平成13(行ウ)273 個人情報非開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年8月8日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文21,749 文字)

主文 1 被告が原告に対し平成12年12月13日付けでした個人情報非開示決定処分(ただし、平成14年11月12日付け個人情報一部開示決定処分により一部取消し後のもの。)を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要原告は、平成12年度東京都保育士試験を受験したが、東京都個人情報の保護に関する条例(以下「本件条例」という。)に基づき、被告に対し、同試験科目「保健衛生学及び生理学」に係る原告作成の解答用紙の開示を請求した(以下「本件開示請求」という。)ところ、被告が、個人の選考に関する情報であって、開示することにより、今後の適正な試験事務の執行に支障が生ずるおそれがある(本件条例16条2号)として非開示決定をした(以下「本件非開示決定」という。)ため、これを不服として本件非開示決定の取消しを求める本件訴えを提起したものである。なお、被告は、平成14年11月12日付けで、本件非開示決定の一部を取り消し、本件開示請求に係る個人情報の一部を開示する旨の決定(以下「本件一部開示決定」という。)をしたため、原告は、本件一部開示決定により開示された部分について、訴えを取下げた。 1 本件条例の定め(1) 本件条例は、個人に関する情報の取扱いについての基本的事項を定め、都の実施機関が保有する個人情報の開示及び訂正を請求する権利を明らかにし、もって個人の権利利益の保護を図るとともに、都政の適正な運営に資することを目的として(1条)定められたものである。 (2) 本件条例2条2項は、「個人情報」とは、個人に関する情報(特定の個人を識別できるものをいう。)で、実施機関(知事、教育委員会等並びに東京都規則で定める行政機関の長をいう。同条1項)が管理する文書、図画、写真、フィルム、磁気テープ、磁気デ 人に関する情報(特定の個人を識別できるものをいう。)で、実施機関(知事、教育委員会等並びに東京都規則で定める行政機関の長をいう。同条1項)が管理する文書、図画、写真、フィルム、磁気テープ、磁気ディスク等(以下「文書等」という。)に記録されたものをいうと規定している。 (3) 本件条例2条4項本文は、「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書等であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう旨を規定している。 (4) 本件条例12条1項は、何人も、実施機関に対し、公文書に記録されている自己の個人情報の開示の請求をすることができる旨を規定している。 (5) 本件条例16条は、開示しないことができる個人情報を規定しており、その2号は、「個人の評価、診断、判断、選考、指導、相談等に関する個人情報であって、開示することにより、事務の適正な執行に支障が生ずるおそれがあるとき。」と規定している。 2 前提となる事実(括弧内に認定根拠を掲げた事実のほかは当事者間に争いのない事実か、弁論の全趣旨により容易に認定できる事実である。)(1) 保育士試験は、①社会福祉、②児童福祉、③児童心理学及び精神保健、④保健衛生学及び生理学、⑤看護学及び実習、⑥栄養学及び実習、⑦保育原理及び教育原理、⑧保育実習の8科目で成り立っており、全科目につき合格点を取得すると、保育士の資格を取得することとされているが(児童福祉法施行令第13条、同法施行規則41条)、一部の科目にのみ合格点を取得した場合には、当該科目につき、その翌年及び翌々年に限って受験免除の特典が与えられている。 (2) 原告は、平成10年度に保育士試験を受験し、③児童心理学及び精神保健の科目に合格し、平成11年度には⑤看護学及び実習、⑥栄養学及び実習、 翌年及び翌々年に限って受験免除の特典が与えられている。 (2) 原告は、平成10年度に保育士試験を受験し、③児童心理学及び精神保健の科目に合格し、平成11年度には⑤看護学及び実習、⑥栄養学及び実習、⑦保育原理及び教育原理の各科目に合格したため、平成12年8月2日及び同月3日に実施された同年度保育士試験において、既に合格している上記各科目を除く4科目を受験したところ、被告から、同年10月30日付けで、そのうち3科目に合格したものの、④保健衛生学及び生理学の試験に不合格となった旨の一部科目合格の通知を受けた(甲2)。 (3) 原告は、平成12年11月29日、被告に対し、開示請求に係る個人情報の内容を「平成12年度保育士試験『保健衛生学及び生理学』について解答用紙、正誤の配点」として、上記保育士試験の同科目(以下「本件試験」という。)に係る原告作成の解答用紙(以下「本件解答用紙」という。)及び原告が本件試験の各問題に対し取得した得点について開示請求をしたところ(乙2)、被告は、同年12月13日、原告に対し、本件解答用紙上には、受験者が記入した解答の上に試験委員が直接記入した正誤及びその点数並びに問題に対する配点(原告が本件試験において取得した合計点)が記入されており、それを開示すると、採点の結果又は方法に対して個別的な意見等が寄せられることが考えられ、今後の適正な試験事務の執行に支障を生ずるおそれがあるとし、請求に係る情報は、本件条例16条2号の非開示情報に該当するため、非開示とする旨の本件非開示決定をした(甲1)。 (4) 原告は、本件非開示決定を不服として、平成13年2月9日、被告に対し、異議申立てを行う(乙3)とともに、同年10月4日付けで本件非開示決定の取消しを求める本件訴えを提起した。 (5) 被告は、平成14年11月12日付けで、 不服として、平成13年2月9日、被告に対し、異議申立てを行う(乙3)とともに、同年10月4日付けで本件非開示決定の取消しを求める本件訴えを提起した。 (5) 被告は、平成14年11月12日付けで、本件非開示決定の一部を取り消し、本件開示請求に係る個人情報について、一部の非開示部分を除いて開示する旨の本件一部開示決定をした(乙7、8、10)ため、原告は、同年12月26日、本件一部開示決定に基づき、本件解答用紙上の記載のうち、一部開示決定により開示することとされた情報について、開示を受けた(乙10、11)。 (6) 本件一部開示決定により開示された部分は、解答用紙上に記載された情報のうち、原告自身が記入した解答、選択問題又は語句問題に対し採点者が記入した正答・誤答の記号(丸や斜線)、両問題の解答に対して採点者が各問の得点欄に記入した点数、本件試験の科目としての得点欄並びに客観的記載事項である原告の受験番号及び生年月日である。 (7) 本件一部開示決定によっても引き続き非開示とされた部分(以下「本件各非開示情報」という。)は、以下の5か所である(甲26、乙7、8、10)。 ア第1問関係記述問題「健康の定義について知っていることを述べなさい。」に対する解答の得点欄(以下「非開示部分1」という。)イ第9問関係問題「左側の内分泌器官から分泌されるホルモンを一つあげその主な働きを簡単に述べなさい」のうち「主な働きを簡単に述べなさい」という記述問題の解答上に記載された採点記入部分(以下「非開示部分2」という。)非開示部分2に記載された採点と「左側の内分泌器官から分泌されるホルモンを一つあげ」という語句問題に対する解答の採点を集計した第9問の得点欄(以下「非開示部分3」という。)ウ第10問関係問題「呼吸器の器官の流れを下の番号を並べ替えて矢印 器官から分泌されるホルモンを一つあげ」という語句問題に対する解答の採点を集計した第9問の得点欄(以下「非開示部分3」という。)ウ第10問関係問題「呼吸器の器官の流れを下の番号を並べ替えて矢印で示しなさい。また、肺呼吸でのガス交換についてわかりやすく簡単に述べなさい。」のうち「肺呼吸でのガス交換についてわかりやすく簡単に述べなさい。」という記述問題の解答上に記載された採点記入部分(以下「非開示部分4」という。)非開示部分4に記載された採点と「呼吸器の器官の流れを下の番号を並べ替えて矢印で示しなさい。」の解答の採点とを集計した第10問の得点欄(以下「非開示部分5」という。) 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、本件各非開示情報が、本件条例16条2号の非開示情報に該当するか否かであり、この点に関する当事者の主張は、以下のとおりである。 (1) 被告の主張ア本件条例16条2号の意義について本件条例16条2号の規定は、実施機関は、開示請求に係る個人情報が「個人の評価」に関するものであって、開示することにより「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があるときには、これを開示しないことができると定めているところ、「個人の評価」とは、個人の学業成績その他の能力、性格、適正等について、専門的見地又は一定の基準に基づいて行った審査等の判定の記録であり、「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」とは、本人に個人情報を開示することにより、事務の性質上、事務の執行が阻害されたり、事務を実施する意味を失わせたり、関係者間の信頼関係を損なうおそれがあることをいい、当該個人情報に関係する具体的な事務における支障が生ずるおそれのみならず、将来の同種の事務の支障となるおそれを含むものである。 イ本件各非開示情報の条例16条2号該当性(ア) 受 ることをいい、当該個人情報に関係する具体的な事務における支障が生ずるおそれのみならず、将来の同種の事務の支障となるおそれを含むものである。 イ本件各非開示情報の条例16条2号該当性(ア) 受験者と試験実施機関の信頼関係を失わせるおそれ本件一部開示決定により採点・得点部分を開示した選択問題及び語句問題は、問題と解答が一義的に対応するものであり、得点も正誤に応じて与えられているものである。したがって、選択問題及び語句問題の正誤の判断は、これを開示した場合、開示を受けた者が十分な科目研究をすれば、その評価が正しいことを認識することが客観的に可能である。また、採点は、当該正誤の判断に応じてされている。そうすると、選択問題及び語句問題の正誤の判断・採点を開示しても、開示を受けた者が、正答であるのに誤答と評価されたとか、得点に反映されていないという不服が生ずる可能性は低く、また、そのような不服が生じたとしても試験実施機関が十分な説明を行えば、納得を得ることが可能である。 これに対し、本件各非開示情報は、非開示部分1、同2及び同4は記述問題に対する個別的な得点を記載した部分であり、非開示部分3及び同5は記述問題の得点を含む得点集計を記載した部分である。 ところで、記述問題に対する解答の場合、これらに対しては正解か不正解かという単純な正誤の判断が行われるのではなく、設問の趣旨をよく理解し、問われている事項について適切な用語を用いて、的確な説明がされているかどうかを評価し、その程度に応じて部分点が与えられている。そして、どの程度の部分点が与えられるかというのは、完全に客観的、一義的基準によることはできず、採点者である試験委員が各科目の専門的見地から、受験者の理解度、知識及び表現力の程度を判断して行う評価であり、採点に当たって試験委員の主観的判断が介 のは、完全に客観的、一義的基準によることはできず、採点者である試験委員が各科目の専門的見地から、受験者の理解度、知識及び表現力の程度を判断して行う評価であり、採点に当たって試験委員の主観的判断が介在している。したがって、部分点が与えられている問題の採点(これをベースとして集計している非開示部分3及び同5のような得点を含む。)を開示した場合、開示を受けた者が他に開示を受けた者との点数を比較したり、試験実施機関以外が発表する正答情報と比較することにより、自己の解答が不当に低く評価されているとの不服を持つ場合がある。しかし、本人の認識と試験委員の評価との間に不一致が生じたとしても、その解消の方法はなく、その結果、保育士を目指す本人の意欲を阻害したり、自尊心を傷つけたりして、保育士を目指す者に機会を与えるという本件試験の実施の意味を失わせたり、あるいは、受験者に試験の採点方法に不信感を与え、試験実施機関に対する信頼感を失わせることになる。 さらに、非開示部分1、同2及び同4が当該問題に対する配点の満点であったとしても、他の受験者との対照情報を開示することになるので、本件試験の実施の意味を失わしめたり、あるいは、受験者と試験実施機関の信頼関係を失わせるおそれがある場合に該当する。 (イ) 試験委員確保の困難の発生被告は、保育士養成に理解があり、専門分野を担当するにふさわしい試験委員の確保に苦慮している現状にある。試験委員の主観的判断要素が介在する評価・採点を巡って受験者から問題が提起されれば、被告は試験委員の見解を確かめざるを得ないので、試験委員の心理的・物理的な負担が増大し、一層人材の確保が難しくなることとなり、試験事務の執行が阻害されるおそれがある。 ウ 「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があることが、客観的にみて相当の蓋然性がある 理的・物理的な負担が増大し、一層人材の確保が難しくなることとなり、試験事務の執行が阻害されるおそれがある。 ウ 「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があることが、客観的にみて相当の蓋然性があることについて(ア) 本件試験の性格本件試験は、保育士資格の取得要件である資格試験である。また、一度合格した科目は、合格の翌年及び翌々年に限り、受験を免除となるため、科目ごとの合格・不合格は、受験者にとって重大な利害のある事項である。 (イ) 原告の例平成12年11月20日に原告に得点の開示をした際、原告から問題の2か所に誤りがあるとの指摘を受けたため、被告(福祉局地域福祉部福祉人材課)は、早速作問者に問い合わせ、問題に誤りがないことを確認した。また、単に「問題に誤りがありません」と伝えても理解が難しいと考えたため、一般的に参考書として妥当と思われる「厚生白書」(政府刊行物)の中から参考箇所を探して原告に連絡し、納得を得た。このように、受験者一人ひとりの納得を得るまでには大変な手間と時間がかかる。 (ウ) 平成12年度試験の受験者数及び平成13年度試験分から実施した簡易開示の状況平成12年度に実施した保育士試験の受験者は1904人、1回の試験で合格した人は10人である。大部分が数年間受験し続け、その結果全科目に合格する人が平成12年度を例に採ると123人である(全体の合格率7%、「保健衛生学及び生理学」の受験者は、1283人、合格者は304人、合格率は23.7%である。)。 そして、保育士試験の試験科目は8科目であるが、一人の受験者が全科目を受験すると、その解答用紙は11枚になる上、保育士試験は、一部科目受験を認め、全員が全科目を受験しているわけではないため、平成12年度の解答用紙は合計1万5137枚であった。 また、平成13年度試験分から ると、その解答用紙は11枚になる上、保育士試験は、一部科目受験を認め、全員が全科目を受験しているわけではないため、平成12年度の解答用紙は合計1万5137枚であった。 また、平成13年度試験分からは、希望者に対し、各科目の得点の簡易開示を行うこととしたが、1週間で214人、1日当たり22人から82人が来庁し、その後も正規の手続による得点の開示請求者は続き、中には前年の試験結果を請求した人もいた。 (エ) 試験委員確保の困難な状況東京都の試験委員は、児童福祉法施行令第13条第12ないし14項により10名任命されており、その任期は1年である。 試験委員は、各専門分野を担当し、1分野につき1名である(「保育実習」のように1科目であっても、絵画や音楽の専門家が必要である。)。また、試験委員として常時都庁に勤務しているわけではなく、専門職として学校等で勤務し、その職責を果たしながら、試験委員としての職務をこなしている。 被告は、毎年度当初に保育士試験委員を任命すると、委員会を開催し、当該年度の問題作成の基本方針を定め、7月までの2か月半で試験問題の作成を依頼している。試験の採点は、夏の暑い時期(学校の夏休み中)の大量の作業(平成12年度採点枚数、1科目1183枚から1532枚、全部手作業)であるため、試験委員からは、夏休みが取れない、自己の研究時間が取れない、病気や旅行もできない等の苦情がでており、無理を言って依頼している状況である。 また、試験委員に対しては、試験の実施方法の打ち合わせ、問題作成、印刷校正、他分野の委員との打ち合わせ(重複出題を避けるため)等のため、来庁や事務連絡で時間を取るほか、合格発表後にも上記のようなことがあれば、電話連絡や来庁してもらい説明を依頼している。 こうした状況の中で、被告は、保育士養成に理解があり、専門分野を担当 )等のため、来庁や事務連絡で時間を取るほか、合格発表後にも上記のようなことがあれば、電話連絡や来庁してもらい説明を依頼している。 こうした状況の中で、被告は、保育士養成に理解があり、専門分野を担当するにふさわしい試験委員の確保に苦慮している状況にあるから、解答用紙の開示により評価・採点を巡って受験者から問題提起があれば、試験委員の心理的・物理的な負担が増大し、人材の確保が一層難しくなることとなり、試験事務の執行が阻害されるおそれがある。 (オ) 前記のとおり、本件試験の対象者は多数にのぼること、本件試験が保育士資格の取得要件である資格試験であり、合格科目は、合格の翌年及び翌々年に受験免除となること、得点の簡易開示を求める受験者が多いことからすると、原告に対し、本件解答用紙が開示された場合には、多数の受験者が解答用紙の開示を求めることが具体的かつ現実的に予測できるところ、開示を受けた受験者の自己評価と試験委員の評価が一致しない場合には、受験者の間に、正答の要素があるのに相当の評価がされていない等不当に評価が低いという不服が必然的に生ずるのであって、このような場合にその不服を解消する手段がないことは前記のとおりである。 エ原告の主張に対する反論(ア) 原告は、本件試験は、出題の方式やその内容に照らし、正解が明快であること、試験に関し質問が生ずるのは、問題が不明瞭であったり、解答が複数存在する等の場合であり、試験問題が明確かつ適正であり、解答も同様である場合にそれらが公表されていれば、かえって受験者からの質問はほとんどなくなるはずであること等を主張する。 しかし、本件試験の第1問、第9問及び第10問の各記述問題(第4問は本件においては開示済みである)を選択問題及び語句問題と同列におき、簡単な説明を求めている問題であり、非常に客観的なものと 張する。 しかし、本件試験の第1問、第9問及び第10問の各記述問題(第4問は本件においては開示済みである)を選択問題及び語句問題と同列におき、簡単な説明を求めている問題であり、非常に客観的なものと評価することは誤りである。また、このような主観的要素が介在する評価に関する受験者と採点者の評価の不一致は、前記のとおり、スタッフの増強を図ったからといって解決できる問題ではないから、原告の上記主張はいずれも失当である。 (イ) 保育士試験の問題作成及び採点上の指針平成元年3月27日児発第186号、各都道府県知事宛厚生省児童家庭局長通知「保育士試験の実施について」(以下「児童家庭局長通知」という。)は、厚生省(当時)が保育士試験の実施の要領を定め、各都道府県に事務運営の方針として通知したものであるところ、同通知によれば、保育士試験は、同通知の別紙1に定める保育士試験実施要領(以下「保育士試験実施要領」という。)により実施されるものとされ(同通知の1)、また、各都道府県の試験委員が具体的問題を作成し又は採点するに当たっては、保育士試験実施要領によるものとされている。 そして、保育士試験実施要領の指針によれば、本件試験の出題において留意すべき重要な事項は、専門知識を機械的に記憶すれば解答できるような問題ではなく、保育における実践的事項についての知識を体系的に理解しているかどうかを試す問題を出題することであるとされているから、本件試験の採点も、本件試験に関する知識が保育の実践的知識として体系的に理解できているかどうか及びその理解度の深さを評価することに重点があるということができる。 また、出題方針にある「機械的記憶に頼るような出題は避け、理解の深さを試す出題に心掛ける」ことを実行するのに、最適な問題の形態が記述問題であることは経験則上明らかであるから、 るということができる。 また、出題方針にある「機械的記憶に頼るような出題は避け、理解の深さを試す出題に心掛ける」ことを実行するのに、最適な問題の形態が記述問題であることは経験則上明らかであるから、記述問題においては、特に上記の理解度の深さに試験委員が注目して採点することはいうまでもないことである。なお、選択問題及び語句問題の作問においても、出題方針に即した工夫を図るべきことはもちろんであるが、これらの問題に対する解答自体は客観的・一義的なものである点において、これら客観的に採点可能な問題と記述問題とは質的に異なる。 本件試験の設問も、第1問「健康の定義について知っていることを述べなさい。」、第9問「左側の内分泌器官から分泌されるホルモンを一つあげその主な働きを簡単に述べなさい。」及び第10問「(略)また、肺呼吸でのガス交換についてわかりやすく簡単に述べなさい。」と一見機械的記憶で対応可能な問題に見えるが、各設問を表面的に理解して客観的に採点可能な問題であると評価するのは、保育士試験実施要領が示す試験問題作成の指針に照らしてみれば失当である。このような出題については、要素の過不足があるもの、誤字脱字があるもの、表現が端的または冗長であるもの等様々な解答が発生するのであるから、一義的な基準を設定して、客観的評価をすることはできないのであり、微妙な増減点は採点者に委ねられている。 (ウ) 主観的評価への疑義はスタッフの増強によっては解消されないこと保育士試験は科目ごとに合否が決定される試験であり、その合格基準は満点の6割以上である(児童家庭局長通知)。一方、同試験は「試験時間内に8割以上の受験者が問題の内容を理解し、解答を作成し得る程度の分量及び難易度とする。」(保育士試験実施要領第2の4ウ)ことを難易度の目安としているため、白紙答案がでる 。一方、同試験は「試験時間内に8割以上の受験者が問題の内容を理解し、解答を作成し得る程度の分量及び難易度とする。」(保育士試験実施要領第2の4ウ)ことを難易度の目安としているため、白紙答案がでるような超難問ばかりではなく、記述問題にしても受験者が一定の解答記入をすることが可能な難易度で出題されている。 そうすると、合格基準点に近い得点を得た受験者が、記述問題の得点に納得できない場合、採点に関する質問を被告にすることは、ごく自然に想定できることである。この場合、被告は採点の方法等を回答するかどうかは置くとして、受験者の質問には誠意をもって対応することが求められている(本件条例23条においても、実施機関は、個人情報の取扱いに関する苦情について、迅速かつ適切に対応しなければならないと定められている。)が、前記のような冗長な表現の解答について、仮に被告職員が試験委員にその出題意図及び解答に求められる水準等を問い合わせする等して受験者に説明したとしても、科目合格がかかっているような場合、当該受験者が納得することは必ずしも期待できず、スタッフの増強を図れば解決できる問題ではない。 (2) 原告の主張ア本件条例12条1項は、個人情報の開示請求権を明確に規定し、同16条は、例外的に個人情報を開示しないことができる場合について規定している。したがって、開示が原則である以上、開示しない事由に該当するか否かについては、厳格に解釈しなければならないところ、被告の主張する不開示の理由はいずれも不合理かつ不当なものであり、条例の規定する非開示事由を具体的に裏付けるものではないから、是認することができない。 イ被告は、解答用紙を開示すれば、今まで以上の質問等が寄せられ、現行の事務体制や試験委員制度では不合格者の質問等に到底応じることができない事態に陥り、試験 ではないから、是認することができない。 イ被告は、解答用紙を開示すれば、今まで以上の質問等が寄せられ、現行の事務体制や試験委員制度では不合格者の質問等に到底応じることができない事態に陥り、試験事務の執行を阻害するおそれがある旨を主張する。 しかし、試験問題及びこれに対する解答が明確・適正であり、それらが公表されていれば、受験者からの質問はかえって少なくなるはずであることが経験則上明らかである。すなわち、試験問題に対して質問が生ずるのは、問題が不明瞭であったり、複数の解答が生ずる場合等であり、試験問題及び解答が明解・適正であって公表されている場合には、質問の量は減少することが明らかである。 ウ本件試験は、筆記試験であり、合格点に達しているかどうかを判断する客観的な試験であって、相対的な基準は一切ない。その中には、記述問題も出題されているが、その内容は簡単な説明を求めるものであり、いずれも非常に客観的なものである。 これに対し、被告は、記述問題の解答に対しては、部分点が与えられており、この部分点については、採点に当たる試験委員の主観的判断が介在することや、これに対し受験者が不信感を抱く可能性があることによる不都合を指摘するが、これらの不都合は、前記のとおり試験問題、解答、配点、採点基準を明確・適正なものにすることにより解消されていくものであるから、被告は、この点に関する努力を怠りその不都合性のみを主張するものといわざるを得ない。 また、仮に、被告の主張するように、解答用紙の開示により質問の数が増えるとしても、それは事務体制や試験委員数の増強により容易に対処可能である。すなわち、試験は年に1回行われるものにすぎないし、当該試験により受験者の一生が左右されることに照らせば、試験体制もそれにふさわしいものが採られるべきであるから、開示できない 容易に対処可能である。すなわち、試験は年に1回行われるものにすぎないし、当該試験により受験者の一生が左右されることに照らせば、試験体制もそれにふさわしいものが採られるべきであるから、開示できない理由として人的資源を問題にすることは失当である。 そもそも、本件条例の定める非開示事由は、単なる事務執行の阻害のおそれではなく、「事務の『適正な』執行に支障が生ずるおそれがあるとき」であるから、不合格者からの質問に対応できないことは、上記非開示事由に該当しないというべきである。 エ原告は、本件試験の不合格という結果に納得できなかったため、被告に対し、解答用紙の開示を求めたものであり、本件試験においては、解答、採配点、採点基準は何一つ公表されていないため、解答用紙の開示は、近年問題となっている各種試験における採点ミス等を発見する唯一の手段となっている。 本件でも、一部開示決定はされたものの、依然として記述問題の採点が3箇所非開示とされたため、この3箇所について正しく採点され、集計されたか否かは依然として不明確である。原告は、採点の正確性に疑問を持っている部分もあるが、本件解答用紙の開示が認められない限り、この疑問を払拭できる手段はない。したがって、採点ミスがないことを確認し、試験の公正性や試験制度に対する信頼を確保する見地からも、本件解答用紙全体の開示が認められるべきである。 第3 争点に対する判断 1 本件開示請求の対象は、試験の解答用紙に記載された個別的な採点であるから、それが本件条例16条2号にいう個人の選考に関する個人情報に該当することは明らかであり、その開示の可否は、開示によって同号の定める「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があるか否かにかかることとなる。この「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」との要件がいかなる場合を指すかは、 り、その開示の可否は、開示によって同号の定める「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があるか否かにかかることとなる。この「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」との要件がいかなる場合を指すかは、その文言自体からは必ずしも明らかではないが、本件条例1条が、個人情報訂正請求権を明らかにし、個人の権利利益の保護を図ることを目的の一つとし、しかも、選考の内容が個人の権利利益にかかわることが多い反面その正確性を受験者側から検証する手段が他に用意されていないことからすると、本件条例の目的とする個人の権利利益の保護を実効あるものとするには、上記要件を広く解することはできず、少なくとも個人情報の開示により上記のような支障が生ずる具体的かつ客観的なおそれがあることが必要であり、単なる実施機関の主観的なおそれや抽象的なおそれがあるのみでは非開示事由に該当するとは認められないというべきである。また、被告の主張するように、将来の同種の事務の支障となるおそれを含むとしても、将来の当該おそれも同様に、具体的かつ客観的なものであることが必要であると解される。 そこで以下、被告の主張する具体的事由ごとに、それが同号所定の非開示情報に該当するか否かを順次検討する。 (1) 受験者と試験実施機関の信頼関係を失わせるおそれについてア本件各非開示情報は、いずれも記述問題に対する得点ないしは記述問題の得点を含む得点集計であるところ、被告は、記述問題に対する解答の場合には、設問の趣旨の理解や、解答の際に用いられた用語の適切性、説明の的確性等に応じて部分点を与えることが予定されていること、要素の過不足があるもの、誤字脱字があるもの、表現が端的または冗長であるもの等に対し、どの程度の部分点を与えるかについては、採点者である試験委員の主観的判断が介在していること等を指摘した上、 こと、要素の過不足があるもの、誤字脱字があるもの、表現が端的または冗長であるもの等に対し、どの程度の部分点を与えるかについては、採点者である試験委員の主観的判断が介在していること等を指摘した上、これらの点数を開示した場合には、開示を受けた受験者が、自己の解答が不当に低く評価されている等の不満を持つこととなり、これにより受験者の意欲を減退させ、自尊心を傷つけ、保育士を目指す者に機会を与えるとの試験実施の意味を失わせ、あるいは、受験者に試験の採点方法に対する不信感を生じさせ、試験実施機関に対する信頼を失わせる結果になると主張する。 イ(ア) 確かに、複数の選択肢の中から、最も適切な選択肢一つを選択することが求められている選択問題や、正解となるべき語句を記載する語句問題は、正解と評価される解答と、不正解と評価される解答の区別が容易である場合が多く、したがって、記載された解答に対しては、正解と判断されて満点が付与されるか、不正解と判断されて点数が全く与えられないかの二者択一である場合が多数であるから、部分点を付与することがあらかじめ予定されている記述問題に比べ、採点の適正性の判断も比較的容易になし得るものということができる。 (イ) しかしながら、選択問題ないし語句問題であっても、例えば、誤字脱字の含まれる解答がされる場合や、予定された語句の一部しか記載がない解答がされる場合には、このような解答に満点を与えるか、あるいは、これを不正解と判断して点数を与えないかについての判断は必ずしも容易ではなく、記述問題の採点におけるのと同様に、採点者の主観的判断が全く排除されているものということはできない。すなわち、このような場合には、採点者には、正解と判断されるべき解答とどの程度の同一性が認められる場合にこれを正解と判断するか、あるいは、基本的な採点基 全く排除されているものということはできない。すなわち、このような場合には、採点者には、正解と判断されるべき解答とどの程度の同一性が認められる場合にこれを正解と判断するか、あるいは、基本的な採点基準を前提とした上で、具体的な解答に対し、どの程度の得点を付与するかについての判断が委ねられたものと解さざるを得ないのであって、結果として、具体的な採点が、全て客観的・一義的であるものと断言することはできないし、現実には、具体的な採点に幅が生ずる余地も十分あるものというべきである。そして、平成13年4月から平成14年3月まで保育士試験に係る事務を担当していたFの陳述書(乙5)に、「文章で答える解答のみならず単なる語句記載形式の解答であっても解答には様々なバリエーションがあるため、採点は個々の解答に即して判断することとなります。」「また、単に記号で解答する問題でも、紛らわしい記載(aとd、bとh、アとマ、ミとシ、イとト、くとし、等々)について、斜めに書いたり、慌てて書いたり、判読し難い癖字であったりするものがあり、記載者である受験者の意図と客観評価は必ずしも一致しません。」と記載されていることに照らせば、語句問題ないし選択問題においても、採点に際して、採点者の個別具体的な判断に委ねられる部分が存することを被告も自認するものと解されるのである。 (ウ) 他方、記述問題(問いに関し、文章を用いて解答することが求められている問題。)の中には、当該科目の基礎的な語句の定義や基礎的事項に関する説明を記載させるものから、一定の事象に対する個人の知見ないし見解をある程度の長さをもって記載させる形式のものまで含まれているのであるから、採点に際して採点者に与えられている裁量の幅も、当該問題の内容に応じて異なるものというべきである。すなわち、受験者の見識を問うよう 度の長さをもって記載させる形式のものまで含まれているのであるから、採点に際して採点者に与えられている裁量の幅も、当該問題の内容に応じて異なるものというべきである。すなわち、受験者の見識を問うような問題、例えば、受験者個人の体験をある程度の長さをもって述べさせるような小論文試験の場合には、採点基準を明確にするとしても、その基準は、出題の趣旨を理解しているかや、論理的構成が取られているか、説得性をもった記載になっているか等、抽象的なものにとどまらざるを得ず、採点に関し採点者の主観的判断に委ねられる幅が広くなり、具体的な採点結果にも一定範囲の幅が生じ、その適否を第三者が客観的に判断することは著しく困難とならざるを得ない。これに対し、語句の定義等を簡潔に答えさせるような問題であれば、採点に際しては、同様の解答に対して与えられる得点に幅が生じないよう、採点基準があらかじめかなり詳細に定められている場合が多く(例えば、解答の中に含められるのが相当である語句ないし要素を抽出し、この語句ないし要素毎に部分点が定められ、これらの総合により得点が算出される場合が多い。)、解答者が用いた表現の巧拙については、その評価に当たって採点者に若干の裁量の余地があることは否定できないものの、解答自体が簡潔なものである以上、その裁量判断の幅は、それほど大きいものとはいえず、上記のように語句問題や選択問題において採点者に認められる裁量の幅とそれほど異なるものとは考えられないし、少なくとも、その裁量判断の適否については、第三者が客観的に評価することが容易なものと考えられる。 (エ) このように、出題の形式が、記述問題であっても、採点者の主観的判断の介在する程度や質が選択問題や語句問題と異ならないものもあり、そのようなものについては、選択問題や語句問題と異なった取扱いを (エ) このように、出題の形式が、記述問題であっても、採点者の主観的判断の介在する程度や質が選択問題や語句問題と異ならないものもあり、そのようなものについては、選択問題や語句問題と異なった取扱いをすべき理由はないと考えられる。 ウそこで、以上を前提として、本件各非開示情報に係る記述問題の採点について検討する。 乙第9、第10号証によると、本件試験の実施要領において、保健衛生学については、出題上の留意事項として、「1 医師として必要な知識ではなく、保育士が保育の実際においてしばしば出会うと思われる事項に関する知識についての理解を試す出題とする。」「2 文章による解答を求める問題は、解答に長文を要するような大きな問題を避け、簡単に解答しうるような小さな問題を数多く出題することが望ましい。」と定められ、生理学については、出題の基本方針として、「保育等に実際と関連して、保健衛生学、看護学、精神保健などの基礎になるような、児童の身体の構造及び機能の理解を見ることを基本とする。」との定めがあること、各非開示部分の解答欄も3行分又は数センチメートルの枠内とされていることが認められる。 個々の非開示部分についてみると、まず、非開示部分1は、「健康の定義について知っていることを述べなさい。」という問題に対し原告の取得した得点が記載された部分である。被告は、本件試験の記述問題が、保育士試験実施要領の指針に基づき、「機械的記憶に頼るような出題を避け、理解の深さを試す出題に心がける」方針に基づき出題されたものであることから、その採点に際しても、理解度の深さを評価することに重点が置かれている旨を主張し、非開示部分に係る記述問題の採点には、採点者の主観的判断が介在していると主張する。しかしながら、非開示部分1は、健康の定義について問う問題である以上、解答の中に ることに重点が置かれている旨を主張し、非開示部分に係る記述問題の採点には、採点者の主観的判断が介在していると主張する。しかしながら、非開示部分1は、健康の定義について問う問題である以上、解答の中に記載されるべき要素ないし用いられるべき語句があらかじめ予定され、これに対応する部分点が決定されており、このような採点基準に照らした採点が行われるものと解されるから、採点者の主観的判断により採点にそれほどの幅が生ずるものと解することはできない。 次に、非開示部分2及び3は、「左側の内分泌器官から分泌されるホルモンを一つあげ、その主な働きを簡単に述べなさい。」といううちの、「主な働きを簡単に述べなさい。」という問い部分に対応する解答に対する得点情報であるところ、上記問いは、現在の保健衛生学及び生理学の学問水準において一般的に理解されているところの、特定のホルモンの働きに関する知識を問うものといわざるを得ず、受験者個人の主観的見解を問うものではない。そうすると、受験者の理解度の深さに注目した採点がされるとしても、それはせいぜい語句の選択の適否や説明の過不足に表れるにすぎない。したがって、その採点に際しても、それぞれのホルモンの働きとして説明されるべき点が予定されており、その要素の過不足により得点が決定されるものといわざるを得ないのであって、その採点に関して採点者の主観的判断により大きなふれ幅が生ずる問題であるとはいい難い。 さらに、非開示部分4及び5は、「肺呼吸でのガス交換についてわかりやすく簡単に述べなさい」という問題への解答に対する得点情報であるところ、前記非開示部分2及び3と同様に、当該問題は、受験者個人の主観的見解を問うものではなく、現在の学問水準に照らし、一般に理解されているガス交換の仕組みについての知識を問うものというべきであるから、 、前記非開示部分2及び3と同様に、当該問題は、受験者個人の主観的見解を問うものではなく、現在の学問水準に照らし、一般に理解されているガス交換の仕組みについての知識を問うものというべきであるから、その採点に採点者の主観的判断が入る余地は極めて少ないものといわざるを得ない。 そうすると、非開示部分に記載された得点は、いずれも記述問題の解答に対する得点情報であるものの、その採点に際して、採点者の主観的判断が入る余地は少なく、その適否を第三者が客観的に判断することも容易なものといわざるを得ず、本件試験の語句問題における採点の場合と被告の主張するような質的な差異は認められないものというべきであって、一部開示決定により開示を認めた語句問題に関する得点情報と取扱いを異にする理由はない。 エ以上に対し、被告は、本件各非開示情報に係る得点を開示すると、受験者が自己の解答が不当に低く評価されているとの不服を持つおそれがあり、これを解消する手段はなく、結果として保育士を目指す受験者の自尊心を傷つけたり、試験に対する信頼感を喪失させることになり、ひいては試験の適正な実施に支障が生ずるおそれがある旨を主張する。 しかしながら、前記被告事務担当者の陳述書(乙5)には、「採点の目安として、全体としてどこまで書けていれば何点、誤字は1字について何点減だが全体の流れが特によければ何点減で止める。Aが正解であるが、Bまでの記載があれば何点、CとDの双方を記載すべきだが片方が記載され、かつ片方が一定程度評価できる内容が含まれれば何点など、問題により様々ですが、それぞれ検討し採点の基準とします。」「また、類似の解答があった場合には、バランスのとれた評価点になっているか、全体を見渡し増減の調整を行う必要性が発生します。」という記載や、「1科目当たり2000枚近い用紙を採点す 基準とします。」「また、類似の解答があった場合には、バランスのとれた評価点になっているか、全体を見渡し増減の調整を行う必要性が発生します。」という記載や、「1科目当たり2000枚近い用紙を採点する過程では、当初の採点の基準やチェックポイント検討時に予測しえない様々な解答にぶつかることもあり、採点にあたって微妙な問題が生じます。そこで、採点にあたり一度採点した解答用紙を再点検し、受験者全体の評価のバランスがとれているか否かの調整を行っております」等という記載が認められるから、本件試験の記述問題の採点に当たっては、あらかじめ採点基準が決められており、その採点基準に従った採点がされていること、具体的な採点結果にばらつきが生じないよう、一通り採点が終了した後に点数の調整を行っていることが認められ、このような採点基準の決定とその修正は責任ある試験実施機関としては当然に行うべきことであって、しかも、採点の適正さを確保するためには、それらの内容を覚書等の形で文章化しておくべきものと考えられる。このことと、前記認定のとおり、本件各非開示情報に係る問題が、いずれも試験科目において客観的に確立している語句の定義や基礎的事項を説明させる問題にすぎないことを合わせ考えると、本件試験の採点に関して、被告が危惧する程度にまで採点者の主観的判断により得点の差異が生ずるものと認めることはできない。 したがって、具体的な採点結果に対する受験者の不服は、被告が選択問題や語句問題に関する受験者からの質問に対し、既に事実上行っているような説明と同様の説明を行うことにより、ある程度まで払拭することが可能であるし、それでも問題が解決しない場合には、適切な争訟手段を通じて第三者が採点の適否を判断することによって問題の解決が可能であると考えられるのであって、上記のような不服が生 度まで払拭することが可能であるし、それでも問題が解決しない場合には、適切な争訟手段を通じて第三者が採点の適否を判断することによって問題の解決が可能であると考えられるのであって、上記のような不服が生ずる可能性があることから、試験に関する事務の適正な執行に支障が生ずる客観的かつ具体的なおそれが生ずるとは到底認めることができない。 オさらに、仮に被告の主張するように、本件各非開示情報に係る問題の採点に対し、受験者が不服を持ち、これが解消されることがなかったとしても、そのことが直ちに受験者と試験実施機関との間の信頼関係の破壊をもたらし、ひいては当該試験実施の意味を失わせるものということもできない。このような信頼関係は、適正な採点が行われること自体に対する信頼関係と裏腹のものであって、むしろ採点の透明性を高めるし、不服のある者には適切な争訟手段によって、自己の不服の適否を争わせる機会を与えることにより最も効果的に維持されると考えられる。そして、採点の開示は、試験の透明性を最大限確保するものであり、受験者と試験実施機関との間の信頼関係を維持増進するものと評価すべきである。むしろ、これと反対に採点結果を開示しないことこそが、自己採点等により試験結果に疑問を有する者からその解消を図る機会を奪うことにより、試験制度自体に対する不信を固定化し、試験に関する事務の適正な執行に支障を生じさせかねないものと考えられる。 特に、原告については、甲第10、第21号証によると、本件試験直後の自己採点及びその翌年に刊行された市販の問題集により、各非開示部分についての自己の解答が正解又はそれに近いものであって、それほどの減点の対象となるものではないと確信し、そのことによって本件試験の採点に疑問をもっていることが認められ、この点については、本件試験の採点結果を開示すると 答が正解又はそれに近いものであって、それほどの減点の対象となるものではないと確信し、そのことによって本件試験の採点に疑問をもっていることが認められ、この点については、本件試験の採点結果を開示するとともに採点基準を説明し、なお疑問が残る場合には適切な争訟手段によって問題の解決を図るほかなく、このような手段を講じない限り、原告の本件試験制度への信頼を回復することはできないし、このような事態を放置することは受験者一般の本件試験制度への信頼を失わせることとなりかねないものと考えられる。 そうすると、開示の結果、受験者と試験実施機関との間に、被告主張のような見解の対立が生ずるとしても、そのような事態は、試験自体に対する信頼関係の毀損を招くものとは考えられず、試験事務の適正な執行に支障が生ずる客観的かつ具体的なおそれを生じさせるものと認めることはできない。 したがって、いずれにしても、被告の前記主張は採用することができない。 カ以上によれば、本件各非開示情報を開示することによって、受験者と試験実施機関の信頼関係を失わせるおそれがあり、本件条例16条2号の「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があると認めることはできない。 (2) 試験委員確保の困難の発生についてア次に、被告は、本件試験の実施に際して、既に試験委員の確保に苦慮しており、本件各非開示情報を開示した場合には、採点をめぐって受験者からの質問が相次ぐことが予測され、試験委員の心理的・物理的負担が増大し、人材確保が困難になる旨を主張する。 イ確かに、本件試験の簡易開示の状況(乙5)等からすれば、本件試験に関しては、既に受験者の多くが強い関心を寄せていることが認められるのであるから、原告に対し、本件各非開示情報を含めた解答用紙全体の開示をする場合には、さらに多くの受験者が同様に開示を求める 件試験に関しては、既に受験者の多くが強い関心を寄せていることが認められるのであるから、原告に対し、本件各非開示情報を含めた解答用紙全体の開示をする場合には、さらに多くの受験者が同様に開示を求める可能性が高く、その結果、採点に対する批判、非難等も増加する可能性は否定できないところであるから、その批判の手段や方法によっては、これらに対処する採点者が心理的負担を感じる可能性があることも想像に難くないところである。 しかしながら、乙第5号証によれば、保育士試験の出題及び採点に関しては、1分野につき1名、8科目全体で10名の試験委員が関与していること、試験の公平性確保の見地から、試験委員の名前は公表されていないこと、採点に際し、解答用紙上には、解答に対する正誤、問題毎の得点(部分点を含む。)、得点集計、場合によっては、採点の調整経過等が記入されるにすぎず、採点者が、氏名等の自己を特定する痕跡を残すことはないことが認められる。そうすると、本件各非開示情報を含む解答用紙全体を開示したとしても、開示を受けた受験者において、自らの解答用紙を採点した者が誰であるかを特定することは一般的には困難であるというべきであるから、本件試験に対する解答用紙全体を開示した場合に採点者に対して向けられる批判が、個人的・感情的なものに発展する可能性は低いというべきであって、採点者が感じる心理的負担は、批判に耐え得るような適正な採点をすることに対する強い自覚にとどまるものと解される。 ところで、このような公正・適正な採点を行うということ自体に対する試験委員の心理的負担は、本件解答用紙の開示の有無にかかわらず負担させられているものというべきであるから、その開示によって変化が生ずるものでもないと解するのが相当である。したがって、本件解答用紙の開示により、採点に関し試験委員の心 用紙の開示の有無にかかわらず負担させられているものというべきであるから、その開示によって変化が生ずるものでもないと解するのが相当である。したがって、本件解答用紙の開示により、採点に関し試験委員の心理的負担が増大し、その確保が困難になるものともいうことができないのである。 ウまた、被告は、試験委員の物理的負担の増大も指摘するところ、保育士資格の取得に関して試験制度を採用し、当該試験に合格した者のみに保育士の資格を付与することとされている以上、出題者あるいは採点者が、出題ないし採点に関し疑問が生じないようにあらかじめ十分な調査・準備を行い、また、現実に寄せられる疑問に対し、適切な根拠を示して説明を行うことは、試験制度を採用する以上これに内在する当然の負担であると解される。前記のとおり、受験者個人の見識を問う小論文形式の出題のように、その採点基準が抽象的なものとならざるを得ないものはさておき、前記認定事実によれば、本件各非開示情報に係る出題は、当該科目において客観的に確立している語句の定義や基礎的事項についての説明を求めるものにすぎないから、あらかじめ採点基準を定め、現に採点を行った際に適宜これを修正し、それらを覚書等の形で保存することにより、それらに基づいて採点の根拠を示すことは比較的容易であると解されるのであって、このような場合に、被告が、受験者に対して試験に関する情報を開示しないことにより上記負担の軽減を図ることは、行政庁の負う説明責任を放棄するに等しいものであり不当といわざるを得ない。むしろ、このような負担の軽減を図るためには、原告の主張するように、出題及びこれに対する採点の適正化・公正化に努めることにより、受験者からの質問を可及的に少なくするという対処方法によるべきであり、それが適切にされれば採点の結果を開示することが、かえっ するように、出題及びこれに対する採点の適正化・公正化に努めることにより、受験者からの質問を可及的に少なくするという対処方法によるべきであり、それが適切にされれば採点の結果を開示することが、かえって試験制度自体への信頼を高め、その事務の適正な執行に資する可能性も否定できない。 エそうすると、試験委員の採用に当たって、被告が現状においてもなお苦慮していることはそのとおりであるとしても、本件各非開示情報の開示によって、直ちに試験委員確保が一層困難になるものと認めることはできない。そして、被告には、試験委員の確保に当たって、上記試験制度を適正かつ公正に執行するとの趣旨に沿うような委員の確保に努めるべき責任があるものというべきであるから、本件では、本件条例16条2号に定める試験制度の適正な執行に支障が生ずるおそれがあると認めることはできない。 2 以上によれば、本件各非開示情報を開示することにより、本件試験の適正な執行に支障が生ずるおそれがあるものと認めるに足りる事実は存在しないものというべきであるから、被告が、本件条例16条2号を根拠に行った本件非開示決定(ただし、本件一部開示決定による一部取消し後のもの)には本件条例解釈を誤った違法があり、取消しを免れないものというべきである。 第4 結論よって、本件請求は理由があるから認容することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官鶴岡稔彦裁判官加藤晴子 彦裁判官 加藤晴子

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