平成18(ワ)20440 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成20年12月25日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文42,480 文字)

平成20年12月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成18年(ワ)第20440号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成20年9月1日判決原告A同訴訟代理人弁護士吉羽真治同松井菜採被告学校法人日本歯科大学同代表者理事長B同訴訟代理人弁護士金田英一同金田賢太郎同星野馨主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,金1859万7940円及びこれに対する平成16年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告の開設する病院の小児歯科及び矯正歯科に順次通院して診療を受けていた原告が,小児歯科での診療中に歯根吸収(別紙医学用語一覧9)及び開咬(別紙医学用語一覧4(2)イ)を生じ,さらに,矯正歯科での診療中にこれらが悪化したとした上,小児歯科での診療中に歯根吸収及び開咬を生じたのは,担当医師において,①前歯部のデンタルレントゲン(別紙医学用語一覧 6(2))撮影を行い,歯根吸収を発見したときに速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務を怠ったこと,②新たな不正咬合を発生させない義務を怠ったこと,これらが原因であり,また,矯正歯科での診療中にこれらが悪化したのは,担当医師において,①治療を中止するか,又は,後戻り(矯正治療後移動を行った歯が元の不正の状態に再び戻り始めること)の経過を見ながら保定(別紙医学用語一覧8(1))装置に切り替えるといった歯根吸収の危険性のより低い消極的治療を選択すべき義務を怠ったこと,②前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときに速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をし 置に切り替えるといった歯根吸収の危険性のより低い消極的治療を選択すべき義務を怠ったこと,②前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときに速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務を怠ったこと,③新たな不正咬合を発生させない義務を怠ったこと,これらが原因である,矯正歯科の担当医師には,歯根吸収の危険性等について十分な説明をしなかった説明義務違反がある,と主張して,被告に対し,診療契約上の債務不履行に基づいて,既払診療費相当額及び後遺症慰謝料等の損害金並びにこれに対する催告日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提事実(証拠原因により認定した事実については,括弧書きで当該証拠原因を掲記する。その余の事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者等,「」(「」ア被告は日本歯科大学附属病院という名称の病院以下被告病院という)を開設している。 。 C(以下「C医師」という)は,歯科医師であり,平成5年ないし1。 0年当時,被告病院の小児歯科に勤務していた。 D(以下「D医師」という)医師は,歯科医師であり,平成10年な。 いし13年当時,被告病院の矯正歯科に勤務していた。 ,,,なお被告病院では平成13年1月に小児歯科と矯正歯科が統合され小児・矯正歯科という診療科が創設された(弁論の全趣旨。以下では,便 宜上,上記統合後の小児・矯正歯科も「矯正歯科」と称する。 。)イ原告は,昭和53年生まれの男性であり,平成5年から平成13年まで被告病院において歯の矯正治療を受けた。 (2)被告病院における原告の診療経過の概要ア原告は,平成5年4月2日,被告病院を受診して,被告との間で歯科診療を目的とする診療契約を締結した当時原 まで被告病院において歯の矯正治療を受けた。 (2)被告病院における原告の診療経過の概要ア原告は,平成5年4月2日,被告病院を受診して,被告との間で歯科診療を目的とする診療契約を締結した当時原告の下顎の前歯には叢生別。 ,(紙医学用語一覧4(2)ウ)が認められた(甲A3・3頁。 )イ原告は,以後,平成10年4月24日までは被告病院小児歯科においてC医師により,同年8月28日から平成13年8月15日までは被告病院矯正歯科においてD医師により歯の矯正治療を受けた(乙A1の1・2,乙A3。 )ウ(ア)C医師は,平成5年7月23日,上下の歯についてパナグラフィー(別紙医学用語一覧6(1))撮影を行った(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・6枚目,乙A4の3の1・2。以下,乙A4の3の1・2の画像を合わせて「本件画像1」という。 。),,,,(イ)その後C医師は原告に対し平成10年4月24日に至るまで可撤式拡大装置を使用した「顎態調和法」と称される矯正治療を行った(乙A1の1,2,乙A11・8,9頁。 )「」,,顎態調和法とは床矯正装置を用いて歯列を拡大することにより生体にとって望ましい方向に歯列を改善していく臨床テクニックであり,歯を直接移動させる固定式とは異なり,歯槽骨(歯槽(歯根がはまり込む顎骨の穴)の壁を構成する骨)を押し広げることによって歯を移動させることを第一義とする方法である(甲B2・1枚目,甲B18・180頁,乙B1・1枚目,46頁。 )エ(ア)D医師は,平成10年11月30日,右上,右下,左上及び左下の各前歯についてデンタルレントゲン撮影を行った(乙A3・2枚目,乙 A4の12の1ないし4。以下,乙A4の12の1ないし4の画像を合わせて「本件画像2」という。 。)(イ)そ 左上及び左下の各前歯についてデンタルレントゲン撮影を行った(乙A3・2枚目,乙 A4の12の1ないし4。以下,乙A4の12の1ないし4の画像を合わせて「本件画像2」という。 。)(イ)その後,D医師は,平成13年8月15日に至るまで,マルチブラケット装置(多数歯にブラケット及びバッカルチューブを装着し,アーチワイヤーの弾性やゴムなどの付加物の力を利用して三次元的な歯の移動を行う装置の総称を使用して矯正治療を行った乙A3乙A12・)(,5頁。 )(3)被告病院における診療を受けた後のEクリニックにおける原告の診療経過の概要ア原告は,平成13年9月1日,Eクリニックを受診し,以後,現在に至,(「」。)るまで同クリニックにおいて歯科医師であるF以下F医師というにより歯の診療を受けている(甲A10,証人F・18,19頁,原告本人10,27頁。 )イF医師は,平成13年9月1日,右上,右下,左上及び左下の各前歯についてデンタルレントゲン撮影を行った(甲A7の1ないし4。以下,これらの画像を合わせて「本件画像3」という。 。) 原告の主張(1)事実関係ア重篤な歯根吸収の発生(ア)原告の歯根は,被告病院小児歯科受診前は正常であったが,本件画像2によれば被告病院小児歯科での治療が終了してから約7か月後被,(告病院矯正歯科における積極的な矯正治療が開始されていない時期)においては,右上1番に3分の1ないし2分の1,右上2番に4分の1,右上3番に5分の1,右下1番に5分の1,右下2番に4分の1,右下3番に5分の1,左上1番に2分の1,左上2番に4分の1,左上3番に5分の1,左下1番に5分の1,左下2番に6分の1,左下3番に6 分の1の吸収がある状態になった。 (イ)原告の歯根は,本件画像3によ 5分の1,左上1番に2分の1,左上2番に4分の1,左上3番に5分の1,左下1番に5分の1,左下2番に6分の1,左下3番に6 分の1の吸収がある状態になった。 (イ)原告の歯根は,本件画像3によれば,Eクリニック初診時においては,右上1番に2分の1ないし3分の2,右上2番に3分の1,右上3番に5分の1,右下1番に3分の1,右下2番に3分の1,右下3番に5分の2,左上1番に3分の2,左上2番に3分の1,左上3番に5分の1,左下1番に3分の1,左下2番に3分の1,左下3番に4分の1の吸収がある状態になった。 (ウ)上記(ア)に反して,被告は,本件画像1によれば上顎中切歯の歯根は隣接する側切歯に比べて明らかに短いなどとし,少なくとも原告の右上1番及び左上1番は,被告病院小児歯科受診前より短歯根であったと主張している(後記3(1)ア(ア) 。 )しかしながら,以下の諸点に照らすと,原告の歯根は,被告病院小児歯科受診前は正常であったというべきである。 ①本件画像1はパナグラフィーによる画像であるところ,パナグラフィーは,ほとんど規格性がなく,撮影のたびに映像の大小まで異な,。 ,,,り形態学的比較には全く使えないまたパナグラフィーでは歯管球及び感光フィルムの三者の位置関係から,上顎中切歯が直立しているほど歯の画像がより短く写るようになるところ,原告の上顎中切歯は標準よりも直立している。 ②本件において,被告病院小児歯科での治療開始前から短根歯であったことを根拠付ける画像,所見,具体的エピソードは全くない。 ③本件画像1を撮影した後の被告病院小児歯科のカルテ(乙A1の1・2)には,原告が短根歯である,又は原告に歯根吸収があるとはどこにも記載されていない。原告も,C医師から,短根歯又は歯根吸収があるとの説明を受けたことは た後の被告病院小児歯科のカルテ(乙A1の1・2)には,原告が短根歯である,又は原告に歯根吸収があるとはどこにも記載されていない。原告も,C医師から,短根歯又は歯根吸収があるとの説明を受けたことはない(原告本人6頁。 )④C医師は,被告病院小児歯科における診療期間中,デンタルレント ゲン撮影をしていない。 (エ)また,上記(ア)及び(イ)は,F医師が本件画像2,3を読影した結果であるところ(甲B23・11枚目,被告は,被告病院口腔外科の)(「」。)(,G歯科医師以下G医師という作成にかかる意見書乙B1014)を提出して,歯根吸収の程度について,これとは異なる主張をしている(後記3(1)ア(イ) 。 )しかしながら,G医師は,右上1番について,歯根がもともと短く,近心が欠けている形状の歯であることを前提に読影したものと解されるところ,上記(ウ)のとおり,被告病院小児歯科受診前の原告の歯根は正常であったというべきであるし,また,G医師の読影結果においては斜めの歯根吸収が考慮されていないから,F医師の読影結果の方がより正確である。 (オ)上記(ア)(被告病院小児歯科受診前から本件画像2まで)の歯根吸収は,以下の諸点に照らすと,被告病院小児歯科における治療によって生じたものであるといえる。 ①あらゆる型の歯の移動が歯根吸収を起こし得る(甲B10・5頁)のであり,矯正治療を行う限り常に歯根吸収の危険性を伴う。 ②平成6年8月31日及び平成9年6月27日に装着された各可撤式拡大装置には唇側線が取り付けられていたところ,原告は,上記可撤式拡大装置を平成10年6月ころまで使用していた。 しかして,唇側線は,前歯部の歯冠の中央部に接しており,歯の根から3分の1くらいのところにある歯の重心には接していないから,唇側線 原告は,上記可撤式拡大装置を平成10年6月ころまで使用していた。 しかして,唇側線は,前歯部の歯冠の中央部に接しており,歯の根から3分の1くらいのところにある歯の重心には接していないから,唇側線による前歯部の移動は傾斜移動(別紙医学用語一覧7(1))にならざるを得ない。 ③原告の可撤式拡大装置はネジの回転により合計100回近くは拡大されたところ,原告の歯は,可撤式拡大装置の拡大及び着脱が繰り返 ,,されるたびに頬舌方向に行ったり来たりするという移動を繰り返し根尖部が揺り戻されるジグリング作用にさらされた。 (カ)上記(イ)(本件画像2から本件画像3まで)の歯根吸収は,以下の諸点に照らすと,被告病院矯正歯科における治療によって生じたものであるといえる。 ①上記(オ)①のとおり,あらゆる型の歯の移動が歯根吸収を起こし得るのであり,矯正治療を行う限り常に歯根吸収の危険性を伴う。 ②被告病院矯正歯科では,開咬を治療するために,前歯の挺出(別紙医学用語一覧7(3))を行っているところ,歯の挺出には歯根吸収のリスクがある。 ③既に歯根吸収のある歯や短根歯は矯正歯科治療により歯根吸収が生,,,じる確率や程度がより高くなるところ原告には上記(ア)のとおり被告病院矯正歯科での治療開始時に,既に歯根吸収が生じていた。 ④原告には舌癖はなく,被告病院での治療以外に歯根吸収の危険性のある要因は存在しない。 イ開咬の発生(ア)原告のかみ合わせは,被告病院初診時には正常よりもかみ合わせが深い過蓋咬合別紙医学用語一覧4(2)オの状態であったが甲A3・()(3頁。オーバーバイト(別紙医学用語一覧2(2))の値は+4.8㎜,オーバージェット(別紙医学用語一覧2(1))の値は+1.10㎜,)平成10年6月9日の時点においては開咬 甲A3・()(3頁。オーバーバイト(別紙医学用語一覧2(2))の値は+4.8㎜,オーバージェット(別紙医学用語一覧2(1))の値は+1.10㎜,)平成10年6月9日の時点においては開咬状態になっていた乙A2・,(1枚目。しかして,C医師は「患者さんがきちんと装置を装着してい)たことを前提とすれば,6月9日の咬合と4月24日の咬合はほぼ同じであった」と証言しているところ(証人C・36頁,原告は,平成1)0年6月に被告病院口腔外科のH歯科医師(以下「H医師」という)。 ,,,と会うまではC医師の指示通り可撤式拡大装置を装着していたから 原告の開咬は被告病院小児歯科での診療終了時である平成10年4月の段階で既に生じていた。 さらに,平成9年6月27日に撮影された口腔内写真(乙A6の29ないし33)によれば,同日の時点で,原告に正中離開(別紙医学用語一覧4(2)カ)及び開咬ないし切縁咬合(別紙医学用語一覧4(2)エ)が,,,あったといえるところ原告は同月4日から同月27日までの間には可撤式拡大装置の拡大ネジを回転していないから,原告の開咬は同月4日の時点で既に生じていたと考えられる。 (イ)上記(ア)の開咬は,被告病院矯正歯科での診療終了時において,改善しておらず,さらに進行していた。 (ウ)上記(ア)(被告病院小児歯科受診中)の開咬は,可撤式拡大装置の長期使用によって生じたものである。すなわち,可撤式拡大装置による上顎骨の拡大量は,上下顎の骨の構造の違いから,上下顎で同じように装置を使用していても,下顎骨の拡大量に比して多くなり,その結果,臼歯の咬頭嵌合(別紙医学用語一覧3参照)がずれてしまうのである。 (エ)上記(イ)(被告病院矯正歯科受診中)の開咬は,D医師が上下顎前歯部の歯冠を唇側方向に回転させ 量に比して多くなり,その結果,臼歯の咬頭嵌合(別紙医学用語一覧3参照)がずれてしまうのである。 (エ)上記(イ)(被告病院矯正歯科受診中)の開咬は,D医師が上下顎前歯部の歯冠を唇側方向に回転させるクラウンバッカルトルク(別紙医学用語一覧7(4)参照)を行ったことによって生じたものである。 なおD医師はクラウンバッカルトルクというカルテ記載乙A3・,,(4枚目)は不正確であり,正確には歯根を舌側方向に回転させるルートリンガルトルク(別紙医学用語一覧7(4)参照)を行ったと証言しているが(証人D・36ないし40頁,上記証言はカルテの記載と矛盾し),。 ているしルートリンガルトルクによっても上下顎の前歯部は傾斜する(2)被告の債務不履行アC医師の義務違反(ア)治療前及び治療中におけるエックス線検査義務の違反 現在の歯学では,歯根吸収が発生した場合,歯根吸収そのものを治癒させる治療法は存在しないから,歯根吸収の重篤化を防止することは極めて重要である。 したがって,C医師は,原告に対し,被告病院小児歯科での治療を開始する前(どんなに遅くとも,唇側線の取り付けられた可撤式拡大装置を装着する平成6年8月31日の前)及び上記装置を装着した数か月後において前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときには,これを進行させないために,速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務があった。また,その後も,歯根吸収の疑いがなければ年1回の頻度で,歯根吸収の疑いがあれば6か月に1回の頻度で,前歯部のデンタルレントゲン撮影,,。 をし歯根吸収を発見したときには上記措置をとるべき義務があったしかるに,C医師は,原告に対し,被告病院小児歯科での矯正治療開始前である平成5年7月23日に本件 部のデンタルレントゲン撮影,,。 をし歯根吸収を発見したときには上記措置をとるべき義務があったしかるに,C医師は,原告に対し,被告病院小児歯科での矯正治療開始前である平成5年7月23日に本件画像1を撮影しただけで,小児歯科で治療を行っていた約5年もの間(通院実日数30日以上,一度も)デンタルレントゲン撮影をしなかった。 (イ)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反矯正治療は疾病の治療を超えて審美的な目的が大きいものであるから,C医師は,原告に対し,被告病院小児歯科での治療中に新たな不正咬合を発生させない義務を負っていた。 しかるに,C医師は,原告に対し,被告病院小児歯科での治療中に開咬(上記(1)イ(ア))という新たな不正咬合を生じさせた。 イD医師の義務違反(ア)積極的治療中止義務違反矯正装置の選択に際して,歯根吸収の危険性は,装置の効率性や個々の治療目標にも優先されるべきであるとされているところ(甲B10・ 6頁,原告には,被告病院矯正歯科での治療開始前に,既に上記(1))ア(ア)のとおりの歯根吸収が生じており,矯正治療により歯根吸収が進行する確率や重篤化する危険性がより高い状態にあった。 したがって,D医師は,原告に対し,歯根吸収の危険性の高いマルチブラケット装置を使用するような積極的治療を実施せず,治療を中止するか,又は,後戻りの経過を見ながら保定装置に切り替えるといった歯根吸収の危険性のより低い消極的治療を選択すべき義務があった。 しかるに,D医師は,上記義務に違反して,代替的な消極的治療を考慮することなく,マルチブラケット装置による積極的治療を実施した。 (イ)説明義務違反上記(ア)のとおり,原告には,被告病院矯正歯科での治療開始前に,既に歯根吸収が生じており,矯正治療による歯根吸収の ることなく,マルチブラケット装置による積極的治療を実施した。 (イ)説明義務違反上記(ア)のとおり,原告には,被告病院矯正歯科での治療開始前に,既に歯根吸収が生じており,矯正治療による歯根吸収の危険性がより高い患者であったから,力を掛けないように矯正治療を行ったとしても,歯根吸収が進行して,重篤化する危険性があった。また,原告に対しては,消極的治療を実施することが可能であった。 したがって,D医師は,原告に対し,矯正治療を開始するに当たっては,①力を掛けないように矯正治療を行ったとしても,歯根吸収が進行して,重篤化する危険性があること,②消極的治療を実施することが可能であること,③矯正治療を受けることによる利害得失(積極的治療による場合,消極的治療による場合,治療を中止する場合等の比較を含む)を説明すべき義務があった。 。 しかるに,D医師は,原告に対し「極力,力をかけないようにやり,ます(原告本人31頁「矯正をする人はみな,少しは歯根が吸収す」),るから,全くゼロではありません(甲C21・4頁)などと述べるに」とどまり,上記①ないし③のような事項を説明しなかった。 (ウ)治療中のエックス線検査義務違反 原告には被告病院矯正歯科での治療開始時に既に歯根吸収が発生していたのであるから,D医師は,原告に対し,上記ア(ア)のとおり,6か月に1回の頻度で前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときには,これを進行させないために,速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務があった。 しかるに,D医師は,原告に対し,矯正装置を装着してから一度もレントゲン撮影をしなかった。 (エ)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反上記ア(イ)のとおり,矯正治療は疾病の治 。 しかるに,D医師は,原告に対し,矯正装置を装着してから一度もレントゲン撮影をしなかった。 (エ)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反上記ア(イ)のとおり,矯正治療は疾病の治療を超えて審美的な目的が大きいものであるから,D医師は,原告に対し,被告病院矯正歯科での治療中に新たな不正咬合を発生させない義務を負っていた。 しかるに,D医師は,原告に対し,被告病院矯正歯科での治療中に被告病院小児歯科で発生した開咬を悪化させた(上記(1)イ(イ) 。 )ウ義務違反と歯根吸収,開咬との因果関係(ア)上記ア(ア)の義務違反がなければ,上記(1)ア(ア)の重篤な歯根吸収は生じなかった。 (イ)上記ア(イ)の義務違反がなければ,上記(1)イ(ア)の開咬は生じなかった。 (ウ)上記イ(ア)の義務違反がなければ(すなわち,マルチブラケット装置による積極的治療が行われていなければ,上記(1)ア(イ)の重篤な)歯根吸収は生じなかった。 (エ)上記イ(イ)の説明義務が尽くされていれば,原告は,被告病院矯正歯科において積極的治療を受けることはなく,上記(1)ア(イ)の重篤な歯根吸収が生ずることもなかった。 (オ)上記イ(ウ)の義務違反がなければ,上記(1)ア(イ)の重篤な歯根吸 収は生じなかった。 (カ)上記イ(エ)の義務違反がなければ,上記(1)イ(イ)の開咬は生じなかった。 (3)後遺障害上記(2)ア(ア)のとおり,現在の歯学では,歯根吸収が発生した場合,歯根吸収そのものを治癒させる治療法は存在しないところ,原告は,被告病院における治療により,上記(1)ア(イ)のとおりの歯根吸収が生じ,その症状が固定した。 しかして,上記歯根吸収は,自動車損害賠償保障法施行令2条関係の別表第二所定の後遺障害等級(以下,単に「後遺障害 における治療により,上記(1)ア(イ)のとおりの歯根吸収が生じ,その症状が固定した。 しかして,上記歯根吸収は,自動車損害賠償保障法施行令2条関係の別表第二所定の後遺障害等級(以下,単に「後遺障害等級」という)12級3。 号(7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの)に相当する。 すなわち,原告は,上下前歯8本に重篤な歯根吸収があって,動揺していた下顎の歯を接着剤で固定しているし,他の歯についても一般の人と同じように固いものを食べていたら動揺して接着剤で固定する治療を受けなければならない状態にある。 (4)損害下記のア,エ及びオは上記(1)ア(ア)(イ)の歯根吸収及びイ(ア)(イ)の開咬が生じたことによる損害であるから上記(2)ア及びイの各義務違反によっ,て生じた損害であるといえる。また,下記のイ及びウは,上記(3)の後遺障害が生じたことによる損害であるから,上記(2)ア(ア),イ(ア)ないし(ウ)の各義務違反によって生じた損害であるといえる。 ア不適切な治療の継続による慰謝料200万円原告は,被告病院において治療を開始する際にC医師から4年間で完治するという説明を受けていたにもかかわらず,4年間の治療でかえって咬合が悪化し,現在まで矯正治療を続けざるを得なくなっており,これに対する慰謝料は200万円が相当である。 イ後遺症慰謝料400万円上記(3)の点に,上記(2)ア(ア)の過失行為の態様の重大性,大学病院であるから信頼できるという患者の期待を大きく裏切ったこと,C医師が,原告及び両親が平成10年4月に矯正歯科に転科したいと希望した時に「」,,自分で治療するというばかりで転科させようとせず証拠保全の後も「」重篤な歯根吸収をカルテの記載に反して通常容認される程度の歯根吸収,,,,と主張し不誠実な した時に「」,,自分で治療するというばかりで転科させようとせず証拠保全の後も「」重篤な歯根吸収をカルテの記載に反して通常容認される程度の歯根吸収,,,,と主張し不誠実な対応を続けていること将来前歯が脱落したときにインプラントのために高額の医療費がかかること,これらを加味すれば,原告の後遺症慰謝料は400万円が相当である。 ウ後遺症による逸失利益971万3936円(ア)原告の後遺障害の程度は,上記(3)のとおり後遺障害等級12級相当である(労働能力喪失率は14%。 )しかして,原告は,歯根吸収の後遺障害がなければ,現実に就労を開始した平成15年4月(24歳時)から最低43年間は通常どおり稼働することが可能であった。 したがって,原告の逸失利益は次のとおりとなる。 基礎年収395万4500円(平成16年実収入額)×0.14(労働能力喪失率)×17.5459(就労可能年数43年に対応するライプニッツ係数)=971万3936円(イ)仮に実際の減収がないとの理由で逸失利益が評価されないとしても,原告は,重篤な歯根吸収により,食事のたびに食物の選択に気を遣わなければならないし,今後もほぼ一生,定期的に歯科治療を受けざるを得ないから,これらを後遺症慰謝料の増額事由として考慮すべきである。 エ治療費計105万1584円(ア)被告に支払った治療費83万7979円 (イ)後医における治療費21万3605円オ証拠保全費用14万2420円カ弁護士費用169万円 被告の主張(1)事実関係についてア重篤な歯根吸収の発生について(ア)次の諸点に照らすと,少なくとも原告の右上1番及び左上1番は,被告病院小児歯科受診前より短歯根であったといえる。 ①通常,中切歯と側切歯とでは,中切歯の てア重篤な歯根吸収の発生について(ア)次の諸点に照らすと,少なくとも原告の右上1番及び左上1番は,被告病院小児歯科受診前より短歯根であったといえる。 ①通常,中切歯と側切歯とでは,中切歯の歯根の方が長いところ,本件画像1(パナグラフィー)によれば,上顎中切歯の歯根は隣接する側切歯に比べて明らかに短い。 ,,,なおパナグラフィーにおいても歪みの大きい臼歯部はさておき歪みの少ない前歯部については詳細な撮影は可能であり,上下顎前歯の歯根の概形を把握することは十分に可能である「臨床歯科放射線。 学(甲B28)においても,パナグラフィーの利点として「他の撮」影法では得られない非常に鮮明な像(特に前歯部で)が得られ,病巣周囲の骨質まで良く観察できる(95頁「一般的な適応基準と。」),してはオルソパントモグラフィーは臼歯部上行枝パナグラフィー,,。 は前歯部に病変がある場合に対象とするなどと決めておくことが望ましい(97頁)と記載されている。 。」②被告病院小児歯科における初診時の口腔内写真(乙A6の13及び15)によれば,上顎中切歯のみならず上顎側切歯も通常より直立していることが明らかであるから,上顎中切歯が通常よりも直立していることは,本件画像1において上顎中切歯のみが短く写る理由にはならない。 ③上記②の口腔内写真に写っている程度の上顎側切歯の舌側転位(別 紙医学用語一覧4(1)ア)のみが原因で,本件画像1ほど,側切歯と比較して中切歯が短く見えることなどあり得ない。これは,下顎右側の側切歯の舌側転位の程度が上顎のそれとほぼ同程度である(乙A6),(。 )の16のに下顎のパナグラフィー乙A4の3の2本件画像1によれば左右の中切歯と側切歯とがそれぞれほぼ同程度の長さに写っていることからも 顎のそれとほぼ同程度である(乙A6),(。 )の16のに下顎のパナグラフィー乙A4の3の2本件画像1によれば左右の中切歯と側切歯とがそれぞれほぼ同程度の長さに写っていることからも明らかである。 ④ある歯牙の歯冠と歯根の割合はその歯牙の直立度合いや隣接歯の位置にほとんど影響を受けることはないと考えられるところ,本件画像1によれば,1番以外の歯牙は歯根と歯冠を比較した場合に明らかに歯根の方が長い一方,1番はいずれも歯冠と歯根とが同程度かむしろ歯根の方が短く写っている。 (イ)G医師作成にかかる意見書(乙B10,14)によれば,被告病院小児歯科における診療後である平成10年11月30日時点における原告の歯根(本件画像2参照)は,右上1番に5分の1,右上2番に11分の1,右下2番に4.5分の1,左上1番に3.5分の1,左上2番に7.3分の1,左下1番に9.3分の1,左下2番に6.8分の1の吸収がある状態であったといえる。また,被告病院矯正歯科における治療終了後である平成13年9月1日時点における原告の歯根(本件画像3参照)は,右上1番に2分の1ないし3分の1,右上2番に4分の1ないし5分の1,右上3番に15分の1,右下1番に5分の1,右下2番に3分の1ないし4分の1,右下3番に4分の1ないし5分の1,左上1番に2分の1,左上2番に3分の1,左下1番に5分の1,左下2番に3分の1ないし4分の1,左下3番に6分の1の吸収がある状態であったといえる。 なお,上記(ア)①のとおり,パナグラフィーによっても上下顎前歯の歯根の概形は十分に把握可能であること,G医師は,本件画像1に写っ た歯根の概形と本件画像2,3に写った歯根の概形とを比較の上,被告病院小児歯科初診時の歯根の概形を再現し,かつ吸収部位を示していること,G医師は 把握可能であること,G医師は,本件画像1に写っ た歯根の概形と本件画像2,3に写った歯根の概形とを比較の上,被告病院小児歯科初診時の歯根の概形を再現し,かつ吸収部位を示していること,G医師は被告病院の放射線診断・治療室室長の職にあるまさにレントゲン写真読影の専門家であることからすれば,G医師作成にかかる意見書が十分措信に値することは多言を要さない。 (ウ)上記(イ)のとおり,被告病院小児歯科における診療後である平成10年11月30日時点において3分の1以上の歯根吸収が認められる歯牙自体存在せず,同時点において原告に重篤な歯根吸収など生じていない。 また,被告病院矯正歯科における治療終了時における原告の歯根吸収程度は,小児歯科における治療終了時と比べほとんど進行がみられず,重篤とは評価できない。なお,デンタルレントゲン写真は,口腔内でのフィルムの位置づけやエックス線の照射方向,角度が撮影のたびに異なりやすく,再現性に乏しい撮影方法であるため,歯の形態や大きさに歪みが生じたエックス線写真となり,撮影ごとに異なる状態として投影されることがままあるのであり,本件画像3において歯根長が短く写ったのは,このような理由によるものと思われる。 イ開咬の発生について被告病院小児歯科においてC医師が治療を担当していた期間,原告に開咬の症状が生じたことはない。このことは,そのような記載が被告病院小児歯科におけるカルテにないことからも明らかである。 なお,被告病院口腔外科や矯正歯科において診断された原告の開咬も,オーバーバイト0.5㎜(乙A2・5枚目,乙A3・1枚目)というごくわずかなものである。 (2)被告の債務不履行についてア顎態調和法の手法特性 次の諸点に照らすと,顎態調和法は,従来のマルチブラケット装置による矯正治療とは一線を画 3・1枚目)というごくわずかなものである。 (2)被告の債務不履行についてア顎態調和法の手法特性 次の諸点に照らすと,顎態調和法は,従来のマルチブラケット装置による矯正治療とは一線を画する,極端に歯根吸収を生じさせにくい手法であるといえる。 (ア)一般に,固定式の矯正装置の方が,可撤式の矯正装置よりも歯根吸収が生じる確率が高いとされているところ,顎態調和法では可撤式の矯正装置を用いる。 (イ)一般に,傾斜移動の方が,歯体移動(別紙医学用語一覧7(2))よりも歯根吸収が生じる確率が高いとされているところ,顎態調和法においては,歯を移動させるのに,マルチブラケット装置のように歯牙部自体に力を加えるのではなく,歯槽部に対する刺激を与えるのであり,歯体移動によっている。 (ウ)一般に,強度の,ないしは持続的な矯正力は歯根吸収を生じさせる一因となり得ることが指摘されているところ,顎態調和法において用いられる矯正力は,拡大ネジの回転による拡大という機能方法からして,持続的ではなく間歇的である。また,その拡大量も,1週間に1回ないしは2回(すなわち,1週間に0.25㎜ないしは0.5㎜)であり,「歯科矯正学(甲B20)の「緩徐な拡大装置」という項の「拡大の」方法「拡大ネジの場合(241頁)に拡大の速度として記載されて」」いる「2~3日に1回(通常90°すなわち1/4回転)で0.2㎜程」,。 度よりも少ないのであって極めて弱い矯正力しか用いられていない(エ)顎態調和法で用いる装置は,側方に拡大したときに前歯部に唇側線の力が加わらないように設計してある。 また,唇側線の位置を従来の位置から下げて歯冠の中央部以下に当たるようにしているから,唇側線により前歯部に影響を与える際にも,その作用はジグリング作用のメカニズムとは異なっ ないように設計してある。 また,唇側線の位置を従来の位置から下げて歯冠の中央部以下に当たるようにしているから,唇側線により前歯部に影響を与える際にも,その作用はジグリング作用のメカニズムとは異なった作用機序である。 イC医師の義務違反について (ア)治療前及び治療中におけるエックス線検査義務の違反についてそもそも,レントゲン撮影は,放射線を人体に投射すること,換言すれば被曝させることであって,これにより喉頭ガンの発生など様々な身体的影響が生じるリスクのある行為であるし,頻繁にレントゲンを撮影することは患者に過分な費用を負担させることにもなりかねないから,レントゲン撮影は上記弊害を超える便益がある場合に限られるというべきである。 しかして,上記ア(顎態調和法の手法特性)のとおりであるから,本件においては,レントゲン検査による便益よりもこれによる弊害の方が大きかったというべきであり,レントゲン検査を実施しなかったからといってC医師に何らの過誤もない。 (イ)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反について上記(1)イのとおり,被告病院小児歯科においてC医師が治療を担当していた期間,原告に開咬の症状が生じたことはない。C医師は,被告病院小児歯科における治療中,定期的に診査を行うことで原告の歯列咬合の状態に常に注意を払っており,その診査の結果をカルテに「良好に経過」と度々記載していた。 なお,近年においては下顎歯列も安定して拡大できることが多く報告されており(乙B13,証人F・33頁,C医師が原告に行った上下)顎歯列の側方拡大においても,装置の正中に拡大ネジが埋伏されている,,()ため拡大ネジを同量回転させ左右の拡大を行う限り拡大量移動量は同量である。事実,原告に関しても,被告病院矯正歯科初診時の口 方拡大においても,装置の正中に拡大ネジが埋伏されている,,()ため拡大ネジを同量回転させ左右の拡大を行う限り拡大量移動量は同量である。事実,原告に関しても,被告病院矯正歯科初診時の口腔内写真(乙A6の43ないし47)から明らかなとおり,下顎は上顎に比して若干広く,十分に下顎歯列も拡大されており「咬頭対咬頭」と,いった状態は生じていない。 ウD医師の義務違反について(ア)積極的治療中止義務違反について上記(1)ア(イ)(ウ)のとおり,被告病院矯正歯科初診時において,原告に3分の1以上の歯根吸収が認められる歯牙は存在せず(重篤な歯根吸収は生じておらず,弱い矯正力で時間をかけて矯正を行えば重篤な)歯根吸収を生ぜしめることなく矯正を完了させることが十分に可能であったから,本件において,D医師は,原告に積極的治療を行ってはならない義務を負っていなかった。 このことは,被告病院における診療後にF医師が上下顎前歯に以下のとおりの矯正力の加わる治療を行うなどしたことからしても明らかである。 ①平成13年9月14日にホーレータイプのリテーナー(別紙医学用語一覧8(2))をセットし,また,同年10月6日,同年11月18日,同年12月22日,平成14年1月26日には「wire」すなわち唇側線を当てた。 ②原告の下顎前歯に平成16年9月22日にディスキング(歯の両サイドをわずかに削り幅をわずかに狭くすること)を施してスプリング・リテーナーをセットするとともに,その後も平成17年12月16日,平成18年7月23日と計3回にわたりディスキングを施し,平成18年2月3日から同年7月23日までの間に唇舌的な歯の移動を行った。 ③平成15年4月26日に原告の右下3番ないし左下3番にブラケットを装着する叢生の治療を提案した。 (イ スキングを施し,平成18年2月3日から同年7月23日までの間に唇舌的な歯の移動を行った。 ③平成15年4月26日に原告の右下3番ないし左下3番にブラケットを装着する叢生の治療を提案した。 (イ)説明義務違反についてD医師は,被告病院矯正歯科にて治療を開始する平成10年11月30日,原告に対し,はっきりと「矯正装置をつける前から歯根吸収があ るため,矯正によりもっと(歯根が)短くなる可能性がある」旨告げ,その次の診療日である同年12月11日には,単に歯根吸収が生じるおそれがあることの説明にとどまらず,それどころか「歯根のさらなる吸収が起こる可能性が大きいため,最悪の場合は失活(歯の神経が死ぬこと,抜歯も考えられる」とまで説明をしたのであり,説明義務は尽く)している。 なお,上記(ア)のとおり,D医師は,そもそも積極的な治療を実施してはならないという義務を負っていない以上,原告が主張するような説明義務は負っていない。 (ウ)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反について原告の咬合状態は,被告病院矯正歯科における治療により,平成12年の原告の留学に伴う治療の中断前までには,アングルⅢ級(別紙医学用語一覧5(3) ,側方歯の開咬と交叉咬合(別紙医学用語一覧4(3)))及び下顎の叢生が改善し上顎のスペースも閉鎖しオーバーコレクショ,,ン後戻りを考慮して必要以上に深くすることも含めもう少しオーバー()バイトを深くしさえすればよい状態まで開咬も含め回復していたから,被告病院矯正歯科における治療は開咬の改善に効果のある矯正治療であった。 このことは,被告病院矯正歯科におけるカルテ(平成12年2月15日,同年3月8日,同年4月26日,同年5月26日,同年6月21日の各欄)の記載からも明らかである。 (3) ある矯正治療であった。 このことは,被告病院矯正歯科におけるカルテ(平成12年2月15日,同年3月8日,同年4月26日,同年5月26日,同年6月21日の各欄)の記載からも明らかである。 (3)被告病院における診療と歯根吸収,開咬との因果関係についてア上記(1)ア(ア)のとおり,少なくとも上顎左右中切歯については被告病院小児歯科受診前から短かった。また,上記(1)ア(イ)(ウ)のとおり,被告病院小児歯科における診療後(被告病院矯正歯科初診時)に原告に重篤 な歯根吸収など生じていない。 イ被告病院口腔外科及び矯正歯科で診断された原告のわずかな量の開咬(上記(1)イ)は,下顎の下方及び前方への成長によりかみ合わせが浅くなったことが主たる原因であり,また,かみ合わせが浅くなってきたことにより出現した舌癖も大きく関与していると考えられる。 また,仮に原告が被告病院小児歯科における診療を終了した後可撤式装置(保定装置)を装着していなかったとすれば,後戻りが生じ,これが開咬の出現に寄与した可能性もある。 ウ被告病院矯正歯科での治療終了時における原告の歯根吸収程度は,上記(1)ア(ウ)のとおり,被告病院小児歯科での治療終了時と比べ,ほとんど進行が見られない。 エ上記(2)ウ(ウ)のとおり,原告の歯列咬合の状態は,平成12年の原告の留学前の段階でほとんど改善されていたのであり,これが後戻りし留学後再度治療が必要となったのは,ひとえに原告が留学期間中口腔ケアを怠り,また,指導されていた舌癖の訓練を怠ったためである。すなわち,Eクリニックにおいて診断された唇側傾斜(別紙医学用語一覧4(1)イ)及び開咬は,被告病院矯正歯科における治療が原因ではなく,原告の留学期間中の口腔ケアの怠りによりブラケットやワイヤーが外れ,その結果,舌癖により前歯部が された唇側傾斜(別紙医学用語一覧4(1)イ)及び開咬は,被告病院矯正歯科における治療が原因ではなく,原告の留学期間中の口腔ケアの怠りによりブラケットやワイヤーが外れ,その結果,舌癖により前歯部が舌により前方に押し出されたことが原因である。 (4)原告主張の説明義務違反と歯根吸収との因果関係について原告の矯正による歯列矯正に関しての指向は強固であり,仮にD医師が原告の主張するような説明義務を尽くしていたとしても,それにより原告が積極的治療を断念したとは考えがたいから,原告主張の説明義務違反(上記2(2)イ(イ))と歯根吸収との間には因果関係がない。 このことは,原告が,被告病院矯正歯科にて「歯根のさらなる吸収が起こる可能性が大きいため,最悪の場合は失活,抜歯も考えられる」との説明を ,,,受けても矯正治療を選択していること被告病院矯正歯科への通院終了後Eクリニックにおいて「積極的な矯正治療は禁忌(甲A1)と説明され,」たにもかかわらず,上記(2)ウ(ア)のとおり,上下顎前歯に矯正力の加わる治療を受けていることからしても明らかである。 (5)後遺障害について原告には,現在,歯科補綴を加えたどころか,脱落した歯も,舌で押したり手で触ったりして動いている歯もないのであって(原告本人28頁,後)遺障害は何ら存しない。 仮に将来的に原告に歯牙が動揺するような事態が生じたとしても,歯牙の保持が,歯根の長さよりもむしろ歯槽骨の状態や歯肉の状態に大きく左右されることからすれば,その歯牙の動揺が歯根吸収により歯根が短くなったことに起因するものとはいえない。 (6)原告主張の損害については,すべて否認する。 なお,原告と被告との契約は,請負契約ではなく診療契約であって,原告の歯列・咬合状態を原告の満足の得られるものにすることを債務の内容 とはいえない。 (6)原告主張の損害については,すべて否認する。 なお,原告と被告との契約は,請負契約ではなく診療契約であって,原告の歯列・咬合状態を原告の満足の得られるものにすることを債務の内容とするものではないから,仮に原告が被告病院における治療の結果に満足を得られなかったとしても,そのことをもって直ちに被告に支払った医療費が損害となるわけではない。 第3当裁判所の判断 原告に対する歯の矯正治療の経過上記第2の1の事実に証拠(甲A3ないし6,甲C21,乙A1(枝番を含む)ないし3,11,12,証人C,同D,原告本人のほか,各項に掲記し。 たもの)及び弁論の全趣旨を併せると,以下の事実が認められる。 (1)被告病院小児歯科における診療経過ア平成5年4月2日の初診時(ア)原告(当時14歳)は,平成5年4月2日,被告病院小児歯科を受 診して,C医師の診察を受けたが,その際,原告は,C医師に対し,下顎前歯の1本が舌側に生えており,かつ重なり合っている,鼻づまりがある,奥歯で咬まない,顎の動きも悪いと訴えるとともに,小学4,5,。 ,年生のときから中等度の頭痛があり時々薬を飲むと告げたC医師はセファログラム撮影(頭部エックス線規格撮影。乙A1の2・4枚目)や視診,問診を行い,原告の口腔内の状況を以下のとおりであると診断した(甲A3・3頁,甲C21・1頁,乙A1の1・1,2枚目,乙A1の2・6枚目,乙A2・1,6枚目,乙A4の1・2,乙A11・3頁,証人C・4ないし6頁,原告本人12頁。 )①ヘルマンの歯牙年令(歯の萌出状態によりその人の年齢を評価する方法)がⅣA(第二大臼歯萌出完了期(親知らず以外の永久歯が生えそろっている段階)であり,永久歯列期である。 )②前歯部の咬合関係は,叢生であり,オーバーバイトが+4 によりその人の年齢を評価する方法)がⅣA(第二大臼歯萌出完了期(親知らず以外の永久歯が生えそろっている段階)であり,永久歯列期である。 )②前歯部の咬合関係は,叢生であり,オーバーバイトが+4.8㎜,オーバージェットが+1.10㎜である。 ③臼歯部の咬合関係は正常である。 ④セファログラム撮影の結果,上下顎の位置関係は良好である。 ⑤上顎前突(別紙医学用語一覧4(2)ア)であり,アングルⅡ級1類(別紙医学用語一覧5(2)ア)である。 (イ)C医師は,以上の診断から,原告の咬合関係の改善のためには,上下顎の側方拡大(上顎と下顎をそれぞれ横方向に広げること)によって歯を並べるスペースを確保し,その後,スプリングなどの別の矯正装置を用いて上下顎の左右1,2番の位置を修正して保定する必要があると判断した(甲A3・4頁,乙A1の1・1枚目,乙A1の2・3枚目,乙A11・3頁。 )C医師は,原告の母に対し,上記の判断を告げた上「今回の矯正治,療は,可撤式拡大装置を使用する治療である。可撤式拡大装置による治 療は,痛みがなく,虫歯にもなりにくい。歯列は自然に治り,永久歯を抜かなくても歯列矯正が可能である。治療期間は3~4年程度であり,毎月1回程度の通院が必要である。3~4年にわたり可撤式拡大装置を口腔内に取り付けていても,口腔内に炎症が起こることはない。可撤式拡大装置に慣れるまでは,会話時に支障はあるが,1~2週間程度で装置に慣れるから,心配する必要はない。頭痛も良くなる」と説明し,。 矯正治療を行うかどうかを次回までに決定してもらうこととした(甲C21・1頁,乙A1の2・6枚目,乙A11・3頁,原告本人1頁。 )イ平成5年7月23日の診療C医師は,原告が矯正治療を希望したことから,矯正治療を開始することとし,口腔内写真撮影 とした(甲C21・1頁,乙A1の2・6枚目,乙A11・3頁,原告本人1頁。 )イ平成5年7月23日の診療C医師は,原告が矯正治療を希望したことから,矯正治療を開始することとし,口腔内写真撮影や顔面写真撮影,顎関節のレントゲン撮影を行った。また,永久歯の位置や埋伏歯の有無を確認するためにパナグラフィー(本件画像1)撮影を行い,これにより原告の上顎左右1番の歯根が短いと認めた。 しかし,C医師は,原告の上顎左右1番の歯根は殊更に問題にしなければならないほどの短さではない,顎態調和法による矯正治療の場合,矯正力によって歯根吸収が発現する可能性は全くなく,これを行っても臨床的に問題はないと考え,顎態調和法による治療を行うことにし,上下顎の歯型を採取した(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・6枚目,乙A2・6枚目,乙A4の3の1・2,乙A4の4・5,乙A6の1ないし6,乙A11・3,4頁,証人C・7,8,21,22,41頁。 )ウ平成5年8月18日の診療C医師は,上下顎に可撤式拡大装置(唇側線の付いていないもの)を装着し原告に対しできるだけ外さないでおくよう指導した乙A1の2・,,(6枚目,乙A6の7ないし17,乙A11・4頁,証人C・9,10,14,15頁,原告本人12頁。 ) エ平成5年9月1日の診療C医師は,可撤式拡大装置の取り外し方や同装置の回転ネジを上下とも1週間に二度回転することを指導して,上下顎の拡大を開始した(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・6枚目,乙A11・4頁,証人C・9,10頁,原告本人12,13頁。 )オC医師は,平成5年10月27日,経過観察を行い,以後も,可撤式拡大装置の拡大ネジの回転指導(中止の指導を含む,同装置の削去,修。)理を行いながら経過を観察していた。そして,平成6年8月3日, C医師は,平成5年10月27日,経過観察を行い,以後も,可撤式拡大装置の拡大ネジの回転指導(中止の指導を含む,同装置の削去,修。)理を行いながら経過を観察していた。そして,平成6年8月3日,装置交換のため,上下顎の歯型を採取した(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・7,8枚目,乙A11・4,5頁,証人C・10頁,原告本人13頁。 )カ平成6年8月31日の診療C医師は,可撤式拡大装置を唇側線の付いたものに交換して装着し,口腔内写真及び顔面写真を撮影した。そして,原告に対し,1週間に一度,同装置の拡大ネジを回転するよう指導した(乙A1の1・2枚目,乙A1,,,,)。 の2・8枚目乙A11・5頁証人C・1029頁原告本人13頁キC医師は,以後も経過観察を続け,平成7年2月15日に至るまで,可撤式拡大装置の拡大ネジの回転指導を行いながら経過を観察していた(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・8枚目,証人C・10頁,原告本人13頁。 )ク平成7年2月15日の診療C医師は,上下顎につき十分な拡大量を得られたと判断し,可撤式拡大装置の拡大ネジの回転中止を指示して,保定に入ることとした(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・8枚目,乙A11・5頁,証人C・16頁。 )ケC医師は,平成7年4月5日,上下顎の拡大により生じたスペースを利用して重なり合っていた下顎左右1,2番の位置を修正するために,下顎用の可撤式拡大装置にスプリングを添加し,以後,平成8年1月5日に至 るまで,可撤式拡大装置の修理,調整,スプリングの調整等を行いながら経過を観察していた(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・8枚目,乙A11・5頁。 )コ平成8年1月5日の診療C医師は,経過良好として治療を一応終了することとし,後戻りを防止するために夜のみ可撤式拡大装置 察していた(乙A1の1・2枚目,乙A1の2・8枚目,乙A11・5頁。 )コ平成8年1月5日の診療C医師は,経過良好として治療を一応終了することとし,後戻りを防止するために夜のみ可撤式拡大装置を装着するよう指示した乙A1の1・,(2枚目,乙A1の2・1,8枚目,乙A11・5頁,証人C・16,17頁,原告本人15,17頁。 )サC医師は,平成8年8月9日,経過観察を行い,経過が良好であること(,,)。 を確認した乙A1の1・2枚目乙A1の2・8枚目乙A11・5頁シ平成9年3月12日の診療C医師は,右下3番から左下3番にかけて,再度,叢生が生じていることを認めた。C医師は,原告に対し,口腔清掃指導を行うとともに,PM()(,,TC機械的歯面清掃を行った乙A1の1・2枚目乙A1の2・18枚目,乙A11・5頁,証人C・17頁。 )スC医師は,平成9年6月4日,上下顎の左右1,2,3番の歯並びが良くなってきたことを確認し装置交換のために上下顎の歯型を採取した乙,(A1の1・3枚目,乙A1の2・9枚目。 )セ平成9年6月25日原告の父は,平成9年6月25日,急に被告病院小児歯科を訪れ,C医師に対し,今後の見通しを尋ねた。C医師は,残り1年半で終了すると告げた(乙A1の2・9枚目,乙A11・6頁。 )ソ平成9年6月27日の診療C医師は,叢生,上顎の正中離開及び開咬が生じていることを認めた。 C医師は,可撤式拡大装置を交換して装着し,口腔内写真及び顔面写真を撮影した。そして,原告に対し,1週間に二度,同装置の拡大ネジを回転 するよう指導して,上下顎の拡大を再開した。なお,上記装置にも唇側線が取り付けられている(乙A1の1・3枚目,乙A1の2・8枚目,乙A,,,,,,6の18ないし3 の拡大ネジを回転 するよう指導して,上下顎の拡大を再開した。なお,上記装置にも唇側線が取り付けられている(乙A1の1・3枚目,乙A1の2・8枚目,乙A,,,,,,6の18ないし33乙A11・5頁証人C・14 38頁。 )タ平成9年7月2日の診療後の経過観察C医師は,平成9年7月2日に原告を診察した後,可撤式拡大装置の拡大ネジの回転指導,上顎用の可撤式拡大装置へのスプリング添加(上顎左右1番を動かすためのもの,下顎左右1,2番のスプリング(上記ケ参)照)の調整,矯正用ゴムの装着等を行いながら経過を観察した。そして,平成10年3月13日,装置交換のために上下顎の歯型を採取した(乙A1の1・3枚目,乙A1の2・9,10枚目,乙A11・5頁。 )チ平成10年3月13日原告は,平成10年3月13日,母とともに被告病院小児歯科を訪れ,C医師に対し,5年も通院しているのであるから早く治してほしいと訴えた(乙A1の1・3枚目,乙A1の2・10枚目,乙A11・5頁。 )ツ平成10年3月25日の診療C医師は,可撤式拡大装置を交換して装着し,原告に対し,装置に慣れるために一時的に一日中装着したままにしておくよう指導した(乙A1の1・3枚目,乙A1の2・10枚目。 )テ通院の中止,,,その後原告は平成10年3月27日にC医師の診療を受けたものの同年4月24日,両親とともに被告病院小児歯科を訪れ,C医師に対し,もう小児歯科での治療をやめたいと訴えた。C医師は原告及び両親に転科を思いとどまるよう説得したが,結局,原告は,治療途中であったにもかかわらず,同日の受診を最後に,以後,被告病院小児歯科への通院を中止した(甲C21・3頁,乙A1の1・3枚目,乙A1の2・10枚目,乙 A11・5,6頁。 結局,原告は,治療途中であったにもかかわらず,同日の受診を最後に,以後,被告病院小児歯科への通院を中止した(甲C21・3頁,乙A1の1・3枚目,乙A1の2・10枚目,乙 A11・5,6頁。 )(2)平成10年6月9日から同年10月30日までの被告病院における診療経過ア平成10年6月9日の口腔外科初診時(ア)原告は,平成10年6月9日,被告病院口腔外科を受診して,H医師の診察を受けたが,その際,咀嚼障害がある,前歯が咬まないと訴えるとともに,被告病院小児歯科への通院を中止した経緯,前歯で咬めるようになりたいことを告げた。H医師は,視診,問診を行い,原告の口腔内の状況を以下のとおりであると診断した(乙A1の2・1枚目,乙A2・1,2,5枚目。 )①前歯部の咬合関係は,開咬であり,オーバーバイトが+0.5㎜,オーバージェットが+1㎜である。 ②叢生はないが,舌癖がある。 ③正中離開がある。 (イ)H医師は,以上の所見を踏まえ,原告及び父に対し,今後,エック,,,ス線検査及び診査用の歯型にて診査判断し矯正のみで治療を行うか口腔外科での手術適応となるかを診断すると説明し,同日,オルソパントモ撮影やシュラー法による顎関節のレントゲン撮影,セファログラム撮影,診査用の歯型製作を行った(乙A2・6枚目,乙A4の6ないし11。 )イ平成10年8月28日の診療(ア)H医師は,原告に対し,矯正のみの治療で済みそうであることを説明し,矯正治療のために抜歯が必要であるかどうかについては診断のときにお話しすると告げ,口腔内写真撮影,顔面規格写真撮影,矯正診断用模型製作のための上下顎の歯型採取を行った(甲A12,乙A2・6枚目,乙A6の34ないし47。 ) (イ)原告は,上記説明を踏まえ,同日,H医師及びC医師とともに 顔面規格写真撮影,矯正診断用模型製作のための上下顎の歯型採取を行った(甲A12,乙A2・6枚目,乙A6の34ないし47。 ) (イ)原告は,上記説明を踏まえ,同日,H医師及びC医師とともに被告病院矯正歯科を訪れ,D医師の診察を受けた。その際,上顎左右1番の間が少し開いている,咬み合わせが浅くなったと訴えるとともに,5年前より小児歯科で上下に拡大装置を入れて両側を拡大する治療を受けてきた,下顎前歯の叢生と上顎前歯のわずかの叢生が少し治ったが,治療前は深かった咬み合わせが浅くなったと述べた。D医師は,視診,問診を行い原告の口腔内の状況を以下のとおりであると診断した乙A3・,(1枚目,乙A12・2,3頁,証人D・1,2頁。 )①アングルⅠ級(別紙医学用語一覧5(1))であるが,左側はⅢ級気味である。 ②咬み合わせはあるが,上下顎左右1番の被蓋が浅く,オーバーバイトが+0.5㎜である。 ③上顎に正中離開がある(上顎左右1番の間に1㎜の空隙がある。 。)④下顎前歯に叢生がわずかにある。 (ウ)D医師は,以上の所見から,非抜歯で治療を行うことが可能なのではないかと考えた(証人D・1頁。 )ウ平成10年9月29日の診療原告は,被告病院矯正歯科を受診して,D医師の診察を受けた。D医師は,頭部エックス線規格写真においてANB角(上顎と下顎の前後的なズレ)が+6度近くあり,上下顎骨のズレがやや大きいが,叢生が少ないため,下顎左右8番を抜歯すればその余の歯は抜歯しなくてよいと判断し,これを原告に告げた(乙A3・2枚目,乙A12・3頁,証人D・3,4頁。 )エ下顎左右8番の抜歯原告は,被告病院口腔外科において,平成10年10月9日に右下8番を,同月23日に左下8番をそれぞれ抜歯し,右下8番については同月2 0日に,左 証人D・3,4頁。 )エ下顎左右8番の抜歯原告は,被告病院口腔外科において,平成10年10月9日に右下8番を,同月23日に左下8番をそれぞれ抜歯し,右下8番については同月2 0日に,左下8番については同月30日にそれぞれ抜糸をした(乙A2・7ないし9枚目,原告本人19頁。 )(3)その後の被告病院矯正歯科における診療経過等ア平成10年10月30日の診療原告は,左下8番の抜糸をした平成10年10月30日に,被告病院矯正歯科を受診して,D医師の診察を受けたが,その際,抜糸をした箇所が痛むと訴えた。そこで,D医師は,セパレイト(5㎜大の輪ゴムを歯間に挟むこと)をしなかった(乙A3・2枚目,乙A12・3頁。 )イ平成10年11月30日の診療D医師は,上下顎左右6番に矯正用バンド(帯環)を被せる準備としてセパレイトを行った。 また,D医師は,同日までに被告病院口腔外科で撮影されたオルソパントモ(乙A4の11)を確認しており,原告の上下顎前歯の歯根が短いと判断されたため,同日,上下顎左右1,2番のデンタルレントゲン(本件画像2)撮影を行った。これらによって,D医師は,歯根吸収があるため矯正によりもっと歯根が短くなる可能性があると判断し,これを原告に告げた(乙A3・2枚目,乙A4の12の1ないし4,乙A12・3頁,証人D・2,3頁。 )ウ平成10年12月11日の診療D医師は同日までに被告病院小児歯科初診時ころのパナグラフィー本,(件画像1)を確認しており,少なくとも上顎左右1番の歯根は同小児歯科初診時のころから短かったと判断した。 そこで,D医師は,原告に対し,咬み合わせを作るために前歯を挺出させなければならないため,歯根のさらなる吸収が起こる可能性が大きいこと,最悪の場合は,失活,脱落も考えられること,被告病院小児 した。 そこで,D医師は,原告に対し,咬み合わせを作るために前歯を挺出させなければならないため,歯根のさらなる吸収が起こる可能性が大きいこと,最悪の場合は,失活,脱落も考えられること,被告病院小児歯科では取り外しのできる矯正装置が用いられていたため,治療により前歯部に歯 根吸収が起こることは考えられず,体質的に歯根が吸収しやすい可能性が考えられることを説明し,歯の保存のために歯ブラシをすることを怠らないよう指導した。原告が矯正治療を希望したため,D医師は,矯正治療を行うこととし,上下顎左右の6番に矯正用バンド(帯環)を合わせ,セメントで合着した(乙A3・2枚目,乙A4の13,乙A12・4,5頁,証人D・5ないし8,14頁,原告本人21,31頁。 )エ平成11年1月5日から平成12年7月25日に至るまでの診療(ア)D医師は,平成11年1月5日,上顎歯と下顎歯にブラケットを装着し,以後,平成12年7月25日に至るまで,歯を遠心に移動させることで隣接歯との接触関係に乱れが生じている歯を滑らかなアーチ様に並べるために,ブラケットにワイヤーを通し,状況に応じてワイヤーを交換するなどの処置を行った。また,前歯部の被蓋を深くするために,上下顎左右3番にupanddownel 垂直ゴムをかけるなどの処置を行っ()た(乙A3・2ないし4枚目,乙A6の48ないし50,乙A12・5頁。 )(イ)D医師は,平成12年2月15日,左右の側方歯が上下にしっかり咬み合うようになり,アングルⅠ級(別紙医学用語一覧5(1))に近くなったと判断し,同年3月8日には,左右6番がアングルⅠ級となり,側方歯がそろってきたと判断した。また,同年4月26日に,上下の咬み合わせが良くなってきたものの未だ十分な被蓋は得られていないが,側方歯の咬合は良好であ 3月8日には,左右6番がアングルⅠ級となり,側方歯がそろってきたと判断した。また,同年4月26日に,上下の咬み合わせが良くなってきたものの未だ十分な被蓋は得られていないが,側方歯の咬合は良好であり,犬歯関係はアングルⅠ級であると判断し,同年5月26日には,被蓋がわずかにでき,同年6月21日には,被蓋が少し深くなったと判断した(乙A3・3,4枚目,乙A12・5,6頁,証人D・9頁。 )オ平成12年7月25日の診療D医師は,原告に被告病院小児歯科初診時からかなりの歯根の吸収があ る上に上下顎左右1,2番の歯根の先が唇側で歯槽骨に触れていたことから,歯根を舌側に回転させるため,上下顎左右1,2番にルートリンガル。 ,,(. トルクを行ったその際歯根の吸収を防ぐためにブラケットの溝 022インチ×0.028インチ)に比して非常に細いワイヤー(上顎は0.017インチ×0.025インチ,下顎は0.016インチ×0.022インチ)を用いるとともに,歯冠の唇側傾斜を防ぐため,上下顎左右6番直前部のワイヤーを屈曲させてストップループとして用いた。 また,D医師は,前歯部の被蓋を深くするために,臼歯部,犬歯部のワイヤーにステップ(階段状の曲げ)を付けた上,原告に対し,上下顎左右3番に垂直ゴムをかけておかないと前歯の被蓋が浅くなるため必ず垂直ゴムをかけるよう指導した。 なお,D医師は,原告から同年8月末より平成13年5月初めまで米国留学をする予定であることを聞いたが,すぐに装置を外すと前歯の被蓋の後戻りが生じると考えたことから,原告に対し,留学中も装置を外さないよう指示した上で,歯磨きを丹念に行うよう指導した(乙A3・4枚目,乙A12・6頁,乙A14・1,2頁,証人D・9,10,23,24,30,36ないし40頁。 )カ平成1 留学中も装置を外さないよう指示した上で,歯磨きを丹念に行うよう指導した(乙A3・4枚目,乙A12・6頁,乙A14・1,2頁,証人D・9,10,23,24,30,36ないし40頁。 )カ平成12年8月18日の診療D医師は,上顎左右5番のブラケットを装着し直すとともに,上顎左右1番,下顎右2番にルートリンガルトルク(上記オと同様の配慮を施したもの)を行った。また,原告に対し,歯ブラシを注意すること,舌癖(前歯を舌で前方に押す癖)があるため,それを止める訓練をすること,上下顎左右3番に夜のみ垂直ゴムをかけることを指導した(甲C21・4頁,乙A3・5枚目,乙A12・6頁,乙A14・1,2頁,証人D・10,23,24,30,36ないし40頁,原告本人11,21,22頁。 )キ平成13年5月30日の診療 原告は,留学から帰国後の平成13年5月30日,被告病院矯正歯科を受診して,D医師の診察を受けた。D医師は,ブラケットが外れている箇所が多数あることを認めたほか,下顎の前歯に叢生が生じており,上顎の左右1番の間にはわずかな離開(空隙)があり,さらに,上顎の左右1番が唇側に傾斜してかみ合わせが浅くなっていて,後戻りが顕著であることを認めた。また,歯茎に,出血や腫れを認めた。D医師は,留学前の平成12年8月の状況との変化があまりに大きいことに衝撃を受け,原告が留学中に口腔内のケアを怠ったことがその原因ではないかと考えるととも,,,に改めて矯正のための治療を行うことにしブラケットを再装着したりワイヤーを交換するなどした(乙A3・5枚目,乙A12・6,7頁,証人D・11,27頁,原告本人9,25,26頁。 )ク平成13年6月6日原告の母は,平成13年6月6日,被告病院矯正歯科を訪れ,D医師に対し,治療にあとどのくらいかかるか,来 12・6,7頁,証人D・11,27頁,原告本人9,25,26頁。 )ク平成13年6月6日原告の母は,平成13年6月6日,被告病院矯正歯科を訪れ,D医師に対し,治療にあとどのくらいかかるか,来年4月にまた留学するが,その間はどうするかと尋ねた。D医師は,今回の留学で被告病院矯正歯科初診の時のように上顎歯列正中が離開し上顎左右1番の唇側傾斜が出たこと,唇側傾斜の発生には舌癖の影響もあること,下顎のブラケットが多数取れていたため,下顎前歯に叢生ができていること,歯茎に発赤,腫脹があること,あと半年か来年4月までには治療を終えるようにすることを説明した(乙A3・5枚目,乙A12・7頁。 )ケその後,原告は,平成13年7月25日にD医師の診療を受けた(乙A3・5枚目。 )コIクリニック受診原告は,平成13年8月4日,Iクリニックを受診した。同クリニックの歯科医師は,レントゲン撮影を行い,原告に対し「今のままだと,全,歯の歯根がだめになってしまうので,装置は全部外したほうがよい」と。 告げた(甲C21・5頁,原告本人9,26,27,30頁。 )サ平成13年8月15日原告の母は,平成13年8月15日,被告病院矯正歯科を訪れ,D医師に対し,原告が就職活動で忙しいため装置を外したいと告げるとともに,近くの(千葉の)歯科医に行って治療を続けるか,歯根が短いので矯正を続けずに装置を撤去するかについて相談した。D医師は,とにかく原告本人が一度来院して,状態を見てから,被告病院矯正歯科で取り外すか,または他の歯科医で治療を続けるかを決めるように言い,転医する場合には被告病院矯正歯科初診時の資料をコピーして渡すと話した。 原告の母は,被告病院矯正歯科初診時から上下顎前歯の歯根にかなりの吸収があり,下顎には歯槽部で歯根の触れるところがあ うに言い,転医する場合には被告病院矯正歯科初診時の資料をコピーして渡すと話した。 原告の母は,被告病院矯正歯科初診時から上下顎前歯の歯根にかなりの吸収があり,下顎には歯槽部で歯根の触れるところがあったことを何度も繰り返し話した(乙A3・5,6枚目,乙A12・7頁。 )シ通院の中止原告は,治療途中であったにもかかわらず,平成13年7月25日の受診を最後に,以後,被告病院矯正歯科への通院を中止した(乙A3・5,6枚目,乙A12・7頁。 )(4)Eクリニックにおける診療経過ア平成13年9月1日の初診時原告は,平成13年9月1日,Eクリニックを受診して,F医師の診察を受けたが,その際に,8,9年前から被告病院のC医師の診療を受け,スクリュー拡大装置で相当数の拡大を行った,原告本人の希望で被告病院小児歯科から同矯正歯科に移り,D医師の診療を受け始めたが,その時点で歯根吸収を指摘されたと告げた。F医師は,上下顎にワイヤーが入っていること,開咬状態を呈していること,叢生が生じていることを確認した上,一応,ワイヤーを外し,デンタルレントゲン(本件画像3)撮影やセファログラム撮影,口腔内写真撮影を行った。これらにより,F医師は, 上下顎左右1,2番の歯根吸収が著しいと診断した(甲A10・1,2,11頁,甲A7の1ないし4,甲A8,甲C21・5頁,証人F・18,35,36頁,原告本人29頁。 )イ平成13年9月14日から平成14年3月2日までの診療F医師は,平成13年9月14日,ブラケットを撤去し,ホーレータイプのリテーナー製作のために上下顎の歯型を採取して「矯正治療につい,てのご報告」と題する書面(甲A1)を交付した。同年10月6日には,上下顎にホーレータイプのリテーナーを装着したが,その際,上下顎左右1番及び下顎左2番に捻転 顎の歯型を採取して「矯正治療につい,てのご報告」と題する書面(甲A1)を交付した。同年10月6日には,上下顎にホーレータイプのリテーナーを装着したが,その際,上下顎左右1番及び下顎左2番に捻転(別紙医学用語一覧4(1)ウ)があったため,唇側線を軽く当てた。以後,同年11月18日及び同年12月22日には下顎左右1番に,平成14年1月26日には,上顎左2番及び下顎左右2番に,それぞれ唇側線を当てた。 原告の咬み合わせは,平成13年11月18日から深くなってきた。 原告は,平成14年3月2日,F医師に対し,3月から10か月間,バンクーバー方面に留学すると告げた甲A10・2 12頁証人F・(,,,18,36頁,原告本人29頁。 )ウ平成15年1月21日から平成17年8月10日までの診療(ア)F医師は,平成15年1月21日にデンタルレントゲン撮影や口腔内写真撮影等を行い,同年4月26日,下顎左1,2番に後戻りが生じていることを確認して,原告が下顎全体についてリテーナーを全く使用していないのではないかとの疑いを持った。F医師は,同日,原告に対し,下顎左右1,2,3番についてはダイレクト・ボンディング・システム(歯の表面に装置を直接接着する方法による矯正治療)で再治療することを提案した。これに対し,原告は,同年7月27日,叢生の再治療についてはあまり積極的でない旨を告げた。しかし,F医師は,平成16年1月20日,下顎の叢生については再治療が必要であると判断し た(甲A10・4,5,13頁,甲A11,乙A9の1・2,証人F・36,37頁。 )(イ)F医師は,平成16年7月16日,下顎のスプリング・リテーナー製作のために歯型を採取した。同年9月22日には,叢生がかなり大きいと判断し,下顎左右1,2,3番についてディスキ ,37頁。 )(イ)F医師は,平成16年7月16日,下顎のスプリング・リテーナー製作のために歯型を採取した。同年9月22日には,叢生がかなり大きいと判断し,下顎左右1,2,3番についてディスキング(近遠心隣接面のエナメル質の厚さの2分の1程度の削除を行い,必要なスペースを確保する方法。甲B24・276頁)を行った上,下顎にスプリング・リテーナーを装着した(甲A10・5頁,証人F・37頁。 )(ウ)F医師は,平成16年12月10日,下顎の叢生が治っておらず,原告のスプリング・リテーナーの使用が悪いと判断されたことから,原告に対し,夜間によく使用するよう告げた。しかし,平成17年2月18日及び同年3月30日においても,原告のスプリング・リテーナーの使用が悪いことが疑われ,同年8月10日には,原告から,1日4,5時間しかスプリング・リテーナーを使用していない旨を告げられた。そこで,F医師は,同日,スプリング・リテーナーを長時間使用するように指示した(甲A10・5,6頁,乙A10の1・2。 )エその後,現在に至るまで,原告は,定期的にEクリニックに通院してい(,,,,,)。 る甲A10・67頁証人F・1819頁原告本人1027頁 上記第2の1の事実及び第3の1の認定事実に基づいて,まず,(1)原告の咬合状態の推移,(2)原告の開咬とC医師による治療との関係について検討する。 (1)原告の咬合状態の推移についてア原告は,叢生の症状を訴えて平成5年4月2日に被告病院小児歯科を受診した(上記1(1)ア(ア) 。C医師は,上顎と下顎をそれぞれ横方向に)広げることによって歯を並べるスペースを確保し,その後,スプリングなどの別の矯正装置を用いて上下顎の左右1,2番の位置を修正して保定す る矯正治療を行った 師は,上顎と下顎をそれぞれ横方向に)広げることによって歯を並べるスペースを確保し,その後,スプリングなどの別の矯正装置を用いて上下顎の左右1,2番の位置を修正して保定す る矯正治療を行った。その結果,平成10年6月9日には,叢生の症状は改善していた(上記1(2)ア(ア) 。平成5年7月23日の被告病院小児)歯科受診時における原告の歯の状態は乙A第6号証の1ないし6のとおりであり,平成10年8月28日の被告病院口腔外科受診時における原告の(,歯の状態は乙A第6号証の41ないし47のとおりである上記1(1)イ同(2)イ(ア) 。 )イ一方,原告は,平成5年4月2日の被告病院小児歯科初診時において,オーバーバイトが+4.8㎜であり,過蓋咬合の症状が見られていたが,,,同小児歯科での治療が進むにつれて過蓋咬合の症状が改善され代わって平成9年6月27日には開咬の症状が見られるようになり,平成10年6月9日の被告病院口腔外科初診時においては,オーバーバイトが+0.5㎜となった(上記1(1)ア(ア),同(1)ソ,同(2)ア(ア) 。そこで,被告)病院の矯正歯科において開咬の症状を改善するための治療が行われた結果,平成12年5月26日には,被蓋がわずかにでき,同年6月21日には,被蓋が少し深くなるに至った(上記1(3)エ(イ) 。 )ウところが,平成13年5月に原告が米国留学から帰国した後,原告の叢生や開咬の症状は,再び悪化していた(上記1(3)キ。 )(2)原告の開咬とC医師による治療との関係について(,,,,)ア 証拠 乙A14・3頁証人C・1819頁証人D・1031頁によれば,上記(1)イの開咬は,原告の下顎の成長によって生じた可能性があることが認められ,したがって,C医師の治療行為によって生 ア 証拠 乙A14・3頁証人C・1819頁証人D・1031頁によれば,上記(1)イの開咬は,原告の下顎の成長によって生じた可能性があることが認められ,したがって,C医師の治療行為によって生じたとは認めるに足りない。 イこの点,証拠(甲B21,証人F)によれば,F医師が,上記の開咬の原因は拡大装置の長期使用により上顎大臼歯部が左右に拡大され下顎大臼歯との咬頭嵌合がずれたことにあると判断したことが認められる(甲B21・3頁,証人F・14,15,33,34,44頁。なお,甲B35, 37参照。 )しかしながら,証拠(甲B19・181,182頁)によれば,下顎は拡大でき,安定させることができるとして,下顎歯列弓拡大を全面的に肯定する見解もあることが認められるし,F医師自身,下顎の成長が原因で開咬が生じる可能性もあると証言している(証人F・45頁。 )これらに照らすと,C医師の治療行為によって原告の開咬が生じたとは認めるに足りないというほかない。 次に,(1)歯根吸収の性質,(2)本件画像2と本件画像3の読影,(3)被告病院における治療を通じて原告の上顎左右1番(中切歯)に生じた歯根吸収の程度について検討する。 (1)歯根吸収の性質について証拠(乙B2,5,6,11,12)によれば,歯に連続した強い力が加わると,歯根吸収が生じることがあり,矯正治療の際に力が加えられることによっても歯根吸収が生じること,矯正による歯根の吸収を完璧に回避することは不可能とされていること(乙B5・144,146頁,乙B11・161頁,乙B12・165頁,矯正治療により惹起される歯根吸収と,矯)正力,移動距離,様式,期間及び年齢などとの関連性について臨床的研究が数多くなされているが,いまだ原因を明確に特定するには至っていないこと(,, 頁,矯正治療により惹起される歯根吸収と,矯)正力,移動距離,様式,期間及び年齢などとの関連性について臨床的研究が数多くなされているが,いまだ原因を明確に特定するには至っていないこと(,,)。 が認められる乙B2・231頁乙B6・561頁乙B11・160頁なお,F医師も,その意見書において,矯正治療において歯根吸収が生じることが容認される場合があることを前提に,通常容認される歯根吸収はどの程度か,明確な基準はない,と述べている(甲B21・6頁。 )(2)本件画像2と本件画像3の読影についてア証拠(甲B23・11枚目)によれば,F医師は,本件画像2を読影した結果,被告病院小児歯科での治療が終了してから約7か月後において,右上1番(中切歯)に3分の1ないし2分の1,右上2番(側切歯)に4 分の1,右上3番(犬歯)に5分の1,右下1番(中切歯)に5分の1,右下2番(側切歯)に4分の1,右下3番(犬歯)に5分の1,左上1番(),(),()中切歯に2分の1左上2番側切歯に4分の1左上3番犬歯に5分の1,左下1番(中切歯)に5分の1,左下2番(側切歯)に6分の1,左下3番(犬歯)に6分の1の吸収がある状態になったと判断し,さらに,本件画像3を読影した結果,Eクリニック初診時において,右上1番(中切歯)に2分の1ないし3分の2,右上2番(側切歯)に3分の1,右上3番(犬歯)に5分の1,右下1番(中切歯)に3分の1,右下2番(側切歯)に3分の1,右下3番(犬歯)に5分の2,左上1番(中切歯)に3分の2,左上2番(側切歯)に3分の1,左上3番(犬歯)に5分の1,左下1番(中切歯)に3分の1,左下2番(側切歯)に3分の1,左下3番(犬歯)に4分の1の吸収がある状態になったと判断していることが認められる。 イ 側切歯)に3分の1,左上3番(犬歯)に5分の1,左下1番(中切歯)に3分の1,左下2番(側切歯)に3分の1,左下3番(犬歯)に4分の1の吸収がある状態になったと判断していることが認められる。 イしかしながら,他方で,証拠(乙B10・2枚目,乙B14・1枚目)によれば,G医師は,本件画像2について,右上1番(中切歯)に5分の1,右上2番(側切歯)に11分の1,右下2番(側切歯)に4.5分の1,左上1番(中切歯)に3.5分の1,左上2番(側切歯)に7.3分の1,左下1番(中切歯)に9.3分の1,左下2番(側切歯)に6.8,(),(),分の1の吸収が認められるものの右下1番中切歯右下3番犬歯左下3番(犬歯)には特に吸収は認められないと読影し,本件画像3についても,右上1番(中切歯)に3分の1ないし2分の1,右上2番(側切歯)に5分の1ないし4分の1,右上3番(犬歯)に15分の1,右下1(),(),番中切歯に5分の1右下2番側切歯に4分の1ないし3分の1右下3番(犬歯)に5分の1ないし4分の1,左上1番(中切歯)に2分の1,左上2番(側切歯)に3分の1,左下1番(中切歯)に5分の1,左下2番(側切歯)に4分の1ないし3分の1,左下3番(犬歯)に6分 の1の吸収が認められる,と読影していることが認められる。 ウそして,F医師は,本件画像3のトレース図(甲A2)から歯根吸収の割合を算定したと証言しているが(証人F・20頁,同トレース図から)上記アのように右下3番に5分の2,右下1番に3分の1の吸収があると読み取ることは困難である(証人F・20,21,24頁参照。また,)F医師は,本件画像2(デンタルレントゲン)のトレース図(甲B23・13枚目)から歯根吸収の割合を算定したと証言しているが(証人 読み取ることは困難である(証人F・20,21,24頁参照。また,)F医師は,本件画像2(デンタルレントゲン)のトレース図(甲B23・13枚目)から歯根吸収の割合を算定したと証言しているが(証人F・2),(,,,0頁 証拠 甲B21・3頁甲B23・8頁甲B25の2・2枚目証人F・31頁)によれば,上顎前歯,特に中切歯の舌側傾斜の強い場合(上顎前歯,特に中切歯の傾斜度の実測値が基準値を大きく下回る場合)には,デンタルレントゲンにおいて,歯根が実際の長さよりも短く写し出されること,本件画像2(デンタルレントゲン)が撮影される3か月前である平成10年8月28日において,原告の上顎中切歯の傾斜度の実測値は92.2°(基準値103.06°)であり,上顎中切歯が基準値に比()して10度以上も舌側に傾斜していたこと直立に近い状態であったことが認められる。そうすると,本件画像2撮影当時における原告の歯根の実際の長さは本件画像2に写し出されたものよりも長かった可能性がある。 したがって,上記当時における原告の歯根吸収の割合は,F医師の読影よりも小さかった可能性があり,そのような可能性があること自体はF医師も否定していない(証人F・32,33頁。 )エこれらに照らすと,F医師の意見書のうち本件画像2,3の読影結果を記載した部分(甲B23・11枚目)はたやすく採用し難い。 (3)被告病院における治療を通じて原告の上顎左右1番(中切歯)に生じた歯根吸収の程度について上記(2)イのとおり,G医師は,被告病院における診療後に撮影された本件画像3について右上1番(中切歯)に3分の1ないし2分の1,左上1番 (中切歯)に2分の1の歯根吸収が認められると読影しているが,他方で,上記1(1)イのとおり,被告病院小児歯科受診中の平成5年7月2 について右上1番(中切歯)に3分の1ないし2分の1,左上1番 (中切歯)に2分の1の歯根吸収が認められると読影しているが,他方で,上記1(1)イのとおり,被告病院小児歯科受診中の平成5年7月23日に本件画像1を撮影したC医師は,原告の上顎左右1番の歯根が短いと認めてい,(),,るし 証拠 乙B10・1枚目によれば本件画像1を読影したG医師も原告の上顎中切歯の歯根が隣接する側切歯の歯根に比べて際立って短いことから,少なくとも原告の上顎中切歯については被告病院小児歯科受診前から歯根が短かったと考えられる,との意見を述べていることが認められる。そして,本件全証拠によっても,被告病院における治療を通じて原告に生じた歯根吸収の程度を客観的に数値化することは困難であるといわざるを得ないが,上記のC医師やG医師の認識のとおり,原告の上顎中切歯の歯根が被告病院小児歯科受診前から通常の人より短かった可能性も十分あると考えられるから,被告病院における治療を通じて原告の上顎中切歯に生じた歯根吸収の程度が「重篤」なものであったと断定することはできない。 C医師の義務違反の主張について(1)治療前及び治療中におけるエックス線検査義務の違反の主張についてア原告は,C医師が,被告病院小児歯科での治療を開始する前(どんなに遅くとも,唇側線の取り付けられた可撤式拡大装置を装着する平成6年8月31日の前)及び上記装置を装着した数か月後において前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときには,これを進行させないために,速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務を負い,その後も,歯根吸収の疑いがなければ年1回の頻度で,歯根吸収の疑いがあれば6か月に1回の頻度で,前歯部のデンタルレントゲン撮影 止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務を負い,その後も,歯根吸収の疑いがなければ年1回の頻度で,歯根吸収の疑いがあれば6か月に1回の頻度で,前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときには,上記措置をとるべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったと主張しているので,この主張について検討する。 イまず,F医師は,証人尋問において,歯根吸収を発見した場合に矯正治 療の中止または治療方針の変更をすべきかどうかは各歯の歯根吸収の程度によると証言した上で,歯根吸収の程度に関する自己の本件画像2の読影結果(甲B23・11枚目)を前提に,本件においては矯正治療の中止または治療方針の変更をすべきであった旨を証言している(証人F・6,47頁。しかしながら,上記3(2)に判示したとおり,F医師の意見書の)うち本件画像2の読影結果を記載した部分(甲B23・11枚目)はたやすく採用し難い。 ウそして,上記1(1)アイのとおり,原告は,叢生等の不正咬合の治療のために,矯正治療を受けることを希望したものであるところ,歯根吸収の性質については上記3(1)に判示したとおりであり,歯根吸収が起きるか否か,どの程度の歯根吸収が起きるかは個々の患者によって異なることになるから,患者の希望に基づいて歯の矯正治療を行っている医師が,歯根吸収を発見した場合に常に矯正治療を中止し又は治療方針を変更する義務や,歯根吸収の発生を防止するために画一的に年1回又は6か月に1回の頻度で前歯部のデンタルレントゲン撮影を行う義務を負っていると解することはできないというべきである。 エ以上のとおりであるから,原告の上記主張を採用することはできない。 (2)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反の主張について原告は,C医 ることはできないというべきである。 エ以上のとおりであるから,原告の上記主張を採用することはできない。 (2)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反の主張について原告は,C医師が,被告病院小児歯科での治療中に新たな不正咬合を発生させない義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,開咬という新たな不正咬合を生じさせたと主張しているが,上記2(2)に判示したとおり,C医師の治療行為によって原告の開咬が生じたとは認めることができないから,C医師が,被告病院小児歯科での治療中に新たな不正咬合を発生させない義務を怠った旨をいう原告の主張を採用することはできない。 D医師の義務違反の主張について (1)積極的治療中止義務違反の主張についてア原告は,D医師が,歯根吸収の危険性の高いマルチブラケット装置を使用するような積極的治療を実施せず,治療を中止するか,又は,後戻りの経過を見ながら保定装置に切り替えるといった歯根吸収の危険性のより低い消極的治療を選択すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったと主張しているので,この主張について検討する。 イまず,F医師は,証人尋問において,治療を中止し,又は,後戻りの経過を見ながら保定装置に切り替えるといった歯根吸収の危険性のより低い消極的治療を選択すべきかどうかは各歯の歯根吸収の程度によると証言した上で,歯根吸収の程度に関する自己の本件画像2,3の読影結果(甲B23・11枚目)を前提に,本件においては治療を中止し,又は,後戻りの経過を見ながら保定装置に切り替えるといった歯根吸収の危険性のより低い消極的治療を選択すべきであった旨を証言している(証人F・6,17,45,46頁。しかしながら,上記3(2)で認定したとおり,F医)師の意見書のうち本件画像2,3の読影結果を 収の危険性のより低い消極的治療を選択すべきであった旨を証言している(証人F・6,17,45,46頁。しかしながら,上記3(2)で認定したとおり,F医)師の意見書のうち本件画像2,3の読影結果を記載した部分(甲B23・11枚目)はたやすく採用し難い。 ウそして,上記1(2)ア(ア)及びイ(イ)のとおり,被告病院矯正歯科初診時(平成10年8月28日)において,原告には,①アングルⅠ級であるが,左側はⅢ級気味である,②上下顎左右1番の被蓋が浅く,オーバーバイトが+0.5㎜である,③上顎に正中離開がある(上顎左右1番の間に1㎜の空隙がある,④下顎前歯に叢生がわずかにある,といった不正。)咬合が認められ,原告は,その改善のための矯正治療を受けることを希望したものであるところ,歯根吸収の性質については上記3(1)に判示したとおりであり,歯根吸収が起きるか否か,どの程度の歯根吸収が起きるかは個々の患者によって異なることになるから,患者の希望に基づいて歯の矯正治療を行っている医師が,一般的に歯根吸収の危険性のより低い消極 的治療を選択すべき義務を負っていると解することはできないというべきである。 エ以上のとおりであるから,原告の上記主張を採用することはできない。 (2)説明義務違反の主張についてア原告は,D医師が,矯正治療を開始するに当たって,①力を掛けないように矯正治療を行ったとしても,歯根吸収が進行して,重篤化する危険性があること,②消極的治療を実施することが可能であること,③矯正治療を受けることによる利害得失(積極的治療による場合,消極的治療による場合,治療を中止する場合等の比較を含む)を説明すべきであったにも。 かかわらず,これを怠ったと主張しているので,この主張について検討する。 イ上記1(3)イウで認定したとおり, 消極的治療による場合,治療を中止する場合等の比較を含む)を説明すべきであったにも。 かかわらず,これを怠ったと主張しているので,この主張について検討する。 イ上記1(3)イウで認定したとおり,D医師は,被告病院口腔外科で撮影されたオルソパントモ(乙A4の11)の確認により原告の上下顎前歯の歯根が短いと判断され,また,上下顎左右1,2番のデンタルレントゲン(本件画像2)の確認により歯根吸収があるため矯正によりもっと歯根が短くなる可能性があると判断されたことから,平成10年11月30日にこれを原告に説明したこと,被告病院小児歯科初診時ころのパナグラフィー(本件画像1)の確認により少なくとも上顎左右1番の歯根は同小児歯科初診時のころから短かったと判断されたことから,同年12月11日,原告に対し,咬み合わせを作るために前歯を挺出させなければならな,,,いため歯根のさらなる吸収が起こる可能性が大きいこと最悪の場合は失活,脱落も考えられること,被告病院小児歯科では取り外しのできる矯正装置が用いられていたため,治療により前歯部に歯根吸収が起こることは考えられず,体質的に歯根が吸収しやすい可能性が考えられることを説明したことが認められる。 ウ以上のとおり,D医師は,最悪の場合は,失活,脱落も考えられるとま で説明しており,このような説明を受ければ,通常,歯根吸収が進行する危険性を認識し得るというべきであるから,D医師の歯根吸収に関する事前の説明について,説明義務違反の違法があったとはいえないというべきである。 (3)治療中のエックス線検査義務違反の主張について原告は,D医師が,6か月に1回の頻度で前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときには,これを進行させないために,速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をし 義務違反の主張について原告は,D医師が,6か月に1回の頻度で前歯部のデンタルレントゲン撮影をし,歯根吸収を発見したときには,これを進行させないために,速やかに矯正治療の中止又は治療方針の変更をして重篤な歯根吸収の発生を防止すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったと主張している。 しかしながら,患者の希望に基づいて歯の矯正治療を行っている医師が,歯根吸収を発見した場合に常に矯正治療を中止し又は治療方針を変更する義務や,歯根吸収の発生を防止するために画一的に6か月に1回の頻度で前歯部のデンタルレントゲン撮影を行う義務を負っていると解することができないことは,上記4(1)ウのとおりである。 (4)治療中に新たな不正咬合を生じさせてはならない義務の違反の主張についてア原告は,D医師が,被告病院矯正歯科での治療中に新たな不正咬合を発生させない義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,被告病院小児歯科で発生した開咬を悪化させたと主張しているので,この主張について検討する。 イ上記1(3)エ(ア)(イ)で認定した事実によれば,D医師は,前歯部の被蓋を深くするために,上下顎左右3番に垂直ゴムをかけるなどの処置を行ったこと,これにより,平成12年2月15日に,左右の側方歯が上下にしっかり咬み合うようになり,アングルⅠ級に近くなったと判断されたこと同年3月8日には左右6番がアングルⅠ級となり側方歯がそろっ,,,てきたと判断されたこと,また,同年4月26日には,いまだ十分な被蓋 は得られていないが,側方歯の咬合は良好であり,犬歯関係はアングルⅠ級であると判断されたこと,同年5月26日には,被蓋がわずかにでき,,,同年6月21日には被蓋が少し深くなったと判断されたことが認められそうとすれば,D医師の行った上記措置は,開咬の アングルⅠ級であると判断されたこと,同年5月26日には,被蓋がわずかにでき,,,同年6月21日には被蓋が少し深くなったと判断されたことが認められそうとすれば,D医師の行った上記措置は,開咬の悪化を防止するための相当な措置であったということができる。 また,上記1(3)オカで認定した事実によれば,D医師が,平成12年7月25日に前歯部の被蓋を深くするために臼歯部犬歯部のワイヤー,,,にステップ(階段状の曲げ)を付けた上,原告に対し,上下顎左右3番に垂直ゴムをかけておかないと前歯の被蓋が浅くなるため必ず垂直ゴムをかけるよう指導したこと,同年8月18日に,舌癖(前歯を舌で前方に押す癖)を止める訓練をするとともに上下顎左右3番に夜のみ垂直ゴムをかけるよう指導したことが認められるところ,これが不適切であったことをうかがわせるような事情は見当たらない。 さらに,上記1(3)オカで認定した事実によれば,D医師が,歯根を舌,,,側に回転させるために平成12年7月25日には上下顎左右12番に同年8月18日には上顎左右1番及び下顎右2番にルートリンガルトルクを行ったことが認められるが,一方で,歯冠の唇側傾斜を防ぐために,上下顎左右6番直前部のワイヤーを屈曲させてストップループとして用いたことが認められる。 ウ他に,本件全証拠を検討してみても,D医師が被告病院矯正歯科での治療中に新たな不正咬合を発生させない義務を怠ったことを認めるに足りる証拠はない。 結論 以上のとおりであるから,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないというべきである。 よって,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61 条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部孝橋宏裁判長裁判官坂田大 というべきである。 よって,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61 条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部孝橋宏裁判長裁判官坂田大吾裁判官宮川広臣裁判官 (別紙)医学用語一覧 歯の名称と歯式について(1)歯の名称について歯には解剖学的に正式に番号が付いており,以下のとおり,中央から順に1番,2番・・・8番と呼ぶ(甲B17・1頁。 ,)記中切歯・・・・1番,側切歯・・・・2番,犬歯・・3番,第一小臼歯・・4番,第二小臼歯・・5番,第一大臼歯・・6番,第二大臼歯・・7番,第三大臼歯・・8番(2)歯式について歯の種類と部位を記号で表示したものである。縦線と横線を使って左右と上下を分けて4区域とし永久歯を算用数字で1ないし8と表現する甲B17・,(1,2頁。 ) オーバージェットとオーバーバイトについて(1)オーバージェットについてオーバージェットとは,前歯の突出の度合い(水平的被蓋)をいう。上の前歯が下の前歯より前方にある場合のオーバージェットの値には「+,逆の場」合には「-」を付ける。正常なオーバージェットの値は,+2~3㎜程度といわれている(甲B17・3頁。 )(2)オーバーバイトについてオーバーバイトとは,咬み合わせの深さの度合い(垂直的被蓋)をいう。上の歯が下の歯を覆っている場合のオーバーバイトの値には「+,逆の場合に」は「-」を付ける。正常なオーバーバイトの値は,+2~3㎜程度といわれている(甲B17・3頁。 ) 咬頭嵌合位について 咬頭嵌合位(中心咬合位)とは,上下顎の歯が最も緊密に咬合した状態で,このときの下顎位をいう(甲B7・25頁。 ) 不正咬合について(1)個々の歯の位置異常 ) 咬頭嵌合位について 咬頭嵌合位(中心咬合位)とは,上下顎の歯が最も緊密に咬合した状態で,このときの下顎位をいう(甲B7・25頁。 ) 不正咬合について(1)個々の歯の位置異常についてア転位。 ,,歯列弓内の正常な位置から偏位している状態をいう近心転位遠心転位唇側転位,頬側転位,舌側(口蓋側)転位などがある(甲B7・30頁。 )イ傾斜歯の唇舌軸および近遠心軸に対して回転した状態をいう。近心傾斜,遠心傾斜,唇側傾斜,舌側傾斜などがある(甲B7・31頁。 )ウ捻転歯の長軸に対して回転しているものをいう(甲B7・31頁。 )(2)不正咬合の状態を表す一般的な用語と慣用語についてア上顎前突(出っ歯)上下顎前歯の前後的な間隙,すなわちオーバージェットが7~8㎜以上もあるような不正状態(下顎が後退して上顎前突になっているものも含まれる)を総称したものである(甲B7・32頁。 。 )イ開咬上下の歯が咬合していない状態をいい,一般的には前歯部に開咬があるものをいう。臼歯部に開咬があるときは臼歯部開咬という(甲B7・32頁,甲B8・87,260頁。 )ウ叢生(乱杭歯)(),,主として前歯部の歯が数歯にわたり唇側頬側舌側と交互に転位して隣接歯との接触関係に乱れが生じている状態をいう(甲B7・32頁,甲B8・275頁,甲B24・276頁。 )エ切縁咬合 上下顎前歯が互いにその切端(切縁)で接する咬合状態をいう(甲B7・32頁,甲B8・87頁。 )オ過蓋咬合前歯部の垂直的被蓋が非常に深い状態にあるものである。下顎切歯の歯冠が3分の2以上被覆されてしまうようなものをいう(甲B7・32頁,甲B8・87頁。 )カ正中離開上顎中切歯間に空隙がある状態をいう(甲B7・32頁,甲B8・26 にあるものである。下顎切歯の歯冠が3分の2以上被覆されてしまうようなものをいう(甲B7・32頁,甲B8・87頁。 )カ正中離開上顎中切歯間に空隙がある状態をいう(甲B7・32頁,甲B8・260頁。 )(3)上下顎歯列弓関係の異常について交叉咬合とは,中心咬合では通常上顎の臼歯部は下顎臼歯部を被蓋するが,局所的に数歯の臼歯が逆被蓋になった状態をいう(甲B7・32頁,甲B8・87頁。 ) アングル(Angle)の不正咬合の分類について(甲B7・33,34頁,甲B8・87,88頁)(1)アングルⅠ級(AngleClass Ⅰ)上下顎歯列弓が正常な近遠心的関係にあるものをいう。個々の歯の不正を伴った叢生や,上下顎の切歯が前突した上下顎前突がこの分類に属する。 (2)アングルⅡ級(AngleClass Ⅱ)下顎歯列弓が上顎歯列弓に対し正常より遠心に咬合するものをいう。 アアングルⅡ級1類(AngleClass Ⅱdivision 1)両側性の下顎遠心咬合で上顎前歯が前突しているものをいう。口呼吸を伴うのが普通である。 上顎切歯が唇側に傾斜,転位,あるいは下顎切歯が舌側に傾斜し,さらには下顎歯列弓が上顎歯列弓に対して遠心位をとるため切歯のオーバージェットが大きくなる。上下口唇の閉鎖が困難となり,口唇の離開(口腔が実際の 気道となっている口呼吸と誤解される)や下口唇の過活動などの筋機能の。 異常を伴うことがある。 イアングルⅡ級2類(AngleClass Ⅱdivision 2)両側性の下顎遠心咬合で,上顎前歯が後退しているものをいう。正常な鼻呼吸を営むものである。 上顎切歯の舌側傾斜と過蓋咬合が特徴的である。しかし,過蓋咬合が切歯の舌側傾斜に起因するのか,あるいは下顎骨の骨格的な特徴によるものかは明らかではない るものをいう。正常な鼻呼吸を営むものである。 上顎切歯の舌側傾斜と過蓋咬合が特徴的である。しかし,過蓋咬合が切歯の舌側傾斜に起因するのか,あるいは下顎骨の骨格的な特徴によるものかは明らかではないが,垂直的な不正要因を含んだ不正咬合である。 (3)アングルⅢ級(AngleClass Ⅲ)。 ,下顎歯列弓が上顎歯列弓に対して正常より近心に咬合するものをいうなおClass ⅡとClass Ⅲにはそれぞれ片側性と両側性のものがある。 下顎歯列弓が上顎歯列弓に対して近心位をとるため切歯が反対咬合を示すものが多い。 画像検査について(1)パナグラフィー特殊なエックス線管球を口腔内に挿入し口腔内からエックス線を照射して撮影する方式をいう。これは,1回の撮影で1枚のエックス線フィルム上に全顎または片顎を撮影できるパノラマエックス線撮影の一方式である(甲B16・2頁,甲B29・35,57頁,甲B30。 )(2)デンタルレントゲン特定の歯の歯冠,歯根の撮影を行うものをいう。これは,歯科用エックス線フィルム(通常,歯科用標準型フィルム)を口腔内に挿入し,歯科用エックス線装置を用いて,目的部位に向かって口腔外からエックス線を当てて撮影する(,)。 口内エックス線撮影法の一種である甲B4・42頁乙A1の2・4枚目 歯の移動様式について(甲B4・34頁,甲B5・119ないし121頁,甲B7・58ないし60頁) (1)傾斜移動矯正力で歯軸が傾斜することをいう。近遠心的傾斜移動と唇(頬)舌的傾斜移動とがある。 (2)歯体移動歯全体が平行に移動することをいう。 (3)挺出歯軸に沿って歯冠方向に矯正力を加えると,歯は歯槽内から伸び出てくる。 この移動のことをいう。 (4)トルク通常のedgewise法ではアーチワイヤーに捻りを 行に移動することをいう。 (3)挺出歯軸に沿って歯冠方向に矯正力を加えると,歯は歯槽内から伸び出てくる。 この移動のことをいう。 (4)トルク通常のedgewise法ではアーチワイヤーに捻りを与え,歯根尖を頬側(あるい),()。 は舌側に移動する場合に用いrootbuccalあるいはlingualなどという 保定について(1)保定とは,動的治療によって目的の位置に移動させた歯,および顎骨をその位置と状態で長期間保持し安定できる条件を整える処置をいう甲B24・,(316頁。 )(2)ホーレータイプのリテーナーHawleyが発表した犬歯遠心から唇側線を通すタイプの保定床装置をいう。これに床の維持のため最後方臼歯に単純鉤を加えたり,臼歯部にレストやボールクラスプを用いたりした改良型が紹介され,これらも含めてホーレータイプリ(,,)。 テーナーと総称されている甲B1・101頁甲B24・317318頁 歯根吸収について歯根吸収とは,何らかの原因で,歯根のセメント質あるいは象牙質にわたって吸収の起こることをいう(乙B5・144頁,乙B6・561頁。 )以上

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