上記の者に対する火薬類取締法違反(変更後の訴因火薬類取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反、爆発物取締罰則違反)、武器等製造法違反被告事件について、当裁判所は、検察官林正章及び国選弁護人中泉絵莉子各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中450日をその刑に算入する。 札幌方面白石警察署で保管中の黒色火薬3箱(令和5年領第162号符号64ないし66)、札幌地方検察庁で保管中のパイプ銃1丁(令和5年領第162号符号46)、剣1本(令和5年領第143号符号15)、東京地方検察庁立川支部で保管中の空気銃1丁(令和5年領第143号符号3)、準空気銃2丁(令和5年領第143号符号4、5)、剣及び飛出しナイフに該当する刀剣類2本(令和5年領第143号符号12、13)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 経済産業大臣の許可を受けないで、かつ、法定の除外事由がないのに、令和4年5月頃、札幌市甲区(住所省略)当時の被告人方において、鉄パイプ等を加工し組み合わせるなどして銃砲であるパイプ銃砲1丁を製造し第2 1 法定の除外事由がないのに、令和4年10月29日、同所において、⑴ 火薬類である黒色火薬合計約315.8グラム(令和5年領第162号符号64ないし66はその鑑定残量)を所持し⑵ 砲である前記パイプ銃砲1丁(令和5年領第162号符号46)を所持し⑶ 金属性弾丸を発射する機能を有する空気銃1丁(令和5年領第143号符 号3)、剣及び45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフに該当する刀剣類2本(刃渡り約9.2センチメートル及び刃渡り約8.3センチメートル。令和5年領第143号符号12、13)及び剣に該当 3)、剣及び45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフに該当する刀剣類2本(刃渡り約9.2センチメートル及び刃渡り約8.3センチメートル。令和5年領第143号符号12、13)及び剣に該当する刀剣類1本(刃渡り約8.2センチメートル。令和5年領第143号符号15)を所持し⑷ 準空気銃2丁(令和5年領第143号符号4、5)を所持し 2 人の身体財産を害する目的をもって、同日、同所において、爆発物であるヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(通称HMTD)合計約127.6グラムを所持した。 (証拠の標目) (省略)(事実認定の補足説明)第1 判示第2の1⑵の事実(パイプ銃砲1丁の不法所持)について弁護人は、被告人が所持した判示第2の1⑵のパイプ銃砲(以下「本件パイプ銃砲」という。)が銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」ともいう。)にいう「砲」(社会通念上、金属性弾丸を発射する機能を有する武器としての装薬銃砲のうち、口径20ミリメートル以上のものをいうと解される。)に該当することは特に争わないものの、被告人は本件パイプ銃砲の口径が20ミリメートル以上であることの認識はなかったことなどから、同法31条の3第1項前段の拳銃等の不法所持罪の故意を欠く旨主張し、被告人もこれに沿う供述をするので、以下検討する。 1 証拠上認定できる事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件パイプ銃砲は、鉄パイプ等の部品を組み合わせて製造されたもので、外筒(機関部)に銃把に相当する筒及び撃針付きの蓋を接続したものと、銃身(砲身)に当たる内筒で構成されている。内筒の口径は、先端側及び機関部側でいずれも最小21.2ミリメートル、最大21.5ミリメートルである。本件パイプ銃砲は、散弾銃用装弾を充填した内筒を外筒に押し込むこと に当たる内筒で構成されている。内筒の口径は、先端側及び機関部側でいずれも最小21.2ミリメートル、最大21.5ミリメートルである。本件パイプ銃砲は、散弾銃用装弾を充填した内筒を外筒に押し込むことにより、雷管が起爆し、散弾を 発射する機能を有し、その散弾には殺傷能力が認められる。 被告人方からは、本件パイプ銃砲のほか、12ゲージの薬きょう2個が発見されており、そのきょう体径は約20.6ミリメートル又は約20.7ミリメートル、きょう底径はいずれも約22.4ミリメートルで、いずれも本件パイプ銃砲に適合するものである。 ⑵ 被告人は、鉄パイプで威力が強い銃を製造して自殺に用いることを思い立ち、12ゲージの散弾を発射できるパイプ銃砲を製造しようと考え、令和4年2月から同年3月頃、12ゲージの空薬きょうを購入し、さらに、12ゲージの薬きょうをちょうど入れることができる前記内筒を含め、材料を自ら用意した上、同年5月頃、本件パイプ銃砲を製造し、同年10月29日まで保管していた。なお、被告人は、入手した12ゲージの空薬きょうの内径を実際に測るなどして、その内径は18. 5ミリメートルであると確認していた。 2 検討⑴ 前記認定事実によれば、本件パイプ銃砲は、銃刀法所定の「砲」に該当すると認められる。そして、被告人は、前記のとおり、自ら材料を準備して本件パイプ銃砲を製造し、所持していたのであるから、銃身である前記内筒の口径を含め、本件パイプ銃砲の形態やおおよその寸法を把握していたと認められる。加えて、被告人は、実測により12ゲージの薬きょうの内径が18.5ミリメートルであることを知った上で、12ゲージの散弾を前記内筒に装填して発射できるように本件パイプ銃砲を製造したことからすれば、前記内筒の口径が12ゲージの薬きょうの内径を超えることを認 18.5ミリメートルであることを知った上で、12ゲージの散弾を前記内筒に装填して発射できるように本件パイプ銃砲を製造したことからすれば、前記内筒の口径が12ゲージの薬きょうの内径を超えることを認識していたことは明らかで、同口径が20ミリメートル以上であることも未必的に認識していたと認められる。 以上によれば、被告人について拳銃等(「砲」)の不法所持罪の故意に欠けるところはなく、同罪が成立すると認められる。 ⑵ これに対し、弁護人は、被告人は、本件パイプ銃砲で12ゲージの散弾を発射するためには、最大で1ミリメートル程度の薬きょう底の出っ張り部分が前記内 筒の縁に引っ掛かる必要があるから、本件パイプ銃砲の口径は最大で19.5ミリメートル程度であると認識していた旨主張する。しかしながら、上記部分の寸法に関する被告人の供述は感覚に基づくものにすぎない上、被告人が所持していた、本件パイプ銃砲に適合する前記1⑴の薬きょうのきょう体径が20ミリメートルを超えることなどに照らせば、被告人が、本件パイプ銃砲の口径が20ミリメートル以上である可能性を認識していたことに疑いは生じないというべきである。 その他、弁護人は、被告人は「砲」は戦闘機等に載せて使用する必要がある強い威力を有するものという認識であったことなどを指摘するが、いずれも前記認定・判断を妨げるものではない。 第2 判示第2の1⑶の事実(空気銃1丁の不法所持)について弁護人は、被告人が所持した判示第2の1⑶の空気銃(以下「本件空気銃」という。)が銃刀法上の「空気銃」(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるもの)に該当することは争わな て弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるもの)に該当することは争わないものの、被告人は本件空気銃が上記の値を超える威力を有することの認識がなかったから、空気銃の不法所持罪(銃刀法31条の16第1項1号)は成立しない旨主張し、被告人もこれに沿う供述をするので、以下検討する。 1 証拠上認定できる事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件空気銃は、充填したガスのガス圧により弾丸を発射する構造を持ち、鋼球を弾丸として発射した場合の運動エネルギーの値(銃砲刀剣類所持等取締法施行規則が定める測定方法による。)は12.39ジュールであり、人の生命に危険を及ぼし得るものとして同規則で定める運動エネルギーの値(5.57ジュール)を超える。 ⑵ 被告人は、インターネットで本件空気銃を購入し、発射する弾丸の威力を高 めるために、内部の部品を交換して改造していた。また、被告人は、改造後の本件空気銃で鋼球を発射し、厚さ約1センチメートルの桐のまな板を2枚重ねにしたものを貫通したことを確認していた。 2 検討前記のとおり、被告人による改造の結果、本件空気銃で発射した鋼球の運動エネルギーの値は、人の生命に危険を及ぼし得るものとして前記規則で定める値の2倍を超えるものとなっていたところ(よって、本件空気銃が銃刀法上の「空気銃」に該当することは明らかである。)、被告人は、実際に本件空気銃で鋼球の弾丸を発射し、厚さ合計約2センチメートルもの木の板を貫通することも確認していたのであるから、本件空気銃で発射した弾丸が人の生命に危険を及ぼし得る威力を有することも当然認識していたものと認められる。したがって し、厚さ合計約2センチメートルもの木の板を貫通することも確認していたのであるから、本件空気銃で発射した弾丸が人の生命に危険を及ぼし得る威力を有することも当然認識していたものと認められる。したがって、被告人について空気銃の不法所持罪の故意が認められ、同罪が成立することは明らかというべきである。 これに対し、被告人は、本件空気銃により発射された弾丸の運動エネルギーを測定したことはなかった、実銃でも殺傷能力がないものが存在したという話に触れたことがあったなどと供述するが、前記認定を何ら妨げるものではない。 その他弁護人の主張を検討しても、前記認定・判断を左右するものはない。 第3 判示第2の1⑶の事実(剣に該当する刀剣類1本の不法所持)について弁護人は、被告人が所持した判示第2の1⑶の刀剣類1本(以下「本件ナイフ」という。)は銃刀法2条2項の「剣」には該当せず、仮に該当するとしても、被告人は本件ナイフが「剣」であることの認識を欠き、刀剣類の不法所持罪(銃刀法31条の16第1項1号)は成立しない旨主張するので、以下検討する。 1 証拠上認定できる事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件ナイフの形状は、別添図面(図面省略)のとおりであり、その寸法等は、開刃した状態で全長約33.2センチメートル、図面に示す刃渡りは約8.2センチメートル、「刃区(はまち)1」における刀身の幅及び最大厚はそれぞれ約1. 9センチメートル及び約3.7ミリメートルであり、図面の「切先」から「刃区2」までの刃先には刃渡り5.5センチメートルを超える刃が付けられている。他方、図面の「切先」から「刃区1」までの間の刃先には刃が付けられておらず、刃先に向けて薄い疑似刃になっている。また、本件ナイフの刀身の材質は鋼である。 ⑵ 本件ナイフの える刃が付けられている。他方、図面の「切先」から「刃区1」までの間の刃先には刃が付けられておらず、刃先に向けて薄い疑似刃になっている。また、本件ナイフの刀身の材質は鋼である。 ⑵ 本件ナイフの刀身の材質は、硬い金属である鋼(ステンレス)であって、前記疑似刃の部分に刃を付けることが可能であり、一般人でも、ベルトサンダー等の市販の工具を用いて厚みを削るなどすれば、合計4時間程度で前記疑似刃の部分に物を切ることができる程度の刃を付けることが可能である。 なお、上記の認定はAの当公判廷における証言に基づくものであるところ、Aは刃物製造・販売業を営み、刃物製造に関する十分な知識と経験を有している上、本件ナイフの実物も確認して証言していることなどに照らし、その証言は十分信用できる。 ⑶ 被告人は、インターネットを通じて本件ナイフを購入し、これを手に取り、その刃を開くなどして、その形状や材質等も認識していた。なお、被告人は、鋼質性の刃物の疑似刃について、削ることによって刃を付けることが可能なものもあるという認識を有していた。 2 検討⑴ 本件ナイフは、別添図面のとおり、刃先が鋭く、おおむね左右均整の両刃の形状を備えているなど、社会通念上、「剣」の形態を備えていると認められる。 また、本件ナイフの刀身は鋼質性であって、その一方には刃が付けられている上、前記疑似刃の部分についても、一般人が市販の工具を用いて比較的容易に刃を付けることができ、ある程度の加工により刃物となり得るものと認められる。 以上によれば、本件ナイフは、社会通念上「剣」というにふさわしい形態及び実質を備えており、銃刀法の「剣」に該当すると認められる。 そして、被告人は、本件ナイフの形状や材質等、その外形上の特徴を認識していたのであるから、「剣」の不法所持罪の故意に欠けると わしい形態及び実質を備えており、銃刀法の「剣」に該当すると認められる。 そして、被告人は、本件ナイフの形状や材質等、その外形上の特徴を認識していたのであるから、「剣」の不法所持罪の故意に欠けるところもなく、被告人について 刀剣類の不法所持罪が成立することは明らかである。 ⑵ この点、弁護人は、本件ナイフは、片側が疑似刃になっていて両刃ではなく、片刃の「刀」等より殺傷能力が高いわけでもないから、「剣」に該当しないなどと主張するが、独自の見解に基づく主張といわざるを得ず、採用できない。 その他、弁護人が主張する点を検討しても、前記の認定・判断は左右されない。 第4 判示第2の2の事実(爆発物であるHMTDの所持)について弁護人は、被告人が所持したHMTDは、①治安を妨げ又は人の身体財産を害する目的を果たすことが可能な程度の危険性はなく、爆発物取締罰則上の「爆発物」に該当しない、②被告人には人の身体財産を害する目的はなかった旨主張するので、以下検討する。 1 証拠上認定できる事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ HMTDの発見状況等警察官は、令和4年10月29日、被告人方の捜索差押えを実施した際、居室内のテーブル上に蓋付き長方形型プラスチックケース入りのHMTD(乾燥後の重量約24.03グラム。以下「HMTD①」という。)、台所の調理台下収納内に蓋付き正方形型プラスチックケース入りの水に浸かった状態のHMTD(乾燥後の重量約28.79グラム。以下「HMTD②」という。)、蓋付き円筒型プラスチックケース入りの水に浸かった状態のHMTD(乾燥後の重量約74.78グラム。以下「HMTD③」という。)を発見し、いずれも任意提出を受けて領置した。この際、HMTD①は乾燥していたが、爆発を防止するために水を流し込ん 浸かった状態のHMTD(乾燥後の重量約74.78グラム。以下「HMTD③」という。)を発見し、いずれも任意提出を受けて領置した。この際、HMTD①は乾燥していたが、爆発を防止するために水を流し込んで湿潤する措置がとられた。 被告人方は、住宅街に位置する4階建て共同住宅1階の1室であり、南東側及び南西側に窓が設けられ、これらの窓は隣接する建物ないし道路に面していた。また、被告人方は賃貸物件で、被告人以外の者が所有していた。 ⑵ HMTDの爆発実験結果等 令和5年5月、科学警察研究所において、HMTD①ないし③について鑑定を行うに際し、爆発実験が行われたが、その内容は以下のとおりであった。 HMTD①ないし③につき、乾燥作業を施し、被告人方での発見時と同等の各プラスチック容器に入れて、約90センチメートル×約90センチメートル、厚さ約9ミリメートルのベニヤ板(底部)の上に載せ、同サイズのべニヤ板でその周囲及び上部を囲んだ上で、各プラスチック容器内に設置した点火玉により起爆した。 すると、HMTD①ないし③はいずれも爆発し、これらを載せていた底部のべニヤ板はいずれも大きく破損し、約9ないし16センチメートル×約13ないし17センチメートルの穴が開いた。 HMTD①ないし③在中の各プラスチック容器は爆発により破片化し、HMTD①では、ベニヤ板を貫通した破片はなかったものの、周囲のべニヤ板4枚に各20か所以上の破片の衝突痕が認められ、その深さは数ミリメートル程度であった。また、HMTD②及び③については、その破片が、HMTD②で2か所、HMTD③で8か所、周囲又は上部のベニヤ板を貫通していた。 ⑶ 被告人のHMTD所持の経緯等被告人は、一瞬で確実に自殺できる方法として爆弾を作ろうと考え、HMTDを製造することに決め、令和3年 MTD③で8か所、周囲又は上部のベニヤ板を貫通していた。 ⑶ 被告人のHMTD所持の経緯等被告人は、一瞬で確実に自殺できる方法として爆弾を作ろうと考え、HMTDを製造することに決め、令和3年10月以降、HMTDを複数回にわたって製造し、HMTD①ないし③の3つに分けて、被告人方で所持していた。被告人は、HMTDを製造するに当たり、約50グラムのHMTDが爆発する動画を見てその威力を把握するなど、インターネットで集めた情報により、HMTDが高性能爆薬であることを認識していた。 被告人は、製造したHMTDについて、着火したり、金づちで叩いたりする実験を行い、その威力や性質を確認したが、上記実験を行う際には、HMTDが爆ごう(後記参照)を起こさないように、ごく少量のHMTDを使用するにとどめていた。 また、被告人は、不意に爆ごうすると危険であると考え、HMTD②及び③を水に浸して保管し、さらに、川や海まで持ち出して処分することなども考えたものの、 安全に処分できる確証が持てず、被告人方で所持し続けていた。そして、被告人は、前記⑴の捜索差押えの際には、HMTDが何らかの拍子に爆ごうを起こす可能性も否定できないと考え、警察官に対し、HMTD①ないし③の存在を自ら申告した。 2 Bの鑑定意見等⑴ 前記1⑵の爆発実験等を実施した科学警察研究所の技官であるB作成の鑑定書及び意見書並びに同人の証言要旨は以下のとおりである。 ア HMTDの性質等についてHMTDは爆ごうを起こす物質である。爆ごうとは急激に圧力を発する爆発現象の一種で、反応の伝わり方が非常に早く、破壊力がすさまじいものを指す。爆ごうでは、1秒間に4000ないし8000メートルもの速さで反応が伝わり、非常に大きな圧力波が発生し、反応部分では数十万気圧もの圧力になる。爆ご 伝わり方が非常に早く、破壊力がすさまじいものを指す。爆ごうでは、1秒間に4000ないし8000メートルもの速さで反応が伝わり、非常に大きな圧力波が発生し、反応部分では数十万気圧もの圧力になる。爆ごうを起こす物質としては、他にダイナマイトや軍用爆薬のTNTがある。HMTDは爆ごうを起こすと、直接接している面に数十万気圧という圧力がかかる上、爆風が発生する。 HMTDと同程度の爆風を発生させるTNTで計算した場合ではあるが、HMTD24グラムでも爆発させた場合、2メートルほど離れた位置の窓ガラスは割れ、1メートル程度の距離にいる人に対しては、肺を損傷して死に至ってもおかしくない程度の圧力が胸に生じ得る。 HMTDは感度が高く、少しこする、熱を少し加えるなどの弱い刺激で簡単に爆ごうする大変危険な物質でもある。 HMTDは、水と混ざっても、その化学的性質や構造が変わるような化学反応を起こすことはないが、化学反応が伝わりにくくなり、簡単な刺激で爆発する可能性は大変低くなる。ただし、化学変化は通常起きないので、コーヒーフィルターなどで水を取り除くなどして乾燥させれば、HMTD本来の性質が復元される。 イ前記爆発実験の結果及び考察等について前記爆発実験では、HMTD①ないし③を爆発させた際の接触面、プラスチック容器の破片、爆風の各威力の評価を行った。底部のべニヤ板の破損状況、前記破片 の細かさ等から、各HMTDは爆ごうを起こしたと判断した。 プラスチック容器の破片の威力は、銃器の弾丸の評価に準じて評価したもので、ベニヤ板を貫通した場合は、弾丸と同様の殺傷能力、すなわち人を死に至らしめるほどの威力があるといえる。HMTD①では、ベニヤ板を貫通した破片はなかったものの、その衝突痕を見ると人体を傷つけ得る威力といえる。HMTD①と、HM 丸と同様の殺傷能力、すなわち人を死に至らしめるほどの威力があるといえる。HMTD①では、ベニヤ板を貫通した破片はなかったものの、その衝突痕を見ると人体を傷つけ得る威力といえる。HMTD①と、HMTD②及び③の実験結果に差異が生じたのは、HMTD①は乾燥作業が不十分であったためと考えられる。 ⑵ 信用性の検討Bは、大学院理工学研究科の修士課程を修了後、火薬学会、法科学技術学会、日本化学会に所属し、現在、科学警察研究所法科学第二部爆発研究室室長を務めるなど、爆発物に関する十分な知見を有する専門家である上、前記鑑定書等の内容に不合理な点もないから、同人の証言や鑑定意見は十分信用することができる。 3 検討⑴ 爆発物該当性についてア前記認定のとおり、HMTDは、すさまじい破壊力を有する爆ごうを起こす物質であり、HMTD①相当量の24グラム程度を単体で爆発させた場合でも、その爆風により、1メートル程度の距離にいる人の肺を損傷し、死亡させる可能性があるほどの高い威力を有する。実際、被告人が所持していたHMTD①ないし③も、前記爆発実験において、いずれも爆ごうを起こし、その接触面が大きく破壊された上、各HMTD在中の各プラスチック容器は破片化し、HMTD②及び③については、その破片が周囲や上部のベニヤ板を貫通し、銃器の弾丸に匹敵するほどの高い威力が認められたほか、HMTD①についても、その破片に人体を傷つけるに足る威力が認められた。以上によれば、HMTD①ないし③は、いずれもその爆発作用そのものによって人の身体財産を害するに足る十分な破壊力を有し、爆発物取締罰則上の「爆発物」に該当すると認められる。 イこれに対し、弁護人は、HMTD②及び③については、水に浸した状態で保 管されていたから、爆発の危険性はほとんどなく 力を有し、爆発物取締罰則上の「爆発物」に該当すると認められる。 イこれに対し、弁護人は、HMTD②及び③については、水に浸した状態で保 管されていたから、爆発の危険性はほとんどなく、「爆発物」に該当しない旨主張する。しかしながら、B証言等によれば、HMTDは、水と混ざった状態では、弱い刺激で爆ごうを起こす可能性は非常に低くなるものの、その構造等に変化を来すような化学反応を起こすわけではなく、一般的な方法で乾燥させることにより、上記のような本来の性質を容易に復元できるというのであって、このことはHMTD②及び③を用いた前記爆発実験の結果によっても裏付けられている。そうすると、HMTD②及び③が水に浸して保管されていたことは、これらが「爆発物」に該当すると認めることの妨げとはならないというべきである。 また、弁護人は、被告人はHMTD①を少量ずつ使用することを考えていたので、前記爆発実験の結果はHMTD①の危険性を立証するものではないなどと主張するが、「爆発物」に該当するか否かは、その物の客観的性質等に照らして判断すべきであって、採用できない。 その他弁護人が主張する点を考慮しても、前記認定・判断を妨げるものはない。 ⑵ 人の身体財産を害する目的についてア爆発物取締罰則3条、1条所定の人の身体財産を害する目的があるというためには、人の身体財産を害するという結果の発生を未必的に認識し、認容することをもって足りると解される。 被告人は、前記1⑶の動画を視聴するなどして、HMTDが弱い刺激で簡単に爆ごうを起こす高性能爆薬であり、高い威力を有することを理解していたのみならず、自ら製造したHMTDを用いた実験を行ってその性質を認識し、その後、不意に爆ごうすることを恐れてHMTD②及び③を水に浸した後でさえ、安全に処分でき り、高い威力を有することを理解していたのみならず、自ら製造したHMTDを用いた実験を行ってその性質を認識し、その後、不意に爆ごうすることを恐れてHMTD②及び③を水に浸した後でさえ、安全に処分できる確証が持てずにそれらの所持を続け、前記捜索差押えの際にも、爆ごうを起こすことを懸念してHMTD①ないし③の存在を自ら警察官に申告するなど、慎重な取扱いを継続していたことなどが認められ、これらの事実に照らせば、被告人は、HMTD①ないし③が現実に爆ごうを起こす可能性があるとの認識を有していたことは明らかといえる。しかるに、被告人は、前記1⑴のような被告人方でHMTD①な いし③の所持を続けていたのであるから、一たびHMTD①ないし③が爆ごうを起こせば、他人の財産である被告人方やその設備が損壊するなどし、更には、被告人方の周囲に存在する他人の身体や財産を害する結果が発生することについても未必的に認識し、かつ認容していたと認められる。 以上によれば、被告人は、人の身体財産を害する目的をもって、HMTD①ないし③を所持したものと認められる。 イこれに対し、弁護人は、被告人は自殺に使用することのみを目的にHMTDを所持していたのであるから、人の身体財産を害する目的がなかった旨主張する。 しかしながら、被告人が前記HMTDを所持していた主な理由が自殺目的であったにせよ、この目的は、他人の身体財産を害する結果の発生の未必的認識、認容とは併存し得るものであるから、前記認定を妨げる事情とはいえず、採用できない。 (法令の適用)罰条判示第1の行為武器等製造法31条1項、4条判示第2の1⑴の行為火薬類取締法59条2号、21条判示第2の1⑵の行為銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第1項前段、3条1項判示第2 行為武器等製造法31条1項、4条判示第2の1⑴の行為火薬類取締法59条2号、21条判示第2の1⑵の行為銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第1項前段、3条1項判示第2の1⑶の行為包括して銃砲刀剣類所持等取締法31条の16第1項1号、3条1項判示第2の1⑷の行為包括して銃砲刀剣類所持等取締法32条4号、21条の3第1項判示第2の2の行為爆発物取締罰則3条科刑上一罪の処理判示第2 刑法54条1項前段、10条(1個の行為が5個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い爆発物取締罰則違反の罪の刑で処断(ただし、罰金刑の任 意的併科については、火薬類取締法違反の罪の刑のそれによる。))刑種の選択判示第2の罪懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条没収主文掲記の黒色火薬3箱、パイプ銃1丁、剣1本、空気銃1丁、準空気銃2丁、剣及び飛出しナイフに該当する刀剣類2本について刑法19条1項1号、2項本文(それぞれ判示第2の1⑴ないし⑷の各犯罪行為を組成した物で、いずれも被告人以外の者に属しない)訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由) 1 まず、爆発物不法所持の犯行(判示第2の2)についてみると、HMTDは、軍用爆薬に匹敵するほどの威力を有する高性能爆薬であって、24グラム程度でも爆発すれば近距離にいる人を死亡させ得る爆風を発生させるものである上、非常に小さな刺激でも容易に爆発する危険な物質であるところ、被告人は、共同住宅の一室である被告人方にお あって、24グラム程度でも爆発すれば近距離にいる人を死亡させ得る爆風を発生させるものである上、非常に小さな刺激でも容易に爆発する危険な物質であるところ、被告人は、共同住宅の一室である被告人方において、HMTD約127グラムを所持していたものである。 被告人は、そのうち約103グラムについては、水に浸して不意に爆発が生じないようにしており、前記鑑定意見等に照らし、被告人がこれを所持した時点では、弱い刺激で爆発する可能性は低下していたと認められるものの、比較的容易に本来の性質を復元することが可能であったことなどに鑑みると、上記犯行は人の身体財産を害する危険性が高い悪質な犯行といわなければならない。 次に、銃砲の製造及び不法所持の各犯行(判示第1及び第2の1⑵)についてみ ると、被告人が製造・所持していた本件パイプ銃砲は、構造、性能が精巧であるとは認められないものの、12ゲージの散弾を実際に発射できる機能を有し、十分な殺傷能力を備える武器といえる。 被告人は、これらのHMTDや本件パイプ銃砲の所持等に至る動機や経緯について、自殺に用いる目的であった旨述べるものの、被告人も自認するように、自己の武器に対する好奇心等を満たす目的も少なからずあったと認められ、他者の生命、身体及び財産の安全よりも自己の都合を優先させたことについては、自己中心的かつ身勝手との非難を免れない。もっとも、被告人は、HMTDや本件パイプ銃砲につき、他者に対する積極的な加害意図があったとは認められず、近い時期に、他者の生命や公共の安全等に危害を及ぼしかねない方法で使用する具体的な予定があったとも認められない。 これらの犯行に加え、被告人は、刀剣類3本、空気銃等3丁及び黒色火薬という複数の危険物の不法所持の犯行(判示第2の1⑴、⑶、⑷)にも及んでいるが、同犯行も 具体的な予定があったとも認められない。 これらの犯行に加え、被告人は、刀剣類3本、空気銃等3丁及び黒色火薬という複数の危険物の不法所持の犯行(判示第2の1⑴、⑶、⑷)にも及んでいるが、同犯行も好奇心等に基づく動機、経緯によるものであったと認められる。 以上によれば、本件は、治安の妨害や他者加害の目的での使用を計画して爆発物や銃砲等を所持・製造したような事案と同列に扱うことはできないものの、殊に、上記のようなHMTDや本件パイプ銃砲の危険性等に照らすと、その犯情は相当に悪いといわざるを得ず、相当期間の実刑に処するのはやむを得ない。 2 その上で、一般情状について検討すると、被告人が本件各犯行の外形的事実を認めた上、本件各犯行に至った自己の問題点に向き合い、再犯に及ばないための方策を検討するなどして、反省を深めつつあること、被告人の父親が情状証人として出廷し、社会復帰後被告人を受け入れて更生を支援する意向を述べていること、被告人に前科前歴がないことなどは、被告人のために酌むことができる。 そこで、これらの事情も考慮して、被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑懲役10年、主文同旨の没収) 令和6年6月6日札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官吉戒純一 裁判官藤井俊彦 裁判官小町勇祈
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