昭和60(ネ)43 日本トラック労働協約改訂

裁判年月日・裁判所
昭和60年11月27日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。        事   実 第一 当事者の求めた裁判 一 控訴人  原判決を次のとおり変更する。  被控訴人は控訴人に対し、金五一一万一

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判決文本文5,231 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人原判決を次のとおり変更する。 被控訴人は控訴人に対し、金五一一万一七三八円及びこれに対する昭和五五年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二被控訴人主文同旨第二当事者の主張当事者双方の事実上及び法律上の主張は、次に付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。 (控訴人の主張)一協約の不合理性・不当性について(一) 暫定的に改訂された労働協約(以下暫定協定という)においても、退職金、奨励金、賃金、一時金等は引上げられ、労働者に支払われる給付は増大しているのに、ただ労災補償給付だけが引下げを受けた。これは労災療養者に対してのみ、克服不可能な犠牲を強いているものである。しかも、被控訴人が右補償基準切下げを回避するため努力をしたのか、それが他の方法ののちの最後の手段であつたのかなどは、一切明らかにされていない。組合の同意も、充分な試算や代替措置の検討を経てなされたという事実は認められない。かかる協定は不合理・不当というべきである。 (二) そもそも、被控訴人は、日本一の運輸企業である日本通運が九〇%以上の株式を握るその子会社であつて、倒産のおそれなど全くなく、経営危機にあつたことなど認められない。 二就業規則八六条二項の解釈等について(一) 同条項は、単に災害補償に関するだけのものではなく、会社(被控訴人)が、一般的に労災休業中の者に対して、それが業務に基因したことに鑑み、それ以上の不利益を与えず、労働者の生存権を保障する趣旨で定められたものと解されるのであつて、わざわざ「出勤とみなし」と定めているのは 一般的に労災休業中の者に対して、それが業務に基因したことに鑑み、それ以上の不利益を与えず、労働者の生存権を保障する趣旨で定められたものと解されるのであつて、わざわざ「出勤とみなし」と定めているのは、使用者として、一般的包括的に当該労働者に不利益を与えず、充分に療養に専念できるよう、生活保障したものというべきである。 (二) 一時金協定における「長欠者」には、公傷休暇中の者は含まれない。即ち、一時金協定には「休職者及び六ケ月以上の長欠者」は支給対象者ではない旨の定があるが、右「休職者」「長欠者」の概念は、右協定上からは明らかでないから、これを労使の基礎的規範である就業規則に依拠して定むべきところ、就業規則によると、休職者とは同規則五〇条に該当して会社から「休職」を命ぜられたものであり、長欠者とは長期欠勤者のことであり、その欠勤とは私傷の場合を含むが、労災療養中で休暇を与えられている者はこれに当らず、従つて控訴人は一時金の対象者である。 三就業規則の基準を下回る労働協約の効力について特段の事情のない限り、労働条件の基準が就業規則と労働協約との間で食違う場合、個々の労働者の労働条件は、有利な基準に従つて決定されると解すべきである。 法は労働協約が就業規則を上回る基準を定めた場合は、協約が優先して適用される旨を定めるが、就業規則が協約の基準を上回る場合については明確な規定がない。しかし、就業規則は、使用者に作成させることによつて、労働条件の基準(最低基準)を明確にさせ、これを労働者に周知させることによつて、労働者自身に自らの労働条件を理解させ、これを届出させることによつて監督官庁の後見監督行政下におき、もつて最低限の近代的労使関係の確立と生存権理念を実現しようとするものであり、使用者として協約の有無にかかわりなく、これをもつて稼働させる これを届出させることによつて監督官庁の後見監督行政下におき、もつて最低限の近代的労使関係の確立と生存権理念を実現しようとするものであり、使用者として協約の有無にかかわりなく、これをもつて稼働させることを労働者に示し、労働契約を結ぶものであるから、たまたま、労働協約の基準が就業規則のそれを下回つていたとしても、就業規則の効力が協約の基準まで引下げられねばならないいわれはない。また、引下げなければ組合統制力の低下や団交機能の低下を招くものでもない。ただ、協約が就業規則の定める基準以上に合理的で、協約の定めを就業規則に優先して適用することが、むしろ、労基法の精神を活かすこととなるとか、又は、個々の労働者においても、就業規則に基づく権利主張より協約自治に拘束されることが正当で合理的だと判断される場合には、協約の優先的適用は肯定されるとしても、そうでない場合は、労働者は自己に有利な基準を主張しうべきものである。 (被控訴人の主張)控訴人の右主張はいずれも争う。 第三証拠関係(省略) 理由 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、原判決の認容した限度で理由があるからこれを認容し、その余を失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。 一原判決一七枚目表の二行目から三行目にかけて「規定があること」とある次に「(但し現規定であるかの点は除く)」を、同二三枚目裏一行目の「支払つたこと」の次に「(但し一時金の平均額の点は除く)」を、それぞれ加える。 二控訴人の主張について(一) 控訴人は、被控訴人はそもそも経営危機になかつたものであり、仮に、そうでないとしても、本件暫定協定は、労働者に支払われる給付は増大しているのに、労災補償給付のみが引下げられ、しかも、それ て(一) 控訴人は、被控訴人はそもそも経営危機になかつたものであり、仮に、そうでないとしても、本件暫定協定は、労働者に支払われる給付は増大しているのに、労災補償給付のみが引下げられ、しかも、それが他に方法のないやむを得ないものであつたとも思われない不当・不合理なものである旨主張する。 しかし、被控訴人が資本金を上回る累積赤字を抱え、所謂オイルシヨツクの不況の中で、なお、その膨大な増加が見込まれる経営危機にあつたこと、及び、被控訴人と組合との労働協約が昭和四九年六月六日及び同五〇年七月四日に暫定協定をもつて改訂された事情と経緯は、前認定(原判決理由説示二3(一)ないし(五))のとおりであり、かつ、原審証人A、同B、同Cの各証言を総合すると、右改訂に当つては、一方では賃金の絶対値は従来どおり、また、業界他社並みに確保し、他方では経営改善のためこれを上回る生産性の向上を図る方策として、賃金に占める歩合給の割合が実質的に大幅増となり、結果的に収入の増加した者もあつたが、それに見合う労働は著しく強化され、賃金の実質水準は低下したものであり、また、協約上具体的な取りきめはされなかつたものの、組合は従来はなかつた通勤可能範囲外への配置転換や、希望退職の形態による人員整理を承認したことが認められるから、経営危機が存したのはもとより、暫定協定が労災補償給付のみを引下げたものでないことは明らかである。のみならず、このように現に就労している一般組合員が諸種の不利益の受容を余儀なくされることとなつたのであるから、公傷休暇の者についても、休業補償給付上或る程度基準切下げがなされることは強ち許されないこととはいえないというべきである。しかも、右基準の切下げは、所謂法定外の上積み給付分の減額であり、かつ、あくまで経営危機解消までの暫定措置であるに過ぎないことを 下げがなされることは強ち許されないこととはいえないというべきである。しかも、右基準の切下げは、所謂法定外の上積み給付分の減額であり、かつ、あくまで経営危機解消までの暫定措置であるに過ぎないことを考えると、暫定協定が不当・不合理であるとはいえず、控訴人の前記主張は採用できない。 (二) 控訴人は、公傷休暇を受けた者は、すべての点において「出勤とみなされ」、出勤者と同一に扱われるべきであり、従つて、控訴人は昭和五一年末以降も一時金支給の対象者に該当する旨主張する。 しかし、前認定のところに照らし、昭和五四年五月一七日改訂が所轄労働基準監督署長に届出られた以前及び以後の就業規則各八六条二項においても、また、同四九年六月六日及び同五〇年七月四日の各暫定協定においても、いずれも文言上は、業務上負傷し公傷休暇を得たものの休業補償については、法定補償の上積みとして一定額の追加給付を行うと定めるのみで、それ以外の点、殊に一時金の取扱いについては何ら触れるところがないこと、昭和五一年度末及び同五二年度夏季の一時金に関する各労働協約には「六ケ月以上の長欠者は支給対象者から除く」とすると共に、前掲乙第一〇号証の二及び三によれば、右一時金支給対象者確定の基礎となる出勤日数算定上、結婚・服喪・交通遮断の各休暇と異り、公傷休暇は出勤扱いされていないこと(これに反し、支給対象とされた者の配分額決定上欠勤控除をするときは、公傷休暇は出勤扱いとなりうる)、前掲甲第一号証によれば、就業規則の用語上「欠勤」と「休暇」は区別されているが、「長欠者」なる用語は用いられていないこと、昭和五二年末以降の一時金に関する労働協約においては「実出勤日数ゼロの者は支給対象者から除く」として表現を明確にすると共に、前掲乙第一〇号証の四及び五によると、昭和五二年末及び同五三年夏季においては 昭和五二年末以降の一時金に関する労働協約においては「実出勤日数ゼロの者は支給対象者から除く」として表現を明確にすると共に、前掲乙第一〇号証の四及び五によると、昭和五二年末及び同五三年夏季においては、一時金支給対象者確定の基礎となる出勤日数算定上公傷休暇の全休者は出勤扱いしない旨明定していることが認められること、前掲A、B、C各証言に照らすと、右のような用語の異りや変遷に拘らず、その間受傷者の過失の有無による差異の点を除いて、公傷休暇者に対する一時金の実際の取扱いについて別段の変化はなかつたと認められることに、前認定の事実(原判決理由説示三2、3)も併せ考えると、昭和五一年末以降の一時金につき控訴人を出勤とみなしてその受給対象者とみることは困難という他なく、この点の控訴人の主張も採用できない。 (三) 更に、控訴人は、労働条件の基準が、就業規則と労働協約との間で食違う場合は、個々の労働者の労働条件は有利な方の基準に従つて決定されるべきである旨主張する。 しかしながら、本件においては、組合は経営危機解消を目指す使用者(被控訴人)からの提案に対応し、これと折衝を重ね、一方組合員らに対して執行部の基本姿勢と交渉経過の周知徹底を図つて、組合員らに格別の反対意見もなかつたことから、暫定協定の締結に至つたものであり、その内容も、経営危機の中で雇傭の安定、賃金水準の維持を図りつつ、やむなく不利益な変更にも合意したもので、不当・不合理なものということはできない。また、被控訴人と組合とは、従前からユニオンシヨツプ協定を締結して、労働条件に関し、就業規則と労働協約が競合する場合は、労働協約が就業規則に優先するとの取扱いをしてきたものであること(なお、遅れながら、昭和五四年五月就業規則変更の手続が履践されたこと)は、前認定のとおりである。また、前掲A、B、 が競合する場合は、労働協約が就業規則に優先するとの取扱いをしてきたものであること(なお、遅れながら、昭和五四年五月就業規則変更の手続が履践されたこと)は、前認定のとおりである。また、前掲A、B、C各証言によると、本件暫定協定においても、被控訴人、組合とも右暫定協定によつて、就業規則の該当条項も同一内容に変更せられたものと認識していたことが窺われ、その限りにおいては、従来存した就業規則は、実質的には組合の同意のもとに暫定協定と同一内容に変更せられ、ただ形式的に変更の手続が遅延していたに過ぎないともいえなくはない。そして、本来就業規則を変更すること自体は、それが労働者に不利益な労働条件に変更する内容のものであつても、その内容が合理的なものである限り許されないものではないと解せられる(最高裁昭和四〇年(オ)第一四五号昭和四三年一二月二五日大法廷判決民集二二巻一三号三四五九頁参照)ことに鑑みても、右のような事実関係のもとでは、控訴人において改訂された労働協約(暫定協定)の適用を免れることはできないと解するのが相当である。 以上の次第で、この点の控訴人の主張も採用できない。 よつて、右と同旨の原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官黒木美朝西岡宜兄喜多村治雄)

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