裁判所
昭和41年6月30日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 昭和38(ネ)2736
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主文 原判決中、土浦市大字a字bc、山林一反八畝一六歩および同所d、山林一反二畝一二歩の請求に関する部分を破棄して、これを東京高等裁判所に差し戻す。その余の上告を棄却する。前項の上告費用は上告人らの負担とする。理由 上告人の上告理由第一点について。一件記録によると、原審の第一回口頭弁論期日(昭和三九年一二月一六日)には、上告人ら先代D(被告・控訴人)代理人熊谷耕作および被上告人(原告・被控訴人)代理人貝塚次郎の双方が出頭して、第一審の口頭弁論の結果を陳述し、控訴状および答弁書に基づいてそれぞれ口頭弁論をしていることが認められるから、上告人ら先代Dが民訴法一三八条にいう口頭弁論期日に出頭せずまたは出頭しながら本案につき弁論をしなかつたということはいえないから、同条を適用して準備書面の陳述を擬制すべきでないことは明らかである。このような場合にも同条の適用がありとする所論は、独自の見解であり、失当として排斥を免れない。同第二点について。原判決がその挙示の証拠により、適法に認定したところによると、本件売買は将来当事者において右売買について県知事の許可申請手続をし右許可のあつた時に効力を生じる趣旨の契約であつたというのである。そして、右知事の許可を条件とする売買契約は単に法定条件を付したにすぎず民法にいわゆる停止条件を付したものといえないとすることも当裁判所の判例(昭和三二年(オ)第九二三号同三六年五月二六日第二小法廷判決、民集一五巻五号一四〇四頁)とするところである。したがつて、この点について、右売買契約を条件付なもので有効と解した原判決の判断- 1 -は、違法ということはできない。ところで、所論は、本件売買は県知事の許可をえられず、したがつて不能の条件を付し つて、この点について、右売買契約を条件付なもので有効と解した原判決の判断- 1 -は、違法ということはできない。ところで、所論は、本件売買は県知事の許可をえられず、したがつて不能の条件を付したものである旨を主張するけれども、本件土地の売買について県知事の許可がえられないという事実は、原判決の認定していないところであるのみならず、原判決の認定した事実からも、このように認めなければならないものとはいえない。 この点について、右売買契約を条件付なもので有効と解した原判決の判断- 1 -は、違法ということはできない。ところで、所論は、本件売買は県知事の許可をえられず、したがつて不能の条件を付したものである旨を主張するけれども、本件土地の売買について県知事の許可がえられないという事実は、原判決の認定していないところであるのみならず、原判決の認定した事実からも、このように認めなければならないものとはいえない。それゆえ、所論は、結局、原審の認定しない事実を前提とするもので、失当として排斥を免れない。同第三点について。一件記録および原判決によると、被上告人は、上告人ら先代Dに対し本件土地について茨城県知事に対し売買による所有権移転の許可申請をし、右許可のあつたときは昭和二九年七月一〇日付売買を原因とする所有権移転登記手続をする旨を求めていることが明らかであるから、右所有権移転登記手続を求める請求については民訴法二二六条にいう将来の給付を求める訴にあたることは明らかであつて、この点の原判決の判断は正当として当審もこれを是認することができる。所論は、結局、失当として排斥を免れない。同第五点について。原判決が適法に認定した事実のもとでは、たとい所論のごとく土地の価額が騰貴して来たとしても、右土地の価額の騰貴は売主たる上告人ら先代Dが債務を履行しない間に生じたものであるから、上告人らの所論の解除の主張についてその効果を認めなかつた原判決の判断は、当審も正当として是認することができる。原判決には、所論のような違法はない。同第四点について。原判決が本件土地中その一部について、現況宅地であることを認定しながら、同土地についてまでも、上告人ら先代Dに対し、本件売買による所有権移転について- 2 -の県知事に対する許可申請手続を命じて 原判決が本件土地中その一部について、現況宅地であることを認定しながら、同土地についてまでも、上告人ら先代Dに対し、本件売買による所有権移転について- 2 -の県知事に対する許可申請手続を命じていることは、所論のとおりである。しかし、すでに、現況宅地となつている土地に関して、その売主たる上告人ら先代D(またはその一般承継人たる上告人ら)において、買主たる被上告人のために、本件売買による所有権の移転について県知事に対し農地法三条所定の許可申請手続をする義務を負ういわれはない。 についてまでも、上告人ら先代Dに対し、本件売買による所有権移転について- 2 -の県知事に対する許可申請手続を命じていることは、所論のとおりである。しかし、すでに、現況宅地となつている土地に関して、その売主たる上告人ら先代D(またはその一般承継人たる上告人ら)において、買主たる被上告人のために、本件売買による所有権の移転について県知事に対し農地法三条所定の許可申請手続をする義務を負ういわれはない。この点を看過して、すでに宅地となつた部分の土地についても、県知事に対し売買による所有権移転の許可申請義務の存することを前提として、右県知事に対する許可申請手続を求める被上告人の請求を認容した原判決は、法令の解釈を誤つたものであり、この点で破棄を免れない。原判決の判示するところによると、現況宅地と認定されているのは土浦市大字a字bc、山林一反八畝一六歩のようであるが、一件記録によると、現況宅地部分には住宅が建築され、同所に上告人ら先代D(原告)が生活の根拠をおき、したがつて、右宅地部分は同所d、山林一反二畝一二歩であるようにもうかがわれる。すると、本件土地中、現況宅地となつている部分が同所eの土地かfの土地であるかは、必ずしも明白といいがたい。それゆえ、原審としては、現況宅地の土地が同所eの土地か、または、fの土地のいずれであるかを明確に判断して、被上告人の請求の当否を判断する必要があるといわねばならない。そして、宅地の売買に関し、買主が売主に対し本来不必要である売買の所有権移転についての県知事の許可を条件として、売買を原因とする所有権移転登記の請求訴訟を提起したような場合には、裁判所は、釈明権を行使して、買主たる原告(本件では被上告人)に対し、宅地の売買に の所有権移転についての県知事の許可を条件として、売買を原因とする所有権移転登記の請求訴訟を提起したような場合には、裁判所は、釈明権を行使して、買主たる原告(本件では被上告人)に対し、宅地の売買による所有権移転登記の請求についてまで、前記のような条件を付することを維持するのか、または、このような条件を付さないで単に(無条件に)所有権移転登記だけを求めるのかを明らかにし、そのうえで、右請求の当否を判断するのが相当である。この意味で、論旨は理由があり、原判決は、右の限度で破棄さるべきである。- 3 -よって、原判決中、土浦市大字a字bc、山林一反八畝一六歩および同所d、山林一反二畝一二歩の請求に関する部分を破棄してこれを原審に差し戻すが、その余の請求に関する部分については、論旨は失当であるから、その上告を棄却することとし、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決をする。 由があり、原判決は、右の限度で破棄さるべきである。- 3 -よって、原判決中、土浦市大字a字bc、山林一反八畝一六歩および同所d、山林一反二畝一二歩の請求に関する部分を破棄してこれを原審に差し戻すが、その余の請求に関する部分については、論旨は失当であるから、その上告を棄却することとし、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決をする。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官長部謹吾裁判官入江俊郎裁判官松田二郎裁判官岩田誠- 4 -
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