令和5(わ)300 盗品等有償譲受け、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月30日 神戸地方裁判所
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判決文本文11,514 文字)

- 1 - 令和6年5月30日宣告令和5年第300号盗品等有償譲受け、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件判決 主文 被告人は無罪。 理由 第1 公訴事実本件は、被告人が、3回にわたり、Aらが窃取したギフトカードを、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「B」を称する氏名不詳者(以下、単に「B」という。)から買い受けたという事案である。 本件公訴事実の要旨は、次のとおりである。 「被告人は、法定の除外事由がないのに、氏名不詳者と共謀の上、第1 令和4年7月12日、さいたま市a区b番地c所在の株式会社C(以下「C社」という。)敷地内において、Aらが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたVJAギフトカード5000円券30枚(時価合計15万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「B」から代金約13万5000円で買い受け第2 同月18日、C社敷地内において、Aらが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたVJAギフトカード5000円券80枚(時価合計40万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「B」から代金約36万円で買い受け- 2 - 第3 同月30日、C社敷地内において、Aらが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたUCギフトカード5000円券20枚(時価10万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「B」から代金約9万円で買い受けもって財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を有償で譲り受けるとともに、 それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「B」から代金約9万円で買い受けもって財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を有償で譲り受けるとともに、犯罪収益等を収受したものである。」第2 本件の争点関係各証拠によれば、被告人が、本件公訴事実記載の各日時・場所において、Aらが窃取した同記載の各ギフトカード(以下「本件各ギフトカード」と総称する。)を、同記載の各代金額で「B」から買い受けた事実が認められ、これらの事実については、当事者間に争いはない。 本件の主たる争点は、本件各ギフトカードが盗品及び犯罪収益等であることについての被告人の知情性(以下、単に「知情性」ということもある。)の有無である。 第3 争点に対する判断 1 前提事実関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ C社の組織・業務内容等についてC社は、令和3年10月1日に被告人を代表取締役としてさいたま市内に設立された会社で、ギフトカード等の金券やその他の物品を仕入れ、これを転売するなどして利益を得ていた(甲13号証等参照)。C社において、被告人は、主として対面での仕入れや販売を担当しており、スーパーで化粧品等を購入したり、金券ショップでギフトカード等を売却したりしていた(第3回公判・被告人供述調書1頁等参照)。また、インターネットや郵便を利用した商品の仕入れは、DやEが担当しており、ギフトカード等の- 3 - 金券の仕入れは、主としてDが担当していた(甲25号証、第3回公判・被告人供述調書2頁ないし4頁、第5回公判・被告人供述調書1頁等参照)。 ⑵ C社におけるギフトカードの取引状況等についてC社では、主に日本在住の中国人からギフトカード等の金券を買い取っており、買取代金は、基本的 いし4頁、第5回公判・被告人供述調書1頁等参照)。 ⑵ C社におけるギフトカードの取引状況等についてC社では、主に日本在住の中国人からギフトカード等の金券を買い取っており、買取代金は、基本的には仲介業者を介して仕入先に中国通貨である人民元で支払っていた(第3回公判・被告人供述調書14頁、第5回公判・被告人供述調書11頁等参照)。本件当時、C社は、ギフトカードを主に「B」から仕入れており(甲25号証等参照)、本件前の令和4年6月29日から同年7月12日までの間に、「B」から合計11回にわたりギフトカード(総額約125万円分)を仕入れていた(甲70号証等参照)。 C社では、ギフトカードを額面の約90%で買い取っており、被告人も、買取業務を担当していたDから報告を受けるなどして、そのことを認識していた(甲25号証、29号証、第3回公判・被告人供述調書5頁ないし6頁等参照)。本件各ギフトカードについても、C社は、「B」から額面の約90%で買い取っている(甲39号証等参照)。 ⑶ 被告人によるギフトカードの売却状況等についてア令和4年7月3日、被告人は、東京都内の「チケットショップF」で、ギフトカード1092枚を183万7527円で売却した(甲20号証等参照)。被告人が売却したギフトカードには、本件とは別に、Aらが不正に入手し、「B」名義でC社に送付したギフトカードが含まれていた(甲10号証、64号証等参照)。被告人は、売却の際、買取カード(甲20号証添付の資料3)に、「G」という偽名のほか、虚偽の住所、電話番号等を記載した。 イ同年7月22日、被告人は、チケットショップFで、ギフトカード894枚を437万3895円で売却した(甲20号証等参照)。被告人が- 4 - 売却したギフトカードには、本件公訴事実(第2)で、C社 7月22日、被告人は、チケットショップFで、ギフトカード894枚を437万3895円で売却した(甲20号証等参照)。被告人が- 4 - 売却したギフトカードには、本件公訴事実(第2)で、C社が「B」から買い受けたギフトカードが含まれていた(甲21号証等参照)。チケットショップFの店員は、買取カード(甲20号証添付の資料1)の氏名欄に、被告人が以前から同店で使用していた名前である「H」と記載した。 ウ同年7月29日、被告人は、チケットショップFで、ギフトカード460枚を225万1700円で売却した(甲20号証等参照)。被告人が売却したギフトカードには、本件とは別に、不正に入手されたギフトカードが含まれていた(甲64号証等参照)。被告人は、売却の際、買取カード(甲20号証添付の資料5)に、前記アと同様に「G」という偽名のほか、虚偽の住所、電話番号等を記載した。 エ被告人は、同年7月17日、埼玉県内のスーパーにおいて、ギフトカードを使用して、眉墨鉛筆を購入した。被告人が使用したギフトカードには、本件公訴事実(第1)で、C社が「B」から買い受けたギフトカードが含まれていた(甲15号証等参照)。 また、被告人は、同年9月30日、千葉県内のスーパーにおいて、ギフトカードを使用して、ベビー用品等を購入した。被告人が使用したギフトカードには、本件公訴事実(第3)で、C社が「B」から買い受けたギフトカードが含まれていた(甲24号証等参照)。 被告人は、両店において、「H」という名前を使用していた。 ⑷ 警察官からの指摘等についてア被告人は、令和3年12月23日、神奈川県津久井警察署の警察官から、C社が本件とは別の詐欺事件の被害品の送付先になっているとして、商品の受取状況等について事情聴取を受けた(甲30号証等参照)。 イ 被告人は、令和3年12月23日、神奈川県津久井警察署の警察官から、C社が本件とは別の詐欺事件の被害品の送付先になっているとして、商品の受取状況等について事情聴取を受けた(甲30号証等参照)。 イ被告人は、C社の取引先である株式会社Iの担当者(以下「I社」という。)から、メッセージアプリで、㋐令和4年3月31日、「偽物とし- 5 - て、返品するって言っている商品ですが」「万が一お客様からクレームがあったら、都度返品させていただきますのでご認識をお願いします。」とのメッセージを、㋑同年4月5日、「すべて偽物判定が出たので、返品しないといけないのです」とのメッセージを、㋒同年5月10日、「下記、盗品の可能性がある商品になります。」とのメッセージを、それぞれ受信した(甲44号証ないし46号証参照)。 ウ C社は、同年6月23日付けで、東京弁護士会から、C社でのJ社製品の模倣品の取扱いに関する照会を受けた。そして、被告人は、同月24日、J社の代理人弁護士に対し、C社で取り扱っているJ社製品は正規品であり、模倣品は取り扱っていない旨答えた(甲49号証、69号証等参照)。 2 検討⑴ 検察官の主張の要旨検察官は、本件各ギフトカードが盗品及び犯罪収益等であることにつき、被告人に少なくとも未必的に知情性が認められる旨主張する。 そして、検察官は、被告人に知情性が認められる根拠として、①被告人が、本件以前より、警察官等から繰り返し、C社で取り扱う商品に犯罪被害品等が含まれている旨の指摘を受けていたこと、②C社では、Bから通常の商取引ではあり得ない低価格でギフトカードを仕入れていること、③被告人が、ギフトカードを売却した際に、買取カードに偽名等を記載していたことなどを主張する。 そこで、以下、検察官の各主張について、検討する。 あり得ない低価格でギフトカードを仕入れていること、③被告人が、ギフトカードを売却した際に、買取カードに偽名等を記載していたことなどを主張する。 そこで、以下、検察官の各主張について、検討する。 ⑵ 検察官の主張①(警察官からの指摘等)についてア検察官の主張は、次のとおりである。 被告人は、本件以前から、繰り返し、警察官、弁護士及び取引業者とい- 6 - った信頼性の高い相手から、C社で取り扱っていた商品について、犯罪被害品や模造品等が含まれている旨の指摘を受けていた。したがって、被告人は、C社で仕入れる商品の中に、犯罪に関係する品物が含まれる可能性があることを認識していた。 イ前提事実によれば、被告人は、警察官やI社、弁護士会からC社で取り扱っている商品につき、模造品や、窃盗、詐欺等の被害品である旨の指摘を複数回受けている。そして、この事実は、被告人が、C社で仕入れる商品につき、何らかの犯罪に関係する物が含まれている可能性を認識していたことを一定程度推認させる事情であることは否定できない。 ウしかし、本件で問題となっている知情性は、本件各ギフトカードが盗品及び犯罪収益等であることについての知情性であり、C社が取り扱った商品が模倣品や偽物であるとの指摘は、本件の知情性に直接結びつくものではない。 エまた、関係各証拠によっても、警察官やI社、東京弁護士会から、窃盗や詐欺の被害品、模倣品等であると指摘された商品は、いずれも、仕入先が「B」であったり、商品が「ギフトカード」であったりするなど、本件各ギフトカードの取引態様との類似性をうかがわせる事情は認められない。 オ加えて、被告人は、警察官等からの指摘を受けて、買い取った商品が犯罪に関係するような物であった取引先についてはリストにして商品を仕入れないように の類似性をうかがわせる事情は認められない。 オ加えて、被告人は、警察官等からの指摘を受けて、買い取った商品が犯罪に関係するような物であった取引先についてはリストにして商品を仕入れないようにするなどの対策を講じていた、本件当時、「B」から仕入れた商品が不正な物であったとの指摘等を受けたことはなかった旨供述している(第4回公判・被告人供述調書12頁ないし13頁、第5回公判・被告人供述調書3頁等参照)。 被告人の上記供述は、I社が、被告人に対し、不正品の可能性のある商- 7 - 品の仕入先との取引を中止するよう警告していたこと(甲47号証参照)とも整合的であり、その内容は不合理ではなく、関係各証拠を精査しても、これを排斥するに足りる証拠もない。 カ以上のとおり、警察官等からの指摘は、直ちに被告人の知情性を推認させる事情ではないし、被告人に、本件当時、「B」から仕入れるギフトカードにつき、犯罪に関係する物が含まれているという具体的な可能性を認識させる事情でもない。 ⑶ 検察官の主張②(低価格での仕入れ)についてア検察官の主張は、次のとおりである。 「B」は継続的に商品を転売して利益を上げる業者であるから、買取相場より低価格でギフトカードを売却することは、通常の商取引としておよそあり得ない。そして、被告人は、そのことを認識していたのであるから、「B」から仕入れるギフトカードについて、低価格で仕入れることのできる特別の事情、すなわち、何らかの財産に対する罪により入手された品物である可能性があると認識していたことが推認される。 イ前提事実によれば、本件当時、C社では、「B」を主な仕入先として継続的にギフトカードを仕入れていた。C社でのギフトカードの買取価格は額面の約90%であり、そのことは被告人も認識していた。そして イ前提事実によれば、本件当時、C社では、「B」を主な仕入先として継続的にギフトカードを仕入れていた。C社でのギフトカードの買取価格は額面の約90%であり、そのことは被告人も認識していた。そして、検察官提出の証拠(甲26号証、27号証)によれば、神戸市内の金券ショップ(6店舗)におけるVJAギフトカード(5000円券)の買取価格は額面の95%から97%で、インターネット上の買取サイト(6サイト)における同ギフトカードの買取価格は額面の96%から97.9%であった。 したがって、本件各ギフトカードを含めたC社でのギフトカード買取価格が約90%と上記買取相場よりも低く、自ら金券ショップでギフトカー- 8 - ドを売却していた被告人がそのことを認識していたことは、検察官の主張するとおりである。 ウしかし、前記買取相場を前提としても、C社が相場と大きく乖離した金額でギフトカードを買い取っていたとはいい難い。 たしかに、検察官提出の証拠(甲68号証)によれば、金券等の買取会社の役員が、金券業界において、ギフトカードの買取価格が数パーセント単位で変動することは通常なく、相場が額面の97%前後であるのに、90%で売却することは考えられない旨供述している。 しかし、その一方で、インターネット上には、本件各ギフトカードと同種のギフトカードを、額面の90%や92%で買い取る旨掲載するチケット販売会社が存在し(弁5号証等参照)、同社の代表取締役によれば、店舗所在地の地域性等の理由から、VJAギフトカードを額面の約89%ないし95%で買い取っているとのことである(甲71号証参照)。 したがって、ギフトカードの買取価格が額面の約90%であること自体から、直ちに通常の商取引ではあり得ない取引で、一般的に盗品性が疑われるなどということはできない とのことである(甲71号証参照)。 したがって、ギフトカードの買取価格が額面の約90%であること自体から、直ちに通常の商取引ではあり得ない取引で、一般的に盗品性が疑われるなどということはできない。 エこの点、検察官は、「B」は、商品を単発的に売却する個人の客ではなく、継続的に転売して利益を上げる業者であり、数パーセントの売却価格の違いが売上げに大きな影響を及ぼすから、C社が、「B」から額面の約90%でギフトカードを継続的に仕入れることは、通常の商取引としておよそあり得ない旨主張する。 前提事実によれば、C社では、「B」から相応の量のギフトカードを継続的に仕入れており、「B」が単発的な個人の客ではなく、継続的に商品を転売して利益を上げていたことは、検察官の主張するとおりである。 しかし、C社でのギフトカードの取引は、店舗やインターネット・サイ- 9 - ト上で、幅広くギフトカード等の金券の買取等を行っている日本の一般的な金券ショップ等における取引とは異なっている。前提事実によれば、C社は中国人である被告人が代表取締役を務めている会社で、ギフトカードの主な仕入れ先は日本在住の中国人であり、買取代金は人民元で支払っていた。検察官の主張は、このようなC社におけるギフトカード取引の特殊性を考慮せず、日本の一般的な金券ショップ等における買取相場を前提とするもので、採用することはできない。 被告人は、ギフトカードを額面の約90%で仕入れていたことについて、その買取価格に違和感を覚えていなかった旨供述している。そして、被告人は、その根拠として、中国から来日したばかりの留学生等は携帯電話機の新規契約をする際などにキャッシュバックとしてギフトカードをもらえることがあるところ、これを自分で使用する機会がなく、また、中国には金券文化がないの 、中国から来日したばかりの留学生等は携帯電話機の新規契約をする際などにキャッシュバックとしてギフトカードをもらえることがあるところ、これを自分で使用する機会がなく、また、中国には金券文化がないので現金の方を重視しており、自分で売却する方法も分からないことなどから、現金化するために仲介人等に安い金額でギフトカードを売却することがある旨供述している(第3回公判・被告人供述調書6頁ないし11頁、第5回公判・被告人供述調書1頁ないし2頁等参照)。 被告人の上記供述は、中国人の間でギフトカードが日本の金券ショップ等の買取相場よりも低い価格で取引される根拠として、不合理とはいえず、これを排斥するに足りる証拠もない。そして、被告人は、「B」を中国人と認識しており、中国人の仕入先は人民元での支払を希望する者が多かったというのであるから(第5回公判・被告人供述調書2頁、11頁等参照)、「B」がC社で日本における一般的な相場よりも低い価格でギフトカードを継続的に売却することが不自然とはいえず、C社でのギフトカードの買取価格に違和感を感じなかった旨の被告人の供述は、あながち不合理ともいい難い。 - 10 - オ以上のとおり、C社が日本の一般的な相場よりも低い価格でギフトカードを継続的に仕入れていることが、およそあり得ない取引ということはできず、直ちに被告人の知情性を推認させる事情とはいえない。 ⑷ 検察官の主張③(売却時の偽名等の使用)についてア検察官の主張は、次のとおりである。 被告人は、ギフトカードを売却する際、買取カードに偽名等を記載している。被告人は、C社の事業の一環としてギフトカードを売却しており、通常の商取引において、買取カードに虚偽の情報を記載することはあり得ない。被告人にギフトカードを売却したのが被告人又はC社である ている。被告人は、C社の事業の一環としてギフトカードを売却しており、通常の商取引において、買取カードに虚偽の情報を記載することはあり得ない。被告人にギフトカードを売却したのが被告人又はC社であることが発覚しないようにする強い意図があったことがうかがわれる。被告人は、C社で仕入れるギフトカードが犯罪により入手されたものである可能性を認識していたからこそ、自身に刑事責任が及ばないように買取カードに偽名等を記載したことが推認される。 イ前提事実によれば、被告人は、令和4年7月3日及び同月29日に、不正入手されたものを含むギフトカードをチケットショップFで売却した際、買取カードに偽名や虚偽の住所等を記載している。そして、通常、ギフトカード等を売却する際に偽名等を使用することは想定し難いため、被告人には、上記売却の際に本名や住所等を明らかにしたくない事情があったといえる。 しかし、被告人がギフトカードを売却したチケットショップFは、本件の1年以上前から、被告人が金券を購入したり、売却したりしていた金券ショップであり、チケットショップFでは、被告人のことを常連客として見ていた。被告人は、チケットショップFでは、日本で日常的に使用していた名前と考えられる「H」を名乗っており、自分が使用している携帯電話の番号も教えていた(甲20号証、34号証等参照)。 - 11 - また、前提事実のとおり、被告人は、本件各ギフトカードを千葉県及び埼玉県内のスーパー2店でも使用しているが、両店とも、本件の1年以上前から、被告人が化粧品等を大量購入していた店舗であり、被告人は常連客として見られていた。いずれの店舗においても、被告人は「H」と名乗っており、少なくとも千葉県内のスーパーには携帯電話の番号を教えるなどしていた(甲16号証、17号証、24号 舗であり、被告人は常連客として見られていた。いずれの店舗においても、被告人は「H」と名乗っており、少なくとも千葉県内のスーパーには携帯電話の番号を教えるなどしていた(甲16号証、17号証、24号証等参照)。 このように、被告人は、本件各ギフトカード等を、本件以前から常連客として対面で取引しており、日常使用していた名前や電話番号を把握されるなどしていた店舗で売却・使用していたのであるから、被告人に、ギフトカードを売却したのが被告人又はC社であることが捜査機関等に発覚しないようにする強い意図があったとはいえない。 ウまた、偽名等を使用する動機としては多様なものが考えられ、必ずしも犯罪の刑責を免れる目的があったということもできない。 そして、関係各証拠を精査しても、被告人が、犯罪により入手された可能性がある商品を売却する場合にのみ偽名等を使用していたなどの事情もうかがわれず、被告人が、盗品等の可能性とは無関係に、商品を売却する場合に偽名等を使用していたことも否定できない。被告人が外国人であることも考慮すると、当時、日本がコロナ禍にあり中国人のイメージが悪くなっていたことや、被告人が普段から多額の現金を持ち歩いていたこと等から、売却先から情報が漏れて強盗に狙われないようにするためであったなどという、犯罪の刑責を免れることとは異なる目的で偽名等を使用したとの被告人の供述(第3回公判・被告人供述調書12頁、第4回公判・被告人供述調書19頁ないし21頁等参照)を、虚偽として排斥することは困難である。 エなお、検察官は、法令上、ギフトカードの買取時には買取業者に本- 12 - 人確認等が義務付けられており、被告人は、そのことを認識していたのであるから、買取カードに虚偽の情報を記載することは、文書偽造罪にもなり得る行為で、通常 の買取時には買取業者に本- 12 - 人確認等が義務付けられており、被告人は、そのことを認識していたのであるから、買取カードに虚偽の情報を記載することは、文書偽造罪にもなり得る行為で、通常はあり得ない旨主張する。しかし、本人確認は買取業者である金券ショップ側の義務であるところ、チケットショップFでは被告人の本人確認をしておらず、被告人はチケットショップFから身分証の提示を求められてもいなかったのであるから(甲20号証参照)、被告人に法を犯してまであえて偽名等を使用しなければならない事情があったと評価することはできない。 オ以上のとおり、被告人がギフトカードの売却時に偽名等を使用していたからといって、必ずしも被告人に犯罪の刑責を免れる目的があったということはできず、直ちに被告人の知情性を推認させる事情とはいえない。 ⑸ その他の検察官の主張についてア検察官は、その他にも、被告人の知情性を推認させる事実として、被告人が、④携帯電話機で盗品保管やギフトカードの偽造等に関する言葉を検索していたこと、⑤C社に対する警察官の捜索が行われた際、自分の携帯電話機に保存していたアプリケーションを削除したことを主張する。 イ検察官の主張④について、被告人の携帯電話機に、「詐欺品保管」、「盗難品保管」、「盗ったものの保管」等の検索履歴が保存されており(甲57号証参照)、被告人がこれらの言葉を検索していたことは、検察官の主張するとおりである。 しかし、インターネットによる検索は様々な目的で行われることが考えられ、被告人が盗品等に関連する言葉を検索したからといって、仕入れた商品が盗品等である可能性を認識していたということはできない。各言葉を検索した理由として被告人が述べていることも(第3回公判・被告人供述調書22頁ないし24頁等 言葉を検索したからといって、仕入れた商品が盗品等である可能性を認識していたということはできない。各言葉を検索した理由として被告人が述べていることも(第3回公判・被告人供述調書22頁ないし24頁等参照)、決して不合理とはいえない。 - 13 - ウ検察官の主張⑤について、令和4年10月28日、警視庁の警察官が、C社の捜索差押を実施しており、捜索開始に当たり被告人を呼び出したところ、被告人が自分の携帯電話機からメッセージアプリを削除している(甲53号証、54号証等参照)。したがって、被告人には、削除したメッセージアプリを使用したやり取り等を、警察官から隠したかった理由があったものと認められる。 しかし、そのことが直ちに被告人の知情性と結びつくとはいえない。また、被告人は、メッセージアプリを削除した理由について、税務調査を免れるためなどと述べているところ(第3回公判・被告人供述調書26頁ないし28頁等参照)、同供述は、被告人が捜索の直前に税務申告をしていない旨の検索をしていること(甲57号証添付の資料2・1頁参照)と整合的であるし、これを排斥するに足りる証拠もない。 エ以上のとおり、被告人が、盗品等に関連する言葉を検索したり、携帯電話機のメッセージアプリを削除したりしたことについて、本件とは無関係の理由によって行うこともあり得るものであり、直ちに被告人の知情性を推認させる事情とはいえない。 3 まとめ以上のとおり、検察官が主張する各事実関係は、いずれもそれ自体から直ちに被告人の知情性を推認させるものではない。 そして、これらの事実関係を総合考慮しても、被告人の知情性を未必的にも認定することはできない。すなわち、窃盗等の被害品や模造品等がある旨の警察官等からの指摘は、被告人が、C社で仕入れる商品に何らかの犯罪に関係する 事実関係を総合考慮しても、被告人の知情性を未必的にも認定することはできない。すなわち、窃盗等の被害品や模造品等がある旨の警察官等からの指摘は、被告人が、C社で仕入れる商品に何らかの犯罪に関係する物が含まれている可能性を認識していたことを一定程度推認させる事情であることは否定できないものの、被告人が、「B」から仕入れるギフトカードにつき、犯罪に関係する物が含まれている具体的な可能- 14 - 性の認識まで生じさせるものとはいえない。そして、C社が「B」から日本の相場よりも低い価格で継続的にギフトカードを仕入れていることが、通常の金券取引としてあり得ないものということはできず、ギフトカード売却時の偽名等の使用や携帯電話のメッセージアプリの削除等も、本件とは無関係の理由で行うこともあり得る。検察官の主張する各事実関係は、いずれも被告人に本件の知情性が未必的にもないとしたならば合理的に説明することができないものとはいえない。 加えて、「B」からのギフトカードの仕入れを担当していたのは、被告人ではなく主としてDであり、被告人がどの程度「B」との取引について把握していたかは証拠上明らかでない。そして、関係各証拠を精査しても、その他に被告人の知情性を推認することのできる事実も認められないから、被告人が本件の知情性を有していたと認定するには、合理的な疑いが残るというべきである。 第4 結論以上によれば、本件公訴事実はいずれも犯罪の証明がないこととなるから、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑懲役3年及び罰金50万円)令和6年6月7日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官松田道別 令和6年6月7日 神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官 松田道別 裁判官 西村彩子 裁判官 井村玲央奈

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