【DRY-RUN】主 文 一 本件各控訴を棄却する。 (当審において追加的に変更された請求) 二1 被控訴人豊栄商事株式会社と控訴人Aとの間において、別紙物件 目録一の建物につき、別
主文 一本件各控訴を棄却する。 (当審において追加的に変更された請求)二1 被控訴人豊栄商事株式会社と控訴人Aとの間において、別紙物件目録一の建物につき、別紙賃貸借目録一の1及び同一の2の各賃貸借契約に基づく賃借権が存在しないことを確認する。 2 被控訴人らと控訴人Bとの間において、別紙物件目録二の建物について、別紙賃貸借目録二の賃貸借契約に基づく賃借権が存在しないことを確認する。 三控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人ら 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの各請求(当審において追加的に変更した請求も含めて)をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。 二被控訴人ら 1 本件各控訴を棄却する。 (当審における請求の追加的変更)2(一)被控訴人豊栄商事株式会社(以下、「被控訴会社」という。)と控訴人Aとの間において、別紙物件目録一の建物(以下、「本件一の建物」という。)につき別紙賃貸借目録一の1(以下、右に記載の契約を「1の賃貸借契約」という。)及び同一の2(以下、右に記載の契約を「2の賃貸借契約」という。)の各賃貸借契約に基づく賃借権が存在しないことを確認する。 (二) 被控訴人らと控訴人Bとの間において、別紙賃貸借目録二の賃貸借契約(以下、「二の賃貸借契約」という。)に基づく賃借権が存在しないことを確認する。 3 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第二当事者の主張一請求の原因 1 被控訴人らの立場(一) 被控訴会社は、訴外康栄建設株式会社(同社は昭和五七年三月二九日東京地方裁判所八王子支部から破産宣告を受け、その破産管財人に弁護士Cが選任さ 主張一請求の原因 1 被控訴人らの立場(一) 被控訴会社は、訴外康栄建設株式会社(同社は昭和五七年三月二九日東京地方裁判所八王子支部から破産宣告を受け、その破産管財人に弁護士Cが選任された。以下、「破産会社」という。)及び破産会社の代表者であつたDに対し、別紙債権目録一の1ないし3に記載のとおりの債権を有し、かつ、右各債権を担保するため、本件一、二の各建物につきその所有者であつたDとの間に別紙抵当権目録一記載のとおり、抵当権設定契約をそれぞれ締結し、その設定登記を経由した。 (二) 被控訴人八千代信用金庫(以下、「被控訴人金庫」という。)は、信用金庫法に基づいて設立された信用金庫であるところ、破産会社に対し別紙債権目録二のとおりの債権を有し、右債権を担保するため、本件二の建物につきその所有者であつたDとの間に、別紙抵当権目録二記載のとおり、根抵当権設定契約を締結し、その設定登記を経由した。 2 賃借権不存在確認請求(一) 被控訴会社は本件一の建物についてその敷地である別紙物件目録三の土地(以下、「本件三の土地」という。)とともに、別紙抵当権目録2の抵当権に基づき、被控訴人金庫は本件二の建物について前記根抵当権に基づき、東京地方裁判所八王子支部に対し不動産競売の申立をそれぞれ行なつたところ、同裁判所は昭和五七年一二月一四日各競売開始決定をし、同月一六日その各差押登記を経由した。 (二) 控訴人Aは、「本件一の建物について1もしくは2の賃貸借契約に基づいて都物産が賃借権を有しているところ、同社から昭和五七年二月一八日、期間五年、賃料一か月金五万円(但し、五年分前払)、敷金一〇〇〇万円の約束で賃借した」旨主張している。 (三) 控訴人Bは、「本件二の建物について都物産が二の賃貸借契約に基づいて賃借権を有しているところ、同社 料一か月金五万円(但し、五年分前払)、敷金一〇〇〇万円の約束で賃借した」旨主張している。 (三) 控訴人Bは、「本件二の建物について都物産が二の賃貸借契約に基づいて賃借権を有しているところ、同社から昭和五七年二月一八日、期間三年、賃料一か月金三万円(三年分前払)、敷金五〇〇万円の約束で賃借した」旨主張している。 (四) 本件一、二の各建物について右各賃借権が存在することになると、右各建物の評価額が減額され、その結果抵当権者である被控訴人らの配当に影響が及ぶなど、前記不動産競売手続による被控訴人らの権利の実現に種々の不利益をもたらすことになる。 よつて被控訴人らは控訴人らに対し、主文二項1、2のとおり賃借権の不存在確認を求める。 3 抵当権に基づく建物明渡請求(一)(1) 本件一の建物は、鉄骨造陸屋根二階建店舗事務所であるが、昭和五六年一一月一五日ころ新築と同時に、その一階部分全部を訴外康栄商事株式会社(代表者はD)が所有者であるDより賃料一か月金一二万円、期間五年の約束で賃借し、またその二階部分は破産会社が同様に賃料一か月金一五万円、期間昭和五八年二月までの約束で賃借し、それぞれ事務所として使用してきた。なお、右建物の敷地である本件三の土地もDの所有に属する。 (2) 本件二の建物は、コンクリートブロツク造・木造・スレート葺二階建居宅であるが、昭和四二年一一月に新築された後、二回にわたり増築されたもので、所有者のD自身が自宅として使用していた。なおその敷地は右Dが賃借している。 (3) 破産会社は不渡手形を出して昭和五七年二月五日倒産するに至つたが、都物産は、その二日後である同月七日に、所有者のDや前記賃借人らに無断で、本件一、二の各建物の入口のドアを切断し、あるいはその施錠を破壊し、これに侵入して占拠した。その後都物産は 産するに至つたが、都物産は、その二日後である同月七日に、所有者のDや前記賃借人らに無断で、本件一、二の各建物の入口のドアを切断し、あるいはその施錠を破壊し、これに侵入して占拠した。その後都物産は本件一、二の各建物の入口のドア及びシやツターの錠を換えてしまい、その関係者以外の者が出入りすることをできないようにした。 (4) そして更に、都物産は、本件一の建物を控訴人Aに、本件二の建物をBにそれぞれ賃貸して引き渡し、同人らは、それぞれ右各建物を占有している。 (二)(1) 都物産の本件一、二の各建物の占有は右のように不法に取得されたものであつて、Dや破産会社との間に賃貸借契約等は締結されていないのに、都物産は、1、2及び二の各賃貸借契約並びに控訴人らとの間の前記転貸借契約が真実に存在するかのような外形を作出して、本件一、二の各建物の競売を妨害し、敷金の返還もしくは立退料名下に不法に高額の金員の支払を受けようとしている。 (2) すなわち前記のとおり、本件一の建物についてDもしくは破産会社と都物産との間に成立したと称している賃貸借は、「1」賃料一か月金三万円で、建物の構造、広さ等と比較し著しく低廉であり、「2」敷金一〇〇〇万円が支払われ、「3」譲渡・転貸可能との特約があり、右特約に基づいて本件一の建物は控訴人Aに転貸された形を採つている。 (3) 本件二の建物についても、成立したと称している賃貸借は、「1」賃料は一か月金一万円で、建物の構造、広さ等からして著しく低廉であり、「2」敷金一〇〇〇万円が支払われ、「3」譲渡・転貸可能との特約があり、右特約に基づいて本件二の建物は控訴人Bに転貸された形を採つている。 (4) また本件一、二の各建物について、権利者・都物産、債務者・Dとする別紙登記目録記載の停止条件付賃借権設定仮登記もなされている 約に基づいて本件二の建物は控訴人Bに転貸された形を採つている。 (4) また本件一、二の各建物について、権利者・都物産、債務者・Dとする別紙登記目録記載の停止条件付賃借権設定仮登記もなされている。 よつて、抵当権に基づき、被控訴会社は控訴人Aに対し、本件一の建物をDに明渡すことを、また、被控訴人両名は控訴人Bに対し、本件二の建物をDに明渡すことを、それぞれ求める。 4 債権者代位権に基づく建物明渡請求(一) Dは、本件一、二の各建物を所有しており、控訴人Aは本件一の建物を、控訴人Bは本件二の建物を、それぞれ占有している。 (二)(1) 被控訴会社及び被控訴人金庫は、前記のように本件一、二の各建物について抵当権を有している。 (2) Dは本件一、二の各建物の抵当権者である被控訴人らに対して、その承諾なしに右建物の現状を変更し、賃借権を設定するなど抵当権者に損害を及ぼす一切の行為をしない旨約束している。そうであれば被控訴人らはDに対して控訴人らの本件一、二の各建物に対する占有を排除するよう求める右契約上の権利を有している。 よつて、Dの有する所有権に基づく建物明渡請求権を、(二)(1)の抵当権又は抵当権に基づく妨害排除請求権により、又は、(二)(2)の契約上の権利により、それぞれ代位行使し、被控訴会社は控訴人Aに対し、本件一の建物をDに明渡すことを、また、被控訴人両名は控訴人Bに対し、本件二の建物をDに明渡すことを、それぞれ求める。 二請求原因に対する認否1(一) 請求原因1(一)の事実のうち、被控訴人ら主張のように訴外康栄建設株式会社が破産宣告を受けCがその破産管財人となつたこと、Dが右会社の代表者であり、本件各建物を所有していたことを認め、その余の事実は不知。 (二) 同(二)の事実のうち、被控訴人金庫が信用金庫法に 株式会社が破産宣告を受けCがその破産管財人となつたこと、Dが右会社の代表者であり、本件各建物を所有していたことを認め、その余の事実は不知。 (二) 同(二)の事実のうち、被控訴人金庫が信用金庫法に基づいて設立されたこと、Dが本件二の建物の所有者であつたことは認め、その余の事実は不知。 2(一) 同2(一)ないし(三)の各事実は認める。 (二) 同(四)の事実は不知。 3(一) 同3(一)の(1)、(2)及び(4)の各事実は認める。同(3)のうち破産会社が昭和五七年二月五日不渡手形を出して倒産したことは認めるが、その余の事実は不知。 (二) 同(二)の(1)ないし(3)は否認もしくは争う。同(4)は認める。 4(一) 同4(一)の事実は認める。 (二) 同(二)の(1)、(2)の事実は不知。 三抗弁 1 賃借権不存在確認請求についての抗弁(一) 都物産は、昭和五七年一月二五日本件一の建物について破産会社との間にDの承諾を受けて1の賃貸借契約もしくはDとの間に2の賃貸借契約を締結した。 (二) 都物産は、昭和五七年一月二五日本件二の建物について、Dとの間に二の賃貸借契約を締結した。 2 債権者代位権に基づく建物明渡請求についての抗弁(一) 都物産は、昭和五七年一月二五日本件一の建物について、抗弁1(一)のとおり賃貸借契約を締結し、同日その引渡しを受け、控訴人Aは、請求原因2(二)記載のとおりの約定で都物産から本件一の建物を賃借し、昭和五七年二月一八日その引渡しを受けた。 (二) 都物産は、昭和五七年一月二五日本件二の建物について、抗弁1(二)のとおり賃貸借契約を締結し、同日その引渡しを受け、控訴人Bは、請求原因2(三)記載のとおりの約定で都物産から本件二の建物を賃借し、昭和五七年二月一八日その引渡しを受けた。 四 て、抗弁1(二)のとおり賃貸借契約を締結し、同日その引渡しを受け、控訴人Bは、請求原因2(三)記載のとおりの約定で都物産から本件二の建物を賃借し、昭和五七年二月一八日その引渡しを受けた。 四抗弁に対する認否抗弁事実は、いずれも否認する。 第三証拠関係(省略) 理由 一請求原因1(被控訴人らの立場)の事実のうち、被控訴人ら主張のように訴外康栄建設株式会社が破産宣告を受けCがその破産管財人となつたこと、Dが破産会社の代表者であり、本件各建物を所有していたことは、当事者間に争いがなく、その余の事実は、成立に争いのない甲第一、第二号証、原審証人Eの証言(第一回)によりその成立を認めることができる甲第三ないし第五号証、右証言(第二回)によりその成立を認めることができる甲第一三号証、原審証人Fの証言によりその成立を認めることができる甲第六ないし第八号証、第一四号証、原審証人E(第一、第二回)、同Fの各証言ならびに弁論の全趣旨によりこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。 二そこで賃借権不存在確認請求について判断する。 1 請求原因2の(一)(本件一、二の各建物、同三の土地についての競売手続の進行)、同(二)(控訴人Aの本件一の建物についての占有権原の主張)、同(三)(控訴人Bの本件二の建物についての占有権原の主張)の各事実はいずれも当事者間に争いがない。 2 ところで抵当権者は、右のように当該対象物件について既に競売開始決定がなされている場合には、賃借権の存否に拘わらず債権全額について確実に配当を受ける見込みがあるなど特別の事情がない限り、対象物件についての賃借権不存在確認の訴えに関し法律上の利益を有するものと解するのが相当であるが、右特別の事情は本件全証拠によつてもこれを認めることはできな ける見込みがあるなど特別の事情がない限り、対象物件についての賃借権不存在確認の訴えに関し法律上の利益を有するものと解するのが相当であるが、右特別の事情は本件全証拠によつてもこれを認めることはできない。 3 そこで進んで抗弁1について判断する。 (一) 都物産が本件一、二の各建物につき賃借権を設定した契約書として提出されている乙第一号証、第一六号証(いずれも写・建物賃貸借契約書)には、その各賃貸人欄に現任所と並び氏名と表示された下に、右乙第一号証には「康栄建設株式会社」の記載、右乙第一六号証には「D」の署名がそれぞれあり、その各名下に代表取締役の印章、右Dの印章によつてそれぞれ顕出されたと思われる印影があり、また本件一、二の各建物に別紙登記目録記載の停止条件付賃借権設定仮登記がなされていることは、控訴人らにおいて争わないところである(請求原因3(二)の(4)とその認否)。 (二) しかし右各契約書の内容は、三年の短期賃貸借であるのにいずれも敷金一〇〇〇万円が支払われ、それに比較して賃料はそれぞれ一か月金三万円と金一万円という不自然な契約であるうえ、前記仮登記された賃借権とは、契約締結の日、賃貸借の始期、賃料等の点でその内容を異にし、特に本件一の建物についていえば乙第一号証が賃貸人を破産会社としているのに対し、右仮登記はDを賃貸人とするなど契約の当事者も異なつていることが明らかである。いずれにしても本件一の建物について乙第一号証で締結されたとされる賃貸借については勿論のこと、本件二の建物についての乙第一六号証のそれと前記仮登記で保全された賃貸借とを同一のものと認めることはできない。このように乙第一号証、第一六号証の記載内容そのものの不自然さ、同一物件について異なる賃貸借が存在するような外形があることに加えて、当審における訴え取下げに同 とを同一のものと認めることはできない。このように乙第一号証、第一六号証の記載内容そのものの不自然さ、同一物件について異なる賃貸借が存在するような外形があることに加えて、当審における訴え取下げに同意する以前の控訴人破産会社管財人(以下、「控訴人本人」という。)Cの本人尋問の結果と右尋問の結果によりその成立を認めることができる甲第二二号証の記載とを総合すると、前記乙第一号証、第一六号証の賃貸人名下の各印影が眞正な印章により顕出されていても、なお昭和五七年一月二五日Dの意思に基づかないで右各書面が作成されたのではないかとの疑いが生じ、また右各証拠と原審証人Eの証言(第一回)を併せ考えると、前記仮登記もDとの間の合意に基づかないでなされたのではないかとの疑いが生じる。 原審における控訴人A及び同B各本人尋問の結果によつても本件一、二の各建物について都物産とDもしくは破産会社との間に賃貸借契約が成立したことを認めるに足りず、他にこれを認めるだけの証拠はない。 かえつて右認定の事実、右甲第二二号証、原審証人Eの証言(第一、第二回)、当審における控訴人本人Cの本人尋問の結果に後に認定する都物産の本件一、二の各建物の占有侵奪の態様等を併せ考えると、Dもしくは破産会社と都物産との間に控訴人らの主張する賃貸借契約は成立しておらず、前記乙第一号証、第一六号証の各破産会社作成名義部分は、都物産によつて各印章が冒用され、勝手に作成されたものと認められる。 (三) してみると、控訴人らのDらと都物産との間に賃貸借契約が締結されているとの抗弁は理由がない。 4 したがつて、被控訴人らの賃借権不存在確認請求は、いずれも理由があり、これを認容すべきである。 三次に建物明渡請求について判断する。 1 請求原因3(一)の(1)、(2)(本件一、二の各建物について がつて、被控訴人らの賃借権不存在確認請求は、いずれも理由があり、これを認容すべきである。 三次に建物明渡請求について判断する。 1 請求原因3(一)の(1)、(2)(本件一、二の各建物についてのもとの占有関係等)、(4)(現在の占有関係)の各事実及び同(3)の事実のうち破産会社が昭和五七年二月五日手形の不渡りを出して倒産したこと並びに同(二)の(4)(停止条件付賃借権設定仮登記)の事実はいずれも当事者間に争いがない。 2 そして前記甲第二二号証、当審における控訴人本人Cの本人尋問の結果によりその成立を認めることができる甲第一九ないし第二一号証、原審証人Eの証言(第二回)によりその成立を認めることができる甲第二七号証、成立に争いのない乙第四号証、第一九号証、原審証人Eの証言(第一回)、当審における控訴人本人Cの本人尋問の結果を総合すると、都物産は、前記破産会社が不渡手形を出して倒産した二日後の昭和五七年二月七日、Dらが所在不明となり建物の管理者がいないのに乗じ、白昼四、五名の男を派遣し、本件一の建物の一階のシやツターをこじ上げ、その内側の自動ドアを金ノコギりで切断するなどして建物内に侵入し、室内にあつた調度品、商品などを運び出したうえ、運転してきたトラツクに積み込んでこれを持ち出し、そのままその占有を奪い、同じころ本件二の建物についてもその施錠を破壊して、これを占拠してしまい、その後間もなく本件一の建物を控訴人Aに、本件二の建物を控訴人Bに使用させていること(右使用関係は前記のとおり争いがない。)が認められ、他に右認定を左右するだけの証拠はない。 <要旨>3 ところで、抵当権も物権である以上、それに対する侵害を排除するための物権的請求権を発生させるも</要旨>のであるが抵当権はその目的物の使用収益権を設定者のもとに留保しておきなが ない。 <要旨>3 ところで、抵当権も物権である以上、それに対する侵害を排除するための物権的請求権を発生させるも</要旨>のであるが抵当権はその目的物の使用収益権を設定者のもとに留保しておきながら、その担保価値を優先的に把握するという特質を有する担保物権であるから、抵当権に基づく物権的請求権を認めるに当つては、この特質に合致するように、その内容を考えなければならない。そうすると、まず、抵当権者自身への明渡しを認めることはできず、所有者など占有権原のある者への明渡しを請求しうるにとどまることになる。さらに、民法三九五条の法意、引渡命令の制度の存在などを考えれば、抵当権の対象不動産の無権原の占有者のうち、例えば、賃貸借契約の終了事由が発生した(例えば、期間が満了した)のになお占有を継続している賃借人のような者にまで、抵当権に基づく所有者などへの明渡し請求を認めることにも疑問がないとはいえない。しかしながら、占有取得又は占有継続の意図、態様のいかんにかかわらず、抵当権の権利としての前記のような特質があるの一事をもつて、すべての無権原の占有者に対して、およそ抵当権に基づく明渡請求をすることができないとすることも、あまりにも抵当権者の保護に欠けるものといわなければならない。そこで、以下に、本件に即して、抵当権に基づく明渡請求を認めるべきかについて検討する。 右1、2及び前記二3に判示したように、都物産は、破産会社が不渡手形を出して倒産した二日後に、実力で、本件一、二の各建物の入口のドァを切断し、あるいは施錠を破壊して、その占有を侵奪したものであり、かつ、本件一、二の各建物につき賃借権を取得していないのに、Dらとの間に賃貸借契約が成立したかのような契約書を作成し、あるいは停止条件付賃借権の仮登記を経由するなどし、また、金一〇〇〇万円ずつの敷金 つ、本件一、二の各建物につき賃借権を取得していないのに、Dらとの間に賃貸借契約が成立したかのような契約書を作成し、あるいは停止条件付賃借権の仮登記を経由するなどし、また、金一〇〇〇万円ずつの敷金を支払つたように形式を整え、一方右契約書の転貸条項に基づき前記占有侵奪後間もなく本件一、二の各建物を控訴人らに転貸したとしてこれを占有させているものである。しかも右転貸借も、成立に争いのない乙第四号証、第一九号証、原審における控訴人A及び同B各本人尋問の結果によると、本件一の建物は控訴人Aに対し、期間五年、賃料一か月金五万円(五年分前払)、敷金一〇〇〇万円、本件二の建物については控訴人Bに対し、期間三年、賃料一か月金三万円(三年分前払)、敷金五〇〇万円の約定でなされたものとされ、しかもその転貸、賃借権の譲渡も可能であるというのである。 以上に判示した事実によれば、都物産が本件一、二の各建物の占有を取得した態様は、何らの権原に基づかない暴力によるものであるということができ、右占有取得の意図も、自己の無権原をも顧みず右各建物を他人に使用させて不法な対価を得ようとするものであり、そのために抵当権の実行に支障が出ることを少なくとも容認していたと推認される。そして、控訴人らの右各建物の占有は、このようにして取得された都物産の占有に基づくものである(「控訴人らの右占有は、都物産の占有とは異なり、これを保護すべき特段の事情がある。」旨の主張立証はない。)。 なるほど、前述したように、目的物の使用収益権を設定者のもとに留保しておきながら、その担保価値を優先的に把握するというのが抵当権の特質であり、設定者が目的物を支配することができることから、設定者による目的物の通常の利用に伴つて、無権原の第三者の占有状態の発生することは、このような担保物権を認めた法の容認 るというのが抵当権の特質であり、設定者が目的物を支配することができることから、設定者による目的物の通常の利用に伴つて、無権原の第三者の占有状態の発生することは、このような担保物権を認めた法の容認するところであるといえるかもしれない。しかしながら、占有取得の態様、意図において、前述のような強度の違法性のある占有状態の発生まで法が容認しているものと解すべきではない(もとより事案も、直接の適用法条も異なるが、最判昭五七・三・一二民集三六・三・三四九の趣旨とするところも、基本的には同旨の考え方に基づくものと解される。)。 4 よつて、その余の点につき判断するまでもなく、被控訴会社の控訴人Aに対し本件一の建物を、被控訴人らの控訴人Bに対し本件二の建物を、それぞれDに対し明渡すよう求める請求は、いずれも理由があるのでこれを認容すべきである。 四そうであれば、一部理由を異にするが結論において当審の判断と同一である原判決は相当であるから本件控訴を棄却すべきであり、また当審において追加的に変更された請求は理由があるのでこれを全部認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を各適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官伊藤滋夫裁判官鈴木經夫裁判官山崎宏征)別紙物件目録一 (本件一の建物)町田市a字b号c番地d家屋番号 c番d鉄骨造陸屋根二階建店舗事務所床面積一階五四・六六平方メートル二階五七・二二平方メートル二 (本件二の建物)町田市e町字fg番地h家屋番号 g番hコンクリートブロック造・木造・スレート葺二階建居宅床面積一階七九・四二平方メートル二階五五・六六平方メートル三 (一の建物の敷地―本件三の土地)町田市a字b号c番d宅地 クリートブロック造・木造・スレート葺二階建居宅床面積一階七九・四二平方メートル二階五五・六六平方メートル三 (一の建物の敷地―本件三の土地)町田市a字b号c番d宅地七一・一七平方メートル別紙賃貸借目録一別紙物件目録記載一の建物(本件一の建物)について 1 貸主康栄建設株式会社(現破産者康栄建設株式会社破産管財人C)、借主都物産株式会社間の昭和五七年一月二五日付賃貸借契約但し、賃貸借期間昭和五七年一月二五日から同六〇年一月二四日、賃料月三万円、敷金一〇〇〇万円 2 貸主D、借主都物産株式会社間の昭和五七年一月二五日付賃貸借契約但し、賃貸借期間昭和五七年一月二五日から同六〇年一月二四日、賃料月三万円、敷金一〇〇〇万円二別紙物件目録記載二の建物(本件二の建物)について貸主D、借主都物産株式会社間の昭和五七年一月二五日付賃貸借契約但し、賃貸借期間昭和五七年一月二五日から同六〇年一月二四日、賃料月一万円、敷金一〇〇〇万円債権目録一 1 昭和五六年一二月五日、破産会社に対し金一五〇〇万円貸付、但し利息日歩一〇銭(登記上は年一五%)、損害金日歩一五銭(登記上は年三〇%)、弁済期昭和五七年三月三一日(破産宣告の場合期限の利益喪失の特約あり)であり、債権現在額は、残元本金一五〇〇万円及びこれに対する昭和五八年三月三〇日より支払済みに至るまで年三〇%の割合による損害金。担保提供者兼連帯保証人D。 2 昭和五七年一月五日、破産会社及びDを連帯債務者兼担保提供者として、両者に対し金一二〇〇万円貸付、弁済期昭和五七年六月三〇日、利息、損害金、及び期限の利益喪失約款は右1と同じ。 債権現在額は、残元本金一二〇〇万円及びこれに対する昭和五八年三月三〇日より年三〇%の割合による損害金。 3 昭 、弁済期昭和五七年六月三〇日、利息、損害金、及び期限の利益喪失約款は右1と同じ。 債権現在額は、残元本金一二〇〇万円及びこれに対する昭和五八年三月三〇日より年三〇%の割合による損害金。 3 昭和五七年一月五日、Dに対し金五〇〇万円貸付。利息、損害金右1と同じ。弁済期は昭和五七年六月三百(破産宣告の場合期限の利益喪失の特約あり)。 債権現在額は、残元本金五〇〇万円及びこれに対する昭和五八年三月三〇日より年三〇%の割合による損害金。 債権目録二 1 昭和五六年三月二七日被控訴人金庫は破産会社との間で、信用金庫取引約定を締結するとともに、同日D所有の本件二の建物に被控訴人金庫の破産会社に対する信用金庫取引による債権を被担保債権とする極度額金一〇〇〇万円の根抵当権を設定。 2 昭和五六年一二月一〇日被控訴人金庫は破産会社に対し、右約定に基づき、手形貸付の方法で金二〇〇〇万円を弁済期昭和五七年三月八日、利息年一〇%、損害金年一八%(第三条二項)の約で貸渡した。 抵当権目録一 1 別紙債権目録一1の債権の担保として、本件二の建物について、昭和五六年一二月五日(共同)抵当権設定契約(東京法務局町田出張所昭和五六年一二月一〇日受付第三一六五三号をもつて設定登記経由)。 2 右同目録一2の債権の担保として、本件三の土地及び本件一の建物について、昭和五七年一月五日(共同)抵当権設定契約(右同出張所昭和五七年一月七日受付第二〇二号をもって設定登記経由)。 3 右同目録一3の債権の担保として、本件二の建物について、昭和五七年一月五日抵当権設定契約(右同出張所昭和五七年一月七日受付第二〇三号をもって設定登記経由)。 抵当権目録二別紙債権目録二の債権に関して、昭和五六年三月二七日、本件二の建物につき、信用金庫取引による債権を被担保債権とする極度 張所昭和五七年一月七日受付第二〇三号をもって設定登記経由)。 抵当権目録二別紙債権目録二の債権に関して、昭和五六年三月二七日、本件二の建物につき、信用金庫取引による債権を被担保債権とする極度額金一〇〇〇万円の根抵当権設定契約を締結(債権目録二1のとおり)東京法務局町田出張所昭和五六年三月二八日受付第七八三二号をもつて設定登記経由。 登記目録一本件一及び二の各建物について、東京法務局町田出張所昭和五七年二月一八日受付第三九二六号停止条件付賃借権設定仮登記(1)原因昭和五七年二月六日設定(条件同年同月同日根抵当権確定債権債務不履行)(2)借賃一ケ月一平方メートル金一〇〇円(3)借賃支払期毎月末日(4)存続期間発生の日より満三年(5)特約譲渡、転貸ができる。 (6)権利者豊島区ij丁目k番l号都物産株式会社
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