平成14(ネ)280 損害賠償請求,同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月11日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 尾道支部 平成12(ワ)167
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判決文本文6,584 文字)

主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求(当審における予備的請求を含む。)及び附帯控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 控訴(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴(1) 原判決中,附帯被控訴人に関する部分を次のとおり変更する。 (2) 附帯被控訴人は,附帯控訴人に対し,金2200万5000円及びうち金2000万5000円に対する平成12年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)主位的に,被控訴人所有の船舶の出航を妨害したとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,同不法行為によって被控訴人が被った損害金2200万5000円(滞船料相当額2000万5000円,弁護士費用200万円)及びうち金2000万5000円(滞船料相当額)に対する訴状送達の日の翌日である平成12年11月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)予備的に,同船舶の出航を妨害したことによってその買主であるAが控訴人に対して有するに至った不法行為に基づく損害賠償請求権を債権譲渡によって取得したとして,同額の金員の支払を求めた事案である。 なお,予備的請求は当審において追加されたものである。 1 争いのない事実等(証拠等により比較的容易に認定しうる事実を含む。)(1) 被控訴人は,中古船の販売等を目的とする有限会社である(弁論の全趣旨)。 株式会社Bは,遊園地の経営等を目的とする会社で,遊園地「 証拠等により比較的容易に認定しうる事実を含む。)(1) 被控訴人は,中古船の販売等を目的とする有限会社である(弁論の全趣旨)。 株式会社Bは,遊園地の経営等を目的とする会社で,遊園地「C」(以下「遊園地」という。)を経営していたが,広島地方裁判所呉支部の平成10年10月15日付命令により,特別清算を開始した。 呉市はBの株主である(弁論の全趣旨)。 控訴人は,呉港海域に漁業権を有していて,遊園地の沖合もその一部である。 (2) Bは,特別清算手続において,平成11年12月1日をもって,遊園地内の遊戯具を撤去し,地上建物を呉市に売却した上で,賃借していた遊園地及びその駐車場の各敷地を各所有者に返還した(遊園地敷地は大部分は呉市所有,駐車場は呉市土地開発公社所有)。そして,引き続きB所有の下記船舶(以下「本船」という。)の買い手を探していた。呉市は,同日以降所有者として遊園地敷地を管理していた(乙イ1ないし3,乙ロ1)。 ① 船種及び船名非自航船ESTRELLA(係留旅客船)② 船舶の寸法115.2メートル×38メートル×3メートル③ 用途係留旅客船(総合レジャー船)(3) Bは,平成12年2月9日,被控訴人に対し,本船を代金1億2075万円で売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し(甲1),被控訴人は,平成12年3月10日までに代金を支払った(甲12,乙イ1)。 (4) 本件売買契約6条には,下記の引渡及び瑕疵担保責任条項等がある(甲1)。 ① 売主は,買主に対し,第3条の売買代金完済と同時に,呉市ab丁目c番地dの旧C岸壁(以下「本件岸壁」という。)において現状有姿のまま本船を引き渡す。 ② 買主は平成12年3月20日までに本 ① 売主は,買主に対し,第3条の売買代金完済と同時に,呉市ab丁目c番地dの旧C岸壁(以下「本件岸壁」という。)において現状有姿のまま本船を引き渡す。 ② 買主は平成12年3月20日までに本船を本件岸壁から他の場所に移転しなければならない。ただし,悪天候のため本船を曳航することが不可能な場合に限り,売主の承諾を条件に最長同月31日まで移転期限を延期することができる。この最終期限を過ぎても買主が本船を移転しないときは,売主は違約金として1日につき10万円を請求することができる。 ③ 本船は現状有姿のまま売買するものであり,売主は瑕疵担保責任を負わない。 ④ 本船の出航事務手続費用及び移転先までの曳航費用は買主の負担とする。 (5) 被控訴人は,平成12年2月9日,韓国企業のAに対し,本船を代金1億6000万円で売却する旨の契約(以下「本件転売契約」という。)を締結した(甲2)。 (6) 被控訴人は,平成12年3月23日に出航する予定であったが,前日の22日,控訴人が呉市に対し「当漁協に事前の同意を求めずに本船を出航させようとしているのではないか。」との趣旨の苦情を述べたことを契機に,被控訴人,B,呉市と控訴人との間で数度の交渉が行われ,その間本船の出航が延期になった。結局,前記漁協の同意は同月29日になされ,本船は,同日午後2時ころ出航した(甲12,証人D(原審),被控訴人代表者(原審))。 (7) 被控訴人は,前項の出航の遅れにより,Aから受け取るべき代金から,タグボートの滞船料2000万5000円を控除された額しか受け取れなかった(甲2,甲5の1及び2,甲6の1ないし3,甲16)。 2 争点(1) 控訴人による本船の出航妨害行為(主位的請求,予備的請求)(被控訴人の主張)控訴人は,呉 受け取れなかった(甲2,甲5の1及び2,甲6の1ないし3,甲16)。 2 争点(1) 控訴人による本船の出航妨害行為(主位的請求,予備的請求)(被控訴人の主張)控訴人は,呉市に苦情の電話を入れ,説明に行った被控訴人代表者や呉市職員に対し,通過地点にたて網を張って出航を阻止する旨述べた。 この発言の趣旨は,①控訴人は,既得権として,大型船の出入港時に組合員の漁船を警戒船として使用してもらおうと思っていたことに加え,②本件岸壁のドルフィンの処理など控訴人とB及び呉市との間に従前からの紛争があったことから第三者である被控訴人を巻き込んだものである。 また,控訴人組合長自らが理事会の同意は不要と発言しているのに,一部の理事があくまで同意を出航条件のように主張し,その後も呉市やBから口頭や文書で早期の同意を要請されているにも関わらず,控訴人は,平成12年3月29日まで理事会を開かず,同日にようやく同意を決定した。 (控訴人の主張)控訴人は,平成12年3月22日午前10時に理事会を開いたが,理事会が終わった後,理事から本船が離岸しそうだが,事前に通知を受けていないとの連絡を受けた。控訴人の地区の海域では,大型船が接岸,離岸する際には,同船の船主,船長等の船舶管理者から控訴人に対して,その接岸,離岸について同意願書を提出してもらい,これを控訴人漁協の理事会において審議し,同意する慣習がある。そこで,呉市に問い合わせたところ,同日昼頃になって被控訴人代表者及び呉市職員が本船の離岸の同意を求めてきた。その際,控訴人は,「今まで連絡を受けていないし,今日理事会を開いたばかりで,各役員にも仕事があるので1週間後くらいでないと次の理事会を開けない。日時は早急に検討する。」と答え,翌日,同月29日午前10時か 訴人は,「今まで連絡を受けていないし,今日理事会を開いたばかりで,各役員にも仕事があるので1週間後くらいでないと次の理事会を開けない。日時は早急に検討する。」と答え,翌日,同月29日午前10時から理事会を開催することを決め,各役員に通知した。同日理事会で同意の決議をし,呉市やBにもその旨を伝えた。また,被控訴人代表者に対して,本船が出るなら出ていいと言っており,妨害行為はしていない。 被控訴人が出航を延期したのは,控訴人の呉市に対するドルフィン撤去要求等に飛び火することを恐れた呉市職員からの懇請に配慮したものである。 (2) 被控訴人に生じた損害額(主位的請求)(被控訴人の主張)被控訴人は,Aから入る予定の本船の売買代金からタグボートの滞船料2000万5000円を差し引かれたので,これと同額の損害を被ったものである。 本件転売契約においては,契約書の文言とは異なるが,本船をC沖合1マイルの地点で引き渡し,引渡確認後,Aから代金が振込送金される旨合意されていた。本船の引渡遅延による損害は債務者である被控訴人の責に帰すべからざる事由によるものであり,被控訴人とA間では被控訴人の負担となる。そこで,これを原因者である控訴人に対し,損害として請求するものである。 (控訴人の主張)被控訴人は,本件転売契約上,Aから代金全額の支払がない限り,本船を引き渡さなくてもよいから,その支払があるまで引渡遅延による損害をAに対して負担する理由はない。また,同契約上,本船を引渡場所である本件岸壁から他所へ移転させるのは買主Aの義務であり,曳航費用も買主Aの負担であると定められているのであるから,Aが売買代金から滞船料を差し引く理由はない。したがって,被控訴人に損害は生じない。 滞船料の算出自体も過大で は買主Aの義務であり,曳航費用も買主Aの負担であると定められているのであるから,Aが売買代金から滞船料を差し引く理由はない。したがって,被控訴人に損害は生じない。 滞船料の算出自体も過大である。 本船の引渡場所がC沖合1マイルの地点であるという被控訴人の主張は,故意又は重過失により時期に遅れて提出された攻撃・防御方法であり,訴訟の完結を遅延させるものであるから,許されず,却下されるべきである。 (3) 過失相殺(主位的請求)(控訴人の主張)本件の発端は,控訴人の地区の海域では,大型船が接岸,離岸する際には,同船の船主,船長等の船舶管理者から控訴人に対して,その接岸,離岸について同意願書を提出してもらい,これを控訴人漁協の理事会において審議し,同意する慣習があるにも関わらず,被控訴人が控訴人に対し,本船の出航通知をしていなかったことにある。しかも,被控訴人は,出航しようと思えばできたにも関わらず,呉市からの出航延期の要請に基づいてずるずると出航を延期したもので,損害発生・拡大に過失がある。 したがって,大幅な過失相殺がなされるべきである。 (被控訴人の主張)大型船の出航に際して控訴人の同意を得なければならないとの慣習はなかったのであり,被控訴人が控訴人の事前の同意を求めなかったことに過失はない。そもそも控訴人としては,組合員の漁船を警戒船として使用してもらう機会を逸することに反発しただけであり,事前に通知を受けようが受けまいが,それと妨害行為とは関係ない。本船の出航を巡る控訴人の妨害行為は,控訴人と呉市及びBとの過去からの紛争に起因するもので,被控訴人が予見することは困難であった。 また,被控訴人は本船の出航に際して,業者による警戒船も多数用意しており,控訴人との間で紛争が 控訴人と呉市及びBとの過去からの紛争に起因するもので,被控訴人が予見することは困難であった。 また,被控訴人は本船の出航に際して,業者による警戒船も多数用意しており,控訴人との間で紛争が生ずる余地はなかった。 したがって,過失相殺の余地はない。 (4) Aの損害賠償請求権及びその譲渡(予備的請求)(被控訴人の主張)控訴人は,争点(1)のとおり,本船の出航を妨害する行為をし,そのため,Aはタグボートの滞船料2000万5000円の損害を被った。 Aは,被控訴人に対し,不法行為に基づく控訴人に対する上記損害の賠償請求権を譲渡した。 Aは,控訴人に対し,平成14年12月9日,上記債権譲渡の通知をした。 (控訴人の主張)予備的請求原因の追加は,被控訴人の故意又は重過失により時期に遅れて提出された攻撃・防御方法であり,訴訟の完結を遅延させるものであるから,許されず,却下されるべきである。 被控訴人の主張する事実は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(控訴人による本船の出航妨害行為)について(1) 証拠(甲12,乙イ1,乙ロ1,2,乙ハ2,証人E(原審),同D(原審),被控訴人代表者(原審))及び弁論の全趣旨を総合すると,①控訴人は,平成12年3月22日に開催した理事会が終了した後,理事から本船が離岸しそうだが,事前に通知を受けていないとの情報を得たこと,②そこで,D参事が,組合長の指示を受け,呉市に対し,控訴人の同意がないまま本船が出航を準備していることについて苦情を告げる電話をしたこと,③呉市の担当者Eが,同日昼ころ,被控訴人代表者とともに控訴人の事務所を訪ねたところ,D参事とF理事が応対し,同人らは,Eと被控訴人代表者に対し,なぜ今まで本船が出航すること 告げる電話をしたこと,③呉市の担当者Eが,同日昼ころ,被控訴人代表者とともに控訴人の事務所を訪ねたところ,D参事とF理事が応対し,同人らは,Eと被控訴人代表者に対し,なぜ今まで本船が出航することの連絡がないのかと問いただした後,Eに対し,「今まで迷惑を掛けておきながら黙って船を出すつもりか。」と言い,被控訴人代表者に対し,「あなたに怒っているのではないよ。あんな邪魔者を買ってくれたあなたには感謝こそすれ怒る理由がない。市役所が悪いのか弁護士が悪いのかは知らないが,出せるものなら出しゃいいが。」と言ったこと,その後出航希望については,「そんな勝手なことをするのであれば,海面に設置してあるドルフィンを撤去してもらわんといけん。」と相当の剣幕で苦情を述べたこと,④この会談時のD参事とF理事の話は,これまでの呉市に対する諸々の不満を背景として,その大半の時間は,呉市に対して,護岸工事やドルフィン撤去等に関しての苦情を述べることに費やされたこと,⑤本船は,ドルフィンという設備によって本件岸壁につなぎとめられていたこと,⑥ドルフィンは呉市の所有管理する施設であり,控訴人の漁業権行使区域内に出ているものであること,⑦Eは,控訴人の事務所を辞した後,港内のドルフィンの撤去を迫られると撤去するには多額の費用がかかるので困った旨思案に暮れていたこと,⑧他方,被控訴人代表者は,D参事らの話を聞いても控訴人による出航妨害行為は念頭に浮かばなかったため,帰ってからすぐに出航の準備を続けようと思っていたこと,⑨ただ,被控訴人代表者は,その後,Eら呉市の職員らがあまりに控訴人の同意を得るまで待ってくれと頼むので,同月23日に予定していた出航を遅らせることにしたこと,以上の事実が認められる。 これに反して,被控訴人代表者は原審の本人尋問において,控訴人の妨 控訴人の同意を得るまで待ってくれと頼むので,同月23日に予定していた出航を遅らせることにしたこと,以上の事実が認められる。 これに反して,被控訴人代表者は原審の本人尋問において,控訴人の妨害を恐れていたという趣旨の供述もしているが,同供述部分は,抽象的であるし,かつ,上記認定を支える供述部分とも矛盾するので,採用し得ない。他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。 (2) 以上の認定事実によれば,被控訴人代表者自体は,上記会談後も,特段本船の出航に支障があるとは考えておらず,速やかに出航するつもりであったが,控訴人の呉市に対する姿勢が硬化することを恐れた呉市職員からの懇請に折れ,呉市に配慮して出航を延期したものとうかがわれるのであって,控訴人が本船の出航に支障を及ぼす妨害行為をしたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。 よって,その余の争点について判断するまでもなく,被控訴人の本訴請求はいずれも理由がない(当審で追加された予備的請求が適法であるかも争点であるが,控訴人の出航妨害行為が認められない以上,認容の可能性がないので,判断の必要性がない。)。 2 以上の次第で,被控訴人の本訴請求(当審で追加された予備的請求を含む。)はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第4部裁判長裁判官草野芳郎 裁判官廣永伸行裁判官山口浩司

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