平成13(ネ)1335 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年10月4日 大阪高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-2376.txt

判決文本文7,346 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,9万5000円及びこれに対する平成9年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は第1,2審を通じてこれを15分し,その14を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,147万8000円及びこれに対する平成9年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人本件控訴を棄却する。 第2 事案の概要事案の概要は,原判決「事実および理由」中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因1項について原判決書6頁4行目から同頁18行目に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決書6頁5行目の「乙第9号証」を「乙第10号証」に改める。)。 2 請求原因2項について(1) 控訴人は,被控訴人が平成7年10月18日の自動車保険契約の更改手続の際に,故意に車両保険条項を抹消し,車両保険の付されていないシルバーコースの保険契約で更改を行った旨主張する。 しかし,控訴人はシルバーコースの保険契約での更改を申し込んだこと自体は自認している。したがって,乙5号証のシルバーコース欄のチェックが控訴人自身によってされていなかったとしても,シルバーコースの保険契約への更改を被控訴人が控訴人の意思に反して行ったと認めることはできないし, いる。したがって,乙5号証のシルバーコース欄のチェックが控訴人自身によってされていなかったとしても,シルバーコースの保険契約への更改を被控訴人が控訴人の意思に反して行ったと認めることはできないし,本件全証拠を精査しても,被控訴人が故意に車両保険条項を抹消したことを認めるに足りる証拠もない。 (2) 控訴人は,被控訴人が平成7年10月18日の自動車保険契約の更改の際に,前年度保険と同一の内容である車両保険が付保されている保険への更改を案内すべきであり,シルバーコースの保険契約に車両保険が付保されていないのであれば,その旨説明すべき義務があったにもかかわらず,これを怠ったため損害を被った旨主張するので検討する。 ① 保険募集の取締に関する法律16条1項1号は,保険契約者の利益の保護と保険事業の健全な発展に資するため,損害保険代理店等が保険契約の締結又は募集に関して,保険契約者等に対して保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為を禁止し,損害保険代理店等に重要事項の告知義務を課している。本件保険契約においては,車両保険が付されているか否かは,これが付されていなければ保険契約者にとっては保険料が安くなるという利益もあるが,保険金が支払われる場合が少なくなるという不利益もあるから,契約条項のうちの重要な事項に該当する。したがって,損害保険代理店である被控訴人は,募集にあたり,車両保険が付されているか否かを保険契約者に告知しなければならない義務がある。そして,本件のように,保険期間が1年間で1年ごとに契約を更改する場合には,保険契約者は,従前の保険の内容を引き続いて維持しようとすることが多く,保険内容の異なる保険契約に更改する場合には,前年同条件の保険と比較することによって保険種類の決定をするものと考えられるから,損害保 約者は,従前の保険の内容を引き続いて維持しようとすることが多く,保険内容の異なる保険契約に更改する場合には,前年同条件の保険と比較することによって保険種類の決定をするものと考えられるから,損害保険代理店が従前の保険と内容の異なる保険を募集する場合には,従前の保険内容との異同点を明示した上で,契約内容の重要事項を告知する義務があるものというべきである。 本件において被控訴人が平成7年10月の更改の際に募集したシルバープランの保険には,前年までの保険に付されていた車両保険が付されていないのであるから,被控訴人は,シルバープランの保険には車両保険が付されていないことを明示した上で,契約条項を告知する義務があったというべきである。 ② そこで,本件において,平成7年10月の更改の際に,被控訴人に上記告知義務違反があったか否かについて検討する。 請求原因2項(一)(二),(三)のうち控訴人の認識を除く部分,(五)のうち「ほしいままに」を除く部分,(七)①②は当事者間に争いがない。 上記争いのない事実と証拠(甲1ないし25,乙1ないし8)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 ア控訴人は,A産業株式会社に勤務中の平成4年10月30日,被控訴人の取次によってB海上火災保険株式会社が保険者である団体扱いの自動車保険契約に加入した。同保険契約は1年ごとに更新された。上記団体扱いの保険契約において,保険料は控訴人の勤務する会社が控訴人の給与から毎月月額を控除する形で集金され,保険会社に支払われていた。 イ控訴人が加入した上記団体扱いの自動車保険契約には車両保険が付されていなかった。控訴人は,平成6年1月ころに控訴人の子のCが交通事故を起こした 金され,保険会社に支払われていた。 イ控訴人が加入した上記団体扱いの自動車保険契約には車両保険が付されていなかった。控訴人は,平成6年1月ころに控訴人の子のCが交通事故を起こしたため,同年1月27日,上記保険に車両保険を付け加えた。 ウ上記自動車保険契約は,平成6年10月30日に更新された(満期は平成7年10月30日)。その際も車両保険が付されていた。 エ控訴人は,平成7年4月15日,A産業株式会社を定年退職した。そして,団体扱いの自動車保険の保険料残額(5月分から10月分まで)を一括で支払い,同保険は平成7年10月30日の満期まで継続された。 オ被控訴人は,平成7年10月ころ,上記自動車保険について平成7年10月30日の更改時期が近づいたので,控訴人に対し,契約の更改を案内するため,「自動車保険の満期更改についてお願い」と題する書面,自動車保険更改申込書(お客様控え・保険会社用),返信用封筒を送付した。 カ上記送付書類のうち,自動車保険更改申込書(お客様控え・保険会社用)には機械打ちで控訴人が現に加入し,満期を迎えることとなる契約の内容が以下のとおりのものであることが記載されている。 保険の種類 2PAP車両保険金額 80万円車両保険料 7,930円対人賠償保険金額無制限対人賠償保険料 10,450円合計保険料 18,380円一般分割年額保険料 220,560円 対人賠償保険料 10,450円合計保険料 18,380円一般分割年額保険料 220,560円また,同書面には更改する保険契約の内容について,以下のとおり,前年同条件プラン,ゴールドコース,シルバーコースの記載がある。 a 前年同条件プラン車両保険料 6,370円対人保険料 114,720円合計保険料 121,090円b ゴールドコース保険の種類 2PAP車両保険金額 (記載なし)車両保険料 (記載なし)対人賠償保険金額無制限対人賠償保険料 128,540円合計保険料 128,540円c シルバーコース保険の種類 2PAP車両保険金額 (記載なし)車両保険料 (記載なし)対人賠償保険金額無制限対人賠償保険料 124,520円合計保険料 124,520円キ同時に送付された「自動車保険の満期更改についてお願い」と題する書面には,前記更改を勧める3種類の 520円合計保険料 124,520円キ同時に送付された「自動車保険の満期更改についてお願い」と題する書面には,前記更改を勧める3種類の保険について次のとおり保険料の合計額が手書きで記載されている。それ以外にこれらの3種類の保険の内容や相違点については何も記載されていない。 ゴールドコースの場合 \128,540シルバーコースの場合 \124,520前年同条件の場合 \121,090クこれらの書面の記載のうち,自動車保険更改申込書の前年同条件プランの保険料の車両保険の欄の記載や「自動車保険の満期更改についてお願い」と題する書面の前年同条件の場合の保険料の記載には誤りがあった。すなわち,自動車保険更改申込書の前年同条件プランの保険料の車両保険の欄には本来年間保険料である7万6440円と記載すべきであったにもかかわらず,1か月分である6370円と記載され,合計保険料についても,19万1160円と記載すべきところ,12万1090円と記載されていた。同様に「自動車保険の満期更改についてお願い」と題する書面には保険料しか記載されていないにもかかわらず,前年同条件の場合の保険料合計額を12万1090円と誤って記載されていた。 ケ控訴人は,上記の被控訴人の更改案内に従って,自動車保険更改申込書に押印してシルバーコースでの保険更改を申し込むと共に,平成7年10月18日保険料12万4520円を支払った。被控訴人は,控訴人の申し込みに従って,同日,控訴人の自動車保険についてシルバーコースでの保険契約をした。 コ翌年,控訴人は,平成8年10月3 日保険料12万4520円を支払った。被控訴人は,控訴人の申し込みに従って,同日,控訴人の自動車保険についてシルバーコースでの保険契約をした。 コ翌年,控訴人は,平成8年10月30日から平成9年10月30日までの期間の更改において,前年度同条件での更改を申し込むとともに,保険料11万3200円を支払ったので,被控訴人は平成8年10月15日,控訴人の自動車保険について前年度と同一のシルバーコースでの保険で更改をした。 サ平成9年9月18日,控訴人の子のCが,上記自動車保険の対象である自動車を運転中に物損事故を起こした。 控訴人は,同年9月19日に同事故のことを知り,同月24日ころ,被控訴人に対し,事故を起こしたことを連絡したところ,被控訴人の担当者から上記自動車保険には車両保険は付されていない旨言われた。 シ被控訴人は,平成9年10月3日ころ,控訴人に対し,平成9年10月30日から平成10年10月30日までの期間の自動車保険の更改の案内を送付したが,控訴人は,同年10月10日ころ,被控訴人に対し,自動車保険は更改しない旨通知した。 ス控訴人は,平成9年12月13日,被控訴人に対し,車両保険が除外されているのは平成6年にCが起こした交通事故の関係で被控訴人が故意に車両保険を除外したのではないかなどと記載した内容証明郵便(甲10)を送付した。 ③ 以上の認定事実によると,自動車保険更改申込書のシルバーコースやゴールドコースの車両保険の欄は空欄になっているので,これらのコースには車両保険が付されていないことは同書面の記載を良く見れば分かる。しかし,他方,自動車保険更改申込書の前年同条件プランの保険料の車両保険の欄の記載や「自動車保険の満期更改に るので,これらのコースには車両保険が付されていないことは同書面の記載を良く見れば分かる。しかし,他方,自動車保険更改申込書の前年同条件プランの保険料の車両保険の欄の記載や「自動車保険の満期更改についてお願い」と題する書面の前年同条件の場合の保険料の記載には前記のとおりの誤りがある。保険契約者が保険契約の内容を変更する場合,前年度の保険契約の保険料との比較が重要であると考えられるから,この保険料の誤記の結果,保険契約者が前年度よりも保険料が高額になるシルバーコースやゴールドコースには前年度の保険に付されていた車両保険が付されていないという不利益な部分があることを認識することは難しいといえる。実際,控訴人は,後記のとおり誤解してしまったのである。本件証拠を精査しても,被控訴人がこの誤記を訂正したり,上記の書面を送付した以外にシルバーコースやゴールドコースに車両保険が付されていないことを控訴人に説明した形跡はない。したがって,上記自動車保険更改申込書のシルバーコースやゴールドコースの車両保険の欄が空欄になっていることだけでは,被控訴人が,保険内容の重要な事項であり,前年度の保険内容との重大な相違点である車両保険がシルバーコースやゴールドコースの保険には付されていないことについて,保険契約者である控訴人が誤りなく認識,理解できる程度に告知したものということはできず,被控訴人は告知義務に違反したものというべきである。 ④ 前記認定のとおり,平成7年10月更改前の本件自動車保険は団体扱いであったから,控訴人が個人で本件自動車保険を更改するのは今回が初めてであったこと,それ以前の保険料は団体扱いであったため会社が控訴人の給与から控除する方法で毎月集金していたから,控訴人自身が従前の保険料の年額を明確に認識していなかった可能性があること 今回が初めてであったこと,それ以前の保険料は団体扱いであったため会社が控訴人の給与から控除する方法で毎月集金していたから,控訴人自身が従前の保険料の年額を明確に認識していなかった可能性があること,控訴人は,平成6年に子が物損事故を起こしたため車両保険を付け加え,その後も平成7年10月の更改まで前年と同内容の車両保険を付した自動車保険に更改していて,平成7年10月の更改時に車両保険を不要とする事情は窺われないこと,平成9年9月に息子が自動車事故を起こした際,ただちに被控訴人に事故を報告していたところ,被控訴人から車両保険がついていないと言われて同年10月の更改を断っていること,同年12月に被控訴人に対し,車両保険が付いていないことに抗議する旨の書面を送付していることなどの事実に照らすと,控訴人は,平成7年10月に自動車保険を更改する際に,シルバーコースにも車両保険が付いているものと誤信したため契約を締結したものであり,その翌年の平成8年の更改の際にも,同様に車両保険が付いているものと誤信したまま契約を更改したものであって,車両保険付きでないことを知っていればこれらの契約はしなかったと認めるのが相当である。 ⑤ そうすると,控訴人は,前記被控訴人の告知義務違反の結果,保険料として支払った平成7年度分12万4520円及び平成8年度分11万3200円の合計23万7720円の損害を被ったというべきである。もっとも,控訴人は,本件の保険期間中,保険契約者として保険契約上の利益を受ける地位にあったということはできるが,控訴人が保険の内容を知ったのに解約しなかったというものではないし,具体的に保険金給付を受けたというわけではないから,前記のように利益を受け得るという抽象的な地位にあったというだけでは,前記損害の認定を覆すに足りない。 のに解約しなかったというものではないし,具体的に保険金給付を受けたというわけではないから,前記のように利益を受け得るという抽象的な地位にあったというだけでは,前記損害の認定を覆すに足りない。 ⑥ しかし,前記認定によると,平成7年の更改の際に被控訴人が送付した自動車保険更改申込書のシルバーコースの車両保険金額,車両保険料の欄はいずれも空欄になっていて,この点に注意すれば同コースに車両保険が付されていないことは理解できなくはない。同書面の現行保険の年間保険料が22万0560円と記載されていたから,これと比較すれば前記の誤記されていた前年同条件の保険料が不自然に低額である。保険契約締結後に保険証券が交付されているが,保険証券の記載上車両保険が付されていないものであることが明らかである(甲7)。これらの事実によると,控訴人が普通の注意を払えば,シルバープランの保険には車両保険が付されていないことに気づくか,あるいはこの点を直接被控訴人に問い合わせることができたものということができ,車両保険がついているものと誤信したことについては,控訴人側にも相当大きな過失があるというべきである。その過失の程度は,6割程度と認めるのが相当である。そうすると,過失相殺後,控訴人は,9万5000円及びこれに対する不法行為の後である平成9年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金について損害賠償請求権を有することになる。 なお,控訴人は,平成9年9月の事故による車両の修理代金33万円も損害である旨主張するが,弁論の全趣旨によると,控訴人は事故後修理をしないで自動車を使用していたところ,その後の事故により全損となり廃車したことが認められること,修理代金が33万円であることを認めるに足りる客観的な証拠は何もない 趣旨によると,控訴人は事故後修理をしないで自動車を使用していたところ,その後の事故により全損となり廃車したことが認められること,修理代金が33万円であることを認めるに足りる客観的な証拠は何もないことからすると,修理代金33万円については本件の損害として認めることはできない。 3 請求原因3項について原判決書11頁24行目から同12頁1行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 4 よって,控訴人の本件請求は,9万5000円及びこれに対する平成9年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,認容すべきであり,その余の請求は理由がないから,棄却すべきである。これと異なる原判決は相当でないから,これを上記のとおり変更することとし,訴訟費用の負担について民訴法67条,61条,64条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第6民事部 裁判長裁判官加藤英継 裁判官小見山進 裁判官大竹優子・

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る