令和1(ワ)14136 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年10月28日 東京地方裁判所
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令和2年10月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第14136号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年9月2日判決原告株式会社リアライズコーポレーション 同訴訟代理人弁護士柳田一宏滝充人同訴訟復代理人弁護士鈴木隆太郎被告 A(以下「被告A」という。)同訴訟代理人弁護士上村真太朗 被告 B(以下「被告B」という。)同訴訟代理人弁護士矢吹徹雄高橋和征小田嶋真悟二本柳宏美 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告に対し,連帯して4000万円及びこれに対する令和元年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 本件は,原告が,その保有する情報(名刺管理ソフトで管理していた名刺情 報,原告車両の在庫情報,中古車オークションサイトのID及びパスワード。 以下,併せて「本件情報」という。)について,原告の営業秘密であるにもかかわらず,①原告の従業員であった被告Aが,本件情報を不正の手段により取得し,原告の元従業員で被告Aの上司であった被告Bに開示するとともに,被告Bが,不正取得行為の介在について故意 秘密であるにもかかわらず,①原告の従業員であった被告Aが,本件情報を不正の手段により取得し,原告の元従業員で被告Aの上司であった被告Bに開示するとともに,被告Bが,不正取得行為の介在について故意又は重過失により,本件情報を被告 Aから開示を受けて取得し,原告の競合会社の業務に使用し,又は,②本件情報を原告から示された被告Aが,不正の利益を得る目的等により,被告Bに開示するとともに,被告Bが不正開示行為について故意又は重過失により,本件情報を被告Aから開示を受けて取得し,上記競合会社の業務に使用した行為が,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号,5号又は同項 7号,8号所定の不正競争行為に該当し,原告との雇用契約に基づく秘密保持義務にも違反すると主張して,不競法4条,民法709条及び同法719条又は債務不履行責任に基づき,連帯して,損害賠償金4400万円(逸失利益4000万円,弁護士費用400万円)の一部である4000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年6月13日から支払済みまで民法 (平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。) (1) 当事者等ア原告(平成28年10月3日に「株式会社クロブ」から商号変更)は,北海道を中心に中古のトラック・トレーラーの売買,斡旋,レンタル,リース等の事業を行うほか,トラックを投資対象資産とする金融商品の組成等の事業を行う株式会社である。 平成29年9月末から同年12月末当時の原告全体の役員及び従業 ーの売買,斡旋,レンタル,リース等の事業を行うほか,トラックを投資対象資産とする金融商品の組成等の事業を行う株式会社である。 平成29年9月末から同年12月末当時の原告全体の役員及び従業員の 数は,概ね30名であり,被告Bの原告退職時における原告の営業担当者の数は,東京本社3名,札幌支店2名(うち1名は被告A)であったが,いずれの者も前職はトラック事業と無関係で,原告への勤務歴も,東京本社の営業担当者で6か月以下,札幌支店の営業担当者で1年4か月であった。 イ被告Aは,原告の従業員として平成28年5月24日頃に入社し,平成30年4月6日に退職した。被告Aは,原告に在籍当時,札幌支店に勤務し,営業を担当するとともに,システム関連の業務に従事していた。(甲2)ウ被告Bは,原告の従業員として平成24年11月に入社し,平成29年 9月30日に退職した。被告Bは,原告を退職する前,札幌支店に勤務し,同支店の営業部長として営業の中心的役割を担っており,被告Aの上司でもあった。 被告Bは,平成29年10月1日,北海道空知地区をはじめとする道央圏を中心として中古及び新車トラックの卸売並びにリース事業を行う株 式会社アシーネ(以下「アシーネ」という。)の取締役に就任し(甲3),現在,同社札幌支店の責任者として,その営業を担当している。 (2) 被告Aの被告Bへのメールの送付等ア名刺データの送付被告Bは,平成29年9月頃,原告を退職するに当たり,被告Aに対し, 自らが名刺交換した相手の名刺データの送付を依頼した。被告Aは,これに応じ,同月29日,被告Bに対し,「名刺のデータを送ります」とのメッセージとともに,原告において名刺管理ソフト「Sansan」(以下「本件名刺管理ソフト」という。 の送付を依頼した。被告Aは,これに応じ,同月29日,被告Bに対し,「名刺のデータを送ります」とのメッセージとともに,原告において名刺管理ソフト「Sansan」(以下「本件名刺管理ソフト」という。)を使用してデータ化していた名刺情報(担当者の氏名,会社名,部署名,役職名,住所,電話番号,FAX番号,電子 メールアドレス)のうち,1500名超の名刺情報が記載されたデータフ ァイル(甲5。以下,同ファイルにある名刺情報を「本件名刺情報」という。)を,アシーネから付与された被告Bの電子メールアドレス宛に送付した。(甲6,弁論の全趣旨)イ在庫表の送付等原告は,平成29年7月頃から,その茨城営業所に保管することのでき ない車両を茨城県大洗港に仮置きしていたが,これに対してクレームが寄せられたため,その売却先を探しており,被告Aは,被告Bに対し,売却先について心当たりがないかを相談した。 これに対し,被告Bは,原告の車両の在庫状況を把握するため,在庫表の送付を求めたところ,被告Aは,平成29年10月2日,被告Bに対し, 「在庫表を送ります」とのメッセージとともに,同時点における原告の在庫車両の情報(商品名,仕入先,仕入日,仕入価格等)が記載された「H29.10月在庫表」(以下「本件在庫表」という。)と題するデータファイルを,被告Bの上記電子メールアドレス宛てに送付した。 また,同様に,被告Aは,平成29年12月27日,被告Bに対し,「最 新の在庫表と新車発注を送ります。」とのメッセージとともに,同時点における原告の在庫車両の情報(内容は上記と同様。以下,平成29年10月時点での在庫情報と併せて「本件在庫情報」という。)が記載された「H29年在庫一覧表」と題するデータファイルを,被告B 同時点における原告の在庫車両の情報(内容は上記と同様。以下,平成29年10月時点での在庫情報と併せて「本件在庫情報」という。)が記載された「H29年在庫一覧表」と題するデータファイルを,被告Bの上記電子メールアドレス宛てに送付した。(甲7,8,28,弁論の全趣旨) ウ中古車オークションサイトのID及びパスワードの送付被告Bは,原告を退職後,被告Aから,原告において下取りする車両の価格について相談を受けたことから,被告Aに対し,中古車オークションであるアライオートオークションに参加するのに必要な原告のID及びパスワード(以下「本件ID等情報」という。)の提供を求めた。被告A は,これに応じ,平成29年10月3日,被告Bに対し,本件ID等情報 をLINEにより送付した。(甲9,弁論の全趣旨)(3) 原告保有の車両の販売等ア被告Bは,被告Aから送付を受けた本件在庫表等に基づき,同在庫表に掲載された車両の販売先として北海道車輛販売株式会社(以下「北海道車輛販売」という。なお,「丸富」は同社の通称である。)を紹介するなど した上で,被告Aに対し,販売対象となる下記(ア)~(オ)の車両を明示した上で,「丸富へ販売稟議お願い致します。置き場の問題(商船からクレームあり)にて一部丸富へ販売依頼しましたみたいな稟議。通してね!」などと記載された平成29年10月12日付け電子メール(甲24)を送付した。 被告Aは,これに基づき,下記各車両(仕入価格は下記のとおり)を北海道車輛販売に対して販売することとし,平成29年10月13日付け稟議書による原告代表取締役の決裁を得て,下記販売価格で同社に販売した。 被告Aが起案した同稟議書の原案(甲28の1)の担当所見欄には,「茨城営業所の置き場がなく こととし,平成29年10月13日付け稟議書による原告代表取締役の決裁を得て,下記販売価格で同社に販売した。 被告Aが起案した同稟議書の原案(甲28の1)の担当所見欄には,「茨城営業所の置き場がなく,大洗港に置いていた車両について大洗港からク レームが入ったため北海道車輛販売へ販売させていただきたく稟申します。」との記載があるが,原告代表取締役の決裁に使われた稟議書(甲28の2)には,その旨の記載はない。(甲28)(ア) 平成6年式13mアオリ付トレーラー(在庫No.2421)仕入価格 12万円 販売価格 35万円(イ) 平成6年式13m幌ウイングトレーラー(在庫No.2406)仕入価格 19万円販売価格 30万円(ウ) 平成6年式13m幌ウイングトレーラー(在庫No.2410) 仕入価格 19万円 販売価格 30万円(エ) 平成7年式13mアオリ付トレーラー(在庫No.2682)仕入価格 10万円販売価格 30万円(オ) 平成7年式13mアオリ付トレーラー(在庫No.2431) 仕入価格 22万円販売価格 35万円イ被告らは,平成29年10月から平成30年1月にかけて,電子メールを通じて,在庫表,新車発注状況に関する資料,特定の車両の画像などのやりとりを行い,被告Bは,被告Aに対し,原告の保有する車両の売却先 に関する助言を与えるなどした。(甲25,乙6,7)(4) 就業規則平成29年3月16日より施行された原告の就業規則(甲1)には 告Bは,被告Aに対し,原告の保有する車両の売却先 に関する助言を与えるなどした。(甲25,乙6,7)(4) 就業規則平成29年3月16日より施行された原告の就業規則(甲1)には,以下の規定が存在する。 ア 73条1項(従業員及び管理職の遵守事項) 従業員は,次に掲げる事項を遵守しなければならない。会社は,次の各号に違反した場合には,懲戒規定に照らして懲戒処分をおこなう。 (ア) 業務に関わる記録,書類,備品等又はそれらの複写物を会社の許可なく秘匿し,会社内から持ち出し,他人へ開示し又は他人へ貸与しないこと(27号) (イ) 会社の機密事項について会社の許可なく社内外を問わず他人に漏えい又は口外しないこと(28号)イ 101条(機密保持義務)従業員は,退職又は解雇後も,在職中に知り得た業務上の機密事項を他に漏らしてはならない。(1項) (5) 誓約書 ア被告Aは,原告に入社した際,平成28年5月24日付け原告代表者取締役宛ての入社誓約書(甲2)に署名押印し,原告に提出した。 上記入社誓約書には,被告Aが厳守する事項として,「3.貴社の業務上の秘密事項については,貴社在職中は元より退職した場合であっても他に漏らしません。」,「8.故意または重大な過失により貴社に損害を与 えたときは,例え退職後に発覚した場合であっても,その損害を賠償致します。」との記載がある。 イ被告Bは,原告を退職する際,平成29年9月29日付け原告代表取締役宛ての誓約書(甲4)に署名押印し,原告に提出した。 上記誓約書には,被告Bが厳守する事項として,「1.貴社在職中に知 りえた業務上の秘密事項については,いかなる場合においても他に漏らしません。」,「4.故 押印し,原告に提出した。 上記誓約書には,被告Bが厳守する事項として,「1.貴社在職中に知 りえた業務上の秘密事項については,いかなる場合においても他に漏らしません。」,「4.故意または重大な過失により貴社に損害を与えたときは,例え退職後に発覚した場合であっても,その損害を賠償致します。」との記載がある。 2 争点 (1) 本件情報の営業秘密該当性ア本件名刺情報の営業秘密該当性(争点1-1)イ本件在庫情報の営業秘密該当性(争点1-2)ウ本件ID等情報の営業秘密該当性(争点1-3)(2) 不競法2条1項4号及び5号該当性(上記(1)以外の要件について)(争点 2)(3) 不競法2条1項7号及び8号該当性(上記(1)以外の要件について)(争点3)(4) 秘密保持義務違反の有無(争点4)(5) 損害発生の有無及び損害額(争点5) 第3 争点に関する当事者の主張 1 本件情報の営業秘密該当性(1) 争点1-1(本件名刺情報の営業秘密該当性)について〔原告の主張〕本件名刺情報は,原告の保有している営業秘密である。 ア秘密管理性 本件名刺情報は,秘密として管理されていたものである。 (ア) 秘密管理性の要件を満たすためには,一般的に,①当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていること,②当該情報にアクセスできる者が制限されていることが必要であるとされているが,この2つの点を別個独立の要件として解釈する必 要はなく,情報にアクセスした者が秘密であると認識できる場合には,十分なアクセス制限がないことを根拠に秘密管理性が否定されるべきではない。特に,規模の小さい企業であれば,会 として解釈する必 要はなく,情報にアクセスした者が秘密であると認識できる場合には,十分なアクセス制限がないことを根拠に秘密管理性が否定されるべきではない。特に,規模の小さい企業であれば,会社内の従業員に対し,情報の持出しや業務外での利用等を禁止するだけで十分であると解すべきである。 (イ) 本件名刺情報には,1500名超の顧客等の氏名が記載されているほか,会社名,部署名,役職名,住所,電話番号,FAX番号及び電子メールアドレスが記載されており,原告にとって極めて守秘性が高く,かつ重要な情報である。 本件名刺情報に記載された顧客が被告Bの名刺交換相手のみで構成 されたものであったとしても,同情報は,原告が保有し,かつ,本件名刺管理ソフトを利用して,原告の取引先から取得した名刺をデータ化したものであって,被告Bの私物ではない。 (ウ) 本件名刺管理ソフトは,システム管理者が個々のユーザを指定して,名刺情報のダウンロード権限を付与することができる仕様になってい るところ(甲22,23),原告が,本件名刺情報を一覧表の形でダウ ンロードすることのできる権限を与えていたのは,当時の原告の役員及び従業員約30名のうち役員2名とシステム関連の責任者の被告Aのみであった。 被告Aに対して付与したダウンロード権限についても,システムの構築のためであり,本件名刺情報をダウンロードして使用するためではな い。このように,本件名刺情報は従業員が無断で社外に持ち出すことができない形で管理されていた。 (エ) 本件名刺管理ソフトにダウンロード権限者の範囲を制限する機能が搭載されているのは,名刺の情報をデータ化したものを秘密として管理することへの一般的なニーズがあるからであり,原告の従業員のうちダ 件名刺管理ソフトにダウンロード権限者の範囲を制限する機能が搭載されているのは,名刺の情報をデータ化したものを秘密として管理することへの一般的なニーズがあるからであり,原告の従業員のうちダ ウンロード権限が付与されていない者も,本件名刺情報が営業秘密として管理されていることを十分に認識していた。 (オ) 原告の営業担当者であれば誰でも本件名刺管理ソフトに搭載された名刺情報を閲覧することができたのは事実であるが,原告の会社の規模を考慮すると,ダウンロードすることのできる者を制限することにより 本件名刺情報の社外への持出しを厳格に禁止するという方法は,秘密管理措置として十分に合理的である。 また,本件名刺情報のダウンロード権限のない者にその旨を通知していないとしても,原告の従業員が本件名刺情報をダウンロードすることができなければ,本件名刺情報が原告の営業秘密であることを認識し得 るから,本件名刺情報の秘密管理性が否定されることもない。 イ有用性本件名刺情報は,本件名刺管理ソフトによってデータとして整理・管理することにより,特定の文字列を含む名刺を瞬時に検索して選別することができ,原告の事業活動にとって有用であるから,本件名刺情報には有用 性がある。 これに対し,被告らは,原告においては顧客情報を管理するために「キントーン」というソフトウェアが使用されており,このことは本件名刺情報が有用性に欠けることを示していると主張するが,原告は,「キントーン」を導入し利用しようとしたことがあるものの,データに網羅性や正確性が欠けていたため,活用には至っていない。 ウ非公知性本件名刺情報は,名刺に記載された個人情報の羅列ではなく,原告とビジネス上の関係が存在し又は見込まれる相 ータに網羅性や正確性が欠けていたため,活用には至っていない。 ウ非公知性本件名刺情報は,名刺に記載された個人情報の羅列ではなく,原告とビジネス上の関係が存在し又は見込まれる相手の情報のみが記載されたものであって,このような原告の取引先に関する情報は,公表されておらず,第三者が容易に取得できるものではない。 したがって,本件名刺情報には非公知性がある。 〔被告Bの主張〕本件名刺情報は,営業秘密に該当しない。 ア秘密管理性について秘密管理性が認められるためには,企業が秘密として管理しようとする 対象(情報の範囲)が明確である必要があり,かつ,秘密管理意思が従業員等に対して明確に示されることが必要である。 しかし,本件名刺情報を秘密として管理しようとする原告の意思が,秘密管理措置によって従業員等に明確に示されていた事実はない。むしろ,本件名刺情報は,原告の営業担当者であれば誰もが閲覧し,その内容を複 写等することができ,実際に営業に使用されていたのであり,営業秘密として認識することができる状態にはなかった。 また,本件名刺情報が被告Bの取得した名刺のみによって構成されていることや,名刺は他人に対して氏名,社名,所属部署,連絡先等を知らせることを目的として交付されるものであることからすると,名刺に記載さ れた情報は,一般的に秘密として管理されるべきものではない。 これらの事実に照らすと,本件名刺情報には秘密管理性がない。 イ有用性について下記のとおり,本件名刺情報には非公知性はないが,仮に,本件名刺情報を集合体としてみた場合に,本件名刺情報に非公知性が認められる余地があるとしても,本件名刺情報が何らの整理もなされていなかったことや, 原告に 件名刺情報には非公知性はないが,仮に,本件名刺情報を集合体としてみた場合に,本件名刺情報に非公知性が認められる余地があるとしても,本件名刺情報が何らの整理もなされていなかったことや, 原告には顧客情報の管理ソフトである「キントーン」(乙5)を用いた顧客リストが別に存在し,これによる顧客管理が行われていたことからすると,本件名刺情報には有用性がない。 ウ非公知性について上記のとおり,名刺は他人に対して氏名,社名,所属部署,連絡先等を 知らせることを目的として交付されるものであるから,名刺に記載された情報は,一般に非公知性が否定されるものであるところ,本件において守秘義務を負うべき状況下で特定の者に対して名刺を手交したというような例外的な事情はない。 また,本件名刺情報に含まれる多くの情報は,インターネット上でも公 開されている全日本トラック協会の会員名簿に記載されており,誰でも容易に入手することができる上,原告の顧客に限定したものではなく,整理もされていないので,これを顧客情報と評価することはできない。 さらに,原告においては「キントーン」というソフトウェアによる顧客リストが別に存在しており,このことも本件名刺情報が有用性を欠くこと を示している。 したがって,本件名刺情報には非公知性がない。 〔被告Aの主張〕本件名刺情報は,営業秘密に該当しない。 ア秘密管理性について 本件名刺情報は,名刺に記載された情報をデータ化したものにすぎず, 原告の従業員であれば誰でもアクセスできるものであり,被告A以外の他の従業員もダウンロードすることが可能であった。 また,本件名刺情報が業務上の秘密事項等に該当するとの規定はなく,被告Aも含め原告の従業員は,本件名刺情報が営業秘 スできるものであり,被告A以外の他の従業員もダウンロードすることが可能であった。 また,本件名刺情報が業務上の秘密事項等に該当するとの規定はなく,被告Aも含め原告の従業員は,本件名刺情報が営業秘密であるとは認識していなかった。 したがって,本件名刺情報には秘密管理性がない。 イ有用性について原告は,「キントーン」という顧客管理システムを活用していなかったと主張するが,同システムは,遅くとも平成30年4月までは活用されており,原告の営業担当社員は,車両情報を「キントーン」に登録して車両 価格等の査定に活用し,実際に買取りが行われた際は仕入金額と決済日をキントーンに入力していた。 ウ非公知性について名刺そのものは容易に取得することができるものであることに加え,本件名刺情報のうち,会社名,電話番号といった主な情報については,全日 本トラック協会の会員名簿に記載されている情報であるから,本件名刺情報には非公知性がない。 (2) 争点1-2(本件在庫情報の営業秘密該当性)について〔原告の主張〕本件在庫情報は,原告が保有している営業秘密である。 ア秘密管理性本件在庫情報は,秘密として管理されていたものである。 (ア) 本件在庫情報には,仕入先,仕入価格等の情報のほか,販売先,販売価格等の情報も含まれていたところ,これらの情報は会社の利益に直結するものであり,原告にとって極めて守秘性が高く,かつ重要な情報で ある。 (イ) 本件在庫情報が会社の秘密情報であることは,その性質上明らかであるところ,原告は,被告らを含む全ての従業員(退職者を含む。)に対して,本件在庫情報を含む業務上の秘密事項等について,就業規則及び誓約書に基づき秘密保持義務を課していた。 とは,その性質上明らかであるところ,原告は,被告らを含む全ての従業員(退職者を含む。)に対して,本件在庫情報を含む業務上の秘密事項等について,就業規則及び誓約書に基づき秘密保持義務を課していた。 本件在庫情報は,原告の従業員であれば誰でもアクセスし,閲覧する ことができるものではあったが,原告の会社の規模を考慮すると,秘密保持義務を課して本件在庫情報の社外への持出しを厳格に禁止することは,秘密管理措置として十分合理性があったということができる。 イ有用性本件在庫情報には,仕入先,仕入価格等の情報のほか,販売先,販売価 格等の情報も含まれており,原告の事業活動に有用かつ必要不可欠であるから,有用性がある。 ウ非公知性本件在庫情報は,一般的に知られておらず,容易に知ることもできないから,本件在庫情報には非公知性がある。 〔被告Bの主張〕本件在庫情報は,営業秘密に該当しない。 すなわち,本件在庫情報は,原告の従業員であれば誰でもアクセスし,閲覧することができたのであり,何らの秘密管理措置もなされていない。原告の就業規則等にも,本件在庫情報が業務上の秘密事項等に該当する旨の規定 はなく,本件在庫情報の秘密管理性を肯定する根拠はない。 したがって,本件在庫情報には秘密管理性がない。 〔被告Aの主張〕本件在庫情報は,営業秘密に該当しない。 すなわち,本件在庫情報は,原告の従業員であれば誰でも閲覧することが できるものであるから,本件在庫情報には秘密管理性がない。 (3) 争点1-3(本件ID等情報の営業秘密該当性)について〔原告の主張〕本件ID等情報は,原告が保有している営業秘密である。 ア秘密管理性本件ID等情報は, (3) 争点1-3(本件ID等情報の営業秘密該当性)について〔原告の主張〕本件ID等情報は,原告が保有している営業秘密である。 ア秘密管理性本件ID等情報は,秘密として管理されていたものである。 (ア) 一般的に,一定の資格を有する会員のみに付与されるアライオートオークションにログインするためのID及びパスワードは,その性質上,外部に開示されることは想定されていない。また,アライオートオークションのサイトは,一定の金員を支払ってAI-NETの会員となることでID及びパスワードの付与を受け,利用できるようになるものであ ったから,本件ID等情報は,原告にとって極めて重要な情報であった。 (イ) 原告は,本件ID等情報について,アライオートオークションのサイトを利用する必要のある従業員のみに伝えていた。この点,本件ID等情報が,原告の札幌支店において利用する必要のある原告の従業員等の間で共有されていたとしても,本件ID等情報の守秘性,重要性に鑑み ると,本件ID等情報の社外への持出しが厳格に禁止されていたことは客観的に明確であり,その認識も当然に従業員の間にあったと考えられる。 イ有用性本件ID等情報は,単なる文字と数字の羅列ではなく,本件ID等情報 を用いて,アライオートオークションのサイトにログインし,同サイトを閲覧することによって,中古車両の下取り価格等の参考情報を得ることができるのであるから,本件ID等情報そのものにも情報としての有用性がある。 ウ非公知性 本件ID等情報は,一般的に知られておらず,容易に知ることもできな いから,本件ID等情報には非公知性がある。 〔被告Bの主張〕本件ID等情報は,営業秘 知性 本件ID等情報は,一般的に知られておらず,容易に知ることもできな いから,本件ID等情報には非公知性がある。 〔被告Bの主張〕本件ID等情報は,営業秘密に該当しない。 ア秘密管理性について争う。 イ有用性について本件ID等情報そのものは,文字と数字の羅列にすぎず,事業活動に有益な情報ということはできない。また,本件ID等情報により閲覧することのできるアライオートオークションの情報は,同オークションの管理運営者が保有・管理する情報であって,原告が保有,管理する情報ではない。 したがって,本件ID等情報には有用性がない。 〔被告Aの主張〕本件ID等情報は,営業秘密に該当しない。 ア秘密管理性についてID及びパスワードは,それがID及びパスワードであることをもって, 当然に営業秘密となるものではなく,本件ID等情報がどのような意味で原告にとって営業秘密となるのかは不明である。 原告は,本件ID等情報は,当該サイトを利用する必要のある従業員にのみ伝えていたと主張するが,それはアクセス制限を課すためではなく,単に,必要のない人には伝えなくても差し支えない情報であったからにす ぎない。このため,本件ID等情報は原告の従業員にとって秘密であると認識することはできず,現に,被告Aも認識していなかった。 したがって,本件ID等情報には秘密管理性がない。 イ有用性について有用な情報となる余地があるのは,アライオートオークションのサイト で閲覧して得られる下取り価格等の参考情報であり,本件ID等情報その ものではない。 したがって,本件ID等情報には有用性がない。 2 争点2(不競法2条1項4号及び5号該当性 で閲覧して得られる下取り価格等の参考情報であり,本件ID等情報その ものではない。 したがって,本件ID等情報には有用性がない。 2 争点2(不競法2条1項4号及び5号該当性(上記(1)以外の要件について))について〔原告の主張〕 (1) 被告Aの行為(同項4号)ア不正の手段による営業秘密の取得不競法2条1項4号の「不正の手段」とは,社会通念上,窃取,詐欺,強迫と同等の違法性を有する手段をいうところ,被告Aは,就業規則等に定められた秘密保持義務により社外に持ち出すことが禁じられている本 件情報を原告の了解を得ることなくプリントアウト等して入手した上で,被告Bにメール等で送信する方法で開示しており,当該行為は窃取と同等の違法性を有している。 被告らは,被告Aは原告の業務について協力を求めるために本件情報を被告Bに提供したと主張するが,被告Bは,原告を退職し,原告と競合す るアシーネの取締役に就任したのであるから,原告が,被告Bに対し,本件情報のように秘匿性の高い情報を提供した上で,原告の業務に協力を求めることや,アシーネに対して善管注意義務及び忠実義務を負う被告Bが,本件情報を使用し,原告の利益になるような行為をすることはあり得ない。 したがって,被告Aによる本件情報の取得は「不正の手段」によるもの である。 イ営業秘密の開示被告Aは,以下のとおり,平成29年9月29日から同年12月27日までの間において,被告Bに対し,本件情報を開示した。 (ア) 本件名刺情報 被告Aは,平成29年9月29日,被告Bに対し,本件名刺情報を同 被告のアシーネの電子メールアドレス宛てに送付した(甲6)。 (イ) 本件在庫情報被告Aは,平成29年10月2 被告Aは,平成29年9月29日,被告Bに対し,本件名刺情報を同 被告のアシーネの電子メールアドレス宛てに送付した(甲6)。 (イ) 本件在庫情報被告Aは,平成29年10月2日及び同年12月27日,被告Bに対し,本件在庫情報を同被告のアシーネの電子メールアドレス宛てに送付した(甲7,8)。 (ウ) 本件ID等情報被告Aは,平成29年10月3日,被告Bに対し,本件ID等情報をLINEにより同被告に送付した(甲9)。 (2) 被告Bの行為(同項5号)被告Bは,以下のとおり,原告に在籍中又は原告を退職後,被告Aによる 不正取得行為が介在することを知りながら,本件情報を使用し,アシーネの営業活動その他の職務の執行を行った。 ア本件名刺情報について被告らは,本件名刺情報に関し,被告Bが本件名刺情報を使用したのは,退職の挨拶のためであったと主張するが,被告Bの主張する数名に対する 挨拶を行うために,1500人超の情報が含まれる本件名刺情報を取得する必要はない。 また,被告Bが本件名刺情報を取得したのは原告への最終出社日である平成29年9月29日であるところ,被告Bは,同日,原告の取引先に退職の挨拶をしたわけではなく,アシーネの取締役に就任した同年10月1 日以降に,アシーネの取締役として原告の顧客に接触しているのであるから,取得した本件名刺情報はアシーネの営業活動に使用されたものである。 実際のところ,被告Bは,原告の退職後,本件名刺情報を本訴提起に至るまで大切に保管し,原告の顧客にアシーネの取締役として接触し,取引を行っていると考えられる。 イ本件在庫情報について 被告らは,本件在庫情報に関し,被告Bが同情報を使用したのは,被告Aの求めに応じて原 シーネの取締役として接触し,取引を行っていると考えられる。 イ本件在庫情報について 被告らは,本件在庫情報に関し,被告Bが同情報を使用したのは,被告Aの求めに応じて原告の在庫車両の販売等に協力するためであると主張するが,原告が被告Bに被告らが主張するような協力を依頼したことはなく,被告Bが,原告の競合会社であるアシーネの取締役として,本件在庫情報を得てアシーネの利益を図るために,被告Aを利用したにすぎない。 実際,被告Bは,本件情報に関するメールのほか,被告Aと,少なくとも平成29年10月から平成30年1月にかけて,メールにより原告車両の情報交換を行い,平成29年10月には,原告の決裁者を誤信させるために仮置きに対するクレームなどという真偽不明の事実を持ち出して,原告の保有する車両5台を被告Bの指定する価格で北海道車輛販売に販売 するよう指示し,被告Aをして稟議書(甲28の2)を起案させ,原告代表取締役の決裁を経た上で,市場価格に照らし安価な価格で販売させた。 同稟議書の原案(甲28の1)には仮置きに対するクレームについての記載があり,正式な稟議書(甲28の2)にはその旨の記載がないが,これは,おそらく原告東京本社の担当者から仮置きに対するクレームの詳細に ついて説明を求められたが回答することができなかったためであると考えられる。 なお,北海道車輛販売に販売された原告車両は,その後,アシーネが購入したと推測される(甲25の3)。すなわち,被告Bの行為により,アシーネが通常より安価で原告車両を入手したと考えるのが合理的である。 ウ本件ID等情報について被告らは,被告Bが本件ID等情報を使用したのは,被告Aから車両の下取り価格の相談を受けこれに協力するためであったと主張 手したと考えるのが合理的である。 ウ本件ID等情報について被告らは,被告Bが本件ID等情報を使用したのは,被告Aから車両の下取り価格の相談を受けこれに協力するためであったと主張するが,そもそも,被告Aから下取り価格の相談を受けていたのであれば,アライオートオークションの使用方法を被告Aに教えれば足りる上,アシーネにおい てアライオートオークションのパスワード等を取得していたのであれば, 原告が保有する本件ID等情報を被告Aから入手する必要はない。 また,被告Bが本件ID等情報を取得したのは平成29年10月3日であり,被告Bが原告の競合会社であるアシーネの取締役に就任した直後の時期であるから,アシーネに対して善管注意義務を負う被告Bが本件ID等情報を原告のために使用したとは考えられない。被告Bは,本件ID等 情報を使用してログインし,出品されている車両の価格を確認することにより,車両の下取り,査定等の際の参考情報を得て,アシーネの業務に利用していた。 〔被告Bの主張〕以下のとおり,被告Bは,被告Aに不正取得行為はないのであるから,被告 Bにその認識がなく,また,本件情報をアシーネの営業活動その他の職務の執行のために使用したこともない。 なお,原告は,アシーネは原告の競合会社であると主張するが,原告とアシーネは,顧客紹介業務契約を締結していたほか,原告が資金難の際にはアシーネが原告に資金援助をしたこともあるなど,原告が商号変更をする前から情報 交換・業務提携等を行う関係であり,競合関係にはなかった。 (1) 本件名刺情報被告Bは,退職届提出後,業務関係者と会う機会があれば退職の挨拶を行っていたが,退職日が近づいたところで,名刺交換をした業務関係者の中で挨拶をすべきである 係にはなかった。 (1) 本件名刺情報被告Bは,退職届提出後,業務関係者と会う機会があれば退職の挨拶を行っていたが,退職日が近づいたところで,名刺交換をした業務関係者の中で挨拶をすべきであるにもかかわらず漏れている者がいないか確認しようと考 え,平成29年9月28日,被告Aに被告Bが取得した名刺のデータを送ってほしいと依頼したところ,同月29日,被告Aから,メールで,被告Bが取得した名刺のデータのみから構成される本件名刺情報を受け取り,その日のうちに挨拶の漏れが確認できた数名に対し,電話で退職の挨拶を行った。 被告Bは,本件名刺情報を受け取るに当たり,アシーネから付与されたメ ールアドレスを用いたが,これは既に原告から貸与されているパソコンを返 却して原告から付与されたメールアドレスが使用できなかったためである。 被告Bに本件名刺情報をアシーネの営業活動に使用する意図があったのであれば,被告Aを関与させることなく,在職中に自身の名刺のデータを全て出力すればよかっただけであり,わざわざ,被告Aを関与させ,メールという証拠が残る手段を使って発覚のリスクを増やすことは不合理であり,また, アシーネから付与されたメールアドレスで受信するはずもない。 また,原告の顧客情報をアシーネの営業のために取得する目的であったのであれば,より詳細な顧客情報が入力された「キントーン」のデータを取得していたはずである。 このように,被告Bは,退職の挨拶のために,本件名刺情報を取得,使用 したのであり,被告Aに不正取得行為はないのであるから,被告Bにその認識がなく,また,本件情報をアシーネの営業活動その他の職務の執行のために使用したこともない。 (2) 本件在庫情報アトラック事業の営業に関しては,一般乗用車と異 のであるから,被告Bにその認識がなく,また,本件情報をアシーネの営業活動その他の職務の執行のために使用したこともない。 (2) 本件在庫情報アトラック事業の営業に関しては,一般乗用車と異なり,出回っている車 両のうち,どの車両を仕入れるか,出回っていない車両をどのように探して仕入れるか,どのような買入価格で仕入れるか,需要に合致するためにどのような加工を行うか,売却先の見通しと売却価格の設定などについて,経験と判断が必要となる。 被告Bの退職時,トラックレンタル及び売買を担当する原告の営業担当 者は,東京本社3名,札幌支社2名(被告Aを含む。)で,いずれも前職がトラック事業と無関係で,かつ,勤務歴の浅い者のみであった。被告Bは,自身が退職すると,原告の売上げを保つのが困難となり,経験の乏しい営業担当者が混乱すると想定したため,退職前後にわたって,これらの営業担当者等をフォローしようと考えており,原告代表取締役にもその旨 を伝えていた。 イ被告Bは,原告を退職後,被告Aから,原告の売上げのため,原告の在庫車両の売却先に心当たりがないかとの相談を受け,原告の在庫状況を把握するため,被告Aに対し,販売用の在庫表を送るよう依頼し,平成29年10月2日,被告Aから,本件在庫表(甲7の1)の送付を受けた。 ウ被告Bは,これを受けて,以下のとおり,原告保有車両の売却先の紹介 をした。 (ア) 平成29年7月当時,茨城県大洗港には,原告の車両14台が仮置き(正規の駐車場ではないところに駐車している状態)されていたが,同年10月,三井商船フェリーの関連会社から,原告札幌支店に対し,仮置きに対するクレームがあり,原告において早急に売却又は別の保管場 所の確保が必要となった。このような状況 態)されていたが,同年10月,三井商船フェリーの関連会社から,原告札幌支店に対し,仮置きに対するクレームがあり,原告において早急に売却又は別の保管場 所の確保が必要となった。このような状況において,被告Aは,特に仮置車両について売却を急ぎ,売却先について被告Bに相談した。 これを受けて,被告Bは,上記ファイルの情報を前提に,仮置き車両の売却先を探し,うち5台について丸富通商と売却の交渉をした上で,被告Aにその情報を伝え(甲24),その後,原告は,これら5台につ いて,正式な社内稟議手続を行い,それぞれの売却価格が相当と判断して北海道車輛販売に売却した。 このとき売却した車両5台は,いずれも市場価格に照らして安価ではなく,原告はこれにより利益を上げている(乙8~13)。 (イ) 被告Bは,UDトラックス道東株式会社北見支店(以下「UD北見」 という。)が探している車両が上記ファイルにあったことから,平成29年10月,UD北見の購入希望情報を被告Aに伝え,販売協力を行った(乙6)。 (ウ) 被告Bは,平成29年11月頃,フラットトレーラーの購入を希望する会社について情報を得たことから,被告Aに対して写真の提供を求め, 更に詳しい情報の提供を受けた(乙7)。ただし,この会社は原告から フラットトレーラーを購入するには至らなかった。 (エ) 被告Bは,平成30年1月頃,北海道車輛販売がフラットトレーラーを探しているとの情報を得たことから,その情報を被告Aに引き継ぐなどの協力を行った。被告Aは,これに基づいて北海道車輛販売と交渉を進め,原告は,北海道車輛販売に対し,フラットトレーラー2台を売却 した。 エこのように,被告Bは,被告Aの求めに応じて,原告車両の販売等に協力するために本件在庫情 て北海道車輛販売と交渉を進め,原告は,北海道車輛販売に対し,フラットトレーラー2台を売却 した。 エこのように,被告Bは,被告Aの求めに応じて,原告車両の販売等に協力するために本件在庫情報を取得,使用したのであり,被告Aに不正取得行為はないのであるから,被告Bにその認識がなく,また,本件情報をアシーネの営業活動その他の職務の執行のために使用したこともない。 (3) 本件ID等情報被告Bは,退職後も,原告の業務をフォローしようと考えていたところ,被告Aから,原告において,ナラサキスタックス株式会社(本件名刺情報(甲5)のNo.1375)や有限会社NEXT(本件名刺情報のNo.1401)から車両を下取りするに当たって,いくらで買い取ればよいか相談を受けた。 買い取る車両の査定価格を適正に行うためには,前記のとおり,一定の経験が要求されるところ,被告Bは,査定価格の設定を適切に行うためには,経験の不十分な被告Aにアライオートオークションの利用方法を教えるだけでは足りず,被告Bが実際にアライオートオークションのサイトを閲覧して調査した上で査定価格について助言する必要があると判断した。 そこで,被告Bは,被告AにアライオートオークションのIDとパスワードを送付するよう求め,平成29年10月3日,被告Aから本件ID等情報の送付を受けた。その上で,被告Bは,本件ID等情報を用いてアライオートオークションのサイトにログインし,被告Aから相談を受けた車両と類似する車両の価格を調査して需要を判断し,被告Aに適切と考える査定価格を 回答した。アシーネの業務のためにアライオートオークションのID及びパ スワードが必要であるならば,同社において正規の手続で取得すればよいだけであり,被告Bは本件ID等 価格を 回答した。アシーネの業務のためにアライオートオークションのID及びパ スワードが必要であるならば,同社において正規の手続で取得すればよいだけであり,被告Bは本件ID等情報を同社の業務のためには使用していない。 このように,被告Bは,原告による買取り車両の査定価格を被告Aに助言するために,本件ID等情報を取得,使用したのであって,被告Aに不正取得行為はないのであるから,被告Bにその認識がなく,また,アシーネの営 業活動その他の業務の執行のために使用したこともない。 〔被告Aの主張〕被告Aは,以下のとおり,本件情報にアクセスする権限を有しており,また,これを被告Bに開示したのは,原告の営業のためであるから,その取得方法は「不正の手段」によるものではない。 (1) 不競法2条1項4号にいう「不正の手段」とは,社会通念上,「窃取,詐欺,強迫」と同等の違法性を有すると判断される公序良俗に反する手段をいう。そのため,不競法上の「不正の手段」に当たるかどうかは,当該行為の意図・目的も考慮されるべきである。 (2) 被告Aは,本件情報について,ダウンロード権限も含めアクセスすること が許容されていたところ,被告Aによる被告Bに対する本件情報の提供は,以下のとおり,原告の利益のために行ったものであり,「不正の手段」には当たらない。 ア本件名刺情報被告Aは,世話になった方々へ退職の挨拶をすることを考えていた被告 Bから本件名刺情報を求められため,本件名刺管理ソフトにある名刺のデータの中から,被告Bが取得した名刺のデータを出力して,被告Bに本件名刺情報を送付したものであり,その目的が「窃取,詐欺,強迫」と同等の違法性を有すると判断される公序良俗に反する手段に当たるということはできない 被告Bが取得した名刺のデータを出力して,被告Bに本件名刺情報を送付したものであり,その目的が「窃取,詐欺,強迫」と同等の違法性を有すると判断される公序良俗に反する手段に当たるということはできない。 イ本件在庫情報及び本件ID等情報 被告Bが原告に在職していた当時,札幌支店の営業担当者数は,被告らを含め合計3名であり,被告Bは,同支店における営業の中枢を担い,自らのノウハウ,経験,人脈を生かして同支店の営業成績を作っていたが,被告Bが原告を退職したことから,被告Aは,それまで以上に営業に注力せざるを得なくなった。 原告札幌支店は,毎月リース契約を50台締結することを東京本社からノルマとして課せられていたが,営業担当者2名で50台のノルマを達成することはほとんど不可能に近かったことから,被告Aは,元上司の被告Bから仕入れや販売の助言や取引先の紹介を得てノルマを達成するために,被告Bに対し,本件在庫情報及び本件ID等情報を送付した。 これにより,被告Aは,被告Bから,本件在庫情報を基にして,UD北見や北海道車輛販売といった取引先の紹介を受けた。また,被告Aは,被告Bに本件ID等情報を使用してアライオートオークションのサイトに掲載されている過去の成約価格等を確認してもらった上で,被告Bから車両の査定について助言を得た。 原告は,被告らが,原告の資産である中古トラックを市場価格に照らし安価に第三者に売却し,高額の修理費用を要する中古トラックを高額な価格で購入したと主張するが,そのような事実はない。 3 争点3(不競法2条1項7号及び8号該当性(上記(1)以外の要件について))について 〔原告の主張〕(1) 被告Aの行為(同項7号)仮に,被告Aによる本件情報の取 ない。 3 争点3(不競法2条1項7号及び8号該当性(上記(1)以外の要件について))について 〔原告の主張〕(1) 被告Aの行為(同項7号)仮に,被告Aによる本件情報の取得が不正の手段によるものでないとしても,被告Aは,アシーネが原告と競業する事業を営んでおり,被告Bがアシーネにおいて本件情報を利用することを知り,原告における業務上の必要な く開示している以上,被告Aには,アシーネ又は被告Bに利益を得させる目 的があったことは明らかである。 したがって,被告Aは,不正の利益を得る目的又は営業秘密の保有者に損害を加える目的で,原告から開示された本件情報を被告Bに開示したものである。 (2) 被告Bの行為(同項8号) 被告Bは,被告Aには就業規則等により秘密保持義務が課せられていることを知りながら,被告Aから本件情報を取得し,アシーネの営業活動その他の職務の執行を行ったのであるから,本件情報について被告Aによる不正開示行為が介在することを知りながら,営業秘密である本件情報を使用したものである。 〔被告Bの主張〕前記のとおり,被告Bは,被告Aからの依頼を受けて,原告車両の下取り価格や売却先について助言をしたものであり,被告Aに不正開示行為はないのであるから,被告Bに不正開示行為の介在について認識はなく,また,本件情報をアシーネの営業活動その他の職務の執行のために使用したこともな い。 〔被告Aの主張〕前記のとおり,被告Aが被告Bに対して本件情報を提供したのは,原告の利益のためであるから,被告Aには「不正の利益を得る目的」も原告に「損害を与える目的」も認められない。 4 争点4(秘密保持義務違反の有無)について〔原告の主張〕( したのは,原告の利益のためであるから,被告Aには「不正の利益を得る目的」も原告に「損害を与える目的」も認められない。 4 争点4(秘密保持義務違反の有無)について〔原告の主張〕(1) 被告Aについて被告Aが本件情報を開示した行為は,就業規則等に定められた秘密保持義務に違反する。 被告Aは,原告に対し,①「退職又は解雇後も,在職中に知り得た業務上 の機密事項を他に漏ら」さない(就業規則101条1項),②「業務に関わる記録,書類,備品等又はそれらの複写物を会社の許可なく秘匿し,会社内から持ち出し,他人へ開示し又は他人へ貸与しない」(同73条1項27号),③「会社の機密事項について会社の許可なく社内外を問わず他人に漏えい又は口外しない」(同項28号),④「業務上の秘密事項については,…他に 漏ら」さない(入社誓約書3項)旨の秘密保持義務を負っていた。 原告には,業務上の秘密事項等の中身を具体的に定めた規定はないが,①就業規則や個別合意によって企業秘密の不正利用を防止している趣旨は,不競法に上乗せした制約を課すためであること,②原告の就業規則73条1項において「業務に関わる記録」等も含め,より広範な情報について開示を禁 止していること,③営業秘密の三要素のうち有用性については,秘密情報であるか否かとは無関係であることなどを踏まえると,不競法上の営業秘密よりも広い情報が業務上の秘密事項等に該当すると解すべきであり,これによれば,本件情報は,「業務上の機密事項」,「業務に関わる記録,書類」,「会社の機密事項」及び「業務上の秘密事項」のいずれにも該当する。 したがって,被告Aが被告Bに対して本件情報を開示した行為は,原告の就業規則等に規定された秘密保持義務に違反する。 (2) 被告 の機密事項」及び「業務上の秘密事項」のいずれにも該当する。 したがって,被告Aが被告Bに対して本件情報を開示した行為は,原告の就業規則等に規定された秘密保持義務に違反する。 (2) 被告Bについて被告Bは,原告に対し,就業規則101条1項及び退社時の誓約書(甲4)1項に基づき,「在職中に知りえた業務上の秘密事項」等について原告退職 後も秘密保持義務を負っており,本件情報は,業務上の秘密事項等に該当する。 そうすると,被告Bが被告Aから取得した本件情報を使用した行為は,原告の就業規則等に規定された秘密保持義務に違反するものということができる。 〔被告Bの主張〕 原告の就業規則や退社時の誓約書には,本件情報が業務上の秘密事項等であるとは規定されていないから,本件情報が業務上の秘密事項等であることを前提とする原告の秘密保持義務違反の主張は理由がない。 〔被告Aの主張〕被告Aは,就業規則(甲1)の変更に合意していないから,就業規則上の 義務を負っていない。 また,本件情報は,原告の営業秘密には当たらないので,就業規則等における業務上の秘密事項等にも該当せず,被告Aが本件情報を被告Bに送付した行為は秘密保持義務に違反しない。 さらに,被告Aは,原告の利益のために,被告Bに対し,本件情報を開示 したのであり,その結果及び目的のとおり原告の利益となったのであるから,被告Aに帰責性はない。 5 争点5(損害の発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕被告らの本件情報に係る行為により,原告は,以下のとおり,少なくとも合 計4400万円の損害を被ったところ,被告らに対し,その一部である4000万円の連帯支払を請求する。 (1) 逸失利益 4000万円ア により,原告は,以下のとおり,少なくとも合 計4400万円の損害を被ったところ,被告らに対し,その一部である4000万円の連帯支払を請求する。 (1) 逸失利益 4000万円ア不競法上,営業上の利益を侵害した者が侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額が,損害の額と推定され(同法5条2項),この 考え方は,本件のように被告Bの本件情報に係る行為によりアシーネに利益が生じたような場合にも当てはまる。 イアシーネは,平成29年12月期(同年1月~12月)において,従来の主力商圏である空知地区ではなく,原告が顧客基盤を有する札幌地区での販売を強化したことなどにより,売上高を前年同期に比べ約2倍の15 億円超に伸ばし,その限界利益を,前年同期の約1億3700万円から約 2億2800万円に大幅に増加させた。 本件情報を利用した営業活動が具体的にどのようにしてアシーネの利益に結びついたかについては,原告において把握できないが,①アシーネの売上げが,平成29年12月期において,従来の主力商圏である空知地区ではなく,原告が顧客基盤を有する札幌地区で伸びていること,②他方, 原告の中古車販売事業の平成30年4月期(平成29年4月~平成30年3月)の売上げが,前年同期の約27億4100万円から約9億7200万円に激減していること,③被告Bが,原告退職後に,原告の顧客とアシーネの取締役として接触していること,④原告車両の売却が被告Bに指示された値段で行われていること,⑤被告Bの指示に従って北海道車輛販売 に販売した車両をアシーネが購入していることがうかがわれること等の事実関係を踏まえると,アシーネの増益が被告Bによる本件情報の利用によりもたらされたものであることは明らかである。 そし 売 に販売した車両をアシーネが購入していることがうかがわれること等の事実関係を踏まえると,アシーネの増益が被告Bによる本件情報の利用によりもたらされたものであることは明らかである。 そして,①被告Bが平成29年8月に原告に退職届を提出し,その後は有給休暇を取得するなどして原告の業務にほとんど貢献していなかった こと,②被告Bは,遅くとも同年9月末にはアシーネから電子メールアドレスを付与され,同アドレスを用いた活動をすることが可能であったこと,③被告Bがアシーネの取締役として活動することは,原告在籍中の相当早い段階で決まっていたと考えられること,④アシーネの札幌商圏における売上増加の要因として,被告Bの加入以上に大きな要因は考え難いことな どを踏まえると,アシーネの限界利益の増加の半分は本件情報を使用した営業活動等により増加したものと考えるのが合理的である。 そうすると,アシーネの平成29年12月期の限界利益の前年同期比の増加分約9100万円のうち,少なくとも4000万円については,被告らの本件情報に係る行為によって原告に生じた損害であると推定するこ とが適当かつ妥当である。 ウ被告Bが主張するとおり,平成30年4月期の原告の売上げと利益が前年同期と比べ増加していることは事実であるが,このことは,原告に損害が生じていないことを意味しない。 すなわち,原告は,平成28年10月の商号変更後,中古のトラック売買等の事業に加え,トラックを投資対象資産とする金融商品「トラックフ ァンド」の組成等の事業も行い,事業の軸足を移動させていたことから,北海道地区における中古トラックに関する利益の減少がそのまま原告全体の利益の減少に結び付く事業構造とはなっていなかった。実際,原告の平成29年4月期の売 も行い,事業の軸足を移動させていたことから,北海道地区における中古トラックに関する利益の減少がそのまま原告全体の利益の減少に結び付く事業構造とはなっていなかった。実際,原告の平成29年4月期の売上げ約36億8600万円のうち,札幌支店が中心となって行っていた中古車販売事業の売上げは約27億4100万円で あったが,平成30年4月期の同事業の売上げは約9億7200万円と激減している。つまり,同事業については,本件情報を使用してアシーネが売上げを伸ばした結果,原告の売上げが減少したと考えるのが合理的である。 (2) 弁護士費用等 400万円 原告は,被告らの本件情報に関する不正行為の調査のために費用が生じているほか,被告らとの間の協議,本訴の追行のために弁護士に委任せざるを得なくなった。これらの損害のうち,被告らの本件情報に係る行為と相当因果関係の範囲内にある損害の額は400万円を下らない。 〔被告Bの主張〕 (1) 不正競争行為による損害についてア不競法5条2項の規定が適用されるには,「侵害した者」がその侵害行為により利益を受けていることが必要であるところ,原告は「侵害した者」が被告らであると主張しながら,アシーネの利益を損害と主張しており,主張自体が同項の要件を満たしていない。 イ不競法5条2項の推定規定が適用されるには,侵害行為により利益を受 けていることを具体的に主張立証する必要があるが,原告は,被告Bの本件情報に係る行為により利益が生じたことを具体的に主張立証していない。 原告は,平成29年12月期のアシーネの売上げ及び利益が前年同期よりも増加していることを根拠に,本件情報の使用によってアシーネの売上げ及び利益が増加したと主張する。 しかし,アシーネ 。 原告は,平成29年12月期のアシーネの売上げ及び利益が前年同期よりも増加していることを根拠に,本件情報の使用によってアシーネの売上げ及び利益が増加したと主張する。 しかし,アシーネの平成29年12月期の前年同期からの売上げの増加額及び利益の増加額を被告Bの入社月(10月)の前後で分けると,売上増加額については,同年1~9月までの分が前年同期からの売上増加額の77%,同年10~12月までの分が同額の23%を占めており,被告Bの入社によって売上げが増加したとはいうことができず,また,純利益に ついては,その増加は被告Bの入社前しかなく,被告Bの入社後はむしろマイナスとなっている。 したがって,アシーネの売上げ及び利益の増加は,本件情報の利用や被告Bの入社によるものとはいうことができない。 ウまた,原告の平成30年4月期の売上げ(50億9100万円)及び純 利益(1億4633万円)は,前年同期の売上げ(36億8600万円)及び純利益(5929万円)と比較して増加しており,被告Bの退職前後の年度利益を比較して利益と損害を主張するという原告の立場を前提とすると,原告には損害は何ら生じていないということができる。 原告は,原告全体の売上げ及び利益が増加したことは認めながら,トラ ック販売等事業の売上げ及び利益は減少したと主張するが,アシーネに関しては事業ごとに区分せずに会社全体の売上げ及び利益を前提とする主張をしながら,原告については,会社全体の売上げ及び利益を無視して事業や部門に限定した主張をするというのは,恣意的な比較というほかなく,原告の主張に合理性がない。 また,原告のトラック販売等事業の売上げ及び利益が減少したのは,原 告が,自らの経営判断でトラック販売等事業からトラックフ 的な比較というほかなく,原告の主張に合理性がない。 また,原告のトラック販売等事業の売上げ及び利益が減少したのは,原 告が,自らの経営判断でトラック販売等事業からトラックファンドへ注力する事業を移した結果にすぎず,本件情報とは関係がない。 (2) 秘密保持義務違反による損害について被告Bは,本件情報をアシーネの業務に使用していないのであるから,秘密保持義務違反と損害との間に相当因果関係はない。 〔被告Aの主張〕(1) 不正競争行為による損害についてア不競法5条2項は,侵害行為により利益を受けたことが立証されることを前提として損害額を推定する規定にすぎない。 原告は,アシーネの増収,増益の理由が,本件情報の利用によるところ が大きいと主張し,その根拠として,アシーネの商圏の札幌への拡大を主張するが,アシーネは支店の有無にかかわらず,複数のグループ会社の協力により,従前から札幌市を主たる商圏としており(甲10),平成30年4月にアシーネの商圏が札幌に拡大されたわけではない。 このように,不競法5条2項による損害額の推定の前提となる損害の発 生について具体的な立証は何らされていないので,同項を適用することはできない。 イまた,被告Aは,原告の利益のために被告Bに協力を求め,本件情報を開示したにすぎないから,原告に損害は発生していない。 この点,被告Aが,原告に勤務していた当時,原告がトラック等を売却 する際には,すべての契約について東京本社の決裁を得る必要があり,原告にとって相場より安価の売買であれば同本社の決裁が下りることはなかったのであるから,被告Aが関与した取引について決裁を得たということは,その価格で問題がなかったということを示している。 り,原告にとって相場より安価の売買であれば同本社の決裁が下りることはなかったのであるから,被告Aが関与した取引について決裁を得たということは,その価格で問題がなかったということを示している。 したがって,原告に利益が生じたことはあっても,損害が生じていない ことは明らかである。 (2) 秘密保持義務違反による損害について秘密保持義務違反は,債務不履行であり,不競法5条2項のような損害額の推定規定はないから,原告が,秘密保持義務違反によって具体的な損害が生じたことを具体的に主張立証しなければならないが,相当因果関係や具体的な損害及びその額について十分な立証がされていない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件情報の営業秘密該当性)について(1) 争点1-1(本件名刺情報の営業秘密該当性)についてア不競法2条6項の「秘密として管理されている」とは,情報の種類,性質,管理の方法・態様,情報を保有する事業者と情報にアクセスした者と の具体的な関係等の諸般の事情に照らし,客観的にみて,情報にアクセスした者において当該情報が秘密情報であることを認識し得る程度に管理されていることを要するものと解される。 イ前提事実及び証拠(甲21~23)によれば,本件名刺管理ソフトは,個々のユーザーごとに,名刺をスキャンしてデータ化することにより,名 刺の管理を簡単かつ便利にするものであり,ユーザーごとのデータ又は全データをダウンロードする権限を特定の者に付与する機能を備えたものであると認められる。 本件名刺情報にはパスワード等のアクセス制限は設定されておらず,原告の営業担当者であれば誰でも閲覧することができたことについては,当 事者間に争いがない。原告は,名刺情報を一覧表 められる。 本件名刺情報にはパスワード等のアクセス制限は設定されておらず,原告の営業担当者であれば誰でも閲覧することができたことについては,当 事者間に争いがない。原告は,名刺情報を一覧表の形でダウンロードすることのできる権限を,役員2名と被告Aのみに与えていたと主張するが,原告の主張する同事実を認めるに足りる証拠はない。 また,名刺は,第三者に手交するためのものであり,そこに記載されている情報は,氏名,会社名,所属部署,役職,電話番号など,秘密性のな いものであることに照らすと,本件名刺情報についても秘密性が高いとい うことはできず,これに自由にアクセスし,営業に使用することのできた原告の従業員等が本件名刺情報を営業秘密と認識していたとは考え難い。 さらに,原告は,原告の就業規則等に秘密保持条項があることも本件名刺情報が秘密として管理されていたことの根拠として挙げるが,同就業規則等には秘密保持義務の対象となる情報がいかなるものであるかについ て具体的に記載されておらず,同就業規則等に接した原告の従業員等が,本件名刺情報が原告の営業秘密であると認識し得たとも認められない。 ウ以上によれば,原告の会社の規模等を踏まえても,本件名刺情報が,原告において,秘密として管理されていたということはできない。 (2) 争点1-2(本件在庫情報の営業秘密該当性)について ア本件在庫情報は,原告の保有する在庫車両の商品名,仕入先,仕入日,仕入価格等が記載されたものであるところ,同情報にはパスワード等のアクセス制限は設定されておらず,原告の従業員であれば,誰でも同情報にアクセスし,閲覧することができたことは,当事者間に争いがない。 原告は,本件在庫情報は,会社の利益に直結するものであり,原告にと 制限は設定されておらず,原告の従業員であれば,誰でも同情報にアクセスし,閲覧することができたことは,当事者間に争いがない。 原告は,本件在庫情報は,会社の利益に直結するものであり,原告にと って極めて守秘性が高く,重要な情報であるので,会社の秘密情報であることはその性質上明らかであると主張するが,本件在庫情報が一定の有用性や非公知性を有するとしても,上記のとおり,同情報には何らのアクセス制限も設定されていないことに照らすと,原告の従業員等が同情報を営業秘密と認識していたとは考え難い。 また,原告は,原告の就業規則等に秘密保持条項があることも本件在庫情報が秘密として管理されていたことの根拠として挙げるが,同就業規則等には秘密保持義務の対象となる情報がいかなるものであるかについて具体的に記載されておらず,同就業規則等に接した原告の従業員等が,本件在庫情報が原告の営業秘密であると認識し得たとも認められない。 イ以上によれば,原告の会社の規模等を踏まえても,本件在庫情報が,原 告において,秘密として管理されていたということはできない。 (3) 争点1-3(本件ID等情報の営業秘密該当性)についてア本件ID等情報は,中古車オークションであるアライオートオークションに参加するために必要となるID及びパスワードであり,同オークションのサイトにログインすることにより,中古車の売買の相場価格を知るこ とが可能となるところ,本件ID等情報そのものは,文字と数字等の組合せから成る文字列にすぎず,それ自体が事業活動に有用な情報であるということはできない。 これに対し,原告は,同オークションのサイトを閲覧することにより,中古車両の下取り価格等の参考情報を得ることができるので,本件ID等 情 動に有用な情報であるということはできない。 これに対し,原告は,同オークションのサイトを閲覧することにより,中古車両の下取り価格等の参考情報を得ることができるので,本件ID等 情報自体に情報としての有用性があると主張するが,上記判示のとおり,本件ID等情報は文字と数字等の組合せから成る文字列であるから,それ自体から原告の事業に有用な情報を読み取ることはできず,また,同情報を使用することによりアクセスすることができるのは,アライオートオークションのサイトにおいて表示され,その会員であれば見ることのできる 情報であり,同情報が原告の保有する営業秘密であるということもできない。 イまた,仮に,本件ID等情報自体に有用性が認められるとしても,原告の主張によれば,同情報はこれを利用する必要のある従業員の間で共有されていたということであり,そうすると,原告においては,本件ID等情 報についてアクセス制限措置は講じられておらず,業務上上記オークションのサイトにアクセスする必要のある従業員であれば,自由に本件ID等情報を利用することができたというべきである。 そうすると,原告の従業員等が,本件ID等情報が原告の営業秘密であると認識していたとは考え難く,原告の就業規則等に秘密保持条項がある ことも同結論を左右するものではない。 以上によれば,本件ID等情報が,原告において,秘密として管理されていたということはできない。 (4) 小括したがって,本件名刺情報,本件在庫情報及び本件ID等情報は,いずれも,不競法2条6項の「営業秘密」には該当しない。 2 争点2(不競法2条1項4号及び5号該当性(その他の要件))について上記1のとおり,本件情報はいずれも不競法2条6項の「営 は,いずれも,不競法2条6項の「営業秘密」には該当しない。 2 争点2(不競法2条1項4号及び5号該当性(その他の要件))について上記1のとおり,本件情報はいずれも不競法2条6項の「営業秘密」に該当しないので,不競法に基づく原告の請求はいずれも理由がないが,併せて同条1項4号及び5号所定の他の要件についても検討する。 (1) 本件名刺情報の開示等について ア被告Aが,平成29年9月29日,被告Bからの依頼を受け,本件名刺情報を電子メールにより送付したことについては,当事者間に争いがない。 イ原告は,被告Aは,就業規則等に定められた秘密保持義務により社外に持ち出すことが禁じられている本件情報を原告の了解を得ることなくプリントアウト等して入手した上で,被告Bにメール等で送信する方法で開 示しており,当該行為は窃取等と同等の違法性を有し,「不正の手段」による開示に当たると主張する。 しかし,被告Aが,本件名刺情報にアクセスし,これをダウンロードする権限を有していたことについては,当事者間に争いがなく,被告Aがその権限に基づいて取得した本件名刺情報を電子メールにより被告Bに送 付したとしても,その行為が,窃取,詐欺,強迫と同等の違法性を有するということはできない。 ウ原告は,被告Bが被告Aに本件名刺情報の送付を依頼した目的は,アシーネの営業に使用することにあり,被告Bは,本件名刺情報を実際にアシーネの営業に使用し,被告Aもそのことを知っていたと主張する。 しかし,被告Bが本件名刺情報をアシーネの営業のために使用したと認 めるに足りる証拠はなく,被告Aが,被告Bが同情報をアシーネの営業に使用すると知りつつ,これを被告Bに送付したことをうかがわせる証拠も存在しない。 ーネの営業のために使用したと認 めるに足りる証拠はなく,被告Aが,被告Bが同情報をアシーネの営業に使用すると知りつつ,これを被告Bに送付したことをうかがわせる証拠も存在しない。 また,原告は,アシーネに転職した被告Bが,本件情報を使用し,原告の利益になるような行為をすることはあり得ないと主張するが,勤務先を 退職する際に在勤中に世話になった関係者に挨拶をすることは一般的に行われる慣行であり,本件名刺情報の送付時期にも照らし,被告Bが退職の際の挨拶のため本件名刺情報の送付を被告Aに依頼したとの被告らの主張が不合理又は不自然であるということはできない。 さらに,原告は,被告Aは,就業規則等に定められた秘密保持義務によ り社外に持ち出すことが禁じられている本件情報を原告の了解を得ることなく被告Bに送付したと主張するが,後記判示のとおり,被告Aの行為が就業規則等に定められた秘密保持義務に反するとは認められず,また,就業規則等に反することから,直ちに,当該行為が,窃取,詐欺,強迫と同等の違法性を有するということもできない。 エ以上のとおり,被告Aの行為は「不正の手段による」ものとは認められないので,不競法2条1項4号の規定する不正競争行為には該当せず,被告Bの行為についても,不正取得行為の介在が認められないので,同項5号所定の不正競争行為に当たらない。 (2) 本件在庫情報の開示等について ア被告Aが,平成29年10月2日及び同年12月27日,被告Bからの依頼を受け,本件在庫情報を電子メールにより送付したことについては,当事者間に争いがない。 イ原告は,被告Aが被告Bに対して本件在庫情報をメール等で送信した行為が窃取等と同等の違法性を有し,「不正の手段」による開示に当たると により送付したことについては,当事者間に争いがない。 イ原告は,被告Aが被告Bに対して本件在庫情報をメール等で送信した行為が窃取等と同等の違法性を有し,「不正の手段」による開示に当たると 主張する。 しかし,被告Aが,本件在庫情報にアクセスし,これを利用する権限を有していたことについては,当事者間に争いがないところ,被告Aがその権限に基づいて取得した本件在庫情報を電子メールにより被告Bに送付したとしても,その行為が,窃取,詐欺,強迫と同等の違法性を有するということはできない。 ウ原告は,被告Bが被告Aに本件在庫情報の送付を依頼した目的は,アシーネの営業に使用することにあり,被告Bは,本件在庫情報を実際にアシーネの営業に使用し,被告Aもそのことを知っていたと主張する。 しかし,被告Bが本件在庫情報をアシーネの営業のために使用したと認めるに足りる証拠はなく,被告Aが,被告Bが同情報をアシーネの営業に 使用すると知りつつ,これを被告Bに送付したことをうかがわせる証拠も存在しない。 かえって,前記前提事実(3)によれば,①被告Bは,被告Aから送付を受けた本件在庫表等に基づき,同在庫表に掲載された車両5台の販売先として北海道車輛販売を紹介するとともに,被告Aに対し,原告社内の必要な 決裁を得るように助言したこと,②被告Aは,被告Bの助言に基づき,原告社内の決裁を得た上で,同各車両をいずれも仕入価格よりも高い価格で北海道車輌販売に売却し,この取引により原告は利益を得たこと,③被告Bは,平成29年10月から平成30年1月にかけて,電子メールを通じて,被告Aに対し,上記車両以外の原告の保有車両についても,その売却 先に関する助言を与えたことなどの事実が認められる。 これによれば,被告 10月から平成30年1月にかけて,電子メールを通じて,被告Aに対し,上記車両以外の原告の保有車両についても,その売却 先に関する助言を与えたことなどの事実が認められる。 これによれば,被告Aが被告Bに対して本件在庫情報を送付したのは,原告保有車両の売却先等についての助言を受けるためであり,被告Bは,同情報により原告保有車両を確認するなどした上で,被告Aに対し,同車両の売却先等について助言を与えたものと認められる。そうすると,本件 在庫情報の送付は,被告Aによる原告の業務遂行の一環又は被告ら間の引 継ぎの一環として行われたものであり,原告の利益になるものであったというべきである。 エこれに対し,原告は,原告の競合会社であるアシーネの取締役である被告Bが原告の利益になるような行為をするはずはないと主張するが,被告Bが被告Aの元上司であるという両者の関係を考慮すると,被告Bが原告 を退職した時期と近接した時期において,被告Aから原告のトラック営業に関する助言を求められた場合,これに応じて助言を与えたとしても不自然ではないというべきである。 また,原告は,原告が北海道車輛販売に販売した車両の価格は市場価格より安価であると主張するが,証拠(甲28,乙8~13)によれば,同 各車両の販売価格が市場価格より安価であるということはできず,また,その販売価格は仕入価格より高額で原告に利益をもたらしたものと認められる。 さらに,原告は,アシーネが北海道車輛販売等を通じて通常より安価で原告車両を入手したと推測されるなどと主張するが,原告の主張する同事 実を裏付ける証拠はない。 オ以上のとおり,被告Aの行為は「不正の手段による」ものとは認められないので,不競法2条1項4号の規定する不正競争行為には該当 どと主張するが,原告の主張する同事 実を裏付ける証拠はない。 オ以上のとおり,被告Aの行為は「不正の手段による」ものとは認められないので,不競法2条1項4号の規定する不正競争行為には該当せず,被告Bの行為についても,不正取得行為の介在が認められないので,同項5号所定の不正競争行為に当たらない。 (3) 本件ID等情報の開示等についてア被告Aが,平成29年10月3日及び同年12月27日,被告Bからの依頼を受け,本件ID等情報をLINEにより送付したことについては,当事者間に争いがない。 イ原告は,被告Aが被告Bに対して本件ID等情報を送信した行為が窃取 等と同等の違法性を有し,「不正の手段」による開示に当たると主張する。 しかし,被告Aが,本件ID等情報にアクセスし,これを利用する権限を有していたことについては,当事者間に争いがないところ,被告Aがその権限に基づいて取得した本件ID等情報をLINEにより被告Bに送付したとしても,その行為が,窃取,詐欺,強迫と同等の違法性を有するということはできない。 ウ原告は,被告Bは本件ID等情報をアシーネの営業に使用するために取得し,実際にアシーネの営業に使用したのであって,被告Aもそのことを知っていたと主張する。 しかし,被告Bが本件ID等情報をアシーネの営業のために使用したと認めるに足りる証拠はなく,被告Aが,被告Bが同情報をアシーネの営業 に使用すると知りつつ,これを被告Bに送付したことをうかがわせる証拠も存在しない。 また,原告は,被告Aから下取り価格の相談を受けていたのであれば,アライオートオークションの使用方法を被告Aに教えれば足りると主張するが,被告Bが,被告Aに対して車両の査定価格について また,原告は,被告Aから下取り価格の相談を受けていたのであれば,アライオートオークションの使用方法を被告Aに教えれば足りると主張するが,被告Bが,被告Aに対して車両の査定価格について助言するに当 たり,類似する車両の価格を調査し,需要を適切に判断するため,アライオートオークションのサイトに自らアクセスする必要があると考えたとしても,不自然ということはできない。 さらに,原告は,アシーネにおいてアライオートオークションのパスワード等を取得していたのであれば,原告が保有する本件ID等情報を被告 Aから入手する必要はないと主張するが,本件ID等情報の送付時期が被告Bの退職後まもない時期であることに照らすと,被告Bは本件ID等情報の送付を受けた当時,アシーネにおいてアライオートオークションのID等を取得しておらず,それゆえに,被告Aから本件ID等情報を入手する必要があったものと考えるのが合理的である。 エ以上のとおり,被告Aの行為は「不正の手段による」ものとは認められ ないので,不競法2条1項4号の規定する不正競争行為には該当せず,被告Bの行為についても,不正取得行為の介在が認められないので,同項5号所定の不正競争行為に当たらない。 (4) 以上のとおり,被告Aによる本件情報の取得又は開示は,不競法2条1項4号に規定する「窃取,詐欺,強迫その他の不正の手段」によるものである ということはできず,被告Bの行為も,前提となる不正取得行為が存在しないので,同項5号所定の不正競争行為に当たらない。 3 争点3(不競法2条1項7号及び8号該当性(その他の要件))について(1) 前記2で判示したとおり,被告Bが被告Aから,本件情報を取得したのは,被告Bが原告の退職に際して関係者に退職の挨拶をす 3 争点3(不競法2条1項7号及び8号該当性(その他の要件))について(1) 前記2で判示したとおり,被告Bが被告Aから,本件情報を取得したのは,被告Bが原告の退職に際して関係者に退職の挨拶をするため,あるいは,被 告Aが,被告Bから,原告の保有する車両の売却先や原告が下取りする車両の査定価格について助言を受けるためであり,これらの行為は,被告Aによる原告の業務遂行の一環又は上司・部下の関係にあった被告ら間の引継ぎの一環として行われたものであり,原告の利益になるものであったということができる。 そうすると,被告Aによる被告Bに対する本件情報の開示が,不競法2条1項7号に規定する「不正の利益を得る目的」又は原告に「損害を与える目的」によるものであるとは認められない。 (2) したがって,被告Aによる本件情報の開示は,不競法2条1項7号には該当せず,被告Bの行為も,前提となる不正開示行為が存在しないので,同項 8号所定の不正競争行為に当たらない。 4 争点4(秘密保持義務違反の有無)について(1) 被告Aについてア原告は,被告Aは,原告に対し,①「退職又は解雇後も,在職中に知り得た業務上の機密事項を他に漏ら」さない(就業規則101条1項),② 「会社の機密事項について会社の許可なく社内外を問わず他人に漏えい 又は口外しない」(同項28号),③「業務上の秘密事項については,…他に漏ら」さない(入社誓約書3項)旨の秘密保持義務を負っていたところ,同被告が本件情報を被告Bに開示した行為は同義務に違反すると主張する。 しかし,原告の就業規則等にいう「業務上の機密事項」,「会社の機密 事項」又は「業務上の秘密事項」についての定義規定は置かれていないところ,これらの文 は同義務に違反すると主張する。 しかし,原告の就業規則等にいう「業務上の機密事項」,「会社の機密 事項」又は「業務上の秘密事項」についての定義規定は置かれていないところ,これらの文言の通常の意義に照らすと,少なくとも,不競法2条6項の「営業秘密」の要件を充足するものであることを要すると解するのが合理的かつ相当である。 前記のとおり,本件情報は,いずれも秘密として管理されていたと認め ることはできず,また,本件ID等情報は有用であるとも認められないので,同項の「営業秘密」に該当しない。 そうすると,被告Aによる本件情報の開示行為が上記の就業規則等に定められた秘密保持義務に違反するということはできない。 イ原告は,被告Aは,原告に対し,「業務に関わる記録,書類,備品等又 はそれらの複写物を会社の許可なく秘匿し,会社内から持ち出し,他人へ開示し又は他人へ貸与しない」(同73条1項27号)との秘密保持義務を負っていたところ,被告Aによる本件情報の開示行為は,同義務に違反すると主張する。 しかし,前記のとおり,被告Bが被告Aから本件情報を取得したのは, 被告Bが原告の退職に際して関係者に退職の挨拶をするため,あるいは,被告Aが,被告Bから,原告の保有する車両の売却先や原告が下取りする車両の査定価格について助言を受けるためであり,これらの行為は,被告Aによる原告の業務遂行の一環又は上司・部下の関係にあった被告ら間の引継ぎの一環として行われたものであり,原告の利益になるものであると いうことができる。 このような原告の業務遂行の一環又は引継ぎの一環として行われた行為については,仮にそのために元上司の退職後に業務に関わる記録,書類を開示したとしても, いうことができる。 このような原告の業務遂行の一環又は引継ぎの一環として行われた行為については,仮にそのために元上司の退職後に業務に関わる記録,書類を開示したとしても,会社の黙示の許可があると解するのが合理的であり,又は,このような目的で行われた行為については,被告Aの元上司である被告Bは,上記規定の「他人」には該当しないというべきである。 仮に,被告Aによる本件情報の開示が,就業規則73条1項27号に該当するとしても,当該行為は原告の利益になるものであり,実際のところ,被告Bの助言に基づいて行われた北海道車輛販売に対する車両の売却により原告は利益を得ているのであるから,原告に損害は発生しておらず,他に,被告Aの行為により原告に損害が生じたと認めるに足りる証拠はない。 (2) 被告Bについて原告は,被告Bは,原告に対し,就業規則101条1項及び退社時の誓約書(甲4)1項に基づき,「在職中に知りえた業務上の秘密事項」等について原告退職後も秘密保持義務を負っており,本件情報の取得は同義務に違反すると主張するが,上記(1)アと同様の理由から,被告Bによる本件情報の取 得行為が上記の就業規則等に定められた秘密保持義務に違反するということはできない。 (3) 以上のとおり,被告らの行為が,原告の就業規則等に定められた秘密保持義務に違反するとは認められない。 5 結論 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 主文 り判決する。 理由 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 齊藤敦

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