平成13(ワ)2432 不当利得金返還等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年7月3日 神戸地方裁判所
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判決文本文4,546 文字)

判決平成14年7月3日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第2432号不当利得金返還等請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,金126万9900円及びこれに対する平成13年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決の第1項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告の請求被告は,原告に対し,金3774万3844円及びこれに対する平成13年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 争いのない事実(1) Aは,戦後間もなくのころ,その所有の別紙物件目録1,2記載の土地(以下,「本件土地」という。)を原告に賃貸し(以下,「本件賃貸借契約」という。),そのころ,原告は,敷金として126万9900円をAに差し入れた。 (2) Aと原告は,昭和38年4月26日,本件賃貸借契約を,目的を店舗又は事務所としてのみ使用,期間を同年5月1日から30年,賃料を月額4万2330円,毎月末日限り翌月分支払との約定で更新した。そして,原告は,昭和42年9月21日,本件土地上に,別紙物件目録3記載の建物(以下,「本件建物」という。)を建築し,店舗及び事務所として使用してきた。 (3) 被告は,昭和62年3月23日,Aの相続人らから本件土地を買い受け,これに伴い,敷金の関係も含め本件土地の賃貸人の地位を承継した。 (4) 原告と被告は,平成5年4月30日,本件賃貸借契約を,以下の約定で更新し,原告は ,Aの相続人らから本件土地を買い受け,これに伴い,敷金の関係も含め本件土地の賃貸人の地位を承継した。 (4) 原告と被告は,平成5年4月30日,本件賃貸借契約を,以下の約定で更新し,原告は,更新料4500万円を被告に支払った。 目的店舗又は事務所としてのみ使用期間平成5年5月1日から30年賃料月額50万7960円毎月25日限り翌月分支払更新料 4500万円(5) 訴外B銀行は,原告が物上保証人となって昭和53年11月30日に設定した根抵当権(変更後の極度額・5000万円,債務者・訴外株式会社C,根抵当権設定登記・同年12月6日)に基づき,本件建物の競売を申し立て,神戸地方裁判所は,平成10年2月12日競売開始決定をして,競売手続を進め,その結果,訴外合資会社Dが,平成11年1月5日,本件建物を,競売により取得した。 (6) 上記競落により,原告は本件建物所有権を失うとともに,本件土地の賃借人としての地位も失った。 2 原告の主張(1) 敷金返還請求ア原告は,上記のとおり,平成11年1月5日,本件建物所有権を失い,これにより,本件土地の賃借人としての地位も失い,本件賃貸借契約から離脱した。 したがって,被告は,原告に対し,原告が本件賃貸借契約に基づき差し入れた敷金126万9900円を返還する義務がある。 イ原告は,被告に対し,平成13年11月7日送達の本件訴状により,上記敷金126万9900円の返還を催告した。 (2) 不当利得返還請求ア原告は,上記のとおり,平成11年1月5日本件賃貸借契約から離脱し 成13年11月7日送達の本件訴状により,上記敷金126万9900円の返還を催告した。 (2) 不当利得返還請求ア原告は,上記のとおり,平成11年1月5日本件賃貸借契約から離脱したが,これにより,被告は,以下に詳述するとおり,3647万3944円を不当に利得した。 原告は,平成5年4月30日の本件賃貸借契約更新の際,更新料4500万円を支払ったが,同更新料は,単なる賃料の補充だけではなく,更新後の30年間の営業上の利益もしくは場所的利益の享受に対する対価としての意味合いも包含したものとして支払ったものである。ところが,原告は,本件賃貸借契約期間満了前に本件賃貸借契約から離脱し,残存期間における上記利益の享受ができなくなったのであり,かつ,その離脱は,本件建物の競売がなされ,その結果,Dが競落し,原告がその所有権を失ったためであり,原告に帰責事由はないから,その利益を原告に享受させる必要がなくなった被告は,残存期間に対応する額の更新料を不当に利得するものにほかならない。 また,更新料は,賃貸借契約の存続を目的として授受されるものであるから,授受された当事者間で賃貸借契約が存続しなくなった以上,賃貸人が更新料授受により享受した利益を保持し続けることは信義則に反し,この利益は不当利得として返還されるべきものである。 本件賃貸借契約の期間は平成5年5月1日から30年間であるから,その期間は1万0957日間であったが,2076日が経過した平成11年1月5日に原告は本件賃貸借契約から離脱したから,その残存期間は8881日であり,その残存期間に対応する額の更新料は,3647万3944円(8881日÷1万0957日×4500万円)となる。 したがって,被告 から離脱したから,その残存期間は8881日であり,その残存期間に対応する額の更新料は,3647万3944円(8881日÷1万0957日×4500万円)となる。 したがって,被告は,原告に対し,3647万3944円を不当利得として返還すべき義務がある。 イ原告は,被告に対し,平成13年11月7日送達の本件訴状により,上記不当利得金3647万3944円の返還を催告した。 (3) よって,原告は,被告に対し,上記敷金及び不当利得金を合計した3774万3844円及びこれに対する平成13年11月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 3 被告の主張(1) 敷金返還請求について原告が有していた敷金返還請求権は,Dがこれを譲り受けたものであり,原告は,敷金返還請求権を有していない。 (2) 不当利得返還請求について更新料は,その授受によって,賃借権の更新という法律効果が発生し確定するものであり,賃貸借契約が存続する限り本来的にはその返還ということは予定されていない。のみならず,本件賃貸借契約は,原告が離脱した後もDにそのままの内容で承継されている。したがって,原告が被告に対して,更新料の返還を請求する余地はない。 第3 当裁判所の判断 1 敷金返還請求について(1) 原告が,平成11年1月5日,本件建物所有権を失い,これにより,本件土地の賃借人としての地位も失い,本件賃貸借契約から離脱したことは,当事者間に争いがない。 これに対し,被告は,原告が有していた敷金返還請求権は,本件建物の競落人であるDがこれを譲り受けたものであると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない(なお,賃貸人の交替とは異なり これに対し,被告は,原告が有していた敷金返還請求権は,本件建物の競落人であるDがこれを譲り受けたものであると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない(なお,賃貸人の交替とは異なり,賃借人の交替の場合には,当然に敷金返還請求権が旧賃借人から新賃借人に承継されるものとは認めることができない。)。 (2) 原告が被告に対し,平成13年11月7日送達の本件訴状により上記敷金126万9900円の返還を催告したことは本件記録上明らかである。 (3) 以上の事実によれば,原告の請求中,敷金126万9900円及びこれに対する平成13年11月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由がある。 2 不当利得返還請求について原告は,原告が平成5年4月30日の本件賃貸借契約更新の際に支払った更新料4500万円は,単なる賃料の補充だけではなく,更新後の30年間の営業上の利益もしくは場所的利益の享受に対する対価としての意味合いも包含したものとして支払ったものであるから,原告がその責めに帰すべき事由がないのに本件賃貸借契約期間満了前に本件賃貸借契約から離脱し,上記利益を享受できなくなり,一方,被告はその利益享受を原告にさせる必要がなくなった以上,被告は,前記更新料のうち,利益が享受できなくなった残存期間に対応する額についてはこれを不当に利得するものにほかならず,これを返還すべき義務があると主張する。 しかし,更新料の性格が原告の主張どおりであるとしても,契約更新の効果は,更新料の支払いを伴った契約更新がなされた時点で確定し,その後,本件建物のDによる競落により,原告が本件賃貸借契約から離脱することにはなったが,その更新された本件賃貸借契約は,Dに引き継がれ,原告は,Dに の支払いを伴った契約更新がなされた時点で確定し,その後,本件建物のDによる競落により,原告が本件賃貸借契約から離脱することにはなったが,その更新された本件賃貸借契約は,Dに引き継がれ,原告は,Dに対して,上記利益の享受をさせなければならないのであるから,原告に不当利得があるとは認めることができない。 もっとも,証拠(甲5ないし8)及び弁論の全趣旨によれば,本件建物の競売手続において,更新料4500万円の支払があったことが,最低売却価格の決定等の際に具体的に考慮されていたかどうかは必ずしも定かではない。しかし,本件建物の競売手続において,本件建物が借地権付建物であり,本件賃貸借契約は買受人に承継されるものとして評価がなされたことは前掲証拠及び弁論の全趣旨により明らかであるから,その更新料の支払が具体的に考慮されたのかどうかの点が必ずしも定かではないとしても,そのことによって,原告に不当利得はないとの前記認定が左右されるものとは認めることができない。 また,原告は,本件建物を競落したDに対し,借地借家法に基づき本件建物及び本件土地賃借権の譲受申立てをしたこと(乙3。当庁平成12年(借チ)第14号事件)が認められるが,同事件においても,Dが原告から本件土地の賃借権(借地権)を承継したことを前提として,その譲受価額が算定されているところであり(乙3),この点からしても,被告に更新料の不当利得が生じているものとは認められない。 なお,原告は,信義則上も被告には不当利得があるとも主張するが,不当利得が生じているものとは認められないことは前記のとおりであるし,その他,信義則上不当利得があると認めるべき事情があるとも認められない。 以上のとおりで,被告に不当利得があるとは認められないから,原告の請求中,不 められないことは前記のとおりであるし,その他,信義則上不当利得があると認めるべき事情があるとも認められない。 以上のとおりで,被告に不当利得があるとは認められないから,原告の請求中,不当利得の返還に関する部分は,その余について判断するまでもなく理由がない。 3 結論よって,原告の請求は,敷金の返還に関する部分はこれを認容し,不当利得の返還に関する部分はこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官上田昭典

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