主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が平成12年4月10日原告に対して行った原告の被告に対する審査請求(平成11年懲(審)第1号審査請求事件)を棄却するとの裁決は,これを取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,所属するA弁護士会から除名の懲戒処分を受けた弁護士である原告が,この処分の取消しを求めて被告に審査請求をしたところ,被告がこの審査請求を棄却する旨の裁決をしたため,この裁決の取消しを求めている事件である。 2 前提となる事実(1) 原告は,A弁護士会所属の弁護士であったが,平成10年12月1日,同弁護士会から除名の懲戒処分(甲1。以下「本件除名処分」という。)を受けた。(争いがない。)(2) 本件除名処分がされるに至る経緯は,次のとおりである。 A弁護士会の綱紀委員会は,Bが平成6年6月20日にした懲戒請求(乙1の1。A弁護士会平成6年第21号綱紀事件)及びCが同年7月8日にした懲戒請求(乙1の2。同第26号綱紀事件)に基づいて,そのころ調査を開始し,平成8年3月15日,B及びCの懲戒請求を一部理由があるものとして,懲戒委員会の審査に付するのを相当とする旨の議決(乙3の1,2)をしたことにより,同年5月1日にA弁護士会の懲戒委員会の手続が開始された。Cは,上記綱紀委員会の議決のうちCの懲戒請求の一部を懲戒委員会の審査に付さないとした部分について被告に異議の申出をし,被告は,これを受けて,平成9年6月17日,上記綱紀委員会の議決の一部を取り消し,取り消した部分を上記懲戒委員会の審査に付する旨の決定(乙3の3の1,2)をした。その結果,A弁護士会の懲戒委員会の審査に付された懲戒請求の理由の要旨は,下記のとおりであった(甲2)。 り消し,取り消した部分を上記懲戒委員会の審査に付する旨の決定(乙3の3の1,2)をした。その結果,A弁護士会の懲戒委員会の審査に付された懲戒請求の理由の要旨は,下記のとおりであった(甲2)。 記ア原告は,Bと共に,平成3年1月14日,D社がスイス国のE社の開発した一般・産業廃棄物を処理・資源化するシステム(以下「本件システム」という。)に関する特許権の日本における独占的実施権者(ライセンシー)として同社に対して支払うべきライセンス料に充てるためにCからスイス国のジュリアス・ベア銀行のB名義の口座へ送金された300万ドル(ドルは米国ドルを指す。以下同じ。)のうちのライセンス料の支払等に充てられた後の残金100万ドルから日本円で5000万円の払戻しを受け,これを折半し,各自2500万円ずつ日本に持ち帰ったが,D社から上記独占的実施権を取得するための法律事務を委任された弁護士であり,同社の監査役でもある原告は,上記300万ドルがD社がCから融資を受けたもので,E社に対するライセンス料として支払うべき金員であることを知っていながら,2500万円を受領して不法に領得した。 イ Bは,平成3年1月14日ころ,前項の100万ドルの残金のうち59万3000ドルを香港に送金し,現金化した上日本に持ち帰ったところ,原告は,同年3月22日,そのうち4000万円をBから受領したが,これは業務上の横領行為である。 A弁護士会の懲戒委員会は,上記懲戒請求の理由について審査の上,平成10年11月13日,原告を除名する旨の議決(甲2)をし,同弁護士会は,この議決に基づいて,本件除名処分をした。A弁護士会の懲戒委員会のした上記議決の内容は,別紙「議決書」記載のとおりであり,同弁護士会がした本件除名処分の理由の要旨 旨の議決(甲2)をし,同弁護士会は,この議決に基づいて,本件除名処分をした。A弁護士会の懲戒委員会のした上記議決の内容は,別紙「議決書」記載のとおりであり,同弁護士会がした本件除名処分の理由の要旨は,下記のとおりであって,審査に付された懲戒請求の理由のうち前記イは,懲戒することはできないとされた。 (甲1,2)記原告は,B,Cらと共に,E社が開発した本件システムに関する特許権の日本における独占的実施権のライセンシーとして,D社の設立に関与し,自ら同社の代理人,監査役に就任した。 しかるに,原告は,平成3年1月14日,D社がE社に対するライセンス料に充てる資金として銀行から借り入れた300万ドルのうちから2500万円を不当に領得した。 原告は,D社の監査役であり,かつ,E社から本件システムに関する特許権の日本における独占的実施権を取得するための法律上の事務を委任された弁護士であることから,前記の行為は弁護士としての品位を失うべき非行である。 (3) 原告は,被告に対し,本件除名処分の取消しを求めて審査請求をしたが,被告は,平成12年4月10日,原告の審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし,同月13日,原告にその裁決書が送達された。(争いがない。)第3 争点 1 原告がBから2500万円を受領した行為等が品位を失うべき非行に当たるか(争点1)。 (1) 被告の主張ア原告は,平成2年10月下旬,D社の発起人の一人であるFからE社が開発した本件システムに関する特許権の日本における独占的実施権(以下「本件ライセンス」という。)を取得するための法律事務を委任された。その後,原告は,自らもD社の発起人となり,法律事務の処理に加え,同社の事業にも参画することとなった。 イ平成2年12月10日,E社の社長が来 という。)を取得するための法律事務を委任された。その後,原告は,自らもD社の発起人となり,法律事務の処理に加え,同社の事業にも参画することとなった。 イ平成2年12月10日,E社の社長が来日し,同月14日付けで今後設立されるD社がE社の日本におけるライセンシーとなることなどを内容としたベーシック・アグリーメント(基本合意書)が作成され,原告は,Gと共に,D社の設立発起人代表として,これに署名した。 ウ平成3年1月7日,D社の設立登記がされ,原告は,同社の監査役に就任した。なお,設立時のD社の代表取締役は,C,B及びFの3名であった。 エ原告は,平成3年1月11日から同月16日までの間,Bと共に,D社のE社に対する初年度のライセンス料を支払うためスイスに出張した。 他方,Cは,上記ライセンス料を支払うため,スイスのジュリアス・ベア銀行本店のB名義の口座(以下「B口座」という。)に300万ドルを送金したが,このB口座は,ライセンス料を至急送金するための便宜的手段としてBの名義で開設されたものであり,実質的にはD社の口座であった。 オ原告は,弁護士として,D社から本件ライセンスを取得するための法律事務を委任され,また,同社の監査役に就任していたのであるから,B口座に送金された300万ドルの管理・処分については,委任契約に基づき,D社に対して善良なる管理者の注意義務を負っていた(民法644条)。 しかるに,原告は,平成3年1月15日,Bと共にジュリアス・ベア銀行に赴き,BがB口座からD社の運転資金にする名目で日本円5000万円を引き出すのに立ち会い,同日夜,宿泊先のホテルの部屋で,Bから,この5000万円のうち2500万円を受け取り,これを領得した。 カ原告が,弁護士としてD社から本件ライセ で日本円5000万円を引き出すのに立ち会い,同日夜,宿泊先のホテルの部屋で,Bから,この5000万円のうち2500万円を受け取り,これを領得した。 カ原告が,弁護士としてD社から本件ライセンスを取得するための法律事務を委任され,Bと共に300万ドルという多額の金銭の管理をゆだねられ,かつ,D社の監査役に就任していたことなど,原告とD社との間の高度の信頼関係にかんがみれば,代表取締役のCなどに何らの確認もせず,本来の使途以外の目的に流用された金銭の一部である2500万円を受領し,これをD社に返還しないのは,依頼者から預託された金員を着服したまま返還しないのに等しく,弁護士の信用を害する行為である。 原告は,この2500万円はBが代表取締役を務めるH社から依頼を受けて処理した弁護士業務の報酬であったというが,仮にそうであったとしても,D社の預金をH社のために使用することは委任の本旨に反する。また,原告は,BはD社の代表取締役として5000万円を引き出し,その一部を流用して原告への弁護士報酬の支払に流用したが,この流用についてはCの同意を得ていると思っており,D社の金員を着服するとの認識は全くなかったと主張するが,仮にCが5000万円の流用を認めていたのならH社の預金口座に送金すれば足りるのであり,わざわざスイスの銀行に送金し,スイスの銀行で現金で受け取る合理的な理由がない。仮にその当時原告に横領の認識がなかったとしても,平成5年12月22日に開催されたD社の取締役会において,Cが300万ドル全額をE社に対するライセンス料とする趣旨で送金したことや5000万円の流用についてCの了解がなかったことが明らかとなったのであるから,原告は,遅くともこの時点では自己の受領した2500万円を直ちにD社に返還すべき義務の存在を認識し得たはず 送金したことや5000万円の流用についてCの了解がなかったことが明らかとなったのであるから,原告は,遅くともこの時点では自己の受領した2500万円を直ちにD社に返還すべき義務の存在を認識し得たはずである。しかし,原告は,その後も,2500万円をD社に返還しなかった。 また,原告は,D社から本件ライセンスを取得するための法律事務を委任され,Cから本件システムに係る契約履行のために300万ドルの送金を受け,これをBと共に管理すべき立場にあったのであるから,この300万ドルが本来の目的以外に使用された場合は,その旨をD社の役員に報告すべき義務がある。Bが代表取締役であるとしても,D社とBの取引は取締役会の承認が必要な自己取引に該当するから(商法265条1項),D社の監査役でもある原告としては他の取締役に報告せずに済ませられる事項ではないし,100万ドルをジュリアス・ベア銀行の運用投資に回すことも取締役会の承認を要する事項であり(商法260条2項),Bが単独で行えることではない。平成5年12月22日に開催されたD社の取締役会で初めて他の取締役に200万ドルが他の用途に使われたことが明らかになったことからすれば,Bが取締役会の事前又は事後の承諾なく200万ドルを流用したことは明らかであり,かかる重要な事実を報告せず,その結果D社はE社からライセンス契約を解除されたのであって,原告の責任は重大である。したがって,300万ドルの支払処理につきD社に対する報告・説明義務を履行しないことも,弁護士としての信用を害すべき非行に当たる。 (2) 被告の主張に対する原告の反論及び主張ア被告は,原告がBから2500万円を受領したことをもってD社の金員の横領行為に当たると主張するが,この主張は争う。原告がBから2500万円を受領した経緯等 張に対する原告の反論及び主張ア被告は,原告がBから2500万円を受領したことをもってD社の金員の横領行為に当たると主張するが,この主張は争う。原告がBから2500万円を受領した経緯等は,以下のとおりである。 (ア) 原告とB及びCとの関係原告は,C及びBと共に,昭和62年3月創立のJロータリークラブの創立当初からの会員であるが,Cは,宝石商を営む株式会社Kの代表者であり,Bは,日本と発展途上国,特にナイジェリアとの間の航空貨物輸送を目的とするH社の代表者である。CとBの2人は友人関係にあり,平成3年までに,Bは,Cから,数回にわたり,約1億8000万円の融資を受けていた。 原告は,昭和62年7月ころ,Bから,H社とナイジェリアの石油公団との原油取引について法律問題の処理を依頼され,原油取引に関する書類の作成,LC開設銀行の紹介,原油買取会社との契約交渉等を行ったことを始めとしてH社の法律問題を処理していた。これによる弁護士報酬は,少なくとも5000万円を超えていたが,原告は,Bに請求しなかったため,未払となっていた。他方,原告とCとの関係は,ロータリークラブで会うと挨拶を交わす程度の関係であったが,平成元年3月ころ,Bの依頼でタイ国に家具製造会社の買収のためにBと同行した際,Cも同行したことがあった。この時のBの説明によると,Cはバンコクでマンションを購入するが,その交渉をBが任されているとのことであり,その外にCが所有するハワイのマンションの売却も頼まれているということであったため,原告は,BとCは相当に親しい間柄にあり,BはCからかなり信頼されていることを知った。 (イ) E社との関係原告は,平成2年2月ころ,スイス人の友人Gから,E社が開発し,世界各地で特許権を有す は相当に親しい間柄にあり,BはCからかなり信頼されていることを知った。 (イ) E社との関係原告は,平成2年2月ころ,スイス人の友人Gから,E社が開発し,世界各地で特許権を有する一般家庭ごみの処理システム(本件システム)の日本における特許実施権者(ライセンシー)になる会社を紹介してほしいとの依頼を受けた。Gがそれまでに原告に持ち込んできた案件は,成功した事例が全くなかったので,原告は,本件システムについても興味がわかず,放置していたところ,同年9月ころ,Gから,三菱グループが本件システムに興味を示し相当乗り気になっているとの話を聞かされ,三菱グループが興味を示すほどのものならば優れたものに違いないと考え,リサイクル事業を行っている友人のFにこの話をした。すると,Fは,同年10月25日,スイスにあるE社の実験工場を見学して本件システムの優れていることを実見し,同社のM社長とも面談して,本件システムの日本での製造,販売の独占的実施権を取得するには100万ドルが必要であることを知った。スイスから帰国したFは,本件システムの日本における事業化を計画し,原告に対し,本件ライセンス取得のためにE社との交渉及び事業遂行上生ずるであろう法律問題の処理について協力を要請した。また,Fには当時本件ライセンス取得に要する資金がなかったため,Fは,原告に対し,自分は技術面を担当するが,本件ライセンスを取得する資金がない,原告が所属するロータリークラブの会員の中に資金を提供してくれる者がいないかと述べた。当時,原告は,BがCから1億8000万円も借りていることやH社が資金に窮していることなど全く知らず,むしろ発展途上国への航空貨物の輸送で大きな利益を得ていると思っていたことから,Bに本件ライセンス取得の話を持ち掛け,出資を打診したところ,Bは, いることやH社が資金に窮していることなど全く知らず,むしろ発展途上国への航空貨物の輸送で大きな利益を得ていると思っていたことから,Bに本件ライセンス取得の話を持ち掛け,出資を打診したところ,Bは,自分より金持ちがいるからその人に資金を出してもらうとして,Cの名を出し,BがCに資金の提供を依頼することになった。同年11月20日,原告とFは,H社の本社にBを訪ね,E社からFあてに送られてきたベーシック・アグリーメント(基本合意書)の草案の内容を説明するとともに,E社作成のビデオテープやパンフレット類を手渡して,これらをCに見せてもらうよう依頼した。 (ウ) B口座開設の経緯E社から送られてきたベーシック・アグリーメントの草案により本件ライセンスを取得するためには,初年度の1月初めに100万ドル,次年度からは毎年50万ドルをライセンス料としてE社に支払わなければならないことが判明した。原告は,当時,特許権等の技術導入契約を締結しようとするときは,外為法上,契約締結日前3か月以内に「技術導入契約の締結に関する届出書」を日本銀行を経て大蔵大臣等に提出しなければならず,その届出書が受理されてから30日を経過するまでは契約を締結したり,ライセンス料を送金したりすることができないことを知った。本件システムの日本における購入先は主として一般家庭のごみ処理を行う地方自治体であるため,届出書の必要的記載事項である日本でのごみ処理機械の生産計画を勝手に記載するわけにはいかなかったことや当時はE社とベーシック・アグリーメントの締結に至っていなかったことなどから,外為法上の事前届出の手続をとることが時間的に無理であり,日本からE社にライセンス料を直接送金することができないことが分かった。そこで,原告は,E社のあるスイスに本件ライセンスを取得する となどから,外為法上の事前届出の手続をとることが時間的に無理であり,日本からE社にライセンス料を直接送金することができないことが分かった。そこで,原告は,E社のあるスイスに本件ライセンスを取得する者の銀行口座を開設し,その口座に送金し,同口座からE社に支払う以外に方法はないと考え,平成2年11月21日,知人であり,スイスのジュリアス・ベア銀行東京駐在員事務所の主席代表であるNに会い,ライセンス料送金の手続を聞いたところ,同人は,スイスの銀行に個人の銀行口座を開設し,いったんその口座に送金して,そこからライセンス料を送金する方法を原告に教えた。同月30日,原告は,Bを紹介すべく,Bを伴ってNと会ったが,その際,Nは,Bから原告あての委任状,Bのパスポートの写真及び署名のコピーがあれば,Bの個人口座を直ぐに開設することができると言って,ジュリアス・ベア銀行所定の口座開設のための委任状用紙をBに交付した。その数日後,Bは,原告経由で必要書類をNに届け,間もなくジュリアス・ベア銀行のスイス本店にB口座が開設された。 (エ) E社とのベーシック・アグリーメント締結平成2年12月10日,E社のM社長が来日し,原告の事務所で,原告,G及びFとM社長との交渉が始まった。M社長は,来日前から三菱商事をライセンシーにする意思を固めていた模様であったため,交渉は難航したが,同月14日に至り,ようやく近く設立予定のD社が日本のライセンシーになることに決まったものの,その代わり次年度分からのライセンス料は50万ドルではなく,毎年100万ドルということになり,その条件で同日ベーシック・アグリーメントが締結された。この交渉の推移と結果は,原告の事務所に来ていたBには逐一伝えており,Bは,ベーシック・アグリーメントの内容を十分に知っていたはずである なり,その条件で同日ベーシック・アグリーメントが締結された。この交渉の推移と結果は,原告の事務所に来ていたBには逐一伝えており,Bは,ベーシック・アグリーメントの内容を十分に知っていたはずである。なお,このベーシック・アグリーメントは英文であり,原告が大急ぎで作成したため,文章が繋がらず数行脱落した箇所が生じた。 Bは,ライセンス料を毎年日本から送金するのは大蔵省に対する届出など手続が面倒であり,2年分のライセンス料があればその間に地方自治体から注文が取れるだろうし,そのほかに100万ドルあれば運転資金等に使用できるので,合計300万ドルをCから借りると原告に伝えた。ベーシック・アグリーメントの締結交渉中,M社長からE社の実験工場は毎日運転しているのではないため,バイヤーが見学に来て本件システムの試運転を行う場合,ごみを大量に集めるなどのために費用が1回につき500万円くらいかかるが,これはライセンシーの負担になると言われ,原告は,これをBに伝えていたが,300万ドルを借りる旨のBの話を聞き,2年分のライセンス料のほかにこれらの費用に充てるため100万ドルをCから借りるものと理解した。 (オ) 太陽神戸三井銀行銀座支店における説明Cは,300万ドルを太陽神戸三井銀行銀座支店から融資を受けて調達したが,この交渉はCとBが行っていた。原告は,Bから,同銀行に本件システムの説明をしてほしいと依頼され,平成2年12月27日,B及びCと共に同支店に行ったが,原告が同支店に行ったのはこの1回限りであり,話した内容もE社の業務内容や本件システムについてであり,融資金の使途や本件ライセンスの取得に要する費用等については,既にCから説明してあると思い,何も話さなかった。ただ,原告の説明が終わった後で,同銀行の担当者がスイス 容や本件システムについてであり,融資金の使途や本件ライセンスの取得に要する費用等については,既にCから説明してあると思い,何も話さなかった。ただ,原告の説明が終わった後で,同銀行の担当者がスイスへの送金総額は300万ドルであることの確認を求めたので,原告は,そうだと答えた。 (カ) D社の設立平成3年1月7日,B,C,G,F,O,P及び原告の7名が設立発起人となって,本件システムのライセンシーとなるD社が設立された。資本金は,610万円(1株5万円で122株)であり,PとQの2名が各1株,Pを除く発起人6名がそれぞれ20株を引き受けた。そして,B,C及びFの3名が代表取締役に,原告が監査役にそれぞれ就任した。3名の代表取締役のうち,Bが営業,財務及び業務全般を担当し,Fが営業と技術を担当することになったが,Cは,名目のみの代表取締役であり,D社の運営には一切関与しなかった。D社は,その後2回の増資があり,最終的な同社の資本金は3000万円になった。 (キ) ジュリアス・ベア銀行の訪問E社とのベーシック・アグリーメントでは,速やかに日本法による株式会社を設立し,その会社がベーシック・アグリーメントに定めるすべての権利義務を承継するとされていたため,原告は,D社が設立された場合,同社の預金口座をジュリアス・ベア銀行に開設しなければならないと考え,その手続を前記のNに相談したところ,同人から,個人の場合と異なり,会社の口座開設手続は複雑で,会社の登記簿謄本,定款,取締役会の口座開設決議議事録,決算書類及び会社を代表してサインする権限のある者の名簿並びにこれらの英訳と在日スイス大使館による翻訳証明書等が必要であるとの説明を受けた。そこで,原告は,平成3年1月7日ころ,在日スイス大使館を訪ね,領事に対し,D 代表してサインする権限のある者の名簿並びにこれらの英訳と在日スイス大使館による翻訳証明書等が必要であるとの説明を受けた。そこで,原告は,平成3年1月7日ころ,在日スイス大使館を訪ね,領事に対し,D社の預金口座をジュリアス・ベア銀行に開設するために同行が要求する書類の翻訳証明書の発行を求めたが,領事は,スイス大使館にはそのような権能はないとしてこれを拒否した。そこで,原告は,再度Nに相談したところ,同人から,チューリッヒにあるジュリアス・ベア銀行本店に行って直接交渉することを勧められた。原告は,ライセンス料の支払期限が切迫していたため,同月10日,Bと共にスイスに行き,同月11日,ジュリアス・ベア銀行にD社の口座開設を求めたが,やはり在日スイス大使館の翻訳証明書なしには口座開設はできないとのことであった。原告は,D社の設立前に開設したB口座の外に実質的なD社の口座を開設しなくてはならないと考え,Bと相談の上,Bと原告の共同名義の口座(以下「共同名義口座」という。)を同銀行本店に開設した。共同名義にしたのは,初めD社の代表取締役であるBの名義にしようとしたが,Bが英会話ができないのを知ったジュリアス・ベア銀行の担当者Rが緊急に連絡する必要が生じたときに英会話ができないと困るので原告にBの代理人になるよう求めたためである。 (ク) 送金された300万ドルの処理平成3年1月14日,太陽神戸三井銀行銀座支店からジュリアス・ベア銀行のB口座に300万ドルが送金されてきた。ジュリアス・ベア銀行本店に待機していたBと原告は,うち100万ドルを直ちにE社の口座に送金する手続をし,次年度のライセンス料分100万ドルについては共同名義口座に移した。ところが,ジュリアス・ベア銀行の担当者Rは,1年間預金しておくだけでは金利が低いのでD社にと を直ちにE社の口座に送金する手続をし,次年度のライセンス料分100万ドルについては共同名義口座に移した。ところが,ジュリアス・ベア銀行の担当者Rは,1年間預金しておくだけでは金利が低いのでD社にとってメリットがない,8割元本保証の高利回りの運用に回せばD社の利益になると投資の実績表を示しながら熱心に投資を勧めたため,Bも,その気になり,100万ドルを1年間の投資に回すことにした。なお,これはジュリアス・ベア銀行の資金運用の失敗で3万ドルの赤字になったため,同行から不足分を借りて平成4年1月に2回目のライセンス料として100万ドルがE社に支払われている。Bは,上記300万ドルの残りの100万ドルは運転資金であるからと言って,B口座にそのまま残した。なお,上記300万ドルは,D社がCから事業資金として借りたものである。 (ケ) 原告の2500万円の受領平成3年1月15日,Bは,原告に再度Rに会いたいと言ったため,原告は,Bと共に,ジュリアス・ベア銀行本店にRを訪ねた。すると,Bは,Rにメモを渡し,B口座から,香港のSの預金口座に20万0112ドル40セント,ロンドンのTの預金口座に2万9374ドル77セント,香港のU社の預金口座に39万3170ドル87セントをそれぞれ送金するよう片言の英語で指示するとともに,日本円で5000万円を用意するよう指示した。Bの説明では,SはH社の香港駐在員であり,同人の口座に運転資金を移しておけばBが必要なときに直ちに送金ができる,Tに送金することにより近々ナイジェリアとの間に大きな取引が行われる,U社はH社の取引先で直ぐに返してもらえる,5000万円は日本に持ち帰り,運転資金や役人への接待に使用するとのことであった。 Bは,Rから5000万円を受け取って鞄に詰め,原告と共に宿泊先の 社はH社の取引先で直ぐに返してもらえる,5000万円は日本に持ち帰り,運転資金や役人への接待に使用するとのことであった。 Bは,Rから5000万円を受け取って鞄に詰め,原告と共に宿泊先のホテルに戻ったが,原告が自室でくつろいでいると,Bが2500万円を持参し,H社に関する弁護士報酬の未払分の一部として受け取ってほしいとのことであったので,原告は,この2500万円についてはBがD社の運転資金として使用するために引き出した5000万円のうちの一部を一時的に流用するものであることは分かったが,この流用についてはCの了解を得ているものと思い,2500万円を受け取った。 イ以上のように300万ドルは,その全額がE社に支払われるライセンス料というわけではなかった。そのうちの200万ドルのみがライセンス料で100万ドルはD社の運転資金にされる予定であった。B口座から5000万円を引き出したのはBであり,原告は,この引き出しについて事前に相談されることもなかった。Bは,5000万円はD社の者をスイスにあるE社の実験工場に派遣する経費や今後のD社の運転資金として使用すると説明していた。原告は,Bから2500万円を受け取った時,運転資金をH社の債務の支払に流用するものであることは分かったが,小さな会社ではこのようなことはよくあることであるし,流用についてはCの了解を得ているものと思ったのである。 被告は,Cに確認すべきだというが,Cは宝石店である株式会社Kを経営しており,D社の業務に関与することは望まなかったのであり,原告は,D社の運転資金をどのように使用するかについてはすべてBに任されていたものと認識していたのである。 仮にBが5000万円を引き出した行為が横領行為に当たるとしても,原告は,この行為に何ら荷担しておらず, をどのように使用するかについてはすべてBに任されていたものと認識していたのである。 仮にBが5000万円を引き出した行為が横領行為に当たるとしても,原告は,この行為に何ら荷担しておらず,横領罪の共犯に当たるものではない。 ウまた,被告は,原告がD社から本件ライセンスを取得するための法律事務を委任され,Cから本件システムに係る契約履行のために300万ドルの送金を受け,これをBと共に管理すべき立場にあったのであるから,この300万ドルが本来の目的以外に使用された場合はその旨をD社の役員に報告すべき義務があると主張するが,原告は,本件ライセンスを取得するための渉外事務を委任されただけであり,D社の代理人として法律行為をしたことはなく,また,D社の取締役会は一度も開かれなかったし,もともと100万ドルの投資や2500万円の流用については代表取締役であるB自身が行ったものであるから,原告が取締役会の開催を求めて報告することまではしなかったのである。D社は,資本金1億円以下の小会社であるから,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律25条により商法260条の3の規定は適用されないのであり,原告に監査役としての商法上の報告義務はない。 2 原告の行為が品位を失うべき非行に当たる場合,当該非行についての除斥期間は経過したか(争点2)。 (1) 原告の主張ア仮に原告がBから2500万円を受領した行為が非行に当たるとしても,これについての除斥期間の始期は原告が2500万円を受領した平成3年1月15日であるから,同日から3年を経過した平成6年1月14日の経過により除斥期間が満了した(弁護士法64条)。 したがって,A弁護士会の懲戒委員会が懲戒手続を開始した平成8年5月1日には既に除斥期間が経過していたから, を経過した平成6年1月14日の経過により除斥期間が満了した(弁護士法64条)。 したがって,A弁護士会の懲戒委員会が懲戒手続を開始した平成8年5月1日には既に除斥期間が経過していたから,A弁護士会のした本件除名処分は違法であり,本件除名処分を是認した被告の本件裁決も違法であって,取り消されるべきである。 イ被告は,依頼者に返還すべき金銭を着服したまま返還しないという非行の場合には,犯罪行為又は不法行為としての着服行為が終了しても,着服した金銭を依頼者に返還するか,又は着服行為についての示談が成立するまでは弁護士としての信用は害された状態にあり,非行は継続しており,除斥期間も開始しないと主張するが,それでは除斥期間がいつまでも進行しないことになり,除斥期間を設けた趣旨に反し,明らかに不合理である。また,被告には取締役会に対する説明報告義務はないから,除斥期間の開始を平成5年12月25日とするのも誤りである。 (2) 被告の主張ア原告の行為は,刑法上業務上横領に該当する行為であるが,弁護士法における懲戒制度は,刑法及び民法のように依頼者の財産権そのものの保護を目的とするのではなく,国民の基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とし,深い教養の保持と高い品性の陶やが求められる弁護士の使命と職務を全うし,弁護士に対する信頼を維持し,向上させることを目的としている。したがって,弁護士法上何が懲戒の対象となる非行であるかは,犯罪行為や民法上の不法行為と異なり,弁護士としての信用を害したか否か,職務の内外を問わずその品位を失うべき行為があったか否かによって判断されるのである(弁護士法56条1項)。 したがって,例えば依頼者に返還すべき金銭を着服したまま返還しないという非行の場合には,犯罪行為又は不法 品位を失うべき行為があったか否かによって判断されるのである(弁護士法56条1項)。 したがって,例えば依頼者に返還すべき金銭を着服したまま返還しないという非行の場合には,犯罪行為又は不法行為としての着服行為が終了しても,着服した金銭を依頼者に返還するか,又は着服行為についての示談が成立するまでは弁護士としての信用は害された状態にあって,非行は継続しており,除斥期間も開始しないというべきである。 すなわち,弁護士法64条にいう「懲戒の事由があったとき」とは,懲戒の事由に当たる行為が終了した時であり,継続する非行についてはその行為が終了した時と解すべきである。 本件では,原告は,懲戒手続が開始された平成8年5月1日の時点においても2500万円をD社に返還していなかったのであるから,除斥期間は開始さえしていないのである。なお,A弁護士会の懲戒委員会は,除斥期間の始期について,「金銭受領の時点が除斥期間の始期となるのではなく,返還義務を履行しないことが依頼者に明らかとなりそれが依頼者において着服行為と認識された時点,又は事件の終了,委任関係の終了その他依頼者との関係で清算すべきことが明確になった時点が始期となる。」としているが,この見解によっても,本件においては,平成5年12月22日のD社の取締役会で事実関係が初めて明らかにされたのであるから,除斥期間が経過していないという結論は同じである。 イまた,原告は,D社から本件ライセンスを取得するための法律事務を委任された者として,かつ,D社の監査役として,本件ライセンス取得のために送金された300万ドルがそれ以外の目的のために使用・費消された場合には,その旨を取締役会に報告し,説明すべきであるが,原告は,平成5年12月22日に至るまでこれをしなかったのであるから,この時点まで された300万ドルがそれ以外の目的のために使用・費消された場合には,その旨を取締役会に報告し,説明すべきであるが,原告は,平成5年12月22日に至るまでこれをしなかったのであるから,この時点までは除斥期間は開始しない。 3 本件除名処分は懲戒権の濫用といえるか(争点3)。 (1) 原告の主張仮に原告の行為が品位を失うべき非行に当たるといえるにしても,本件除名処分は過酷なものであり,懲戒権の濫用である。 (2) 被告の反論原告の主張は争う。 第4 争点に対する判断 1 証拠(甲4ないし6,8,乙1の6ないし11,1の16,1の17の1及び2,1の21の17の1及び2,1の21の20の1ないし3,1の21の21の1ないし12,2の6,2の9の6,3の4ないし13,4,5,6の1ないし19,7,8の1ないし3,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告が2500万円を受領するに至った経緯等について,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告は,渉外関係事件を主として扱う弁護士として東京都千代田区a町に法律事務所を設けていたが,昭和62年3月ころに設立されたJロータリークラブの会合で,そのころBと知り合った。Bは,当時,主に発展途上国と日本を結ぶ航空貨物運送の代理店業務を行うことを目的としていたH社の代表取締役をしており,原告は,同社の業務に関してBを手助けしたこともあった。 (2) 原告は,平成2年2月ころ,かねてからの知り合いであるスイス人のGから,E社が開発した本件システムの日本におけるライセンシーになる会社を紹介してほしいとの依頼を受けた。そこで,原告は,リサイクル業を営む友人のFにこの話をしたところ,Fは,スイスのE社の実験工場を視察するなどし,その結果,本件システムの日本における事業化を進めたいと考える ほしいとの依頼を受けた。そこで,原告は,リサイクル業を営む友人のFにこの話をしたところ,Fは,スイスのE社の実験工場を視察するなどし,その結果,本件システムの日本における事業化を進めたいと考えるようになった。しかし,E社から本件ライセンスを取得するには初めに100万ドルが必要である旨説明されたものの,Fにはその資金がなかったことから,Fは,原告に資金提供者を紹介してほしい旨要請した。そのため,原告は,同年夏ころ,Bに対し,本件システムの事業化の話を持ち掛け,本件システムを我が国の自治体に売却することにより短期間に大幅な利益が得られる見込みであること,E社から本件ライセンスを取得するには300万ドルが必要であることなどを説明し,資金提供者の確保を要請した。 (3) 原告の要請を受けたBは,Jロータリークラブの会員として原告とも面識のあるCに資金提供を呼び掛けることにした。Cは,銀座で宝石店を営む資産家であり,Bは,Cから,当時約1億8000万円の融資を受けていた。Bは,平成2年9月ころ,帝国ホテルにおいて,原告と共にCと面談し,本件システムの事業化計画について説明したが,その際,原告は,Cに対し,本件ライセンス取得のためには300万ドルが必要だが,本件システムの売却利益により短期間に返済することができる旨説明し,資金の提供方を要請した。Cは,ロータリークラブにおける会合の話の中で原告が著名な渉外弁護士であると知っていたことから,原告の話を信用し,300万ドルを提供することにした。 (4) 原告は,資金の目処がついたため,本件システムのライセンシーとなる会社の設立を企画するとともに,本件ライセンス取得のためE社との交渉を始め,平成2年11月ころには,E社からベーシック・アグリーメントの草案を入手した。原告は,E社にライセンス料を支払う シーとなる会社の設立を企画するとともに,本件ライセンス取得のためE社との交渉を始め,平成2年11月ころには,E社からベーシック・アグリーメントの草案を入手した。原告は,E社にライセンス料を支払うためにはスイスに銀行口座を開設する必要があると考え,同年12月初めころ,Bを代理して,スイスのチューリッヒにあるジュリアス・ベア銀行本店にB口座を開設する手続をし,同月4日ころ,B口座が開設された。 (5) E社のM社長は,平成2年12月10日ころに来日した。原告がM社長と交渉した結果,同月14日,E社と設立中の会社の発起人になることになっていたF,C,O,B,G及び原告との間で,設立中の会社(D社)が本件ライセンスのライセンシーとなること,ライセンシーは平成4年から毎年1月2日に実施料100万ドルをE社に支払うこと,ライセンシーはそれとは別に平成3年1月14日までに100万ドルをE社に支払うことなどを内容とする英文のベーシック・アグリーメントが作成され,調印された。このベーシック・アグリーメントには,E社側はM社長が,ライセンシー側は,原告,F及びGの3名がそれぞれ署名した。 (6) 他方,Cは,本件ライセンスの取得に必要と言われた300万ドル相当の金員を太陽神戸三井銀行銀座支店から借り入れて調達することとし,平成2年10月ころ,同支店に融資を申し入れた。同支店の担当者は,Cに対し,本件ライセンスに関する契約の内容を説明できる者を同行するよう指示したため,Cは,原告に対し,同支店に同行して担当者にこの説明をするよう求めた。その結果,原告は,同年12月27日,Cと共に太陽神戸三井銀行銀座支店に赴き,平成3年1月14日までに300万ドルが必要なことを説明した。また,その際か遅くとも同銀行の融資決済がされた同月11日までの間に,ベーシック・アグリ 月27日,Cと共に太陽神戸三井銀行銀座支店に赴き,平成3年1月14日までに300万ドルが必要なことを説明した。また,その際か遅くとも同銀行の融資決済がされた同月11日までの間に,ベーシック・アグリーメントのコピーが銀行側に提出されたが,このベーシック・アグリーメントのコピーには,同月14日までに300万ドルをE社に支払うべきことが記載されており,E社との間で取り交わされた前記ベーシック・アグリーメントを変造したものであった。 (7) 平成3年1月7日,本件ライセンスのライセンシーとなるD社が設立された。設立の発起人は,予定されていたB,C,G,F,O及び原告の6名にPが加わった7名であった。資本金は,610万円(1株5万円の122株)であり,PとQの2名がそれぞれ5万円,Pを除く発起人6名がそれぞれ100万円を引き受けた。B,C,F,O及びPの5名が取締役に就任し,このうちB,C及びFの3名が代表取締役になり,また,原告は,監査役に就いた。D社の本店は,原告の事務所に置かれた。 (8) 原告とBは,D社にライセンス料を支払うため,チューリッヒに出張し,平成3年1月11日(現地時間),ジュリアス・ベア銀行本店を訪れ,共同名義口座を開設した。この共同名義口座は,原告とBの共同でなければ払戻し等の手続をすることができないという口座ではなく,原告とBは,いずれも単独で権利行使をすることができるものであった。原告は,渉外弁護士として英語が堪能であったが,Bは,ほとんど英語を話すことができず,むろんドイツ語,フランス語も理解できなかったので,ジュリアス・ベア銀行との交渉等は原告が行った。 (9) Cは,太陽神戸三井銀行から4億0680万円の融資を受け,平成3年1月11日,Bを通じて原告から交付された送金先のメモに基づいて,受取人をE社として ・ベア銀行との交渉等は原告が行った。 (9) Cは,太陽神戸三井銀行から4億0680万円の融資を受け,平成3年1月11日,Bを通じて原告から交付された送金先のメモに基づいて,受取人をE社として,B口座に300万ドルを送金した(乙1の6)。このメモには,B口座の口座番号のほかに,通常は「受取人E社」と訳される「infavourofE」の文字が記載されていたため,Cや送金手続をした銀行の担当者は,B口座をE社の預金口座であると誤信した。 B口座に送金された300万ドルは,同日(現地時間),電話による指図により,うち100万ドルはE社の預金口座に(乙1の21の21の2),うち100万ドルは共同名義口座に(乙1の21の21の3)それぞれ振替送金の手続がとられ,後者の100万ドルは,ジュリアス・ベア銀行の投資運用にゆだねられた。また,同月14日(現地時間),電話による指図により,100万ドルが残ったB口座から,日本円で5000万円(37万6459ドル余)の払戻手続,香港のSの預金口座に20万ドル(乙1の21の21の4),ロンドンのTの預金口座に2万9350ドル(乙1の21の21の5),香港のU社の預金口座に39万3000ドル(乙1の21の21の6)の各送金手続がされた。Sは,H社の従業員であり,U社は,H社の関連会社であった。 (10) 平成3年1月15日(現地時間),原告とBは,ジュリアス・ベア銀行を訪れ,同銀行から,前日に払戻手続をした5000万円を受け取った。5000万円の受領書(乙1の21の20の2)には原告とBが署名した。 原告とBは,払戻しを受けた5000万円を2500万円ずつ分けて日本に持ち帰り,原告は,自分が持ち帰った2500万円を自己のために費消し,Bは,2500万円をH社の運転資金として費消した。30 原告とBは,払戻しを受けた5000万円を2500万円ずつ分けて日本に持ち帰り,原告は,自分が持ち帰った2500万円を自己のために費消し,Bは,2500万円をH社の運転資金として費消した。300万ドルがどのように処理されたかについては,平成5年12月になるまで,原告もBも,D社の他の取締役には説明しなかった。 (11) 平成4年1月に開かれたD社の取締役会において,E社に支払うべきライセンス料が議案に上った。その際,Bから,原告がE社に支払った旨の説明があったため,他の取締役は,これを了承した。同月にE社に支払うべきライセンス料の100万ドルは,原告が同月13日ジュリアス・ベア銀行にファックスで指示して共同名義口座からE社に送金されたものである(乙1の21の20の3,1の21の21の1)が,共同名義口座の100万ドルはジュリアス・ベア銀行の投資運用の結果3万ドル余りの損失を出していたため,同銀行の貸越しとして処理された。 (12) 平成5年1月に開かれたD社の取締役会では,議長となったBが同月にE社に支払うべきライセンス料は支払期限が過ぎているが資金の手当をいかにしたらよいかと発問し,これに対し,Cが期限を延ばしてもらうわけにはいかないのかと発言したため,BがE社と交渉する旨答えた。同年2月12日に開かれた取締役会には原告も参加したが,その席上,議長となったBから原告に同年分のライセンス料の支払延期の交渉が要請され,原告は,E社に手紙を書くことを了承した。 (13) 平成5年9月になり,E社から,D社に対し,本件ライセンスに関する契約を解約する旨の通知があった。驚いたCらは,V弁護士に調査を依頼し,同弁護士が同年12月9日ころスイスのジュリアス・ベア銀行に赴き調査をしたところ,Cが平成3年1月11日にB口座に送金した300万 を解約する旨の通知があった。驚いたCらは,V弁護士に調査を依頼し,同弁護士が同年12月9日ころスイスのジュリアス・ベア銀行に赴き調査をしたところ,Cが平成3年1月11日にB口座に送金した300万ドルのうち,100万ドルはE社に支払われたものの,100万ドルは共同名義口座に振り替えられて投資運用に回されたこと,残りの100万ドルのうち37万6459ドル余りが日本円5000万円で払い戻され,原告とBが持ち帰り,残りの62万ドル余りはSほか2名の預金口座に送金されていたことが判明した。Cは,300万ドル全額が同月14日にライセンス料としてE社に支払われたものと思っていたため,上記の調査結果に驚き,Bに問いただした結果,Bは,5000万円を原告とBとで2500万円ずつに分けて,それぞれブランデーの箱に詰めて日本に持ち帰ったことを明らかにした。 (14) 平成5年12月22日,D社の取締役会が開かれた。これには原告も出席したが,その中で,300万ドルの使途についての原告の責任や今後の善後策などが話し合われた。原告は,B口座から5000万円の払戻しを受け,そのうち2500万円を原告が費消したことは認めたが,この2500万円はBからH社の報酬としてもらったものだと弁解したものの,H社に対しては報酬の請求書を出していないこと,受け取った2500万円についてもH社に領収書は発行していないことを認めた。 (15) Cは,平成6年8月,E社に支払う金員は実際は100万ドルでよかったのに原告から300万ドルが必要だとだまされたとして,原告及びBに対し2億7120万円(平成3年12月当時の200万ドルに相当する金額)の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起し,原告は,これを争ったものの(Bは,争わなかった。),同裁判所は,平成10年12月21日,Cの原 円(平成3年12月当時の200万ドルに相当する金額)の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起し,原告は,これを争ったものの(Bは,争わなかった。),同裁判所は,平成10年12月21日,Cの原告に対する請求を全額認容する旨の判決(乙4)を言い渡した。原告は,この判決に対して控訴をしたが,控訴審である東京高等裁判所は,平成12年2月10日,原告の控訴を棄却する旨の判決(乙5)を言い渡した。 これとは別に,Cは,平成8年2月9日,東京地方検察庁に対し,原告及びBの両名を詐欺罪で告訴したため,同検察庁は,原告及びBの両名を詐欺罪で起訴した。 2 争点1について(1) 平成3年1月15日,ジュリアス・ベア銀行のB口座から日本円で5000万円が払い戻され,原告がそのうちの2500万円を受領してこれを費消したことは,原告の認めるところである。 また,上記1で認定したところによれば,原告は,D社が設立されるまでは,D社を設立して本件ライセンスをE社から取得し,日本において本件システムの販売等を事業化しようとしていたF,C,Bらから本件ライセンス取得等に関する法律事務を委任され,D社設立後は,同社から同様の法律事務を委任されるとともに同社の監査役に就任したこと,B口座に送金された300万ドルは,Cが銀行から融資を受けてD社に貸し付けたものであって,B口座は,実質的にはD社の口座であったが,原告は,これらのことを知っていたこと,Cは,平成5年12月に至るまで,平成3年1月14日までにE社に支払うべきライセンス料は300万ドルであると思っていたこと,以上の事実を認めることができる。 (2) 原告の主張は,Cから借りることにした300万ドルという金額はBが決めたものであり,Bの説明によれば,そのうちの200万ドルが初年度と2年目のライ たこと,以上の事実を認めることができる。 (2) 原告の主張は,Cから借りることにした300万ドルという金額はBが決めたものであり,Bの説明によれば,そのうちの200万ドルが初年度と2年目のライセンス料で残りの100万ドルはD社の運転資金ということであった,B口座から5000万円を引き出したのはBであり,原告は,この引き出しについて事前に相談されることもなく,Bは,5000万円はD社の者をスイスにあるE社の実験工場に派遣する経費や今後のD社の運転資金として使用すると説明していた,Bから2500万円を受け取った時,D社の運転資金をH社の債務の支払に流用するものであることは分かっていたが,小さな会社ではこのようなことはよくあることであるし,流用についてはCの了解を得ているものと思った,というものであって,要するに,2500万円はBからH社の報酬としてもらったものであり,弁護士の品位を失うべき非行に当たらないというものである。原告のこの主張によれば,本件ライセンス取得のために300万ドルが必要だと偽ってCにこれを出捐させ,B口座に送金されてきた300万ドルの一部をD社以外のために流用することにしたのはいずれもBであって,原告自らは何らやましいところはないかのようである。 (3) しかしながら,原告の上記主張は,容易にうなずくことができない。その理由は,以下のとおりである。 アまず,原告は,Cから借りることにした300万ドルという金額はBが決めたと主張するが,上記1で認定したように,本件システムの日本における事業化の中心的な役割を果たしたのは原告であり,原告は,Fから資金提供者の紹介を依頼されて,Bに対して資金提供者の確保を要請しているのであるが,その際には所要の資金額が当然に提示されたものと考えられ,所要の資金額の提示なく資金提供 は原告であり,原告は,Fから資金提供者の紹介を依頼されて,Bに対して資金提供者の確保を要請しているのであるが,その際には所要の資金額が当然に提示されたものと考えられ,所要の資金額の提示なく資金提供者の確保を要請したとするのは不自然である。原告の上記主張は,採用することができない。 イ原告は,B口座からの香港等への送金や5000万円の払戻しはBがやったもので原告は関与していないと主張し,原告は,Bは紙に書いたものを銀行の担当者に見せて送金していたと供述をする。しかしながら,証拠(乙1の21の21の4ないし6)によれば,B口座から香港等への送金手続は,いずれも,平成3年1月14日電話による指図でされていることが認められる上,このような指図を英会話のできないBが単独で行ったとは考え難いところである。また,原告は,5000万円は,同月15日にBが払い戻したというが,スイスの銀行で即座に日本円5000万円が都合つけられたものとは考え難く,事前の指図があったと考えざるを得ない。また,5000万円の受領書(乙1の21の20の2)には,原告自身も署名しているのである。原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 ウ原告は,Bは5000万円をD社の者をスイスにあるE社の実験工場に派遣する経費や今後のD社の運転資金として使用すると説明していたとか,Bから2500万円を受け取った時にD社の運転資金をH社の債務の支払に流用するものであることは分かったが,このようなことは小さな会社ではよくあることであるし,流用についてはCの了解を得ているものと思ったなどと主張する。 しかしながら,Bは,D社のオーナーではなく,資本金の約6分の1を出資したにすぎない。また,300万ドルは,D社が事業を始めるに必要な資金としてCが銀行から融資を受けてD社 どと主張する。 しかしながら,Bは,D社のオーナーではなく,資本金の約6分の1を出資したにすぎない。また,300万ドルは,D社が事業を始めるに必要な資金としてCが銀行から融資を受けてD社に貸し付けたものである。これらのことを知悉していた原告がこのような流用はよくあることだと主張すること自体驚くべき感覚といわざるを得ない。H社の報酬としてもらったという原告の弁解も,H社に請求書を出したことはなく,2500万円についても領収書を発行していないというのであるから,容易に受け入れ難いところである。以上の事柄を勘案すると,原告の上記主張も,到底採用することができないというべきである。 (4) 上記(3)で検討したところに前記1で認定した事実を総合すれば,原告は,本件ライセンス取得のために必要だと誤信したCが銀行から融資を受けて実質的にはD社の口座であったB口座に300万ドルを送金したことを知りながら,すなわち,この300万ドルはD社がCから借り入れてBが同社のために業務上保管するに至った金員であることを知りながら,平成3年1月15日,Bと共にB口座から5000万円の払戻しを受け,そのうちの2500万円を受領して費消し,その後少なくとも平成5年12月22日の時点ではこれをD社に返還していなかったものであるから,D社から本件ライセンス取得等のための法律事務を委任され,かつ,D社の監査役にもなっていた原告のこの行為は,弁護士としての品位を失うべき非行に当たるものといわざるを得ない。 また,原告が上記300万ドルのうちから自己が2500万円を受領したことを秘匿し,平成5年12月22日に至るまでD社の取締役会ないしB以外の取締役に報告・説明しなかったことも,前記1で認定した事情の下では,同様に弁護士としての品位を失うべき非行に当たるという したことを秘匿し,平成5年12月22日に至るまでD社の取締役会ないしB以外の取締役に報告・説明しなかったことも,前記1で認定した事情の下では,同様に弁護士としての品位を失うべき非行に当たるというべきである。 3 争点2について(1) 原告は,原告がBから2500万円を受領した行為が品位を失うべき非行に当たるとしても,これについての除斥期間の始期は原告が2500万円を受領した平成3年1月15日であるから,同日から3年を経過した平成6年1月14日の経過により除斥期間が満了したと主張する。 そして,A弁護士会に対してBが原告の懲戒請求をしたのが平成6年6月20日,Cが原告の懲戒請求したのが同年7月8日であり,これらの請求に基づいて,そのころA弁護士会の綱紀委員会の調査が開始され,同委員会がB及びCの懲戒請求を一部理由があるものとして懲戒委員会の審査に付するを相当とする旨の議決したのが平成8年3月15日,この議決を受けてA弁護士会の懲戒委員会の手続が開始されたのが同年5月1日であることは,前記前提となる事実のとおりである。 そうすると,弁護士法64条にいう「懲戒の手続を開始する」とは,所属弁護士会の綱紀委員会が懲戒事由の調査を開始することをいうものと解すべきであるから(東京高裁平成12年(行ケ)第237号平成13年6月12日判決参照),原告の主張のように除斥期間の始期を原告がBから2500万円を受領した平成3年1月15日とすると,B及びCがそれぞれ懲戒請求をした時にはいずれも既に同日から3年を経過しており,2500万円の受領行為については,既に除斥期間が満了していることになる。 (2) しかしながら,弁護士法64条にいう「懲戒の事由があったとき」とは,懲戒の事由に当たる行為が終了した時を,継続する非行についてはその行為 については,既に除斥期間が満了していることになる。 (2) しかしながら,弁護士法64条にいう「懲戒の事由があったとき」とは,懲戒の事由に当たる行為が終了した時を,継続する非行についてはその行為が終了した時をいい,また,弁護士法に基づく懲戒は,弁護士が高度の法律的素養及び能力を備えたものとしてその資格を取得し,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし,誠実にその職務を行うとともに,深い教養の保持と高い品性の陶やを求められることから,このような弁護士に対する国民からの信頼を護るために,弁護士に職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったときにされるものであり,したがって,弁護士のある行為が「品位を失うべき非行」に当たるか否かは,この弁護士法の懲戒制度の趣旨にのっとり,刑法の規定や民法の不法行為の規定とは異なる観点から判断することを要するものである。 以上の観点から,弁護士が依頼者から又は依頼者のために預かった金品を返還すべき時期に依頼者に返還しない場合についてみてみると,刑法上は,当該弁護士が不法領得の意思に基づいて占有する金品を領得した時点で業務上横領罪が成立するものであり,その後依頼者に金品を返還したか否かなどは業務上横領罪の成否に関わらないのであるから,犯罪としては領得した時に行為は終わっているということができよう。民法上の不法行為も,同様である。しかしながら,弁護士法上は,弁護士が依頼者から又は依頼者のために預かった金品を返還すべき時期に依頼者に返還しないという行為は,それ自体,依頼者の弁護士に対する信頼,ひいては国民一般の弁護士全体に対する信頼を破壊するものとしてその品位を失うべき非行に当たり,不法領得の意思の有無や領得行為の態様などは非行の悪性を示すにすぎないものというべきである。したがって,弁護士が依頼者から 弁護士全体に対する信頼を破壊するものとしてその品位を失うべき非行に当たり,不法領得の意思の有無や領得行為の態様などは非行の悪性を示すにすぎないものというべきである。したがって,弁護士が依頼者から又は依頼者のために預かった金品を不法に領得した場合も,その後これを依頼者に返還するまでの間は,なお非行は継続しているのであり,除斥期間は開始しないものと解するのが相当である。もっとも,依頼者と弁護士の委任関係が終了した場合には,その終了時に預かった金品等の清算がされるのが通常であることや委任事務に係る資料の保存にも限度があること,委任関係が終了した後もいつまでも懲戒し得るというのでは弁護士は極めて不安定な立場に置かれることになり,除斥期間を設けた法の趣旨に反することにもなることにかんがみると,弁護士が依頼者から又は依頼者のために預かった金品を横領するなどしてこれを返還しない場合であっても,委任関係が終了したときは,その終了の時点から除斥期間が開始するものと解すべきである。 (3) かかる見地に立って本件をみると,前記1で認定した事実によると,少なくとも平成5年12月22日にD社の取締役会が開かれた時点では,原告とD社との委任関係は終了していなかったし,原告が領得した2500万円をD社に返還していなかったことも明らかであるから,A弁護士会の綱紀委員会の調査が開始された当時にはいまだ3年の除斥期間が経過していなかったことは明らかというべきである。 したがって,除斥期間が満了したとの原告の主張は,採用することができない。 4 争点3について原告は,本件除名処分は過酷なものであり,懲戒権の濫用である旨主張するが,既に認定した非行の内容や態様等にかんがみると,本件除名処分が過酷にすぎて懲戒権の濫用に当たるとは到底いえない。 5 結 原告は,本件除名処分は過酷なものであり,懲戒権の濫用である旨主張するが,既に認定した非行の内容や態様等にかんがみると,本件除名処分が過酷にすぎて懲戒権の濫用に当たるとは到底いえない。 5 結論以上の次第であるから,本件除名処分ひいては本件裁決に原告主張の違法は認められず,原告の本件請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4特別部裁判長裁判官石井健吾 裁判官大橋弘裁判官植垣勝裕(別紙議決書省略)
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