令和5年(わ)第321号、同第360号被告人Aに対する加重収賄、被告人Bに対する贈賄各被告事件 主文 被告人Aを懲役1年6月に、被告人Bを懲役1年に処する。 被告人Bに対し、未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 被告人Aに対し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人A及びC(被告人Bとの関係では分離前の相被告人。)は、刑務官として高知刑務所処遇部処遇部門に勤務し、被収容者の処遇に関する職務に従事していたもの、被告人Bは、同刑務所に懲役受刑者として収容されていたもの、D(被告人Bとの関係では分離前の相被告人。)は、被告人Bの知人であるが、第1 被告人Aは、別表1記載のとおり、令和5年1月22日から同年4月24日までの間、「場所」欄記載の各場所において、4回にわたり、手紙の授受等の方法により、被告人BとDらとの連絡を仲介するという職務上不正な行為をし、その謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものと知りながら、被告人Bから、同人の知人を介し、別表2記載のとおり、同年3月27日及び同年4月10日、被告人Aが指定したE銀行F支店に開設されたC名義の口座ほか1口座に振り込ませて、現金合計20万円を無利息で借り受け、もって職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を収受するとともに、その職務に関し賄賂を収受して職務上不正な行為をし(同年12月22日付け起訴状公訴事実第1)、第2 被告人Bは、令和5年3月27日及び同年4月10日、被告人Aに対し、前記趣旨の下に、前記のとおり前記知人を介して振り込んで、現金合計20万円を無利息で貸し付け、もって同人の職務上不正な行為に関し賄賂を供与し(同 年12月22日付け起訴 日、被告人Aに対し、前記趣旨の下に、前記のとおり前記知人を介して振り込んで、現金合計20万円を無利息で貸し付け、もって同人の職務上不正な行為に関し賄賂を供与し(同 年12月22日付け起訴状公訴事実第2)、第3 被告人Bは、Dと共謀の上、Cが、別表3記載のとおり、令和5年7月12日から同年8月14日までの間、「場所」欄記載の各場所において、14回にわたり、手紙の授受、電話連絡等の方法により、被告人BとDらとの連絡を仲介するという職務上不正な行為をしたことに関し、その謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、別表4記載のとおり、Dが、同年7月30日から同年8月6日までの間、3回にわたり、Cに対し、G銀行H支店に開設されたD名義の普通預金口座ほか1口座からE銀行F支店に開設されたC名義の普通預金口座に振り込んで、現金合計16万円を無利息で貸し付け、もって同人の職務上不正な行為に関し賄賂を供与した(同年12月1日付け起訴状公訴事実第2)。 (量刑の理由)第1 事案の概要本件は、高知刑務所の刑務官であった被告人Aが、同刑務所で受刑中の被告人Bと同刑務所外にいたDらとの連絡を仲介するという職務上不正な行為をし、その謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されることを知りながら、被告人Bから現金合計20万円を無利息で借り受けて賄賂を収受した加重収賄の事案(判示第1)、被告人Bが、前記のとおり被告人Aに賄賂を供与した贈賄の事案(判示第2)、被告人Bが、Dと共謀の上、同刑務所の刑務官であったCが前記同様の不正連絡を仲介したことについて同人に現金合計16万円を無利息で貸し付けて賄賂を供与した贈賄の事案(判示第3)である。 第2 被告人Aについて被告人Aは、刑務官として刑罰権を適正に行 様の不正連絡を仲介したことについて同人に現金合計16万円を無利息で貸し付けて賄賂を供与した贈賄の事案(判示第3)である。 第2 被告人Aについて被告人Aは、刑務官として刑罰権を適正に行使することにより受刑者の更生と社会復帰を促す立場にあったにもかかわらず、その職責に背いて複数回にわたり受刑者と外部者との不正連絡を仲介し、その対価として20万円という少 なくない額を無利息・無担保で借り受けたものであり、これらの一連の行為は、刑務所の規律と秩序を阻害し、受刑者である被告人Bの更生を妨げるものであるから厳しい非難を免れない。また、被告人Aは、借金返済資金や遊興費に充てる金員を得るため犯行に及んだもので動機に酌むべき点はなく、受刑者である被告人Bに不正連絡の仲介を持ち掛けるなど積極的に犯行に関与しているから、その刑事責任は軽視し得ない。 一方で、被告人Aには、本件犯行を認めて反省の気持ちを示していること、前科前歴がないこと、母親が情状証人として出廷し今後の監督を誓約していることなど量刑上有利に斟酌できる事情が認められる。そうすると、被告人Aに対しては、主文の刑を定めた上、その刑の執行を猶予するのが相当である。 第3 被告人Bについて被告人Bは、刑務所の規律を遵守し改善更生のための処遇を真摯に受けるべき受刑者の立場にありながら、刑務官である被告人AとCに賄賂を供与し、同人らを利用して、自身が関与したとされる詐欺事件の捜査状況を把握するために刑務所外にいたDと多数回にわたり不正な手紙のやりとりを行ったほか、房内に携帯電話を差し入れさせて刑務所外の者と直接通話するなど、受刑者としてあるまじき行為を繰り返した。被告人Bは、被告人Aが不正連絡の具体的方法を提案したなどと言うが、そうであったとしても、被告人Bは、判示 電話を差し入れさせて刑務所外の者と直接通話するなど、受刑者としてあるまじき行為を繰り返した。被告人Bは、被告人Aが不正連絡の具体的方法を提案したなどと言うが、そうであったとしても、被告人Bは、判示第2の犯行においては刑務所外にいた知人を通じて賄賂に充てる金員を自ら出捐し、判示第3の犯行においては刑務所外にいた共犯者のDに賄賂に充てる金員の融通を直接依頼するなど、一連の事件において外部との不正連絡という自らの目的を達成するため主体的に行動しているから、被告人Bの刑事責任が特段減じられるものではない。 さらに、被告人Bは、累犯前科1犯を含む懲役刑前科4犯を有し、いずれも服役しながら直近前科に係る懲役刑の受刑中に各犯行に及んでおり、規範意識が欠如していると言わざるを得ないから、その刑事責任には重いものがある。 一方、被告人Bについては、事実を認め反省文を作成するなどして反省の気持ちを示していることなど有利な事情も認められるので、被告人Bを主文の刑に処するのが相当である。 (求刑・被告人Aについて懲役1年6月、被告人Bについて懲役1年2月)(被告人Aの弁護人の科刑意見・執行猶予付き判決)(被告人Bの弁護人の科刑意見・寛大な判決)令和6年4月23日 高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官稲田康史 裁判官鈴木美香 裁判官徳舛純一 (別表1~4省略)
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