- 1 - 主文 1 被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して、2110万3620円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して、5247万2957円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告らの子であるAが大学のテニスサークルの飲み会における飲酒 が原因で死亡したことにつき、同サークルに所属していた被告らにおいて、①Aに多量の飲酒を強要したこと、②Aが多量の飲酒が原因で死亡する危険のある状態に陥ったことを認識していたにもかかわらず救護を怠ったことが不法行為に当たるとして、原告らが、被告らに対し、不法行為又は共同不法行為に基づき、各5247万2957円及びこれに対する不法行為の後である平成29 年12月12日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原告らは、被告らのほかに、①Aの介抱等をした学生ら及び、②被告らが通学していた大学を併せて被告として本件訴えを提起したところ、これらの当事者については、弁論が分離されている。 1 前提事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣 - 2 -旨により容易に認められる。)⑴ 当事者等ア A原告らの子であるA(平 ている。 1 前提事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣 - 2 -旨により容易に認められる。)⑴ 当事者等ア A原告らの子であるA(平成▲年▲月▲日生まれ)は、平成28年4月1日、近畿大学に入学し、同大学の非公認テニスサークルであるT(以 下「本件サークル」という。)に所属していた。Aは、平成29年12月11日に開催された本件サークルの飲み会(以下「本件飲み会」という。)の当時、同大学の2年生であり、成人していた。 イ被告ら被告らは、本件飲み会の当時、本件サークルに所属する近畿大学の学生 であり、本件飲み会に参加した者である。 本件飲み会の当時、被告B、被告C、被告D、被告E、被告F、被告G、被告H及び被告Iは、同大学の3年生であり、被告J及び被告Kは、同大学の2年生であった。 ウ本件サークルのメンバー L、M、N、O、P、Q、R及びS(以下、併せて「Lら」といい、個別には姓のみで表記する。)は、本件飲み会当時、近畿大学ないし他大学の2年生であり、本件サークルに所属していた。 Lらは、本件飲み会には参加しておらず、本件飲み会の終了後、本件飲み会が行われた店舗を訪れた。 ⑵ 本件飲み会の開催本件飲み会は、平成29年12月11日(以下、年月の記載のない日付は平成29年12月のものを指す。)午後7時頃から、本件サークルにおける役職を3年生から引き継ぐ2年生であるA、被告J及び被告Kを激励することを目的として、U(以下「本件店舗」という。)において開催された。 ⑶ 被告J方へのAの移動 - 3 -Aは、本件飲み会において一気飲み等により多量の飲酒をしたため、11日午後8時頃には酔いつ 本件店舗」という。)において開催された。 ⑶ 被告J方へのAの移動 - 3 -Aは、本件飲み会において一気飲み等により多量の飲酒をしたため、11日午後8時頃には酔いつぶれ、周囲の呼び掛けにも応じなくなった。 L、M、N及びO(以下「Lら4名」という。)は、同日午後10時30分頃、被告J方にAを運び入れた。 ⑷ Aの死亡(甲31、33) Aは、12日午前5時45分頃、被告Jによって、同人方において心肺停止状態であるところを発見され、救急搬送されたが、同日午後4時40分、急性アルコール中毒を原因とする蘇生後脳症により死亡した。 Aの解剖当時(13日午前9時45分から同日午前11時52分の間)の血中アルコール濃度は、1.98から3.68㎎/㎖であった。 ⑸ 略式命令(甲2の1、2の2)大阪区検察庁の検察官事務取扱検事は、令和元年11月5日、被告B、被告C、被告D及び被告E(以下「被告Bら4名」という。)並びにL、M、N、O及びP(以下「Lら5名」という。)について、Aが本件飲み会における飲酒が原因で死亡したことに関し、過失致死罪で公訴を提起し、略式命 令を請求し、大阪簡易裁判所は、同日、被告Bら4名についてそれぞれ罰金50万円、Lら5名についてそれぞれ罰金30万円の略式命令をした。 2 争点本件の争点は、次のとおりである。 ⑴ 被告らによる違法な飲酒強要の有無 ⑵ 被告らによる救護義務違反の有無⑶ 過失相殺⑷ 損害額 3 争点に対する当事者の主張争点に対する当事者の主張は、別紙主張一覧表のとおりである。 第3 当裁判所の判断 - 4 - 1 認定事実以下の事実は、当事者間に争いが 争点に対する当事者の主張争点に対する当事者の主張は、別紙主張一覧表のとおりである。 第3 当裁判所の判断 - 4 - 1 認定事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、掲記の証拠(特記のない限り枝番を含む。)、乙2の3及び被告B本人、乙3の2及び被告C本人、乙4の1及び被告D本人、乙5の1及び被告E本人、乙14の2及び被告F本人、乙15の1及び被告G本人、乙16の1及び被告H本人、乙17の1及び被告I 本人、 乙18の1及び被告J本人、乙19の1及び被告K本人(ただし、いずれも信用できない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨から認められる。 ⑴ 本件サークルの飲み会本件サークルの飲み会では、多量の飲酒が行われることが多く、飲み会の参加者には、飲み会が開催された店舗を嘔吐により汚すことのないよう、事 前に黒色のビニール袋が配られていた。 本件サークルの飲み会では、参加者から、他の参加者に対し、一気飲みをはやし立てるコールが掛けられていた。参加者の誰かがコールを掛け始めると、他の参加者も一緒になって掛け始め、コールを掛けない参加者はいなかった。(甲17) ⑵ はけさしの存在及びその役割本件サークルの飲み会では、多量の飲酒が行われ、酔いつぶれる者や嘔吐する者がまま出ていたことから、飲み会後の後片付け及び酔いつぶれた者の介抱を行う「はけさし」と称する役割が設けられていた。 はけさしは、飲み会に参加していない本件サークルの下級生によって適宜 構成され、飲み会の終了後、酔いつぶれた者の介抱や、吐しゃ物の処理など店内の清掃を行っていた。 飲み会が開催された店舗の近くで下宿している本件サークルのメンバーの下宿先に酔いつぶれた者を連れて行くことも 会の終了後、酔いつぶれた者の介抱や、吐しゃ物の処理など店内の清掃を行っていた。 飲み会が開催された店舗の近くで下宿している本件サークルのメンバーの下宿先に酔いつぶれた者を連れて行くこともあった(甲5の1)。 ⑶ 本件飲み会 ア目的 - 5 -本件飲み会は、本件サークルにおける役職(イベント係)を3年生から引き継ぐ2年生のA、被告J及び被告Kを激励するために開催された。 被告Kは、本件飲み会に先立って、被告Cから、主役なので飲むことになると聞いていた。 Aにとって、本件飲み会は、初めて参加する本件サークルの本格的な 飲み会であった。 イ着座位置本件飲み会は、11日午後7時頃から本件店舗の2階北西角に位置するテーブルにおいて開催された。Aを含む参加者11名は、一つの長机を挟んで向かい合って座り、Aは、壁側の中央辺りの座席に座っていた (甲12)。 ウ飲酒態様本件飲み会開始後、Aは、ビールを複数杯一気飲みした。 11日午後7時30分頃、飲酒の対象がウォッカに変更され、被告I がウォッカ(原液はアルコール濃度40%(甲19)。原液であったか争い があるが、結論を左右しない。)がグラスの3分の1ないし半分程度に注がれたショットグラス(容量約47~50㎖。甲19)を20杯ほど載せたお盆を複数回持ってきた。 2年生であるA、被告J及び被告Kは、ショットグラスに入ったウォッカを複数杯一気飲みした。程なくして、被告Kは、やばいですなどと 述べて嘔吐し、飲酒を中断した。(甲17)被告B及び被告Dは、Aに対し、グラスに入れた方が飲みやすいなどと言い、ショットグラス10杯以上のウォッカをビールグラス(容量約360㎖。甲19)に移し替えて手渡した。A 酒を中断した。(甲17)被告B及び被告Dは、Aに対し、グラスに入れた方が飲みやすいなどと言い、ショットグラス10杯以上のウォッカをビールグラス(容量約360㎖。甲19)に移し替えて手渡した。Aは、上記グラスのウォッカを一気飲みし(甲4の1、16の2)、ビールよりもウォッカのほうが 美味しい、飲みやすいと述べた。Aは、その後しばらくしてから、再び、 - 6 -ビールグラスに移し替えたショットグラス10杯以上のウォッカを一気飲みした(甲4、15の4、18)。 上記一連の一気飲みがされる際には、他の参加者全員から一気飲みをはやし立てるコールが掛けられていた。コールは、2年生に対して掛けられることが多かったが、3年生に対して他の参加者全員から掛けられ、 当該3年生が一気飲みをすることもあった。(甲17)Aは、他の参加者から、嘔吐するようアドバイスを受けたが、吐けないなどと述べて嘔吐しなかった(甲4の2、15の5)。 エ Aの意識喪失Aは、11日午後8時頃、自席の背もたれにもたれかかったまま、周囲 の呼び掛けに応じなくなった。被告らのうちAの周囲にいた者は、4、5人程度でAを隣卓の長椅子に運んで寝かせた。その際、Aは完全に脱力した状態であった。 その後、本件飲み会が終了するまで、被告らのうち何名かは、何度かAに声を掛けたり触ったりしたが、Aが呼び掛けに応じることはなかった。 Aの口元には若干量のよだれに泡の混じったようなものが付着していた。 (甲4の2、17、18、22)⑷ 本件飲み会の終了本件飲み会終了後、Lらがはけさしとして本件店舗に到着した。Lらが本件店舗の2階に入ってくると、被告らは、Aの飲酒量などをLらに伝えるこ となく、後は頼んだなどと述べて 飲み会の終了本件飲み会終了後、Lらがはけさしとして本件店舗に到着した。Lらが本件店舗の2階に入ってくると、被告らは、Aの飲酒量などをLらに伝えるこ となく、後は頼んだなどと述べて1階に下りた。 被告F、被告G、被告H及び被告I(以下「被告Fら4名」という。)は、その後程なくしてそれぞれ帰宅し、被告Bら4名は、本件店舗前の路上で、Lらによる後片付け等が終了するのを待った。 被告Kは、飲酒のため気分が悪くなったことから、しばらく本件店舗にと どまり、後記⑺のとおり、AがLら4名によって被告J方に運び入れられた - 7 -後、被告Jとともに自転車に乗って被告J方に帰宅した(甲23)。 ⑸ 被告Bら4名への相談Lら4名は、本件店舗の2階でAの介抱をしていたところ、Aが深いいびきをかくだけで呼び掛けに全く応じなかったこと、体温が低下していたこと、飲ませようとした水も飲もうとしなかったことなどから、単に酔って寝てい るだけではないと感じ始めた(甲5~8)。 L、N及びRは、急性アルコール中毒の症状について自身のスマートフォンで検索し、Lら5名は、Aが急性アルコール中毒に陥っているのではないかなどと話し合った(甲5、8、10)。救急隊の出動を要請すべきかについて結論が出なかったことから、Pは、11日午後9時50分頃、本件店舗 前の路上にいた被告Bら4名に対し、救急隊の出動を要請すべきかについて意見を求めに行った。しかし、被告Bら4名は、Aの状態を尋ねたり、店に戻って直接Aの状態を確認することはなく、被告Cは、Pに対し、自分たちで判断するようにと告げた(甲9)。 ⑹ 被告Bら4名への再度の相談 Pは、いったん本件店舗の2階に戻ったものの、Nは、Aの様子について することはなく、被告Cは、Pに対し、自分たちで判断するようにと告げた(甲9)。 ⑹ 被告Bら4名への再度の相談 Pは、いったん本件店舗の2階に戻ったものの、Nは、Aの様子について、本当にやばいなどと言い、再度、Pに対し、被告Bら4名を呼びに行くよう求めた(甲8の1、25)。Pは、再度、被告Bら4名に相談しに行き、被告Bは、Pと共に本件店舗の2階に上がった。被告Bは、Aに触って容体を確認することはせず、以前にも似たような人はいた、寝ているだけであり大 丈夫であるなどと言い、Aを被告J方に運び入れるよう促した。 この際、Lらの中には、Aの症状の中に急性アルコール中毒の症状と一致するものがある旨を被告Bに伝えた者もいたが、被告Bは、大丈夫だからなどと述べて取り合わなかった。(甲5~8、10)その後、被告Bら4名は、Aが未成年であるかどうかについて話をし、未 成年であったら救急車を呼ぶのはやばいなどと話し、急性アルコール中毒の - 8 -症状等についてスマートフォンで検索した。 被告C、被告D及び被告Eは、Aが被告J方に運ばれることについて異を唱えなかった。(甲15の4・5、16の3)⑺ Aの運び出しLら4名は、11日午後9時55分頃から同日午後10時30分頃にかけ て、Aを被告J方まで運んだ。Aは、本件店舗の2階から被告J方に運び入れられるまで、一切の反応を示さず、完全に脱力しており、足を引きずられた状態で運ばれた(甲29)。そのため、Lら4名にとって、Aは非常に重く感じられ、途中で複数回休憩しながら運び入れを行った。 Pは、Lら4名の少し後ろをAの荷物を運びながらついていき、途中で、 SもPに追いつき、被告J方へ向かった。(甲5~9)⑻ Aの死亡Aは、1 憩しながら運び入れを行った。 Pは、Lら4名の少し後ろをAの荷物を運びながらついていき、途中で、 SもPに追いつき、被告J方へ向かった。(甲5~9)⑻ Aの死亡Aは、11日午後10時30分頃、被告J方に運び入れられ、リビングの床に寝かされた。Aは、被告J方に運び入れられて以降も反応がなかった(甲8の2)。 被告K及びLら5名は、遅くとも12日午前0時頃までに、被告J方を退出した(甲7の1)。 被告Jは、同日午前5時46分頃、目を覚ますとAの呼吸が止まっていることに気が付き、Aの身体を揺するなどして声を掛けた。しかし、反応がなかったため、すぐに救急隊の出動を要請し、同日午前5時54分に救急隊が 到着した。(甲18、40)救急隊が到着した時点で、Aは既に心肺停止の状態にあり、病院に搬送された後に一旦蘇生したが、同日午後4時40分に死亡が確認された。Aの死因は、蘇生後脳症であり、当該死因を引き起こした原因は急性アルコール中毒であった。(甲31) ⑼ 急性アルコール中毒に関する医学的知見(甲37、38) - 9 -ア血中アルコール濃度が人体に及ぼす影響急性アルコール中毒とは、短時間における多量のアルコール摂取により、血中アルコール濃度が上昇することで人体に様々な中毒症状が出るというものである。 血中アルコール濃度に応じて人体に出る影響は次のとおりである。 血中アルコール濃度が1.5から3.0㎎/㎖千鳥足等の歩行障害、舌のもつれ、しゃっくり、吐き気、嘔吐(酩酊期) 血中アルコール濃度が3.0から4.0㎎/㎖まともに立てないなどの運動麻痺、言語障害(泥酔期) 血中アルコール濃度が4.0㎎/㎖ 、吐き気、嘔吐(酩酊期) 血中アルコール濃度が3.0から4.0㎎/㎖まともに立てないなどの運動麻痺、言語障害(泥酔期) 血中アルコール濃度が4.0㎎/㎖以上揺り動かしても起きないなどの意識障害、腱反射の消失、体温低下、失禁等の脳機能の麻痺による生理機能不全(昏睡期)イ飲酒量と血中アルコール濃度の関係短時間に多量の飲酒をすると、個人差はあるが、急激な血中アルコー ル濃度の上昇を引き起こす。血中アルコール濃度は、飲酒から約30分で最高濃度に達する。 例えば、1時間以内に、アルコール度数15%の日本酒を1 升(約1800ml)又は5%のビール中瓶10本(約5000ml)を飲むなどした場合、急性アルコール中毒を引き起こす可能性が極めて高い。 ウ救命可能時期急性アルコール中毒が原因で死亡する機序は2種類ある。一つは、アルコールを短時間に多量に摂取することにより、脳の機能が麻痺し、呼吸が停止して窒息死するというものである。もう一つは、呼吸機能が低下した状態でさらに意識を喪失した場合に吐しゃ物が気道を塞ぎ、又は 舌根沈下するなどして窒息死するというものである。 - 10 -急性アルコール中毒患者であっても、不完全ながらも呼吸があるうちに病院に搬送されれば、気管挿管するなどして人工呼吸を行い、その後アルコールが分解されるのを待つことにより、救命することができる。 ⑽ Aの血中アルコール濃度Aの解剖当時(13日午前9時45分から同日午前11時52分の間)の 大腿静脈下での血中アルコール濃度は、2.07㎎/㎖であった。 Aは、搬送先病院における治療で1500㏄の生理食塩水が投与されており、同治療の前の血中アルコール濃度は、2.69㎎/㎖以 )の 大腿静脈下での血中アルコール濃度は、2.07㎎/㎖であった。 Aは、搬送先病院における治療で1500㏄の生理食塩水が投与されており、同治療の前の血中アルコール濃度は、2.69㎎/㎖以上であった。(甲37、38)⑾ 急性アルコール中毒に関して一般的に入手し得る情報 一気飲みや、いわゆるアルコールハラスメントについては、チラシ、ポスターなどによる啓もう活動が行われている(甲47)。これらのチラシ、ポスターの一部では、すぐに救急車を呼ぶべき状態について、大いびきをかいてギュッとつねっても反応がない、揺すって呼び掛けても全く反応がない、体温が下がり冷たくなっている、倒れて口から泡を吹いている、呼吸が異常 に早くて浅い、時々しか息をしていないなどの症状が挙げられている(甲36、47の7)。 2 前記認定事実⑶イの補足説明本件飲み会において掛けられていたコールの態様について補足する。 前記認定事実⑴及び⑵のとおり、本件サークルの飲み会では、酔いつぶれる 者が出ることは珍しくなく、その介抱等をするはけさしの役割が設けられていたほか、飲み会参加者にも、嘔吐のための黒色のビニール袋が予め配布されるなどしており、多量の飲酒をすることが前提とされていた。そして、本件サークルの飲み会においては、一気飲みをはやし立てるコールが掛けられており、誰かがコールを掛け始めると、他の参加者も一緒になって掛け始め、コールを 掛けない参加者はいなかった(前記認定事実⑴)。本件飲み会も、前記認定事 - 11 -実⑶のとおり、ビールやウォッカ等の多量の飲酒・一気飲みが行われていること、一つの長机を囲んで行われていること、本件飲み会においてのみコールが掛けられない理由が見当たらないことからすれば、他の飲み会と同 のとおり、ビールやウォッカ等の多量の飲酒・一気飲みが行われていること、一つの長机を囲んで行われていること、本件飲み会においてのみコールが掛けられない理由が見当たらないことからすれば、他の飲み会と同様に、参加者の全員からコールが掛けられていたと認定することができる。 3 争点⑴(被告らによる違法な飲酒強要の有無)について 原告らは、本件サークルにおいては、多量の飲酒が常態化しており、飲酒を拒んで場を盛り下げた場合には非難の目が向けられるなどすることから、上級生を含む他の参加者から掛けられるコールに応じ、多量の飲酒・一気飲みをしなければならない心理的圧力がAにかけられており、被告らはこれを利用してAに飲酒を違法に強要した旨主張する。 前記認定事実⑶のとおり、本件飲み会では、多量の飲酒が行われ、他の参加者から一気飲みをはやし立てるコールが掛けられ、コールを掛けられた者は、これに応じて一気飲み等による飲酒をしていた。また、本件飲み会は、本件サークルにおける役職を3年生から2年生に引き継ぐために開催されたから、Aを含む2年生は、3年生の参加者と比較すると、飲酒量が多くなりやすい立場 にあったと理解される。実際、被告Kは、本件飲み会に先立って、被告Cから、主役なので飲むことになると聞いていた。こうした事実に加え、本件飲み会がAにとって初めて参加する本件サークルの本格的な飲み会であったことをも踏まえれば、Aにおいても、多量の飲酒をして場を盛り上げることが期待されていると感じていたと理解できる。 他方、本件サークルの飲み会において、コールを掛けられた参加者が一気飲みなどの飲酒をしなかった場合に、上級生その他の参加者が、飲酒するよう重ねて求めたとか、飲酒を断ることについて何らかのペナルティが設けられて サークルの飲み会において、コールを掛けられた参加者が一気飲みなどの飲酒をしなかった場合に、上級生その他の参加者が、飲酒するよう重ねて求めたとか、飲酒を断ることについて何らかのペナルティが設けられていたなどの事情は認められない。前記認定事実⑶ウのとおり、本件飲み会でも、Aと同じく2年生であり、上記のとおり多量の飲酒をして場を盛り上げること を期待された立場にあった被告Kは、一気飲み等の多量の飲酒を行った後、も - 12 -う飲めないとして飲酒を中断したが、これに対し、上級生その他の参加者がとがめたとか、飲酒するよう重ねて求めたなどの事実は認められない。 前記認定事実⑴及び⑵のとおり、本件サークルの飲み会においては、事前に嘔吐のためのビニール袋が参加者に配布され、酔いつぶれた者の介抱等のためにはけさしという役割が設けられていたものの、これらの事実は、多量の飲酒 に伴い、嘔吐をする者や酔いつぶれる者が珍しくない程度の頻度で発生していたことを示すにとどまり、これを超えて、飲酒の強要があったことを裏付けるとはいえない。 原告らは、上級生である被告B及び被告Dなどが、ウォッカをショットグラスからビールグラスに移し替えた上で、Aに対し、こうしたほうが飲みやすい などと飲酒を促したことから、飲酒強要があったと主張する。 しかし、本件サークルにおいて、学年の違いによる一般的な上下関係を超えて、2年生が3年生の要求に従わなければならない関係があったとは認められず、上記のとおり、Aにおいて飲酒の求めを拒むことができなかったというべき事情も認められない。 以上によれば、被告らによる違法な飲酒の強要があったとは認められない。 4 争点⑵(被告らによる救護義務違反の有無)について⑴ 被告Bら4名につい べき事情も認められない。 以上によれば、被告らによる違法な飲酒の強要があったとは認められない。 4 争点⑵(被告らによる救護義務違反の有無)について⑴ 被告Bら4名についてア救護義務一気飲みによる飲酒は、短時間に血中アルコール濃度の急激な上昇を 招き、急性アルコール中毒に陥るなどして死に至る危険性があるところ(前記認定事実⑼)、ウォッカといったアルコール度数が高い飲料を多量に一気飲みすれば、上記危険性が一層高まるといえる。 前記3のとおり、Aは、本件飲み会において多量の飲酒をすることにより場を盛り上げることが期待されていると感じていたと理解される。本 件飲み会の目的からすれば、被告Bら4名は、2年生であるAが上記の - 13 -とおり感じていることを認識していたと認められるところ、その上で、コールを掛け、ウォッカの入ったグラスを渡すなどして、Aに対し、一気飲みや多量の飲酒を促したということができる。被告らBら4名による上記の行為は、飲酒者に急性アルコール中毒を発生させ、場合によっては死亡させる危険のある行為といえるから、これに応じるなどして一 気飲みを行ったAにおいて、その飲酒によって急性アルコール中毒による生命の危険が生じた場合には、先行行為に基づく義務として、速やかに救急隊の出動を要請するなど、自己の行為によって発生する可能性のある死亡という結果を回避すべき義務を負うというべきである。 イ Aの状態の認識 前記認定事実⑶のとおり、Aは、11日午後7時頃から1時間ほどで、ビールを複数杯一気飲みし、ビールグラスに注がれたウォッカを一気飲みするなど多量の飲酒をした。同日午後8時頃には、周囲の呼び掛けに全く応じなくなり、隣卓の長椅子に運ば 日午後7時頃から1時間ほどで、ビールを複数杯一気飲みし、ビールグラスに注がれたウォッカを一気飲みするなど多量の飲酒をした。同日午後8時頃には、周囲の呼び掛けに全く応じなくなり、隣卓の長椅子に運ばれて寝かされた際は、完全に脱力しており、その後、参加者により声を掛けられるなどしても、何ら反 応しなかった。そうすると、Aは、遅くとも、本件飲み会が終了するまでには、急性アルコール中毒により、放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていたと認めることができる。 前記認定事実⑶のとおり、被告Bら4名は、Aを含めた11人で一つの長机を挟んで本件飲み会を開催し、Aは中央辺りの座席に座っており、 参加者全員でコールを掛けるなどしていたのであるから、Aが上記のような多量の飲酒を行っていたことを認識していたと認められる。また、Aは、周囲の者4、5人によって隣卓の長椅子に運ばれた際、完全に脱力しており、その後、周囲の者の声掛けにも全く反応しなかったところ、上記の飲酒量を踏まえれば、被告Bら4名において、Aが上記のような 状態に陥ったことを認識できたといえる。 - 14 -また、認定事実⑸及び⑹のとおり、Pは、本件飲み会終了後、二度にわたって、被告Bら4名に対し、Aのために救急隊の出動を要請すべきか相談していた。 以上によれば、被告Bら4名は、Aが急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていたことを認識していたと認め られる。 ウ小括以上のとおり、被告Bら4名は、Aが急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていることを認識していたにもかかわらず、救急隊の出動を要請するなど、上記危険を回避するための措置 をとらなかったから、被告Bら4 性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていることを認識していたにもかかわらず、救急隊の出動を要請するなど、上記危険を回避するための措置 をとらなかったから、被告Bら4名には救護義務違反が認められる。 ⑵ 被告Fら4名についてア救護義務前記認定事実⑶によれば、被告Fら4名は、被告Bら4名と同様に、本件飲み会の目的や、2年生であるAの本件飲み会における立場を理解し た上で、コールを掛けるなどして一気飲みや多量の飲酒をAに促したと認められるから、被告Bら4名について述べたところと同様の理由から、Aが飲酒により死亡する危険のある状態に陥った場合には、救急隊の出動を要請するなど、自己の先行行為によって発生する可能性のある死亡という結果を回避すべき義務を負っていたと認められる。 イ Aの状態の認識前記⑴イのとおり、Aは、遅くとも本件飲み会が終了するまでには、急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていたと認められるところ、被告Fら4名は、被告Bら4名について述べたところと同様の理由から、Aの上記状態を認識していたと認められる。 ウ小括 - 15 -被告Fら4名は、Aが急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていることを認識していたにもかかわらず、救急隊の出動を要請するなど、上記危険を回避するための措置をとらなかったから、被告Fら4名には救護義務違反が認められる。 ⑶ 被告Jについて ア救護義務前記認定事実⑶によれば、被告Jは、本件飲み会における2年生の立場を理解した上で、被告Bら4名と同様に、コールを掛けるなどして、一気飲みや多量の飲酒をAに促したと認められるから、被 ア救護義務前記認定事実⑶によれば、被告Jは、本件飲み会における2年生の立場を理解した上で、被告Bら4名と同様に、コールを掛けるなどして、一気飲みや多量の飲酒をAに促したと認められるから、被告Bら4名について述べたところと同様の理由から、Aが飲酒により放置すれば死亡 する危険のある状態に陥った場合には、救急隊の出動を要請するなど、自己の先行行為によって発生する可能性のある死亡という結果を回避すべき義務を負っていたと認められる。 被告Jは、自身もコールを掛けられる側であって、上記義務を負うに足りる先行行為がない旨主張する。しかし、前記認定事実⑶イ及び前記 2のとおり、本件飲み会では、参加者全員がコールを掛けていたから、Aが飲酒をする際は、被告Jもコールを掛けていたと認められるし、被告Jは、Aに対し、ショットグラスに注がれたウォッカにつき、一緒に飲もうなどとして飲酒を促したことが認められる(甲16)。 被告Jは、泥酔のためAの介抱を引き受けられる状態ではなかったと主 張するが、前記認定事実⑷のとおり、本件飲み会後、自転車に乗って帰宅しており、救急隊の出動を要請することがままならないほど泥酔していたとは認められない。 被告Jの上記主張は、いずれも採用することができない。 イ Aの状態の認識 前記⑴イのとおり、Aは、遅くとも本件飲み会が終了するまでには、急 - 16 -性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていたと認められるところ、被告Jは、被告Bら4名について述べたところと同様の理由から、Aの上記状態を認識していたと認められる。 また、前記認定事実⑻のとおり、Aは、本件飲み会終了後、被告J方に運び入れられているところ、それ以降も、Aは反応のない たところと同様の理由から、Aの上記状態を認識していたと認められる。 また、前記認定事実⑻のとおり、Aは、本件飲み会終了後、被告J方に運び入れられているところ、それ以降も、Aは反応のない状態であった から、この点からも、被告Jは、Aの上記状態を認識していたと認められる。 ウ小括被告Jは、Aが急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていることを認識していたにもかかわらず、前記認定事実 ⑻のとおり12日朝にAの呼吸が止まっていることに気が付くまで、救急隊の出動を要請するなど上記危険を回避するための措置をとらなかったから、救護義務違反が認められる。 ⑷ 被告Kについてア救護義務 前記認定事実⑶によれば、被告Kは、被告Jと同様に、本件飲み会における2年生の立場を理解した上で、コールを掛けるなどして、一気飲みや多量の飲酒をAに促したと認められるから、被告Jについて述べたところと同様の理由から、Aが飲酒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥った場合には、救急隊の出動を要請するなど、自己の先行行為 によって発生する可能性のある死亡という結果を回避すべき義務を負っていたと認められる。 被告Kは、自身もコールを掛けられるなどして飲まされる側であり、上記義務を負うに足りる先行行為がない旨主張する。しかし、前記⑶アで述べたとおり、本件飲み会では、参加者の全員がコールを掛けており、 Aが飲酒をする際は、被告Kもコールを掛けていたと認められるから、 - 17 -上記主張は、採用することができない。 イ Aの状態の認識前記⑴イのとおり、Aは、遅くとも本件飲み会が終了するまでには、急性アルコール中毒により放置すれば死亡す - 17 -上記主張は、採用することができない。 イ Aの状態の認識前記⑴イのとおり、Aは、遅くとも本件飲み会が終了するまでには、急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていたと認められるところ、被告Kは、被告Bら4名について述べたところ と同様の理由から、Aの上記状態を認識していたと認められる。 ウ小括被告Kは、Aが急性アルコール中毒により放置すれば死亡する危険のある状態に陥っていることを認識していたにもかかわらず、救急隊の出動を要請するなど、上記危険を回避するための措置をとらなかったから、 救護義務違反が認められる。 5 争点⑶(過失相殺)についてAが本件飲み会においてビールやウォッカを複数杯一気飲みしていたのは、前記認定事実⑶のとおりである。Aは、本件飲み会当時、成人しており、飲酒するのも初めてであったとは認められないところ、飲酒が可能な量は人により 異なるし、その時々の体調にも左右され得るから、自己の飲酒量を、自身の判断で管理すべきであったといえる。そうすると、本件飲み会において、コールを掛けるなど多量の飲酒を促す行為があったことを踏まえても、Aが自らの判断で選択した飲酒量や飲酒態様が急性アルコール中毒による死亡の結果を招いたという側面は否定できない。既に述べたとおり、本件飲み会において、コー ルを掛ける行為は参加者全員によって行われており、A以外の参加者が一気飲みをする際は、A自身もコールを掛ける立場にあった。本件における以上のような事情を踏まえれば、本件においては、飲酒を勧めた側と飲酒をした側が等しく損害を分担すべきであると判断されるから、5割の過失相殺をするのが相当である。 原告らは、飲酒強要があった うな事情を踏まえれば、本件においては、飲酒を勧めた側と飲酒をした側が等しく損害を分担すべきであると判断されるから、5割の過失相殺をするのが相当である。 原告らは、飲酒強要があった本件において過失相殺をすることは許されない - 18 -旨主張するが、前記3のとおり、違法な飲酒強要があったとは認められない。 原告らは、Aが要救護状態に陥った以上、その原因が何であれ、被告らにおいて救護義務を負っており、Aの飲酒に係る過失を考慮することは許されない旨主張するが、Aの判断による危険な飲酒をきっかけに被告らが救護義務を負うに至ったことを踏まえれば、Aの飲酒に係る過失を考慮するのが損害の公平な 分担の観点から相当である。原告らの上記主張は、いずれも採用することができない。 6 争点⑷(損害額)について⑴ Aの損害 4110万7240円被告らの救護義務違反の不法行為によるAの損害は、次のア~ウの合計7 475万4481円に5割の過失相殺をした3737万7240円(1円未満切捨て。以下同じ。)に次のエを加えた4110万7240円と認める。 ア葬儀費用 150万円イ逸失利益 5325万4481円Aは、平成29年12月12日の死亡時、大学2年生(20歳・独身) であったから、基礎収入は賃金センサス平成29年大卒男性全年齢平均の年額660万6600円とし、生活費控除率は50%とする。したがって、逸失利益は、次の計算式のとおり、5325万4481円となる。 (計算式)660万6600円×(17.9810-1.8594)×50%ウ死亡慰謝料 2000万円 Aの年齢、不法行為の態様等、本件に現れた一切の事情を考慮し、2000万円と認める。 エ弁護士費用 ×(17.9810-1.8594)×50%ウ死亡慰謝料 2000万円 Aの年齢、不法行為の態様等、本件に現れた一切の事情を考慮し、2000万円と認める。 エ弁護士費用 373万円事案の難易、請求額、認容すべき損害額、その他諸般の事情に照らし、373万円を認める。 ⑵ 原告らの損害 - 19 -被告らの救護義務違反の不法行為による原告らの損害は、次のアに被害者側の過失としてAに係る5割の過失相殺をした各50万円に次のイを加えた各55万円と認める。 ア固有の慰謝料各100万円Aの年齢、不法行為の態様等、本件に現れた一切の事情を考慮し、そ れぞれ100万円と認める。 イ弁護士費用各5万円事案の難易、請求額、認容すべき損害額、その他諸般の事情に照らし、それぞれ5万円を認める。 7 まとめ 原告らは、前記6⑴のAの損害4110万7240円に係る損害賠償請求権を2分の1ずつ相続したため、各自の取得額は、2055万3620円となる。 これに前記6⑵の原告ら各自の損害額を加えると、原告らの損害賠償請求権は、それぞれ2110万3620円となる。 第4 結論 以上によれば、原告らの請求は、各2110万3620円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払を求める限度で理由がある。 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第9民事部 裁判長裁判官達野ゆき 裁判官相澤千尋 - 20 - 裁判官林村優雅 き 裁判官相澤千尋 - 20 - 裁判官林村優雅 - 21 - 主文 1 被告B、被告C、被告D、被告E、被告F及び被告Gは、原告らそれぞれに対し、連帯して、1266万3172円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らの被告B、被告C、被告D、被告E、被告F及び被告Gに対する その余の請求並びに被告H及び被告Iに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、原告らに生じた費用の8分の6と被告B、被告C、被告D、被告E、被告F及び被告Gに生じた費用は、これを4分し、その3を原告らの負担とし、その余を同被告らの負担とし、原告らに生じたその余の費用と被告H及び被告Iに生じた費用は、原告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して、5247万2957円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員 を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告らの子であるAが大学のテニスサークルの飲み会における飲酒が原因で死亡したことにつき、同サークルに所属していた被告らにおいて、Aが多量の飲酒が原因で死亡する危険のある状態に陥ったことを認識していたに もかかわらず救護を怠ったことが不法行為に当たるとして、原告らが、被告らに対し、不法行為又は共同不法行為に基づき、各5247万2957円及びこれに対する不法行為の後である平成29年12月12日から支払済みまで ず救護を怠ったことが不法行為に当たるとして、原告らが、被告らに対し、不法行為又は共同不法行為に基づき、各5247万2957円及びこれに対する不法行為の後である平成29年12月12日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原告らは、被告らのほかに、①上記飲み会の参加者及び、②被告らの一部が - 22 -通学していた大学を併せて被告として本件訴えを提起したところ、これらの当事者については、弁論が分離されている。 1 前提事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨により容易に認められる。)⑴ 当事者等 ア A原告らの子であるA(平成▲年▲月▲日生まれ)は、平成28年4月1日、近畿大学に入学し、同大学の非公認テニスサークルであるT(以下「本件サークル」という。)に所属していた。Aは、平成29年12月11日に開催された本件サークルの飲み会(以下「本件飲み会」という。) の当時、同大学の2年生であり、成人していた。 イ被告ら本件飲み会の当時、被告B、被告C、被告D、被告E、被告F、被告H及び被告Gは、近畿大学の2年生、被告Iは、大阪樟蔭女子大学の2年生であり、本件サークルに所属していた。 ウ本件飲み会の参加者J、K、L、M、N、O、P、Q、R及びS(以下、併せて「Jら」といい、個別には姓のみで表記する。)は、いずれも本件飲み会の参加者である。本件飲み会当時、R及びSは、近畿大学の2年生であり、そのほかの者は、同大学の3年生であった。 ⑵ 本件飲み会の開催本件飲み会は、平成29年12月11日(以下、年月の記載のない日付は平成29年1 、R及びSは、近畿大学の2年生であり、そのほかの者は、同大学の3年生であった。 ⑵ 本件飲み会の開催本件飲み会は、平成29年12月11日(以下、年月の記載のない日付は平成29年12月のものを指す。)午後7時頃から、本件サークルにおける役職を3年生から引き継ぐ2年生であるA、R及びSを激励することを目的として、U(以下「本件店舗」という。)において開催された。 ⑶ R方へのAの移動 - 23 -Aは、本件飲み会において一気飲み等により多量の飲酒をしたため、11日午後8時頃には酔いつぶれ、周囲の呼び掛けにも応じなくなった。 被告らは、本件飲み会が終了する頃、本件店舗に赴いて、本件飲み会の後片付けなどをした。 被告B、被告C、被告D及び被告E(以下「被告Bら4名」という。)は、 同日午後10時30分頃、R方にAを運び入れた。 ⑷ Aの死亡(甲31、33)Aは、12日午前5時45分頃、Rによって、同人方において心肺停止状態であるところを発見され、救急搬送されたが、同日午後4時40分、急性アルコール中毒を原因とする蘇生後脳症により死亡した。 Aの解剖当時(13日午前9時45分から同日午前11時52分の間)の血中アルコール濃度は、1.98から3.68㎎/㎖であった。 ⑸ 略式命令(甲2の1、2の2)大阪区検察庁の検察官事務取扱検事は、令和元年11月5日、J、K、L及びM(以下「Jら4名」という。)並びに被告B、被告C、被告D、被告 E及び被告F(以下「被告Bら5名」という。)について、Aが本件飲み会における飲酒が原因で死亡したことに関し、過失致死罪で公訴を提起し、略式命令を請求し、大阪簡易裁判所は、同日、Jら4名についてそれぞれ罰金 F(以下「被告Bら5名」という。)について、Aが本件飲み会における飲酒が原因で死亡したことに関し、過失致死罪で公訴を提起し、略式命令を請求し、大阪簡易裁判所は、同日、Jら4名についてそれぞれ罰金50万円、被告Bら5名についてそれぞれ罰金30万円の略式命令をした。 2 争点 本件の争点は、次のとおりである。 ⑴ 被告らの救護義務違反の有無⑵ 過失相殺⑶ 損害額 3 争点に対する当事者の主張 争点に対する当事者の主張は、別紙主張一覧表のとおりである。 - 24 -第3 当裁判所の判断 1 認定事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、掲記の証拠(特記のない限り枝番含む。)、乙6の2及び被告B本人、乙7の1及び被告C本人、乙8の2及び被告D本人、乙9の2及び被告E本人、乙10の1及び被告F本人、乙11の1 及び被告H本人、乙12の1及び被告I本人、乙13の1及び被告G本人(ただし、いずれも信用できない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨から認められる。 ⑴ 本件サークルの飲み会本件サークルの飲み会では、多量の飲酒が行われることが多く、飲み会の 参加者には、飲み会が開催された店舗を嘔吐により汚すことのないよう、事前に黒色のビニール袋が配られていた。 ⑵ はけさしの存在及びその役割本件サークルの飲み会では、多量の飲酒が行われ、酔いつぶれる者や嘔吐する者がまま出ていたことから、飲み会後の後片付け及び酔いつぶれた者の 介抱を行う「はけさし」と称する役割が設けられていた。 はけさしは、飲み会に参加していない本件サークルの下級生(うち原則として幹部学生)によって適宜構成され、飲み会の終了後、酔いつぶれた者の介抱や、吐しゃ物の処理など店 役割が設けられていた。 はけさしは、飲み会に参加していない本件サークルの下級生(うち原則として幹部学生)によって適宜構成され、飲み会の終了後、酔いつぶれた者の介抱や、吐しゃ物の処理など店内の清掃を行っていた。 飲み会が開催された店舗の近くで下宿している本件サークルのメンバーの 下宿先に酔いつぶれた者を連れて行くこともあった(甲5の1)。 ⑶ 本件飲み会ア着座位置本件飲み会は、11日午後7時頃から本件店舗の2階北西角に位置するテーブルにおいて開催された。A及びJらは、一つの長机を挟んで向か い合って座り、Aは、壁側の中央辺りの座席に座っていた(甲12)。 - 25 -イ飲酒態様本件飲み会開始後、Aは、ビールを複数杯一気飲みした。 11日午後7時30分頃、飲酒の対象がウォッカに変更され、Qがウォッカ(原液であったか争いがあるが、結論を左右しない。)の注がれたショットグラスを20杯ほど載せたお盆を複数回持ってきた。(甲C5の 5、C5の8)2年生であるA、R及びSは、ショットグラスに入ったウォッカを複数杯一気飲みした。程なくして、Sは、やばいですなどと述べて嘔吐し、飲酒を中断した。 J及びLは、Aに対し、グラスに入れた方が飲みやすいなどと言い、 ショットグラス10杯以上のウォッカをビールグラスに移し替えて手渡した。Aは、上記グラスのウォッカについても一気飲みし(甲4の1、16の2)、ビールよりもウォッカのほうが美味しい、飲みやすいと述べた。Aは、その後しばらくしてから、再び、ビールグラスに移し替えたショットグラス10杯以上のウォッカを一気飲みした(甲4、15の4、 18)。 上記一連の一気飲みがされる際には、他の参加者全員から一気飲みをはやし してから、再び、ビールグラスに移し替えたショットグラス10杯以上のウォッカを一気飲みした(甲4、15の4、 18)。 上記一連の一気飲みがされる際には、他の参加者全員から一気飲みをはやし立てるコールが掛けられていた。コールは、2年生に対して掛けられることが多かったが、3年生に対して他の参加者全員から掛けられ、当該3年生が一気飲みをすることもあった。(甲17) Aは、他の参加者から、嘔吐するようアドバイスを受けたが、吐けないなどと述べて嘔吐しなかった(甲4の2、15の5)。 ウ Aの意識喪失Aは、11日午後8時頃、自席の背もたれにもたれかかったまま、周囲の呼び掛けに応じなくなった。JらのうちAの周囲にいた者は、4、5 人程度でAを隣卓の長椅子に寝かせた。その際、Aは完全に脱力した状 - 26 -態であった。 その後、本件飲み会が終了するまで、Jらのうち何名かは、何度かAに声を掛けたり触ったりしたが、Aが呼び掛けに応じることはなかった。 Aの口元には若干量のよだれに泡が混じったようなものが付着していた。 (甲4の2、17、18、22) ⑷ はけさしの出動要請被告Fは、幹部学生ではなかったものの、11日、他の幹部学生から、はけさしとして本件店舗に代わりに行くよう求められ、これに応じた。 被告B、被告C及び被告Dは、幹部学生であったため、はけさしとして本件店舗に行くことになり、一緒にいた被告E、被告H、被告I及び被告Gも、 はけさしとして同行した。(甲8の1、9の1)⑸ はけさしの到着被告Fは、11日午後9時前頃に本件店舗に到着し、その他の被告らは、同日午後9時30分頃に到着した(甲9の1)。被告らが、本件店舗の2階に上がると、Jらは、Aの飲酒量 ⑸ はけさしの到着被告Fは、11日午後9時前頃に本件店舗に到着し、その他の被告らは、同日午後9時30分頃に到着した(甲9の1)。被告らが、本件店舗の2階に上がると、Jらは、Aの飲酒量などを被告らに伝えることなく、後は頼ん だなどと述べて1階に降りた。 N、O、P及びQは、その後程なくしてそれぞれ帰宅し、Jら4名は、本件店舗前の路上で被告らによる後片付け等が終了するのを待った。 Sは、飲酒のため気分が悪くなったことから、しばらく本件店舗にとどまり、後記⑼及び⑽のとおりAがR方に運び入れられた後、RとともにR方に 帰宅した(甲23、C5の10)。 ⑹ Aの介抱ア Aの状態被告Bら4名は、長椅子に寝かされていたAに対し、呼び掛けをするなどしたが、全く反応がなかったため、Aを付近の床に移動させ、仰向け にせず回復体位をとらせて寝かせた(甲8の1)。その際も、Aは、脱力 - 27 -しており、体を動かすことはなかった(甲6の1)。 被告EがAの体を触ると、体温が下がっていた。また、Aは、深いいびきをかいており、口元には泡のようなものが付着していた(甲6の1、7の1)。被告Iは、持っていた水をAのもとへ持っていき、他の被告がAに水を飲ませようとしたが、Aは水を飲もうとしなかった(甲10)。 イ Aの状態の認識Aが、前記アの状態であったことから、被告らのうち誰かが、単に酔いつぶれて寝ているだけではなく、急性アルコール中毒に陥っているのではないかと言い出し、被告B、被告D及び被告Iは、自身のスマートフォンで急性アルコール中毒の症状を検索した(甲5、8、10)。典型症 状として、大きないびき、体温の低下、意識喪失などが挙げられて ないかと言い出し、被告B、被告D及び被告Iは、自身のスマートフォンで急性アルコール中毒の症状を検索した(甲5、8、10)。典型症 状として、大きないびき、体温の低下、意識喪失などが挙げられており、被告Bら5名において、Aの症状が該当するか話し合われた。 ウ Aの年齢の確認Aが未成年にもかかわらず飲酒をしていないかが問題となり、Aの年齢を確認することになったため、被告Hは、Aの鞄から学生証等を探し出 し、成人していることを確認した(甲11)。 ⑺ Jら4名への相談前記⑹イのとおり、急性アルコール中毒の典型症状に係る検索がされたが、Aが急性アルコール中毒に陥っているか、救急隊の出動を要請すべきかについて結論が出なかったため、被告Bら5名は、上級生のJら4名に相談する ことにした。被告Fは、本件店舗前の路上にいたJら4名に対し、救急隊の出動を要請すべきかにつき意見を求めたところ、2年生で何とかするようになどとKが告げるだけで、Jら4名は対応しなかった(甲9の1)。 ⑻ Jら4名への再度の相談被告Fは、前記⑺のJら4名の対応を受け、本件店舗の2階に一人で戻っ たが、被告Dは、Aの様子について、本当にやばいなどと言って、再度、被 - 28 -告Fに対し、Jら4名を呼びに行くよう求めた(甲8の1、25)。 被告Fは、再度、Jら4名に相談しに行き、Jは、被告Fと共に本件店舗の2階に戻った。Jは、Aに触って容体を確認することなく、以前にも似たような者がいた、寝ているだけであり大丈夫であるなどと言って、AをR方へ運び入れるよう促した。 この際、被告らの中には、Aの症状の中に急性アルコール中毒の症状に一致するものがある旨Jに伝えた者もいたが、Jは、大丈夫だか 丈夫であるなどと言って、AをR方へ運び入れるよう促した。 この際、被告らの中には、Aの症状の中に急性アルコール中毒の症状に一致するものがある旨Jに伝えた者もいたが、Jは、大丈夫だからなどと述べて取り合わなかった。(甲8の1)⑼ Aの運び出し被告Bら4名は、11日午後9時55分頃から同日午後10時30分頃に かけて、AをR方まで運んだ。Aは、本件店舗の2階からR方に運び入れられるまで、一切の反応を示さず、完全に脱力しており、足を引きずられた状態で運ばれた(甲29)。そのため、被告Bら4名にとって、Aは非常に重く感じられ、途中で複数回休憩した。 被告Fは、被告Bら4名の少し後ろをAの荷物を運びながらついていき、 途中で、被告Gも被告Fに追いつき、R方へ向かった。(甲5~9)⑽ Aの運び入れR方は、アパートの3階であったため、被告Bら5名及び被告Gは、協力して同アパートの屋外階段を上り、AをR方に運び入れた(被告F本人22、23頁)。Aは、R方に運び入れられて以降も反応がなかった。(甲8の1) その後、被告Gは、アルバイトを理由にR方を後にし、被告Bら5名及びSも、遅くとも12日午前0時頃までには退出した。(甲5~9、18)⑾ Aの死亡Rは、12日午前5時46分頃、目を覚ますとAの呼吸が止まっていることに気が付き、Aの身体を揺するなどして声を掛けた。しかし、反応がなか ったため、すぐに救急隊の出動を要請し、同日午前5時54分に救急隊が到 - 29 -着した。(甲18、40)救急隊が到着した時点で、Aは既に心肺停止の状態にあり、病院に搬送された後に一旦蘇生したが、同日午後4時40分に死亡が確認された。Aの死因は、蘇生後脳症であり、当該死因を 着した。(甲18、40)救急隊が到着した時点で、Aは既に心肺停止の状態にあり、病院に搬送された後に一旦蘇生したが、同日午後4時40分に死亡が確認された。Aの死因は、蘇生後脳症であり、当該死因を引き起こした原因は急性アルコール中毒であった。(甲31) ⑿ 急性アルコール中毒に関する医学的知見(甲37、38)ア血中アルコール濃度が人体に及ぼす影響急性アルコール中毒とは、短時間における多量のアルコール摂取により、血中アルコール濃度が上昇することで人体に様々な中毒症状が出るというものである。 血中アルコール濃度に応じて人体に出る影響は次のとおりである。 血中アルコール濃度が1.5から3.0㎎/㎖千鳥足等の歩行障害、舌のもつれ、しゃっくり、吐き気、嘔吐(酩酊期) 血中アルコール濃度が3.0から4.0㎎/㎖ まともに立てないなどの運動麻痺、言語障害(泥酔期) 血中アルコール濃度が4.0㎎/㎖以上揺り動かしても起きないなどの意識障害、腱反射の消失、体温低下、失禁等の脳機能の麻痺による生理機能不全(昏睡期)イ救命可能時期 急性アルコール中毒が原因で死亡する機序は2種類ある。一つは、アルコールを短時間に多量に摂取することにより、脳の機能が麻痺し、呼吸が停止して窒息死するというものである。もう一つは、呼吸機能が低下した状態でさらに意識を喪失した場合に吐しゃ物が気道を塞ぎ、又は舌根沈下するなどして窒息死するというものである。 急性アルコール中毒患者であっても、不完全ながらも呼吸があるうちに - 30 -病院に搬送されれば、気管挿管するなどして人工呼吸を行い、その後アルコールが分解されるのを待つことにより、救命する 急性アルコール中毒患者であっても、不完全ながらも呼吸があるうちに - 30 -病院に搬送されれば、気管挿管するなどして人工呼吸を行い、その後アルコールが分解されるのを待つことにより、救命することができる。 ⒀ Aの血中アルコール濃度Aの解剖当時(13日午前9時45分から同日午前11時52分の間)の大腿静脈下での血中アルコール濃度は、2.07㎎/㎖であった。 Aは、搬送先病院における治療で1500㏄の生理食塩水が投与されており、同治療の前の血中アルコール濃度は、2.69㎎/㎖以上であった。(甲37、38)⒁ 急性アルコール中毒に関して一般的に入手し得る情報一気飲みや、いわゆるアルコールハラスメントについては、チラシ、ポス ターなどによる啓もう活動が行われている(甲47)。これらのチラシ、ポスターの一部では、すぐに救急車を呼ぶべき状態について、大いびきをかいてギュッとつねっても反応がない、揺すって呼び掛けても全く反応がない、体温が下がり冷たくなっている、倒れて口から泡を吹いている、呼吸が異常に早くて浅い、時々しか息をしていないなどの症状が挙げられている(甲3 6、47の7)。 2 争点⑴(被告らの救護義務違反の有無)について⑴ 被告Bら5名について被告Bら5名は、はけさしとして、酔いつぶれた者を介抱することなどを目的として本件店舗を訪れているところ、前記認定事実⑹のとおり、Aは、 被告Bら5名が介抱を始めた時点で、長椅子に寝かされており、呼び掛けても全く反応がなく、床に移動させる際も、脱力しており体を動かすことはなく、体温が低下し、深いいびきをかいていた。そのため、被告Bら5名は、Aが単に酔いつぶれて寝ているのではなく、急性アルコール中毒に陥っているのではないかと疑った。もっ 脱力しており体を動かすことはなく、体温が低下し、深いいびきをかいていた。そのため、被告Bら5名は、Aが単に酔いつぶれて寝ているのではなく、急性アルコール中毒に陥っているのではないかと疑った。もっとも、前記認定事実⑺及び⑻のとおり、被告 Bら5名では判断がつかなかったため、本件飲み会におけるAの飲酒量や飲 - 31 -酒態様を知るJら4名に対し、救急隊の出動を要請すべきかにつき2度にわたって相談したところ、Jから、以前の経験からして寝ているだけであり大丈夫であるからR方へ運び入れるよう言われた。被告Bら5名は、Jの指示に従ったものの、前記認定事実⑼のとおり、Aは、被告Bら4名によって運ばれている際、完全に脱力し、足を引きずられた状態であり、男子大学生4 人が途中で複数回休憩しなければ運ぶことができないほど重く感じられた。 前記認定事実⑼のとおり、本件店舗からR方まで冬の夜道を30分以上かけて歩いて移動し、アパートの3階まで屋外階段を上って運んでも、Aの意識が回復することはなかった。被告Fは、自らAを運んでいないが、Aを運ぶ被告Bら4名の後をついてR方まで赴いているから、上記のようなAの状態 を認識していたと認められる。 そうすると、被告Bら5名は、本件店舗にいた時点では、Jの打ち消し発言などによりAが酒に酔って寝ているだけであると判断したとしても、遅くとも上記運び入れの時点では、Aについて、本件店舗で疑ったとおり急性アルコール中毒に陥っており、単に寝ているのではなく意識障害が生じており、 放置すれば死亡する危険のある状態であることを認識することができたといえる。そして、そのような状態のAをR方へ運び入れた場合、本件店舗内などとは異なって、Aの状態が第三者の目に触れることはなくなり、Aの状態を確認することが る状態であることを認識することができたといえる。そして、そのような状態のAをR方へ運び入れた場合、本件店舗内などとは異なって、Aの状態が第三者の目に触れることはなくなり、Aの状態を確認することができるのはR方にいる者のみとなるから、R方への運び入れによって、被告Bら5名は、Aの保護を排他的に引き受けたと認められる。 また、上記のとおり、本件店舗において救急隊の出動を要請すべきかについてJら4名に相談していたことからしても、救急隊の出動を要請することは容易に思いつく手段であったといえるから、被告Bら5名は、Aの死亡という結果を回避するために、救急隊の出動を要請する義務を負っていたといえる。 それにもかかわらず、被告Bら5名は、AをR方に運び入れると、救急隊 - 32 -の出動を要請することなくR方を後にしたのであるから、救護義務違反が認められる。 ⑵ 被告H及び被告I について被告H及び被告Iは、はけさしとして本件店舗を訪れ、被告Iは、前記認定事実⑹アのとおり、Aのもとに水を持って行き、同イのとおり、急性アル コール中毒の症状についてスマートフォンで検索し、被告Hは、同ウのとおり、Aの年齢を確認している。しかし、前記認定事実⑸のとおり、被告H及び被告Iは、JらからAの飲酒量などを知らされていなかった上、Jら4名への相談の結果、Aが急性アルコール中毒であるとの判断はされなかった。 被告H及び被告Iにおいて、AをR方に運び入れる旨の決定に関与したとは 認められないし、AをR方に運び入れる際も、被告H及び被告Iは同行しておらず、運び入れの最中や運び入れ後のAの様子を知る機会はなかった。 以上によれば、被告H及び被告Iにおいて、Aが放置すれば死亡する危険のある状態であることを知りながら、その保護を排他的 は同行しておらず、運び入れの最中や運び入れ後のAの様子を知る機会はなかった。 以上によれば、被告H及び被告Iにおいて、Aが放置すれば死亡する危険のある状態であることを知りながら、その保護を排他的に引き受けたと認めるに足りないから、被告H及び被告Iにつき、救護義務違反があったとは認 められない。 ⑶ 被告Gについて被告Gは、はけさしとして本件店舗を訪れているものの、本件店舗において、Aの介抱をしたことや、AをR方に運び入れる旨の決定に関与したことを認めるに足りる証拠はない。 他方で、前記認定事実⑼とのおり、被告Gは、AをR方に運び入れる被告Bら4名の後ろを被告Fとともについていき、前記認定事実⑽のとおり、R方の屋外階段においてAを運ぶのに加わり、AをR方に運び入れている。そうすると、被告Gにおいても、被告Bら5名と同様に、Aの運び入れにより、放置すれば死亡する危険のある状態であったAの保護を排他的に引き受けた と認められるから、救急隊の出動を要請する義務を負っていたといえる。 - 33 -被告Gは、本件店舗において片付けに専念しており、Aが危険な状態に陥っていたことを認識していないと主張するが、Aの運び入れに関する上記のような被告Gの関与の態様からすれば、Aが完全に脱力しており、単に寝ているのではなく意識障害が生じており、放置すれば死亡する危険のある状態であることを認識することができたと認められる。被告Gの上記主張は、採 用することができない。 被告Gは、被告Bら5名と同様に、Aの死亡という結果を回避するために救急隊の出動を要請する義務を負っていたにもかかわらず、これをすることなく、AをR方に残して退去したのであるから、救護義務違反が認められる。 3 争点⑵(過失相殺)について う結果を回避するために救急隊の出動を要請する義務を負っていたにもかかわらず、これをすることなく、AをR方に残して退去したのであるから、救護義務違反が認められる。 3 争点⑵(過失相殺)について Aは、本件飲み会当時、成人しており、飲酒するのも初めてであったとは認められないところ 、飲酒が可能な量は人により異なるし、その時々の体調にも左右され得るから、自己の飲酒量を、自身の判断で管理すべきであったといえる。そうしたところ、Aが本件飲み会においてビールやウォッカを複数杯一気飲みしていたのは、前記認定事実⑶のとおりである。本件飲み会におけるA の飲酒量は、一般的な飲酒量を超えていたと評価することができるし、飲酒後のAの状態から考えても、A自身の飲酒可能な量をも大きく超えたものであり、飲酒態様も含め、分別を欠いた無謀なものであったといわざるを得ない。そうすると、本件飲み会において、コールを掛けるなど多量の飲酒を促す行為があったこと踏まえても、自ら上記のような飲酒をしたA自身にも過失があったと いえる。そして、被告Bら5名及び被告Gは、本件飲み会に参加しておらず、本件飲み会の終了時に上級生から呼ばれて本件店舗に赴き、Aの本件飲み会における飲酒量や飲酒態様を知らされることなくその介抱を委ねられ、他の学生の下宿先にAを運ぶよう指示されて、これに応じたにすぎない立場であった。 本件における以上のような事情を踏まえれば、Aの上記過失は被告Bら5名及 び被告Gの救護義務違反に係る過失に比べて大きいといわざるを得ないから、 - 34 -7割の過失相殺をするのが相当である。 原告らは、Aが本件飲み会において飲酒の強要を受けたことからすれば、飲酒につきAに過失があったとはいえない旨主張する。 しかし、本件サーク 34 -7割の過失相殺をするのが相当である。 原告らは、Aが本件飲み会において飲酒の強要を受けたことからすれば、飲酒につきAに過失があったとはいえない旨主張する。 しかし、本件サークルの飲み会において、コールが掛けられた参加者が飲酒をしなかった場合に、上級生その他の参加者が、飲酒をするよう重ねて求めた とか、飲酒を断ることについて何らかのペナルティが設けられていたなどの事情は認められない。前記前提事実⑵のとおり、本件飲み会は2年生を激励する目的で行われているため、多量の飲酒をして場を盛り上げることを期待された立場にあったといえる2年生のSは、前記認定事実⑶イのとおり一気飲み等の多量の飲酒を行った後、もう飲めないとして飲酒を中断したが、これに対して、 上級生その他の参加者がとがめたとか、飲酒するよう重ねて求めたなどの事実は認められない。前記認定事実⑴及び⑵のとおり、本件サークルの飲み会においては、事前に嘔吐のためのビニール袋が参加者に配布され、酔いつぶれた者の介抱等のためにはけさしという役割が設けられていたものの、これらの事実は、多量の飲酒に伴い、嘔吐をする者や酔いつぶれる者が出た場合に備えると いう趣旨を超えて、飲酒の強要があったことを裏付けるとはいえない。 また、原告らは、Aが要救護状態に陥った以上、その原因が何であれ、被告Bら5名及び被告Gにおいて救護義務を負っており、医療機関における治療行為に過失があった場合と同様に、要救護状態に陥った原因に係るAの過失を、上記被告らとの関係において考慮することは許されない旨主張する。 しかし、上記のとおり、被告Bら5名及び被告Gは、本件飲み会の参加者から酔いつぶれた者の介抱を依頼された学生であって、上級生の指示に従い、飲酒したAを他の学生の下 れない旨主張する。 しかし、上記のとおり、被告Bら5名及び被告Gは、本件飲み会の参加者から酔いつぶれた者の介抱を依頼された学生であって、上級生の指示に従い、飲酒したAを他の学生の下宿先に運び入れた結果、救急隊の出動を要請する義務を負うことになったにすぎない。そうすると、例えば、診察治療の求めがあれば、原則としてこれに応じるべき義務を負い(医師法19条)、その専門的・ 医学的知見に基づき、救命に向けた診察治療を行うべき立場にある医師と上記 - 35 -被告らを同列に論じることはできない。 原告らの上記主張は、いずれも採用することができず、無謀な飲酒によって要救護状態に陥ったAの過失を上記被告らとの関係で考慮することが、損害の公平な分担の観点からは相当である。 4 争点⑶(損害額)について ⑴ Aの損害 2466万6344円被告Bら5名及び被告Gの救護義務違反の不法行為によるAの損害は、次のア~ウの合計7475万4481円に7割の過失相殺をした2242万6344円(1円未満切捨て。以下同じ。)に次のエを加えた2466万6344円と認める。 ア葬儀費用 150万円イ逸失利益 5325万4481円Aは、平成29年12月12日の死亡時、大学2年生(20歳・独身)であったから、基礎収入は賃金センサス平成29年大卒男性全年齢平均の年額660万6600円とし、生活費控除率は50%とする。したが って、逸失利益は、次の計算式のとおり、5325万4481円となる。 (計算式)660万6600円×(17.9810-1.8594)×50%ウ死亡慰謝料 2000万円Aの年齢、不法行為の態様等、本件に現れた一切の事情を考慮し、2000万円と認める。 (計算式)660万6600円×(17.9810-1.8594)×50%ウ死亡慰謝料 2000万円Aの年齢、不法行為の態様等、本件に現れた一切の事情を考慮し、2000万円と認める。 エ弁護士費用 224万円事案の難易、請求額、認容すべき損害額、その他諸般の事情に照らし、224万円を認める。 ⑵ 原告らの損害被告Bら5名及び被告Gの救護義務違反の不法行為による原告らの損害は、 次のアに被害者側の過失としてAに係る7割の過失相殺をした各30万円に - 36 -次のイを加えた各33万円と認める。 ア固有の慰謝料各100万円Aの年齢、不法行為の態様等、本件に現れた一切の事情を考慮し、それぞれ100万円と認める。 イ弁護士費用各3万円 事案の難易、請求額、認容すべき損害額、その他諸般の事情に照らし、それぞれ3万円を認める。 5 まとめ原告らは、前記4⑴のAの損害2466万6344円に係る損害賠償請求権を2分の1ずつ相続したため、各自の取得額は、1233万3172円となる。 これに前記4⑵の原告ら各自の損害額を加えると、原告らの損害賠償請求権は、それぞれ1266万3172円となる。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、被告Bら5名及び被告Gに対し、各1266万3172円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年 5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由がある。 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第9民事部 裁判長裁判官達野ゆき 裁判官相澤千尋 裁判官 裁判長 裁判官達野ゆき 裁判官相澤千尋 裁判官林村優雅
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