平成14刑(わ)307 競売入札妨害,贈賄等被告

裁判年月日・裁判所
平成15年3月18日 東京地方裁判所
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判決文本文15,320 文字)

平成15年3月18日宣告平成14年刑(わ)第307号,合(わ)第71号,刑(わ)第555号,合(わ)第136号,合(わ)第137号,刑(わ)第950号,刑(わ)第1115号,特(わ)第1650号被告人に対する競売入札妨害,贈賄,法人税法違反被告会社に対する法人税法違反各被告事件 主文 被告人を懲役2年6月に処する。 被告会社を罰金800万円に処する。 理由 【被告人らの経歴等】被告人は,昭和47年に茨城県選出国会議員の私設秘書となり,昭和52年に別の山形県選出国会議員の公設秘書に転じ,同議員が国務大臣に就任した際には同大臣秘書官を務めるなどしていたが,平成6年4月に同議員が新党を結成した際その秘書を辞し,同年7月11日秘書仲間らとともに被告会社を設立し,以後実質的経営者として同社の業務全般を統括していた。 被告会社は,東京都千代田区(以下省略)に事務所を置き,被告人が議員秘書時代に培った人脈を頼りに,建設,機械,電機等の関係業者と地方の行政機関等との間を仲介するなどして公共工事に関する情報収集や口利き等を行い,業者らと調査委託基本契約(以下「基本契約」という)を締結して月々の委託料を受け取るとともに,公共工事の受注に成功した際には別途報酬の支払を受けるなどしていた。 【第1 湖北水道企業団発注工事に係る各犯行】(各犯行に至る経緯)Aは,平成3年12月から茨城県石岡市長を務めるとともに,同市及び隣村の玉里村の水道事業経営事務を共同処理する特別地方公共団体である湖北水道企業団(以下「企業団」という)の企業長を兼務していた。被告人は,Aの従兄弟であるBと議員秘書時代から昵懇の間柄であり,平成7年5月ころ同人の紹介でAと知り合い,以後石岡市関係の公共工事の受注等につき業者間の調整に関与するようになった。 していた。被告人は,Aの従兄弟であるBと議員秘書時代から昵懇の間柄であり,平成7年5月ころ同人の紹介でAと知り合い,以後石岡市関係の公共工事の受注等につき業者間の調整に関与するようになった。 企業団は,平成10年ころから,玉里新配水場ほか3か所において緊急対策事業に伴う電気計装・機械設備工事(以下「本件電気機械工事」という)を施工する計画を進めていたが,平成11年2月25日,指名業者を選定するとともに,同年3月16日に指名競争入札を実施することを決定した。株式会社Cの特約店であり,電機設備の施工請負等を業とするD株式会社の埼玉支店支店長D1は,同年1月ころ,Bに対し,本件電気機械工事の受注につきDのために口利きをするよう依頼し,同月下旬ころ,Bは,A及び被告人と話し合って,同工事をDに受注させる方向で業者間調整をすることに決めた。 そこで,被告人は,D1と会って,Dの受注に向け協力を約束するとともに,被告会社と基本契約を結び,さらに受注に成功した際にはAへの謝礼も含めた成功報酬を支払って欲しいと要求した。これに対し,D側では,被告人の要求に応じれば贈賄に結びつきかねないと判断し,同年2月上旬ころ,同要求を断る旨回答した。 被告人は,D1に対し,Cグループの会社で被告会社と基本契約を結べるところがあれば,そこが受注してDが下請に入ればよいなどと言って,他の契約先を探すよう強く促し,これを受けて,D1は,同月12日,Cの関連会社であり,集塵装置等の工事請負等を業とするE建設株式会社の関東支店副支店長E1及び関東支店茨城営業所課長E2を,被告人に引き合わせた。被告人は,E1らに対し,希望すれば本件電気機械工事をE建設が受注できるよう協力する旨話すとともに,Dにしたのと同様の成功報酬の支払等の要求をしたところ,E1らは,これを了承し,被告 引き合わせた。被告人は,E1らに対し,希望すれば本件電気機械工事をE建設が受注できるよう協力する旨話すとともに,Dにしたのと同様の成功報酬の支払等の要求をしたところ,E1らは,これを了承し,被告人に受注に向けての協力を依頼した。 被告人は,Aに対し,E建設を本件電気機械工事の指名業者に入れるよう要請したが,専門業種の相違から同社を指名業者に入れるのが無理であると分かったため,最終的に,A,B及び被告人の間で,電気機械器具の製造等を業とするCが本件電気機械工事を受注し,D及びE建設がその下請に入るとの方針を決定した。そして,被告人は,E1に対し,上記方針を伝えるとともに,Cが本件電気機械工事を受注できた際には,従前の合意どおりE建設が成功報酬を支払うよう要求し,その応諾を得た。そこで,D1は,Cの茨城支店電機第1グループ部長代理C1に対し,本件電気機械工事に関連してE建設が被告会社と契約を交わす旨を報告した。 C1は,同年3月初めころから,本件電気機械工事の受注に向け,他の指名業者との間で調整を進めていたが,これに応じない業者があったため,その業者に対してCがいわゆる「天の声」を得ていることを示して受注を断念させるとともに,予定価格に近い金額で落札して高い利益を上げるべく,被告人を通じてAから本件電気機械工事の予定価格に関する情報を聞き出そうと考えた。そして,同月11日ころ,D1を通じて被告人にその旨の依頼を行い,被告人からこれを伝えられたBが,翌12日ころ,石岡市役所市長室に電話をかけ,Aに対し,予定価格に関する情報を教えて欲しいと頼んだ。こうして,同情報の教示による後記1の競売入札妨害の犯行が行われるに至った。 被告人は,入札前日の同月15日,E2を被告会社事務所に呼び出し,同人に対し,本件電気機械工事はCの落札が確実であり,E こうして,同情報の教示による後記1の競売入札妨害の犯行が行われるに至った。 被告人は,入札前日の同月15日,E2を被告会社事務所に呼び出し,同人に対し,本件電気機械工事はCの落札が確実であり,E建設もその下請に入れるだろう,このような業者間調整がうまくいったのは,被告人がAから予定価格に関する情報を聞き出したからであるなどと言った上,E建設において,被告会社と基本契約を締結するとともに,Aへの謝礼も含めた成功報酬として下請受注金額の10パーセントを支払うよう要求した。E2は,E1の指示の下に成功報酬を下請受注金額の3パーセントとするよう被告人と交渉を続けるとともに,E建設の環境システム営業本部副本部長E3に一連の経過を報告し,同人にも被告人との交渉に加わってもらった。そして,同年6月下旬ころ,E建設側から500万円の金額の提示がなされ,被告人もこれに同意した。被告人は,このうち200万円をAへ渡すことに決めた上,E2及びE3に対し,Aが被告会社事務所に来訪する同年7月30日までに500万円を支払うよう要求したが,E建設側の資金の捻出が遅れたため,Aへの謝礼は被告会社が立て替えて支払うこととなり,後記2の贈賄の犯行に至った。 (犯罪事実)被告人は, 1 企業団企業長のA,その従兄弟のB,D埼玉支店支店長のD1及びC茨城支店電機第1グループ部長代理のC1と共謀の上,企業団が平成11年3月16日を入札予定日として指名競争入札に付することを決定していた本件電気機械工事の指名競争入札に関し,同月12日ころ,茨城県石岡市(以下省略)所在の石岡市役所市長室において,AがBに対し,同工事の設計金額が約9億1300万円で,予定価格を算出するための歩切率が3.2パーセント程度である旨を電話で内報し,Bから被告人及びD1を介してC1に連絡させ,よって 長室において,AがBに対し,同工事の設計金額が約9億1300万円で,予定価格を算出するための歩切率が3.2パーセント程度である旨を電話で内報し,Bから被告人及びD1を介してC1に連絡させ,よって,同月16日,同市(以下省略)所在の企業団事務所会議室で行われた同工事の指名競争入札に際し,Cをして,上記内報を受けた数値に基づき予定価格8億8600万円に近接する8億8300万円で同工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をし 2 E建設環境システム営業本部副本部長のE3,同社関東支店副支店長のE1及び同社関東支店茨城営業所課長のE2と共謀の上,同年7月30日,東京都千代田区(以下省略)の被告会社事務所において,被告人が,企業団企業長として同団体を代表して業務を執行し,企業団が発注する各種公共工事に関し,指名競争入札参加者の指名,予定価格の決定及び請負契約の締結等の職務に従事していたAに対し,同人が前記1のとおり,本件電気機械工事の指名競争入札に関し,職務上知り得た企業団の秘密である同工事の設計金額及び歩切率の各概数をC茨城支店電機第1グループ部長代理のC1に内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨の下に,現金200万円を供与し,もって,Aの職務に関し賄賂を供与したものである。 【第2 下妻市発注工事に係る各犯行】(各犯行に至る経緯)Fは,平成7年10月に茨城県議会議員から同県下妻市長に転じ,以後その職にあったところ,平成6年ころ,かねてから昵懇にしていたBに被告人を紹介され,下妻市関係の公共工事について,被告人が国からの予算獲得等に力を貸す一方,Fが被告人の口利きのあった業者に受注させる意向を示すなどして,両者は関係を深めていった。 下妻市では,平成8年ころから,市立図書館の建設工事を施工する計画 告人が国からの予算獲得等に力を貸す一方,Fが被告人の口利きのあった業者に受注させる意向を示すなどして,両者は関係を深めていった。 下妻市では,平成8年ころから,市立図書館の建設工事を施工する計画が進められていたが,同工事は建築工事,機械設備工事及び電気設備工事に分割して発注され,いずれも平成11年8月5日に指名競争入札が実施されることになった。 建築一式工事等の設計・管理・施工等を業とするG建設株式会社の関東支店では,その建築工事(以下「本件図書館建築工事」という)の受注を目指すこととし,同支店支店長G1は,以前からG建設が被告会社と基本契約を締結していたことから,平成10年2月ころ,被告人にその協力を依頼した。これを受けて,被告人は,そのころ,Fに対し,本件図書館建築工事をG建設に受注させるよう申し入れて,同人の了承を得た。G建設は,平成11年7月9日に本件図書館建築工事の予備指名業者に選定され,被告人を通じて聞き出したFの意向に従い,地元のH建材株式会社と特定建設工事共同企業体を結成して同工事の入札に参加することとなった。 G建設の現場営業担当者は,同月半ばから本件図書館建築工事の受注に向けて業者間調整を本格化したが,自分もFと話をしているとして調整に応じない業者があったため,G建設の関東支店次長G2にこれを報告した。被告人は,G2の依頼を受けて,同月末ころFと会って,いわゆる本命がG建設である旨を確認し,これをG2に伝えた。さらに,G2は,被告人を通じてFから本件図書館建築工事の予定価格を聞き出し,業者間での入札価格の調整等に用いようなどと考え,被告人にその旨依頼した。被告人は,同年8月初めころ,Fに電話をかけて予定価格の教示を求めたが,Fは,まだ決めていないから同月3日にBを下妻市役所市長室に聞きに寄越すようにと返答した うなどと考え,被告人にその旨依頼した。被告人は,同年8月初めころ,Fに電話をかけて予定価格の教示を求めたが,Fは,まだ決めていないから同月3日にBを下妻市役所市長室に聞きに寄越すようにと返答した。こうして,予定価格の教示による後記1の競売入札妨害の犯行が行われるに至った。 Fの妻の弟であるIは,土木建築工事の請負等を業とするJ商工株式会社との間で,下請工事の受注に成功した際に報酬の支払を受ける旨の契約を締結して,同社のために営業活動を行っていたが,被告人から本件図書館建築工事を知らされ,J商工が杭打ち工事を下請受注することができるよう,被告人及びFに協力を求め,Fは,同年7月末ころ,被告人に対し,J商工をG建設の下請に入れる旨の意向を示した。 G建設は,Iの接触を受け,同人がFの義弟であることから,J商工に既成杭工事を下請発注することに決め,同年9月中旬ころから同年10月初めころにかけて,数回にわたり,Iと価格交渉を行ったが,Iの提示額がG建設の予算額を大幅に上回ったため合意に至らなかった。そこで,G2は,同年9月下旬ころから,G1の指示の下,被告人に対してFの意向を尋ねたり仲立ちを頼んだりして事態を打開しようとした。これを受けて,被告人は,G2に対し,杭打ち工事の下請発注はFの意向であり,予定価格の教示まで受けた謝礼としてIが相応の利益を得るよう金額を上乗せしなければ話はまとまらないなどと告げる一方,同月下旬ころ,Fと会った際,下請金額をどうするかと尋ね,その返答から,同人がIに利益が出るようにできるだけ下請金額を高くしてもらいたいと考えていることを了知した。G1及びG2は,同年10月下旬ころ,Fへの謝礼分を勘案して予算額に上積みせざるを得ないと判断し,これを相当上回る8000万円(税抜き)を上限に話をまとめるよう被告人に依頼 えていることを了知した。G1及びG2は,同年10月下旬ころ,Fへの謝礼分を勘案して予算額に上積みせざるを得ないと判断し,これを相当上回る8000万円(税抜き)を上限に話をまとめるよう被告人に依頼した。被告人は,これをFに話してその了解を得,Iも,Fの説得を受けて8000万円で受注することに同意した結果,後記2の贈賄の犯行が行われるに至った。 空調設備等の施工請負等を業とするK設備工業株式会社の東関東支店支店長K1は,平成9年ころ下妻市立図書館の建設計画を知り,そのうちの機械設備工事(以下「本件図書館機械工事」という)の受注を目指すこととし,平成10年11月に知人のLから被告人の紹介を受けて,同工事の受注につきFへの口添えを依頼するとともに,受注に成功した際には被告会社と基本契約を締結すること及び被告会社の推薦する業者を同工事の下請に入れることを約束した。 被告人は,Fに対し,同年12月ころから平成11年1月ころにかけ,数回にわたり,本件図書館機械工事をK設備工業に受注させるよう申し入れて,同人の了承を得た。K設備工業は,同年7月9日に本件図書館機械工事の予備指名業者として選定され,地元の有限会社M設備工業とともに特定建設工事共同企業体を結成して同工事の入札に参加することとなった。K1は,部下に指示して,同月下旬ころから業者間調整を進めたが,これに応じない業者があったため,その受注を断念させるべく,本件図書館機械工事の予定価格を聞き出そうと考え,同年8月4日,下妻市役所市長室を訪ねて,Fから予定価格の概数が1億9600万円である旨の教示を受けた。K1は,部下をして,受注調整に応じない指名業者に入札金額を指定して受注を諦めさせるなどした結果,同月5日,K・M特定建設工事共同企業体が,上記教示を受けた数値に基づき予定価格1億9622万円 けた。K1は,部下をして,受注調整に応じない指名業者に入札金額を指定して受注を諦めさせるなどした結果,同月5日,K・M特定建設工事共同企業体が,上記教示を受けた数値に基づき予定価格1億9622万円に近接する1億9600万円で本件図書館機械工事を落札した。 同月下旬ころ,被告人は,工事受注のお礼は前に約束した範囲でよいかと尋ねてきたK1に対し,同年11月施行の下妻市長選挙の資金援助の名目でFに対し謝礼をするよう提案した。K1は,Lと相談の上,Fに謝礼として100万円を支払うことに決めたが,同年10月5日に予定されていた被告人とFとの会合までに現金を準備できなかったため,これを被告会社が立て替えることとなり,後記3の贈賄の犯行に至った。 (犯罪事実)被告人は, 1 茨城県下妻市長のF,知人のB及びG建設関東支店次長のG2と共謀の上,下妻市が平成11年8月5日を入札予定日として指名競争入札に付することを決定していた本件図書館建築工事の指名競争入札に関し,同月3日,茨城県下妻市(以下省略)所在の下妻市役所市長室において,FがBに対し,同工事の税抜きの予定価格が11億5866万円である等と教示し,Bから被告人を介してG2に連絡させ,よって,同月5日,上記下妻市役所3階大会議室で行われた同工事の指名競争入札に際し,G・H特定建設工事共同企業体をして,上記内報を受けた数値に基づき予定価格11億5866万円に近接する11億5700万円で同工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をし 2 G建設関東支店支店長のG1及び同支店次長のG2と共謀の上,茨城県下妻市長として同市を代表して業務を執行し,同市が発注する各種公共工事に関し,指名競争入札参加者の指名,予定価格の決定及び請負契約の締結等に従事していたFが,前記1のとおり,本件 と共謀の上,茨城県下妻市長として同市を代表して業務を執行し,同市が発注する各種公共工事に関し,指名競争入札参加者の指名,予定価格の決定及び請負契約の締結等に従事していたFが,前記1のとおり,本件図書館建築工事の指名競争入札に関し,職務上知り得た同市の秘密である同工事の予定価格をG2に内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨の下に,G建設から,Fの義弟であるIの関与するJ商工に対し,既成杭工事の下請代金として上記謝礼分を含めて8400万円(税込み)を支払うことを企て,G1及びG2において,G建設及びJ商工の従業員を介して,上記既成杭工事下請受注の報酬名下に,Iが管理する茨城県筑波郡(以下省略)所在の株式会社N銀行O支店の有限会社P工業代表取締役I名義の普通預金口座に,同年10月29日に157万4265円,同年11月30日に524万9265円,同年12月28日に52万4265円の合計734万7795円を振込送金させ,もって,Fの職務に関し賄賂を供与し 3 K設備工業東関東支店支店長のK1及び知人のLと共謀の上,同年10月5日,前記被告会社事務所において,被告人が,茨城県下妻市長として前記2の職務に従事していたFに対し,同人が本件図書館機械工事の指名競争入札に関し,職務上知り得た同市の秘密である同工事の予定価格の概数をK1に内報して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨の下に,現金100万円を供与し,もって,Fの職務に関し賄賂を供与したものである。 【第3 徳島県発注工事に係る各犯行】(各犯行に至る経緯)Qは,平成5年10月から徳島県知事を務めていたが,前身の運輸省官僚の時代に議員秘書をしていた被告人と昵懇の間柄になり,平成5年及び平成9年の県知事選挙で資金提供等の応援を受けるなどした。被告人は,徳島県の地元業者で, から徳島県知事を務めていたが,前身の運輸省官僚の時代に議員秘書をしていた被告人と昵懇の間柄になり,平成5年及び平成9年の県知事選挙で資金提供等の応援を受けるなどした。被告人は,徳島県の地元業者で,土木建設工事の請負等を業とする株式会社R建設の取締役R1と昭和50年代から付き合いがあり,被告会社設立後間もなく同社と基本契約を締結し,その後,度々Qに働き掛けて,R建設の開発に係る道路舗装用路盤材を県道舗装工事に採用してもらったり,県発注の道路工事等を同社が受注できるよう取り計らってもらったりしていた。 平成11年に入ると,被告人は,徳島県発注の公共工事の受注について,それまでのように業者間調整を業者に委ねるのではなく,Qの意向を反映させるシステムを構築し,それに被告会社が介入して顧客の確実な受注を図れるような態勢を作ろうと考えた。そして,同年9月ころ,徳島県の公共工事に関わる業界幹部と会って,県知事のいわゆる「天の声」に基づく業者間調整を行うことにつき了解を取り付けた上,Q及びその後援会事務所長のSに対し,SがQの意向を示す窓口となり,県の出納長と協議しながら本命業者を指名して,業者間調整を行うことにすれば,Sは後援会関係者からの陳情を処理しやすくなるし,被告人も顧客が仕事を取りやすくなって,選挙の際には後援会を通じて資金提供もできるなどと話して,両名の賛同を得た。さらに,被告人は,Sと上記業界幹部を引き合わせたり,被告会社の顧客を頻繁に徳島県に同行しSに紹介するなどして,態勢を整えていった。 被告人は,同年11月ころ,徳島県が県立文学館・書道美術館建築工事(以下「本件文学館建築工事」という)を計画していることを知り,手始めに同工事において上記方法による業者間調整を実施して被告会社の顧客に受注させようと考え,同年12月ころ,Qの了解を 美術館建築工事(以下「本件文学館建築工事」という)を計画していることを知り,手始めに同工事において上記方法による業者間調整を実施して被告会社の顧客に受注させようと考え,同年12月ころ,Qの了解を得て活動を開始したが,その後,同工事については業界内で既に本命業者が決まっていたことを知り,介入すると混乱を招きかねないと判断してこれを断念した。しかし,元請受注はだめでも,せめて下請だけでも被告会社の顧客に受注させたいと考え,平成12年5月ころ,S及びQに話してその了解を得る一方,R1に下請受注の話を持ちかけて,その賛同を得た。その後,被告人は,Sの協力を得ながら,上記本命業者に働き掛けてR建設の下請受注につき了承を取り付けたが,同年6月9日に実施された本件文学館建築工事の入札で他の業者が落札したため,再度Sの協力を得て,その落札業者からも上記下請受注につき了承を取り付けるに至った。 被告人は,R建設が本件文学館建築工事を下請受注できる見込みであることなどの謝礼及び今後も被告会社の業務につき有利便宜な取り計らいを得たいとの趣旨の下,Qに現金を渡そうと考え,同月下旬ころ,R1に対し,Qへの謝礼等として1000万円を拠出するよう要求し,その了承を得た上,被告会社及びその関連会社の資金繰りを考慮し,Qに渡す額をそのうちの300万円とすることに決めた。その後,同年7月10日,R1から1000万円が被告会社事務所に届けられ,後記1の贈賄の犯行に及んだ。 同年12月上旬,被告人は,Sに対し,徳島県が将来発注する予定の公共工事を被告会社の顧客が受注できるように取り計らってくれれば,翌年9月実施予定の県知事選挙でQを応援するための資金として,1000万円程度を提供すると告げ,SからQにその旨報告された。被告人は,平成13年1月ころから,被告会社の顧客十 取り計らってくれれば,翌年9月実施予定の県知事選挙でQを応援するための資金として,1000万円程度を提供すると告げ,SからQにその旨報告された。被告人は,平成13年1月ころから,被告会社の顧客十数社に対し,徳島県発注の公共工事に参入するために県知事選挙におけるQの応援資金を拠出してほしいと呼び掛ける一方,顧客の会社名及び受注希望工事名等の一覧表を作成して,同年3月末ころこれをSに手渡した。そして,被告人は,同年5月10日にQが上京した折りに,一部の顧客から既に現金が集まり始めていたことなどから,直接Qに対し,上記一覧表を示して被告会社の顧客への取り計らいを依頼した上,資金提供を申し出ようと考え,後記2の贈賄の犯行に至った。 (犯罪事実)被告人は, 1 R建設取締役のR1と共謀の上,平成12年8月8日,徳島県徳島市(以下省略)ホテルT1階において,被告人が,徳島県知事として同県を代表するとともに,同県を統括して同県職員を指揮監督し,予算の執行,同県が発注する工事の契約に係る指名競争入札参加者の指名,予定価格の決定,請負契約の締結及び施工の監督等の職務に従事していたQに対し,同人が本件文学館建築工事の請負人に指示することにより,R建設が下請負人として工事を受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたことなどに対する謝礼の趣旨及び同県が将来発注する予定の工事に関しても同様の取り計らいを受けたいなどの趣旨の下に,Q後援会事務所長のSを介して,現金300万円を供与し,もって,Qの職務に関し賄賂を供与し 2 平成13年5月10日,東京都千代田区(以下省略)所在の割烹Uにおいて,徳島県知事として前記職務に従事していたQに対し,徳島県が将来発注する予定のトンネル建設工事等に関し,被告会社の顧客であるG建設ほか十数社が受注できるよう有利便宜な取り計らい 所在の割烹Uにおいて,徳島県知事として前記職務に従事していたQに対し,徳島県が将来発注する予定のトンネル建設工事等に関し,被告会社の顧客であるG建設ほか十数社が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に,現金1000万円を供与する旨を申し込み,Qからその承諾を得,もって,Qの職務に関し賄賂を約束したものである。 【第4 法人税ほ脱の各犯行】(犯罪事実)被告会社は,東京都千代田区(以下省略)に本店を置き,地方公共団体等が行う建設事業等の情報収集及び調査等を目的とする株式会社であり,被告人は,被告会社の実質的経営者としてその業務全般を統括していた者であるが,被告人は,被告会社の業務に関し,法人税を免れようと企て,顧客からの業務受託報酬を除外するなどの方法により所得を秘匿した上, 1 平成10年4月1日から平成11年3月31日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が2911万3747円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず,同年5月31日,東京都千代田区九段南1丁目1番15号所轄麹町税務署において,同税務署長に対し,所得金額が零で,所得税額842円の還付を受けることとなる旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって,不正の行為により,被告会社の同事業年度における正規の法人税額928万2200円と同還付所得税額との合計928万3000円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ 2 平成11年4月1日から平成12年3月31日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が8055万6949円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず,同年5月30日,上記麹町税務署において,同税務署長に対し,欠損金額が662万5628円で,所得税額439円の還付を受けることとなる旨の虚偽の (別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず,同年5月30日,上記麹町税務署において,同税務署長に対し,欠損金額が662万5628円で,所得税額439円の還付を受けることとなる旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって,不正の行為により,被告会社の同事業年度における正規の法人税額2352万6300円と同還付所得税額との合計2352万6700円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れたものである(別紙省略)。 【量刑の事情】 1 本件は,被告会社の実質的経営者であった被告人が,共犯者と共謀の上又は単独で,二つの地方公共団体において,公共工事の入札に関し,予定価格等を内報して落札を行い(判示第1の1,第2の1),また,両団体を含む三つの地方公共団体において,各首長に対し,予定価格等の内報に対する謝礼,あるいは,公共工事の受注につき被告会社の顧客が好意的な取り計らいを受けたことに対する謝礼などの趣旨の下に,賄賂を供与又は約束し(判示第1の2,第2の2,3,第3の1,2),さらに,被告会社の業務に関し,所得を秘匿して2年分にわたり法人税を免れた(判示第4の1,2)という競売入札妨害2件,贈賄5件及び法人税法違反2件の事案である。 2 競売入札妨害の各犯行は,予定価格9億円弱及び11億円強の大規模な公共工事について,発注元である企業団の企業長及び下妻市の市長が,予定価格等をいわゆる本命業者に内報するという,自由競争にとって致命的な偽計を用いた結果,その業者が上記各予定価格に極めて近い価格で工事を落札し,入札の公正を著しく害するに至ったものであり,その態様は悪質で,結果は重大である。被告人は,このような官・業両ぐるみの犯行において,業者から依頼を受け,首長との人脈を悪用して予定価格等内報の仲介役を務めたのである く害するに至ったものであり,その態様は悪質で,結果は重大である。被告人は,このような官・業両ぐるみの犯行において,業者から依頼を受け,首長との人脈を悪用して予定価格等内報の仲介役を務めたのであるから,その果たした役割は非常に重要である。 3 贈賄の各犯行は,上記2件の競売入札妨害に関連して,各業者の担当者と共謀の上,予定価格等内報の謝礼の趣旨の下に,企業団企業長に現金200万円を供与し,下妻市長の義弟に734万円余を送金して供与したほか,下妻市発注の他の工事についても,業者の担当者らと共謀の上,予定価格概数内報の謝礼の趣旨の下に,下妻市長に現金100万円を供与し,さらに,徳島県発注の公共工事に関し,地元業者の役員と共謀の上,下請受注につき好意的な取り計らいを受けたことなどの謝礼等の趣旨の下に,徳島県知事に現金300万円を供与し,また,徳島県が将来発注する予定の公共工事に関し,被告会社の顧客らが受注できるよう好意的な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に,同県知事に現金1000万円を供与する約束をしたというものである。先の4件は,公共工事の受注につき各首長が不正な職務行為をしたことなどの対価として賄賂が供与されており,また,後の1件も,被告会社の顧客に有利な職務行為が将来行われることを期待して賄賂が約束されているのであって,各首長の職務行為の公正とこれに対する一般市民の信頼を著しく損なったことは疑いがない。賄賂の金額も,供与分が合計1334万円余,約束分が1000万円で,総計2334万円余の多額に上る。被告人は,賄賂供与の各犯行において,共犯者に対し首長への謝礼の支払を要求した上,自らその額を決めるという非常に能動的・積極的な役割を果たしたほか(判示第1の2,第3の1),謝礼の金額の決定につき首長と共犯者との間を仲介したり,謝礼の支払を提 対し首長への謝礼の支払を要求した上,自らその額を決めるという非常に能動的・積極的な役割を果たしたほか(判示第1の2,第3の1),謝礼の金額の決定につき首長と共犯者との間を仲介したり,謝礼の支払を提案したりするという重要な役割を果たしている(判示第2の2,3)。また,賄賂約束の犯行では,予め被告会社の顧客らに資金拠出を呼び掛けた上で,自らが贈賄の主体として登場するに至っている(判示第3の2)。なお,同犯行の約3週間後には,約束した金額が集められ徳島県知事に届けられるばかりになっていたが,被告会社事務所に税務当局の調査が入って同金員が発見されたため,約束の履行を断念せざるを得なくなったものである。 4 法人税法違反の各犯行についてみると,ほ脱額は2年分で合計約3280万円と少なくなく,ほ脱率は100パーセントの最高割合となっている。所得秘匿の態様は,被告会社の成功報酬や仲介手数料などの売上の相当部分(その半分以上は,山形県の二つの公立病院の設備工事につき,被告人が受注調整に関与したことに対する業者らからの謝礼である。)を,現金で受領したり,簿外の被告会社東北支社長名義の預金口座へ振り込ませたりして,公表計上せずに除外し,また,国会議員事務所の事務員の給与を肩代わりし,被告会社の従業員と偽って架空の給料手当を計上するなど,巧妙かつ悪質なものである。しかも,被告人は,税務当局の調査が及ぶや,上記支社長に指示して,上記預金口座に振込入金された報酬等を同人の所得として確定申告させるなど,罪証隠滅を図っており,事後の情状も芳しくない。 加えて,本件ほ脱に関わる本税及び附帯税は,いずれも未納付の状態にある。 5 以上のとおり,被告人は,平成11年から平成13年にかけ,企業団,下妻市及び徳島県の三つの地方公共団体を舞台に,公共工事の受注調整に関与し,首長と る本税及び附帯税は,いずれも未納付の状態にある。 5 以上のとおり,被告人は,平成11年から平成13年にかけ,企業団,下妻市及び徳島県の三つの地方公共団体を舞台に,公共工事の受注調整に関与し,首長と業者の間に立って扇の要のごとく振る舞う中で,上記競売入札妨害及び贈賄の各犯行を重ねたほか,被告会社の業務に関し上記法人税ほ脱の各犯行にも及んだものである。被告人が国会議員秘書時代に培った人脈を悪用してこれらの犯行に及んだことにより,当該各地方公共団体の施政を混乱させたばかりでなく,国政全般に対する国民の不信感を醸成したのであって,犯行の影響は重大である。被告人が上記各犯行に及んだ動機は,被告会社の顧客らの依頼に応じることにより成功報酬等を得るとともに,選挙資金を援助するなどして首長との関係を更に緊密にし,被告会社の業務の維持・拡大を図ることなどにあったと認められ,身勝手で自己中心的なものとして酌量の余地に乏しい。実際にも,被告人は,依頼主の業者と基本契約を締結したり(判示第1の1,第2の3),競売入札妨害を含む受注調整活動の成功報酬として300万円,1600万円といった金員を受領したり(判示第1の1,第2の1),首長への謝礼等として業者に拠出させた金員の中から700万円を取り出し自己の用途に充てる(判示第3の1)などしており,本件各犯行に関連して多大の利益を取得したものである。 なお,弁護人は,被告会社が,軌道上を隊列走行するバスにより輸送を行う新交通システムの研究・啓蒙活動を行うなど,社会的に有用な事業を業務内容としていた旨強調する。弁護人提出の関係証拠等によれば,被告会社が,上記新交通システムの実用化に向け,全国各地の地方公共団体に積極的な働き掛けを行っていたと認められるが,そのことによって,本件各犯行の犯情の悪質性が減殺されるもので の関係証拠等によれば,被告会社が,上記新交通システムの実用化に向け,全国各地の地方公共団体に積極的な働き掛けを行っていたと認められるが,そのことによって,本件各犯行の犯情の悪質性が減殺されるものではない。 6 以上に照らすと,被告人の刑責は相当に重く,また,被告会社の刑責も軽視し得ない。 7 他方,被告人らについて,以下のような斟酌すべき事情が存する。第1に,被告人は,競売入札妨害の各犯行では,業者の依頼に応じて首長との仲立ちを務めたに過ぎず,その刑責を,予定価格等を内報した首長やそれを受けて落札に至った業者の各刑責と同等にみることはできない。また,賄賂供与の各犯行では,前述のような役割を果たしたとはいえ,賄賂と直接的な対価関係に立つのは工事受注に好意的な取り計らいを受けたという業者の利益であって,この点で,被告人の刑責を業者のそれと同一視することはできない。そして,贈賄と対向する収賄側の首長の刑責が,被告人の刑責より相当重いことは,法定刑の違い等に照らしても明らかである。第2に,被告人は,本件各犯罪事実を捜査段階から認め,反省の言葉を述べている(法人税ほ脱については,被告会社代表者としても,事実を認めるなどしている)。第3に,事件後の多数回にわたる報道により,被告人も被告会社も多大な打撃を被るなど,相当程度の社会的制裁を受けている。第4に,被告人には前科前歴がなく,また,妻が出廷して被告人の更生に協力する旨を約している。 8 しかしながら,これらの斟酌すべき事情を十分考慮しても,前記の被告人の刑責の重さにかんがみると,被告人は懲役刑の実刑を免れず,また,被告会社は相応の罰金刑を受けるのはやむを得ない。 なお,弁護人は,前記第1の斟酌すべき事情に関連して,本件一連の事件で被告人とともに起訴された者のうち,これまで判決を受けた関係被 免れず,また,被告会社は相応の罰金刑を受けるのはやむを得ない。 なお,弁護人は,前記第1の斟酌すべき事情に関連して,本件一連の事件で被告人とともに起訴された者のうち,これまで判決を受けた関係被告人は,競売入札妨害罪及び加重収賄罪に問われたA,収賄罪に問われたQを含め,いずれも執行猶予付き懲役刑に処されていることを指摘し,被告人にも執行猶予を付すべきである旨主張する。なるほど,個別の事案においては,前述のとおり,被告人の刑責を業者のそれと同等にみるわけにはいかず,また,首長の刑責に比べれば被告人の刑責は相当軽いといわざるを得ないが,被告人が,判示第1ないし第3のとおり,競売入札妨害2件,贈賄5件の各犯行を重ね,さらには,判示第4の法人税ほ脱の各犯行に及んだことを総合考慮すると,弁護人指摘の点は,被告人につき実刑が相当であるとの判断を妨げるものではない。 9 以上の次第で,被告人を主文の懲役刑に,被告会社を主文の罰金刑にそれぞれ処するのが相当であると判断した。 (求刑-被告人につき懲役3年6月,被告会社につき罰金1000万円)平成15年3月18日東京地方裁判所刑事第8部裁判長裁判官飯田喜信裁判官佐藤基裁判官木畑聡子

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