平成15(行ウ)5 違法公金支出金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年2月12日 札幌地方裁判所
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判決文本文9,623 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,A及びBに対し,787万5000円及びこれに対する平成14年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要本件は,江別市長A及び江別市長の補助機関である同市助役Bが,株式会社Cに対し,損害賠償金として787万5000円を支払ったのは違法な支出であるとして,江別市民である原告が,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,私人であるA及びBに損害賠償請求をすることを,地方公共団体の執行機関である江別市長に対して求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 原告は江別市の住民であり,同市議会議員であった。 被告である江別市長Aは,地方自治法148条に定める普通地方公共団体の執行機関である。Bは,江別市長の補助機関として予算執行権限を有する江別市助役である。 (2) 江別市は,平成12年3月,江別駅に隣接した9690平方メートルの用地(以下「本件用地」という。)において,従前から検討していた周辺地区の市街地再開発計画を更に進めて,ホテル機能,商業機能及び業務機能からなる複合施設である活性化拠点施設(以下「本件施設」という。)を整備することを主要事業とする江別駅周辺地区市街地総合再生基本計画(以下「本件計画」という。)を策定した。他方で,江別市は,同年1月には,株式会社C(以下「本件会社」という。)からの出店申出を受けて,同社をホテル事業の出店企業(施設内の必要面積を賃借してホテル業務を行う者)として選定していた。 (3) 江別市は,信託銀行が本件土地の信託を受けて本件施設の建設と運営を行う施行主体となる公有地信託事業方式によって整備する計画を立てていたが,同 賃借してホテル業務を行う者)として選定していた。 (3) 江別市は,信託銀行が本件土地の信託を受けて本件施設の建設と運営を行う施行主体となる公有地信託事業方式によって整備する計画を立てていたが,同事業に積極的な姿勢を示していた信託銀行等から参画が困難であると説明され,平成12年9月にこの方式を断念した。その後,江別市は,江別市が出資して設立した第3セクターである株式会社江別振興公社(以下「公社」という。)が借地の上,本件施設の施行主体となる方式(以下「公社方式」という。)によって本件計画を実現できないか検討したが,これについても,平成13年10月5日に断念するに至った。このように本件施設の施行主体の選定が整わなくなった事態を受けて,本件会社は,平成13年10月9日,ホテル出店の申出を白紙撤回した。 (4) 江別市は,平成14年9月4日,江別市議会に対し,以上の経緯によって本件会社に生じた損害を賠償するために787万5000円を支出する内容の議案を上程し,江別市議会は,同年9月25日,環境経済常任委員会における審議承認を経た上,同議案を可決した。 (5) これを受けて,江別市助役であったBは,同年9月25日,江別市会計規則及び同市事務専決規程に基づく専決処分により,本件会社に対し787万5000円を支払うとの支出負担行為を行い(以下「本件支出」という。),同年10月3日,江別市経済部商業振興課長が,江別市会計規則及び同市事務専決規程に基づく専決処分により,その支出命令を行い,同月8日,本件会社に787万5000円を支払った。 (6) 原告は,平成14年11月8日,本件支出について,江別市監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,江別市監査委員は,同年12月26日,これを棄却する決定を行った。 2 争点(1) 14年11月8日,本件支出について,江別市監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,江別市監査委員は,同年12月26日,これを棄却する決定を行った。 2 争点(1) 江別市が本件会社に対して損害賠償措置を講じたこと自体についての違法性の有無(原告の主張)江別市が公社方式を断念した段階において,江別市と本件会社の間には何らの契約関係も存在せず,本件会社から江別市に対して何らの損害賠償請求もない状況の下,江別市は,自ら進んで損害賠償をする用意がある旨言明し,以後一貫して補てんする姿勢を貫き,最終的に本件支出に至っている。ところで,行政計画遂行の過程で計画の変更は常にあるのであり,変更に伴って事業者に対する損害賠償義務があるかどうかは,当該政策変更が不法行為を構成するほどの違法性を有していたかどうかにかかるところ,本件における本件会社の支出というのは,単なる企業の通常の事業展開に伴い自己責任で行う投資としての支出に過ぎず,社会通念上看過し得ないほどの積極的損害であったとは到底いえないのであるから,江別市が公社方式を断念したことが本件会社に対する不法行為に該当する余地はない。したがって,江別市は,本件会社に対して,損害賠償措置を講ずる義務はなかったというべきであり,本件支出は違法である。 (被告の主張)江別市が本件計画による本件施設へのホテルの出店の企業誘致を行い,出店の意向のあった2社のうち本件会社が出店にふさわしいと判断してその旨を伝え,同社に対してホテル事業への出店を申し入れるとともに本件計画の実現に向けての協力を要請し,その後もホテルの開業に向けた準備をするよう要請したことや,その後,本件計画が公有地信託事業方式から公社方式に変更したものの本件会社は江別市の施策が維持されることを信頼して,江別市の要請 力を要請し,その後もホテルの開業に向けた準備をするよう要請したことや,その後,本件計画が公有地信託事業方式から公社方式に変更したものの本件会社は江別市の施策が維持されることを信頼して,江別市の要請に応じて公社や江別市に将来生じる財政負担を算定するための資料提供を行い,ホテル事業出店に向けて多額の資金と労力を投入する等様々な開業準備行為を行ったことなどの一連の経過を考慮すれば,江別市と本件会社との間でホテル事業に出店する内容の契約が締結されなかったものの,一般的な地方公共団体と企業との関係を超えた密接かつ特殊な関係が生じていたというべきである。 また,本件会社がホテルへの出店を取りやめたのは,江別市が公有地信託事業方式を断念し,更には公社方式も断念したため,本件計画の事業主体がなくなったのが原因であったのであって,いずれも江別市側の事情によるものであり,不可抗力に当たるようなやむを得ない客観的事情によるものではない。以上に照らせば,江別市が公社方式を断念するに当たって,本件会社の上記信頼,すなわち,本件施設が整備され,それを賃借してホテルとして出店できるものと信頼し,これを前提として江別市と極めて密接かつ特殊な関係を形成してきたという信頼を,信義衡平の原則に照らして保護すべきことは当然であり,江別市が本件会社に対する代償措置又は損害の補償措置を講じずに放置することは,本件会社に対する不法行為を構成するもので,本件会社からの損害補てんの要請を受けて,こうした視点から本件支出に至ったことについて,何ら違法性はない。 (2) 江別市が本件会社の被った損害額を787万5000円と算定して同額の損害賠償措置を講じたことについての違法性の有無(原告の主張)江別市は,本件会社が提出した見積書を根拠として,本件会社に生じた損害を787万5000円と算 害額を787万5000円と算定して同額の損害賠償措置を講じたことについての違法性の有無(原告の主張)江別市は,本件会社が提出した見積書を根拠として,本件会社に生じた損害を787万5000円と算定した。しかしながら,本件会社が提出した見積書に記載された合計1575万円の損害は何ら根拠が明らかではないばかりか,787万5000円という金額も本件会社が提出した見積書に記載された合計1575万円を単に2分の1にした金額にすぎないのであるから,江別市が客観的合理的な根拠に基づかずに本件会社に生じた損害を算定したことは明らかである。 (被告の主張)江別市は,本件会社から,損害として合計1575万円が相当であるとの損害見積書及びこれを裏付ける内容の資料の提出を受け,説明を受け,内容を精査した上で,損害として合計885万円を補てんするのが相当であると判断した。その後,江別市は,本件会社と交渉を重ね,最終的に787万5000円を補償額とすることで合意に至った。以上のとおり,江別市は,客観的合理的な根拠に基づいて本件会社の損害を787万5000円と算定したのであって,原告の主張には理由がない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(損害賠償措置を講じたこと自体についての違法性)について(1) 上記争いのない事実,証拠(括弧内に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア平成12年3月,江別市は,江別市土地開発公社が国鉄清算事業団から平成9年2月に取得して所有していた本件用地において,土地の信託を受けた信託銀行が本件施設の建設,運営を行う施行主体となる公有地信託事業方式により,ホテル機能,商業機能及び業務機能からなる複合施設である活性化拠点施設を整備することを主要事業とする本件計画を策定した(乙3,乙4,甲2)。 イ江別市は,ホテ 主体となる公有地信託事業方式により,ホテル機能,商業機能及び業務機能からなる複合施設である活性化拠点施設を整備することを主要事業とする本件計画を策定した(乙3,乙4,甲2)。 イ江別市は,ホテル出店企業を募ったところ,平成11年11月,本件会社外1社から出店意向の打診があったが,会社の事業内容,信用度,経営理念,事業構想等を調査した結果,本件会社がホテル出店企業としてふさわしいと判断した。本件会社は,こうした江別市の意向を受けて,平成12年1月12日,正式にホテル出店を申し出た(乙5)。江別市は,本件会社に対し,本件計画の実現に協力することや開業準備に必要な作業に着手するよう要請した。 ウ本件会社は,江別市の要請を受けて,開業準備室設置に伴い本店事務所を移転し,従業員2名を開業準備作業に専念させ,江別市内のイベントや,札幌市内のホテル及び飲食店等の調査,客室,宴会,レストランの潜在需要の予測等の各種開業準備行為を行った(乙11,乙15ないし24,乙25の1ないし3,乙26の1・2)。 エしかしながら,平成12年9月,信託銀行が公有地信託事業方式による事業への参画を辞退したことから,江別市は,公有地信託事業方式による本件施設整備を断念し,新たな事業手法及び事業主体の検討を進めることにした(甲4,乙6)。そこで,江別市は,同年10月以降,公社を施行主体とする公社方式によって本件計画を実現できないか検討することとして(乙7,乙8),その検討材料を入手するために,本件会社に対し,売上高の想定及び施設計画の作成を要請した。本件会社は,江別市の要請を受けて,売上高の想定及び施設計画に関する検討を行い,江別市に対し市場調査及び計画策定資料を提出した(乙10)。 オ江別市は,本件会社から提出された資料に基づき,公社方式について改めて検討した を受けて,売上高の想定及び施設計画に関する検討を行い,江別市に対し市場調査及び計画策定資料を提出した(乙10)。 オ江別市は,本件会社から提出された資料に基づき,公社方式について改めて検討したところ,公社の性格,規模,組織体制に照らして,本件施設の経営管理を行っていくことが困難であり,また,近年の厳しい社会経済情勢,特に地方財政事情に照らし,公社が将来にわたり多額の事業費負担を直接担っていくことは相当でないこと等に照らせば困難であるとの結論に至り,平成13年10月5日,公社方式の採用を断念した(乙9)。 カその結果,本件施設の事業主体が定まらない状態となったため,本件計画の実現が事実上中断するに至り,本件会社は,平成13年10月9日,ホテル出店を断念するに至った(甲7)。 (2) 以上の認定事実を前提として,江別市による本件会社に対する損害賠償措置の違法性について判断する。 そもそも地方公共団体が策定する一定の地域についての地域振興等を含む都市の整備計画の指針や構想は,当該地方公共団体や当該地域における経済的,社会的,文化的な諸要素や当該地域の土地利用状況等を総合して決定される高度に政策的な行政作用であって,産業政策,政治情勢や社会経済状況等によって大きく影響されるものである。そこで,地方公共団体が施策として定めた都市整備事業の基本計画であっても,その後の社会経済情勢の変動等に基づき施策内容が変更され,ときには施策自体が廃棄されることがあるのは当然であって,原則として一旦決定した原施策に拘束されるものではないから,原施策の変更廃棄も含めた都市整備事業の基本計画の決定は,政策判断における裁量権の濫用又は逸脱にわたらない限り,当然に違法となるものではない。もっとも,原施策の変更廃棄によって,これを信頼し協力し,地方公共団体と直接の契 都市整備事業の基本計画の決定は,政策判断における裁量権の濫用又は逸脱にわたらない限り,当然に違法となるものではない。もっとも,原施策の変更廃棄によって,これを信頼し協力し,地方公共団体と直接の契約関係に準じる密接な協力,提携関係を形成し,これに基づき各種の負担や支出を行ってきた者に社会通念上看過し難い程度の損害が生じるときには,損害を賠償するなどの措置を講ずることなく原施策を変更廃棄することは,それがやむを得ない客観的事情によるものでない限り,当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして,当該地方公共団体が不法行為責任を負う余地があるものというべきである。 ところで,地方公共団体が原施策の変更廃棄を決定する際,原施策の実現を信頼し,地方公共団体との間で密接な協力,提携関係を形成してきた者が,その被った損害のてん補あるいは賠償を求めて不法行為責任を追及することを想定して,予め損害賠償措置を講じる決定をし,議会の議決等必要な手続を経てそれを実行することは,紛争の未然の防止という政策的な観点からは望ましいものであって,当然に違法となるものではない。もっとも,原施策の変更廃棄の原因,地方公共団体と事業参画者との間で形成された法律関係,信頼関係の内容や程度,原施策の変更廃棄によって事業参画者に生じた損害の内容や程度などの諸要素に照らし,地方公共団体が不法行為責任を追及される一定程度の蓋然性すらない場合,事業参画者に対して損害賠償措置を講じることは違法性を帯びる余地があるものと解するのが相当である。 (3) そこで,江別市が本件会社から不法行為責任を追及される一定程度の蓋然性すらなかったと認められるか否かを検討する。 まず,江別市が本件計画を事実上中断せざるを得なくなったのは,信託銀行が公有地信託事業方式による事業への参画を辞退し,更に 責任を追及される一定程度の蓋然性すらなかったと認められるか否かを検討する。 まず,江別市が本件計画を事実上中断せざるを得なくなったのは,信託銀行が公有地信託事業方式による事業への参画を辞退し,更に公社方式についても前記のような事情により断念せざるを得ない状況に立ち至り,その結果,本件施設の事業主体がなくなったのが原因であったと認められる。これらの原因は,いずれも,少なくとも結果的には江別市が社会経済情勢に対して十分な見通しを持ち得なかったことに起因しており,その意味で専ら江別市側の事情によって生じたものと認め得るのであって,不可抗力に当たるようなやむを得ない客観的事情によるものとはいい難い。 上記(1)で認定した事実,とりわけ,江別市において,本件計画策定以前から,本件会社をホテル出店企業として選定し,ホテル出店を積極的に働きかけ,本件計画策定段階で既に出店意向のあった業者から本件会社を選定し,唯一のホテル出店予定企業と位置付けており,それを受けて,本件会社がホテル出店を正式に申し入れるに至ったことに照らすと,江別市と本件会社との間には,直接の契約関係はないものの,江別市土地開発公社から江別市が取得する本件土地上に信託銀行あるいは公社が建設する本件施設を本件会社が賃借して出店し,営業活動を行うという関係すなわち公社を介しての不動産利用の直接的な契約関係に準じる関係が想定されていたものである。また,本件施設の利用契約の成立に至るものと信頼していた本件会社は,当該契約の相手方に準じる前記立場にある江別市の要請に応じて,開業準備室を設置し人員を割いた上,市場調査に取り組み,具体的な事業計画を策定するなどの様々な開業準備行為を行い,公社方式の採否に際しても,江別市に対して資料を提供するなどの協力をしていたのである。このように本件会社が出店予 た上,市場調査に取り組み,具体的な事業計画を策定するなどの様々な開業準備行為を行い,公社方式の採否に際しても,江別市に対して資料を提供するなどの協力をしていたのである。このように本件会社が出店予定の選定業者として本件計画に参画するに至った一連の経過,想定されていた契約関係,本件計画への協力の具体的態様に照らせば,本件会社は,江別市との間で,同市が進める本件計画に基づく事業の維持ないし進展について契約関係に準じる密接な協力,提携関係を形成し,事業が実現するものと信頼して,前記の各協力の下に必要な費用や協力を負担したものである。本件会社が,江別市の要請に応じて,様々な開業準備活動のために費やした多くの費用や労力等の負担については,当然,事業が進展,実現し,同社が出店業者として営業活動を行うことになれば,そのため前倒しの経費として甘受すべきものというべきであるが,事業の進展,実現という前提がなくなった以上,もはや,企業が事業展開に伴って通常負担すべき費用等という前提を採れないものであって,いわば,契約が成立に至らなかったことについて契約の相手方に契約締結上の過失があった場合に賠償される信頼利益と同視される余地が十分あるものである。 以上を総合考慮すれば,江別市が本件会社から不法行為責任により信頼利益の侵害に係る損害賠償を追及される一定程度の蓋然性すらなかったとは認められないのであり,したがって,江別市が公社方式を断念するに際して,本件会社に対し未然に紛争を防ぐために損害賠償措置を講じたのは,被告の政策判断における裁量権の範囲内であり,当該措置が違法であるとはいえないものである。 (4) 以上のとおりであるから,江別市が,本件会社に対して損害賠償措置を講じたことは違法であるとはいえず,これを違法であったとする原告の主張は理由がない。 2 法であるとはいえないものである。 (4) 以上のとおりであるから,江別市が,本件会社に対して損害賠償措置を講じたことは違法であるとはいえず,これを違法であったとする原告の主張は理由がない。 2 争点(2)(損害額算定についての違法性)について(1) 上記争いのない事実等及び証拠(括弧内に掲記)によると,損害賠償措置内容の決定の経緯について,以下の事実が認められる。 ア江別市は,損害賠償措置を講ずるに当たり,本件会社に対し,損害額の見積りを提出するよう求めたところ,本件会社は,平成14年1月10日,ホテル出店の中止によって被った損害を明らかにする損害見積書を提出した。その内容は,開業準備室設置に要した費用として255万円,市場調査に要した費用として285万円,計画策定に要した費用として255万円及び開業準備室職員人件費として780万円,合計1575万円相当の損害を計上したものであった(乙11,甲9)。 イ江別市は,本件会社から提示された金額の根拠を明らかにする資料の提出を求め,本件会社は,開業準備室設置に要した費用に係る貸室賃貸契約書,開業準備室職員人件費に係る源泉徴収票並びに市場調査に要した費用及び計画策定に要した費用に係る領収書等を提出した(乙15ないし24,25の1ないし3,26の1・2)。 ウそこで,江別市は,本件会社から提出された損害見積書の金額を領収書等と併せて検討した結果,開業準備室設置に要した費用及び開業準備室職員人件費については一般の営業活動費用と重なる部分があることを考慮し,3分の1の345万円については補償が必要であり,市場調査に要した費用及び計画策定に要した費用については,専ら江別市の要請により出費を余儀なくされたものであるから全額補償が必要であると考え,結局,本件会社に対し合計885万円を補償するのが相 り,市場調査に要した費用及び計画策定に要した費用については,専ら江別市の要請により出費を余儀なくされたものであるから全額補償が必要であると考え,結局,本件会社に対し合計885万円を補償するのが相当であると判断した(乙14)。 エ江別市は,これを踏まえて885万円を上限として更に減額すべく本件会社と交渉した結果,請求額の2分の1である787万5000円を補償額とすることで実質上の合意に至った。 (2) ところで,上記1(2)のとおり,地方公共団体が不法行為責任を追及される一定程度の蓋然性があったと認められる場合,事業参画者に対して損害賠償措置を講じること自体が不法行為とはならないが,損害賠償の金額についても客観的合理的な根拠が乏しく,その損害額となるような一定程度の蓋然性すら認められない場合は不法行為が成立する余地があるというべきである。 そこで,本件について見るに,江別市は,本件会社から提示された損害額について,各費用ごとに領収書等で裏付けをとった上,出費の経緯等を踏まえて補償の要否や金額を検討し,本件会社に対し合計885万円を補償するのが相当であると判断したものと認められるから,この885万円という金額そのものは,相応の客観的合理的な根拠に基づいて算定されたものというべきである。 江別市は,その後,885万円を上限として本件会社と減額交渉した結果,当初の提示額の1575万円の2分の1に相当する787万5000円を補償額とすることで合意に至ったことが認められるが,相応の客観的合理的な根拠に基づき算定された額を上限として減額交渉すること自体何ら不合理なものではないし,交渉における裁量の範囲の事項であり何ら違法性を有するものではない。 (3) 以上のとおり,江別市は,相応の客観的合理的な根拠に基づいて本件会社に生じた損害を算定したものと認め 合理なものではないし,交渉における裁量の範囲の事項であり何ら違法性を有するものではない。 (3) 以上のとおり,江別市は,相応の客観的合理的な根拠に基づいて本件会社に生じた損害を算定したものと認められ,算定した損害額が一定程度の蓋然性すら認められないとはいえないから,本件会社に支払った金額の点においても違法であったとする原告の主張もまた理由がない。 3 結論以上検討してきたとおり,原告が本件支出を違法とする主張はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部裁判長裁判官生野考司裁判官佐伯恒治裁判官大淵茂樹

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