平成15(ワ)17264 建築差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年11月28日 東京地方裁判所
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判決文本文114,056 文字)

平成17年11月28日判決言渡平成15年(ワ)第17264号建築差止等請求事件判決 主文 1 被告らは,連帯して,別紙損害賠償金目録記載の各原告に対し,それぞれ同目録「損害賠償金」欄記載の各金員及びこのうち同目録「内金」欄記載の各金員に対する平成16年6月19日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を,いずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを20分し,その1を被告らの,その5を別紙損害賠償金目録記載の原告らの各負担とし,その余は同原告ら以外の原告らの負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1章請求の趣旨 1 主位的請求被告らは,原告らに対し,別紙建物目録第2記載の各建物(以下「本件各建物」と総称する。)のうち,地盤面から高さ12mを超える部分を撤去せよ。 予備的請求被告らは,原告らに対し,本件各建物のうち,地盤面から高さ20mを超える部分を撤去せよ。 2 被告らは,連帯して,別紙損害賠償請求一覧表の「原告」欄記載の各原告らに対し,それぞれ同表の「最終的請求額」欄記載の金員を各支払え。 3 被告らは,連帯して,原告らに対し,6824万6600円及びこれに対する平成16年6月19日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章事案の概要第1 事案の要旨 1 本件は,被告らが,東京都世田谷区深沢2丁目及び目黒区八雲5丁目にまたがって所在する別紙土地目録記載1ないし3の土地(以下「本件土地」という。このうち,同目録記載1及び3の土地は東京都立大学(当時)深沢校舎跡地で が,東京都世田谷区深沢2丁目及び目黒区八雲5丁目にまたがって所在する別紙土地目録記載1ないし3の土地(以下「本件土地」という。このうち,同目録記載1及び3の土地は東京都立大学(当時)深沢校舎跡地である。)を東京都などから購入し,被告株式会社長谷工コーポレーション(以下「被告長谷工」という。)を主施工者としていわゆる分譲マンションである本件各建物を建築して分譲したところ,本件土地の近隣地域に居住する原告らが, 本件各建物により,受忍限度を超えて,景観権又は景観利益,圧迫感のない生活利益,日照権及びプライバシー権を侵害されたと主張して,本件各建物のうち高さ12mを超える部分の撤去(予備的に高さ20mを超える部分の撤去)を求めるとともに, 以上の各法益の侵害による被害に加え,本件各建物の建築工事(本件各建物の建築に先立つ解体工事を含む。以下「本件工事」という。)に関し騒音・振動・粉塵等にさらされたことによる精神的な被害,本件工事の振動による原告ら所有建物損傷の被害及び本件各建物の建築による原告らの所有不動産の価値の下落という被害を被ったなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償として,財産的,精神的損害及び弁護士費用相当額の損害の賠償を求める事案である。 原告らは,当初,本件各建物の高さ12mを超える部分(予備的に20mを超える部分)の建築禁止を求めて本件訴訟を提起したが,訴訟係属中の平成16年6月に本件各建物が完成したため,その訴えを上記第1章の1記載のとおり変更したものである。 2 請求の趣旨1項の請求(本件各建物の一部撤去請求)の骨子原告らが本件各建物の一部撤去請求に関し請求原因として主張するのは,被告らによる本件各建物の建築により,次のないしの「保護されるべき利益」が受忍限度を超えて侵害されたことであり,不法行為,土地所有権又 告らが本件各建物の一部撤去請求に関し請求原因として主張するのは,被告らによる本件各建物の建築により,次のないしの「保護されるべき利益」が受忍限度を超えて侵害されたことであり,不法行為,土地所有権又は人格権に基づく請求であるとする。 景観権又は景観利益圧迫感のない生活利益日照権プライバシー権 3 請求の趣旨2項の請求(損害賠償請求)の骨子原告らは,損害賠償請求について,上記2ないし記載の法益のほか,次のア及びイの「保護されるべき利益」も受忍限度を超えて侵害されたことを請求原因として主張し,その損害(具体的な額は,別紙損害賠償請求一覧表の「景観利益」,「圧迫感」,「日照」,「プライバシー」,「工事被害騒音等」,「資産価格下落」の各欄記載のとおりであり,その合計額は同一覧表の「左記合計額」欄記載のとおりである。)の一部について,不法行為に基づいて賠償を請求している。 ア本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益イ原告らの所有不動産の価値原告20,同21,同22及び同45は,上記のほか,本件工事により所有建物に損傷が生じたとして,その損害(具体的な額は,別紙損害賠償請求一覧表の「家屋修繕費」欄記載のとおりである。)の全額について,不法行為に基づいて,賠償を請求している。 原告らは,以上及び記載の各損害について,具体的には一部請求として別紙損害賠償請求一覧表の「最終的請求額」欄記載のとおりの賠償を請求している。 4 請求の趣旨3項の請求(弁護士費用相当額の損害賠償請求)の骨子原告らは,上記2及び3の不法行為に基づいて,弁護士費用相当額(6824万6600円)の損害の賠償及びこれに対する不法行為の後の日である平成16年6月19日(訴え変更申立書送達の日の翌日)からの民法所定の年5分 記2及び3の不法行為に基づいて,弁護士費用相当額(6824万6600円)の損害の賠償及びこれに対する不法行為の後の日である平成16年6月19日(訴え変更申立書送達の日の翌日)からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求している。 第2 前提事実前提となる事実は,次のとおりである(なお,証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いのない事実である。)。 1 当事者原告ら原告らは,東京都目黒区八雲2丁目,同5丁目又は世田谷区深沢2丁目に居住する者であり,その具体的な場所は別紙地図(甲1を基に作成したものである。)に表示したとおりである(ただし,原告37及び原告44については訴えの取下げにより訴訟が終了している。また,「(原告40)」の表示は複数あるが,原告40が居住する場所は深沢2丁目所在の居宅である。)。 被告ら被告らは,本件各建物の建築及び分譲の事業を,共同企業体として共同して行った株式会社である。被告長谷工は,建築物並びに建設工事の企画,設計,管理等コンサルティング業務及び請負,不動産の売買などを業とする株式会社であり,本件各建物の建築について設計,工事を行った建築主である(建築主である点については,乙2)。 2 本件土地本件土地及びその周辺土地は,もともとは民有地であった。その一部については,大正2年に東京ゴルフ倶楽部に賃貸され,昭和15年に東京都が記念事業として行った環状緑地帯計画の一環として緑地指定がされ(駒沢緑地),昭和17年に都市計画法により防空緑地とされ(甲100),昭和18年9月に東京都防衛局に買収され,軍用のための公用地とされた。 その後,昭和20年代から昭和30年代には,別紙土地目録記載1及び3の土地上に東京都立大学理学部及び工学部の校舎が建築され,その余の土 月に東京都防衛局に買収され,軍用のための公用地とされた。 その後,昭和20年代から昭和30年代には,別紙土地目録記載1及び3の土地上に東京都立大学理学部及び工学部の校舎が建築され,その余の土地には,都立アイソトープ総合研究所(現在の東京都立産業技術研究所),駒沢オリンピック公園等が建築された(甲100,202,203,乙34)。 ところで,平成5年4月に東京都立大学理学部及び工学部が八王子市に移転し,校舎の跡地である別紙土地目録記載1及び3の土地の利用の在り方について様々な検討がされたが,東京都は,平成12年に入札により民間企業に売却する方針を決め,同年1月8日から入札参加要領を配付して,平成13年1月16日,入札を実施した。その要領中には,後記第3章第1の2認定の東京都立大学跡地の利用についての東京都の基本的な考え方を踏まえた計画を策定し,契約締結の日から5年以内に,信義を重んじ誠実に工事に着手しなければならない旨の契約条件を付す旨も明記されていた(甲11,乙4)。 被告長谷工は,計画の基本方針としては都市景観,自然環境など周囲と調和した計画にする等とする世田谷区深沢2丁目計画事業計画書(乙5)を示して入札し,上記の入札において,同目録記載1及び3の土地の売却予定者を被告らグループ(代表企業:被告長谷工)とする内定を得て,同年3月30日,東京都から上記土地を買受けた(甲11,188,乙4,5)。また,同年9月28日,同目録記載2の土地を株式会社東急ストアから購入した(乙96)。 3 本件各建物本件各建物は,本件土地上に建つ総戸数772の分譲マンションである。別紙全体敷地配置図(乙1の1の写し)記載のとおり,S1ないしS4,N1ないしN4の8区域に分けられた敷地に配置されたA棟ないしM棟の住居棟13棟と店舗棟等で 建つ総戸数772の分譲マンションである。別紙全体敷地配置図(乙1の1の写し)記載のとおり,S1ないしS4,N1ないしN4の8区域に分けられた敷地に配置されたA棟ないしM棟の住居棟13棟と店舗棟等で構成されている(なお,棟の名称は,計画立案の過程で変化しているが,本判決においては別紙全体敷地配置図記載の名称で表記することとする。)。 上記各敷地内の最も高い棟は,次のとおりである。 S1敷地及びS2敷地 I棟,J棟及びK棟(それぞれ地上14階・高さ44.24m)。なお,S2敷地のうち,第一種低層住居専用区域に該当する部分の敷地(別紙土地目録記載3の土地部分)は通路,街路樹用地であり,その地上に建物は存在しない。 S3敷地 L棟(地上9階・高さ29.19m)S4敷地 M棟(地上3階・高さ11.28m)N1敷地 A棟(地上4階・高さ14.29m)N2敷地 B棟(地上9階・高さ29.19m)N3敷地 D棟(地上19階・高さ59.99m)N4敷地店舗棟(地上1階・高さ5.70m) 4 本件各建物建築の経過被告長谷工は,別紙全体敷地配置図記載のとおりの建築計画(以下「本件建築計画」という。)に基づいて,平成14年5月30日,世田谷区,目黒区よりそれぞれ開発許可決定を得(甲250),同年7月5日には東京都知事による一団地認定処分(平成14年法律第85号による改正前の建築基準法86条1項。以下同じ。)を得た(乙39の3)。そして,被告長谷工は,同月15日に日本建築センターに建築計画概要書を提出し(甲191,乙2),同月19日にS1ないしS4敷地,同月30日にN4敷地,同月31日にN1ないしN3敷地上の各建築物についてそれぞれ建築確認を得た(なお,N4敷地関係については平成14年10月2日に,S1ない 乙2),同月19日にS1ないしS4敷地,同月30日にN4敷地,同月31日にN1ないしN3敷地上の各建築物についてそれぞれ建築確認を得た(なお,N4敷地関係については平成14年10月2日に,S1ないしS4,N1ないしN3敷地関係については平成15年2月6日に,バルコニー出幅変更等の計画変更により建築確認を改めて得ている。)(乙35(枝番号を含む。))。 被告長谷工は,平成14年4月4日,解体工事に着手し(乙96),平成16年6月に本件各建物を完成させた。同年8月から本件各建物への入居が始まった。 第3 請求原因の要旨 1 原告らの有する「保護されるべき利益」の内容景観権又は景観利益ア本件土地周辺地域一帯は,美しい街並み景観を有している。 本件土地周辺地域一帯は,先見性のある農民らが区画整理組合を結成し,その所有地から道路に1割,工事費に1割を拠出するという自己犠牲を払って区画整理事業を行い,当時の自然やコミュニティーの姿を保全しつつ宅地開発を実行したことにより,低層住宅地としての基盤が形成された。住民らは,その後も,建物の改築,増築等の際に周辺建物との調和を乱さないように配慮するなど,美しい街並みの維持・改善に努力してきた。近時においても,本件土地の東側に位置する目黒区側においては,原告らを含む圧倒的多数の住民が,自ら土地利用に厳しい規制をかけるという自己抑制を発揮して,建物の高さ最高12mという高度規制,建築物の意匠等の規制を定めた「自由通り沿道八雲地区地区計画」を策定した。世田谷区深沢1・2丁目地区についても,これと同様に「深沢1丁目・2丁目地区計画案」を策定するなど,地区計画を策定する機が熟していたが,被告らの参加拒否によって実現をみないまま今日に至っている。 このように,農民達の都市計画といわ 様に「深沢1丁目・2丁目地区計画案」を策定するなど,地区計画を策定する機が熟していたが,被告らの参加拒否によって実現をみないまま今日に至っている。 このように,農民達の都市計画といわれた深沢・八雲地区の区画整理と,それを基盤にしたまちづくりは,自然と歴史,コミュニティーを大切にして行われてきたのであって,東京全体を見渡しても,田園調布や成城学園といった地域とはまた違った山の手の特殊な景観を今日に伝えている。現に被告ら自身が,本件各建物について,景観を売物にしていることからも,良好な景観が存在することは明らかである。 イところで,民法709条にいう「権利」は,厳密な意味においての権利でなくても,法律観念上その侵害に対し不法行為に基づく救済を与えることが必要であると思惟される利益であれば足りると解するのが確立した判例である(大審院大正14年11月28日判決・民集4巻670頁,いわゆる大学湯事件)。こうした考え方からすれば,本件においては,景観利益が認められるべきである。 すなわち,本件における上記アの景観は人為的な営為(景観法では「適正な土地利用等」と表現されている。)により形成されたものであるが,このような景観については,次の要件を備えることにより法的に保護されるべきである。 まず,特定の地域内において,当該地域内の地権者らによる土地利用の自己規制の継続により,相当の期間,ある特定の人工的な景観が保持され,社会通念上もその特定の景観が良好なものと認められ,地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合であることが1つの要件になる。そして,要保護性の強弱については,当該景観侵害による損害が具体的に発生した時点を基準時として,景観の内容についての地域住民の合意(暗黙の合意を含む。)の存在,住民意思を基礎にす が1つの要件になる。そして,要保護性の強弱については,当該景観侵害による損害が具体的に発生した時点を基準時として,景観の内容についての地域住民の合意(暗黙の合意を含む。)の存在,住民意思を基礎にする地方自治体の条例レベルでの行政諸施策の存在,地区計画あるいは建築条例の存在等に従って強くなると考えるべきである。 本件においてこの要件を満たしていることは,次の事実から明らかである。すなわち,a 自らの土地を道路等に供出して良好な住宅街形成を目的として区画整理事業を成し遂げ,b 住民らは,その後も,3階建てが可能であっても,新築,改築の際に近隣に配慮して2階建てとするなど,景観保持のために自主的な努力をしたり,c 低層住宅地の美しい街並み景観の保護と向上を目的として,目黒区八雲地域においては「自由通り沿道八雲地区地区計画」を策定し,また,世田谷区深沢1・2丁目地区においては,住民らが「深沢1丁目・2丁目地区計画案」を策定するなど,特段の努力がされてきている。 また,景観の内容と利益の享受主体が明確であることがもう1つの要件になる。この明確性は,社会通念に従って客観的に判断されるべきである。 本件における景観の内容としては,その範囲は,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の対象地域であり,その具体的な内容は,「自由通り沿道八雲地区地区計画」との連続性・共通性からすると,建物の高さが12mを超えないこと(高くても,周辺の建物との連続性・共通性から20mを超えないこと)と解される。また,景観利益の享受主体としては,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の対象地域内の地権者及び借地権者であると解される。 ウなお,独自に景観権又は景観利益とし また,景観利益の享受主体としては,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の対象地域内の地権者及び借地権者であると解される。 ウなお,独自に景観権又は景観利益として認めることができなくても,眺望利益の場合と同様の理由により,生活利益たる景観利益として,「保護されるべき利益」として認められるべきである。 景観利益は,所有権に基づくものとしても保護されるべきである。 圧迫感のない生活利益ア圧迫感のない生活利益は,民法709条により法的に保護されるべき利益である。 過密な環境の下での圧迫感を受けながらの生活は,本件土地周辺の居住者等に精神的なストレス等の弊害をもたらしており,その精神医学的悪影響は顕著である。 開放的な環境は,快適な生活を実現する重要な因子であって,生活環境の重要な構成要素の1つである。 イこれを本件土地周辺地域一帯についてみると,目黒区側には「自由通り沿道八雲地区地区計画」が策定されている。その公式パンフレット「住み続けられる街づくり自由通り沿道八雲地区地区計画」(甲3)と地区計画を裏付ける目黒区の「自由通り沿道八雲地区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例」(甲177)によれば,同地区計画が周辺住民に景観利益を保障し,生活環境を維持・保全する趣旨で策定されたことが明らかである。現実にも,同地区計画内は低層住宅が支配的であり,同地区計画と上記条例は圧迫感のない良好な都市環境を保護している(甲200の意見書)。 ウ圧迫感被害が客観性,明確性のあることは,延べ200名の研究者が20年間をかけて組織的に行った大規模な研究の成果である武井正昭,大原昌樹による「圧迫感の計測に関する研究1~4」(日本建築学会論文報告集第310号(昭和56年12月),甲 ,延べ200名の研究者が20年間をかけて組織的に行った大規模な研究の成果である武井正昭,大原昌樹による「圧迫感の計測に関する研究1~4」(日本建築学会論文報告集第310号(昭和56年12月),甲94の1ないし4。以下「武井・大原論文」という。)からも明らかである。 そして,武井・大原論文によれば,中高層建築物から受ける圧迫感については,当該建築物の形態率(測定点を中心とする半球に写った建物の姿を円に正射影した場合の,円の面積に占める建物の投影面積の割合)を指標にすべきである。形態率こそが圧迫感を表すことができる唯一の指標であり,それ以外の建物壁面の色彩,材質等の要素については圧迫感を有意に変化させない。また,新たに建築する建物の与える圧迫感を評価するには当該建物の形態率のみが意味を持ち,既存の建物による形態率は影響しない。 なお,東京都環境影響評価条例11条1項に基づく「東京都環境影響評価技術指針」は,環境影響評価について,必要に応じ建築物等による圧迫感の状況について調査し,評価するものとしているが,その調査の方法として,東京都環境保全局環境管理部作成の「東京都環境影響評価技術指針解説」(甲90,261)は,「現地調査をもとに形態率を算定する手法等による。」とした上で,武井・大原論文に示す形態率等を参考に評価するとしている。 日照権ア日照権が民法709条により法的に保護されるべき利益であることは,確立されている。 イ原告らは,本件土地上に本件各建物が建築されるまでは,太陽の恵みを存分に受けて生活していた(甲266)。 プライバシー権プライバシーが民法709条により法的に保護されるべき利益であることは,確立されている。 本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益 266)。 プライバシー権プライバシーが民法709条により法的に保護されるべき利益であることは,確立されている。 本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益このような生活利益が民法709条により法的に保護されるべき利益であることは,確立されている。 所有不動産の価値原告らの所有不動産の価値が財産権であり,民法709条所定の「権利」であることは,明らかである。 2 受忍限度を超えた「保護されるべき利益」の侵害本件におけるような大規模建物の建築による近隣被害紛争は, 加害者は常に一定規模以上の業者であるのに対し,被害者は常に近隣の住民であり,その地位が固定し,交替があり得ないだけでなしに, マンション販売業者は,近隣住民の築いてきた景観,良好な住環境を売物として最大限の利益追求を図って大規模建物を建築し,近隣住民に回復不能の損害を与えてその地位を去る,という特質がある。それゆえに,近隣住民が受忍すべき限度は極めて低いものとするのが適正・公平であり,こうした考え方を前提として受忍限度を検討すべきである(甲99,210,211)。 このような観点からすると,本件においては次のないしの点が問題になるというべきであり,その具体的な内容は,別紙受忍限度に関する主張の要旨中の「原告らの主張」記載のとおりである。 本件各建物の規模(被害の重大性の前提)地域性・歴史性住民による地域合意「一団地認定」の逸脱による違法行為による過大な建築回避容易な被害の回避を図らなかったこと被告らの事前の認識被告らの不誠実な交渉態度被告らの数々の違法行為先住性等被告らの不測の損害の不存在等 3 被告らによる加害行為故意・過失被告らは,本件地域の歴史性,地域 事前の認識被告らの不誠実な交渉態度被告らの数々の違法行為先住性等被告らの不測の損害の不存在等 3 被告らによる加害行為故意・過失被告らは,本件地域の歴史性,地域性を十分認識した上で,上記のような周囲に対する環境侵害を伴うことが明白な大規模高層建築群を計画し,その建築を実行して,本件各建物を林立させ,そのまま存続させているのであるから,後記の本件各損害について故意又は重大な過失がある(詳しくは,別紙受忍限度に関する主張の要旨中の「原告らの主張」の6の「被告らの事前の認識」を参照)。 共同不法行為本件各建物の建築・販売事業は,被告長谷工が計画を企画・立案し,同被告を含むすべての被告ら10社が共同事業者となって遂行したものである。被告ら10社は,本件土地及び本件各建物を共有し(その持分は,被告日商岩井不動産株式会社が100分の20,被告ニチモ株式会社が100分の15,被告日本開発株式会社,被告相互住宅株式会社及び被告長谷工が100分の5,これ以外の被告らが100分の10である。),その建築後の分譲についても土地・建物の売主となっているのであるから,いわゆる共同企業体として本件事業を遂行したというべきである。 このように,本件においては,共同企業体の職務遂行目的そのものである本件各建物の建築行為自体が原告らに対して与えた影響が不法行為となる場合であるから,実質的には全事業者による1つの事業としての強い行為の関連共同性が認められる。 したがって,その共同企業体の構成員である被告らは,構成員間の損益分配の合意内容にかかわらず,共同不法行為として,損害額全額について,不真性連帯責任を負うというべきである。 4 原告らが被った損害・その1(本件各建物の一部撤去請求をも基礎付ける損害関係)景観権又は景 内容にかかわらず,共同不法行為として,損害額全額について,不真性連帯責任を負うというべきである。 4 原告らが被った損害・その1(本件各建物の一部撤去請求をも基礎付ける損害関係)景観権又は景観利益の侵害ア原告らは,被告らが本件各建物を建築したことにより,景観権又は景観利益を侵害され,損害を被った。 イそこで,原告らは,不法行為(民法709条,719条)又は所有権(民法206条)に基づき,景観被害の回復のための措置として,本件各建物のうち高さ12m(予備的に20m)を超える部分の撤去を求める。 ウまた,原告らは,それにより精神的な損害を被ったので,不法行為に基づいてその賠償を求める。その額は,所有権を有している原告らについては100万円,所有権を有していない原告らについては50万円とするのが相当である(具体的には,別紙損害賠償請求一覧表の「景観利益」欄記載のとおりである。)。 圧迫感のない生活利益の侵害ア上記1からすれば,中高層建築物から受ける圧迫感については,武井・大原論文に基づいて,当該建築物の形態率を指標にすべきである。そして,同論文等からすれば,その許容限界値は形態率8%であり,形態率4%を越えると圧迫感を環境の影響要素として取り上げるべきである。 イ本件各建物は,周辺住民に対して,許容限界値を超えた圧迫感を与えるものである。その状況について,形態率を指標として表すと,別紙被害状況一覧表の「圧迫感」の「形態率(%)」欄記載のとおりである。 この点について,世田谷区環境審議会は,平成14年11月22日,見解書(甲14)を発表し,本件各建物による住民らの権利の侵害はかつて経験したことのない侵害の程度であり,本件建築計画は圧迫感被害,景観被害等への配慮が極めて不十分であるとして, 4年11月22日,見解書(甲14)を発表し,本件各建物による住民らの権利の侵害はかつて経験したことのない侵害の程度であり,本件建築計画は圧迫感被害,景観被害等への配慮が極めて不十分であるとして,本件各建物の規模の縮小を求めている。 ウなお,被告らは,「深沢ハウス計画形態率による圧迫感の評価について」(乙22)を提出しているが,ここで紹介されている論文は,学術的に意味のない論文であるばかりか,被告長谷工は,本来正射影で行うべき形態率測定を等距離射影で行って既存建物の形態率を大きく見せるという手法により形態率計測データのねつ造をしている。本件各建物を一部撤去した場合の形態率の軽減の程度は,「本件建築物の高さを変更した場合の形態率変化のシミュレーション」(甲95)のとおりである。 エそこで,原告らは,上記と同様に,不法行為(民法709条,719条)又は所有権(民法206条)に基づき,圧迫感被害の回復のための措置として,本件各建物のうち高さ12m(予備的に20m)を超える部分の撤去を求めるとともに,不法行為に基づいて,精神的な損害の賠償を求める。その具体的な損害の額は,別紙被害状況一覧表の「圧迫感」の「形態率(%)」欄記載の形態率に応じて,次の金員とするのが相当である(具体的には別紙損害賠償請求一覧表の「圧迫感」欄記載のとおりである。)。 形態率25%以上の原告は,200万円形態率15%以上から25%未満の原告は,150万円形態率8%以上から15%未満の原告は,100万円形態率4%以上から8%未満の原告は,50万円日照権の侵害ア本件各建物は,周辺住民に対して,受忍限度を超えて原告らの日照権を侵害するものである。その具体的な状況を,被告らが作成した冬至の日における日影図 未満の原告は,50万円日照権の侵害ア本件各建物は,周辺住民に対して,受忍限度を超えて原告らの日照権を侵害するものである。その具体的な状況を,被告らが作成した冬至の日における日影図に基づいて,午前8時から午後4時の間における日照阻害時間を表すと,別紙被害状況一覧表の「日影時間」欄記載のとおりである。なお,上記のとおり,本件各建物は巨大であるため,冬至の日の被害が最大とならない原告もいる(例えば,原告45及び同46・甲315)。 イそこで,原告らは,上記と同様に,不法行為(民法709条,719条)又は所有権(民法206条)に基づき,日影被害の回復のための措置として,本件各建物のうち高さ12m(予備的に20m)を超える部分の撤去を求めるとともに,不法行為に基づいて,精神的な損害の賠償を求める。その具体的な損害の額は,別紙被害状況一覧表の「日影時間」欄記載の日照阻害時間を基準として,1時間当たり20万円の割合で,30分単位で算定した金額とするのが相当である(具体的には別紙損害賠償請求一覧表の「日照」欄記載のとおりである。)。 プライバシーの侵害ア本件各建物は,特に高層かつ巨大な構造であるため,多数の窓やベランダが原告らの居宅に面して並んでいる。その結果,原告らは,本件各建物の多数の居住者から住居内を覗かれることとなり,私生活の平穏を乱されており,その被害は重大である。 その被害の程度については,どれだけの数の視線に,どれだけの距離からさらされるかが重要であり,原告らが直面する住戸の数と直面する建物の壁面までの距離とが要素になる。これを本件について見ると,原告らが直面する住戸の数は別紙被害状況一覧表の「プライバシー」の「戸数(戸)」欄記載の戸数であり,原告らが直面する建物の壁面までの距離は同一覧表の の距離とが要素になる。これを本件について見ると,原告らが直面する住戸の数は別紙被害状況一覧表の「プライバシー」の「戸数(戸)」欄記載の戸数であり,原告らが直面する建物の壁面までの距離は同一覧表の「プライバシー」の「距離(m)」欄記載の距離である(甲225の1ないし53,甲226の1ないし53)。 イそこで,原告らは,上記と同様に,不法行為(民法709条,719条)又は所有権(民法206条)に基づき,プライバシー侵害の回復のための措置として,本件各建物のうち高さ12m(予備的に20m)を超える部分の撤去を求めるとともに,不法行為に基づいて,精神的な損害の賠償を求める。精神的な損害の算定に当たっては,原告らは最低でも20戸以上,平均的にも100戸以上という多数の戸数に面しているため,もっぱら原告ら居宅の開口部から直面する建物の壁面までの距離を基準とするのが相当である。そこで,本件各建物の高さの距離(60m)内の原告らについては,常時カーテンを閉めておかなければならないことをも考慮して100万円を,また,本件各建物の高さの距離の2倍(120m)の範囲内の原告らについては50万円をもって,損害額とするのが相当である(もっとも,原告24,同25,同26,同27及び同36については,その特殊事情を考慮して損害額を算定した。)。具体的には,別紙損害賠償請求一覧表の「プライバシー」欄記載のとおりである。 5 原告らが被った損害・その2(損害賠償請求関係)本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益の侵害ア本件各建物の建築工事中の原告らが被った騒音・振動・粉塵等の被害は,受忍限度をはるかに超えるひどいものであった(甲242の1ないし6)。 被告らは,住宅街の真ん中での工事であるにもかかわらず,十分な工事被 中の原告らが被った騒音・振動・粉塵等の被害は,受忍限度をはるかに超えるひどいものであった(甲242の1ないし6)。 被告らは,住宅街の真ん中での工事であるにもかかわらず,十分な工事被害低減措置を講ずることなく工事をしており,その対応は悪質である。具体的には,住宅街では常識となっている膨張材でコンクリートを壊す等の静的破壊方法を採用していない。防音・防塵パネルも設置されなかった。やむを得ず締結した協定も守られていない。 イそこで,原告らは,不法行為に基づいて,精神的な損害の賠償を求める。 被害の実情は,当事者の在宅状況,家族構成,工事車両の出入りの道路の状況等によっても異なるが,工事現場である本件土地からの距離が重要な要因になると考えられることから,その損害額の算定に当たっては,敷地境界からの距離を基準とするのが相当である。そこで,本件各建物の高さの距離(60m)内の原告らについて100万円,本件各建物の高さの距離の2倍(120m)の範囲内の原告らについては50万円として算定することにした。各原告らのその距離は,別紙被害状況一覧表の「工事被害」の「距離(m)」欄記載のとおりであるから,各原告らの損害額は,別紙損害賠償請求一覧表の「工事被害騒音等」欄記載のとおりとなる。 所有不動産の価値ア原告ら所有地は,都内でも有数の低層住宅地であるが,近傍に本件各建物のような高層かつ巨大な建物群が建築されることで上記のような様々な環境悪化が生じており,それにより住宅地としての経済的価値が壊滅的な影響を受けている。もともと,本件土地の最有効使用を考えると,中規模,中級の戸建て低層住宅としての使用が標準的使用というべきであり,そこに巨大高層建築物が建築されれば,その近隣の土地の価格が下落するのは明らかである もともと,本件土地の最有効使用を考えると,中規模,中級の戸建て低層住宅としての使用が標準的使用というべきであり,そこに巨大高層建築物が建築されれば,その近隣の土地の価格が下落するのは明らかである。 イ不動産の価値の下落の程度については,本件依頼条件に合致する環境での取引事例はないので取引事例比較法の適用は困難であり,収益還元法により求めるべきである。また,収益還元法であるDCF法によって求めた土地価格では,㎡当たり25万5000円に低下し,実に58%の下落になる。このDCF法は,国土交通省,日本不動産協会における価格分析や裁判所の競売不動産の評価に導入されており,取引不動産が収益用不動産である場合にはDCF法を適用することが一般化している。 このような観点から,原告らが被った財産的被害を検討すると,その額は,別紙損害賠償請求一覧表記載の「資産価値下落」欄記載のとおりの損害となる(甲239,240,260)。 そこで,原告らは,不法行為に基づいて,上記財産的な損害の賠償を求める。 ウなお,被告らは上記資産価値の下落について意見書(乙95)を提出しているが,次のとおり妥当でない(甲258)。すなわち,同意見書は, 出所不明のA,B二社の不動産業者の意見を根拠として,深沢ハウスの西側隣接地の土地価格阻害はないとしているにすぎず,検討に値しない。 対象不動産の最有効使用を誤っている。 還元利回りについて誤認している。 何の根拠もない「深沢ブランド」なる言葉を持ち出し,深沢ハウスがブランド価値を有しているとするなど,専門家による意見書としての価値がない。 6 原告らが被った損害・その3(個別の工事被害に関する損害賠償請求関係)本件各建物の建築工事により,原告20,同21,同22及び同45は,その所 するなど,専門家による意見書としての価値がない。 6 原告らが被った損害・その3(個別の工事被害に関する損害賠償請求関係)本件各建物の建築工事により,原告20,同21,同22及び同45は,その所有する建物の次の箇所にクラックが生じる等の被害を被った。 ア原告20 1階浴室のタイル,1階玄関ロビーの大理石,1階玄関塀,1階トイレ壁クロス,2階DK壁クロス,2階キッチン壁クロス,2階ベランダ側外壁,3階ベランダ側外壁,3階寝室壁クロスにそれぞれクラックが生じ,3階トイレドアの開閉不具合が生じた。 イ原告21  1階車庫天井,1階玄関天井,2階から3階への階段壁クロス,3階洋間壁クロスにそれぞれクラックが生じた。 ウ原告22 2階外階段と外壁とのつなぎ目,1階階段下床コンクリート,1階アパート犬走りのコンクリート,1階アパート外壁,1階階段上がり口タイルにそれぞれクラックが生じた。 エ原告45 1階台所出入口部の外壁及び土間,2階ベランダ外壁にそれぞれクラックが生じた。 損害上記原告らは,その結果,その修繕に要する費用相当額である別紙損害賠償請求一覧表の「家屋修繕費」欄記載の損害を被ったので,その損害賠償を求める(甲227ないし229の各1,2,甲241の1ないし3,甲262ないし265)。 第4 請求原因の要旨に対する被告らの反論の要旨 1 「原告らの有する『保護されるべき利益』の内容」について「景観権又は景観利益」の主張についてア本件土地周辺地域一帯が良好な環境を有していること自体は否定しないが,建物の高さ制限をすることにより守られるべき特別の景観があるということはできない。 イ 「景観権」,「景観利益」の法的保護性の不存在「景観権」,「景観利益」は,主観的・抽象的な概念 いが,建物の高さ制限をすることにより守られるべき特別の景観があるということはできない。 イ 「景観権」,「景観利益」の法的保護性の不存在「景観権」,「景観利益」は,主観的・抽象的な概念であり,日照権のような定量化・客観化が不可能であるため,裁判上の基準となり得ず,法的保護の対象とはならない。「一定の価値・利益の要求が,不法行為制度における法律上の保護に値するものとして承認され,あるいは新しい権利(私権)として承認されるためには,その要求が,主体,内容および範囲において明確性,具体性があり第三者にも予測,判定することが可能なものでなければならないと解されるが・・・景観に関し,個々人について,このような法律上の保護に値する権利・利益の生成の契機を見出すことはできない」(東京高裁平成16年10月27日,いわゆる国立の高層マンション訴訟控訴審判決)というべきである。 仮に,例外的に「景観権」,「景観利益」が認められる場合があるとしても,本件は,そのような場合にあたらない。 a 原告らが主張する特段の努力のうち,① 自らの土地を土地区画整理事業に供出したとの主張については,土地区画整理事業に通常見られる減歩に過ぎず,本件において特殊なものではない。② 住民らが低層住宅を保持するための自主的努力をしていたとの主張については,周辺地域には20mを超える建物も存在しており,建物周辺住民に景観に対する共通の認識はなかった。また,「深沢1丁目・2丁目地区計画案」が中途で挫折したことは後記のとおりである。 b 原告らは景観利益の範囲について,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の範囲であると主張するが,その主張に係る範囲の景観は,その周辺地域の景観と比較して特殊なものではない。これは,原告らの について,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の範囲であると主張するが,その主張に係る範囲の景観は,その周辺地域の景観と比較して特殊なものではない。これは,原告らの主張する「景観利益の範囲」において法的保護に値すべき景観が存在しないことを表している。 ウなお,原告らが主張するとおり眺望利益の法的保護性を認めた判例が存在するが,それはリゾートマンション等に関する特殊な事案であり,その議論を本件に当てはめることはできない。 上記と同様の理由により,所有権に基づく景観利益も認められるものではない。 「圧迫感のない生活利益」の主張について「圧迫感のない生活利益」についても,法的に保護すべき客観性・明確性を有するまでには至っていない。圧迫感が精神的ストレスの原因となることがあり得るとしても,いかなる状況で圧迫感を感じるかは個々人により異なるものであり,裁判上基準となる指標はない(武井・大原論文が東京都の基準の参考とされた後であっても,形態率は裁判上の圧迫感判断の基準とすべきほどの通有性は認められていない。)。 なお,1m未満や最短で6mなどごく間近に高層の建物が建築された事案において圧迫感に関する裁判例はあるが,本件では,それらとは異なり,10階建て以上の建物については15m以上の離隔を保っており(乙1の1),これらの裁判例は当てはまらない。 「日照権」の主張について日照権が法的保護の対象となることは認めるが,本件各建物により受忍限度を超える日照被害は生じていない(乙25ないし27,55ないし78)。 「プライバシー権」の主張についてプライバシー権が法的保護の対象となることは認めるが,本件各建物により受忍限度を超えるプライバシー侵害は生じていない(後記4参 いし27,55ないし78)。 「プライバシー権」の主張についてプライバシー権が法的保護の対象となることは認めるが,本件各建物により受忍限度を超えるプライバシー侵害は生じていない(後記4参照)。 「本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益」の主張について本件では,受忍限度を超える生活利益の侵害は生じていない(後記5参照)。 「所有不動産の価値」の主張について本件では,原告らの所有不動産に価格の下落は生じていない。 2 「受忍限度を超えた『保護されるべき利益』の侵害」について原告らの大規模建物の建築による近隣被害紛争の特質なる主張は,原告ら独自の見解である。原告らが挙げる書証(甲99,210,211)は,原告らの主張を根拠付けるものではない。 なお,原告らの具体的な主張に対する反論は,別紙受忍限度に関する主張の要旨に記載のとおりである。 3 「被告らによる加害行為」について「故意・過失」の主張について本件計画の遂行は,そもそも権利侵害行為ではなく,故意・過失を論じる前提を欠く。 「共同不法行為」について被告らが共同企業体として本件計画を共同して行ったことは認めるが,本件計画による受忍限度を超える権利侵害は発生せず,被告らの行為は不法行為を構成するものではない。 4 「原告らが被った損害・その1(本件各建物の一部撤去請求をも基礎付ける損害関係)」について「景観権又は景観利益の侵害」について前記1のとおり,本件においては侵害の対象たる権利が存在しない。 仮に万が一権利が認められたとしても,権利侵害は生じていない以上,権利侵害に基づく損害も生じない。 なお,損害賠償における損害額については,その算定の根拠がない。 「圧迫感のない生活利益の侵害」 万が一権利が認められたとしても,権利侵害は生じていない以上,権利侵害に基づく損害も生じない。 なお,損害賠償における損害額については,その算定の根拠がない。 「圧迫感のない生活利益の侵害」についてア原告らは,中高層建物から受ける圧迫感の許容限界値について,形態率8%であると主張するが,そのような数値は,現在の東京では皇居前くらいしか想定できないほどのものであることは,東京都の建築審査会委員からも指摘されている。なお,乙22号証の形態率算出が等距離射影で行われた点は,特に意図したものではなく,正射影で行ったとしても,本件各建物の建築による形態率の増加はわずかである(乙92)。 イそして,本件各建物の離隔,その敷地への植栽により,仮に圧迫感が生じていたとしても受忍限度を超える圧迫感は発生していない。 ウなお,原告らが主張する損害額については,その算定根拠が不明である。 「日照権の侵害」について別紙被害状況一覧表記載の日影時間は認める。ただ,その日影時間は,原告らの家屋のうち最大の日影が生じる開口部における数値を記載したものであり,また,既存の建物により生じる日影時間も含むものである。 本件各建物により,受忍限度を超えた日照阻害は発生しない(乙25ないし27,55ないし78)。 「プライバシー権の侵害」についてア別紙被害状況一覧表記載の距離は,原告14及び同15,同22及び同23,同38を除き認める。原告14及び同15は16.5m,原告22及び同23は18.6m,原告38は14.6mである。同一覧表記載の戸数については,原告らの居宅が存する側に面する本件各建物の戸数という意味では認める。日常生活において視界に入る戸数はもっと少ない。 本件各建物と周辺住民の居宅の開口部との間には10m以上 の戸数については,原告らの居宅が存する側に面する本件各建物の戸数という意味では認める。日常生活において視界に入る戸数はもっと少ない。 本件各建物と周辺住民の居宅の開口部との間には10m以上の距離があり,かつ,本件各建物の開口部が周辺住民側に向いている部分については,バルコニーを115cmの高さの型板ガラスやコンクリートタイルとすることにより,日常生活における視線を遮断し,また,本件各建物と周辺住民の居宅との間には多数の植栽を施している。したがって,受忍限度を超えるプライバシー権侵害は発生しない。 イ原告らが主張する損害額については,その算定根拠が不明である。 5 「原告らが被った損害・その2(損害賠償請求関係)」について「本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益の侵害」についてア本件工事の騒音・振動は,通常の建物の建築工事における騒音・振動を超えるものではない(乙40)。そもそも環境基準(55db以下)は,建設作業騒音には適用されない。その騒音,振動の規制は,騒音規制法,振動規制法及び東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(以下「東京都環境確保条例」という。甲256の2)によっている。そして,同条例が規制対象としているのは,建設工事一般に伴う騒音,振動ではなく,同条例が定める「指定建設作業」のみである。しかも,騒音規制法,振動規制法,東京都環境確保条例との関係においても,基準値を超えれば直ちに違法となるものではなく,本件工事において基準値を超える値は一時的に生じたものでごく一部である。原告らが提出する騒音に関するデータは,その測定方法・場所が不明確であり,本件工事の具体的な騒音を表す資料足り得ない。 なお,静的破砕方法を採用しなかったのは,コストに対する効果が余り期待でき 原告らが提出する騒音に関するデータは,その測定方法・場所が不明確であり,本件工事の具体的な騒音を表す資料足り得ない。 なお,静的破砕方法を採用しなかったのは,コストに対する効果が余り期待できなかったためである。協定を守らなかったという事実はない。 イ原告らが主張する損害額については,その算定根拠が不明である。 「所有不動産の価値」についてア本件各建物の建築は違法ではなく,かつ,その建築による不動産価値の下落は生じていない(乙95)。 イ原告らが主張する,その所有不動産の下落価格の算出方法は,主観的かつ根拠なき見解に基づいている。価格算出方法として収益還元方法のみを採用しており,偏った内容となっている。 ウなお,原告らは,被告ら提出の意見書(乙95)を論難するが,客観的な市場参加者の観点から土地価格を評価したものであり,原告らの反論はいずれも誤った前提に基づくものであって妥当しない。 6 「原告らが被った損害・その3(個別の工事被害に関する損害賠償請求関係)」について本件各建物の建築工事により,所有する建物にクラックが生じる等の被害を被ったと主張する原告20,同21,同22及び同45については,いずれも事前調査を拒否されてこれを行うことができなかったため,同原告らが主張する家屋の損傷と工事との間の因果関係が不明であるばかりか,原告20及び同45の居宅の損傷については,工事によるものではないとの調査結果が出ている。したがって,原告らには,本件工事に起因する家屋被害による損害は生じていない。 なお,原告45は,自ら調査を行っているが,その調査結果によっても,家屋の損傷の事実は明らかでない。したがって,原告らには,本件工事に起因する家屋被害による損害は生じていない。なお,被告らは,それにもかかわらず,原告 自ら調査を行っているが,その調査結果によっても,家屋の損傷の事実は明らかでない。したがって,原告らには,本件工事に起因する家屋被害による損害は生じていない。なお,被告らは,それにもかかわらず,原告45の居宅に対する対応工事を行い(乙96),その他の原告らについても,適切な対応を行っている(乙98)。 第3章当裁判所の判断第1 本件各建物の一部撤去請求について原告らが本件各建物の一部撤去請求に関し請求原因として主張するのは,上記(第2章第1の2)のとおり,被告らによる本件各建物の建築により,4つの「保護されるべき利益」,すなわち,景観権又は景観利益,圧迫感のない生活利益,日照権及びプライバシー権が,受忍限度を超えて侵害されたことであり,不法行為,土地所有権又は人格権に基づいて,その請求をするというのである。 そこで,以下においては,本件各建物の建築が,原告ら主張に係る「保護されるべき利益」(その内容については,上記第2章第3の1のないし参照)にどのような影響を及ぼしたかについて,原告らが受忍限度を超えた法益の侵害であるとして問題にしている諸点(上記第3の2及び別紙受忍限度に関する主張の要旨中の「原告らの主張」参照)をも踏まえて,検討する。 1 本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等以下においては,本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等について,原告らの主張との関係で必要な限度で検討することとする。 前記前提事実(第2章第2)及び証拠(甲2ないし5,71,72,74,75,77,84,124,139,144,159,161ないし164,167ないし169,175の10の1,甲176の1ないし4,甲177,181,183,198の1ないし6,甲199の1,2,甲233,234,243の1,2,甲251,313の1,乙3, し164,167ないし169,175の10の1,甲176の1ないし4,甲177,181,183,198の1ないし6,甲199の1,2,甲233,234,243の1,2,甲251,313の1,乙3,13,94,97,原告1,原告42)によれば,以下の事実が認められる。 深沢地区及び八雲地区における基盤整備深沢,八雲地区においては,大正から昭和10年代ころにかけて区画整理等の街の基盤整備が積極的に行われた。その過程では,原告42の祖父らを含む住民の努力もみられた。 なお,この基盤整備については,東京都市計画物語(甲124。越沢明著,平成3年11月発行)において,「山の手に存在する閑静な高級住宅地・良好住宅地はいずれも大正末期から昭和初期にかけて着手された耕地整理・区画整理によって出来上がった街である。その代表例が玉川村(現世田谷区東南部)・・・において全村・全町にわたって実施された耕地整理・区画整理である。」として,「近代日本都市計画史上,特筆すべき壮挙であった。」と評価されている。 世田谷区における街づくりア本件土地の大部分(約97.8%)を占める別紙土地目録記載1の土地が属する世田谷区では,昭和57年6月に「世田谷区街づくり条例」(甲159,162)を制定した(なお,同条例は,平成3年の地域行政制度の発足に伴い地域の特性に応じた街づくりが推進されるようになったため,平成7年3月に改正された。)。世田谷区は,同条例に基づき,昭和60年に都市整備方針を策定し,平成7年にはこれを見直して「新都市整備方針」を策定した。そして,平成13年には,それを都市計画法所定のマスタープランとして位置づけ,「世田谷区都市整備方針(世田谷区の都市計画に関する基本的な方針)」(甲5)とした。この整備方針においては,土地 策定した。そして,平成13年には,それを都市計画法所定のマスタープランとして位置づけ,「世田谷区都市整備方針(世田谷区の都市計画に関する基本的な方針)」(甲5)とした。この整備方針においては,土地利用の将来像として本件土地の大部分を占める別紙土地目録記載1の土地及びその周辺の世田谷区内の土地を「低層住宅ゾーンⅠ」(低層住宅主体で低中密度,農地や緑地などが点在する住宅ゾーン)と位置付けた。 また,世田谷区は,平成6年9月に,環境保全等の施策を総合的,計画的に推進し,区民の健康で文化的な生活を実現することを目的とする「世田谷区環境基本条例」(甲313の1)を制定した。同条例では,開発事業に係る環境への配慮に関する規定も置かれており,区長は,必要があれば開発事業者に対し環境への配慮について要請することができる旨規定されている(12条)。平成11年3月には「世田谷区風景づくり条例」(甲161)を制定した。同条例は,風景づくり(同条例において,「地域の個性あふれる世田谷らしい風景を守り,育て,又はつくることをいう」と定義されている。)を総合的かつ計画的に進め,区民が愛着と誇りを持てる魅力ある街を形成することを目的とするものである。 さらに,世田谷区は,平成13年5月「第2次住宅整備方針」(甲77)を策定した。同方針は,地区の特性に応じた適切な住宅の立地を誘導し,住環境の整備を行うため,住宅地を25種類に類型化して整備方針を示しているが,本件土地は「公園緑地,公共公益施設,開発調整地区」に区分されている。なお,この区分は,農住地区,低層住宅地区,低中層住宅地区といった地区とは異なる「その他」に位置付けられており,土地利用の区分としては「公益施設」とされている。 イところで,平成13年12月,本件各建物の建築計画の ,低層住宅地区,低中層住宅地区といった地区とは異なる「その他」に位置付けられており,土地利用の区分としては「公益施設」とされている。 イところで,平成13年12月,本件各建物の建築計画の件をも契機として,世田谷区深沢1丁目及び2丁目の住民が中心となって,地区計画の早期策定に向けて準備会を結成した。同準備会は,住民集会を数回にわたり開催したり(出席者はおおむね数十人),地主らの住戸を訪問したりして,地区計画の意義を説明したり,同準備会が作成した地区計画の素案について意見交換をしたりした。また,素案に関し,対象地区内の各住戸に対してアンケート調査も実施した。そして,地区計画の早期策定を求めて,平成14年3月22日には世田谷区議会議長に対して「『(仮称)深沢1・2丁目地区計画』の早期策定を求める陳情」と題する文書(甲163)を提出して陳情し,さらに,同年4月24日には世田谷区長に対し上記アンケート調査の結果を添付した「『(仮称)深沢1・2丁目地区計画』早期策定の要望書」(甲84,164)を提出し,要望した(なお,要望者は1098名であった。)。 上記要望書に添付された地区計画の素案では,本件土地及びその周辺地域について,「現在,長谷工グループによる14~19階の板状高層を中心とした集合住宅建設が計画中」であり,将来的な問題としては,「長谷工グループの計画は,周辺の環境となじんでいるとは思えません。この計画がそのまま完成すると,周辺への環境への影響は多大で地価も低下します。建設後60年はその状態が続きます。建替えもかなり困難でスラム化する可能性もあ(る)」との認識の下に,高さの制限として,境界部で12m,最高限度を20mとするなどとされていた。 なお,世田谷区深沢1丁目及び2丁目地区については,このような動き ラム化する可能性もあ(る)」との認識の下に,高さの制限として,境界部で12m,最高限度を20mとするなどとされていた。 なお,世田谷区深沢1丁目及び2丁目地区については,このような動きがあったものの,今日に至るまで地区計画は策定されていない。 ウところで,平成14年7月に東京都が「用途地域等に関する指定方針及び指定基準」を作成し,これに基づいて各区で用途地域の見直し作業が進められたが,世田谷区でも,「用途地域見直し素案」(甲71)をまとめ,平成15年2月,区民から意見を募った。 同素案では,見直しの重点事項の1つとして,住宅地の中に中高層建築物が建てられ,その高さに対するトラブルも多くなり,一定のルール作りが必要になってきたとの認識から,住居系用途地域の絶対高さの指定を予定し,それによれば,本件土地は,第一種中高層住居専用地域で第二種高度地区として,45mの絶対的高さの指定がされることが予定されていた。これに対して,B,同46,同49,「都立大学跡地を考える会」(代表原告42)は,同月25日,世田谷区に対して45mの高さ制限をより低くするように要請する旨の意見書(甲176の1ないし4)を提出した。一方,被告長谷工は,同月26日,素案に反対すること,周辺の住環境と調和した高層住宅建設の可能性を一律に規制することは権利侵害となること等を記載した意見書(乙97)を提出した。 世田谷区は,同年6月ころ,上記素案について一部見直しを加えて原案をまとめ(本件土地に関係する上記部分は変更されなかった。),その後,世田谷区の都市計画審議会に諮った上で,それを東京都に提出した。 そして,東京都は,平成16年6月24日,都市計画決定をして,告示した(甲243の1,2)。その結果,本件土地は,それまでの第二種高度地 画審議会に諮った上で,それを東京都に提出した。 そして,東京都は,平成16年6月24日,都市計画決定をして,告示した(甲243の1,2)。その結果,本件土地は,それまでの第二種高度地区としての指定に加え,新たに絶対的な高さ制限45mが導入されることになり,その周辺地域においては高度制限10m又は12mの規制が維持されることとなった。 目黒区における街づくりア本件土地の一部(約2.2%)を占める別紙土地目録記載2及び3の土地が属する目黒区では,昭和52年に環境優良地域の保全に努める等の区基本計画を決定し,昭和59年,八雲4丁目全域をモデル地区として選定した(甲183)。昭和60年には目黒区土地利用計画(甲234)を策定し,その地域環境整備計画の中で,八雲などの良好な住環境が維持されている地域については,その街並み保全が必要であるとの認識を示した。 イそして,目黒区は,八雲4丁目地区について,住環境等の基礎調査(昭和60年10月),住民意向調査(昭和62年11月),街づくり関係住民懇談会(昭和63年3月発足)の開催,住民説明会(平成2年10月)等を経て,法的拘束力はないものの,地区の住民の合意に基づいて成り立つ約束ごとともいうべき「八雲4丁目街づくりガイドライン」(甲183)を策定し,平成3年1月,施行した。このガイドラインの内容は,八雲4丁目全域を対象とし,地区の性格により次の3つに分け,それぞれに特色ある街づくりを目指そうというものである。すなわち,低層住宅地については10m以上の建築物は建築しないこと等,駒沢通り沿道地区については15m以上(第一種住居専用地域については10m以上)の建築物は建築しないこと等,近隣商業地区については15m以上の建築物は建築しないこと等をガイドラインとして示している ,駒沢通り沿道地区については15m以上(第一種住居専用地域については10m以上)の建築物は建築しないこと等,近隣商業地区については15m以上の建築物は建築しないこと等をガイドラインとして示している。 ウまた,本件土地の東端からほぼ東に約70mの位置にあってほぼ南北方向に走る道路(通称,自由通り)の沿道地区については,平成元年度の用途地域等の変更を契機に,良好な住環境の形成を図るため,関係住民が「自由通り沿道地区街づくり協議会」を発足させ,協議会,住民説明会等を開催するなどして,地区計画策定に向けた取り組みがされた。そして,目黒区は,平成4年6月1日,「自由通り沿道八雲地区地区計画」(甲3)を都市計画決定するとともに,その決定を受けて,同地区計画の区域のうち第一種中高層住居専用地域である区域内の建築物の高さを12m以内とする等を定めた「自由通り沿道八雲地区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例」(甲177)を制定した。同地区計画は,目黒区八雲2丁目,3丁目及び本件土地の一部が含まれる八雲5丁目の各1部(約24.0ha)を対象とするものであり,自由通り沿道の第一種中高層住居専用地域(約6.0ha。おおむね自由通りから20m内の地域)については建築物の高さの最高限度を12mとすること,また,それ以外の第一種低層住居専用地域(約18.0ha)については,その土地利用の方針として,低層の住宅を中心とする住宅地として,将来にわたって良好な環境を保全することを目指すものである。 エ目黒区は,平成5年3月,「目黒区都市整備方針快適生活都市めぐろを目ざして」(甲233)を明らかにした。その中で,本件土地の一部が含まれる八雲5丁目等の住宅地について,「全体に敷地規模が大きく緑の多い良好な住宅地である。全体を公園的な雰囲気を持つ 活都市めぐろを目ざして」(甲233)を明らかにした。その中で,本件土地の一部が含まれる八雲5丁目等の住宅地について,「全体に敷地規模が大きく緑の多い良好な住宅地である。全体を公園的な雰囲気を持つ地区として整備を進め,道路空間の修景,ストリートファニチュア,モニュメントの設置により,楽しみながら歩ける街並みをつくり出し,良好な環境を保全していく。八雲地域に隣接する駒沢公園で,清掃工場の整備が計画されていることから,この整備にあたっては,地域住民の意向に充分配慮し,良好な住宅地の保全策を講ずる。」との方針を示している。 本件土地及びその周辺についての規制の経緯及び土地利用の現状ア本件土地及びその周辺地域についての用途地域の見直しは,主に,昭和48年,昭和56年,平成元年,平成8年及び平成16年に行われている。 イ本件土地の大部分を占める別紙土地目録記載1の土地(世田谷区深沢2丁目940番2雑種地3万8897㎡)については,昭和48年より前は,住居地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区であったが,昭和48年の用途地域指定により,第二種住居専用地域,第二種高度地区(絶対的高さ制限なし)とされた。その後,昭和56年,平成元年の見直しにおいては,その用途地域について変更はなかった。そして,平成8年の見直しにおいて,第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%,容積率200%。建築物の各部分の高さは,前面道路の反対側の境界線からの水平距離が20m以下の範囲内においては,当該部分から前面道路の反対側の境界線までの水平距離に1.25を乗じて得たもの以下,若しくは,当該部分から隣地境界線までの水平距離に,建築物で高さが20mを超える部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものに相当する距離を加えたものに1.25を乗じて得たものに,20 もの以下,若しくは,当該部分から隣地境界線までの水平距離に,建築物で高さが20mを超える部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものに相当する距離を加えたものに1.25を乗じて得たものに,20mを加えたもの以下,若しくは,当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離に1. 25を乗じて得たものに,10mを加えたもの以下に規制される。),第二種高度地区(絶対的高さ制限なし。建築物の各部分の高さは,北側境界線までの真北方向の水平距離に1.25を乗じて得たものに5mを加えたもの以下で,かつ,当該水平距離から8mを減じたものに0.6を乗じて得たものに15mを加えたもの以下に規制される。)とされ,平成16年の見直しにより45mの絶対的高さ制限が加わった。この高さ制限は本件各建物には適用されない(建築基準法3条2項)が,増築,改築,大規模の修繕又は大規模の模様替をする際には適用されることとなる(同条3項3号)。 なお,前記アのとおり,世田谷区が平成7年に策定した「新都市整備方針」(平成13年にマスタープランとして位置づけられ「世田谷区都市整備方針(世田谷区の都市計画に関する基本的な方針)」とされた。)では,世田谷区駒沢,深沢等の地域と一体として,低層住宅ゾーンⅠ(低層住宅主体で低中密度,農地や緑地などが点在する住宅ゾーン)とされ,また,平成13年5月に策定した「第2次住宅整備方針」においては,「公園緑地,公共公益施設,開発調整地区」とされている。 ウ別紙土地目録記載2の土地(目黒区八雲5丁目124番3宅地657.85㎡)及び同記載3の土地(目黒区八雲5丁目125番20山林198㎡。両土地の地積の合計は855.85㎡であり,本件土地の全体の地積に占める割合は約2.2%である。)については,昭和48 657.85㎡)及び同記載3の土地(目黒区八雲5丁目125番20山林198㎡。両土地の地積の合計は855.85㎡であり,本件土地の全体の地積に占める割合は約2.2%である。)については,昭和48年より前は,住居地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区であったが,昭和48年の用途地域指定により,第一種住居専用地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区とされた。その後,平成8年の用途地域見直しにおいて,第一種低層住居専用地域(絶対的高さ制限10m。建ぺい率60%,容積率150%。建築物の各部分の高さは,前面道路の反対側の境界線からの水平距離が20m以下の範囲内においては,当該部分から前面道路の反対側の境界線までの水平距離に,1.25を乗じて得たもの以下,若しくは,当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離に1.25を乗じて得たものに,5mを加えたもの以下に規制される。),第一種高度地区(建築物の各部分の高さは,北側境界線までの真北方向の水平距離に0.6を乗じて得たものに5mを加えたもの以下に規制される。)とされた。 なお,前記ウのとおり,「自由通り沿道八雲地区地区計画」では,第一種低層住居専用地域として,低層の専用住宅を中心とする住宅地として将来にわたって良好な環境を保全するとの土地利用方針が示されるとともに,建築物等の意匠等について制限が加えられている。また,目黒区が平成5年3月に策定した「都市整備方針快適生活都市めぐろを目ざして」(甲3)では,前記エのとおり,土地利用方針として,八雲5丁目地域を戸建住宅地(低層型)としている。 エ本件土地の周辺地域の土地の規制の経緯,内容については,次のとおりである。 まず,用途地域指定の経緯は次のとおりである。 域を戸建住宅地(低層型)としている。 エ本件土地の周辺地域の土地の規制の経緯,内容については,次のとおりである。 まず,用途地域指定の経緯は次のとおりである。 昭和48年より前は,世田谷区深沢1丁目の大半,2丁目2番,3番,6番ないし9番(本件土地の南側ないし西側に位置する地域),目黒区八雲3丁目の一部と,5丁目の東側の大半(本件土地の東側に位置する地域)が住居専用地区(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区であり,世田谷区深沢2丁目4番,5番,10番ないし12番の土地(本件土地の西側ないし北西側に位置する地域)及び東京都立駒沢オリンピック公園(本件土地の北側に位置する)は住居地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区であったが,昭和48年の用途地域指定により,世田谷区深沢2丁目2番,7番及び8番,目黒区八雲3丁目及び5丁目(ただし,東京都立駒沢オリンピック公園を除く。)が第一種住居専用地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区とされ,世田谷区深沢2丁目3番ないし6番,9番ないし12番,東京都立駒沢オリンピック公園が第二種住居専用地域,第二種高度地区(絶対的高さ制限なし)とされた。そして,平成元年には,自由通り沿道20mの範囲が第一種住居専用地域,第一種高度地区から第二種住居専用地域,第二種高度地区(絶対的高さ制限なし)に変更された。 その後,平成8年の用途地域見直しにおいて,世田谷区側においては,深沢2丁目3番ないし6番,9番ないし12番及び東京都立駒沢オリンピック公園の世田谷区側一帯が,第二種住居専用地域から第一種中高層住居専用地域に変更され,その他の第一種住居専用地域であった地域は第一種低層住居専用地域(絶対的高さ制限10m)に変更されたが,本件土地のほぼ南側に隣接してほ 帯が,第二種住居専用地域から第一種中高層住居専用地域に変更され,その他の第一種住居専用地域であった地域は第一種低層住居専用地域(絶対的高さ制限10m)に変更されたが,本件土地のほぼ南側に隣接してほぼ東西方向に走る道路(通称,八雲文化通り)の南北両側は,第二種低層住居専用地域(絶対的高さ制限12m),第一種高度地区に指定された。目黒区側では,自由通りの東西両側及び東京都立駒沢オリンピック公園の目黒区側一帯等が,第二種住居専用地域から第一種中高層住居専用地域に変更され,その他の第一種住居専用地域であった地域は第一種低層住居専用地域(絶対的高さ制限10m)に変更された。そして,平成16年の見直しにおいて,深沢2丁目3番ないし6番,9番ないし12番,自由通りの東西両側及び東京都立駒沢オリンピック公園について45mの絶対的な高さ制限が加わった。 その結果,現在は,次のとおりとなっている。 a 本件土地の西側ないし北西側に位置する世田谷区深沢2丁目3番ないし6番,9番ないし12番,本件土地の北側に隣接する東京都立駒沢オリンピック公園一帯及び自由通りの東西両側が,第一種中高層住居専用地域,絶対的高さ制限45mの第二種高度地区に指定されている。なお,このうち,自由通りの東西両側は,上記ウのとおり「自由通り沿道八雲地区地区計画」(甲3)の都市計画決定を受けて定められた「自由通り沿道八雲地区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例」により12mの絶対的高さ制限がある。 b 八雲文化通りの南北両側が,世田谷区側では第二種低層住居専用地域(絶対的高さ制限12m),第一種高度地区に指定されている。 c それ以外の大部分の土地は,第一種低層住居専用地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区である。 二種低層住居専用地域(絶対的高さ制限12m),第一種高度地区に指定されている。 c それ以外の大部分の土地は,第一種低層住居専用地域(絶対的高さ制限10m),第一種高度地区である。 オ本件土地の周辺地域の土地の利用の現状本件土地周辺(深沢1丁目12番ないし17番,23番ないし32番,37番ないし41番,同2丁目,八雲2丁目1番ないし4番,14番ないし23番,同3丁目1番ないし6番,16番ないし19番,同5丁目)には,4階から6階建ての建築物も存在する。本件土地に近い位置にあり,原告らの一部の者が居住するマンションA,マンションB,マンションCはいずれも6階建てである。しかし,大部分は1階から3階建てであり,世田谷区や目黒区の住民の中には,新築や改築の際に,近隣の景観に配慮して3階建てとせずに,2階建てとする者もいた。 2 被告らによる本件土地取得及び本件建築計画立案の経緯前記前提事実(第2章第2)及び証拠(甲9ないし11,191,250,乙2,4,5,35の1ないし16,乙39の1ないし4,乙96)によれば,被告らによる本件土地の取得及び本件建築計画の立案の経緯について,以下の事実が認められる。 東京都立大学理学部・工学部が平成5年4月に八王子市に移転した後,その跡地の利用について検討されていたが,東京都は,平成12年4月26日,東京都立大学跡地の利用についての都の基本的な考え方をまとめた(甲9)。そこでは,周辺地域の居住環境等を配慮しながら,調和のとれた街並み形成を図ることが望ましいとの基本方針などが示されている。そして,世田谷区長は,同年6月,同区として取得計画はないが,その土地の売却に際しては,跡地に隣接する駒沢公園,周辺地域にある低層住宅地等の状況を踏まえて,住居系を中心とした公 などが示されている。そして,世田谷区長は,同年6月,同区として取得計画はないが,その土地の売却に際しては,跡地に隣接する駒沢公園,周辺地域にある低層住宅地等の状況を踏まえて,住居系を中心とした公共・公益的な利用が図られるように配慮願いたいとの希望を示した(甲10)。 そして,同年12月,この東京都立大学跡地である別紙土地目録記載1及び3の土地が一般競争入札に付されることとなったが,その入札の参加要領(甲11)では,契約に当たり次の条件を付す旨が明記されていた。すなわち,土地利用に当たり,ア周辺は戸建ての低層住宅等に囲まれた良好な居住環境を有する地区で定住意向が強い地区であり,住居系を中心とした土地利用を図ることを目標とすること,イ周辺地域の居住環境等を配慮しながら,調和のとれた街並み形成を図ることを基本方針とすること,ウ周辺環境,自然環境,都市景観に配慮し,環境共生を目指した建築物を整備すること等の東京都の基本的な考え方を踏まえた計画を策定し,契約締結の日から5年以内に,信義を重んじ誠実に工事に着手しなければならないこととされていた。 そして,被告長谷工は,計画の基本方針としては都市景観,自然環境など周囲と調和した計画にする等とする世田谷区深沢2丁目計画事業計画書(乙5)を示して入札し,平成13年1月16日,同土地の売却予定者を被告らのグループ(代表企業:被告長谷工)とする内定を得て,同年3月3日,東京都から同土地を買受けた。さらに,被告長谷工は,平成13年9月28日,別紙土地目録記載2の土地を株式会社東急ストアから購入した。 被告長谷工は,本件土地を取得後,後記4認定のとおり近隣住民等との交渉を経て建築計画を改訂したが,その概要を別紙全体敷地配置図記載のとおりとする本件建築計画に基づいて,ア平成14年 入した。 被告長谷工は,本件土地を取得後,後記4認定のとおり近隣住民等との交渉を経て建築計画を改訂したが,その概要を別紙全体敷地配置図記載のとおりとする本件建築計画に基づいて,ア平成14年5月30日,世田谷区,目黒区より都市計画法29条の開発行為の許可を得(甲250。この開発許可に対しては,周辺の住民が取消を求めて東京都開発審査会に対して審査請求をしたが,同年10月17日,行政不服審査法40条1項により却下された(乙39の1,2)。),イ同年7月5日には東京都知事による一団地認定処分(建築基準法86条1項)を得(この一団地認定処分に対しては,住民から取消しを求める審査請求がされたが,平成15年2月24日,棄却の裁決がされた(乙39の3)。),ウ平成14年7月15日日本建築センターに建築計画概要書(乙2)を提出し,同月19日にS1ないしS4敷地,同月30日にN4敷地,同月31日にN1ないしN3敷地上の各建築物についてそれぞれ建築確認を得た((乙35の1ないし8。なお,S1ないしS4,N1ないしN3敷地上の建築物については平成15年2月6日に,N4敷地上の建築物については平成14年10月2日に,バルコニー出幅変更等の計画変更により建築確認を改めて得た(乙35の9ないし16)。また,これらの建築確認については,周辺の住民が建築確認処分の取消しを求めて審査請求したが,平成15年3月24日,棄却の裁決がされた(乙39の4)。)。 3 本件建築計画の法令違反の有無原告らは,本件建築計画について,建築基準法違反等がある旨主張する(別紙受忍限度に関する主張の要旨中の原告らの主張4及び8参照)。そこで,以下においては,本件建築計画の内容,手続等について,原告らの主張との関係で必要な限度で検討することとする。 一団地認定の規定(建築基 に関する主張の要旨中の原告らの主張4及び8参照)。そこで,以下においては,本件建築計画の内容,手続等について,原告らの主張との関係で必要な限度で検討することとする。 一団地認定の規定(建築基準法86条1項)の適用の可否についてア原告らは,建築基準法86条1項の規定(一定の複数建築物に対する制限の特例)の適用は公共目的に限定されるべきであり,非公共目的である本件各建物への適用は違法である旨主張する(上記原告らの主張4)。 しかしながら,同項は,「一団地・・・内に二以上の構えを成す建築物で総合的設計によって建築されるもののうち,国土交通省令で定めるところにより,特定行政庁がその各建築物の位置及び構造が安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めるもの」に対する特定の建築基準法の規定の適用について,「これらの建築物は,同一敷地内にあるものとみなす。」旨規定しているところであり,建築基準法のほか,国土交通省令を通覧してみても,同項の適用を公共目的に限定すべきことを規定したものはない。かえって,平成5年9月8日付け建設省住宅局長通達「敷地共同利用の促進のための建築基準法第86条第1項及び第2項の規定の運用について」(住街発第113号。乙115)は,上記規定が民間企業による建築にも適用されることを前提としている。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 イ原告らは,本件各建物について, 「都市計画一団地の住宅経営計画標準について」(昭和32年8月6日付け計発第41号通知。甲321)で定められた基準及び 「敷地共同利用の促進のための建築基準法第86条第1項の規定の運用について」(昭和60年2月8日付け建設省住街発第5号住宅局長通達。甲324)の第2の2の基準に適合しない旨主張する(上記原告らの主張4ア) 共同利用の促進のための建築基準法第86条第1項の規定の運用について」(昭和60年2月8日付け建設省住街発第5号住宅局長通達。甲324)の第2の2の基準に適合しない旨主張する(上記原告らの主張4ア)。 しかしながら,上記の住宅経営計画標準は,都市計画法11条1項8号の一団地の住宅施設を定める際の標準を示しているものであり,建築基準法86条1項に関する運用基準ではない。また,上記の住宅局長通達は,平成5年9月8日付け住街発第113号住宅局長通達により既に廃止されている。 したがって,原告らの上記主張も採用できない。 ウまた,原告らは,H棟とI棟,J棟とK棟はそれぞれ別個の建築物であるとして, H棟とI棟,J棟とK棟をそれぞれ1棟とする一団地認定の申請は,複数建物を1つの建物とする申請であり,違法である(上記原告らの主張4),また, H棟とI棟,J棟とK棟について,相互間の外壁の距離が「建築基準法第86条第1項,同条第2項及び第86条の2第1項の規定に基づく認定基準」(平成11年5月27日付け11都市建調第33号。甲300)第2の9の基準を満たさない(上記原告らの主張4イ)旨主張する。 上記各主張のうち,の一団地認定申請の違法をいう部分は,実質的にはの認定基準を満たさない旨の主張に帰すると解されるので,以下,の主張について検討する。 建築基準法86条1項の一団地建築物設計制度は,いわゆる総合的設計により2以上の建築物を建築するような建築計画で良好な市街地環境の整備改善に資するものについて,一敷地一建築物の原則の例外を認めることにより同法上の各規制の適用を合理化し,市街地環境の整備改善を促進しようとする制度であり,同項は,その要件として,「特定行政庁がその各建築物の位置及び構造が安全上,防火 建築物の原則の例外を認めることにより同法上の各規制の適用を合理化し,市街地環境の整備改善を促進しようとする制度であり,同項は,その要件として,「特定行政庁がその各建築物の位置及び構造が安全上,防火上及び衛生上支障がないと認める」ことを規定する。そして,これを受けて,建設省住宅局長(当時)による「一団地の総合的設計制度及び連担建築物設計制度の運用指針」(平成11年4月28日付け建設省住街発第48号局長通達)が発出され,その趣旨を踏まえて,東京都は上記認定基準を定め,特定行政庁である東京都知事はこれに従って一団地認定処分を行っている。 ところで,上記建設省住宅局長通達による運用指針は,「第1 運用に当たっての基本的な考え方」として,「建築計画の内容,敷地の周囲の土地利用の状況,都市施設の整備の状況等から第3の認定準則又は第4の技術的基準によることが必ずしも適切でないと認められる場合にあっては,これらの趣旨に従い,総合的な判断に基づき運用すること。」とした上で,「第4 技術的基準」の「1 採光,通風等の審査」において,「対象区域内においては,容積率制限(略)及び建ぺい率制限(略)についても,複数建築物が一体として適用され,個々の敷地ごとには適用されないこととなること,また,隣地斜線制限及び北側斜線制限(略)が適用されないこととなることに鑑み,市街地の衛生環境,特に採光,通風等について,個別に審査すること。」,「対象区域内の各建築物の各部分の高さに応じ,各建築物間に適切な距離が確保されているなど,採光,通風上有効な空地等が設けられているものであること。(以下略)」と定めている。 また,上記東京都の認定基準は,「Ⅱ 取扱基準」として,「本基準の個々の規定に適合しない場合であっても,各建築物の位置及び構造について総合的な配 のであること。(以下略)」と定めている。 また,上記東京都の認定基準は,「Ⅱ 取扱基準」として,「本基準の個々の規定に適合しない場合であっても,各建築物の位置及び構造について総合的な配慮がなされているものについては,弾力的に取扱うものとする。」とした上で,「第2 適用基準」の「9 斜線制限等」において,「住居系用途地域内の建築物で高さが20メートルを超えるもの・・・について,建築物相互間の外壁の距離は,採光,通風を考慮し,建築物の高さ(2つの建築物のうち最高の高さをいう。)の平方根の2分の1以上とすること。」と定めている。 以上によれば,上記運用指針及び上記認定基準は,一団地認定の対象区域内の建築物について,衛生環境,とりわけ採光,通風の確保を目的として,建築物相互間に一定の距離を確保することを定め,また,距離が確保されていない場合であっても,各建築物の位置及び構造等から上記の点に総合的な配慮がされている場合には,弾力的な取扱いとして特定行政庁たる東京都知事が一団地認定処分をすることを認めるものということができる。 これを本件についてみると,仮に,原告らが主張し,また原告67作成の平成17年1月26日付け意見書(甲299)が指摘するように,H棟とI棟,J棟とK棟とがそれぞれ別個の建築物であるとすると,これら建築物相互の距離は認定基準の第2の9に抵触する可能性があるものといえる。 しかしながら,そもそも建築物が全体として1棟であるか否かは,当該建築物が機能面,構造面,外観等の観点から一体性を有するか否かについて,問題となっている法規の趣旨,目的に照らし総合的に検討すべきものと解されるところ,H棟とI棟,J棟とK棟が上記の観点から一体性を有するか否かは,本件において提出されている資料のみ るか否かについて,問題となっている法規の趣旨,目的に照らし総合的に検討すべきものと解されるところ,H棟とI棟,J棟とK棟が上記の観点から一体性を有するか否かは,本件において提出されている資料のみからは一義的に明らかではなく,特に,上記各棟が構造面においてどのような関係にあるのかといった専門技術的な問題についてはそのようにいわざるを得ない。 さらに,上記説示のとおり,上記認定基準の個別規定に適合しない場合であっても,採光,通風の確保の観点から総合的な配慮がされている場合には一団地認定をするに妨げないとされているところ,本件において,上記各棟の採光,通風について総合的な配慮がされていないことを認めるに足りる証拠はない。 そして,他に本件一団地認定処分が違法であることをうかがわせる証拠もない。 してみれば,本件一団地認定処分が違法であると認めることはできないというべきであり,原告らの上記主張は採用できない。 東京都環境確保条例等の手続違反の有無について原告らは,被告らに数々の違法行為があったとして,東京都環境確保条例等の手続違反があった旨を主張している(上記原告らの主張8及び)ので,以下,これらの点について検討する。 ア土壌汚染関係の調査について証拠(甲289,293,295,乙36の1及び2,乙39の5,乙82)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 被告長谷工は,平成14年1月に入ってから,解体工事に関し,東京都環境局との間で,東京都環境確保条例に基づく手続を進め,同月17日,その届出をした。東京都が,被告長谷工に上記条例117条1項に基づく「土地利用の履歴等調査届出書」を提出させたところ,総水銀,鉛,カドミウムが,「土壌・地下水汚 保条例に基づく手続を進め,同月17日,その届出をした。東京都が,被告長谷工に上記条例117条1項に基づく「土地利用の履歴等調査届出書」を提出させたところ,総水銀,鉛,カドミウムが,「土壌・地下水汚染による調査・対策指針運用基準」(環境庁)の含有参考値を上回っていることが判明した。そこで,同条例117条3項に基づき,同年2月「汚染拡散防止計画書」(乙36の2)を提出させ,その計画内容を審査したところ,東京都土壌汚染対策指針に従って策定されていたので,その計画のとおり拡散防止対策を採るように通知した。そして,被告長谷工から,同条例117条4項に基づく「汚染拡散防止措置完了届出書」(乙36の1)が提出され,東京都は,土壌汚染調査及びその対策が完了しているものと認めた。 また,内藤環境管理株式会社は,同年8月7日から同月15日にかけて,本件土地の土壌汚染に係る環境基準についての土壌調査のために資料採取,計量を行った(乙82)。その結果,上記条例において対象とされている有害物質の含有量は,いずれも基準値以下であった。 なお,「都立大学跡地を考える会」及び「目黒区八雲の生活環境を守る会」は,東京都知事に対し,平成13年12月27日,被告長谷工の行おうとしている工事が,上記条例等に従っていないこと,土壌汚染調査が不十分であること等を指摘した要望書(甲293)を提出し,また,平成14年1月28日,被告長谷工に対し土壌の再調査に関し引き続き指導することや同条例124条の適用について指導することを要望した(甲295)が,東京都知事はこの要望を採用しなかった。また,周辺住民らは,同年5月17日上記条例の趣旨に基づく申請に対する不作為に係る異議申立てをしたが,これについても,行政不服審査法50条1項により却下の決定がされた(乙3 この要望を採用しなかった。また,周辺住民らは,同年5月17日上記条例の趣旨に基づく申請に対する不作為に係る異議申立てをしたが,これについても,行政不服審査法50条1項により却下の決定がされた(乙39の5)。 ところで,上記内藤環境管理株式会社による調査について,原告21作成の意見書(「都立大学深沢校舎跡地における化学物質調査の不法性に関する意見書」・甲88)は,化学物質24項目のうち,4項目(チウラム,シマジン,チオベンカルブ及び1,3-ジクロロプロペン)については測定点が同跡地の4地点に限られており,同跡地全域について調査したとはいえず,調査に遺漏があると指摘する。 しかしながら,上記調査においては,測定地点の位置等からして汚染が大きいと推測される地点を選定し調査をしたと考えられ,上記4項目はその4地点での測定によって基準値以下であったのであるから,上記4項目の調査に遺漏があったとまではいえない。現に,東京都知事も,測定地点に問題があるとの指摘はしていない(同条例119条は,知事は,同条例第四章第三節の規定に基づき行う汚染土壌の調査及び処理等に関し,必要に応じ指導及び助言を行うものとするとしている。)。 以上の認定説示によれば,本件土地の土壌汚染に関する調査に遺漏があったということはできず,東京都環境確保条例に反するとの原告らの主張は理由がない。 イ放射性物質関係の調査について放射性物質関係の調査について,原告らは,放射線管理区域外の調査をしなければならない旨主張し,原告21作成の意見書「都立大学深沢校舎(旧理学部・工学部)跡地土壌の放射性物質調査に関する意見書」(甲87)も,放射線管理区域外での放射性物質残存の可能性を指摘する。 しかしながら,放射性同位元素等 見書「都立大学深沢校舎(旧理学部・工学部)跡地土壌の放射性物質調査に関する意見書」(甲87)も,放射線管理区域外での放射性物質残存の可能性を指摘する。 しかしながら,放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律は,放射性同位元素又は放射線発生装置の使用を廃止等したときに,その使用者等に放射性同位元素による汚染を除去すること等を求めている(同法28条)が,土地開発をする際に改めて調査をすることまでは求めていない。また,東京都環境確保条例は,一定面積以上の土地において土地に切り盛り,掘削等を行う者(土地改変者)に対し,化学物質24項目について土壌汚染調査とその対策を求めているが,放射性物質はこれに含まれていない。 そして,乙第38号証によれば,東京都立大学の移転に伴い,社団法人日本アイソトープ協会が,東京都立大学理学部放射線施設において平成3年2月12日から同年3月30日までの間に汚染検査及び除染作業を行い,その除染作業完了後汚染検査を行った結果,検出限界値以下であったことが認められる。 こうしたことに徴すると,放射線管理区域外の調査をしていないことをもって,ただちに違法ということはできない。 小括以上によれば,本件各建物の建築計画について,建築基準法等の法令の違反があるとの原告らの主張は,いずれも採用できない。 4 本件各建物建築に至る経緯等原告らは,被告らによる受忍限度を超えた法益侵害の重要な柱として,被告らが,原告ら,世田谷区環境審議会,国会の論議等に一切耳を貸さずに,本件各建物の建築工事を強行した旨を主張する(別紙受忍限度に関する主張の要旨中の原告らの主張7参照)。そこで,以下,本件各建物の建築に至る経緯について検討する。 事実の経緯前記前提事実(第2 物の建築工事を強行した旨を主張する(別紙受忍限度に関する主張の要旨中の原告らの主張7参照)。そこで,以下,本件各建物の建築に至る経緯について検討する。 事実の経緯前記前提事実(第2章第2)及び証拠(甲12の1及び2,甲14,73,92,93,108,133,137,138,187の1ないし187の4,甲246,250,276,277,283の1及び2,甲290ないし292,294,313の1,乙19,30,31の1ないし6,8,9,乙32の1ないし4,乙33の1,乙49,51の1,2,乙52の1,2,乙53,87,90,91,96,証人A)によれば,以下の事実が認められる。 ア被告らは,東京都との間で,平成13年3月30日,本件土地の大部分を占める東京都立大学跡地について売買契約を締結し,同年6月29日その引渡しを受けた。そして,同年7月に入ってから,本件建築計画の概要を説明するために,周辺地域の住民に対して計画概要説明書の配布を開始した。 イ世田谷区長は,平成13年8月1日,被告長谷工に対し,「『都立大学深沢校舎跡地』開発計画に係る要望について」と題する文書(甲12の1)をもって要望を伝えた。その要望は,多数の項目に及んでいるが,本件における原告らの請求と関連する事項としては, 開発計画は,住民の要望意見等の内容を十分に検討し,できるだけ計画に反映すること, 東京都が入札時に示した「基本的な考え方」を踏まえた計画にすること,区が定めた各種条例等の規定に準ずることはもちろんのこと,区の街づくりの指針である「新都市整備方針」や「住宅整備方針」に適合した計画とすること, 建物の高さや配置など,周辺住宅地との街並みに配慮した計画とすることなどが挙げられていた。 これに対して,被告長谷工は,同年10月 市整備方針」や「住宅整備方針」に適合した計画とすること, 建物の高さや配置など,周辺住宅地との街並みに配慮した計画とすることなどが挙げられていた。 これに対して,被告長谷工は,同年10月15日に至り,回答書(甲12の2)により回答した。その内容は,住民の要望意見等については,今後検討の上,受け入れられる項目については計画に反映して,住民へ提案すること,東京都が示した「基本的な考え方」に配慮した計画とすること,高さや配置など周辺の街並みに配慮した計画とすることなどであった。 ウ被告長谷工は,平成13年9月に入って,9日及び10日に世田谷区において,12日に目黒地区において,第1回計画概要説明会を開催し,本件各建物の建築計画(第1次案・甲187の1)について説明した(乙31の1ないし3)。原告ら住民は,その際,緊急車両等のための道路設置,車の出入り口位置等の問題,樹木の保存等の具体的な意見を述べる一方で,そもそも基本方針として本件建築計画に反対であることを前提として,建物の高さは12mを上限とすべきである,計画を一から練り直すべきである等本件建築計画の抜本的な見直しを強く求めた。 被告長谷工は,上記説明会における住民側の意見等を踏まえて,本件建築計画の第2次案(甲187の2)を作成し,同年10月19日及び27日に世田谷において,同月20日に目黒地区において,それぞれ第2回計画概要説明会を開催し,その説明をした(乙31の4ないし6)。第2次案では, 本件土地の南端に配置することを予定していた19階建ての建物を本件土地の中程に配置することにし(D棟),南端には14階建ての建物を配置することにしたり(I棟及びJ棟), H棟の配置についても敷地境界線からの距離を13mから20mに長くし, 東側に配置していた1棟の建物 中程に配置することにし(D棟),南端には14階建ての建物を配置することにしたり(I棟及びJ棟), H棟の配置についても敷地境界線からの距離を13mから20mに長くし, 東側に配置していた1棟の建物を2棟に分離し(K棟及びL棟), サービス車両用ロータリーを設けるなどの変更をした。 なお,被告長谷工は,この間の同年9月28日,別紙物件目録記載2の土地について株式会社東急ストアと売買契約を締結し,購入した。 また,上記建築計画については,同年11月21日に「目黒区八雲の生活環境を守る会」が,その見直しを求めて,「東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」(乙91)に基づき,紛争調整申出をし,同年12月12日及び19日に東京都(東京都建築紛争調整室)により本件土地近隣住民関係者と被告長谷工との間のあっせん・調停が行われたが,不調となった(乙31の9)。 エところで,世田谷区環境審議会は,区の環境の保全等に関する施策を総合的かつ計画的に推進する上で必要な事項を調査審議するための区長の附属機関である(「世田谷区環境基本条例」10条。甲313の1)が,平成13年10月以降,全体会及び専門部会等において,本件建築計画について検討を重ねた。 同月29日に開催された全体会において,委員から,上記第2次案における各建物の高さ,配置,車両増加による交通渋滞の問題等について,質問,疑問,批判等が出され,これらの意見等については専門部会において検討した上で,環境審議会としての意見を検討することとされた(甲246)。 同年12月17日に開催された専門部会では,事務局から,上記第2次案に関して,その計画案をベースにして,事業者と改善点について話し合っていきたいとの考え方が示された。具体的には 6)。 同年12月17日に開催された専門部会では,事務局から,上記第2次案に関して,その計画案をベースにして,事業者と改善点について話し合っていきたいとの考え方が示された。具体的には, ボリューム感,圧迫感を軽減して,周辺との調和を求める,東西方向と南北方向に軸となるような自由通路,貫通通路を設置して,開放性を持たせる, 駐車場の出入り口について適正な交通処理計画となるように指導していきたいというものであった。また,委員からの意見等に対し,事務局から,上記について,高さの低減,分節化,スリットの設置,建物のセットバックなどの手法を組み合わせて指導していきたいが,事業者としては住戸数は減らしたくないと言っており,区の考え方と真っ向からぶつかるとの見通しも示された(甲283の1)。 さらに,その後,平成14年2月6日開催された専門部会において,委員から,後記カの第3次案(甲187の3)について,区としてどのような方針で臨むのかとの質問が出され,事務局から,被告長谷工に対しては,上記ないしの3点について重点的に指導していること,第3次案はこうした指導を受けての変更であるが,事業者はこれ以上住戸数や延べ面積は減らせないと言っており,区としてこれ以上の指導は難しいと思われる旨の説明がされた(甲283の2)。 オ平成14年1月に入って,被告長谷工は,解体工事に関し,東京都環境局との間で,東京都環境確保条例に基づく手続を開始するとともに,近隣住民に対する説明を始めた。住民に対する説明の際には,同月8日付けの解体工事念書(甲290)や解体工事施工計画書(甲108)に基づいて,その概要を説明した。解体工事念書は, 解体工事に当たっては,現場管理を徹底すること, 作業時間は,日曜日及び祝日以外の日に,原則として午前8時 290)や解体工事施工計画書(甲108)に基づいて,その概要を説明した。解体工事念書は, 解体工事に当たっては,現場管理を徹底すること, 作業時間は,日曜日及び祝日以外の日に,原則として午前8時から午後6時まで(ただし,振動・騒音を伴う重機械類を使用する工事は午後5時30分まで)とすること, 騒音,振動,粉塵対策をとり,必要に応じて防音パネル・シート養生等をすること, 解体工事の施工に起因して生じた損害については原状回復又は賠償をすることなどを被告長谷工が確約する旨の内容が記載されている。そして,同月17日には近隣住民を対象にして解体工事説明会を開催することを予定していた。 これに対し,「都立大学跡地を考える会」及び「目黒区八雲の生活環境を守る会」が同月11日住民集会(参加者80人)を開催し,上記住民説明会のボイコットを確認した。また,住民らが同月15日早朝から本件土地付近で解体工事反対の抗議集会を開催し,その模様については毎日新聞により報道された。「深沢の環境を守る会」(連絡先は原告42)は,被告長谷工に対し,東京都環境確保条例に基づく手続がされていないこと,現時点で安全性に配慮した解体工事についての明白な説明をしてもらうことが不可能であると考えられることなどを理由として,同月14日付け「『(仮称)世田谷区深沢2丁目計画』における解体工事説明会の延期についての要望」(甲292)を提出するとともに,東京都都市計画局長に対して,被告長谷工が解体工事に着手することがないように指導することを要望する趣旨の書面(「都立大学理工学部跡地『(仮称)世田谷区深沢2丁目計画』における解体工事についての要望」・甲294)を提出した。 以上の経緯もあり,被告長谷工が開催を予定していた上記解体工事説明会には,結局,住民らの参加はなかっ 称)世田谷区深沢2丁目計画』における解体工事についての要望」・甲294)を提出した。 以上の経緯もあり,被告長谷工が開催を予定していた上記解体工事説明会には,結局,住民らの参加はなかった(乙31の8)。 カ被告長谷工は,平成14年2月下旬までの間に,本件建築計画について第3次案(甲187の3)をとりまとめた。すなわち,上記エないし記載の世田谷区からの3点の指導を踏まえて,周辺への影響が大きいと考えられるB棟ないしE棟,J棟,K棟及びM棟の一部の階数を削減し(その分,周辺への影響が比較的小さいと考えられるG棟の一部及びL棟の全部について階数を増加させた。なお,J棟については,10階部分を9階や5階に削減する一方で5階部分を7階にした。),C棟及びH棟のセットバックを行ったり,東西に通り抜ける通路を確保し,ビオトープを設置するなどした。そして,同月23日から26日にかけて,本件各建物の高さの2倍の距離の範囲内の住戸(約1000戸)を戸別訪問し,この第3次案について説明(不在等の場合には資料の配布)した(乙51の1,2)。 キ被告長谷工は,平成14年4月から,「深沢2丁目計画だより」(乙30)を発行したり,常設説明会場を開設するなどして,本件工事について説明する態勢を組むとともに,同月4日,解体工事に着手した。 これに対し,同年5月1日には,「世田谷区深沢地区・目黒区八雲地区合同住民集会参加近隣住民一同」の名義で,被告長谷工に対し,解体工事に伴うダンプ・トラック等による振動,騒音,粉塵などが著しく,近隣住民の生活環境は激変し受忍の限度を超えているとして,「解体工事にかかわる申し入れについて」と題する文書(甲277)が提出された。同文書は,同年4月27日に開催した集会における討論により決定されたもので 生活環境は激変し受忍の限度を超えているとして,「解体工事にかかわる申し入れについて」と題する文書(甲277)が提出された。同文書は,同年4月27日に開催した集会における討論により決定されたものであるというのであり,その内容は, 休業日及び作業時間振動,騒音,粉塵の抑制,住環境の測定,記録, 作業地内の土壌・地下水調査及び大気汚染の防止, 事故防止, 交通管理, 家屋調査及び被害補償等, 工事責任者の常駐, 管理,連絡体制の整備等の項目からなるものであり,これについての被告長谷工の見解を同年5月10日までに回答の上,住民集会の場で説明するよう求める内容となっている。 これを受けて,被告長谷工は,同月10日,解体工事協定書案を提示した(甲276)。また,同年6月2日,「薬剤使用の静穏工法採用についての見解書」(乙49)により,薬剤使用による静穏工法は効果が期待できないので,圧砕機による破壊工法を採る旨の方針を発表した。 クこうした状況の下で,世田谷区長は,上記エ記載のとおりの審議,検討がされていた環境審議会に対する諮問を経た上で,平成14年5月14日,被告長谷工に対して,「世田谷区環境基本条例」等に基づき,開発事業等の実施に係る環境への配慮について,「環境配慮要請書」(甲92)により要請した。その内容は, 高層建物によるボリューム感・圧迫感その他日照阻害等の影響の低減を図ること(具体的には,中央の19階建てのD棟の形状を再検討すること,H・I棟及びJ・K棟をセットバックさせること,建物が連続する箇所は雁行させること,ビル風や日照阻害が生じないような配置・形状とすることである。), 周辺に開かれたオープンスペースを設けること, 駐車場の出入り口の位置を含め,適正な交通処理計画とすること, 既存樹木の保全に務めるとと 風や日照阻害が生じないような配置・形状とすることである。), 周辺に開かれたオープンスペースを設けること, 駐車場の出入り口の位置を含め,適正な交通処理計画とすること, 既存樹木の保全に務めるとともに,快適で質の高い空間作りをするための適正な緑化等の計画を作成すること, その他環境への負荷の低減を図ることなどのほか,住戸数による周辺の公共公益施設に対する負担増について検討することや,一定の合意に達するまで周辺住民との話し合いを継続することなどを要請するものであった。 これに対し,被告長谷工は, B棟ないしD棟,H棟ないしL棟の各バルコニーを10cm減らすこと,19階塔屋の高さを70cm減らすこと,H・I棟,J・K棟を20cm北側に移動させること等によりボリューム感・圧迫感その他日照阻害等の影響の低減を図ること, 提供公園や歩道状空地を設けるなどしてオープンスペースを確保すること, 車両出入り口の変更については,住民の意向に配慮したものとすること,交通渋滞については,居住者の車両による交通量の予測をしており,バスベイや本件土地西側に小型車4台程度停車可能なサービス車両用ロータリーを設けるなど適正な交通処理計画とすること, 既存樹木を50本残すという当初の計画を変更して75本残すことにすること,樹木やビオトープ管理も管理会社に継承すること, その他環境への負荷の低減を図ることや住戸数による周辺の公共公益施設に対する負担増とならないようにすることを検討し,一定の合意に達するまで周辺住民との話し合いを誠意を持って継続することなどの回答をした(甲93)。 なお,同年6月28日には,衆議院国土交通委員会で,委員が,本件各建物の建築計画にも言及しながら,景観等の問題について質問したのに対し,国土交通大臣ら同省幹部が一般論と た(甲93)。 なお,同年6月28日には,衆議院国土交通委員会で,委員が,本件各建物の建築計画にも言及しながら,景観等の問題について質問したのに対し,国土交通大臣ら同省幹部が一般論として答弁したということもあった。 ケこのような状況の下で,被告長谷工は,平成14年5月30日に都市計画法29条の開発行為の許可を世田谷区及び目黒区から得,同年7月5日には東京都知事から建築基準法86条1項に基づく一団地認定通知を受けた。 また,被告長谷工は,世田谷区長からの環境配慮要請を受け,同年7月中旬ころまでの間に,上記クの回答に沿って本件建築計画の第4次案(甲187の4)をとりまとめた。それは,おおむね環境配慮要請に対する回答に沿ったものであり, B棟ないしD棟,H棟ないしL棟の各バルコニーを10cm減らす, 19階塔屋の高さを70cm減らす,H・I棟,J・K棟を20cm北側に移動させる, L棟を10階建てから9階建てにするというものである。そして,同月18日から24日にかけて,本件各建物の高さの2倍の距離の地域内の住戸を戸別訪問し,第4次案の具体的内容のほか,その計画に基づいて本件工事を開始すること及びその工事の施工に関し近隣住民に対し約束する事項について,詳細な資料を交付して説明(不在等の場合には資料の配布のみ)をした(乙52の1,2)。 そして,同月31日には全ての敷地上の建築物について建築確認を得,同年8月26日には杭基礎の工事に着工した。 コ世田谷区環境審議会は,平成14年11月22日,同年4月に世田谷区長から諮問を受け,同年5月に答申した本件建築計画の実施に係る環境への配慮について,その後の審議の結果(なお,圧迫感については,部会において,委員会事務局に区内の既存の類似事例の形態率 月に世田谷区長から諮問を受け,同年5月に答申した本件建築計画の実施に係る環境への配慮について,その後の審議の結果(なお,圧迫感については,部会において,委員会事務局に区内の既存の類似事例の形態率の調査をさせ,それについて分析し,討議したりもした。)を「深沢2丁目計画新築工事に対する見解書」(甲14)にとりまとめて,世田谷区長に対し意見を具申した。そこで示された見解は, 本件建築計画が周辺地域と調和のとれた街並み形成を図るという点の配慮が不十分である, 本件各建物によって生じる圧迫感がこれまで経験したことのない大きなものであり,部分的変更や新植樹木の増加といった対策では不十分である, 被告らが自発的に形態率の低減を図り,また,周辺住民との合意形成に努めることを強く望むというものである。 これを受けて,世田谷区長は,同月29日,被告長谷工に対して,「世田谷区環境基本条例」及び「世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則」に基づく手続の終了通知をする際に,併せて, 世田谷区環境審議会から「調和のとれた街並み形成を図る」とする点については配慮がきわめて不十分であるとの見解書が提出されていること, その内容に十分配慮して自発的に建物形状等のさらなる変更を行うことを強く要望すること, 住民との話し合いを誠意を持って継続するとともに,計画変更があった場合は直ちに届け出ることを伝えた(甲133)。 なお,これに対して,被告長谷工は,翌平成15年9月11日,「(仮称)深沢2丁目計画新築工事についての報告」と題する文書(乙87)を世田谷区長に提出した。その内容は, 圧迫感に関する研究論文である武井・大原論文に基づいて,壁面の色彩,テクスチャーを再検討し,また,植栽についても近隣側の環境空地に高木を増やし,歩道状空地にも を世田谷区長に提出した。その内容は, 圧迫感に関する研究論文である武井・大原論文に基づいて,壁面の色彩,テクスチャーを再検討し,また,植栽についても近隣側の環境空地に高木を増やし,歩道状空地にもパーゴラを設置する等の対策を講ずることにより圧迫感を軽減する, 住民との話し合いについても,これまでの話し合いにより一部の住民を除いて工事協定も締結しており,今後も引き続き真摯に住民との話し合いを継続するなどというものであった。 サその後,被告長谷工は,近隣の一部の住民との間で,平成14年12月以降,「(仮称)深沢2丁目計画建設工事についての協定書」(乙32の2)や補償契約(乙32の3)を締結した。同協定書には,工事期間(同年8月26日から平成16年8月下旬(予定)),休業日及び作業時間,振動・騒音・塵埃の抑制,事故防止,交通管理,被害補償,工事責任者の設置及び連絡体制などに関する定めが盛り込まれていた。 また,被告長谷工は,平成15年4月4日,「目黒区八雲の生活環境を守る会」との間で「工事部分協定書」(乙32の4)を締結し,工事車両の管理,現場管理,工期・作業時間・休業日等,騒音・振動・粉塵未然防止対策等,災害防止・防犯及び交通安全対策等,工事に起因した被害補償,連絡体制などについて合意した。そして,同年5月10日には,「都立大学跡地を考える会」及び「目黒区八雲の生活環境を守る会」が,被告長谷工に対して,「工事公害の防止について(申し入れ)」との書面(甲137)により,騒音・粉塵防止措置がほとんど講じられていないとして,防塵・防音パネル等使用することを申し入れたが,被告長谷工は,3mの仮囲い,散水,建物にメッシュシート養生等を講じている旨を回答した(甲138)。 シ本件各建物の完成その後,被告らは, ネル等使用することを申し入れたが,被告長谷工は,3mの仮囲い,散水,建物にメッシュシート養生等を講じている旨を回答した(甲138)。 シ本件各建物の完成その後,被告らは,本件各建物の建築を進め,平成16年6月に別紙全体敷地配置図のとおり完成させた。そして,同月10日世田谷区の開発検査を,同月17日目黒区の開発検査を受け,同月25日建築基準法7条の2第5項の検査済証の交付を受けた。 そして,同年8月から本件各建物への入居が開始された。 小括ア原告らは,被告らが,深沢地区や八雲地区の住民,世田谷区環境審議会,国会の論議等に一切耳を貸さず,本件工事を強行して,本件各建物を完成させたと主張する。 イこれを,近隣住民との関係についてみると,上記認定事実によれば,次のことが明らかである。 被告長谷工は,本件土地のうち都立大跡地取得後の平成13年7月に入ってから,周辺地域の住民に対して本件建築計画の概要を説明するために計画概要説明書の配布を開始し,同年9月に入ってからは,目黒区及び世田谷区に分けて計画概要説明会を開催し,その内容(第1次案)について説明をした。住民側からは,その計画について抜本的見直しを強く求められたが,被告らとしては到底受け入れられないものであった。 被告長谷工は,その後,第2次案を作成し,同年10月中,下旬に,改めて目黒区及び世田谷区に分けて計画概要説明会を開催して,その内容を説明した。しかし,これに対して,「目黒区八雲の生活環境を守る会」が,同年11月下旬にその見直しを求めて東京都に対し紛争調整の申出をし,同年12月中旬にあっせん・調停が行われたが,不調になるなどした。 被告長谷工は,平成14年1月に入ってから,解体工事に向けて手続を開始し,周辺住民に対する説明 京都に対し紛争調整の申出をし,同年12月中旬にあっせん・調停が行われたが,不調になるなどした。 被告長谷工は,平成14年1月に入ってから,解体工事に向けて手続を開始し,周辺住民に対する説明を開始するとともに,その説明のための解体工事説明会の開催を予定した。しかし,これに対し,「都立大学跡地を考える会」及び「目黒区八雲の生活環境を守る会」が住民集会を開催し,上記解体工事説明会のボイコットを確認した。また,住民らが,同月15日早朝から本件土地付近で解体工事反対の抗議集会を開催した。さらに,「深沢の環境を守る会」は,被告長谷工に対し解体工事説明会の延期を要望するとともに,東京都に対し,被告長谷工が解体工事に着手することがないように指導することを要望するなどした。そして,被告長谷工が開催を予定していた上記解体工事説明会には,住民らの参加はなかった。 このような経緯から,被告長谷工は,平成14年4月,「深沢2丁目計画だより」の発行,常設説明会場の開設等した上で,同月4日解体工事に着手した。 被告長谷工は,本件建築計画について,平成14年2月下旬までの間に第3次案を,また,同年7月中旬ころまでの間に第4次案をそれぞれとりまとめ,周辺地域内の住戸を戸別訪問し,その説明をした上で,同年8月,本件工事の杭基礎の工事に着手した(上記経緯から,以後は,被告長谷工は住民に対する説明会の場を設けることができなかった。)。 その後,被告長谷工は,近隣の一部の住民との間で,平成14年12月以降,本件工事に関する協定書や補償契約を締結したりして,工事を進めた。 以上のような周辺住民との間の交渉の経緯をみると,本件建築計画に関しては,その当初から,被告長谷工と,計画案の抜本的な見直しを求める周辺住民の側との間には,根本的な点におい ,工事を進めた。 以上のような周辺住民との間の交渉の経緯をみると,本件建築計画に関しては,その当初から,被告長谷工と,計画案の抜本的な見直しを求める周辺住民の側との間には,根本的な点において見解の違いが存在していたといわざるを得ず,この点については,少なくとも,本件原告らとの関係においては,その後も平行線のまま今日に至っていることが,上記認定の経緯から明らかである。そのような状況にもかかわらず,被告長谷工は,本件建築計画及び本件工事の関係について周辺住民の理解を得るべく努力をし(上記ア,ウ,オ,キ,ケ及びサ),また,建築計画そのものについても,その要望等を受けて一部変更を加えたりしている(上記ウ,カ及びケ)。 こうしたことに,上記1で認定した本件土地についての建築規制の内容,上記3で説示した本件建築計画に法令の違反があるとは認められないことなどをも総合的に検討すると,被告らに,周辺住民との間の交渉の過程において,社会的相当性に欠ける点があったといえるような特別の事情は認められない。 ウまた,世田谷区や同区環境審議会等との関係についてみると,上記で認定した事実によれば,次のことが明らかである。 世田谷区長は,本件建築計画の概要が明らかになって間もない平成13年8月1日,被告長谷工に対し,a 開発計画は,住民の要望意見等の内容を十分に検討し,できるだけ計画に反映すること,b 東京都が入札時に示した「基本的な考え方」を踏まえた計画にすること,c 区が定めた各種条例等の規定に準ずることはもちろんのこと,区の街づくりの指針である「新都市整備方針」や「住宅整備方針」に適合した計画とすること,d 建物の高さや配置など,周辺住宅地との街並みに配慮した計画とすることなどを要望した。これに対して,被告長谷工は,同年10月 指針である「新都市整備方針」や「住宅整備方針」に適合した計画とすること,d 建物の高さや配置など,周辺住宅地との街並みに配慮した計画とすることなどを要望した。これに対して,被告長谷工は,同年10月15日に至り,a 住民の要望意見等については,今後検討の上,受け入れられる項目については計画に反映して,住民へ提案すること,b 東京都が示した「基本的な考え方」に配慮した計画とすること,c 高さや配置など周辺の街並みに配慮した計画とすることなどを回答した。 また,世田谷区長は,平成14年5月14日,被告長谷工に対して,「世田谷区環境基本条例」等に基づき,環境審議会に対する諮問を経た上で,開発事業等の実施に係る環境への配慮について,上記ク認定の内容の「環境配慮要請書」により要請をした。 これを受けて,被告長谷工は,上記ク認定の回答をした。 被告長谷工は,平成14年5月30日,都市計画法29条の開発行為の許可を世田谷区及び目黒区から得,同年7月5日には東京都知事から建築基準法86条1項に基づく一団地認定の通知を受けた。そして,同月31日には全ての敷地上の建築物についての建築確認を得て,同年8月26日,杭基礎の工事に着手した。 世田谷区環境審議会は,平成14年11月22日,それまでの審議の結果を上記コ認定のとおり「深沢2丁目計画新築工事に対する見解書」にとりまとめて,世田谷区長に対し意見を具申した。 これを受けて,世田谷区長は,同月29日,被告長谷工に対して,「世田谷区環境基本条例」及び「世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則」に基づく手続の終了を通知する際に,併せて,a 世田谷区環境審議会から「調和のとれた街並み形成を図る」とする点については配慮がきわめて不十分であると 世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則」に基づく手続の終了を通知する際に,併せて,a 世田谷区環境審議会から「調和のとれた街並み形成を図る」とする点については配慮がきわめて不十分であるとの見解書が提出されていること,b その内容に十分配慮して自発的に建物形状等のさらなる変更を行うことを強く要望すること,c 住民との話し合いを誠意を持って継続するとともに,計画変更があった場合は直ちに届け出ることを伝えた。 なお,これに対し,被告長谷工は,翌平成15年9月11日回答したが,その内容は上記コ認定の内容に止まるものであった。 以上の経緯をみると,世田谷区や世田谷区環境審議会は,本件建築計画について,最終的には主として圧迫感が大きい点について問題意識を持ち,善処方を要望していたことが明らかである。しかしながら,上記経緯,すなわち,世田谷区は上記のとおり開発許可決定をしており,また,上記のとおり平成14年11月29日には「世田谷区環境基本条例」等に基づく手続の終了を通知していることに徴すると,上記要望は,法令等に基づくものではなく,被告長谷工の自発的な対応を求めるに止まるものであったといえる。そして,「世田谷区環境基本条例」によれば,世田谷区長は,開発事業者等に対し,開発事業等の実施に係る環境への配慮について要請すること(12条),また,それが受け入れられないときは,その要請を受け入れるよう勧告すること(14条)ができる(甲313の1)が,本件計画についてはそのような勧告はされていない。 こうしたことに,上記1で認定した本件土地についての建築規制の内容,上記3で説示した本件建築計画に法令の違反があるとは認められないことなどをも総合的に検討すると,被告らに,世田谷区,同区環境審議会等の行政との関係 ,上記1で認定した本件土地についての建築規制の内容,上記3で説示した本件建築計画に法令の違反があるとは認められないことなどをも総合的に検討すると,被告らに,世田谷区,同区環境審議会等の行政との関係において,社会的相当性に欠ける点があったといえるような特段の事情は認められないというべきである。 エ以上の認定説示に照らすと,本件各建物は建築関係法規等の法令の要件を満たすものとして建築されており,本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等,被告らによる本件土地取得及び本件建築計画立案の経緯,本件各建物建築に至る経緯に照らしても,被告らの本件土地取得,本件各建物建築の経緯や交渉態度等において,社会的に相当性に欠ける点があったと認めることはできない。原告らは,被告らが,深沢地区や八雲地区の住民,世田谷区環境審議会,国会の論議等に一切耳を貸さず,本件各建物の建築工事を強行した旨主張するが,この主張を採用することはできない。 なお,原告らは,この点に関して様々な観点から問題にしている(別紙受忍限度に関する主張中の原告らの主張参照)ので,以下,補足する。 建築基準法等の違反の主張(上記原告らの主張4及び8関係)についてこの主張を採用できないことは,上記3説示のとおりである。 回避容易な被害の回避を図らなかったとの主張(上記原告らの主張5関係)について上記イで認定説示したとおり,本件建築計画に関しては,その当初から,被告長谷工と,計画案の抜本的な見直しを求める周辺住民の側との間には,根本的な点において見解の違いが存在していた。被告らによる本件建築計画は企業の経済活動の一つとして行われたものであるが,それを,原告らを含む周辺住民が求めるように抜本的に見直すということは,当時の厳 本的な点において見解の違いが存在していた。被告らによる本件建築計画は企業の経済活動の一つとして行われたものであるが,それを,原告らを含む周辺住民が求めるように抜本的に見直すということは,当時の厳しい経済環境の下においては相当の困難を伴うものであったというべきである(乙96,証人A)。しかも,本件建築計画は,上記1認定のとおり本件土地に対する建築基準法等による規制に反せず,また,上記3で説示したとおり本件建築計画に法令の違反があるとも認められないのである。 こうしたことに徴すると,本件建築計画を抜本的に変更することが容易であったということはできない。 被告らの事前の認識(上記原告らの主張6関係)について原告らは,被告らが,東京都立大学跡地の購入に当たり,当初から東京都の売却条件を守る意思がなく,また,地域性に反することを十分認識しながら,大規模な高層マンション群の建築を計画したなどと主張する(上記原告らの主張6)。 確かに,東京都は,東京都立大学跡地の売却条件として,上記2でも認定したとおり,a 住居系を中心とした土地利用を図ることなどを目標とし,b 周辺地域の居住環境等を配慮しながら,調和のとれた街並みを形成することを基本方針として,c 道路,生活支援サービス機能など周辺地域の現状に配慮した整備をするとともに,オープンスペースの創出等により防災安全性を確保し,d 環境共生を目指した建築物を整備する等の基本的な考え方を示していた(甲11)。 他方,上記2認定のところによれば,被告長谷工は,入札に当たり,上記東京都の基本的な考え方にのっとったものとして事業計画書(乙5)を東京都に提出し,その後,世田谷区や周辺住民の要望を受けて,上記aないしdの観点からその計画 によれば,被告長谷工は,入札に当たり,上記東京都の基本的な考え方にのっとったものとして事業計画書(乙5)を東京都に提出し,その後,世田谷区や周辺住民の要望を受けて,上記aないしdの観点からその計画案の一部を変更の上(上記ウ,カ及びケ),本件各建物を建築したことが明らかである。そして,被告らは,本件各建物の分譲に当たっては,地域性や景観をセールスポイントの一つとしていたのである(甲15の1ないし15の3,127,216等)。 また,本件土地取得及び各建物建築当時,本件土地は東側(目黒区側)の一部(別紙土地目録記載2及び3の土地部分)が第一種低層住居専用地域に指定されているだけで,その他の部分は絶対的高さ制限のない第一種中高層住居専用地域であった上,上記東京都の売却条件においても,具体的な高さの制限はされていなかった。さらに,世田谷区の「新都市整備方針」,「第2次住宅整備方針」では,本件土地の大部分(別紙土地目録記載1の土地)も低層住宅ゾーンⅠ,公園緑地・公共公益施設・開発調整地区とされたが,具体的な高さの制限はされていなかった(なお,世田谷区が素案を作成するなどして平成16年6月24日に東京都のした都市計画決定では,本件土地については,新たに絶対的高さ制限45mが導入されるに止まった。)。 このような事実のほか,上記イ及びウ説示の本件各建物の建築に至る過程での被告らの近隣住民や世田谷区等に対する対応の実情に徴すると,被告らにおいて,本件各建物の分譲の際にセールスポイントとしていた地域性や景観に抵触するような建物の建築を目論んでいたと推認することはできないというべきである。 してみると,被告らが,東京都の売却条件を守る意思がなく,また,地域性に反することを十分認識しながら本件各建物の建築を計 建築を目論んでいたと推認することはできないというべきである。 してみると,被告らが,東京都の売却条件を守る意思がなく,また,地域性に反することを十分認識しながら本件各建物の建築を計画したとの原告らの主張は,たやすく採用できない。 被告らの不誠実な交渉態度(上記原告らの主張7関係)についてこの主張を採用できないことは,上記イ及びウ説示のとおりである。 5 原告ら主張に係る「保護されるべき利益」の侵害の有無,程度そこで,以上の検討に基づいて,原告ら主張に係る「保護されるべき利益」に関し,侵害の有無及び侵害がある場合にはその程度について,順次検討する。 景観権又は景観利益についてア原告らは,本件土地周辺地域一帯は美しい街並み景観を有している,この景観は人為的な営為により形成されたものであるが,このような景観については,次の2つの要件を備えることにより,法的に保護されるべきである旨主張する(上記第2章第3の1)。すなわち,その要件の第1は,特定の地域内において,当該地域内の地権者らによる土地利用の自己規制の継続により,相当の期間,ある特定の人工的な景観が保持され,社会通念上もその特定の景観が良好なものと認められ,地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合であり(なお,その要保護性の強弱は,当該景観侵害による損害が具体的に発生した時点を基準時として,景観の内容についての地域住民の合意(暗黙の合意を含む。)の存在,地方自治体の条例レベルでの行政諸施策の存在,地区計画あるいは建築条例の存在等に従って強くなると考えるべきであるという。),その要件の第2は,景観の内容と利益の享受主体が明確であること,具体的には,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の対象 等に従って強くなると考えるべきであるという。),その要件の第2は,景観の内容と利益の享受主体が明確であること,具体的には,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の対象地域内の地権者及び借地権者をその利益の享受主体とし,その対象地域内においては,建物の高さが12mを超えないこと(高くても,周辺の建物との連続性・共通性から20mを超えないこと)を内容とするものであるというのである。 イ確かに,上記1ないし認定のとおり,世田谷区深沢地区及び目黒区八雲地区においては,古くから街の基盤整備の努力がされ,昭和50年代ころからは,街づくりの基本方針が示され,以後,街づくりのための条例,地区計画を作成するなどされてきた。住民らにおいても,地区計画準備会等を立ち上げるなどして地区計画の作成について積極的に活動して街づくりを進めており,現に目黒区では,「自由通り沿道八雲地区地区計画」が都市計画決定されている。 そして,都市計画は,都市計画法の平成4年の改正によって創設され,都市づくりの方向性,将来像を示したマスタープランを基に,住民に最も近い立場にある市町村が住民の意見を反映させ,地域の実情を踏まえた個性的で快適な都市づくりを進めるものであり,土地についての制限を通じて都市全体の土地利用を総合的・一体的観点から適正に配分する等の意義を有する計画である(「市町村の都市計画に関する基本的な方針について」(平成5年6月25日建設省都計発第94号。甲120の1)及び都市計画運用指針(平成12年12月28日建設省都計発第92号。甲231)参照)。これを,本件土地及びその周辺地域に関するマスタープランについてみると,本件土地及びその周辺は低層住宅ゾーンⅠ(世田谷区の「新都市整備方針」(「世田谷区都市整備方針(世田谷区の都市計 31)参照)。これを,本件土地及びその周辺地域に関するマスタープランについてみると,本件土地及びその周辺は低層住宅ゾーンⅠ(世田谷区の「新都市整備方針」(「世田谷区都市整備方針(世田谷区の都市計画に関する基本的な方針)」)),公園緑地・公共公益施設・開発調整地区(世田谷区の「第2次住宅整備方針」),戸建住宅地(低層型)(目黒区の「都市整備方針快適な生活都市めぐろを目指して」)などと位置付けられており,世田谷区深沢地区,目黒区八雲地区における街づくりにおいては,低層ということを一つの柱としていたものといえる。 ウところで,原告らが主張する景観は,上記イのとおり,「自由通り沿道八雲地区地区計画」及び「深沢1丁目・2丁目地区計画案」の対象地域内の地権者及び借地権者をその利益の享受主体とし,その対象地域内においては,建物の高さが12mを超えないこと(高くても,周辺の建物との連続性・共通性から20mを超えないこと)を内容とするというものであり,原告らは,そのような景観が確立していた旨主張する。 そこで,以下,この点について検討するに,原告らが主張する内容の景観が本件土地周辺において確立していたものと認めることはできないといわざるを得ない。その理由は次のとおりである。 上記1イ,ウ,及び並びに4コ及びウの認定説示によれば,次のことが明らかである。 本件土地の大部分は,昭和48年の用途地域指定により,第二種住居専用地域,第二種高度地区(絶対的高さ制限なし)とされた後,本件各建物完成間際の平成16年6月24日に45mの高さ制限が導入されるに至るまでの間,絶対的な高さ制限はなかった。しかも,平成14年7月以降進められていた東京都によるその用途地域の見直しの過程でも,その第1次的検討を担った世田谷区は,見直しの重点 高さ制限が導入されるに至るまでの間,絶対的な高さ制限はなかった。しかも,平成14年7月以降進められていた東京都によるその用途地域の見直しの過程でも,その第1次的検討を担った世田谷区は,見直しの重点事項の1つとして,住宅地の中に中高層建築物が建てられ,その高さに対するトラブルも多くなり,一定のルール作りが必要になってきたとの認識から,平成15年2月に「用途地域見直し素案」(甲71)をまとめたが,その素案では,住居系用途地域の絶対高さの指定を予定し,本件土地については,第一種中高層住居専用地域で第二種高度地区として45mの絶対的高さの指定を予定していた。これに対して,B,同46及び同49並びに「都立大学跡地を考える会」(代表原告42)が世田谷区に対して45mの高さ制限をより低くするように要請する旨の意見書(甲176の1ないし4)を提出するなどしたが,世田谷区は,同年6月ころ,上記素案について一部見直しを加えて原案をまとめ(本件土地に関係する上記部分は変更されなかった。),その後,世田谷区の都市計画審議会に諮った上で,それを東京都に提出し,東京都は,平成16年6月24日都市計画決定をして,告示した。その結果,本件土地は,上記のとおり第二種高度地区として指定され,絶対的高さ制限45mが新たに導入されることになり,その周辺地域においては絶対的高さ制限10m又は12mの規制が維持されることとなった。 なお,世田谷区長は,平成14年11月29日,被告長谷工に対して,「世田谷区環境基本条例」及び「世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則」に基づく手続の終了通知(甲133)をしたが,その際に,併せて,a 世田谷区環境審議会から「調和のとれた街並み形成を図る」とする点については配慮がきわめて不十分であるとの見解書が提出されていること に基づく手続の終了通知(甲133)をしたが,その際に,併せて,a 世田谷区環境審議会から「調和のとれた街並み形成を図る」とする点については配慮がきわめて不十分であるとの見解書が提出されていること,b その内容に十分配慮して自発的に建物形状等のさらなる変更を行うことを強く要望すること,c 住民との話し合いを誠意を持って継続するとともに,計画変更があった場合は直ちに届け出ることを伝えたが,それ以上には,上記条例に基づく勧告の措置は講じていない。 また,平成13年12月ころ世田谷区深沢1丁目及び2丁目の住民が中心となって地区計画の早期策定に向けて準備会を結成し,その策定に向けて努力した(なお,その際に同準備会が作成した地区計画案は,建築物の高さの制限として境界部で12m,最高限度を20mとするなどというものであった。)が,今日に至るまで,地区計画は策定されていない。また,目黒区の「自由通り沿道八雲地区地区計画」(甲3)の策定に至る経緯は,上記1のとおりであり,平成4年6月1日に都市計画決定されたのであるが,同地区計画は自由通り沿道の24haの地域を対象としたものであり,本件土地のうち同地区計画の対象となっているのは八雲5丁目部分(別紙土地目録2及び3記載の土地)だけである。 このように,世田谷区は,本件土地について被告長谷工からの建築計画が持ち上がり,それについて,被告らと原告らとの間に本件各建物の建築をめぐって本件紛争が継続している過程である平成14年7月以降,用途地域の見直し作業を進めた。その見直しの重要事項の1つは,住宅地の中に中高層建築物が建てられ,その高さに対するトラブルも多くなり,一定のルール作りが必要になってきたというものであったが,その検討結果としては,本件土地の大部分を占める世田谷区内の土地( は,住宅地の中に中高層建築物が建てられ,その高さに対するトラブルも多くなり,一定のルール作りが必要になってきたというものであったが,その検討結果としては,本件土地の大部分を占める世田谷区内の土地(別紙土地目録記載1の土地)については,第一種中高層住居専用地域,第二種高度地区との従来の区分を維持し,ただ,建物の高さについては新たに45mの絶対的高さ制限をすることをもって相当と判断したのであり,同区の都市計画審議会及び東京都も同様の判断に立っていたことが明らかである。しかも,本件土地を含む地域について絶対的高さ制限45mを新たに導入しようという考え方が世田谷区から示されたのは,本件各建物に関する建築確認がされた後の平成15年2月の上記1ウの「用途地域見直し素案」の提示の段階からである。 こうしたことを総合的に考慮すると,世田谷区で平成7年に策定された「新都市整備方針」(「世田谷区都市整備方針(世田谷区の都市計画に関する基本的な方針)」)(甲5)及び平成13年に策定された「第2次住宅整備方針」(甲77)も以上認定したものと大幅に異なった趣旨を内容とするものであったと認めることはできない。さらに,地区計画についても,本件建築計画が持ち上がった平成13年12月ころ,世田谷区深沢1丁目及び2丁目の住民が中心となって地区計画の早期策定に向けて準備会を結成し,その策定に向けて努力したが,今日に至るまで,地区計画は策定されておらず,また,目黒区の「自由通り沿道八雲地区地区計画」の策定に至る経緯は,上記1のとおりである。 そうであるとすると,被告らが本件建築計画の策定を開始した平成13年ころはもとより,その後においても,本件土地を含めて,その周辺地域について,原告らが主張する如く建物の高さを12m,あるいは少なくとも20m るとすると,被告らが本件建築計画の策定を開始した平成13年ころはもとより,その後においても,本件土地を含めて,その周辺地域について,原告らが主張する如く建物の高さを12m,あるいは少なくとも20mに制限すべきであるとの見解,さらには,45mの絶対的高さ制限を導入すべきであるとの見解が,平成15年2月に提示された上記「用途地域見直し素案」作成の前から,世田谷区の土地利用の基本的な考え方として確立していたとか,周辺住民の大多数の意思になっていたと認めることはできないというほかない。 このように,原告らが景観権又は景観利益が成立するための要件として主張するもののうち,第1の要件の要保護性に関する事項の前提となる事実及び第2の要件を構成する重要な事実については,それを認めることができないといわざるを得ない。 エこの点に関して,都市等における良好な景観の形成を促進し,美しく風格のある国土の形成,潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り,国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的(景観法1条)として,平成16年6月18日景観法が制定された。そして,同法は,その基本理念として, 良好な景観は,美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ,国民共通の資産として,現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう,その整備及び保全が図られなければならないこと, 良好な景観は,地域の自然,歴史,文化等と人々の生活,経済活動等との調和により形成されるものであることにかんがみ,適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて,その整備及び保全が図られなければならないこと, 良好な景観は,地域の固有の特性と密接に関連するもの されるものであることにかんがみ,適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて,その整備及び保全が図られなければならないこと, 良好な景観は,地域の固有の特性と密接に関連するものであることにかんがみ,地域住民の意向を踏まえ,それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう,その多様な形成が図られなければならないこと(同法2条)などを掲げている。そして,その目的,基本理念を達成するために,景観計画制度,景観地区制度等を創設し,その区域における工作物の建設,開発行為等について必要な規制をすることができることとした(同法第2章,第3章)。これを,原告らが主として問題にしている建物の高さの制限との関係で見ると,良好な景観の形成に関する計画(景観計画)において定める良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項の一つとして,建築物の高さの最高限度を挙げている(同法8条3項2号ロ)。このように,景観法は,景観計画の策定とこれに基づく行為規制等の手法を通じて,良好な景観の形成を目指しているものと考えられる。 加えて,景観は,その周辺地域の土地の利用権者の土地利用及びその地上の構築物の利用権者のその利用の集積の結果もたらされるものであるから,それ自体固定的に存在するものではなく,流動的なものであり,しかも,その景観の形成には多数の者が関係しているのである。そして,そのようにして形成された景観に対する評価は,人により様々である。したがって,良好な景観を維持していくためには,このように流動的で,必ずしも評価が一致しない事項について,多数の関係者の権利関係を調整することが必要になる。 こうしたことをも総合的に考慮すると,良き景観の形成,維持については,基本的には,上記景観法が定める手法を通じて,その目的を達することが期待さ の関係者の権利関係を調整することが必要になる。 こうしたことをも総合的に考慮すると,良き景観の形成,維持については,基本的には,上記景観法が定める手法を通じて,その目的を達することが期待されるというべきである。 オ以上認定説示したところによれば,本件において原告らが主張する景観については,上記ウ説示のとおり,未だ確立したものと認めることはできないので,いずれにしても,その侵害を理由とする本件各建物の一部撤去請求は理由がないことに帰する。 圧迫感のない生活利益についてア原告らは, 過密な環境の下での圧迫感を受けながらの生活は,本件土地周辺の居住者等に精神的なストレス等の弊害をもたらしており,その精神医学的悪影響は顕著である, この圧迫感による被害の程度については,武井・大原論文に基づいて,当該建築物の形態率(測定点を中心とする半球に写った建物の姿を円に正射影した場合の,円の面積に占める建物の投影面積の割合)を指標にすべきである, その許容限界値は8%であり,4%を越えると圧迫感を環境の影響要素として取り上げるべきであると主張する(第2章第3の1)。 確かに,武井・大原論文(甲94の1ないし4)では,上記及びの趣旨の研究報告がされている。そして,原告らも,本件各建物によりそのような圧迫感を感じており(原告ら作成の陳述書・甲153,185,186,226の2,4ないし27,29ないし43,46ないし51,甲335),各原告らの住居の開口部から本件各建物を魚眼レンズで撮影し,正射影画像で変換して算出した形態率は,別紙被害状況一覧表の「形態率(%)」欄記載のとおりである(原告ら作成の報告書・甲225の2ないし27,29ないし43,46ないし51)。 しかしながら,武井・大原論文によれば,圧迫感とは,建築物 害状況一覧表の「形態率(%)」欄記載のとおりである(原告ら作成の報告書・甲225の2ないし27,29ないし43,46ないし51)。 しかしながら,武井・大原論文によれば,圧迫感とは,建築物に対峙する場合の,視覚を通して建築物の外壁面の大きさから受ける不快感であり,被害者意識としての「迫ってくる」,「覆われる」感覚であるというのであり,原告らが主張するのもそれと同趣旨であると理解される。しかも,同論文で示された許容限界値(形態率8%),環境影響要素の下限値(同4%)は,当該建物から感得する不快感,圧迫感等を指標とするものであって,それが精神,身体に与える影響等を具体的に示すものではない。 また,原告ら主張に係る圧迫感は,対象となる建築物の形態,特に,高さ,長さ,幅等により作出されるものと考えられるが,これらの点に関しては,これまで,建築基準法,都市計画法等の法規により,用途地域制度,都市計画制度等を設定し,それらの制度の下で,それに応じた建物の高さ,容積率等の規制を行うことを通じて,国民の生命,健康及び財産の保護を図り(建築基準法1条),都市の健全な発展と秩序ある整備を図ろう(都市計画法1条)とされてきたところである(そして,最近では上記エでみたように景観法により良好な景観の形成等が図られるようになった。)。 そうであるとすると,圧迫感のない生活利益が受忍限度を超えて侵害されているか否かを検討するに当たっては,ただ単に形態率のみを取り上げて,上記の許容限界値等を当てはめて判断することは相当ではないというべきであり,問題とされている建築物の形状等のほか,当該地域における建築物設置の状況,建築関係法規による建築物の形状等に関する規制の状況,当該建築物の建築の経緯,その他様々な事情(原告らが受忍限度に関して主張して とされている建築物の形状等のほか,当該地域における建築物設置の状況,建築関係法規による建築物の形状等に関する規制の状況,当該建築物の建築の経緯,その他様々な事情(原告らが受忍限度に関して主張している事情と重なる面がある。)を総合的に判断する必要があるというべきである。 そこで,以下,このような観点に立って,検討する。 イ証拠(乙22,92)によれば,本件各建物の建築による形態率への影響について,次の事実が認められる。すなわち,本件土地西側のマンションCの北側に接する道路上の地点(A地点),マンションBの南側に接する道路上の地点(B地点),本件土地南側のマンションD敷地内の地点(C地点),本件土地東側の原告21宅と原告20宅とに挟まれた道路上の地点(D地点)における,本件各建物が建築される前の既存の建物だけによる形態率と,本件各建物建築後(平成16年8月)の形態率を比較すると,次のとおりである(いずれも,本件各建物との水平距離が30mで,道路や通路により,本件各建物が見通せる地点である。また,形態率は,いずれも正射影法による数値である。)。 本件各建物建築前本件各建物建築後 (増加分)A地点 27.8% 38.6%  (10.8%)B地点 36.7% 38.7% (2.0%)C地点 11.8% 26.2%  (14.4%)D地点 48.8% 55.6% (6.8%)これによれば,上記各地点においては,形態率は,本件各建物建築以前から既存の建物により相当程度高い状況にあったものというべきであり,特にB地点及びD地点においては,本件各建物による形態率の増加は必ずしも大きいものではないということができる。 建物建築以前から既存の建物により相当程度高い状況にあったものというべきであり,特にB地点及びD地点においては,本件各建物による形態率の増加は必ずしも大きいものではないということができる。 そして,被告らは,本件各建物の建築に当たって,植栽及びパーゴラの設置,外壁に自然な風合いを持つ素材の使用や圧迫感を和らげる色彩の使用,デザインウォールの使用等の圧迫感を軽減する措置を講じている(乙87)。 ウまた,原告らは,本件各建物の建築により受忍限度を超えた侵害を受けた旨主張するが,上記1ないし4説示のとおり,本件各建物は建築関係法規等の法令の要件を満たすものとして建築されており,また,本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等,被告らによる本件土地取得及び本件建築計画立案の経緯,本件各建物建築に至る経緯に照らしても,被告らの本件土地取得,本件各建物建築の経緯,交渉態度等において,社会的に相当性に欠ける点があったと認めることができないと判断されるところである。 エ以上説示したことを総合的に検討すると,本件各建物の存在により形態率が4%又は8%を超える場所に居住する原告がおり,同原告らが,不快感,圧迫感を感じていることは認められるが,それが一般社会生活上受忍すべき程度を超えるものであると認めることはできない。 したがって,圧迫感のない生活利益の侵害を理由とする本件各建物の一部撤去を求める請求は,理由がない。 日照権についてア建築基準法56条の2第1項,「東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例」3条によれば,第一種中高層住居専用地域内にある高さ10mを超える建築物は,冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間において,敷地の平均地盤面から4mの高さの水平面に対して,敷地 する条例」3条によれば,第一種中高層住居専用地域内にある高さ10mを超える建築物は,冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間において,敷地の平均地盤面から4mの高さの水平面に対して,敷地境界線からの水平距離が5mを超え10m以内の範囲では3時間以上,10mを超える範囲では2時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならないこととされている。 イ各原告宅における本件各建物による日影時間が,別紙被害状況一覧表の「日影時間」欄記載のとおりであることについては,当事者間に争いがない(なお,この時間は,日の出から日没までの間の時間である。また,本件各建物以外の建物による日影も含み,敷地の高低差を考慮に入れていない。)。 これを上記ア認定の日影規制と対比すると,次のとおりである。もっとも,上記各原告宅における日影時間は,日の出から日没までの間の時間であり,本件各建物以外の建物による日影も含む点において,日影規制所定の時間より長くなる可能性がある。 また,上記日影時間は,敷地の高低差を考慮に入れていない点においても差違が生ずる可能性があるので,両者の数値を比較するに当たっては,こうした点についても留意する必要がある。 敷地境界線からの水平距離(後記第2の2認定のとおり)が5mを超え10m以内の者で,日影時間が3時間を超える者なし(2時間台に及ぶ者も3原告,2軒に止まる。)敷地境界線からの水平距離が10mを超える者で,日影時間が2時間を超える者原告10及び同11(住居は同一。2時間5分)ウ上記ア及びイの認定説示によれば,原告10,11両名(住居は同一)を除く原告らに生じる日影時間は日影規制の範囲内にあり,また,原告10,11両名についても,日影規制の時間を超えるのはわ ウ上記ア及びイの認定説示によれば,原告10,11両名(住居は同一)を除く原告らに生じる日影時間は日影規制の範囲内にあり,また,原告10,11両名についても,日影規制の時間を超えるのはわずかな時間(5分)に止まっている。しかも,この日影時間は,上記のとおり,日の出から日没までの間の時間を測定したものであり,本件各建物以外の既存の建物による日影も含まれているものである(午前8時から午後4時までの時間帯における本件各建物のみから生じる日影時間は,より短くなる可能性がある。)。 なお,原告らは,冬至の日の被害が最大にならない原告もいると主張し,原告45の住居における日影状況に関する写真(甲315)を提出している。しかしながら,他の建物との複合的な日影その他何らかの事由で原告ら主張の如き現象が生じ得るとしても,一般に,北半球においては,冬至は,正午における太陽の高度が1年中で最も低く,昼が最も短い日であることにかんがみると,本件各建物が原告らの住居に及ぼしている日影被害は,上記認定の冬至のころの状況と比較して著しく深刻な事態になっているとまでは認めることができない。 こうしたことに,上記ウにおいて説示したこと,さらには,本件土地周辺が住宅の密集する地域であることをも総合的に検討すると,本件各建物により原告らの住居に生じている日影被害の状況が一般社会生活上受忍すべき程度を超えるものであると認めることはできない。 したがって,日照権の侵害を理由とする本件各建物の一部撤去を求める請求は,理由がない。 プライバシー権についてア原告らの居宅の開口部から本件各建物の直面する壁面までの距離が,別紙被害状況一覧表の「プライバシー」の「距離(m)」欄記載のとおりであることは,次の者を除き,当事者間に争いが 権についてア原告らの居宅の開口部から本件各建物の直面する壁面までの距離が,別紙被害状況一覧表の「プライバシー」の「距離(m)」欄記載のとおりであることは,次の者を除き,当事者間に争いがない。そして,証拠(乙102ないし104)によれば,原告14及び同15の居宅の開口部から本件各建物の直面する壁面までの距離は16.5m,原告22及び同23のその距離は18.6m,原告38のその距離は14.6mであることが認められる。これらの距離は,同原告らの作成した報告書(甲225の10,16,25)中の記載と異なるが,同報告書では計測地点も記載されていないこと等からすると,乙102号証ないし乙104号証の計測の方が正確性が高いと判断される。 また,証拠(甲225の2ないし43,46ないし51)によれば,本件各建物にある住戸のうち,別紙被害状況一覧表の「プライバシー」の「戸数(戸)」欄記載のとおりの住戸が,それぞれの原告らの居宅側に存在することが認められる。 以上の事実によれば,本件各建物の建築により,本件各建物中の多数の住戸から一部の原告らの住居を臨むことができることになったことが推認される。そして,原告らが作成した陳述書(甲153,154,185,186,226の2,4ないし43,46ないし49,甲335)によれば,一部の原告らが,本件各建物に居住する多数の人から覗かれている等の不安感を感じ,昼間でもカーテンを閉めるなどしていることが認められる。 イしかしながら,証拠(乙28,29)によれば,被告らは,本件各建物の建築に併せ,高木を植栽したり,バルコニーにモザイクタイル,ガラス手摺,横格子手摺,穴あきブロックを使用した115cmのパネルを設置したりして,周辺住民のプライバシーに配慮するための措置を講じたことが に併せ,高木を植栽したり,バルコニーにモザイクタイル,ガラス手摺,横格子手摺,穴あきブロックを使用した115cmのパネルを設置したりして,周辺住民のプライバシーに配慮するための措置を講じたことが認められる。これらの措置は,原告らが指摘するように本件各建物からの視界を完全に遮ることはできないが,しかし,相当程度の効果を挙げているものと推認される。 こうしたことに,上記ウにおいて説示したこと,さらには,本件土地周辺が住宅の密集する地域であることをも総合的に検討すれば,本件各建物の建築により,原告らに受忍限度を超えたプライバシーの侵害が生じたものと認めることはできない。 したがって,プライバシー権の侵害を理由とする本件各建物の一部撤去を求める請求は,理由がない。 6 まとめ以上1ないし5で説示したとおり,原告らの本件各建物の一部撤去請求は,いずれも理由がない。 第2 損害賠償請求について 1 景観権又は景観利益,圧迫感のない生活利益,日照権及びプライバシー権の侵害による損害賠償請求(第2章第3の4関係)についてこれらの「保護されるべき利益」が侵害されたことを原因とする本件各建物の一部撤去請求について,受忍限度を超えた権利・利益の侵害を認めることができないことは,上記第1で説示したとおりである。 もとより,本件損害賠償請求において受忍限度を超えた権利・利益の侵害があるかどうかを判断するについて考慮すべき要素と,本件各建物の一部撤去請求について考慮すべき要素との間には,その請求内容の相違に対応して,各要素の重要性をどの程度のものとして考慮するかなどの点においておのずから相違があるとしても,両者において考慮すべき要素はほぼ共通である。こうしたことに,上記第1で説示したことを総合的に考慮すれば,上記損害賠償請求につ 度のものとして考慮するかなどの点においておのずから相違があるとしても,両者において考慮すべき要素はほぼ共通である。こうしたことに,上記第1で説示したことを総合的に考慮すれば,上記損害賠償請求についても,理由がないというべきである。 そこで,以下,その余の損害賠償請求について検討する。 2 本件工事に関し騒音・振動・粉塵等の被害にさらされない生活利益の侵害による損害賠償請求(第2章第3の5関係)について証拠(甲108,乙7,30,32の2,乙96,証人A)によれば,次の事実が認められる。 被告らによる本件工事については,平成14年4月4日に解体工事に着手し(解体工事期間は同年7月中旬までの約3か月半),同年8月には本件各建物の建築工事(本工事)に着手し,平成16年6月に竣工した。本件工事の作業時間(作業員の待機,入退場,片付けは除く。)は,原則として,5月ないし9月の期間は午前8時から午後6時30分まで(振動・騒音を伴う重機械類を使用する工事は午後6時まで),10月ないし4月の期間は午前8時から午後6時まで(振動・騒音を伴う重機械類を使用する工事は午後5時30分まで)であった。 そこで,以下,本件工事による生活利益の侵害の有無等について検討する。 なお,騒音・振動・粉塵等が,各原告らに対し一般社会生活上受忍すべき程度を超える影響を及ぼしたか否かについては,本件土地と各原告らの居宅の位置関係等も考慮して,上記各測定地点別に検討することとなるが,本件土地と各原告らの居宅の位置関係は別紙地図のとおりであり(甲1),各原告ら(ただし,原告3を除く。)の住居の本件土地の敷地境界線までの距離は,別紙被害状況一覧表の「工事被害距離(m)」欄記載のとおりである(被告らにおいて,争うことを明らかにしないので,自白したものとみ (ただし,原告3を除く。)の住居の本件土地の敷地境界線までの距離は,別紙被害状況一覧表の「工事被害距離(m)」欄記載のとおりである(被告らにおいて,争うことを明らかにしないので,自白したものとみなす。)。 騒音,振動による被害ア騒音,振動の規制の状況環境基本法は,「政府は,・・・騒音に係る環境上の条件について,・・・人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする」旨規定しており(同法16条1項),その基準として,「騒音に係る環境基準について」(平成12年3月28日環告20。甲256の1)が定められている。それによれば,「専ら住居の用に供される地域」については,昼間(午前6時から午後10時までの間)55db以下,夜間(午後10時から翌日の午前6時までの間)45db以下(ただし,2車線以上の車線を有する道路に面する地域では,昼間60db以下,夜間55db以下)とされている。 また,東京都環境確保条例は,現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的(同条例1条)として,騒音のほか,振動についても,日常生活等に適用する規制基準(別表第13)を定めている(同条例136条)。それによれば,午前8時から午後7時までの間については,本件土地の大部分を占める第一種中高層住居専用地域では,騒音については50db,振動については60db,第一種低層住居専用地域では,騒音については45db,振動については60dbを超えないこととされている。 なお,上記環境基本法上の環境基準は,建設作業騒音には適用しないこととされており(同基準第3),この点については,別途,騒音規制法及び振動規制法により規制されている。すなわち,上記2法は, なお,上記環境基本法上の環境基準は,建設作業騒音には適用しないこととされており(同基準第3),この点については,別途,騒音規制法及び振動規制法により規制されている。すなわち,上記2法は,工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音,振動について必要な規制を行うこと等により,生活環境を保全し,国民の健康の保護に資することを目的として(各法1条),特定建設作業,すなわち,建設工事として行われる作業のうち,著しい騒音,振動を発生する作業であって政令で定めるもの(各法2条3項)を規制の対象にしている。そして,市町村長が改善勧告等をする(各法15条)ことに関して環境大臣が定めた基準(勧告基準)として,敷地境界における音量について85db,敷地境界における振動の大きさについて75dbとしている。また,東京都環境確保条例では,建設工事に係る遵守事項として,建築物その他の施設等の建設,解体又は改修の工事を行う者は,その工事に伴い発生する騒音,振動,粉じん又は汚水により,人の健康又は生活環境に障害を及ぼさないように努めるべき旨を規定する(同条例123条1項)とともに,建設作業について,上記2法に定めのない作業も加えて,騒音・振動の激しい作業を「指定建設作業」として規制を行っている(ただし,騒音規制法,振動規制法で規定する特定建設作業に係るものを除く。)。すなわち,知事は,一定の「指定建設作業」に伴い発生する騒音,振動が,規則(東京都環境確保条例施行規則・甲256の3)で定める基準(以下「改善勧告等基準」という。)を超え,かつ,その建設作業の行われる場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは,それらの事態を排除するため,その施行者に対し, その騒音,振動の防止の方法若しくは作業の方法を改善し,又は作業 え,かつ,その建設作業の行われる場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは,それらの事態を排除するため,その施行者に対し, その騒音,振動の防止の方法若しくは作業の方法を改善し,又は作業時間を変更することを勧告し,施行者がその勧告に従わないときは上記の改善又は変更を命ずることができるとしており(同条例125条,別表第9),その改善勧告等基準として,敷地境界における音量については80db又は85db(作業の種類により異なる。),敷地境界における振動の大きさについては65db,70db又は75db(作業の種類により異なる。)と定めている(同条例施行規則61条,別表第14)。 イ本件工事における騒音,振動の状況に関する立証の状況本件工事の過程で生じた騒音及び振動の状況については,被告長谷工が作成した「騒音・振動測定管理表」(乙40)が存在する。これは,平成14年4月の解体工事開始後2か月半程度の期間について,本件土地内の境界付近の4地点における状況を記録したものである(なお,その後,同年6月19日に電光掲示する装置を設置したことを契機に,そうした記録はされなくなった。)。同管理表は,解体工事を開始した同年4月4日から同年6月17日までの約2か月半,午前9時まで,午前11時まで,午後2時まで,午後4時までのそれぞれ2時間ずつの4つの時間帯における騒音と振動のおおむねの最高値を記録したものであるが,測定地点により始期と終期が異なっており,また,日によっては4つの時間帯の全てについて記録されているわけではない(乙98)。 なお,上記測定地点は次のとおりである。本件土地内の西側(マンションAの建物の北東角の向かい辺り。以下「測定地点1」という。),本件土地内の西側端(マンションAの建物の南東角の向かい辺 なお,上記測定地点は次のとおりである。本件土地内の西側(マンションAの建物の北東角の向かい辺り。以下「測定地点1」という。),本件土地内の西側端(マンションAの建物の南東角の向かい辺り。以下「測定地点2」という。),本件土地内の東側(原告22及び同23両名が居住する建物の向かい辺り。以下「測定地点3」という。),本件土地内の東側(マンションEの建物の北西角の向かい辺り。以下「測定地点4」という。)の4地点であり,その位置は,おおむね別紙地図記載のとおりである。 このほかに,原告18が,建築現場に面した自宅敷地内の境界付近(測定地点3に近い場所である。以下「原告18測定地点」という。)において,目黒区から借用した騒音・振動測定用機器を用いて,騒音については平成14年5月1日,14日から16日にかけて,振動については同月14日から17日にかけて行った測定結果(騒音については甲242の2,振動については甲242の3)が存在する(甲242の1)。 本件工事による騒音及び振動の状況については,以上のほかには,平成14年7月29日,同月31日,9月25日及び同月26日の本件工事の状況を撮影したビデオテープ(甲242の5)が存在するのと,原告52,同18及び同19の陳述並びに原告らが作成した陳述書(甲153,154,185,186,226の3ないし12,14ないし25,29ないし41,43,46ないし51,甲335)中に,原告らが感じたところを記載したものが存在するのみである。 ところで,上記の測定結果と,上記の測定地点3の測定結果を対比してみると,上記の平成14年5月1日の騒音の測定結果(この点については,後記ウ参照)以外のものについては,おおむね同様の傾向を示しているものと評価される。そして,他に,上記 定地点3の測定結果を対比してみると,上記の平成14年5月1日の騒音の測定結果(この点については,後記ウ参照)以外のものについては,おおむね同様の傾向を示しているものと評価される。そして,他に,上記の測定結果及び上記の測定結果(ただし,平成14年5月1日の騒音の測定結果を除く。)の信用性に疑問を投げ掛ける証拠は存在しない。 そこで,以下においては,上記各測定結果を中心にして,本件工事による騒音及び振動の状況について検討することとする。 ウ各測定地点における騒音の状況上記管理表等(甲242の2,乙40)によれば,次の事実が認められる。 測定地点1における騒音の状況測定地点1は,本件土地内の西側端で,マンションAの建物の北東角の向かい辺りに位置する。 測定地点1における騒音の状況は,次のとおりである。 a 4回の最高値がいずれも80db台の日 5月29日(88.0db,84.5db,85.5db,83.0dbを記録している。)b 4回の最高値が70db台及び80db台を記録している日 4月19日,23日,5月28日,30日,6月5日(なお,85dbを超えた値として,4月19日に85.5dbを記録している。)c 4回の最高値がいずれも70db台の日 4月8日,5月13日,31日,6月3日,4日d 4回の最高値が60db以上80db台以下を記録している日(ただし,aないしc,e,fを除く。) 4月13日(なお,そのうちの1回は83.5db,もう1回は77.0dbである。)e 4回の最高値が60db台及び70db台を記録している日 4月4日,6日,16日,20日,24日,5月10日,1 お,そのうちの1回は83.5db,もう1回は77.0dbである。)e 4回の最高値が60db台及び70db台を記録している日 4月4日,6日,16日,20日,24日,5月10日,11日f 4回の測定値のいずれも60dbの日 4月10日,12日,15日,25日ないし27日,30日ないし5月2日,5月7日ないし5月9日,5月14日ないし16日,6月1日g 1日4回のデータが記録されている日で,50db台の値を含む日 5月17日(16時の時間帯だけ58.0dbであり,それ以外の3回共60db台である。)測定地点2における騒音の状況測定地点2は,本件土地内の西側端で,マンションAの建物の南東角の向かい辺りに位置する。 測定地点2における騒音の状況は,次のとおりである。 a 4回の最高値が70db台及び80db台を記録している日 4月18日ないし20日,26日,5月7日,9日b 4回の最高値がいずれも70db台の日 4月17日,25日,27日,5月2日,13日ないし16日,23日,6月7日c 4回の最高値が60db台及び70db台を記録している日 4月23日,24日,30日,5月1日,10日,11日,17日,20日ないし22日,24日,25日,30日,6月5日,8日,10日,17日d 4回の測定値のいずれも60dbの日 5月8日,18日,27日,31日,6月1日,3日,4日,11日,15日e 1日4回のデータが記録されている日で,50db台の値を含む日 5月28日(67.0db,61.0db,56.0db,57.5db),5月29日(4回共55db前後の値) e 1日4回のデータが記録されている日で,50db台の値を含む日 5月28日(67.0db,61.0db,56.0db,57.5db),5月29日(4回共55db前後の値)測定地点3における騒音の状況測定地点3は,本件土地内の東側端で,原告22及び同23両名が居住する建物の向かい辺りに位置する。 測定地点3における騒音の状況は,次のとおりである。 a 4回の最高値がいずれも80db台の日 4月17日,30日,5月1日,8日,17日(なお,85dbを超えた値として4月17日に86.5dbを,5月8日に87dbを記録している。)b 4回の最高値が70db台及び80db台を記録している日 4月19日,20日,23日,25日ないし27日,5月2日,7日,9日ないし11日,13日ないし15日,18日,21日ないし23日,6月5日,10日(なお,85dbを超えた値として4月9日に88dbを記録している。)c 4回の最高値がいずれも70db台の日 4月24日,5月25日,6月7日,8日d 4回の最高値が60db以上90db台以下の日(ただし,aないしc,eないしgを除く) 4月12日(91.5db,89.0db,67.0db,65.5dbを記録している。)e 4回の最高値が60db以上80db台以下の日(ただし,aないしc,fを除く。) 4月11日f 4回の最高値が60db台及び70db台を記録している日 4月6日,8日,13日,15日,16日,22日,5月20日,24日,27日g 4回の測定値のいずれも60dbの日 4月18日,5月28日ないし6月1日なお 日 4月6日,8日,13日,15日,16日,22日,5月20日,24日,27日g 4回の測定値のいずれも60dbの日 4月18日,5月28日ないし6月1日なお,1日4回のデータが記録されている日で,50db台の値を含む日はない。 原告18測定地点における騒音の状況a 5月14日の状況(午前10時ころから午後5時過ぎまでの間の測定) 12時前ころから午後1時ころまでは,おおむね50dbを中心にして40dbから65dbの範囲内で,それ以外の時間帯は,おおむね60dbを中心にして,50dbから70dbの範囲内で数値が変動しているが,70dbを超えたことも頻回あり,さらに75dbを超えたことが25回ほど,80dbを超えたことが3回ほどあった。 b 5月15日(午前9時ころから午後4時過ぎまでの間の測定) 12時前ころから午後1時前ころまでは,おおむね40dbから60dbまでの範囲内で,午前11時前ころから12時前ころまで,午後2時ころから午後3時30分ころまでは,おおむね55dbから65dbまでの範囲内で,午後3時30分ころ以降は,おおむね60dbから70dbの範囲で,それ以外の時間帯は,おおむね60db台前半を中心にして,55dbから70dbまでの範囲内で数値が変動している。70dbを超えることも頻回あり,瞬間的に75dbを超えたことが10回ほどあった。 c 5月16日(午後2時ころから午後5時過ぎまでの間の測定) 午後2時ころから午後2時30分ころまでは,おおむね70dbを中心として60dbから80dbの範囲内で(80dbを超えたことが15回ほどあった。),午後5時前ころ以降は,おおむね45dbから65dbの範囲内で数値が変動している。それ以外の時 おおむね70dbを中心として60dbから80dbの範囲内で(80dbを超えたことが15回ほどあった。),午後5時前ころ以降は,おおむね45dbから65dbの範囲内で数値が変動している。それ以外の時間帯は,おおむね60dbから70dbの範囲内で数値が変動しているが,70dbを超えることも頻回あり,さらに75dbを超えたこともあった。 なお,原告18が計測した騒音の記録として,上記のほかに5月1日分も書証として提出されている。しかしながら,その記録によれば,当日の騒音が平均75dbを超え,85dbを超えることが頻回あり,90dbを超えることもあったということになり,測定地点3の測定結果と大きく異なる。しかも,同日の記録に手書きで付されている目盛りは,その後の3日間の測定結果を記録した目盛りの付し方と異なっている。その理由について,同原告は,その本人尋問において,記録紙からはみ出すことを少なくするために計測器の目盛りの位置を変更した旨供述する(なお,当初は,目盛りのスケールを変更したためであると供述していたが,被告ら代理人による指摘を受けて,その説明を上記のとおり変更したものである。)が,騒音被害の状況を記録として残すのであれば,低値よりも高値を残すことを考えるのが通常であるが,同原告の説明によればそれとは逆の措置を講じたことになること,また,5月1日の記録をみると,その振れの中心はほぼ記録紙の中心に記録されており,同原告が説明する如き変更を加える必要性があったとは考え難いことなどに徴すると,5月1日の記録紙に付されている目盛りの記載は真実とは異なるものといわざるを得ない。したがって,同日の騒音の記録については,採用できない。 測定地点4における騒音の状況測定地点4は,本件土地内の東側端で,マン は真実とは異なるものといわざるを得ない。したがって,同日の騒音の記録については,採用できない。 測定地点4における騒音の状況測定地点4は,本件土地内の東側端で,マンションEの建物の北西角の向かい辺りに位置する。 測定地点4における騒音の状況は,次のとおりである。 a 4回の最高値が80db台及び90db台を記録している日 5月29日(86.5db,82.0db,90.0db,81.0dbを記録している。)b 4回の最高値がいずれも80db台の日 5月14日,17日,22日ないし24日,28日(なお,85dbを超えた値として5月17日に86dbを記録している。)c 4回の最高値が70db台及び80db台の日 4月26日,5月1日,11日,13日,18日,21日,27日,30日,31日(なお,85dbを超えた値として5月30日に87.0dbを記録している。)d 4回の最高値がいずれも70db台の日 4月23日ないし25日,30日,5月10日,15日,16日,20日,25日,6月1日e 4回の最高値が60db以上80db台以下の日(ただし,bないしd,fを除く。) 5月2日,7日f 4回の最高値が60db台及び70db台を記録している日 4月27日,5月8日,9日なお,1日4回のデータが記録されている日で,50db台の値を含む日はない。 騒音の状況に関する小括上記ないし認定の事実によれば,次のことが明らかである。 測定地点1ないし4において70dbを上回る最高値を記録した日は,4つの値を記録した日(測定地点1においては36日,測定地点2においては ないし認定の事実によれば,次のことが明らかである。 測定地点1ないし4において70dbを上回る最高値を記録した日は,4つの値を記録した日(測定地点1においては36日,測定地点2においては44日,測定地点3においては46日,測定地点4においては31日)のうち,測定地点1において19日(約52%),測定地点2において33日(75%),測定地点3において40日(約86%),測定地点4において31日(100%)に及んでいる。また,80dbを上回る最高値も少なからず記録されている。そして,各時間帯の最高値の1つでも60dbに達しなかったのは,測定地点2において1日あるだけである。ちなみに,70dbの音量は電話のベルや騒々しい事務所の中の状況であり,80dbの音量は地下鉄の車内や電車の車内の状況である(東京都目黒区作成のパンフレット「気づいていますか近隣公害」(甲340)中の「騒音のめやす」)。 ところで,上記データは,本件工事の解体工事のうち一部の期間のものであるが,基本的には解体工事期間(約3か月半)においては,おおむね同程度の騒音が生じていたものと推測できる。 そうすると,少なくとも,本件工事の解体工事の期間(約3か月半)においては,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),「専ら住居の用に供される地域」における「人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」(環境基本法16条1項)である騒音に係る環境基準(55db),さらには,環境への負担を低減する措置を定めるとともに,必要な規制を定めること等により,現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的(東京都環境確保条例1条)としている同条例の日常生活等騒音規制基準値 とともに,必要な規制を定めること等により,現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的(東京都環境確保条例1条)としている同条例の日常生活等騒音規制基準値(本件土地の大部分を占める世田谷区内の土地については50db,目黒区内の土地については45db)を大幅に上回る騒音を恒常的に発生させていたものと認められる。 被告らの主張について被告らは,建設工事に伴う騒音,振動については,騒音規制法,振動規制法及び東京都環境確保条例が適用される,そして,同条例が規制対象としているのは建設工事一般に伴う騒音ではなく「指定建設作業」のみである旨主張する(第2章第4の5ア)ので,以下,この点について補足する。 確かに,上記のとおり環境基本法上の環境基準は建設作業騒音には適用しないこととされており,その作業に伴う騒音については騒音規制法により,また,振動については振動規制法によりそれぞれ規制されているが,それは,建設工事自体一時的なものであること,建設工事の場所などに代替性がなく他では行いがたい工事が多いこと等の事情に基づくものと解される。 しかしながら,建設工事といえども,その工事を施行する者は,その工事現場の周辺に居住する住民等の健康や生活環境に配慮すべきは当然であり,東京都環境確保条例123条1項が,上記のとおり,「建築物その他の施設等の建設,解体又は改修の工事を行う者は,当該工事に伴い発生する騒音,振動,粉じん又は汚水により,人の健康又は生活環境に障害を及ぼさないように務めなければならない」旨規定しているのも,その趣旨に基づいたものと解される。 そして,東京都環境確保条例は,上記のとおり,騒音,振動等の激しい建設作業を「指定建設作業」として規制の対象とし,東京 ればならない」旨規定しているのも,その趣旨に基づいたものと解される。 そして,東京都環境確保条例は,上記のとおり,騒音,振動等の激しい建設作業を「指定建設作業」として規制の対象とし,東京都知事は,その作業に伴い発生する騒音,振動,粉じん等が,規則で定める基準を超え,かつ,その作業の行われる場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは,その建設作業を施工する者に対して改善等の勧告又は命令をすることができる旨規定しており(同条例125条),その基準については,同条例施行規則が定めている。同規則61条1項,別表第14によれば,騒音については,その音量(指定建設作業の種類ごとに80db又は85dbとされている。)だけでなしに,作業の時間帯(基本的には午前7時から午後7時までの間),1日当たりの作業時間(基本的には10時間以内),作業日(日曜日その他の休日を除く日)のほか,作業期間について,その場所において連続して6日以内において行われる作業に伴い発生するものとされており,また,振動については,その大きさ(指定建設作業の種類ごとに65db,70db,75dbとされている。)以外の点については,騒音の場合と同様とされている。 これを本件工事についてみると,上記認定のとおり,本件工事の解体工事が行われた約3か月半の期間中,上記認定のとおりの騒音を恒常的に発生させていたのであるから,仮にそれが指定建設作業に伴う騒音であるとすると,その作業期間の点において上記基準を超えることになるので,東京都知事による改善,命令等の対象になり得るものである。また,それが指定建設作業に該当しないものであるとしても,その施行者である被告らには,上記東京都環境確保条例123条1項に基づく配慮が求められるのである。 そうであるとすると,上記 である。また,それが指定建設作業に該当しないものであるとしても,その施行者である被告らには,上記東京都環境確保条例123条1項に基づく配慮が求められるのである。 そうであるとすると,上記被告らの主張について検討してみても,上記認定の本件工事の解体工事に伴い発生していた騒音は,その音の大きさ及びその期間の点において,周辺の生活環境に対し深刻な影響を及ぼし得るものであったというべきである。 エ各測定地点における振動の状況次に,上記管理表等(甲242の3,乙40)に基づいて,本件工事により発生した振動の状況について,検討する。 測定地点1における振動の状況a 4つの値が記載されている日(合計36日)のうち,振動の値の最高値が75db以上の日はない。また,最高値が70db以上の値のある日は,5月29日のみである(なお,65db以上の値として73.5db,67.0dbを記録している。)。 baのほかに,最高値が65db以上の値のある日は,4月13日(67.0db),4月15日(65.0db),5月28日(69.0db,66.0db,68.0db,67.5dbを記録している。)及び6月5日(65.0db)の4日である(65db以上の値を( )書きした。)。 c 最高値が60db以上の値のある日は,以上のほか,次のとおり11日である。4月12日,16日,19日,25日,5月7日,8日,10日,11日,13日,30日,6月1日。 測定地点2における振動の状況a 4つの値が記載されている日(合計33日)のうち,振動の値の最高値が75db以上の日はない。また,最高値が70db以上の値のある日は,5月29日(なお,70.0db,66.0d 況a 4つの値が記載されている日(合計33日)のうち,振動の値の最高値が75db以上の日はない。また,最高値が70db以上の値のある日は,5月29日(なお,70.0db,66.0dbを記録している)及び6月10日(74.0db,66.5dbを記録している。)の2日である(65db以上の値を( )書きした。)。 b aのほかには,最高値が65db以上の値のある日は,5月2日(66.5db)及び7日(65.0db,68.0db,65.5db,66.5db)の2日である(65db以上の値を( )書きした。)。 c 最高値が60db以上の値のある日は,以上のほか,次のとおり15日である。5月9日ないし11日,13日,15日ないし17日,21日ないし24日,6月4日ないし7日。 測定地点3における振動の状況a 4つの値が記載されている日(合計34日)のうち,振動の値の最高値が75db以上の値のある日は,5月8日の1日のみである(69.0db,76.5db,73.0db,70. 0dbを記録している)。また,このほかに,最高値が70db以上の値のある日は,5月7日(71.5db,70.0db,71.0db,71.0db),5月13日(65.0db,67.0db,70. 0db,68.0db)及び5月16日(68.5db,71.5dbを2回,71.0db)の3日である。 b aのほかには,最高値が65db以上の値のある日は,次のとおり8日である(65db以上の振動の値を( )書きした。)。5月2日(67.0db),5月9日(67.0dbを2回,65.0db),5月10日(66.0db,65.0db,65.5db),5月17日(66.0dbを2回),5月21日(68.0d きした。)。5月2日(67.0db),5月9日(67.0dbを2回,65.0db),5月10日(66.0db,65.0db,65.5db),5月17日(66.0dbを2回),5月21日(68.0dbを2回,65.0dbを2回),5月25日(65.0db),5月28日(68.5db),6月5日(67.0db,66.5db)。 c 最高値が60db以上の値のある日は,以上のほか,次のとおり5日である。4月12日,5月11日,14日,15日,6月6日。 原告18測定地点における振動の状況a 5月14日の状況(午前10時ころから午後5時過ぎまでの間の測定) 12時前ころから午後1時ころまではほとんど振動が記録されていない。それ以外の時間帯は,おおむね40db台後半を中心にして,40dbから55dbの範囲内で数値が変動している。なお,60dbを超えることが10回ほどあったが,いずれも瞬間的なものである。 b 5月15日(午前9時ころから午後5時ころまでの測定) 12時前ころから午後1時前ころまではほとんど振動が記録されていない。それ以外の時間帯は,おおむね40db台後半から50dbを中心にして,40dbから60dbまでの範囲内で数値が変動している。60dbを超えることが30回ほどあったが,いずれも瞬間的なものである。 c 5月16日(午後2時ころから午後5時過ぎまでの間の測定) おおむね50db台前半を中心にして,45dbから60dbまでの範囲内で数値が変動しているが,60dbを超えることも頻回あった(もっとも,65dbを超えたのは数回である。)。 d 5月17日(午後1時ころから午後5時ころまでの間の測定) おおむね55dbを中心にして,45dbから65dbまでの とも頻回あった(もっとも,65dbを超えたのは数回である。)。 d 5月17日(午後1時ころから午後5時ころまでの間の測定) おおむね55dbを中心にして,45dbから65dbまでの範囲内で数値が変動している。65dbを超えることも頻回あり,瞬間的に70dbに達することも数回あった(最高値は73dbである。)。 測定地点4における振動の状況a 4つの値が記載されている日(合計24日)のうち,振動の値の最高値が75db以上の日はない。また,最高値が70db以上の値のある日は,5月17日(70.5db,73.5db,74.5db)及び5月20日(69.5db,71.0db,66.0db)の2日である(65db以上の振動の値を( )書きした。)。 b aのほかには,最高値が65db以上の値のある日は,次のとおり6日である(65db以上の振動の値を( )書きした。)。5月11日(66.0db),16日(69.5db),5月18日(67.0db),5月23日(69.0db),5月24日(65.0db),5月28日(68.0db,67.0dbを2回,66.0db)。 c 最高値が60db以上の値のある日は,以上のほか,次のとおり8日である。5月8日,15日,22日,27日,29日ないし6月1日。 振動の状況に関する小括a 上記ないし認定事実によれば,次のことが明らかである。 測定地点1ないし4において東京都環境確保条例の日常生活等振動規制基準値(日中)である60dbを上回った最高値のある日は,4つの値を記録した日(測定地点1においては36日,測定地点2においては33日,測定地点3においては34日,測定地点4においては24日)のうち,測定地点 中)である60dbを上回った最高値のある日は,4つの値を記録した日(測定地点1においては36日,測定地点2においては33日,測定地点3においては34日,測定地点4においては24日)のうち,測定地点1においては16日(約44%),測定地点2においては19日(約57%),測定地点3においては17日(50%),測定地点4においては16日(約66%)である。 しかしながら,その超過の程度をみると,① 振動規制法の所定の特定建設作業についての勧告基準(75db)を上回る最高値を記録した日は,測定地点3における1日(平成14年5月8日)だけである。また,② 東京都環境確保条例の指定建設作業についての勧告基準(65db,70db,75dbの3つの類型に分かれている。)のうちの70dbを上回る最高値を記録した日は,測定地点1において1日,測定地点2において2日,測定地点3において4日(①との合計である。),測定地点4において2日であり,③ 同勧告基準のうちの最も小さい値である65dbを上回った最高値を記録した日は,測定地点1において3日(①及び②との合計である。以下同様),測定地点2において4日,測定地点3において11日,測定地点4において7日にとどまり,また,原告18測定地点における振動の測定結果によっても,平成14年5月17日の午後の測定結果を除くと,おおむね東京都環境確保条例の日常生活等振動規制基準値(日中)である60db内に収まっていた。 b 確かに,上記でみたとおり,本件工事により本件土地の境界付近で発生した振動は,東京都環境確保条例中の指定建設作業に関する勧告基準を上回ることがあり,また,同条例が定めている日常生活等振動規制基準との関係でもその数値を上回ることがあった。また,原告らが作成した陳述書の中には ,東京都環境確保条例中の指定建設作業に関する勧告基準を上回ることがあり,また,同条例が定めている日常生活等振動規制基準との関係でもその数値を上回ることがあった。また,原告らが作成した陳述書の中には,振動被害が深刻なものであったことを記載したものが少なからず存在する(甲153,185,186,226の4ないし12,14,16ないし25,29ないし32,36,37,39,41,46,甲335)。 しかしながら,原告らの振動被害の申告の状況について,陳述書の記載内容を検討すると,① 本件土地の敷地境界線から40m以上の距離に居住する原告ら,すなわち原告39(その距離は40m)及び同47(同45m),本件土地の敷地境界線から50m以上の距離のあるマンションBに居住している原告58,同59,同60,同61,同62,同63及び同64は,特段被害を記載していない(甲226の26,30,38ないし43)だけでなく,② 測定地点1及び2と10mほどの距離にあるマンションAに居住する,原告51,同52,同53,同54,同55,同56,同57,同69,同70,同71及び同72のみならず,③ 極めて近くに居住する原告ら,すなわち,原告19(その距離は4.5m),同21(同10m)さえも,特段被害を記載していない(甲226の13,15,33ないし37,47ないし49)。 また,東京都目黒区作成のパンフレット「気づいていますか近隣公害」(甲340)中の「振動のめやす」によれば,振動が及ぼす影響のめやすは次のとおりと認められる。① 55dbから65dbは「静止している人にだけ感じる」程度の振動であり,② 65dbから75dbは「大勢の人に感じる程度のもので,障子がわずかに動く」程度の振動であり,③ 75dbから85dbは「家屋 5dbから65dbは「静止している人にだけ感じる」程度の振動であり,② 65dbから75dbは「大勢の人に感じる程度のもので,障子がわずかに動く」程度の振動であり,③ 75dbから85dbは「家屋が揺れ,障子がガタガタと音を立てる」程度の振動である。 このように,原告らの間においても振動被害の受け止め方が大きく違っていることに加え,上記a摘示の振動の状況,さらには,上記の振動のめやすをも考慮すると,本件工事期間中,原告らが本件工事により発生した振動の影響を受けていたことは認められるが,それが長期間にわたり,恒常的に現れていたことを認めるに足りる客観的証拠はなく,むしろ,それは一時的なものに止まっていたものと判断される。 そうであるとすると,原告らにおいて,本件土地内の本件工事により発生した振動により,看過し得ないほどの重大な影響を受けたものと認めることはできないというべきである。 粉塵による被害ア本件工事の過程で生じた粉塵による被害の状況については,各原告らが作成した陳述書(甲226の3ないし6,8ないし12,15ないし24,29ないし37,40,41,46ないし49)中にその記載が見られるほか,原告19及び原告52の本人尋問における供述が存在する。 そこで,まず,粉塵による被害に関する原告らの供述等の内容について検討する。 本件土地の西側に居住する原告らの供述等の状況マンションAに居住する原告51,同52,同53,同54,同55,同56,同57,同69,同70,同71及び同72は,いずれも窓や洗濯物等が直ぐに土埃等で汚れ(黒くなる等の表現をしている者もいる。),洗濯物を屋外に干せなくなった等と供述等している(甲154,226の33ないし3 9,同70,同71及び同72は,いずれも窓や洗濯物等が直ぐに土埃等で汚れ(黒くなる等の表現をしている者もいる。),洗濯物を屋外に干せなくなった等と供述等している(甲154,226の33ないし37,47ないし49,原告52)。 本件土地との間にマンションAが介在する位置関係に居住する原告49,同50及び同46も,粉塵のため洗濯物を屋外に干せない等と記載している(甲226の29,32)。 そのさらに西側に所在するマンションBに居住する原告61は,バルコニーの網戸が直ぐに汚れて真っ黒になる,時には洗濯を洗い直さねばならない時もある旨(甲226の40),同62は窓を開けると絨毯の色が黄土色になる旨(甲226の41)記載しているが,同じくマンションBに居住する原告58,同59,同60,同63及び同64は粉塵被害については特段記載していない(甲226の38,39,42,43)。 また,本件土地の西側で本件土地の敷地境界線と40mから60mほどの距離に居住する原告47,同48及び同68も,洗濯物が干せない,毎日掃除をしても汚れが取れない等と記載している(甲226の30,31,46)。 一方,マンションC(本件土地の敷地境界線との距離は75mから80mほど)に居住する原告73,同74及び同75は粉塵による被害について特に記載していない(甲226の50,51)。 本件土地の東側に居住する原告らの供述等の状況原告5,同7,同8,同10,同11,同12,同13,同14,同15,同16,同17,同18,同19,同21,同22,同23,同24,同26,同28,同29,同30,同31,同32,同33,同34,同35及び同36は,洗濯物が汚れるので外に干せない,室内がざらざら ,同16,同17,同18,同19,同21,同22,同23,同24,同26,同28,同29,同30,同31,同32,同33,同34,同35及び同36は,洗濯物が汚れるので外に干せない,室内がざらざらする等と記載又は供述している(甲226の4ないし6,8ないし13,15ないし24,原告19)。上記原告らの住居の本件土地の敷地境界線からの距離はいずれも40m以内である。 上記原告らの居宅に隣接して囲まれている位置関係に居住する原告9(本件土地の敷地境界線からの距離は15m),同20(同じく14m)及び同38(同じく4.4m)は,粉塵による被害について特に記載していない(甲226の7,14,25)。また,原告12及び同13の居宅と道路一本隔てた位置にあるマンションFに居住する原告39(本件土地の敷地境界線からの距離は40m)も,粉塵被害については特に記載していない(甲226の26)。原告3(甲226の2によれば,同原告は八雲5丁目○○番○号に居住しており,甲1からすれば,本件土地の敷地境界線から同人の自宅までの距離は80m以上ある。)も同様に粉塵による被害について記載していない(甲226の2)。 他方,マンションFよりも東側にある居宅(本件土地の敷地境界線からの距離は110m)に居住する原告4は,窓枠や物干しが粉塵ですぐに汚れたと記載している(甲226の3)。 イ粉塵の状況に関する小括上記アによれば,粉塵による被害について原告らが記載又は供述するところは,洗濯物を屋外に干せない,室内がざらざらするといった内容のものであるが,本件工事の内容,規模等を考えると,ある程度そのような事態が生じていたことが推認される。そして,その被害の程度については,様々な要素が関係することになろうが,本件土地か といった内容のものであるが,本件工事の内容,規模等を考えると,ある程度そのような事態が生じていたことが推認される。そして,その被害の程度については,様々な要素が関係することになろうが,本件土地からの距離が重要な要素を構成しているものと考えられるところ,原告らが申告する被害の実情については,本件土地の境界からの距離とは必ずしも合致していない面が見られる。しかも,その被害発生の期間,頻度等については,未だ十分に明らかにされていないといわざるを得ない。 受忍限度を超えた被害の有無についてア被告らが講じた対応策について証拠(甲108,乙110,113,証人A)によれば,被告らは,本件工事に際し,次の対策を講じたことが認められる。 本件工事に伴う騒音,振動の発生を抑制するために,重機は全て低騒音,低振動型のものを使用した上,本件土地の外周には,防音シートを取り付けた3mの万能鋼板を用いて仮囲いを設けた。さらに,鉄パイプによる音の発生を抑制するために,床にタイヤ,ベニア板,毛布を敷いた。特に,J棟の東側では,スラブ配管,コンクリート打設時等の騒音が発生しやすい作業の際に,建物の側面にも防音シートを張った。 車両の通行に伴う粉塵,騒音を抑制するために,本件土地内における車両の制限速度を時速5kmとし(車両出入り口に配備した警備員に「徐行」と記載したプラカードを持たせて制限速度を厳守させた。),車両の通行する箇所に鉄板を敷いて,その鉄板同士を溶接し,また,車両出入り口には洗車スペースも設けるなどした。 粉塵の発生を抑制するために,建物には,メッシュシート(中庭部分ではグリーンネット)を張り,また,解体工事の際には散水車を配備して本件土地内に散水するなどした。 イ振動・粉塵の 粉塵の発生を抑制するために,建物には,メッシュシート(中庭部分ではグリーンネット)を張り,また,解体工事の際には散水車を配備して本件土地内に散水するなどした。 イ振動・粉塵の被害について振動・粉塵の被害については,確かに,本件土地に近い住居に居住している原告らが,本件工事により生じた振動・粉塵によりその生活上ある程度の被害を被っていたことがうかがわれはするけれども,上記において認定,説示したその被害の内容・程度等の実情(振動につき上記エ,粉塵につき同),振動・粉塵被害の発生の防止に関し被告らが講じた対応策の内容(上記ア)のほか,上記第1の4説示のとおり,本件各建物は建築関係法規等の法令の要件を満たすものとして建築されており,また,本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等,被告らによる本件土地取得及び本件建築計画立案の経緯,本件各建物建築に至る経緯に照らしても,被告らの本件土地取得,本件各建物建築の経緯,交渉態度等において,社会的に相当性に欠ける点があったと認めることができないこと等を総合的に検討すると,それが,一般社会生活上受忍すべき程度を超えるものであるとまでは認めることができない。 ウ騒音の被害について(その1)これに対し,騒音の被害については,上記ウ認定のとおり,本件工事においては,少なくともその解体工事の期間(約3か月半),平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),「専ら住居の用に供される地域」における「人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」(環境基本法16条1項)である騒音に係る環境基準(55db),さらには,環境への負担を低減する措置を定めるとともに,必要な規制を定めること等により,現在及び将来の都民が健康で安 ことが望ましい基準」(環境基本法16条1項)である騒音に係る環境基準(55db),さらには,環境への負担を低減する措置を定めるとともに,必要な規制を定めること等により,現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的(東京都環境確保条例1条)としている同条例の日常生活等騒音規制基準値(本件土地の大部分を占める世田谷区内の土地については50db,目黒区内の土地については45db)を大幅に上回る騒音を恒常的に発生させていたものと認められる。そして,本件騒音は建設工事に伴うものではあるが,上記ウ説示のとおり,その音の大きさ及びその期間の点において,周辺の生活環境に対し深刻な影響を及ぼし得るものであった。 そこで,以下においては,上記騒音が,各原告らに対し一般社会生活上受忍すべき程度を超える影響を及ぼしたか否かについて,本件土地と各原告らの居宅の位置関係等に基づいて,上記各測定地点別に検討することとする。 測定地点1及び2付近の原告ら各測定地点との関係を考慮すると,この付近に居住する原告らとしては,世田谷区深沢2丁目に居住する原告番号40ないし75の原告ら(ただし,44番を除く。)が検討の対象になる。これらの原告らの本件工事の現場との位置関係は別紙地図記載のとおりであり,本件土地の敷地境界線から原告らの自宅までの間の直線距離は別紙被害状況一覧表の「工事被害」の「距離(m)」欄記載のとおりである。 a マンションAに居住している原告らについて原告51,同52,同53,同54,同55,同56,同57,同69,同70,同71及び同72は,いずれも同建物に居住している。本件土地の敷地境界線との距離は,最も短い者(原告51及び同52)で7 原告51,同52,同53,同54,同55,同56,同57,同69,同70,同71及び同72は,いずれも同建物に居住している。本件土地の敷地境界線との距離は,最も短い者(原告51及び同52)で7m,最も長い者(原告53)でも21mである。 そして,証拠(甲154,甲226の33ないし37,47ないし49)によれば,上記各原告らの住居内においては,いずれも窓を開けるとテレビの音,会話,電話やインターホンの音等が聞こえなくなったことが認められる。 以上の事実に,上記ウ認定の測定地点1及び2における騒音の状況を総合すると,上記各原告らは,本件工事に伴い,少なくともその解体工事の期間中の約3か月半にわたり,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては上記測定地点におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされる状況に置かれていたものと推認することができる(もっとも,騒音にさらされていた時間は,各原告らの在宅状況等によることになるので,この点については後記エで検討する。)。 b マンションBに居住している原告らについて原告58,同59,同60,同61,同62,同63及び同64は,いずれも同建物に居住している。同原告らの自宅と本件土地の敷地境界線との距離は,最も短い者(原告58及び同59)でも52mである。 ところで,原告58,同59,同60,同61,同62及び同64は,その作成した陳述書(甲226の38ないし41,43)中で,騒音の激しさを記載している。しかしながら,①本件土地の敷地境界線との距離は,原告58及び同59において52m,同61において60m,同62において54mであること 6の38ないし41,43)中で,騒音の激しさを記載している。しかしながら,①本件土地の敷地境界線との距離は,原告58及び同59において52m,同61において60m,同62において54mであること,② 本件土地の敷地境界線と60mの距離に居住する原告40は騒音はなかったとしていること(甲226の27),③ 本件土地との間に上記マンションAが介在していること,④ 工事車両の走行により生じる騒音も大きな要素となっている(原告19)が,その騒音の程度は,本件土地と道路を隔てるだけの位置にある居宅とそれ以外の居宅との間では大きな差異があると考えられること(工事車両の出入り口は,八雲文化通りに面した本件土地南西角と南東角及び自由通りに合流する道路に面した本件土地北西角にあり,本件土地内の工事車両用の通路は,本件土地の敷地境界に沿う形で設置されている(ただし,N1敷地,N4敷地及びS4敷地においては,境界に沿う形の通路は設置されていない。乙107))などに徴すると,マンションBでの騒音は上記aのマンションAでのそれに比して相当程度小さかったものと推認される。 現に,マンションBに居住する原告の中には,平日の昼間も在宅していながら騒音被害を述べていない者(原告63,甲226の42)もいる。 c 原告45,同46,同49及び同50について同原告らについては,その住居と本件土地の敷地境界線との距離が,原告45及び同46については37m,原告49及び同50については31mある。上記bの原告らよりも短いが,上記aの原告らのうち,最も本件土地の敷地境界線から近い原告51及び同52と比べると,その距離は4倍以上ある。しかも,本件土地との間に,マンションA等の建築物が存在する。そうすると,上記原告らの住居における騒音の状況も,上記 本件土地の敷地境界線から近い原告51及び同52と比べると,その距離は4倍以上ある。しかも,本件土地との間に,マンションA等の建築物が存在する。そうすると,上記原告らの住居における騒音の状況も,上記のマンションAでのそれと比べると,相当程度小さかったものと推認される。 d その余の原告らについて原告48は,その作成した陳述書中において,睡眠がとれないほど騒音が続いたと記載しており(甲226の31),同人の隣に居住する原告47及び同68も騒音がひどかった旨記載している(甲226の30,46)。しかしながら,同原告らの居宅は上記bのマンションBの道路を挟んでほぼ南隣に位置し,本件土地の敷地境界線までの距離も45mから58mであることからすると,同原告らの居宅における騒音の状況は,マンションBと同程度,すなわち上記aのマンションAでのそれと比して相当程度小さかったものと推認される。 また,マンションCに居住する原告73(本件土地の敷地境界線までの距離は75m),同74及び同75(同80m)は,その作成した陳述書中に騒音があったと記載している(甲226の50,51)が,その記載は上記bの原告らの記載に比し具体性を欠く。加えて,マンションCに居住する上記原告らに比べて本件土地の敷地境界線及び上記測定地点から近距離にある居宅に住む原告40は,その作成した陳述書中において騒音はなかったとしている(甲226の27)。そうすると,原告40の居宅の敷地の周囲に樹木が植えられており,それが騒音を軽減するものとなり得ることを考慮しても,マンションCにおける騒音は,上記測定地点1及び2の騒音よりかなりの程度小さいのものであったといわざるを得ない。 原告40,同41,同42,同43,同65 得ることを考慮しても,マンションCにおける騒音は,上記測定地点1及び2の騒音よりかなりの程度小さいのものであったといわざるを得ない。 原告40,同41,同42,同43,同65,同66及び同67についても,以上の認定説示のほか,その住居の本件土地の敷地境界線までの距離(60mから93m)に照らすと,上記測定地点1及び2の騒音よりかなりの程度小さいものであったと推認される。 測定地点3付近の原告ら各測定地点との関係を考慮すると,この付近に居住する原告らとしては,目黒区八雲5丁目に居住する原告らのうち,原告番号14ないし36及び38番の原告らが検討の対象になる。これらの原告らの本件工事の現場との位置関係は別紙地図記載のとおりであり,本件土地の敷地境界線から原告らの自宅との間の直線距離は別紙被害状況一覧表の「工事被害」の「距離(m)」欄記載のとおりである(その距離は,原告32及び同33はいずれも40m,原告36は27mであるが,その余の原告らは最も長い原告30及び同31らでも17mである。)。 a 測定地点3及び原告18測定地点付近に居住している原告らについて原告22及び同23の居宅は,原告らの中では測定地点3に最も近く,本件土地とは道路を隔てるだけの位置にあり,本件土地の敷地境界線とは3.3mしか離れていない。原告14,同15,同16,同17,同18,同19及び同38の居宅も,別紙地図のとおり,原告22らの居宅及び原告18の居宅と近い位置にあり,また,本件土地とは道路を隔てるだけの位置にある(その距離は,最も長い者でも6.7mである。)。さらに,原告20,同21,同28,同29,同30,同31及び同34の自宅も,本件工事現場に直接面してはいないが,本件土 道路を隔てるだけの位置にある(その距離は,最も長い者でも6.7mである。)。さらに,原告20,同21,同28,同29,同30,同31及び同34の自宅も,本件工事現場に直接面してはいないが,本件土地の敷地境界線までの距離は10mないし17mである。 そして,同原告らは,その作成した陳述書において,戦場のような騒音があり夜になっても耳鳴りがして眠れなかった(原告14及び同15,甲226の10),寝かしつけたばかりの赤ん坊が起きてしまい,また,原告17は突発性難聴になった(原告16及び同17,甲226の11),騒音により仕事が手に付かなくなった(原告18,甲226の12),我慢の限度を超えていた(原告38,甲226の25)などと記載し,原告19もその尋問において,窓を閉めていてもテレビの音量を上げたり,話をする時には大きな声を出したりしなければならなかった等と供述しており,騒音の具体的な状況としては同原告らが記載又は供述するような状況であったことが認められる。 以上の事実に,上記ウ認定の測定地点3における騒音の状況を総合すると,上記各原告らは,本件工事に伴い,少なくともその解体期間中の約3か月半にわたり,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては測定地点3及び原告18測定地点におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされる状況に置かれていたものと推認することができる(もっとも,騒音にさらされていた時間は,各原告らの在宅状況等によることになるので,この点については後記エで検討することとする。)。 b 原告32及び同33について原告32及び同33も,その作成した陳述書中において,騒音がひどかった旨記 で,この点については後記エで検討することとする。)。 b 原告32及び同33について原告32及び同33も,その作成した陳述書中において,騒音がひどかった旨記載している(甲226の20,21)。しかしながら,同原告らの居宅は,本件土地の敷地境界線から40mの距離に位置しており,この距離は上記aの原告らのうち本件土地の敷地境界線との距離が最も長い者と比べても約2.3倍である。加えて,同原告らの居宅と本件土地との間には,数件の住宅及び道路が存在する(甲1)。そうすると,上記原告らの住居における騒音の状況は,上記aの原告らのそれと比べると,相当程度小さかったものと推認される。 c 原告24,同25,同26,同27,同35及び同36について原告24,同25,同26及び同27の居宅は,本件土地の敷地境界線から5mの距離に,同35の居宅は1.5mの距離に,同36の居宅は27mの距離に位置するが,別紙地図からすると,この距離は,S4敷地の境界線からのものであることが明らかである。そして,同敷地では解体工事は行われていない(甲108)。そうすると,本件工事の解体工事に伴う騒音被害を検討するに際しては,上記距離を基礎とするのは妥当でなく,上記a及びbの原告らと同様にS2敷地の境界からの距離を基礎とするのが相当である。 ところで,これらの原告の居宅のS2敷地からの距離は,別紙地図によると,原告32や同33と同程度かそれ以上であることが明らかであるから,その住居における騒音の状況は,上記bの原告らと同様に,上記aの原告らのそれと比べると相当程度小さかったものと推認される。 測定地点4付近の原告らについて各測定地点との関係を考慮すると 音の状況は,上記bの原告らと同様に,上記aの原告らのそれと比べると相当程度小さかったものと推認される。 測定地点4付近の原告らについて各測定地点との関係を考慮すると,この付近に居住する原告らとしては,目黒区八雲5丁目に居住する原告らのうち,原告番号3ないし5,7ないし13及び39の原告らが検討の対象になる。これらの原告らの本件工事の現場との位置関係は別紙地図記載のとおりであり,本件土地の敷地境界線からその自宅との間の直線距離は原告3を除き別紙被害状況一覧表の「工事被害」の「距離(m)」欄記載のとおりである(その距離は,原告39が40m,原告5が26m,原告12及び同13が25mであるが,その余の原告らは最も長い者でも15mである。)。なお,原告3については,上記アで認定したとおり,80m以上はある(別紙被害状況一覧表では原告3について距離が6mと記載されているが,甲1号証からすると,それは,同原告の居宅ではなく,マンションEから本件土地の敷地境界線までの距離と解される。)。 a 原告7,同8,同9,同10及び同11について原告7(その居宅の本件土地の敷地境界線からの距離は2.9m),同8(同じく10m)及び同9(同じく15m)は,測定地点4と道路を隔てて6mほどの距離にあるマンションEに隣接する敷地上の居宅に居住しており,原告7の居宅は道路を隔てて本件土地と面している。また,原告10及び同11の居宅(同じく15m)は,上記各原告らの居宅の南東側に近接した位置にある。 そして,証拠(甲226の5ないし8)によれば,上記各原告らは,室内において会話,テレビや電話の音が聞きづらかったり,爆弾を落としたような音を経験していたことが認められる。 そして,証拠(甲226の5ないし8)によれば,上記各原告らは,室内において会話,テレビや電話の音が聞きづらかったり,爆弾を落としたような音を経験していたことが認められる。 以上の事実に,上記ウ認定の測定地点4における騒音の状況を総合すると,上記各原告らは,本件工事に伴い,少なくともその解体期間中の約3か月半にわたり,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては測定地点4におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされる状況に置かれていたものと推認することができる(もっとも,騒音にさらされていた時間は,各原告らの在宅状況等によることになるので,この点については後記エで検討することとする。)。 b 原告5,同12及び同13について原告5(本件土地の敷地境界線からの距離は26m),同12及び同13(同じく25m)の居宅は,いずれも上記aの原告らの居宅に近接している位置にある上,S3敷地とN4敷地にL字形に囲まれていることをも考慮すると,同原告らの住居における騒音の状況も上記aの原告らのそれと同程度の状況にあったと推認することができる。 c その余の原告らについて原告39については,本件土地の敷地境界線から40mの距離に居住していた上,同原告の居住するマンションFと本件土地との間には,数件の住居及び自由通りに合流する道路が存在する。しかも,マンションFは,自由通り及び自由通りに合流する上記道路とに囲まれる三角地帯に両道路に面する形で存在する。こうしたことのほか,同原告自身,その作成した陳述書中において,本件工事による騒音については特段記載していないこと(甲226の26) 流する上記道路とに囲まれる三角地帯に両道路に面する形で存在する。こうしたことのほか,同原告自身,その作成した陳述書中において,本件工事による騒音については特段記載していないこと(甲226の26)にも徴すると,マンションFにおける本件工事による騒音の状況は,上記aの原告らのそれに比し相当程度に小さかったと推認される。 さらに,原告3(本件土地の敷地境界線からの距離は80m以上)及び同4(同110m)についても,その居宅の本件土地の敷地境界線までの距離は,上記原告39のそれと比べ倍以上であることからすると,同原告らについては,上記39と比べてもより軽度な状況にあったものと推認される。現に,原告3は,その作成した陳述書中において,本件工事による騒音については特段記載していない(甲226の2)。 エ騒音の被害について(その2)上記ウ認定の事実によれば,測定地点1及び2の付近ではマンションAに居住している原告ら(原告51,同52,同53,同54,同55,同56,同57,同69,同70,同71及び同72),測定地点3の付近では本件土地と数mから17mの距離に居住する原告ら(原告14,同15,同16,同17,同18,同19,同22,同23,同20,同21,同28,同29,同30,同31,同34及び同38),測定地点4の付近では本件土地と数mから15mの距離に居住する原告ら(原告7,同8,同9,同10及び同11)並びに原告5,同12及び同13については,本件工事に伴い,少なくともその解体工事期間中の約3か月半にわたり,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては測定地点1ないし4におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされる状況に置かれてい ,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては測定地点1ないし4におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされる状況に置かれていたものと推認することができる(もっとも,騒音にさらされていた時間は,各原告らの在宅状況等によることになるので,この点については,後記で検討することとする。)。 そして,上記原告らの中には,健康を害した者も出た。すなわち,原告17は突発性難聴に罹患した(甲226の11,甲335,原告1)。 もとより,上記の騒音の状況に関する客観的な資料については,上記4つの測定地点で測定した解体工事当初からの2か月半程度の期間の不十分ながらの測定結果及び原告18測定地点で実施した4回の騒音の測定結果(ただし,前記ウのとおり平成14年5月1日の測定結果については採用できない。),同年7月29日,同月31日,9月25日及び同月26日の本件工事の状況を撮影したビデオテープ(甲242の5)等しか提出されていないので,本件においては,本件工事期間を通じての騒音被害の実情の詳細を解明することは困難である(被告長谷工は,同年12月以降,近隣の一部の住民との間で「(仮称)深沢2丁目計画建設工事についての協定書」(乙32の2)を締結し,その中で,騒音や振動対策として,「測定器の数値を確認できる騒音・振動計を設置しその値を記録する」ことを約している。それにもかかわらず,本件においては,上記の如き不十分な記録しか提出されていないことも,騒音の状況の解明の障害となっているといわざるを得ない。)。 この点に関し,原告らが作成した陳述書(甲226の3ないし5,7,8,11,12,15ないし17,19,25,29,33ないし39,46,47)中には,解 といわざるを得ない。)。 この点に関し,原告らが作成した陳述書(甲226の3ないし5,7,8,11,12,15ないし17,19,25,29,33ないし39,46,47)中には,解体工事後の本工事期間中も騒音が続いていた旨の記載が存在し,原告18は,その本人尋問において同趣旨の供述をする。しかしながら,この点については,上記のとおり客観的資料がない上,一般に,建築工事に伴う騒音は,解体工事の際に大きくなる可能性があるが,その後の本工事においてはそれと比べると相対的に小さくなるものと考えられる(現に,解体工事が終了した後に居住を始めた原告19は,その作成した陳述書において,工事による騒音について記載していない。)ことからすると,解体工事が終了した後も本工事に伴い上記ウ認定のような騒音が生じていたものと認めることはできない。 ところで,上記の原告らが被った騒音被害の程度は,その被害の性質にかんがみると,主として上記騒音にさらされていた時間の長さに関係するものと推認される。そこで,このような観点から,上記各原告らの原則的な在宅状況を検討すると,証拠(甲225の4ないし16,18,19,22,25,33ないし37,47ないし49,226の48)によれば,次のとおり認められる。 a 原則的には工事時間帯に在宅していた原告5,8,11,12,13,15,17,18,31,34,56,70,72b 原則的には工事時間帯の半分程度在宅していた原告23(週3日程度),71(平日休み多い)c 原則的には土曜日の工事時間帯のみに在宅していた原告7,9,10,19,20,21,30,38,51,52,5 23(週3日程度),71(平日休み多い)c 原則的には土曜日の工事時間帯のみに在宅していた原告7,9,10,19,20,21,30,38,51,52,57,69d 原則的には工事時間帯に在宅していなかった原告14,16,22,28,29,53,54,55なお,上記のうち,原告72は,平成14年9月30日から居住を始めている(甲225の49,甲226の49)が,これは解体工事が終了した後であるから,上記騒音被害を被っていないことに帰する。また,原告19も,平成14年8月から居住を始めており(甲27の3,4,甲226の13。なお,同原告の作成した報告書(甲225の13)では平成14年4月から居住を始めた旨記載されているが,上記各証拠に反しており採用できない。),原告72と同様に,上記騒音被害を被っていないことに帰する。 なお,被告長谷工は,上記ア認定のとおり,本件工事の施行に当たり,騒音の発生を小さくするために相応の対応策を講じている。しかしながら,証拠(甲153,154,226の7,10ないし12,16,29,38,48,51,甲335,原告18,同19,同52)により認められる原告らからの騒音に関する苦情・改善方の申入れに対する被告らの対応は,必ずしも万全とは言い難いものであったといわざるを得ない。 以上の事実を総合すると,上記の原告らは,本件工事に伴い,少なくともその解体工事期間中の約3か月半にわたり,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては上記測定地点におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされ得る状況に置かれてい たり,平日及び土曜日の日中(午前8時ころから午後5時ころまでの間),その自宅付近の屋外においては上記測定地点におけるのに近い騒音に,また,その室内においても相当の騒音にさらされ得る状況に置かれていたものと推認することができ,そのうち,上記の原則的な在宅状況のうち,aないしcに該当する原告ら(ただし,原告19及び同72は除く。)は,時間の長短はあるものの現実にそのような騒音にさらされていたものと推認される。そうであるとすると,本件騒音が本件工事に伴い発生しているものであり,かつ,被告らの本件各建物の建築に至る経緯,交渉態度等において社会的に相当性に欠ける点があったと認めることができないとしても,その工事に伴い発生した騒音の大きさ,それが続いた期間に加え,騒音に関する苦情,改善方の申入れへの被告長谷工の対応の実情をも総合的に考慮すると,上記のaないしcに該当する原告らは,上記騒音により,一般社会生活上受忍すべき程度を超えた精神的な苦痛を受けたものと認めることができる。 もっとも,上記aの原告15については,その居宅は本件土地の敷地境界線に近いものの,八雲文化通りに面しており(甲1),もともと,その道路の交通に伴う相当程度の騒音にさらされていたものと推認される。こうしたことに,上記アのとおり,このような地域については,騒音に係る環境基準上も,昼間は60db以下とされていることをも併せ検討すると,その被害が上記受忍すべき程度を超えるものであると認めることはできない。 また,上記aの原告5,同12及び同13については,同人らの居宅は,本件土地と前記ウb認定のとおりの位置関係にあるものの,いずれも自由通りに合流する2車線以上の道路に面しているので,原告15について説示したのと同様の事情があるといえる。 加えて,同原 人らの居宅は,本件土地と前記ウb認定のとおりの位置関係にあるものの,いずれも自由通りに合流する2車線以上の道路に面しているので,原告15について説示したのと同様の事情があるといえる。 加えて,同原告らは,その作成した陳述書中でも騒音について具体的な記載をしていない(甲226の4,9)ことをも考慮すると,本件工事に伴う騒音の被害は相対的にそれほど深刻なものではなかったと推認することができ,その被害が上記受忍すべき程度を超えるものであると認めることはできない。 そして,上記原告らが被った精神的な損害の程度は,上記のとおり主として上記騒音にさらされていた時間の長さに関係するものと解されるので,その損害額は,以上の認定説示のほか,本件に顕れた一切の事情を考慮して,上記のaの原告ら(ただし,原告5,同12及び同13,同15,同72を除く。)については40万円,bの原告らについては20万円,cの原告ら(ただし,原告19を除く。)については10万円をもって相当と判断する。 なお,被告らは,上記原告らのうち,原告20,同21,同38,同51,同52,同56,同57,同69,同70及び同71については,居宅購入時において本件建築計画を予想でき,それを容認して住人となったのであるから,その受忍限度は広くなると主張する。 確かに,同原告らは,本件土地上に建築物が建てられることは予想していた(甲174の1,2,4,5,8ないし10,12)のであるから,そのための解体工事が行われることも予想できていたと思われるが,その解体工事から以上認定したような騒音にさらされることを認識し,これによる被害を認容して本件土地周辺に居住するようになったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,上記原告らについて,騒音によ 上認定したような騒音にさらされることを認識し,これによる被害を認容して本件土地周辺に居住するようになったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,上記原告らについて,騒音による損害賠償責任を否定ないし減縮することはできないというべきである。 以上のところによれば,不法行為に基づく損害賠償として,本件工事に伴い生じた騒音による精神的苦痛に対する慰謝料として,原告8,同11,同17,同18,同31,同34,同56及び同70については各40万円,原告23及び同71については各20万円,原告7,同9,同10,同20,同21,同30,同38,同51,同52,同57及び同69については各10万円を認めるのが相当である。 3 所有不動産の価値の下落による損害賠償請求(第2章第3の5関係)について原告らは,その所有地等の近傍に本件各建物のような高層かつ巨大な建物群が建築され,様々な環境悪化が生じたため,住宅地としての経済的価値が壊滅的な影響を受けた,具体的には,別紙損害賠償請求一覧表の「資産価値下落」欄記載のとおりの地価下落が生じたと主張する。 しかしながら,本件各建物の存在が原告らの景観利益,圧迫感のない生活利益,日照権及びプライバシー権を侵害したことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権が理由のないことは,上記1説示のとおりである。そして,これらの事由のほかに,本件各建物の存在が本件土地周辺の環境悪化を来したことについて,具体的な主張・立証はない。 加えて,上記第1において説示したとおり,本件各建物は建築関係法規等の法令の要件を満たすものとして建築されており,また,本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等,被告らによる本件土地取得及び本件建築計画立案の経緯,本件各建物建築に至る経緯に照らして 築関係法規等の法令の要件を満たすものとして建築されており,また,本件土地及びその周辺地域の地域性・歴史性等,被告らによる本件土地取得及び本件建築計画立案の経緯,本件各建物建築に至る経緯に照らしても,被告らの本件土地取得,本件各建物建築の経緯,交渉態度等において,社会的に相当性に欠ける点があったと認めることができない。 以上の点を総合的に検討すると,被告らが本件土地上に本件各建物を建築したことが,原告らの所有土地の価値等の関係で,違法な権利侵害ないし利益侵害を構成するものと認めることはできない。原告らのこの点に関する請求は失当というほかない。 4 個別の工事被害に関する損害賠償請求(第2章第3の6関係)について建物の損傷について証拠(甲227ないし229の各1(以上,いずれも平成16年8月撮影の写真撮影報告書),甲241の2(平成14年6月の報告書),甲262(平成14年6月1日撮影の写真))によれば,次の事実が認められる。 ア原告20宅平成16年8月当時,同原告宅の1階浴室のタイル,1階玄関ロビーの大理石,1階玄関塀,1階トイレ壁クロス,2階DK壁クロス,2階キッチン壁クロス,2階外壁,3階外壁,3階寝室壁クロスにそれぞれクラックが生じていた。また,3階トイレのドアについて,開閉の不具合が生じていた。 イ原告21宅平成16年8月当時,同原告宅の1階車庫天井壁,1階玄関天井,2階から3階への階段壁クロス,3階洋間壁クロスにそれぞれクラックが生じていた。 ウ原告22宅平成16年8月当時,同原告宅の2階外階段と外壁とのつなぎ目,1階階段下床コンクリート,1階アパート犬走りのコンクリート,1階アパート外壁にクラックが生じていた。なお,同原告は,1階階段上 平成16年8月当時,同原告宅の2階外階段と外壁とのつなぎ目,1階階段下床コンクリート,1階アパート犬走りのコンクリート,1階アパート外壁にクラックが生じていた。なお,同原告は,1階階段上がり口タイルにクラックが生じた旨の主張もしているが,写真撮影報告書によっても判然とせず,他に,その主張を認めるに足りる証拠もない(同年6月5日付けの見積書上にもこの箇所の補修工事の関係が計上されていない。)ので,採用できない。 エ原告45宅平成14年6月1日当時,同原告宅の1階台所出入り口部の外壁及び土間,2階ベランダ外壁にそれぞれクラックが生じていた。 上記損傷の原因ア原告20宅に生じたクラック等について,株式会社大昌都市企画が作成した意見書(乙99)は,経年変化と推定できるとしている。しかしながら,同意見書では,「事前調査時の損傷部に大きな変化は見られなかった」とするものの,その点を具体的に示す資料は付されていない。 こうしたことに,同建物は,本件土地の敷地境界から14mと近い距離にあり,平成16年8月当時未だ築後約2年9か月(平成13年10月19日新築(甲28の4))であったこと,また,振動自体については,上記2エ認定のとおり,受忍限度を超える程度の振動被害があったとは認められないものの,同原告宅が継続的に相当程度の振動にさらされていたこと(上記2エ認定のとおり,4つの測定地点のうち同原告宅に近い測定地点3における振動が最も大きかった。),さらに,本件全証拠によっても,他に上記ア認定の損傷の原因となるべき事情がうかがえないこと等を考慮すると,上記損傷は本件工事に起因するものであると推認するのが相当である。 イ原告21宅は本件土地の境界から10m,同22宅は本件土地の境界から3. 因となるべき事情がうかがえないこと等を考慮すると,上記損傷は本件工事に起因するものであると推認するのが相当である。 イ原告21宅は本件土地の境界から10m,同22宅は本件土地の境界から3.3mの距離にある。これらの建物よりも本件土地の境界から離れている原告20宅においても,上記のとおり本件工事に起因する損傷が生じていること,また,両原告宅とも,原告20宅と同様に,上記2エで認定したとおり4つの測定地点のうち最も振動が大きかった測定地点3に近いこと,さらに,本件全証拠によっても,他に上記イ及びウ認定の損傷の原因となるべき事情がうかかがえないことを考慮すれば,原告21宅及び同22宅に生じた上記損傷についても,本件工事に起因するものと推認するのが相当である。 ウ原告45宅に生じているクラック等については,証拠(甲41の2,甲59,241の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。同原告宅は,平成8年11月21日新築された。本件土地の境界とは37mの距離にあり,その間に,平成14年3月15日新築されたマンションA(鉄筋コンクリート造陸屋根,地下1階付き6階建て)等が存在する。同原告宅について同年5月29日にされた調査によれば,マンションAの建築工事に先だって同年1月にされた原告宅の事前調査では指摘されていなかった1階台所出入り口部の外壁及び2階ベランダの外壁にクラックが存在した。 上記認定事実によれば,原告45宅は,平成14年6月当時築後約5年半を経過しており,上記平成14年1月の事前調査後,その近傍において,鉄筋コンクリート造陸屋根,地下1階付き6階建ての規模のマンション(マンションA)が建築されていることが明らかである。 こうした事実に加え,上記認定の原告45宅と本件土地との間の距離,位置関 筋コンクリート造陸屋根,地下1階付き6階建ての規模のマンション(マンションA)が建築されていることが明らかである。 こうした事実に加え,上記認定の原告45宅と本件土地との間の距離,位置関係,さらには,上記2認定の本件土地内の4か所でされた振動調査の結果(同原告宅に近い測定地点2における振動は,測定地点3と比べ明らかに小さいものであったと判断される。)等に徴すると,上記クラックについては,本件工事により生じたものであることの証明が未だ尽くされていないといわざるを得ない。株式会社大昌都市企画が作成した意見書(甲264,265)でも,上記クラックについては,経年変化や隣地の非木造建物建築による影響であるとされているところである。 そうすると,原告45の補修費用相当額の損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 原告らに生じた損害上記アないしウの各損傷を補修するために要する費用については,原告らから見積書(甲227ないし229の各2)が提出されている。これらは,いずれも,上記認定の損傷箇所に関するものであり,その合理性に疑いを入れるような証拠も存在しない。 そうすると,原告20,同21及び同22は,本件工事に起因して上記各損傷を補修するために見積書記載のとおりの費用(その具体的な額は,原告20については100万4325円,原告21については16万4850円,原告22については17万2200円である。)を支出する必要が生じたものと認められるので,それと同額の損害を被ったというべきである。 したがって,原告20,同21及び同22は,不法行為に基づく損害賠償として,上記補修費用相当額の支払を求めることができるが,同原告らの請求額は別紙損害賠償請求一覧表の「家屋修繕費」欄記載のと したがって,原告20,同21及び同22は,不法行為に基づく損害賠償として,上記補修費用相当額の支払を求めることができるが,同原告らの請求額は別紙損害賠償請求一覧表の「家屋修繕費」欄記載のとおりであるから,原告21については請求どおり16万4850円を,また,原告20については100万4000円,原告22については16万4000円の限度で認めることとする。 5 弁護士費用相当額の損害賠償請求について本件訴訟に要した弁護士費用相当額の損害賠償請求については,上記2及び4において不法行為に基づく損害賠償請求権が認められる原告らが求める限りにおいて理由があるというべきところ,原告らの請求もそのような趣旨であると解される。 そして,本件事案の内容,性質,本件訴訟の経過等にかんがみると,本件訴訟に要した弁護士費用については,上記原告らの次の金額の限度で本件不法行為と相当因果関係のある損害として認める。 ア原告8,同11,同17,同18,同31,同34,同56及び同70 各4万円イ原告22,同23及び同71 各2万円ウ原告7,同9,同10,同30,同38,同51,同52,同57及び同69 各1万円エ原告20 10万円オ原告21 3万円そうすると,上記の原告らは,不法行為に基づく損害賠償として,上記記載の弁護士費用相当額の損害及びこれに対する不法行為の後の日である平成16年6月19日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求めることができる。 6 共同不法行為責任について本件工事自体は被告長谷工が行ったのであるが,前記前提事実(第2章第2)の1摘示のとおり,その余の被告らも被告長谷工と共に本件各建物の建築及び分譲の事業を,共同企業体として共同して行ったのである。現に, 工事自体は被告長谷工が行ったのであるが,前記前提事実(第2章第2)の1摘示のとおり,その余の被告らも被告長谷工と共に本件各建物の建築及び分譲の事業を,共同企業体として共同して行ったのである。現に,乙96(A作成の陳述書)によれば,被告らは,本件事業の全般について,幹事会や定例委員会を設けて,定例的に協議(原則として,幹事会は週1回,定例委員会は月1回開催)しながら推進したことが認められる。 したがって,被告らは,民法719条1項に基づく共同不法行為責任を免れないというべきである。 第3 結論以上の次第であるから,原告らの請求は,別紙損害賠償金目録記載の各原告に対し,同目録の「損害賠償金」欄記載の金員及びこのうちの同目録「内金」欄記載の弁護士費用相当額の金員に対する平成16年6月19日からの遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第35部裁判長裁判官金井康雄裁判官森脇江津子裁判官望月千広(別紙)受忍限度に関する主張の要旨(原告らの主張)被告らによる本件各建物の建築行為及びそれらを存続させる行為は,次のとおり,受忍限度を遙かに超えて「保護されるべき利益」を侵害する強度の違法行為というべきものである。したがって,原告らの本件各建物の一部撤去請求及び損害賠償請求はいずれも認められるべきである。 1 本件各建物の規模(被害の重大性の前提)本件各建物は,次のとおり極めて大規模な建物である。すなわち,用途は,総戸数772戸に達する分 去請求及び損害賠償請求はいずれも認められるべきである。 1 本件各建物の規模(被害の重大性の前提)本件各建物は,次のとおり極めて大規模な建物である。すなわち,用途は,総戸数772戸に達する分譲マンション及び店舗,構造・規模は,鉄筋コンクリート造りで,高さ59.99mの地上19階・地下1階の建物,高さ44mの建物等を中心とする合計13棟の高層巨大建築群,計画敷地面積は39,620.90㎡(11,985.32坪),延べ床面積は108,097.62㎡(32,699.53坪)である。 他方で,原告らを含む近隣住民の建物は戸建て住宅を中心とするものであり,本件各建物に比べると圧倒的に小規模な建物であり,規模の差は圧倒的である。 (甲2,6ないし8,甲110の1,2,甲157,192,205ないし207,甲214の1,甲215,甲225の1ないし53,甲237,304)そして,原告らは,本件各建物により,上記のとおり重大な被害を被っている。 2 地域性・歴史性ア本件土地一帯は,第一種低層住居専用地域や「自由通り沿道八雲地区地区計画」で規制された地域に囲まれており,東京でも指折りの低層住宅による街並み景観と豊かな日照,圧迫感のない良好な住環境を有している。現実の土地利用状況も,周辺には高さ20mを越える建築物はほとんどなく,本件土地についても,従前の東京都立大学時代には,周辺を考慮して高さ20m程度までの利用がされていた(東京都立大学が多摩に移転したのも,高層の土地利用が困難であったためである。)のであって,本件各建物のような高層,高密度の利用実態は全くなかった(甲2)。さらに,深沢・八雲地区の北側には,体育館やスタジアムまで周辺の低層住宅に調和するように低くした広大な駒沢オリンピック公園が広がっている(甲192)。 イなお,「 用実態は全くなかった(甲2)。さらに,深沢・八雲地区の北側には,体育館やスタジアムまで周辺の低層住宅に調和するように低くした広大な駒沢オリンピック公園が広がっている(甲192)。 イなお,「自由通り沿道八雲地区地区計画」の区域内に存在する中層マンションは,昭和48年11月の東京都都市計画図の告示の前に建築された駆け込みの事業であった(甲200)。また,世田谷区深沢側の第一種中高層住居専用地域内に存在する中層マンションは,外部の不動産業者によるものである(甲4,66~70,100,146,199の3・4,201~203)。 本件各建物の建築は,平成4年6月の都市計画法の改正によって創設された市町村(区)の都市計画に関する基本的な方針(同法第18条の2の市町村マスタープラン制度)の立法意図を無視したものである(甲120,125の1)。 ア世田谷区のマスタープラン平成7年に世田谷区が策定した「新都市整備方針」は都市計画法が定めた市町村マスタープランの一環である。それによると,本件土地を含む玉川地区は,建築規制がもっとも厳しい「低層住宅ゾーンⅠ」に位置付けられており,「低層住宅主体で低中密度,農地や緑地などが点在する住宅ゾーン」とされている(甲5)。 平成13年5月に世田谷区が公表した「第2次住宅整備方針」でも,本件土地は,駒沢公園と並んで「公園緑地,公共公益施設,開発調整地区」に指定されている。「開発調整地区」は,都市計画の用語では,開発を抑制する地域と同義語である。 このように,本件各建物の建築計画は,世田谷区の2次にわたる住宅整備方針にも反する(甲77)。 イ目黒区のマスタープラン本件土地の八雲5丁目部分(別紙土地目録記載2及び3の土地)は,第一種低層住居専用地域に指定されていること 区の2次にわたる住宅整備方針にも反する(甲77)。 イ目黒区のマスタープラン本件土地の八雲5丁目部分(別紙土地目録記載2及び3の土地)は,第一種低層住居専用地域に指定されていることに加え,目黒区のマスタープランである「目黒区都市整備方針快適生活都市めぐろを目ざして」の土地利用方針により,もっとも規制の厳しい「戸建て住宅地(低層型)」に指定されている。したがって,本件附属の店舗棟が建築基準法別表二の(い)に違反しているばかりか,本件各建物は大規模団地の建設を排除している目黒区マスタープランにも反する(甲233)。 本件土地周辺地域一帯は,用途地域上,本件土地以外は大半が第一種低層住居専用地域とされている(甲71,72,甲15の1)。本件土地が,第一種中高層専用地域とされているのは,従前東京都立大学が存在していたためであり,大学移転後も公共施設用地とされていたためにすぎない。 土地の利用は,現実の土地利用状況をベースにすべきであり(甲319の「鑑定意見書」),もともと,用途地域は,地区計画と共にマスタープラン実現の1手段にすぎないのであるから,用途地域のみを根拠にして,地域性,歴史性を無視した建築物を建設すれば不法行為になるというべきである(甲120の1)。 東京都は,本件土地を事業者に売却するに当たり,「基本的な考え方」として,「周辺地域の居住環境等を配慮しながら,調和のとれた街並み形成を図る」ことを売却の条件とした(甲11)。 しかるに,被告らは,上記地域性・歴史性を有することを熟知しつつも,高さ60m,45mといった高層マンション群を城壁のように林立させる建築計画の下に,本件土地を購入したのである(甲11)。 平成16年6月24日の東京都の都市計画決定により本件土地には絶対的な高度制限45mが課さ といった高層マンション群を城壁のように林立させる建築計画の下に,本件土地を購入したのである(甲11)。 平成16年6月24日の東京都の都市計画決定により本件土地には絶対的な高度制限45mが課されるに至った。これによって,本件各建物のうち,45mを超える棟は既存不適格建築となった(甲243の1,2)。 もともと,世田谷区都市計画審議会において絶対的な高度制限を導入する議論が始まったのは,平成13年11月13日である。一方,被告長谷工による本件の建築確認申請は平成14年6月である。被告らは,周辺被害が特に大きい60m棟の建築を回避する時間が十分にあったのに,それを無視したのである(甲244ないし250)。 原告らを含む住民らは,自己の土地所有権に規制をかけて「自由通り沿道八雲地区地区計画」を策定し,低層住宅地を守り,改善してきた(甲125の1,2,甲136,177,181ないし183,200)。 また,原告42の祖父を含む地域住民は,低層住宅地の景観と良好な住環境を意図して,自己の土地を道路に供するなどをして,本件土地を含む広大な地域に区画整理事業を成し遂げた(甲75の51頁,甲134,139,144)。 しかも,本件土地は,もともと原告42の祖父らの所有であったが,強制的に供出させられ,その後,公的に利用されてきた経緯があり,公的使用ゆえに原告42らは異議を唱えなかったのである(甲144)。 3 住民による地域合意自由通り沿道八雲地区地区計画原告らを含む住民は,3年近く検討を重ね,自由通りの沿道に指定された第一種中高層住居専用地域6haについて建物の高さを12m以下とする高度制限をかけ,その外側の第一種低層住居専用地域を含む28haの全地域に意匠等の制限を加える地区計画を策定し,同計画は平成4年6月1日に都 高層住居専用地域6haについて建物の高さを12m以下とする高度制限をかけ,その外側の第一種低層住居専用地域を含む28haの全地域に意匠等の制限を加える地区計画を策定し,同計画は平成4年6月1日に都市計画決定された。 このように,原告ら住民は,自己の所有土地に権利制限を加える自己犠牲の代償として,低層住宅地の美しい街並みと,圧迫感のない,また,豊かな日照やプライバシー侵害等のおそれのない良好な住環境を守ってきたのである。 本件土地は,同地区計画と境界を接し,かつ,一部は同地区計画の地域内に存在する。その地上に建築された本件各建物は,自己犠牲の上に獲得した同地区計画内の原告らの利益を全て奪うものである。 深沢1・2丁目地区計画案この地区計画案は,地区住民のほぼ総意に基づくものである(甲169,266)。すなわち,この地区計画についてアンケート調査を実施したところ,回答数は約250であり,800世帯のうち約3割から回答があった(甲169)。そのうち,少なくとも高さを20mまでに制限しようとする意見が過半数を超えており,高さ制限が必要であると考えている者は実に75%を越えていた。回答数3割というのは,地区計画のアンケート調査としては非常に高率である。上記の「自由通り沿道八雲地区地区計画」でさえ,回収率は26%に止まっており,通常は5%程度に過ぎない(甲266)。 なお,深友会名義で,世田谷区長に対して,平成14年4月5日付け「(仮称)深沢1・2丁目地区計画について」(乙15)が提出されているが,この文書は,1個人が町内会の名前を使って発行したものに過ぎず,この地区計画に地元町内会が反対していたということにはならない(甲173)。 4 「一団地認定」の逸脱という違法行為による過大な建築一団地認定の適用想定外 名前を使って発行したものに過ぎず,この地区計画に地元町内会が反対していたということにはならない(甲173)。 4 「一団地認定」の逸脱という違法行為による過大な建築一団地認定の適用想定外本件各建物は一団地認定により建築されている。しかし,一団地認定の適用は,公共目的に限定されるべきであり,非公共目的である本件各建物への適用は違法である。したがって,建築基準法9条1項による全面的撤去が法の要請するところというべきである。(甲319)複数棟を1棟とする申請行為H棟とI棟,J棟とK棟をそれぞれ1棟とする一団地認定の申請は,複数建物を1つの建物とする申請であり,違法である(甲299)。1棟か複数棟かは,外見上の一体性,機能上の一体性,構造上の一体性を基準とするところ,各棟はエクスパンションジョイントで繋がっているに過ぎず,いずれの一体性も満たさない。現に,J棟とK棟はそれぞれ個別に登記し,登記所に提出したマンション検索用資料では,H棟,I棟,J棟及びK棟はそれぞれ別個の建物として記載されており,実際にも別個の建物として販売されている。 一団地認定の運用基準違反ア団地面積に対する全建物の延べ面積の割合が都市計画一団地の住宅経営計画標準(昭和32年8月6日付け計発第41号通達)で定められた基準を大きく上回っている。また,一団地内の各敷地に関して「敷地共同利用の促進のための建築基準法第86条第1項の規定の運用について」(昭和60年2月8日付け建設省住街発第5号住宅局長通達)の第2の2の基準を満たしていない。 イさらに,前記のとおり,H棟とI棟,J棟とK棟はそれぞれ別個の建築物であることから,各棟相互間の外壁の距離が,「建築基準法第86条第1項,同条第2項及び第86条の2第1項の規定に基づく認定基準」(平成1 に,前記のとおり,H棟とI棟,J棟とK棟はそれぞれ別個の建築物であることから,各棟相互間の外壁の距離が,「建築基準法第86条第1項,同条第2項及び第86条の2第1項の規定に基づく認定基準」(平成11年5月27日付け11都市建調第33号)第2の9の基準を満たさない。 よって,本件各建物についてされた一団地認定は違法である。 5 回避容易な被害の回避を図らなかったこと本件各建物の高さを12m以下又は20m以下にすれば,近隣住民に対する圧迫感や日照被害,景観被害等が大幅に軽減される(甲95)。 本件土地は,計画敷地面積が約4万㎡にも及ぶ広大なものであるから,その有効な利用と建物の高さを低くすることとは決して両立し得ないものではない。 しかるに,被告らは,売却時に東京都が設けた周辺の低層住宅との調和を図る旨の条件,近隣住民の強い反対,世田谷区環境審議会の要請等は全て無視して良いとの考えに基づいて,本件各建物の建築を強行したのであり,実質的な被害回避の努力を何ら行わなかった(甲14,83,166,172,甲187の1,2)。 なお,被告らは,本件土地の利用計画案について東京都から何らの指摘もなかった旨主張するが,本件では,事業内容の優劣を審査して対象者を選定するプロポーザル方式に基づいて,本件プランが採用されたものではない。 また,被告らが,住民の意見を聞いて,大幅にその計画を変更したとの事実はない。 6 被告らの事前の認識被告らは,本件土地の購入に当たり,当初から東京都の売却条件を守る意思がなく,また,地域性に反することを十分認識しながら,大規模な高層マンション群の建築を計画した。しかも,それにより甚大な景観被害,圧迫感被害,日照阻害,プライバシー侵害,不動産価値の下落を招くことにより,原告ら周辺住民から強 ることを十分認識しながら,大規模な高層マンション群の建築を計画した。しかも,それにより甚大な景観被害,圧迫感被害,日照阻害,プライバシー侵害,不動産価値の下落を招くことにより,原告ら周辺住民から強い反対を受け,また,世田谷区環境審議会や行政等から指導や勧告を受けるであろうことを十分認識していたにもかかわらず,建築工事を強行して完成させ,販売することができるとの経営判断の下に,本件土地を購入して,本件各建物の建築を強行したのである。 ところで,建物の高さ規制については,全国的に各地方自治体で規制される状況にあり,世田谷区においては,平成16年度の都市計画の見直しにおいて,区内の住居系用途に関し,高度地区を指定して,高さ規制を行った。被告らは,事前にこのような高さ規制導入の動きを知り得る立場にあったが,それを無視して,本件各建物を建築した。 7 被告らの不誠実な交渉態度被告らは,次のとおり,原告ら,世田谷区環境審議会,国会の論議等に一切耳を貸さず,景観破壊,すさまじい圧迫感被害,日照阻害,プライバシー侵害をもたらす本件各建物の建築工事を強行して,本件各建物を完成させた。 被告らは,平成13年9月中旬,深沢地区,八雲地区に分けて第1回計画概要説明会を開催した。原告ら住民は,高層巨大マンションを城壁のように巡らす本件建築計画の余りの異常さに,その計画の抜本的な見直しを強く求めたが,無視された(乙31の1ないし6)。 原告ら住民は,被告長谷工に対し,平成13年9月26日,本件各建物の建築計画の問題点を指摘するとともに,建築家・荒川修作が作成した「深沢提案集合住宅建築案」(甲78)を提示したが,無視された。 住民側は,被告長谷工に対し,平成14年5月1日,同被告が同年4月4日に開始した旧東京都立大学理学部・工学部の地下構造物の解体工 た「深沢提案集合住宅建築案」(甲78)を提示したが,無視された。 住民側は,被告長谷工に対し,平成14年5月1日,同被告が同年4月4日に開始した旧東京都立大学理学部・工学部の地下構造物の解体工事による振動,騒音,粉塵等の工事公害が余りにひどいので,静的破砕法を採用することなどを求めて申し入れたが,被告らは同年5月10日,これを拒否した(甲227の1ないし4,甲228の1,2,甲229の1,2,甲262,甲263の1ないし4,甲264,265,276,277,290ないし295)。 この間,本件各建物の建築計画の審議を続けていた世田谷区環境審議会は,周辺住民に与える悪影響が大き過ぎるとして,被告らに対し計画の見直しを再三にわたり要望したが,被告らはこれらを完全に無視した(甲283の1,2)。 世田谷区は,平成14年5月14日,環境審議会の答申に基づき,被告長谷工に対し,「高層建築によるボリューム感,圧迫感その他の影響の低減をはかること」や「周辺に開かれたオープンスペースとすること」などを骨子とする「環境配慮要請書」を手渡した。これに対する被告らの世田谷区への回答は,「バルコニーの出を10センチ減らす」,あるいは「19階棟の塔屋を70センチ下げる」などというもので,真摯な回答ではなかったため,世田谷区環境審議会は態度を硬化させ,本件建築計画についての審議をさらに継続することにした(甲92,93)。 平成14年6月28日には,衆議院国土交通委員会で本件建築計画が取り上げられ,扇千景国土交通大臣ら同省幹部が,地区計画の策定などによる解決を示唆したが,被告らは無視した(甲73)。 このような経緯,状況の下で,被告らは,平成14年8月,本件工事に強引に着手した。 世田谷区環境審議会は,平成14年11月22日,被告長谷工に を示唆したが,被告らは無視した(甲73)。 このような経緯,状況の下で,被告らは,平成14年8月,本件工事に強引に着手した。 世田谷区環境審議会は,平成14年11月22日,被告長谷工による計画の縮小を求める見解書を採択したが,被告らはこれを無視して工事を続行した(甲14)。 原告ら住民は,被告らに対し,平成15年2月6日,工事の即時中止と,住民の意向,国会論議,世田谷区環境審議会の意見書なども踏まえて規模を縮小するよう求めたが,同月19日,被告らはこれを拒否した。 以上のような異常なマンション建築計画については,マスコミの報道も多く,テレビ報道では被告長谷工の社員が住民に対して大声をあげて恫喝している声が流れ,全国に衝撃を与えた。 また,被告らは,以上の過程で,以上の他にも,強圧的な「住民対策」を行った。 8 被告らの数々の違法行為本件各建物の建築計画には法令に違反している点が多々ある。いくつかの例を挙げれば,次のとおりである。 一団地認定違反については,上記4のとおりであり,本件各建物は公法上も違法である。 東京都環境確保条例の土壌汚染に関する規制は,平成13年10月1日から施行された。この規制によれば,被告長谷工は24項目の土壌汚染物質の調査を行なうべきであったのに,残存期間の長い有害な農薬を含む4項目の調査をしなかった。しかも,調査済みとしている項目についても,条例施行以前に行なった調査結果を流用している(甲88)。 放射能物資の厳格な管理を規定する法律は昭和32年に施行されたが,東京都立大学理学部はそれよりも前の昭和27年に創設され,法施行前に,既に放射能実験等を行なっていた。したがって,この空白期間に放射能による土壌汚染が起きた可能性が否定できないのに,被告らはその調査を拒否して 学理学部はそれよりも前の昭和27年に創設され,法施行前に,既に放射能実験等を行なっていた。したがって,この空白期間に放射能による土壌汚染が起きた可能性が否定できないのに,被告らはその調査を拒否している。東京大学,防衛大学,慶応大学の関連施設では,その空白期間中の放射能実験による土壌汚染が発見されて,現行法規により適切に処理されている(甲87)。 上記の東京都環境確保条例とこの放射能汚染の可能性の問題は,世田谷区環境審議会も懸念を表明し,原子力学会でも問題とされている(甲79)。 9 先住性等原告らは,次のとおり,先住性を有するか,本件土地には高層巨大建物は建たないと説明され,あるいはマスタープランを見て不動産を購入した者である。 「自由通り沿道八雲地区地区計画」は,原告らの定住性を前提に,同地区計画地域内のみならず,本件土地も含めてその周辺地域一帯の低層住宅による美しい景観(街並み)の確保と住み良い住環境の確保を意図したものである。「深沢地区1丁目・2丁目地区計画案」地域内の地権者,住民らも同様の意識である。 このように,原告らは,良好な景観と住環境を自ら形成してきた者,その子孫であったり,あるいは,そのような地域に魅せられて本地域の構成員になった者である。原告らが良好な景観,住環境のもとで生活し得る利益は,合理的な期待である。本件各建物の建築に伴う住環境の悪化により,不動産価格が下落したため,転居したくても転居出来ない者も多い。マンション建設の特質(「事実及び理由」欄の第2章の第3「原告らの請求原因の要旨」の2参照)からいえば,このような原告ら全員の利益は,十分に尊重されるべきである。 原告59,同38,同21,同19,同57,同51,同52,同54,同53,同55,同56,同71,同69,同70は,被告らの本件 ,このような原告ら全員の利益は,十分に尊重されるべきである。 原告59,同38,同21,同19,同57,同51,同52,同54,同53,同55,同56,同71,同69,同70は,被告らの本件土地購入(平成13年3月30日)前にそれぞれの不動産を購入した。いずれも,マスタープランを見たり,インターネットで周辺環境との調和をいう東京都の「基本的考え方」を見たり,不動産業者による,周辺と著しく調和しない高層建築は建たないという言を信じたりして,自らの不動産を購入したのである。 このことは,被告らの本件土地購入後に土地を購入した原告47,同20,同48,同68,同72においても同様である。いずれの原告も,本件各建物が建築されることを知っていたら,その不動産を絶対に購入していないし,売買契約後にそれを知ったが,解約料が高くて解約しようにも解約できなかった者である。 被告らの不測の損害の不存在等被告らには,次のとおり,不測の損害は生じない。 被告らは,上記本件土地の歴史性,地域性を熟知し,本件土地には低層住宅群と調和しない超高層あるいは高層のマンションを建築できないことは十分認識していた。しかも,東京都が「周辺地域の居住環境等を配慮しながら調和のとれた街並み形成を図る」ことを条件に被告らに本件土地を売却したにもかかわらず,被告らはこれを全く無視し,さらに環境審議会の強い要請も無視して,低層住宅地の真ん中に低層住宅とは到底合致しない高層巨大マンション群である本件各建物の建築を強行したのである。 こうしたことからすれば,被告らに対し,本件各建物について,東京都の売却条件どおり,低層住宅群との連坦を図る高さである12m又は20mにすることを命じても,被告らに不測の損害は全く生じない。 なお,被告らは,原告らの自己犠牲に基づき 各建物について,東京都の売却条件どおり,低層住宅群との連坦を図る高さである12m又は20mにすることを命じても,被告らに不測の損害は全く生じない。 なお,被告らは,原告らの自己犠牲に基づき形成した景観と良好な住環境を破壊しつつ,この景観と良好な住環境を最大限の販売文句として本件各建物を販売している。すなわち,上記のとおり,住民らが区画整理,「自由通り沿道八雲地区地区計画」,新築の際自ら高さ規制をする等の自己犠牲の代償として形成してきた美しい街並み景観と良好な住環境を最大の販売文句として,自らはそれを破壊する極めて大規模な超高層,高層建築群を建設し,完成させて販売したのである。このことも,違法性を基礎づける重要な事実というべきである。 (被告らの主張) 1 「本件各建物の規模(被害の重大性の前提)」との主張について本件各建物が大規模であること,本件各建物及びその敷地が原告ら主張のとおりであること,周辺に戸建住宅が多いことは認めるが,そのことが侵害の理由とはならない。 後記のとおり,被告らは本件各建物と周辺地域の調和を図っている。 2 「地域性・歴史性」との主張についてア本件土地の周辺が第一種低層住居専用地域であること,良好な環境を有していることは認めるが,本件建築計画はそのような環境と調和したものである。なお,東京都立大学が移転したのは,本件土地に高層建物が建築できないからではなく,単に東京都の土地活用に関する政策上の問題と思われる。 イ原告らが主張する目黒側の中層マンションは,地元住民が建築したものである。 都市計画による規制前に駆け込み的に建築されたとの事実は,都市計画の実施に異議を有する住民が存在したということにほかならない。また,深沢側の中層マンションには原告らも居住しており,自らが「景観」に反すると主張する建物に に駆け込み的に建築されたとの事実は,都市計画の実施に異議を有する住民が存在したということにほかならない。また,深沢側の中層マンションには原告らも居住しており,自らが「景観」に反すると主張する建物に居住しつつ(その存在を積極的に肯定しつつ),景観利益を主張するのは矛盾である。 本件各建物は,多数の植栽や外壁の色・デザイン,オープンスペースにおける防災対策等,周辺環境への調和・周辺地域への貢献に配慮して計画されており,マスタープラン制度の立法意図に何ら反するものではない。 ア世田谷区のマスタープラン玉川地区が低層住宅ゾーンⅠに位置づけられていることは認めるが,本件土地はその規制から外れている。また,本件土地の入札において,本件土地について低層住宅ゾーンと同レベルの高さの建築を求める要請はなかった。 原告らは,「開発調整地区」は開発を抑制する地域と同意語であると主張するが,開発調整地区が直ちに開発抑制を意味するものではない。いずれにせよ,本件土地の入札において,低層建物を建築すべきとの要請はなかった。 イ目黒区のマスタープラン本件各建物のうち,目黒区の第一種低層住居専用地域にかかる部分については1階建店舗となっており,何ら建築基準法に違反するものではない(乙1の1,16)。また,目黒区マスタープランは,本件土地における大規模団地の建築を規制するものではない。 本件土地周辺が第一種低層住居専用地域であることは認める。本件土地が東京都立大学移転後も第一種中高層専用地域とされた理由について,原告らは公共施設用地とされていたためであると主張するが,根拠がない。仮にそうであれば,民間への売却方針が決定された時点で用途変更されたはずである。 本件各建物は,上記のとおり周辺環境に配慮して計画されており,また,現 れていたためであると主張するが,根拠がない。仮にそうであれば,民間への売却方針が決定された時点で用途変更されたはずである。 本件各建物は,上記のとおり周辺環境に配慮して計画されており,また,現状の土地利用状況と調和しており,「用途地域のみを根拠にして,地域性,歴史性を無視した建築物」ではない。 本件建築計画は,東京都が要求する「周辺環境との調和」を保っている。なお,被告らは,本件土地購入当時,原告らが主張するような本件土地周辺の「歴史性」については認識していなかった。 平成16年6月24日の東京都の都市計画決定により本件土地には絶対的な高度制限45mがかけられるに至ったため,本件各建物のうち,45mを超える棟は既存不適格建築となった事実は認めるが,被告らは,本件建築計画の建築確認申請時においては,絶対高さ制限を導入することについては知らず,本件建築計画について世田谷区と事前協議を行っていたときも,世田谷区からはかかる規制について何も告知されなかった(乙94)。 「自由通り沿道八雲地区地区計画」が地域住民主導で策定された計画であったとしても,同地区には,中高層マンションも存在し,地域住民全員が同計画に賛成しているとは言いがたい。また,本件土地は同地区計画区域にはなっていない上,本件建築計画は広い敷地を利用した計画であり,同地区計画の趣旨である中高層建物による日影被害・高密化は生じていない。 また,土地区画整理事業における減歩は,それを施行する以上当然のものであり,特に景観保護のための自己犠牲ということはできない。 さらに,原告42の祖父が土地を供出したのは,景観保護のためでなく社会的経済的要請のためだったのであり,その目的如何にかかわらず供出は避けられなかったし,戦後の農地改革の経緯からすれば,返還を求め得るもの ,原告42の祖父が土地を供出したのは,景観保護のためでなく社会的経済的要請のためだったのであり,その目的如何にかかわらず供出は避けられなかったし,戦後の農地改革の経緯からすれば,返還を求め得るものでもなかった。したがって,そのような事実が仮にあったとしても,それが景観利益を基礎付けることにはならない。 3 「住民による地域合意」との主張について自由通り沿道八雲地区地区計画上記2と同様である。 深沢1丁目・2丁目地区計画案原告ら主張に係る回答率の高さについては,回収方法にもより,一律に論じられない。 なお,乙15号証が明らかに偽造であるとの証拠はない。また,少なくとも,声を大にして深沢1丁目・2丁目地区計画案に反対する者が存在したという事実は,「ほぼ住民全員の総意」との主張とは相反するものである。このように,住民内でさえ不協和音が生じているという事実が,世田谷区をして地区計画策定をためらわせている可能性は十分にある。 4 「『一団地認定』の逸脱という違法行為による過大な建築」との主張について一団地規制の適用想定外についてそもそも,本件建築計画に対する建築確認がおりている以上,行政処分が取り消されない限り私法においては適法であることを前提とすべきである。 なお,一団地認定が公共目的に限定されるべきとの主張は,原告らの独自の見解に過ぎない。 複数棟を一棟とする行為についてH棟とI棟,J棟とK棟はいずれもそれぞれ構造上,外観上,機能上の一体性を有しており,1棟である。 一団地認定の運用基準違反都市計画一団地の住宅経営計画標準(昭和32年8月6日付け計発第41号通達)は,建築基準法86条についての通達ではなく,都市計画法第11条1項8号の一団地の住宅施設についての通達である。本件 都市計画一団地の住宅経営計画標準(昭和32年8月6日付け計発第41号通達)は,建築基準法86条についての通達ではなく,都市計画法第11条1項8号の一団地の住宅施設についての通達である。本件各建物は都市計画決定はされていないので,同基準は適用されない。また,「敷地共同利用の促進のための建築基準法第86条第1項の規定の運用について」(昭和60年2月8日付け建設省住街発第5号住宅局長通達)は,平成5年9月8日付け住街発第113号住宅局長通達により廃止されている。 原告らが主張する隣棟間隔は,別個の建物間についてのものであり,本件では,H棟とI棟,J棟とK棟は,「一の建物」であるから,隣棟間隔を論じる前提を欠く。 5 「回避容易な被害の回避を図らなかったこと」との主張について本件各建物を12m以下,20m以下にすれば,近隣住民への影響は低減するものの,被告らの事業は立ち行かなくなる。 取得した土地を企業として最大限有効活用し,経済的利益を得ようとするのは,企業の経済活動としてやむを得ないものである(上記国立の高層マンション訴訟控訴審判決)。被告らは,事業採算の中で採り得る可能な限りの周辺住民への影響緩和方策を提示している。 被告長谷工は,入札に当たって,本件土地の利用計画を策定し,東京都のヒアリングを受けているが,東京都の担当者は被告長谷工の計画に対し何らの指摘もしなかった(乙96)。仮に,本件が典型的なプロポーザル形式でなかったとしても,原告らが主張するように被告長谷工の策定した計画案が明らかに東京都の基本的考え方に反しているのであれば,何らかの指摘があったはずである。 また,被告らは,当初計画について,可能な限りの最大限の変更を行った。 6 「被告らの事前の認識」との主張について被告長谷工は,本件土地の入 るのであれば,何らかの指摘があったはずである。 また,被告らは,当初計画について,可能な限りの最大限の変更を行った。 6 「被告らの事前の認識」との主張について被告長谷工は,本件土地の入札におけるヒアリングにおいて,本件土地の利用計画案に対し何ら指摘を受けておらず,本件土地購入当時,強い反対運動が起こることについて事前の認識を有していなかった。また,本件土地周辺が良好な環境を有しているとの認識は有していたが,本件土地が第一種中高層住居専用地域として売却されているということは,高さは当該地域の環境の絶対的要件ではなく,デザインやクオリティによって周辺環境と調和したマンションを建設できると認識していた(そして現在もそのように認識している。乙98)。 被告長谷工が絶対高さ制限導入の動きがあることを知ったのは,平成15年1月30日の新聞記事によってである。それまでは,世田谷区から被告長谷工に対する情報提供も一切なく,そのような規制の動きがあることを知り得る立場にはなかった。 7 「被告らの不誠実な交渉態度」との主張について被告らは,可能な限りの対応をしつつ本件建築計画を進めた。この点に関する原告らの主張7ないしに対する反論等は,次のとおりである。 原告らが主張する第1回計画概要説明会における住民の「抜本的見直し」の内容は,本件事業自体をあきらめるに等しいものであり,事業者として応諾しかねるものであった。 原告ら提示の「深沢提案集合住宅建築案」は,事業採算の点からも採用し得ない内容であった。 原告らが主張する静的破砕方法を採用しなかったのは,コストに対する効果が余り期待できなかったためである(乙49)。 世田谷区環境審議会からの要望については,「(仮称)世田谷区深沢二丁目計画に係る環境配慮要望書に対する回答書」(甲9 なかったのは,コストに対する効果が余り期待できなかったためである(乙49)。 世田谷区環境審議会からの要望については,「(仮称)世田谷区深沢二丁目計画に係る環境配慮要望書に対する回答書」(甲93)により,ボリューム感・圧迫感以外の可能な部分について真摯に対応している。しかし,ボリューム削減,すなわち住戸数の大幅な削減という要望については,事業計画上,対応不可能であった。 上記参照国土交通省からは,被告らに対して,本件建築計画についての行政指導等はなかった。 被告らが工事に着手したのは,住民説明会を開催し,また,住民がそれをボイコットした後は常設説明会会場を設置するなどして,近隣住民に対する真摯な対応を行った後である。 世田谷区環境審議会の計画縮小を求める見解書については,事業者として採り得ないものであった。なお,被告長谷工は,その見解書に対する対応として,世田谷区長に対し「(仮称)深沢二丁目計画新築工事についての報告」(乙87)を提出したが,それに対しては勧告等を一切受けていない。 住民らによる計画縮小の申出は,事業者として採り得ないものであった。 マスコミの報道は,偏向報道であり,間違った映像を放映しており,後日謝罪もされている(乙9の2)。 また,強圧的な住民対策など行ったことはない。 8 「被告らの数々の違法行為」との主張について「一団地認定」については行政手続において解決すべき問題であること,いずれにせよ本件建築計画の一団地認定に違法がないことは上記4のとおりである。 被告らは,東京都環境確保条例で要求される土壌汚染調査は行っている。原告らが主張するのは,条例上要求されていない項目である。また,同条例上,条例施行前の調査結果の流用は認められている。東京都環境確保条例117条に基づく手続に関して 求される土壌汚染調査は行っている。原告らが主張するのは,条例上要求されていない項目である。また,同条例上,条例施行前の調査結果の流用は認められている。東京都環境確保条例117条に基づく手続に関して住民らがした異議申立は,平成14年7月14日却下されている。 本件土地について,放射能汚染を調査すべき法的義務は存在しない。なお,被告らは,本件土地の前主である東京都立大学から,本件土地には放射能汚染はない旨の報告書を取得している(乙38)。 9 「先住性等」との主張について原告らのうちに,被告らの本件土地購入以前から本件土地周辺に居住していた者がいることは認めるが,先住性議論の前段階として,本件建築計画は何ら原告らの権利を侵害するものでないことは,上記のとおりである。 また,被告らの本件土地購入と時を同じくして購入した原告らが,不動産仲介業者の「6階から9階程度の建物しか建たない。」との説明を信じたということは理由にならない。第一種中高層住居専用地域として入札に出されている以上,本件建築計画を予想して然るべきであった。 「被告らの不測の損害の不存在等」との主張について被告長谷工は,本件土地の入札に当たり地域性を調査した上で,周辺環境に調和すべき本件建築計画を策定した(乙98)。そして,入札に先立つヒアリングで,東京都に対し本件建築計画案を提示したが,東京都から指摘事項は一切なかった(乙96)。また,被告らは,本件建築計画を前提に本件土地を購入したものであり,本件におけるような反対運動が起こることは予測していなかった。 なお,現在の環境が,原告らの特別な自己犠牲の結果でないことは,上記のとおりである。また,被告らの本件建築計画は周辺の住環境を破壊するものではない。原告らが主張する第一種低層住居専用地域を強調するような文言 在の環境が,原告らの特別な自己犠牲の結果でないことは,上記のとおりである。また,被告らの本件建築計画は周辺の住環境を破壊するものではない。原告らが主張する第一種低層住居専用地域を強調するような文言が記載された資料は,社内資料を現場で販売促進用に用いてしまったものであり,仮処分時以降使用しないように指導を徹底している。

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