低下するのを補うため,同河川の西側にバイパス川を造ることを住民に提案したが,道路が狭くなることを嫌う住民の反対等もあって,暗渠化,バイパス川築造のいずれも行われなかった。(甲58,乙44,46,50,乙52の1,証人E,同F)ウ天白川,藤川及び郷下川の堤防高平成3年豪雨以降,本件豪雨直前においても,藤川橋周辺における藤川の堤防高及び郷下川の堤防高は,天白川の堤防高よりも低い状態のままであった。(甲69)エため池(ア)名古屋市ため池環境保全協議会が平成5年3月発行した名古屋市ため池資料集においては,戸笠池,鳴子池,螺貝池及び四郎曽池は,治水施設として将来も必要なため池とされている。同時点における上記各ため池は,戸笠池が国と被告の所有であるほかは,すべ 発行した名古屋市ため池資料集においては,戸笠池,鳴子池,螺貝池及び四郎曽池は,治水施設として将来も必要なため池とされている。同時点における上記各ため池は,戸笠池が国と被告の所有であるほかは,すべて被告が所有しており,その面積及び流域面積は以下のとおりであった。(甲34の4,乙17)面積(平方キロメートル) 流域面積(ヘクタール)戸笠池 56,459 75.71鳴子池 11,598 222.05螺貝池 24,650 59.76四郎曽池 8,872 35.18(イ) 被告は,上記各ため池につき,以下のとおり浚渫工事を行い,ため池に通じる雨水管を整備している。(乙39~41)a 工事内容螺貝池浚渫工事契約年月日平成4年5月13日工事金額  669万5000円工期平成4年5月14日から同月30日までb 工事内容鳴子池浚渫工事契約年月日平成7年12月25日工事金額  2966万4000円工期平成7年12月26日から平成8年3月20日までc 工事内容久方第3号排水路(戸笠池への排水用水路)築造工事(a) 施行数量管布設(内径1000ミリ) 204メートル工事金額 9439万8150円工期平成10年7月29日から平成11年3月31日まで(b) 施行数量管布設(内径1650ミリ) 137メートル工事金額 8768万5500円工期平成11年3月3日から同年8月13日まで(c) 施行数量管布設(内径1100ミリ) 148メートル工事金額 5758万2000円 ル工事金額 8768万5500円工期平成11年3月3日から同年8月13日まで(c) 施行数量管布設(内径1100ミリ) 148メートル工事金額 5758万2000円工期平成11年8月5日から平成12年3月1日までオ礫間貯留施設被告は,学校などのグランドの下に礫間(砕石の隙間)を利用した貯留層を設けて,雨水の流出を抑制し,浸水被害の軽減を図る施設を設置していたが,野並地区周辺においては,少なくとも以下のとおり,礫間貯留施設を設けた。なお,南天白中学校は,郷下川流域の中でも,後記(7)ウ(ア)a記載の野並地区拡張流域に属し,高坂小学校は,戸笠池の北東に位置し,藤川流域に属するものである。(乙18)工事年度集水面積貯留量(ヘクタール)  (立方メートル)平成3年南天白中学校 1.08 804平成7年高坂小学校 0.79 562(7) 野並地区排水基本計画ア被告は,平成6年,野並地区については,従来の野並排水区(78.5ヘクタール)は,雨水排除のための主要な幹線及びポンプ施設が整備されているにもかかわらず,溢水した雨水が道路等の地表面を伝わり,低地区域に集まり浸水が頻繁に起こっている状況となっており,住民に及ぼす影響は大きく,下水道による整備水準の向上が求められているとの認識のもとに,天白川改修計画に伴い移転を迫られていた旧野並ポンプ所を絡めた雨水排除システムを検討し,野並地区の治水安全向上を目指した排水計画の見直し策定を行うこととして,野並地区排水基本計画を策定した。(乙4)イ上記計画においては,①下水道施設設計指針(昭和59年),②都市計画中央審議会の答申(昭和60年8月),③国土建 た排水計画の見直し策定を行うこととして,野並地区排水基本計画を策定した。(乙4)イ上記計画においては,①下水道施設設計指針(昭和59年),②都市計画中央審議会の答申(昭和60年8月),③国土建設の長期構想(昭和60年8月)を踏まえて,被告においても雨水整備方針として,長期計画レベルの達成に向けて5年確率の計画規模を10年確率の計画規模に整備水準を上げる方向にあることから,野並地区の雨水整備の方針もこれに従うものとするが,放流先河川の状況(天白川の現況及び改修計画)を考え,既定計画面積78.5ヘクタールにおいて,10年確率規模へ格上げした場合は,貯留施設等で対応することとされた。(乙4)ウ被告は,平成3年豪雨を教訓として,旧野並ポンプ所を移築するに当たっては,新ポンプ所が担う排水区域の設定の見直しを行い,その機能を十分に発揮できるような施設造りを検討した。移転先としては,排水系統の大幅な変更は新たな管渠工事が必要となり,不経済であるため,現況の排水系統の大幅な変更を伴わないこと,必要なポンプ所用地が確保できること,放流先である天白川に近いこと,新たなポンプ所用地周辺に影響が少ないことといった条件を満たす位置として,現在の位置に定めた。野並ポンプ所の詳細は,以下のとおりである。(乙4,47,50,51,証人F,同G)(ア) 本件雨水ポンプの能力本件雨水ポンプの能力は,以下のとおり,既定計画区域78.5ヘクタール,5年確率(1時間降雨50ミリ),流出係数0.6の場合における合理式によって得た雨水流出量に対応できるものとして,8.55立方メートル/秒以上とされた。 合理式 Q=1/360×C×I×A=8.55立方メートル/秒A(流域面積)=78.5ヘクタールC(流出係数)=0.6I(到達時間内の平均降雨強度)=430/(T+0 ートル/秒以上とされた。 合理式 Q=1/360×C×I×A=8.55立方メートル/秒A(流域面積)=78.5ヘクタールC(流出係数)=0.6I(到達時間内の平均降雨強度)=430/(T+0.86)(ミリ/時間)=430/(32.7+0.86)=65.4(ミリ/時間)a 流域面積従前,野並ポンプ所の雨水の集水区域は78.5ヘクタールであったが,郷下川流域のうち,暗渠となっている区域35.5ヘクタールについては,平成3年豪雨のような豪雨があった場合には,雨水の一部が郷下川に排除されず,地形等からみて,道路等の地表面を流れて従来の野並排水区に流入することから,従来の野並排水区にこの区域の全域を加えることとなった。また,ほかにも,郷下川流域のうち別紙排水区図記載の落ち水区域60ヘクタールについては,時間雨量50ミリ程度の豪雨があった場合には,雨水が道路等の地表面を流れ,上記の郷下川が暗渠となっている区域に流入した上で,さらに野並地区に流入する可能性が想定されたため,地形の傾斜,形状等を考慮し,一方で郷下川への自然流下も見込んで,同区域の3割相当である18ヘクタールを野並ポンプ所の排水区域に加えた。落ち水区域へ降った雨水が流出する割合については,全国的な基準は存在しないものの,被告の下水道計画において丘陵地から落ち水を想定する場合にはその3割を見込むという先例がいくつかあったので,3割としたものであった。 上記のように,野並排水区の面積を見直した結果,同排水区の排水面積は114(=78.5+35.5)ヘクタールとなり,さらに落ち水区域として18ヘクタールを想定することとなったが,排水面積を増やしたことによる雨水流出量の増加に対しては,放流先の河川の能力等を考慮して,ポンプ所内に雨水調整池を併設することで対応することとなった。雨水 て18ヘクタールを想定することとなったが,排水面積を増やしたことによる雨水流出量の増加に対しては,放流先の河川の能力等を考慮して,ポンプ所内に雨水調整池を併設することで対応することとなった。雨水調整池の貯留量については,計画降雨は5年確率降雨を使用してハイドログラフ(横軸に時間,縦軸に流量をとり,懸案地点に到達してくる雨水流出量の時間的変化を表すグラフ)を作成し,ポンプ排水能力を差し引いてそれを越える分を積算した結果,5400立方メートルとした。 b 流出係数流出係数の算定方法は,野並地区内から,住居地域と準工業地域のモデル地区を3か所ずつ抽出し,その中で屋根・道路・空地の工種別面積の比率により,住居地域と準工業地域の流出係数を算出した上,野並地区内の住居地域,準工業地域,公園・緑地の比率に合わせて平均流出係数を求めたところ,0.624であったことから,端数を切り捨てた0. 6を流出係数とした。 その際使用した工種別基礎流出係数については,標準値として,屋根0.85~0.95,道路0.8~0.9,間地0.1~0.3とする文献が存在したことから,その中間値である屋根0.9,道路0.85,空地0.25を使用した。 c 到達時間内の平均降雨強度野並ポンプ所の雨水ポンプの排水能力を計算する際には,5年確率(時間雨量50ミリ)の降雨に対処するため,5年確率の降雨強度式=430/(√t+0.86)の「 t 」に野並ポンプ所の流達時間(排水区の最も遠い地点への降雨が下水管を通じて下流部にあるポンプ所まで流下するのに要する時間)である32.7分を代入し,65.4ミリ/時間と算出した。 (イ) 本件燃料供給ポンプ野並ポンプ所に重油供給タンクを設置するに当たっては,用地が狭いことから,屋外タンクにした場合に必要となる周辺の住居等との一定の保安距離及 65.4ミリ/時間と算出した。 (イ) 本件燃料供給ポンプ野並ポンプ所に重油供給タンクを設置するに当たっては,用地が狭いことから,屋外タンクにした場合に必要となる周辺の住居等との一定の保安距離及びタンク地帯に安全のため設ける必要のある保有空地(消防法2条7項,危険物の規制に関する政令11条1項1,2号)を確保することができず,地下にタンクを設置することになった。また,地下タンクから重油サービスタンクに重油をくみ上げるための本件燃料供給ポンプの水密化は行われなかったが,平成3年豪雨の際に旧野並ポンプ所に周辺道路面から74センチの冠水があったことから,その高さから約1メートル上方に設置された。なお,平成3年豪雨時に建設中であった野並駅に流入した推定約16万トンの雨水が仮に野並地区に流入した場合にどの程度浸水高に影響を与えるか等について,被告が検討したことはうかがえない。 本件燃料供給ポンプの容量である1000リットルの重油を使用する場合,ポンプの負荷によってエンジンの燃料消費量が違うので,一概には言えないが,おおよそ4台で1時間に200ないし250リットルを消費することから,1000リットルでは,約4時間の運転が可能であった。 (ウ) 本件空気口野並ポンプ所においては,河川の水位及び本件雨水ポンプからのくみ上げ量によって連絡井の水位が上下するが,そうしたときに,連絡井の空気が外気と出入りするため,また外気の気圧と同一に保つため,連絡井に80センチ四方の本件空気口3個が設けられた。本件空気口の場所を決めるに際して,被告は,天白川が計画高水位(SP21.262メートル)に達し,本件雨水ポンプが計画排水量を流しているときの,連絡井の計画上の高水位をSP21.611メートルと想定し,空気口の下端がそれよりもさらに約51センチ高いSP22.12 21.262メートル)に達し,本件雨水ポンプが計画排水量を流しているときの,連絡井の計画上の高水位をSP21.611メートルと想定し,空気口の下端がそれよりもさらに約51センチ高いSP22.12メートルの高さに来るように,本件空気口の高さを設計した。 (8) 本件豪雨ア名古屋市全般(ア) 名古屋地方気象台における,本件豪雨以前の日最大1時間降水量,日最大3時間降水量,日降水量,最大24時間降水量の最高記録(日最大1時間降水量及び日降水量については明治29年1月統計開始,最大24時間降水量については昭和46年1月統計開始)及び本件豪雨時の記録は,以下のとおりであり,本件豪雨時には,日最大1時間降水量の最大値を更新し,日降水量の最高記録を倍近く上回った上,平成12年9月11日午前0時から翌12日午後12時までの2日間に年降水量の3分の1を超える567ミリの降雨を観測した。(甲6の3,甲20,21,乙2,14)a 本件豪雨以前の記録日最大1時間降水量  92ミリ (大正8年7月18日)日最大3時間降水量  126ミリ日降水量 240.1ミリ(昭和29年9月9日)最大24時間降水量  277.5ミリ(昭和46年8月30日)b 本件豪雨日最大1時間降水量  97.0ミリ(平成12年9月11日午後6時6分~7時6分)日最大3時間降水量  214ミリ日降水量 428.0ミリ(同月11日)最大24時間降水量  534.5ミリ(同月11日午前5時~翌12日午前5時)(イ)名古屋市雨量観測所における雨量データでは,1時間当たりの降雨量は,別紙雨量日報(本件豪雨)記載のとおりであり,名古屋市の16区すべての観測所において日最大1時間降水量50ミリを超え,うち4観測所において100ミリを超えた。また,名古屋 ,1時間当たりの降雨量は,別紙雨量日報(本件豪雨)記載のとおりであり,名古屋市の16区すべての観測所において日最大1時間降水量50ミリを超え,うち4観測所において100ミリを超えた。また,名古屋市のみならず,南方に位置する東海市では同月11,12日の2日間総降水量589ミリ,東方に位置する豊田市では同じく413ミリを記録した。(乙14,35)(ウ) 野並地区を含む天白川流域が位置する名古屋市東部地区は,特に降雨が集中し,いずれも野並地区から約2ないし3キロメートルの地点に所在する緑土木事務所,天白土木事務所,瑞穂土木事務所(本件豪雨当時は瑞穂区田辺通三丁目44番地所在),南土木事務所(南区荒浜町五丁目10番地の1所在)において観測した最大降水量は,いずれも400ミリを超える日降水量(同月11日)を記録し,中でも緑土木事務所では500ミリに迫る日降水量を記録したほか,天白土木事務所を除く3事務所では,同月11日には100ミリ前後の最大1時間降水量を記録した。(甲69,乙35)(エ) 本件豪雨により,名古屋市内においては,同月11日午後11時,北区大我麻町において新地蔵川右岸が破堤し床上浸水の被害が発生し,翌12日午前3時30分ころには西区あし原町で新川左岸が破堤する等,市内各所で河川の破堤,浸水等が生じた。(乙35)(オ) 本件豪雨については,①降雨の強度が大きかったこと,②雨域が広範囲であったこと,③超過降雨が長時間継続したことが特徴としてあげられ,日最大1時間降水量97ミリは,おおむね100年に1回程度の確率降雨であるが,日降水量の428ミリ(名古屋地方気象台)については,500年あるいは1000年に1度の確率を超えるものであるとも言われている。(甲16,21)イ野並地区(ア) 降雨野並地区においては,野並ポンプ所に設 28ミリ(名古屋地方気象台)については,500年あるいは1000年に1度の確率を超えるものであるとも言われている。(甲16,21)イ野並地区(ア) 降雨野並地区においては,野並ポンプ所に設置された雨量計において,別紙「野並ポンプ所設置の雨量計による雨量」記載のとおりの雨量が確認された。(乙38の1~3)(イ) 雨水の流入a 天白川においては,同月11日午後8時10分ころから水位が計画高水位のTP8.66メートルを大幅に上回り始め,水位が計画高水位を7時間近く超えており,野並ポンプ所から天白川を超えた南西約300メートルの位置にある天白川水位観測所においては,同日午後9時20分ころ,最高水位TP10.19メートル(SP約21.6メートル)を記録し,藤川,郷下川の堤防高を超えて,天白川の水位が上昇した。(甲15の1,甲24,69,乙35)b 天白川の水位上昇により,天白川よりも堤防高が低い藤川から天白川への流下が阻害され,藤川の水位が上昇し,準用河川藤川については,堤防高最下点より溢水が始まり,東海通を経て野並交差点へと雨水が流出した。野並交差点には,ほかにも,東海通を西に流下して来た雨水,第二環状線を南に流下して来た雨水,相生山からの雨水が流入し,滞留したこれらの雨水が,同交差点付近で郷下橋方面へと流れ,さらに野並地区に流入した。(甲15の1,証人E,同H)c 上記bのような藤川の水位上昇により,郷下川から二級河川藤川への流下が阻害されたため,遅くとも同月11日午後7時40分ころまでには,郷下川も溢水し,その水が野並地区に流入したほか,同時刻ころまでには,郷下川の東側に位置する地区から,郷下川に架けられた複数の橋上を伝い,雨水が濁流となって野並地区に流入した。(甲10,証人E,同I)d 野並地区の北側に位置し,野並地 たほか,同時刻ころまでには,郷下川の東側に位置する地区から,郷下川に架けられた複数の橋上を伝い,雨水が濁流となって野並地区に流入した。(甲10,証人E,同I)d 野並地区の北側に位置し,野並地区よりも標高が高い菅田排水区からも,雨水が野並地区に流入した。(弁論の全趣旨)e 野並地区に流入した雨水の総量や流入経路別割合については,証拠上明らかでないものの,上記b~dの雨水に,同地区自体への降雨も加わり,同地区においては,同月11日午後6時ころから道路冠水,若干の時間をおいて床下浸水,午後7時ころには床上浸水が始まり,その後水位は急速に上昇し,地盤高が4メートルを下回る地域周辺では床上1.5メートル,深いところで2.0メートルを超える浸水被害が生じ,道路面SP16.2メートル(TP4.78メートル)にある野並ポンプ所では,2.4メートルの浸水となった。(乙35)(ウ) 被告のとった避難措置被告は,同月11日午後8時20分,野並地区に対する避難勧告発令を検討したが,二次災害発生のおそれを考慮し,発令しないこととした。しかし,その後同地区において浸水による救助要請が多発したため,被告は,同日午後10時16分ころ,救助のため,舟艇を含む消防隊を投入した。(乙35)(エ) 豪雨後の経過野並地区における浸水高は,同月12日午前2時ころにピークに達したが,その後完全に水が引いたのは同月13日の昼近くであり,場所によっては約40時間もの間浸水が継続することとなった。(甲6の4,5,甲10,44,乙5の4,5,乙16,35,原告J,同K,同L各本人)ウ野並ポンプ所(ア) ポンプの稼働状況等本件雨水ポンプは,ポンプ井の水位がSP10.9メートルから12.1メートルに上昇するに連れて,段階的に自動運転を開始するシステムになっていたが,本件 ウ野並ポンプ所(ア) ポンプの稼働状況等本件雨水ポンプは,ポンプ井の水位がSP10.9メートルから12.1メートルに上昇するに連れて,段階的に自動運転を開始するシステムになっていたが,本件豪雨時の野並ポンプ所の各ポンプの稼働状況等は,以下のとおりである。(甲6の2,4,乙35,51,証人G)a 同月11日午前11時59分電気ポンプ運転開始。 午後6時ころ降雨が強くなる。 午後6時10分ころ本件雨水ポンプ全台稼働。 b 同月12日午前1時40分内浜ポンプ所より,本件燃料供給ポンプの停止を確認。以後重油メインタンクから重油サービスタンクへの燃料の供給が不能となる。 午前1時59分運転時間を長くするため,ディーゼルポンプ1台につき,内浜ポンプ所より遠隔操作で停止。ポンプ室に設置した重油サービスタンクの残燃料を使用して残るディーゼルポンプ3台の運転を継続し,電気ポンプ1台との合計4台の運転になる。 午前3時41分重油サービスタンクの燃料の残量が低下し,内浜ポンプ所において低油面の表示がされたため,ディーゼルポンプ3台停止。電気ポンプ1台のみの運転となる。 午前8時27分ディーゼルポンプ1台を内浜ポンプ所からの遠隔操作により強制始動。電気ポンプと合わせて2台の運転となる。 午前10時ころ被告職員が野並ポンプ所に到着。本件燃料供給ポンプを稼働させ,またディーゼルポンプ3台を現場で手動運転させ,計5台の運転となる。 午後2時30分ころポリタンクに入れて野並ポンプ所に運び込んでいた重油を同ポンプ所構内に運び込む。 c 同月13日午前6時30分ころ道路冠水解消。 午前8時ころディーゼルポンプ1台停止,以降順次停止。 午前10時27分全台が停止。 でいた重油を同ポンプ所構内に運び込む。 c 同月13日午前6時30分ころ道路冠水解消。 午前8時ころディーゼルポンプ1台停止,以降順次停止。 午前10時27分全台が停止。 (イ) 被告職員のとった措置上記の本件燃料供給ポンプの停止は,内浜ポンプ所においては「故障」との表示がなされたため,被告職員らは同ポンプが故障したと思い込んだが,実際には同ポンプの設置位置を超えて冠水したことにより,同ポンプのモーターと一体になっているファンが水に浸かり,水の抵抗によりモーターの負荷が増加し,過負荷の保護装置が作動したためであった。 被告上下水道局においては,雨水ポンプ所については,数か所のポンプ所をグループ化し,専用回線による遠方監視制御装置を用い,グループのポンプ所すべてを一つのポンプ所(親局)で制御するというポンプ所の集中運転管理が行われており,親局に監視要員を配置する一方で,親局から制御を受けるポンプ所には,職員を配置していなかった。野並ポンプ所についても,その親局である内浜ポンプ所からの制御によるものであり,軽微な故障は内浜ポンプ所の遠方監視装置で復旧するものの,重大な故障が発生した場合には,内浜ポンプ所から職員が出向いて対応する必要があった。 そこで,被告職員は,最初はダンプカーで港区内の汚泥処理場の重油を運び込み,直接サービスタンクに供給しようとしたが,野並ポンプ所では付近の道路が冠水していたため,これを断念した。その後も道路冠水の状態が継続したため,最終的には,ポリタンクに詰めた重油をゴムボートで野並ポンプ所に運び込むことにしたが,被告のゴムボートはすべて救助のために使用していたため,民間の業者からゴムボートを賃借することにし,同月12日午前7時前後にポリタンクの手配,午前7時30分ころからゴムボートのレ 込むことにしたが,被告のゴムボートはすべて救助のために使用していたため,民間の業者からゴムボートを賃借することにし,同月12日午前7時前後にポリタンクの手配,午前7時30分ころからゴムボートのレンタル業者に連絡を行い,レンタル営業開始の午前8時ころになって,ゴムボートの手配に成功した。本件雨水ポンプの停止からボートやタンクの手配まで約3時間を要したのは,ダンプカーやタンクローリーの手配,他のポンプ所の問題を処理していたためであった。 このように重油補給のめどが立ったため,同月12日午前8時30分ころには内浜ポンプ所からの遠隔操作により,4台のディーゼルポンプのうち1台を運転再開したものの,残り3台については,野並ポンプ所に重油が到着する前にサービスタンクの重油がなくなってしまうと運転再開が困難になることから,運転を再開しなかった。被告職員は,午前9時30分ころ,野並ポンプ所周辺に到着した後,ゴムボートを使用して,午前10時ころ,同ポンプ所の屋外に設置された階段からポンプ所の2階に入った。その時点で,本件燃料供給ポンプは故障したのではなく,過負荷の保護装置が働き停止したことが判明したため,停止解除を行い,同ポンプの強制運転を試みたところ,断続的に稼働したため,サービスタンクへの重油供給に優先して本件燃料供給ポンプを稼働させて,ディーゼルポンプを稼働させることとした。なお,過負荷の保護装置を解除して運転することは,内浜ポンプ所からの遠隔操作によって行うことはできない。(乙3,51,証人G)(ウ) 本件空気口からの溢水連絡井の水位が本件空気口の下端よりも高くなったため,少なくとも同月11日午後9時ころから翌12日午前1時過ぎまでの間,上記空気口から野並地区への溢水が生じた。その具体的溢水量は証拠上不明であるが,本件豪雨後,被告職 気口の下端よりも高くなったため,少なくとも同月11日午後9時ころから翌12日午前1時過ぎまでの間,上記空気口から野並地区への溢水が生じた。その具体的溢水量は証拠上不明であるが,本件豪雨後,被告職員が試算したところ,別紙「天白川最高水位時における空気口からの溢水量の計算について」記載のとおり,空気口の溢水量が最大となった場合でも37.71立方メートル/分であった。(乙51,証人G,弁論の全趣旨)エ本件豪雨による被害(ア)本件豪雨による愛知県の被害は,死者7名,重軽傷者約100名,床上・床下浸水家屋は約6万6000世帯(うち床上浸水は約2万4000世帯),被害家屋・家庭用品被害額は約3400億円,事業所償却資産・在庫試算被害額は約3300億円,営業停止・停滞損失は約750億円にのぼった。(乙13,14,16)(イ) 名古屋市では,市内河川の3か所で破堤,天白川(天白区)を始め9区52か所で堤防欠壊,天白川(南区)を始め9区17か所で堤防越水が発生し,中小田井ポンプ所を始め6か所のポンプ所に被害が生じ,市の総面積326.35平方キロメートルの3分の1にも及ぶ約110平方キロメートルに浸水被害が生じ,道路の冠水は,野並地区のほか,新川左岸堤防破堤により西区中小田井地区,新地蔵川の越水により北区喜惣治地区付近を中心に,244.5キロメートルに及ぶなど,北区,西区,天白区を中心に広範囲の浸水被害が発生した。特に,名古屋市の西部を流れる一級河川庄内川では本件豪雨により急激に水位が上昇し,庄内川本川では,国道1号線の一色大橋の下流右岸で越水して浸水し,庄内川水系新川では,西区で左岸堤防が長さ約100メートルにわたり破堤した。また,各地で,崖崩れ,地滑り,土石流等の土砂災害が発生し,緑区鳴海町において歩行者1名が死亡した。その結果,名古 浸水し,庄内川水系新川では,西区で左岸堤防が長さ約100メートルにわたり破堤した。また,各地で,崖崩れ,地滑り,土石流等の土砂災害が発生し,緑区鳴海町において歩行者1名が死亡した。その結果,名古屋市においては,死者4名,重傷者13名,軽傷者34名,家屋の全壊4棟(4世帯),半壊98棟(114世帯),一部破損18棟(38世帯),床上浸水9818棟(1万1142世帯),床下浸水2万1852棟(2万3393世帯)の被害が生じた。(乙13,14,35)(ウ) 天白川の流域においても,野並地区,扇川周辺を中心に浸水被害が発生した。野並地区を含む野並学区では,浸水深が2メートルを超える世帯が多く発生し,中坪町において77歳の女性が,自宅の浸水に伴い急性心不全により死亡したほか,被告の調査によると,重傷者2名,住宅半壊11棟(15世帯。うち5世帯は井の森町,9世帯は野並一,二丁目),一部損壊2棟(2世帯),床上浸水878棟(1040世帯,2852人),床下浸水255棟(300世帯,783人)である一方,住家の床上浸水については,1311棟とする調査結果も存在する。(乙16,35)(エ) 平成3年豪雨,平成6年豪雨,本件豪雨の3回にわたり浸水被害を被った地域は,北区喜惣治一丁目,同二丁目,天白川下流域の南区三吉町,鳴尾一丁目,元鳴尾町等,北区及び南区を中心に複数箇所存在する。(乙19)(9) 本件豪雨後とられた措置ア被告は,本件豪雨後,浸水被害軽減のため,本件豪雨を検証し,緊急雨水整備基本計画を策定し,10年内の雨水整備計画を策定したが,そのうち,おおむね前半5年間の計画として,緊急雨水整備計画と称して全体事業費約860億円を投入し,その中で,野並地区について,緑政土木局において藤川,郷下川の河川改修及び管渠増強を行い,上下水道局において貯 おむね前半5年間の計画として,緊急雨水整備計画と称して全体事業費約860億円を投入し,その中で,野並地区について,緑政土木局において藤川,郷下川の河川改修及び管渠増強を行い,上下水道局において貯留管1か所(約3万2000立方メートル)を建設することとした。(甲16,25~27)イその後,平成13年度までに野並橋(天白川に架かる東海通の橋)の改築工事,郷下川について約1000メートルの間パラペットかさ上げ工事,藤川について約120メートルパラペットかさ上げ工事を行い,堤防最下点における堤防高を高くしたほか,野並地区雨水排水施設工事として管布設及び桝設置,平成14年度には,野並橋・平子橋の改築,道路整備,排水路築造工事(古川井の森第1号),排水路築造工事(野並第56号),中坪雨水幹線下水道築造工事,貯留管設置工事に着手し,新鳴海雨水幹線下水道築造工事として,野並二丁目から緑区浦里五丁目まで下水管を建設し,福池雨水幹線下水築造工事として,笹原町から野並二丁目付近に下水道を建設する工事を行っている。(甲28,甲40の1~7) 2 争点(2)(準用河川藤川の河川管理の瑕疵)について(1) 河川の設置・管理の瑕疵についてア国家賠償法2条1項の公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいう(最高裁判所昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1396頁参照)。 このような瑕疵の存否については,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的・個別的に判断すべきである(最高裁判所昭和53年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁参照)。 イところで,河川の管理については,道路その他の営造物の管理とは異なる特質及びそれに基づく諸 に判断すべきである(最高裁判所昭和53年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁参照)。 イところで,河川の管理については,道路その他の営造物の管理とは異なる特質及びそれに基づく諸制約が存するのであって,河川管理の瑕疵の存否の判断にあたっては,それらの点を考慮すべきものといわなければならない。すなわち,河川は,本来自然発生的な公共用物であつて,管理者による公用開始のための特別の行為を要することなく自然の状態において公共の用に供される物であるから,通常は当初から人工的に安全性を備えた物として設置され管理者の公用開始行為によって公共の用に供される道路その他の営造物とは性質を異にし,もともと洪水等の自然的原因による災害をもたらす危険性を内包しているものである。したがって,河川の管理は,道路の管理等とは異なり,本来的にかかる災害発生の危険性をはらむ河川を対象として開始されるのが通常であって,河川の通常備えるべき安全性の確保は,管理開始後において,予想される洪水等による災害に対処すべく,堤防の安全性を高め,河道を拡幅・掘削し,流路を整え,又は放水路,ダム,遊水池を設置するなどの治水事業を行うことによって達成されていくことが当初から予定されているものということができるのである。この治水事業は,もとより一朝一夕にして成るものではなく,しかも全国に多数存在する未改修河川及び改修の不十分な河川についてこれを実施するには莫大な費用を必要とするものであるから,結局,原則として,議会が国民生活上の他の諸要求との調整を図りつつその配分を決定する予算のもとで,各河川につき過去に発生した水害の規模,頻度,発生原因,被害の性質等のほか,降雨状況,流域の自然的条件及び開発その他土地利用の状況,各河川の安全度の均衡等の諸事情を総合勘案し,それぞれの河 もとで,各河川につき過去に発生した水害の規模,頻度,発生原因,被害の性質等のほか,降雨状況,流域の自然的条件及び開発その他土地利用の状況,各河川の安全度の均衡等の諸事情を総合勘案し,それぞれの河川についての改修等の必要性・緊急性を比較しつつ,その程度の高いものから逐次これを実施していくほかはない。また,その実施にあたっては,当該河川の河道及び流域全体について改修等のための調査・検討を経て計画を立て,緊急に改修を要する箇所から段階的に,また,原則として下流から上流に向けて行うことを要するなどの技術的な制約もあり,さらに,流域の開発等による雨水の流出機構の変化,地盤沈下,低湿地域の宅地化及び地価の高騰等による治水用地の取得難その他の社会的制約を伴うことも看過することはできない。しかも,河川の管理においては,道路の管理における危険な区間の一時閉鎖等のような簡易,臨機的な危険回避の手段を採ることもできないのである。河川の管理には,以上のような諸制約が内在するため,すべての河川について通常予測し,かつ,回避しうるあらゆる水害を未然に防止するに足りる治水施設を完備するには,相応の期間を必要とし,未改修河川又は改修の不十分な河川の安全性としては,右諸制約のもとで一般に施行されてきた治水事業による河川の改修,整備の過程に対応するいわば過渡的な安全性をもって足りるものとせざるをえないのであって,当初から通常予測される災害に対応する安全性を備えたものとして設置され公用開始される道路その他の営造物の管理の場合とは,その管理の瑕疵の有無についての判断の基準もおのずから異なったものとならざるをえないのである。 したがって,河川の管理についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件, ずから異なったものとならざるをえないのである。 したがって,河川の管理についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し,河川管理における財政的,技術的及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである。(最高裁判所昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照)(2) 本件豪雨時の準用河川藤川の改修の遅れについてア野並地区における水害発生の機序平成3年豪雨及び本件豪雨当時の野並地区においては,上記1(4)イ,同(8)イ(イ)記載のとおり,天白川の水位が高く,かつ天白川の堤防高よりも藤川及び郷下川の堤防高が低かったため,豪雨による天白川の水位の上昇に伴い,藤川及び郷下川の流下が阻害されて溢水が生じた。また,野並地区は周辺地域と比較して標高が低いため,藤川流域,郷下川流域等の周辺地域の雨水が,排出先である藤川及び郷下川の溢水もあって,東海通,第二環状線,野並交差点等を経て同地区に流入した。その上,同地区に流入した雨水は野並ポンプ所を通じて天白川に排出されることが予定されていたが,同ポンプ所が天白川と藤川の合流点よりも上流にあることから,同ポンプ所を通じた雨水の排出は,同合流点付近を含めた天白川の水位上昇の一因となり,これが原因で藤川,郷下川の流下阻害がさらに助長されるという悪循環が生じたものであった。(甲69)イそして,以下の理由から,被告は,遅くとも平成3年豪雨以降には,同豪雨のような,計画降雨を上回る,特に多量の降雨の際には,野並地区においては,天白川の水位上昇に伴う藤川の流下阻害,ひいては 9)イそして,以下の理由から,被告は,遅くとも平成3年豪雨以降には,同豪雨のような,計画降雨を上回る,特に多量の降雨の際には,野並地区においては,天白川の水位上昇に伴う藤川の流下阻害,ひいては郷下川の流下阻害が起き,これにより藤川及び郷下川の溢水が起こる可能性があること,特に郷下川については溢水の記録が複数存在しており,藤川以上に溢水の危険性が高いこと,周辺地区からの東海通,野並交差点等を通じた雨水流入によって,少なくとも,郷下川流域・藤川流域の雨水については,野並地区に集中するおそれがあることについて認識していたか,あるいは認識し得たものと認められる。 (ア) 被告は,昭和63年度の名古屋市総合排水計画見直しの際に,郷下川に逆流防止水門の設置を検討しているが,これは,天白川が改修途上にあることから,天白川の異常出水の際に,天白川又は藤川の水が郷下川へ逆流しないように設けることが検討されたものと考えられる。 (イ) 平成3年豪雨の際,天白川の水位が上昇したため,その支流である藤川及び郷下川については流水機能が抑えられ,水位が上昇し,両河川から溢水し,さらに東海通の北にある丘陵地及び東海通より雨水が流下し,野並交差点に流入した上,藤川そのものの水位上昇に伴って同交差点から藤川への排水管の排水能力が阻害され,上記の雨水が建設中の野並駅に流れ込んだものであり,このことは被告交通局作成の「名古屋市高速度鉄道第6号線今池・野並間工事記録」(甲18)にも記載されている。 (ウ) 上記1(1)ウ記載のとおり,野並地区は,周囲を川と山に囲まれ,隣接する他地区よりも低い上,同地区の周辺部から急激に標高が低くなるすり鉢状の地形をしており,隣接する他地区への降雨も集水しやすい地形である。 さらに,野並交差点周辺の標高から,藤川,郷下川が溢水している場合 他地区よりも低い上,同地区の周辺部から急激に標高が低くなるすり鉢状の地形をしており,隣接する他地区への降雨も集水しやすい地形である。 さらに,野並交差点周辺の標高から,藤川,郷下川が溢水している場合には,野並交差点に20センチを超えて滞留した雨水は,野並交差点より郷下橋を通じて,野並地区へと流れ込む可能性が高い。 ウしかしながら,河川改修によって上記イ記載の機序による準用河川藤川からの溢水を防止するには,藤川の堤防高を高くし,あるいは天白川の堤防高を低くして,天白川の堤防高よりも藤川の堤防高が低い状態を解消することが必要であり,より抜本的には,天白川の河床を掘削する等して同河川の流下能力を高め,藤川の流下能力が阻害されないようにすることが必要である。そして,上記1(6)ア記載のとおり,愛知県による天白川の拡幅と河床掘削により流下能力を上昇させ,また同河川の堤防高を低くする改修工事が,本件豪雨時には,野並地区付近まであと約2.5ないし4.5キロメートルの地点まで完成し,平成6年度には,野並地区付近を含む改修のため,旧野並ポンプ所の移転が迫られる等,改修のための用地獲得を算段するまでになっており,天白川の流下能力及び堤防高については,近い将来,より抜本的な問題の解決が図られる予定であった。(甲69)一方で,昭和63年までに時間雨量50ミリ,流域のため池と合わせて時間雨量60ミリへ対応可能となった準用河川藤川の整備状況は,本件豪雨時においても,国が第8次治水事業五箇年計画において,「全河川については,時間雨量50ミリ相当の降雨による氾濫被害を防止する治水施設の整備を内容とし,平成3年度末の氾濫防御率45%を平成8年度末までの5年間に53%までに向上させる。中小河川については,慢性的な氾濫被害の防止のため,時間雨量50ミリ相当(5~10年 する治水施設の整備を内容とし,平成3年度末の氾濫防御率45%を平成8年度末までの5年間に53%までに向上させる。中小河川については,慢性的な氾濫被害の防止のため,時間雨量50ミリ相当(5~10年に一度発生する規模)の降雨による氾濫被害を防止する治水施設の整備を内容とし,平成3年度末の氾濫防御率35%を,平成8年度末までの5年間に43%までに向上させる。」(乙54の2),第9次治水事業七箇年計画(平成8年末から平成15年末まで)の基本目標として,河川については,「当面の目標とする時間雨量50ミリ相当の降雨において,氾濫防御が必要な面積約38,000平方キロメートル(この区域内の人口約6300万人)に対し,平成8年度末の氾濫防御率52%を59%に向上させる。」としており(乙49),また,被告においては,平成11年度末で名古屋市の時間50ミリの降雨に対する河川等の整備率(氾濫防御率)は84%であったこと(証人E)にかんがみると,全国的な水準に照らしても,被告の整備水準に照らしても,劣るものではなかった。 また,超過降雨に伴い,藤川の堤防高最下点から準用河川藤川の溢水が生じ得ること,そのような場合には藤川流域の雨水が野並地区に集中し同地区に浸水被害が生じ得ることについて,平成3年豪雨以降,被告がこれを認識していたか,認識し得たものと認められるのは上記イ記載のとおりであるものの,平成3年豪雨は明治29年9月9日の240.1ミリに次ぐ名古屋地方気象台観測史上2番目の日降雨量となった記録的な豪雨であり,同規模の降雨が頻繁に生じる確率は低く,ましてや本件豪雨については,上記1(8)ア記載のとおり,記録を大幅に更新する,500年あるいは1000年に1度の確率といわれる未曾有の豪雨であり,このような規模の豪雨を事前に予測して対策をとることは不可能であ 雨については,上記1(8)ア記載のとおり,記録を大幅に更新する,500年あるいは1000年に1度の確率といわれる未曾有の豪雨であり,このような規模の豪雨を事前に予測して対策をとることは不可能であったと認められること,本件豪雨以前においては,平成6年豪雨時も含め,平成3年豪雨以外に藤川が溢水した記録は存在しないこと,被告は,平成3年豪雨の後,上記1(6)記載のとおり,準用河川藤川流域のため池を浚渫し,ため池への排水路を増設し,流域における礫間貯留施設を設置する等,被害を緩和するための様々な対策をとっており,この対策状況についても,名古屋市内の他の河川と比較して特に劣っているとはいえないことからすれば,準用河川藤川は,河川管理における財政的,技術的及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていなかったものとは認められず,したがって,本件豪雨時までに堤防高最下点の堤防高をかさ上げしなかったことが準用河川藤川の河川管理の瑕疵に当たるとは認められない。 エなお,原告らは,野並地区については,被告の一律的整備水準を超えて超過洪水対策をとるべきであった旨主張し,その根拠として,国の第8次治水事業五箇年計画や名古屋市総合排水計画において示された指針,野並地区に関する自然的・社会的諸条件その他の事由を挙げるが,行政計画において示された指針は,直ちに河川管理の瑕疵の判断基準になるものではなく,また,原告らの挙げる野並地区に関する自然的・社会的諸条件その他の事由については,上記の判断の過程で十分考慮したものであるから,準用河川藤川の河川管理に瑕疵がなかったとの上記結論は左右されないというべきである。 (3) 原告らは,予想降雨強度を超える降雨の際にも,少なくとも計画上の降雨強度分については排水を確保できなければならない旨主張するが,どのような かったとの上記結論は左右されないというべきである。 (3) 原告らは,予想降雨強度を超える降雨の際にも,少なくとも計画上の降雨強度分については排水を確保できなければならない旨主張するが,どのような超過降雨があろうと,また超過降雨が何時間継続しようと,計画上の降雨強度相当の降雨に対する雨水排除を可能にするとすれば,支川を合流した本川の下流域に過大な負担をかけることが予想されるし,また,通常の降雨状況からも,超過降雨が長時間継続することは想定し難いことから,計画上の降雨強度に対応するということが原告らの主張するような流下能力を備えることまでも要求しているものとは考え難く,また,これを正当と認めるに足りる証拠もないので,原告らの上記主張は採用することができない。 (4)以上から,準用河川藤川の河川管理について,国家賠償法2条1項にいう瑕疵が存したとは認められない。 3 争点(3)(郷下川の河川管理の瑕疵)について(1) 改修の遅れについてア郷下川は,河川法の適用を受けない普通河川であるが,その河川の管理についての瑕疵の有無は,過去に発生した水害の規模,発生の頻度,発生原因,被害の性質,降雨状況,流域の地形その他の自然的条件,土地の利用状況その他の社会的条件,改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し,河川管理における財政的,技術的及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである。(最高裁判所平成8年7月12日第二小法廷判決・民集50巻7号1477頁参照)イこの点,被告が,遅くとも平成3年豪雨以降には,特に多量の降雨の際には,天白川の水位上昇に伴い,藤川の流下阻害,ひいては郷下川の流下阻害が生じ,これによって特に郷下川が溢水する可能性を認識し,あるいはこ 点,被告が,遅くとも平成3年豪雨以降には,特に多量の降雨の際には,天白川の水位上昇に伴い,藤川の流下阻害,ひいては郷下川の流下阻害が生じ,これによって特に郷下川が溢水する可能性を認識し,あるいはこれを認識し得たことは,上記2(2)イ記載のとおりである。 ウしかしながら,上記2(2)ウ記載の事情に加え,上記1(6)記載のとおり,被告は,平成3年豪雨の際に溢水が起きたと考えられる高さを超えてパラペットを設置していることを考慮すれば,郷下川は,河川管理における財政的,技術的及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていなかったとまでは認められない。 なお,原告らは,郷下川流域については,藤川流域や野並排水区と異なり,どのような降雨状況においても1時間当たり64ミリの降雨については安全に流下させる能力を有しているものとされている旨主張するが,この点に関しては,上記2(3)で説示したと同じ理由で,計画上の降雨強度に対応するということが原告らの主張するような流下能力を備えることまでも要求しているものとは考え難く,また,これを正当と認めるに足りる証拠もないので,原告らの上記主張は採用することができない。 (2) 郷下川の流下能力についてア郷下川について本件豪雨当時の流下能力を実測したデータは存在しないが,昭和63年度に見直された名古屋市総合排水計画の前提として,合理式法によって計画高水量を計算し,等流計算式により流下能力を計算すると,5年確率の雨水を流下させる能力があるとの計算結果であること(乙52の1,2,証人E),上記1(1)ア記載のとおり,郷下川流域の開発は昭和50年代前半ころまでには一通りなされており,これ以降についてもなお開発が進んだであろうという推測はできるが,急激に開発が進行したというような事情はうかがえないこと,平成6年豪 下川流域の開発は昭和50年代前半ころまでには一通りなされており,これ以降についてもなお開発が進んだであろうという推測はできるが,急激に開発が進行したというような事情はうかがえないこと,平成6年豪雨の際には,名古屋地方気象台において総降水量197ミリ,最大1時間降水量53ミリを観測したにもかかわらず,野並地区における浸水は見られなかったことに照らせば,本件豪雨時における郷下川の流下能力は,名古屋市総合排水計画において予定されていた1時間50ミリの雨水を流下させるのに不足する状態にあったとは認められない。 イ原告らは,降雨により藤川の水位が上昇することにより郷下川の排水口がふさがれるものであるから,郷下川は被告が予定する流下能力を備えていなかった旨主張する。 この点,確かに,原告らが主張するような,流下能力阻害の機序は存在し,郷下川が実際に雨水等を流下できるかどうかについては,流下先の二級河川藤川と天白川の許容流下量に影響されるものと認められる。(乙52の1,証人E)しかしながら,郷下川については,平成6年豪雨によっても同河川が溢水していない事実にかんがみると,被告の予定する降雨の範囲内において流下阻害が生じるか否かは明らかではないから,原告らの主張を採用することはできない。 ウ原告らは,郷下川に架けられた橋の橋桁,藤川合流点における郷下川の排水口の狭さにより,同河川の流下能力が阻害されている旨主張する。 しかしながら,別紙断面図③記載のとおり,等流計算式を用いて郷下川の流下能力を算出した場合,原告らが主張する橋桁の下の河道寸法のみによっても,同河川の流下能力が確保され,また排水口についても同様であることから,同河川の流下能力が,橋桁及び藤川排水口の狭さにより,河川管理における財政的,技術的及び社会通念に照らして是認し得る安全性を欠 も,同河川の流下能力が確保され,また排水口についても同様であることから,同河川の流下能力が,橋桁及び藤川排水口の狭さにより,河川管理における財政的,技術的及び社会通念に照らして是認し得る安全性を欠いていたとは認められない。これに対し,単に郷下川の橋桁及び排水口部分の河道断面が他の河道断面よりも狭まることをもって瑕疵が存在するという原告らの主張は,河川上の道路の利便性等の社会的制約を無視するものであって,採用することはできない。 (3)したがって,郷下川の管理に,国家賠償法2条1項にいう瑕疵が存したとは認められない。 4 争点(4)(野並ポンプ所の設置・管理の瑕疵)について(1) 本件雨水ポンプの排水能力についてア国家賠償法2条1項の公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険性のある状態であり,その瑕疵の存否については,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的・個別的に判断すべきであることは,本件雨水ポンプ,野並地区の排水路を含む下水道設備についても同様である。 そして,①下水道は,都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し,あわせて公用水域の水質の保全に資することを目的とするものであり(下水道法1条),したがって,下水道関連施設の建設及び管理の主目的は健全な都市機能としての雨水・汚水の排除,水質保全であり,これを行うべき対象範囲が広範であって,限られた箇所における洪水,溢水の災害防止のみを目的とするものではないこと,②豪雨等の自然災害については,上限というものがなく,常に想定外の災害が起こり得るものであり,豪雨による洪水,溢水対策として整備する際には,あらゆる豪雨においても排水を可能とする施設を築造することは,用地取得等の社会的 いては,上限というものがなく,常に想定外の災害が起こり得るものであり,豪雨による洪水,溢水対策として整備する際には,あらゆる豪雨においても排水を可能とする施設を築造することは,用地取得等の社会的制約,莫大な費用を必要とする等の財政的制約を受けることから,非常に困難であること,③下水道設備の多くは,雨水を集水した後,終局的にはこれを海や河川に放流することを予定しており,豪雨時には,河川の流下能力による制約を受けること,④現に,野並地区については,雨水を天白川に排出することが予定されており,天白川の流下能力により排出可能な雨水量に制約があると考えられること,かつ,⑤同地区の下水道設備は,上記1(1)オ記載のとおり,分流式であって,雨水は汚水と独立して排水されているものであり,雨水排除という機能を有する点では河川と異ならないこと等から,本件雨水ポンプ及び野並地区の雨水排水路については,極大の降雨にも耐えられ,完全に排水可能な機能を常に期待することは困難であり,通常想定される範囲内の降雨に対し浸水被害に対する能力を備えている場合には,原則として,通常有すべき安全性を有するものと判断すべきである。 イそして,①被告における下水道排水設備の一般的な目標は1時間降雨50ミリであったが,名古屋市の平成11年度末における下水道人口普及率は96%であり,一方で東京,大阪は100%,横浜,京都,札幌,福岡の各市は99%,神戸市は98%,川崎,北九州市の各市は97%である等,本件豪雨直前においても,名古屋市の下水道人口普及率は他の大都市と比較して低い状況にあって,未だ下水道そのものを普及させる必要のある地域が存在したこと(乙1,3),②平成6年に刊行された建設省都市局下水道部監修の「下水道施設計画・設計指針と解説前編-1994年版-」において,整備の て,未だ下水道そのものを普及させる必要のある地域が存在したこと(乙1,3),②平成6年に刊行された建設省都市局下水道部監修の「下水道施設計画・設計指針と解説前編-1994年版-」において,整備の確率年は原則として5~10年とするものとされていること(乙34),③平成7年7月18日付建設大臣あて都市計画中央審議会答申において,今後の下水道の整備と管理は,いかにあるべきかについての答申として,「将来的には,都市の規模や都市内河川の整備目標との整合を考慮して,おおむね30年から50年に1回程度の大雨に対して浸水する区域を解消することを目指すべきである。」としながらも,「21世紀初頭に向けては,少なくとも10年に1回程度の大雨に対して浸水する区域を解消するよう整備を行う。こうした長期的な目標を達成するため,当面,5年に1回程度の大雨に対する安全度を確保するための整備を推進し,特に人口等が集中し,浸水被害が頻発している地区については,少なくとも5年に1回程度の大雨に対して浸水することがないよう整備を行うものとする。」(乙48)としていること,④野並地区の雨水排出先である天白川については,本件豪雨時においては5年確率の降雨に対する整備が行われていること(甲69)に照らすと,被告が野並地区について下水道整備の基準とした5年確率降雨に対して対処し得る能力を備えている場合には,通常想定される範囲内の降雨に対し浸水被害に対処する能力を備えており,通常有すべき安全性を有するものと判断すべきである。 ウそこで,本件雨水ポンプが,5年確率の降雨に対し,これを排水し得る能力を備えていたか否かについて検討する。 本件雨水ポンプの建設が計画された平成6年当時,前掲の「下水道施設計画・設計指針と解説前編-1994年版-」においては,最大計画雨水流出量の算定は 得る能力を備えていたか否かについて検討する。 本件雨水ポンプの建設が計画された平成6年当時,前掲の「下水道施設計画・設計指針と解説前編-1994年版-」においては,最大計画雨水流出量の算定は原則として合理式によることとされていたことから(乙34),合理式において用いられる流出係数,排水面積,流達時間内の平均降雨強度(ミリ/時間)について検討するに,以下のとおり,本件雨水ポンプの排水能力が不足していたとの事実は認められない。 (ア) 流出係数a 流出係数については,原則として工業別基礎流出係数及び工種構成から総括流出係数を求めるものであるが,これに関連しては,①工種別基礎流出係数の標準値を屋根0.85~0.95,道路0.8~0.9,間地0. 1~0.3とし,浸透面の野外作業場等の間地を若干持つ工業地域及び庭が若干ある住宅地域0.65が標準であるとする文献(乙34),②標準値を,開発前(山林,原野,畑地面積率が70%以上)の流域については0.6~0.7,開発後(1)(不浸透面積率がほぼ40%以下)の流域については0.8,開発後(2)(不浸透面積率がほぼ40%以上)の流域については0.9であるが,流域の表層地質が浸透性の高い地質の場合は,開発前0.5,開発後(1)0.6,開発後(2)0.7(0.9)を下限として,流域の地被の状況,土地利用,流域の地質について調査し,類似河川の観測資料に基づいて流出率を設定することができるとする文献(乙25)が存在する。 b 野並ポンプ所については,野並地区内部において,住宅地区と準工業地区のモデル地区を選別し,それぞれの平均流出係数を算出したあと,野並地区内の住宅地区と準工業地区の面積の割合に比例させて算出した0.624を四捨五入した0.6を用いたものであり(乙4,証人F),工業別基礎流出 区を選別し,それぞれの平均流出係数を算出したあと,野並地区内の住宅地区と準工業地区の面積の割合に比例させて算出した0.624を四捨五入した0.6を用いたものであり(乙4,証人F),工業別基礎流出係数及び工種構成から総括流出係数を求めており,かつ上記a記載の文献類に照らしても,流出係数の算出が不合理とはいえず,原告らの主張するように流出係数を0.7にすべきであったとは認められない。 なお,上記流出係数算出の際に,野並地区の中でも特に市街化の進んだ地域をモデルとしたか否かは証拠上明らかではないが,上記1(1)ア,エ記載の事実からは,野並排水基本計画が策定された平成6年度から本件豪雨時までに野並地区の市街化が進んだとの事実は認められないことから,市街化の進んだ地域をモデルとしたか否かは,上記認定に影響を及ぼさないというべきである。 (イ) 排水面積a 原告らは,本件豪雨においては,野並三,四丁目区域,藤川流域及び菅田排水区から大量の雨水が野並地区に流入し,浸水被害を拡大させたが,このような現象が起こることは,平成3年の水害被害以降は十分に予見可能であったから,これらの地域を排水面積に加えるべきであったと主張する。 b そこで検討するに,まず野並三,四丁目区域については,計画降雨の範囲内であれば,同区域に降った雨のほとんどが側溝や雨水管を通じて郷下川に排水されると考えられるが,短時間に計画降雨を超える雨が降った場合には,雨水が道路に流れ出すことはあり得るものの,大部分の雨水が野並三,四丁目区域と野並地区の境にある第二環状線の中央分離帯にさえぎられ,さえぎられなかった雨水も,道路は通常中央部分が高くなっていることから,大半は道路端に流れ,設置された側溝に集水された後,雨水管を通じて郷下川に排水されて行くものと考えられる。したがって,本件 れ,さえぎられなかった雨水も,道路は通常中央部分が高くなっていることから,大半は道路端に流れ,設置された側溝に集水された後,雨水管を通じて郷下川に排水されて行くものと考えられる。したがって,本件豪雨のように計画降雨をはるかに超える異常な降雨がない限り,野並三,四丁目区域からの雨水が郷下川に架けられた橋を伝って野並地区に流入したとしても,水害の原因となるほど多量に流入するとは考えにくい。 次に,藤川流域の降雨については,通常の降雨であっても,東海通を通じて野並交差点に流下する雨水が存在する可能性は否定できないが,上記1(1)ウ記載のとおり,野並交差点から野並地区へと至る流入口である郷下橋の標高が同交差点より約20センチ高くなる一方,同交差点に滞留する雨水については,藤川へと排水を行う管渠が整備されていること(甲12)にかんがみれば,上記管渠の排水が阻害されない限りにおいては,藤川流域の雨水が野並地区に流入するとは考えにくい。 また,菅田排水区内の降雨についても,同排水区内の標高差,菅田ポンプ所への排水路が存在し雨水が同ポンプ所へ流下するものと考えられること(甲15の3,4),及び本件豪雨以前に野並地区へ雨水が流入した記録が存在しないことに照らせば,計画降雨の範囲内であれば,野並地区に流入するとは考え難い。 c したがって,上記aの原告らの主張は,採用することができない。 (ウ) 流達時間内の平均降雨強度流達時間内の平均降雨強度については,被告の主張によれば,5年確率の降雨強度式=430/(√t+0.86)の「t」に野並ポンプ所の流達時間である32.7分を代入した結果,65.4ミリ/時間となるところ,上記降雨強度式が不相当であるとの具体的主張・立証はなく,本件全証拠によるも,これが不相当であるとは認められない。 エした 間である32.7分を代入した結果,65.4ミリ/時間となるところ,上記降雨強度式が不相当であるとの具体的主張・立証はなく,本件全証拠によるも,これが不相当であるとは認められない。 エしたがって,本件雨水ポンプは,排水能力において通常有すべき安全性を有していたものであり,瑕疵が存したとは認められない。 (2) 本件燃料供給ポンプの設置位置についてア原告らは,本件燃料供給ポンプは,設置高の点で,通常有すべき安全性を欠いていた旨主張する。 ポンプ場施設は汚水・雨水等を排水するための施設として,豪雨等の非常時にもその揚排水機能を確保する必要があることから,浸水時にも,揚排水機能が損なわれない設置高及び構造とする設計がなされるべきものである(乙8)。現に被告においても,本件豪雨当時,「名古屋市地域防災計画風水害等災害対策編」において,「ポンプ所,処理場の主要構造物は,風水害等に耐えられる構造とする。ポンプ所,処理場の停電,断水対策として,ディーゼル駆動ポンプの設置,自家発電設備の設置並びに燃料の確保及び冷却水循環方式の採用に努める。ポンプ所の一部に浸水があっても機能が停止しないように計装及び電気設備類を浸水安全レベルに設置するものとする。」としていることから(甲7,乙7),ポンプの燃料確保を行う本件燃料供給ポンプについても,豪雨時の機能停止を回避し得る設置高及び構造が当然要求されているものである。 一方で,上記1(7)ウ(イ)記載のとおり,野並ポンプ所においては,消防法等の諸法規制及び用地取得の関係から,重油メインタンクが地下に設置されているが,燃料供給ポンプの設置高を上げると,同ポンプと重油メインタンクとの間の距離が長くなり,配管の継ぎ目等からの空気漏れ,ポンプ自体の吸い込み性能の低下,配管のラ 油メインタンクが地下に設置されているが,燃料供給ポンプの設置高を上げると,同ポンプと重油メインタンクとの間の距離が長くなり,配管の継ぎ目等からの空気漏れ,ポンプ自体の吸い込み性能の低下,配管のラインへの空気入り込みといった事態を生じやすいと考えられることから,燃料供給ポンプを高所に設置すると,運転の安定性に問題が生じる可能性があった。 したがって,本件燃料供給ポンプについては,過去の降雨記録に照らして想定される豪雨の際に浸水しない高さに設置されているか,又は,浸水の可能性を予測できる位置であっても,浸水時による機能停止を回避し得る水密化された構造である場合には,通常有すべき安全性を有していたと認めるべきである。 イこの点,被告は,平成3年豪雨の際の浸水高よりも約1メートル上方に本件燃料供給ポンプを設置したものであるが,平成3年豪雨は,旧野並ポンプ所への最高浸水高が記録されている豪雨であるのみならず,上記1(4)ア記載のとおり,降雨量の記録が開始された明治期以降の記録に照らしても,記録的な降雨量の豪雨であり,これを上回る豪雨が頻繁に起きるとは予測不可能であったと考えられる上,本件豪雨は,上記1(8)ア記載のとおり,未曾有の豪雨であり,それまでの名古屋市における降雨状況からは予測し得ない量の降雨であったことから,本件燃料供給ポンプについては,過去の降雨記録に照らして,豪雨等の非常時にも浸水されない高さに設置されており,通常有すべき安全性を有していたと認められる。 なお,平成3年豪雨の際に建築中の野並駅へと流入した約16万トンの雨水については,被告がこれを考慮したとはうかがえないものの,上記1(1)ウ認定の野並地区の地形全般にかんがみると,仮にそれらの雨水が全部野並地区に流入したと仮定しても,それによる水位の上 万トンの雨水については,被告がこれを考慮したとはうかがえないものの,上記1(1)ウ認定の野並地区の地形全般にかんがみると,仮にそれらの雨水が全部野並地区に流入したと仮定しても,それによる水位の上昇が1メートルに達するとは考えにくく,他にこれを認めるに足りる証拠はないので,上記判断に影響を及ぼさない。 ウしたがって,本件燃料供給ポンプは,その設置高の点において通常有すべき安全性を有していたものと認められ,瑕疵が存したとは認められない。 (3) 本件燃料供給ポンプ設計の瑕疵について原告らは,本件燃料供給ポンプは,水密化されていなかった点において,通常有すべき安全性を欠いていた旨主張する。 この点,ポンプ所施設については,浸水時にも,揚排水機能が損なわれない設置高並びに構造に設計がなされるべきものであることは上記(2)イ記載のとおりであるが,ポンプ所施設の中でもその構造,設置条件等は様々であり,一般的に全施設を水密化すべきであるとまでは認められない。また,豪雨時の浸水に伴う機能停止の回避については,浸水が想定される高さより高い位置に燃料供給ポンプを設置すれば足りるところ,上記(2)ア記載の事情からすれば,本件燃料供給ポンプを平成3年豪雨の浸水高から1メートル上方に設置したことをもって足りるのであり,本件燃料供給ポンプは,水密化されていなかったからといって,通常有すべき安全性を欠いていたとは認められない。 したがって,本件燃料供給ポンプは,その構造の点において瑕疵が存したとは認められない。 (4) 野並ポンプ所設計の瑕疵についてア原告らは,野並ポンプ所は大雨の際に天白川水位上昇により排水能力が極端に減少するという点で設計上の瑕疵が存した旨主張するが,本件全証拠によるも,原告らが主張するような,天白川水位上昇 疵についてア原告らは,野並ポンプ所は大雨の際に天白川水位上昇により排水能力が極端に減少するという点で設計上の瑕疵が存した旨主張するが,本件全証拠によるも,原告らが主張するような,天白川水位上昇に伴う本件雨水ポンプの排水能力の極端な減少を認めることはできないから,原告らの主張を採用することはできない。 イ原告らは,本件空気口をもっと高所に設置すべきであった旨主張する。 確かに,天白川の水位が計画高を超え,これにより野並ポンプ所の連絡井水位が上昇した場合,本件空気口から溢水する可能性がないとはいえず,したがって,放流先である天白川の堤防高を考慮し,空気口をより高所に設置することが望ましいことは否定できない。 しかしながら,天白川の計画高水位はSP21.262メートルであり,その場合の本件連絡井の水位はSP21.611メートルであると想定されているところ,この想定が不合理であると認めるに足りる証拠はない。そして,本件空気口は,下端がSP22.120メートルに来るように設置されていたのであるから,本件連絡井の想定水位よりさらに約51センチ上方にあることになり,設置位置が低すぎたとは認められない。 また,仮に本件空気口から溢水したとしても,その構造や個数に照らし,それによって野並地区に有意的な浸水被害の増大をもたらすほど大量に溢水することは考えにくい。なお,本件豪雨の際の本件空気口からの実際の溢水量については,証拠上明確でないが,被告職員の試算によれば,別紙「天白川最高水位時における空気口からの溢水量の計算について」記載のとおり,37.71立方メートル/分(2262.6立方メートル/時間)と試算され(乙51,証人G),仮に平成12年9月11日午後9時ころから4時間溢水が継続していたとしても,溢水量は19050.4立方メートルとなり,本 方メートル/分(2262.6立方メートル/時間)と試算され(乙51,証人G),仮に平成12年9月11日午後9時ころから4時間溢水が継続していたとしても,溢水量は19050.4立方メートルとなり,本件水害による浸水被害に対する寄与の度合いは,わずかであったと考えられる。 以上の事実によれば,本件空気口の設置位置により野並ポンプ所が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったとは認められない。 (5) 野並ポンプ所の管理の瑕疵について原告らは,被告は,本件燃料供給ポンプが故障した後直ちに重油をポンプ所に運搬し,本件雨水ポンプ全台を稼働させるという管理方法をとるべきであった旨主張する。 しかしながら,営造物の管理責任は,管理者に不可能を強いるものではなく,状況に応じて可能な範囲内での管理を行えば足りるところ,上記1(8)ア(エ),同ウ(イ)記載のとおり,本件豪雨においては名古屋市全域で浸水し,本件雨水ポンプが停止するまでの間に,既に新川の決壊等の重大な被害が市内各所で生じており,被告職員はその中で可能な限り重油を野並ポンプ所に運搬しようとしていたものと認められるから,野並ポンプ所の管理に瑕疵が存したとは認められず,原告らの主張を採用することはできない。 (6) したがって,本件豪雨の際に,野並ポンプ所の設置・管理に瑕疵があったとは認められない。 5 争点(5)(排水区の設置の瑕疵)について原告らは,野並排水区の設置については,郷下川流域の野並三,四丁目,藤川流域,菅田排水区を野並排水区と一体としなかった点に排水区の設置の瑕疵が存した旨主張する。 しかしながら,国家賠償法2条1項は,国や公共団体の所有又は管理する危険物から生じた損害の救済を完全ならしめようとする趣旨の規定であることから,同条項の「公の営造物 設置の瑕疵が存した旨主張する。 しかしながら,国家賠償法2条1項は,国や公共団体の所有又は管理する危険物から生じた損害の救済を完全ならしめようとする趣旨の規定であることから,同条項の「公の営造物」とは,行政主体により公の目的に供用される有体物ないし物的設備をいうところ,排水区域とは,公共下水道により下水を排除することができる区域で,公共下水道管理者があらかじめ供用を開始すべき年月日,下水を排除すべき区域その他国土交通省令で定める事項を公示した区域をいい(下水道法2条7号,9条1項),それ自体が有体物ないし物的設備であるとは認められない。 のみならず,排水区域は,それ自体が設備をもって雨水を排除するという性質のものではない(雨水排除については,個々の具体的な設備等による必要がある)から,排水区の設置は,個々の排水設備とは異なり,直接浸水被害と結びつくものではなく,これによって原告らが何らかの浸水被害を被ったということはできない。 したがって,野並排水区の設置が公の営造物の設置の瑕疵に当たるとする原告らの主張は,失当である。 6 争点(6)(ため池等の管理の瑕疵)について原告らは,藤川流域のため池は,いずれも都市化の影響を被り,被告の公共事業により貯水機能が甚しく低下させられていた旨主張するが,以下のとおり,これを認めることはできない。 (1) 原告らは,戸笠池について,浚渫不十分による汚泥等の蓄積,雨水流入用水路の不足,放出口の高度不足を放置した点に管理の瑕疵があった旨主張するが,戸笠池が上記のような諸事由によってため池としての機能が低下し,通常有すべき能力を欠いていたと認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,戸笠池の埋立てによる洪水調節機能の低下を主張するが,このような埋立ての事実を認めるに足りる証拠はない。また,同池の 低下し,通常有すべき能力を欠いていたと認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,戸笠池の埋立てによる洪水調節機能の低下を主張するが,このような埋立ての事実を認めるに足りる証拠はない。また,同池の西隣にある野球場を掘り下げることが可能であったと主張するが,このような施策をとらなかったからといって,戸笠池がため池として通常有すべき能力を欠いていたと認めることはできない。 (2) 原告らは,鳴子池について,埋立てにより貯水能力が低下していた旨主張するが,鳴子池の埋立ては,被告が貯水量の計画を策定するより前に行われたものであるところ,被告が準用河川藤川の河川計画において本件豪雨時点で予定していた鳴子池の洪水調節効果は,同池が既に埋め立てられたことを前提としているものであるから,埋立てによって上記河川計画における同池の洪水調節効果が減少したとは認められない。 また,原告らは,少なくとも相生山から南下する雨水等を下水管に流入させるための集水桝を設置し,鳴子池等へと貯留させるような設備を設けるべきであったのに,実際にはこれがなかった旨主張するが,本件全証拠によるも,上記設備がないことによって鳴子池の洪水調節機能が損なわれていたとは認められない。 (3)原告らは,螺貝池及び四郎曽池について,改修方法次第でより大きな洪水調節機能を持たせることが可能であったのに,これを行わなかった点に管理の瑕疵が存した旨主張するが,具体的な改修方法の内容が明らかでない上,実際にそのような改修が可能であったと認めるに足りる証拠はないから,これを行わなかったことが瑕疵に当たるとは認められない。 (4) 原告らは,扇川流域のため池は平水位と高水位との水位差が高く設定してあるのに比して,藤川流域のため池は水位差があまりなく,洪水調節機能が少ない旨主張する。しかしながら, るとは認められない。 (4) 原告らは,扇川流域のため池は平水位と高水位との水位差が高く設定してあるのに比して,藤川流域のため池は水位差があまりなく,洪水調節機能が少ない旨主張する。しかしながら,本件全証拠によるも,扇川流域のため池と藤川流域のため池との間で,平水位と高水位の水位差に顕著な差異があることを認めるに足りない上,仮に差異があると認められたとしても,ため池が通常有すべき安全性を確保するためにどの程度の水位差が必要であるかは証拠上不明であるから,藤川流域のため池について通常有すべき安全性が欠けていたとは認められない。 また,原告らは,扇川流域においては,平成3年豪雨の後,河川改修のみならず,各種の施策がとられ,約103万立方メートルもの雨水貯留施設が整備された結果,本件豪雨の際には浸水被害が生じていないと主張する。しかしながら,本件豪雨によって扇川流域にも被害が生じたのは,上記1(8)エ(ウ)記載のとおりであり,野並地区と扇川流域の被害の差異が,平成3年豪雨後の扇川の河川改修や扇川流域の雨水貯留施設の整備の結果によって生じたものであると認めるに足りる証拠はない。 (5) したがって,藤川流域のため池が通常有すべき安全性を欠いていたとは認められないから,その管理に瑕疵があったとは認められない。 7 争点(7)(排水路等の設置・管理の瑕疵)について(1) 原告らは,野並ポンプ所の計画上の処理能力の限界値に達する以前に,既に排水区内に浸水被害が生じており,これにより野並排水区においては,降雨が所定の排水経路に集水されず地区内に滞留したものであるから,計画想定内の5年確率降雨にすら,被告の整備した集排水システム・設備が対応していなかった旨主張する。 しかしながら,本件豪雨時において,野並地区では,上記1(8)イ(イ)e記載のと たものであるから,計画想定内の5年確率降雨にすら,被告の整備した集排水システム・設備が対応していなかった旨主張する。 しかしながら,本件豪雨時において,野並地区では,上記1(8)イ(イ)e記載のとおり,平成12年9月11日午後6時ころから道路冠水,若干の時間をおいて床下浸水,午後7時ころには床上浸水が始まっていたものではあるが,浸水の時間,規模,程度,箇所等は正確には明らかではなく,野並地区全体において浸水が起きた正確な時刻は不明である。そして,そのころの野並地区の降雨量は,野並ポンプ所付近において,午後5時30分から午後6時には11ミリ,午後6時から午後6時30分には47ミリ,午後6時30分から午後7時には43ミリであり(甲38の2),被告の想定する5年確率降雨(1時間50ミリ)を上回る降雨となっていたことに照らすと,野並地区の一部で局所的な浸水があったとしても,集排水システム・設備全体に瑕疵があったとは直ちに推認し難い。 したがって,原告らの主張するような集排水システム・設備全体の瑕疵の存在を認めることはできず,この点に関する原告らの主張は理由がない。 (2) 貯留管等についてア原告らは,野並地区の排水路については,①貯留管の増設,②貯留管を藤川の下を通して,雨水を緑区鳴海町方面へ流下させる施策,③郷下川の東側道路に集水口を設置する施策を実施すべきであったのに,これを実施しなかったことが瑕疵に当たる旨主張する。 イこの点,被告が野並地区について下水道整備の基準とした5年確率降雨に対処し得る能力を備えている場合には,通常想定される範囲内の降雨に対し浸水被害に対する能力を備えており,通常有すべき安全性を有するものと判断すべきであることは,上記4(1)イ記載のとおりであって,上記の貯留管の増設等の施策をとらなければ上 定される範囲内の降雨に対し浸水被害に対する能力を備えており,通常有すべき安全性を有するものと判断すべきであることは,上記4(1)イ記載のとおりであって,上記の貯留管の増設等の施策をとらなければ上記の能力を欠くとは認められないことから,これらが存在しないからといって,排水路が通常有すべき安全性を欠くとは認められない。 (3) したがって,野並地区の排水路等が通常有すべき安全性を欠いていたとは認められないから,排水路等の設置・管理に瑕疵があったとは認められない。 8 結論以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,国家賠償法2条,3条に基づく原告らの本件損害賠償請求は全部理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部 裁判長裁判官西尾進裁判官朝日貴浩裁判官宮崎寧子

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