令和6年3月7日判決言渡 令和5年(ネ)第10085号、同第10098号損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第26704号)口頭弁論終結日令和5年12月18日 判決 控訴人兼附帯被控訴人 X(以下「控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士安井規雄 安井之人同補佐人弁理士佐藤勝 被控訴人兼附帯控訴人株式会社ビー・エー・ビー・ジャパン(以下「被控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士千賀修一加唐健介 主文 1 被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文1、2項を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人は、控訴人に対し、1万5177円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 (2) 控訴人の被控訴人に対するその余の請求を棄却する。 2 控訴人の控訴及び被控訴人のその余の附帯控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用(控訴費用、附帯控訴費用を含む。)は、第一、二審とも控訴人の負担とする。 4 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従う。原判決中の「別紙」を「原判決別紙」と読み替える。 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従う。原判決中の「別紙」を「原判決別紙」と読み替える。 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨 (1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人は、控訴人に対し、6882万3265円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人は、控訴人に対し、1000万円及びこれに対する令和4年7月28日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 (4)ア主位的請求被控訴人は、控訴人に対し、3300万円及びこれに対する令和4年7月28日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 イ予備的請求被控訴人は、控訴人に対し、3800万円を支払え。 (5) 被控訴人は、「気迫の伝統武芸」と題するビデオ及びDVDの販売及び宣伝活動に、原判決別紙被告商品等表示目録記載(1の①、2(1)の①ないし⑨、2(2)の①ないし⑧、3の②。ただし、47頁2行目の「件ビデオ」とあるのを「本件ビデオ」と、51頁14行目の「中間部2枚目の演武内容写真」とあるのを「中間部2枚目、およびラベル裏面の演武内容写真」と、同頁15行目の「甲1号証の3」 とあるのを「甲1号証の2」とそれぞれ訂正する。以下同じ。)の表示(宗家種村 匠刀、九鬼神流、高木楊心流、九鬼神流薙刀演武写真)を使用してはならない。 (6) 被控訴人は、被控訴人発行の月刊誌「秘伝」に原判決別紙被告商品等表示目録記載(2(1)の⑩、2(2)の⑨ないし㉞、2(3)の①ないし㉓、3の⑤ないし⑩)の表示(九鬼神流、本體高木揚心流柔體術、義鑑流、義鑑流骨法術、高木楊心流、高木流)を使用してはならない。 示目録記載(2(1)の⑩、2(2)の⑨ないし㉞、2(3)の①ないし㉓、3の⑤ないし⑩)の表示(九鬼神流、本體高木揚心流柔體術、義鑑流、義鑑流骨法術、高木楊心流、高木流)を使用してはならない。 (7) 被控訴人は、原判決別紙被告商品等表示目録記載(1の①、2(1)の①ないし⑨、2(2)の①ないし⑧、3の②)の表示(宗家種村匠刀、九鬼神流、高木楊心流、九鬼神流薙刀演武写真)を付した「気迫の伝統武芸」と題するビデオ及びDVDの販売をしてはならない。 (8) 被控訴人は、原判決別紙被告商品等表示目録記載(2(1)の⑩、2(2)の⑨な いし㉞、2(3)の①ないし㉓、3の⑤ないし⑩)の表示(九鬼神流、本體高木揚心流柔體術、義鑑流、義鑑流骨法術、高木楊心流、高木流)を付した被控訴人発行の月刊誌「秘伝」の販売をしてはならない。 (9) 被控訴人は、原判決別紙被告商品等表示目録記載(1の①、2(1)の①ないし⑨、2(2)の①ないし⑧、3の②)の表示(宗家種村匠刀、九鬼神流、高木楊心流、 九鬼神流薙刀演武写真)を付した「気迫の伝統武芸」と題するビデオ及びDVDの包装箱(ケース)並びにその動画内容(映像)から原判決別紙被告商品等表示目録記載(1の①、2(1)の①ないし⑨、2(2)の①ないし⑧、3の②)の表示(宗家種村匠刀、九鬼神流、高木楊心流、九鬼神流薙刀演武写真)を抹消せよ。 (10) 被控訴人は、「気迫の伝統武芸」と題するビデオ及びDVDの宣伝媒体並び にパンフレット等から、原判決別紙被告商品等表示目録記載(1の①、2(1)の①ないし⑨、2(2)の①ないし⑧、3の②)の表示(宗家種村匠刀、九鬼神流、高木楊心流、九鬼神流薙刀演武写真)を抹消せよ。 (11) 被控訴人は、原判決別紙被告商品等表示目録記載(2(1)の⑩、2(2)の し⑨、2(2)の①ないし⑧、3の②)の表示(宗家種村匠刀、九鬼神流、高木楊心流、九鬼神流薙刀演武写真)を抹消せよ。 (11) 被控訴人は、原判決別紙被告商品等表示目録記載(2(1)の⑩、2(2)の⑨ないし㉞、2(3)の①ないし㉓、3の⑤ないし⑩)の表示(九鬼神流、本體高木揚心流 柔體術、義鑑流、義鑑流骨法術、高木楊心流、高木流)を付した被控訴人発行の月 刊誌「秘伝」の残余分を回収し、破棄せよ。 (12) 被控訴人は、原判決別紙被告商品等表示目録記載(2(2)の㉟)の表示(本體高木揚心流柔體術)を付した「武神館の武術VOL.1」及び「武神館の武術VOL.2」と題するビデオ及びDVDの包装箱(ケース)から原判決別紙被告商品等表示目録記載(2(2)の㉟)の表示(本體高木揚心流柔體術)を抹消せよ。 2 被控訴人の附帯控訴の趣旨(1) 原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 上記の部分につき、控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 (1) 本件は、控訴人が以下の請求をする事案である。 ア ①被控訴人が制作し有償で頒布している「気迫の伝統武芸」と題するビデオ(本件大会ビデオ)及び本件大会ビデオと同じ内容が収録されたDVD(本件大会DVD。本件大会ビデオと本件大会DVDを併せて「本件大会ビデオ・DVD」ということがある。)につき、日本武道国際連盟が主催する第7回日本武道国際大会 (本件大会)において控訴人に無断で撮影した控訴人の演武中の映像が含まれていることが、控訴人の肖像権を侵害するとして、不法行為に基づく損害賠償1764万円、②被控訴人が本件大会ビデオ・DVDのケースの表紙や宣伝媒体等に「九鬼神流」、「高木楊心流」と記載して本件大会ビデオ・DVDを販売したことが、控訴人の商 して、不法行為に基づく損害賠償1764万円、②被控訴人が本件大会ビデオ・DVDのケースの表紙や宣伝媒体等に「九鬼神流」、「高木楊心流」と記載して本件大会ビデオ・DVDを販売したことが、控訴人の商標権を侵害すると主張し、不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人に よる平成5年から令和3年までの本件大会ビデオ・DVDの販売による損害10億5000万円の一部5000万円、③控訴人と被控訴人との間で、被控訴人が販売する「柔術セルフディフェンス虎の巻」、「柔術セルフディフェンス龍の巻」及び「柔術セルフディフェンス天の巻」と題するビデオ・DVD(これら3本のビデオ・DVDを併せて「本件各契約ビデオ・DVD」ということがある。)に控 訴人が出演することに関する出版契約(本件各契約ビデオ出版契約)を締結したと ころ、同契約に基づく控訴人への支払について一部不履行があったことを理由に契約解除をしたと主張し、同契約に基づく出演料支払請求権又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき、被控訴人の契約違反がなければ控訴人が取得できた平成6年から令和46年までの取得相当額106万7862円及び被控訴人が控訴人に無断で源泉徴収等の名目で支払額を減額したことについての損害20万円の合計12 6万7862円の総合計6890万7862円(前記①~③)並びにこれに対する不法行為又は支払期限の後で訴状送達の日の翌日である令和3年11月16日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金(以上、前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)。ただし、原審で認容された8万4597円は除く。)。 イ被控訴人が発行する「秘伝」との名称の月刊誌(本件雑誌)において、被控 訴人が控訴人の登録商標である「義鑑流骨法術」、「本體楊心髙木流柔術」との標 で認容された8万4597円は除く。)。 イ被控訴人が発行する「秘伝」との名称の月刊誌(本件雑誌)において、被控 訴人が控訴人の登録商標である「義鑑流骨法術」、「本體楊心髙木流柔術」との標章を付して販売したことが控訴人の商標権を侵害するとして、民法709条、商標法38条2項に基づき、4億5000万円の損害又は被控訴人が得た利益7500万円に基づく損害の一部1000万円及び同請求が記載された準備書面を被控訴人が受領した日の翌日である令和4年7月28日から支払済みまで民法所定の年3% の割合による遅延損害金(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(3))。 ウ 「宗家種村匠刀」、「九鬼神流」、「高木楊心流」、「義鑑流」との表示が控訴人の商品等表示として周知であったところ、被控訴人が本件大会ビデオ・DVD、本件雑誌、「武神館の武術VOL.1」及び「武神館の武術VOL.2」という題名のDVD(「武神館の武術VOL.1」及び「武神館の武術VOL.2」という題名のDVDを併 せて「武神館DVD」ということがある。)にこれらの表示又はこれらと類似した表示をしてそれらを販売したことが不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たるとして、①同法3条1項、2項に基づき、これらの表示の差止め及びこれらの表示がされた物の廃棄等を請求し(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(5)~(12))、また、②主位的に、同法4条、5条2項に基づき、損害4億0860万円 の一部3000万円及び弁護士費用相当損害金300万円の合計3300万円並び に同請求が記載された準備書面を被控訴人が受領した日の翌日である令和4年7月28日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金、③予備的に、同法4条、5条3項に基づき、損害3800万円を請求する(前 記載された準備書面を被控訴人が受領した日の翌日である令和4年7月28日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金、③予備的に、同法4条、5条3項に基づき、損害3800万円を請求する(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(4))。 (2) 原判決は、本件各契約ビデオ出版契約に関する請求について、被控訴人が、 同契約所定の本件各契約ビデオ・DVDの税込の販売価格を基礎にした全額を支払うべきであったにもかかわらず、所得税の源泉徴収名目で控除した金額や消費税相当額を控除した額を出演料算定の基礎として支払ったことによる未払部分があるとして、被控訴人に対して8万4597円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で控訴人の請求を認容し、その余の請求をいずれも棄却した。 (3) これに対し、控訴人は、原判決中控訴人敗訴部分を全部不服として控訴を提起し、被控訴人は、原判決中被控訴人敗訴部分を全部不服として附帯控訴を提起した。 2 当事者の主張当事者の主張は、以下のとおり訂正し、また、当審における主張を補充するほか は、原判決の「事実及び理由」の第4記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決の訂正ア原判決9頁16行目の「請求の趣旨4項から11項」を「前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(5)~(12)」と改める。 イ原判決9頁21行目の「3300万円及び遅延損害金」の次に「(前記第1の 1の控訴人の控訴の趣旨(4)ア)」を加える。 ウ原判決9頁22行目の「3800万円」の次に「(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(4)イ)」を加える。 エ原判決10頁1行目の「請求の趣旨1項」を「前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)」と改める。 オ原判決11頁2行目の「請求の趣旨2項」を「前記第 控訴の趣旨(4)イ)」を加える。 エ原判決10頁1行目の「請求の趣旨1項」を「前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)」と改める。 オ原判決11頁2行目の「請求の趣旨2項」を「前記第1の1の控訴人の控訴 の趣旨(3)」と改める。 カ原判決11頁10行目の「請求趣旨1項」を「前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)の一部」と改める。 キ原判決11頁19行目の「商標」を「商標法」と改める。 ク原判決11頁20行目~21行目にかけての「(請求の趣旨1項)」を「及び 遅延損害金(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)の一部)」と改める。 ケ原判決11頁23行目の「(請求の趣旨2項)」を「及び遅延損害金(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(3))」と改める。 コ原判決12頁8行目~9行目を次のとおり改める。 「控訴人には、被控訴人の不法行為(肖像権侵害)により、上記売上げの7%で ある1764万円の損害が生じた。 ウよって、控訴人は、被控訴人に対し、損害賠償として、上記1764万円及び遅延損害金(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)の一部)を請求する。」サ原判決14頁6行目~7行目を次のとおり改める。 「オよって、控訴人は、被控訴人に対し、損害賠償として、前記エの合計額で ある126万7862円及び遅延損害金(前記第1の1の控訴人の控訴の趣旨(2)の一部)を請求する。」(2) 当審における控訴人の補充主張及び被控訴人の補充主張に対する反論ア不正競争防止法違反に基づく請求について控訴人はビデオやDVDの出版社ではなく、古武道を通じて技芸を他人に教授す ることを業務とする武道家であり、ビデオやDVD内での演武そのものが営業表示であり、テロップなどにより、控訴人が商標として所 はビデオやDVDの出版社ではなく、古武道を通じて技芸を他人に教授す ることを業務とする武道家であり、ビデオやDVD内での演武そのものが営業表示であり、テロップなどにより、控訴人が商標として所有する「九鬼神流」、「髙木楊心流」なる文字を無断で表示する行為は、控訴人の業務を妨害するものであり、本件雑誌においてAの肩書の一部として使用されていることが弟子の減少などを招くおそれがあって問題なのであり、原判決は本件における不正競争行為の本質を見誤 っている。 イ商標権侵害に基づく請求について被控訴人の活動であるビデオやDVDの発売、動画などのウェブサイトでの公開や古武道に関するメディアの通信販売は、控訴人の武道家としての活動に抵触するものであり、商標法2条1項7号の「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に該当することか ら、被控訴人のビデオやDVDの発売や動画などのウェブサイトでの公開は、控訴人の権利を侵害する。 ウ肖像権侵害等について控訴人が被控訴人による撮影については認識していたとしても、これをビデオで販売することの許諾まではしておらず、本件大会の目的が演武の様子の鑑賞等であ るとしても、人の容貌をみだりに撮影することは自由にできるものではない。本件大会は、広く公開されたものではなく、入場者は関係者が大半であって、参加者内の交流が目的であり、公共の目的や公益を図る目的ではなく、撮影者は被控訴人の関係者のみで、公開を許容していなかった。また、控訴人の演武全体が撮影され、控訴人と門下生が数メートル離れて演武する場面が画面いっぱいに映るようなアン グルで、控訴人と認識できる態様で収録されていた。この点、被控訴人が送付した書面は、勝手に 人の演武全体が撮影され、控訴人と門下生が数メートル離れて演武する場面が画面いっぱいに映るようなアン グルで、控訴人と認識できる態様で収録されていた。この点、被控訴人が送付した書面は、勝手に販売したことの説明ではなく、費用負担しているなどの言い訳を述べるのみであった。 被控訴人による本件大会ビデオ・DVDの制作・販売は、営利を目的としたものであって、上記事実について原判決には誤認がある。 以上によると、受忍限度を超える肖像権の侵害が認められるべきである。 さらに、控訴人の演武に係る流儀やその名称に一定の信用、商業的価値があり、控訴人の演武映像は顧客吸引力を有するものであり、被控訴人はこれを利用すべく、撮影行為をしたものであって控訴人の氏名、肖像等を使用する行為はパブリシティ権を侵害する。 エ本件各契約ビデオ出版契約の債務不履行に基づく請求について 本件各契約ビデオ出版契約の出演料につき、控訴人の主張に係る年間平均額が被控訴人から控訴人に対し振り込まれるべきであったことは十二分に推測できる正当な主張であるにもかかわらず、原判決が認めなかった点は合理的な判断ではない。 オ著作権侵害(当審における新たな請求原因の主張)について被控訴人が制作し有償で頒布する本件大会ビデオ・DVD「気迫の伝統武芸」は、 日本武道国際連盟が主催した第7回日本武道国際大会において控訴人が行った古武道の演武について無断で録画され、複製されたものである。古武道の演武については、演武・演技行為が著作権法上の「実演」(著作権法2条1項3号)に該当し、演武をする行為は「実演家」として著作隣接権(実演家の権利)の主体となり得る。 本件大会ビデオ・DVDにおける控訴人の演武内容は、控訴人が、宗家として、 本件武道大会のために、 号)に該当し、演武をする行為は「実演家」として著作隣接権(実演家の権利)の主体となり得る。 本件大会ビデオ・DVDにおける控訴人の演武内容は、控訴人が、宗家として、 本件武道大会のために、承継流儀において連綿と受け継がれてきた内容のままではなく、控訴人において独自に考案されたものが数多く含まれており、著作物としての創作性を有する。 したがって、控訴人の演武は著作物であり、著作権法上の保護対象となり、被控訴人の本件大会ビデオ・DVDの制作・販売は、控訴人の上記著作物の著作権を侵 害する。 よって、控訴人は、被控訴人に対し、本件大会ビデオ・DVDに係る年平均契約料2万6421円の28年分に相当する73万9788円の損害賠償を請求する。 カ当審における被控訴人の主張(消滅時効)に対する控訴人の反論いずれも争う。 消滅時効についての主張を原審において提出することを妨げる事情はなく、被控訴人には、当該主張をしなかったことについて重大な過失があり、当該主張を審理することは、訴訟の完結を遅延させることになるため、時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきである。 また、被控訴人は消滅時効の主張をするが、被控訴人において本来控除すべきで ない金額を控除していたことにより、当該金額に係る支払義務が発生するものであ り、被控訴人は控訴人に対し、その控除の事実を一切秘匿し、未払の事実の発覚を遅延させておきながら消滅時効の援用を主張することは、信義則に違反し認められるべきではない。 (3) 当審における控訴人の主張に対する被控訴人の反論及び被控訴人の補充主張 ア上記(1)ア~エの控訴人の主張はいずれも争う。 イ上記(1)オについて控訴人の主張は、原審において提出できたことは明らかであり、提出しな する被控訴人の反論及び被控訴人の補充主張 ア上記(1)ア~エの控訴人の主張はいずれも争う。 イ上記(1)オについて控訴人の主張は、原審において提出できたことは明らかであり、提出しなかったことに少なくとも重過失があるといえる。そして、控訴審において更に審理することは訴訟の完結を遅延することとなるため、同主張は却下されるべきである。 仮に、却下が認められないとしても、控訴人の演武の著作物性については争うほか、控訴人の主張は、被控訴人の本件大会ビデオ・DVDが著作権法上に規定されたいかなる著作権を侵害するものであるかの主張を欠いている。 ウ被控訴人の附帯控訴理由所得税法204条1項1号は源泉徴収義務を課しており、本件各ビデオ出版契約 に基づく出演料は、「著作権(著作隣接権を含む。)・・・の使用料」に該当する。したがって、被控訴人には源泉徴収義務があるから、源泉徴収額を控除した上で本件各ビデオ出版契約に基づく出演料を支払った被控訴人の対応に債務不履行はない。 仮に債務不履行があると判断されるとしても、本件訴状が原審裁判所に提出された令和3年10月14日時点で、平成23年10月14日以前に支払われた出演料 に相当する部分(41万6521円÷(1-0.1)÷7%×1.05×7%-41万6521円=6万9420円)は消滅時効が成立している。 被控訴人は、控訴人に対し、令和5年11月16日付けの附帯控訴状をもって、上記消滅時効を援用した。 したがって、原判決の認容額のうち6万9420円及びこれに対する遅延損害金 については時効消滅している。 第3 当裁判所の判断 1 不正競争防止法違反に基づく請求について原判決17頁10行目の「集結などと」を「「集結」などと」と改めるほか、原判決第 については時効消滅している。 第3 当裁判所の判断 1 不正競争防止法違反に基づく請求について原判決17頁10行目の「集結などと」を「「集結」などと」と改めるほか、原判決第5の1記載のとおりであるからこれを引用する。 控訴人は前記第2の2(1)アのとおり主張するが、不正競争防止法2条1項1号 にいう「商品等表示」として「使用」していることを基礎付ける主張とはいえない。 また、仮に控訴人が古武道を通じて技芸を他人に教授することを業務とする武道家であり、ビデオやDVD内での演武そのものが営業表示であるとしても、上記引用部分において認定した表示態様等も踏まえると、「九鬼神流」、「髙木楊心流」なる文字を表示したことによって営業主体の誤認混同等は生じないから理由がない。さら に、本件雑誌等においてAの肩書の一部として表示していることについても、被控訴人の行為は、武神館DVDを監修したAの説明を行ったものであって、控訴人に対する不正競争行為に当たるかどうかの結論を左右しない。 2 商標権侵害に基づく請求について原判決第5の2記載のとおりであるからこれを引用する。 控訴人は、前記第2の2(1)イのとおり主張するが、商標権の侵害と関係するものとはいえず、上記引用部分における商標的使用に当たらないとの判断を左右するものとはいえないから理由がない。 3 肖像権侵害について(1) 認定事実 以下のとおり訂正するほか、原判決第5の3(2)記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決25頁3行目の「証拠及び」を「証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び」と改める。 イ原判決25頁23行目の「被告は」を「被控訴人の従業員は」と改める。 ウ原判決26頁11行目の「エ本件 及び」を「証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び」と改める。 イ原判決25頁23行目の「被告は」を「被控訴人の従業員は」と改める。 ウ原判決26頁11行目の「エ本件大会時」から同頁19行目末尾までを次 のとおり改める。 「控訴人は、本件大会時にカメラで撮影がされていたことを認識していたものの、撮影についての許諾を求められた認識はなかった。控訴人は、本件文書を受領し、本件大会ビデオが販売されることを知ったが、被控訴人に対し問合せはしなかった。 その後、控訴人は、本件大会ビデオが実際に販売されていることを知り、本件大会 の主催者であったB(以下「B」という。)に電話したり直接会ったりした際に話を聞くなどした。控訴人は、Bの話から被控訴人とBが本件大会ビデオに関する契約を締結していると考えていたものの、その後、被控訴人に対し問合せをすることはなかった。控訴人は月刊誌「秘伝」などの雑誌の広告において本件大会ビデオの宣伝を見ることもあった。(原審の控訴人本人尋問の結果)」 (2) 判断以下のとおり訂正するほか、原判決第5の3(3)記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決26頁20行目「(3) 人の肖像は、」とあるのを「(3)ア人の肖像は、」と改める。 イ原判決27頁1行目の冒頭に「イ」を加える。 ウ原判決27頁13行目「このような」から同頁22行目末尾までを次のとおり改める。 「さらに、上記認定事実によると、控訴人は本件文書を受領した以降、本件大会ビデオが販売されていることを知ったものの、被控訴人に対し直接抗議などをして おらず、Bに本件大会ビデオの話をした程度であったこと、その後も控訴人は雑誌の広告において本件大会ビデオの販売を認識し、平成6年5月や平 ることを知ったものの、被控訴人に対し直接抗議などをして おらず、Bに本件大会ビデオの話をした程度であったこと、その後も控訴人は雑誌の広告において本件大会ビデオの販売を認識し、平成6年5月や平成8年2月に本件各契約ビデオ出版契約を被控訴人との間で締結し、その後も当該契約に基づき被控訴人から出演料の支払を受ける関係にあり、その後20年以上もこのような関係が継続していたが、その間に本件大会ビデオにつき、控訴人から被控訴人に対し、 抗議や苦情等を伝えたことをうかがわせる証拠もない。 以上のような肖像が撮影された状況や公表の態様等のほか、本件大会ビデオの販売を認識した後の控訴人の被控訴人に対する対応等も総合考慮すると、被控訴人による控訴人の演武の様子を収録した本件大会ビデオ・DVDの販売が受忍限度を超える控訴人の肖像権の侵害に当たるとは認められない。 ウさらにまた、控訴人は、控訴人の演武に係る流儀やその名称に一定の信用、 商業的価値があり、控訴人の演武映像は顧客吸引力を有するものであり、被控訴人はこれを利用すべく、撮影行為をしたものであって控訴人の氏名、肖像等を使用する行為はパブリシティ権を侵害した旨の主張をするが、本件大会ビデオ・DVDは、日本の古武道の振興、発展、周知を目的とする本件大会の様子の映像を収録したものであり、本件大会は控訴人以外にも複数の流派が参加する大会であって、控訴人 の専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的としたものとは認めるに足りる証拠はなく、前記イの事情も考慮すると、パブリシティ権侵害を理由とする控訴人の主張も採用できない。」 4 本件各契約ビデオ出版契約の債務不履行について以下のとおり訂正し当審における補足主張に対する判断を付加するほかは、原判 決第5の4記載のとお 由とする控訴人の主張も採用できない。」 4 本件各契約ビデオ出版契約の債務不履行について以下のとおり訂正し当審における補足主張に対する判断を付加するほかは、原判 決第5の4記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決の訂正ア原判決29頁6行目の「この点」から同頁7行目の「明らかではない。」までを削る。 イ原判決29頁9~10行目にかけての「直接裏付ける証拠は提出しない」を 「裏付ける証拠はない」と改める。 ウ原判決29頁10行目の「被告から原告に」から同頁18行目末尾までを次のとおり改める。 「そして、被控訴人から控訴人に対し源泉徴収の明細書を交付したこともなく、被控訴人から控訴人に対し源泉徴収をしていることを通知した事実もうかがわれな いことからすると、被控訴人が源泉徴収のために、上記で控除したとする額を実際 に控除したものと認めるに足りる証拠はないから、源泉徴収名目で控除した金員について被控訴人が控訴人に対し支払義務を免れるものとはいえない。したがって、本件各契約ビデオ出版契約に基づき、被控訴人は控訴人に対し同契約所定の額全額の支払義務を負う。」(2) 当審における被控訴人の補足主張について 被控訴人は、控訴人に対し支払義務を負うとしても、本件訴状が原審裁判所に提出された令和3年10月14日時点で、平成23年10月14日以前に支払われた出演料に相当する部分6万9420円(=41万6521円÷(1-0.1)÷7%×1.05×7%-41万6521円)は消滅時効が成立していると主張し、その時効を援用していることは記録上明らかであるため、この点について検討する。 控訴人は、上記主張につき、時機に後れた攻撃防御方法であることや時効援用が信義則に反することを主張す と主張し、その時効を援用していることは記録上明らかであるため、この点について検討する。 控訴人は、上記主張につき、時機に後れた攻撃防御方法であることや時効援用が信義則に反することを主張するが、被控訴人の時効主張は、原審での審理経過及び判断内容を踏まえてされたものであるところ、その主張内容からすると、その審理のために訴訟の完結を遅延させることとなるものとは認められず、時機に後れたものとはいえないし、時効援用が信義則に反するものともいえない。 そして、本件訴訟提起時(令和3年10月14日)から遡って10年内に履行期が到来した債権については、時効期間が経過していないものの、それ以前に履行期が到来した債権については、本件訴提起時までに時効期間が経過し、かつ、権利行使が可能であったといえ、時効中断等の事情もうかがわれないことからすると、平成23年10月14日以前に支払われた出演料に相当する未払部分6万9420円 (=41万6521円÷(1-0.1)÷7%×1.05×7%-41万6521円)は消滅時効が完成し、被控訴人の時効の援用によって同額について時効により消滅したものといえる。 (3) したがって、被控訴人は控訴人に対し、1万5177円(=8万4597円(訂正の上引用する原判決第5の4(3))-6万9420円(上記(2)))及びこれに 対する履行期の到来後で控訴人の請求する令和3年11月16日から支払済みまで 民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 5 著作権侵害(当審における新たな請求原因の主張)について控訴人は、当審における令和5年9月20日付け控訴理由書において、新たな請求原因の追加的変更に当たる主張として、被控訴人の本件大会ビデオ・DVDの制作・販売が控訴人の演武の著作権を 主張)について控訴人は、当審における令和5年9月20日付け控訴理由書において、新たな請求原因の追加的変更に当たる主張として、被控訴人の本件大会ビデオ・DVDの制作・販売が控訴人の演武の著作権を侵害するとの主張を行ったが、被控訴人は、か かる主張は原審において提出できたことは明らかであり、控訴審において更に審理することは訴訟の完結を遅延することなるため、却下すべきと主張する。 上記請求原因の追加的変更については、原審においてその主張ができなったというやむを得ない事情はうかがわれず、上記請求原因の追加的変更を許せば、控訴人の演武の著作物性、著作権侵害の有無、仮に侵害が認められる場合においては損害 の有無等を新たに審理しなければならず、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるから,当該請求原因の追加的変更は不当であると認められる。 したがって、控訴人の著作権侵害に係る請求原因の追加的変更の申立ては、民訴法297条、143条1項及び4項に基づき、許さないのが相当である。 第4 結論 以上によると、被控訴人の請求は、本件各契約ビデオ出版契約に基づく請求について1万5177円及びこれに対する令和3年11月16日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を請求する限度で理由があるからこの限度で認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきであるところ、これと異なり、控訴人の請求を8万4597円及びこれに対する同日から支払済みまで年3%の割 合による遅延損害金の限度で一部認容した原判決は一部相当でないから、被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文1、2項を本判決主文1項のとおり変更し、控訴人の本件控訴及び被控訴人のその余の附帯控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1 控訴に基づき、原判決主文1、2項を本判決主文1項のとおり変更し、控訴人の本件控訴及び被控訴人のその余の附帯控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 本多知成 裁判官 遠山敦士 裁判官 天野研司
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