平成11(行ヒ)44 源泉所得税納税告知処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年6月24日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成4(行コ)133
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判決文本文10,365 文字)

主文 1 本件上告を棄却する。 2 上告費用は上告人の負担とする。 3 原判決の当事者の表示中「控訴人東村山税務署長事務承継者四谷税務署長赤羽修」とあるのを「控訴人東村山税務署長石毛昭司」と更正する。 理由 上告代理人山崎潮ほかの上告受理申立て理由について 1 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1)事務用機器の製造販売等を業とする株式会社である被上告人は,昭和57年ころから,被上告人の子会社である米国法人甲(以下「米国子会社」という。)に対し,自己の開発した技術を用いて日本国内で製造したロータリー・ホイール・インパクト・プリンター及び電子タイプライター(以下,これらを併せて「本件装置」という。)を販売し,米国子会社は,輸入した本件装置を米国内及び中南米地域において販売していた。 (2)米国カリフォルニア州に本社を置き,プリンター製造等を業とする会社である乙(以下「乙社」という。)は,昭和51年6月28日,米国において,プリンター技術に関する特許番号第4118129の特許権(以下「本件米国特許権」という。)を取得し,同58年11月17日当時,英国等6か国においてその対応特許権を有していた。 (3)乙社は,昭和50年7月1日,我が国において,本件米国特許権に係る発明と同一- 1 -の発明又はその一部についての特許出願(以下「本件出願」という。)をし,これについて同51年3月3日に出願公開がされた(その後,同59年9月13日に本件出願について出願公告がされ,同63年1月14日に本件出願に係る発明について特許権の設定登録がされた。)。 また,乙社は,同57年11月27日,本件出願の分割出願 (その後,同59年9月13日に本件出願について出願公告がされ,同63年1月14日に本件出願に係る発明について特許権の設定登録がされた。)。 また,乙社は,同57年11月27日,本件出願の分割出願として,本件米国特許権に係る発明の一部についての特許出願をした(その後,同出願について,同59年4月12日に出願公開がされた。)。 (4)乙社は,米国内のプリンター市場における自社製品の市場占有率が被上告人を含む日本企業のプリンター製品の販売拡大等により低下した事態に対処するため,昭和58年3月から同59年1月にかけて,米国国際貿易委員会に対し,上記の日本企業を相手方として,そのプリンター製品の米国内での販売は,本件米国特許権を侵害するものであり,不公正な競争に当たり,米国内の産業に実質的な損害を与えているなどと主張して,米国関税法337条に基づき,当該製品の米国内への輸入差止めの申立てをした。被上告人に対する申立て(以下「本件申立て」という。)は,同58年6月にされた。 (5)乙社は,被上告人に対し,本件申立てに関して,被上告人が乙社にロイヤルティ名目の金員を支払うこと,乙社は,本件申立てを取り下げ,以後本件米国特許権に関して被上告人に対する訴訟等を提起しないことなどを骨子とする和解の申入れをした。乙社の主たる関心は,米国内のプリンター市場における自社製品の市場占有率の維持ないし本件米国特許権に基づく利益の確保にあった。被上告人は,当時,いわゆる日米貿易摩擦が激化しており,米国国際貿易委員会が米国企業の保護を重視した決定をするおそれが強く,本件申立てが認められて本件装置の米国への輸出が- 2 -差し止められることになれば,極めて大きな影響を受けることとなることなどを考慮し,和解交渉に応ずることにした。 被上告人と乙社は,昭和5 ,本件申立てが認められて本件装置の米国への輸出が- 2 -差し止められることになれば,極めて大きな影響を受けることとなることなどを考慮し,和解交渉に応ずることにした。 被上告人と乙社は,昭和58年10月25日及び26日の両日,和解内容について交渉をした。同交渉では,和解条項の案については,既に乙社が他の日本企業と締結していた和解契約に依拠することとされ,現実に協議の対象となったのは,① 既に米国において販売された本件米国特許権侵害製品に係るロイヤルティの額,②今後米国に輸出することができる本件装置の台数及び③これに係る将来のロイヤルティの算出割合及び前払金の額であった。乙社は,①については23万米ドル,②については,本件装置のうちプリンターは50万台,③については,本件米国特許権の特許請求の範囲に対応して本件装置の正味販売価格に一定の割合を乗じて算出されるランニングロイヤルティの支払と,当該ロイヤルティとして57万米ドルの前払を提案した。これに対し,被上告人は,①について19万米ドルに減額させたほかは,乙社の提案を受諾することとした。その際に,我が国において乙社が本件米国特許権の対応特許権を有するかどうかなどの点は,話題にも協議の対象にもならなかった。 (6)被上告人は,昭和58年11月17日,乙社との間で,概略次の内容の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 ア本件契約は,乙社と被上告人が,本件申立てを終結させ,乙社の有する本件米国特許権に関する上記2社の間のすべての未解決の紛争を解決するために締結するものである(前文F)。 イ乙社は,被上告人及びその関連会社に対し,本件契約の発効日を開始日とし,本件契約で定めるロイヤルティが支払われることを条件として,本件米国特許権- 3 -に基づき,本件装置を世界中 文F)。 イ乙社は,被上告人及びその関連会社に対し,本件契約の発効日を開始日とし,本件契約で定めるロイヤルティが支払われることを条件として,本件米国特許権- 3 -に基づき,本件装置を世界中で製造し又は製造させ,かつ,本件装置のうちプリンターを合計50万台,タイプライターを台数の制限なしに,直接又は間接に,米国内で使用,リース又は販売(以下「販売等」という。)をする非独占の限定的な実施権を許諾する(2条)。 ウ乙社は,その名において及びその関連会社に代わって,本件契約の発効日以前に発生した本件米国特許権の侵害に関するすべての請求から,被上告人及びその関連会社並びにそれらの販売代理店,ディーラー,代理人及び顧客を解放し,免訴し,永遠に免責し,かつ,本件契約の発効日以前に米国に輸入され,又は米国内で製造,販売等がされた本件装置についていかなる行政上又は司法上の訴訟も提起しないことに同意する(4条)。 エ乙社及びその関連会社は,被上告人及びその関連会社並びにそれらの販売代理店,ディーラー,代理人及び顧客に対し,本件装置の製造,販売等について,乙社又はその関連会社が1988年11月17日までに出願するあらゆる国における特許(ただし,本件米国特許権を除く。)で乙社又はその関連会社が所有し,又は支配しているものに基づく権利主張をしない(5条(a)項)。 被上告人及びその関連会社は,乙社及びその関連会社並びにそれらの販売代理店,ディーラー,代理人及び顧客に対し,そのプリンター及びタイプライターの製造,販売等について,被上告人又はその関連会社が1988年11月17日までに出願するあらゆる国における特許で被上告人又はその関連会社が所有し,又は支配しているものに基づく権利主張をしない(5条(b)項)。 オ被上告人が販売する本件装置で米国内 988年11月17日までに出願するあらゆる国における特許で被上告人又はその関連会社が所有し,又は支配しているものに基づく権利主張をしない(5条(b)項)。 オ被上告人が販売する本件装置で米国内において販売等に供されるものについては,本件契約で定める条件に基づき,単一のロイヤルティが支払われなければならない。被上告人の関連会社が米国内において販売等に供される本件装置を販売する場合には,その販売は,被上告人による販売として取り扱われるものとする。米- 4 -国外への積換えのため米国内に保税で入ったものについては,ロイヤルティは発生しないものとする。ロイヤルティは,本件装置について請求書が発行される場合はその発行の時に発生し,請求書が発行されない場合は船積みされた時に発生する。 本件契約の下で行われる支払は,本件契約に基づく本件申立ての終結と本件米国特許権に関する両当事者間の未解決のすべての紛争の解決に対する対価である。上記支払は,日本国の源泉徴収に係る国税の控除なしに行われるものとする(6条(a)項)。 カ被上告人は,乙社に対し,76万米ドルを,1983年12月15日までに40万米ドル,1984年4月2日までに36万米ドルの2回に分けて支払う。この金額のうち57万米ドルは,本件契約6条(c)項に基づいて支払うものとされているロイヤルティに充当される前払金として取り扱われるものとする。上記の76万米ドルは,本件申立てが本件契約で意図したとおり終結されない場合を除き,返還されないものとする(6条(b)項)。 キ被上告人は,乙社に対し,本件契約の発効日から,本件装置の正味販売価格につき本件米国特許権の特許請求の範囲に対応する所定の割合による金額のロイヤルティを支払うことに同意する(6条(c)項柱書き)。 ク本件装置の正味販売価格は 約の発効日から,本件装置の正味販売価格につき本件米国特許権の特許請求の範囲に対応する所定の割合による金額のロイヤルティを支払うことに同意する(6条(c)項柱書き)。 ク本件装置の正味販売価格は,被上告人の送り状記載の価格又は被上告人の工場での引渡し時価格とするが,本件装置の基本型のものについては内陸輸送費を差し引いた日本国の空港又は海港での引渡し時価格とする(7条)。 ケ被上告人は,乙社に対し,本件米国特許権の実施権の許諾期間中,各年の半期ごとに,その最終日から60日以内に,当該半期の間に米国向けに輸出した本件装置の全数量,その正味販売価格,ロイヤルティの計算等を示した報告書で被上告人の権限ある代表者が証明したものを提出し,本件契約6条に従い支払期限の到来したロイヤルティを乙社の指定する銀行の口座に電信送金して支払う(8条)。 - 5 -コ本件契約は,1983年11月17日から効力を生じ,別に規定する早期解約が行われない限り,本件米国特許権の存続期間が満了するまで有効とする。ただし,被上告人が本件契約6条(b)項に規定された支払を行った場合には,本件契約5条の規定の効力は残存するものとする(11条)。 サ本件契約6条に従って本件装置に関してロイヤルティを支払う被上告人の義務は,本件米国特許権の特許請求の範囲が無効とされた日に,所定の内容に従って停止又は減額されるものとする(16条)。 (7)被上告人は,乙社に対し,本件契約6条(b)項に基づき,源泉徴収税額を控除することなく,昭和58年12月に40万米ドルを,同59年4月に36万米ドルをそれぞれ支払った(以下,これらの金員を併せて「本件各金員」という。)。 (8)上告人は,本件各金員はその支払を受ける外国法人である乙社が所得税の納税義務を負う所得税法161条7号イ 万米ドルをそれぞれ支払った(以下,これらの金員を併せて「本件各金員」という。)。 (8)上告人は,本件各金員はその支払を受ける外国法人である乙社が所得税の納税義務を負う所得税法161条7号イ(平成14年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)所定の国内源泉所得に該当するとして,昭和60年6月29日,被上告人に対し,本件各金員の支払をする者として負う本件各金員に係る各所得税の徴収納付義務につきそれぞれ納税告知及び不納付加算税賦課決定(以下,これらを併せて「本件各処分」という。)をした。 2 本件は,被上告人が,上告人に対し,本件各金員は国内源泉所得に当たらないと主張して,本件各処分の取消しを求める事案である。 3 所得税法は,日本国内において業務を行う者から受ける工業所有権その他の技術に関する権利,特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料で当該業務に係るものを国内源泉所得とし(161条7号イ),外国法人がその支払を受けるときは,同法により所得税を納める義務がある旨規定している(昭和- 6 -62年法律第96号による改正前の5条4項)。 前記事実関係等によれば,本件契約の目的は,乙社が被上告人の米国内における本件装置の販売拡大を防ごうとして米国内への本件装置の輸入差止めを求める本件申立てを行ったことを受けて,被上告人が乙社との間の本件米国特許権(これは米国内においてのみ効力を有するものである。)に関する紛争を解決して本件装置を引き続き米国に輸出することを可能にすることにあり,その内容は,①乙社が,被上告人及びその関連会社(米国子会社はこれに当たる。)に対し,米国内における本件装置の販売等について一定の限度で本件米国特許権の実施権を許諾するほか,本件契約の発効日以前に米国内で販売等がされた本件装置についても 関連会社(米国子会社はこれに当たる。)に対し,米国内における本件装置の販売等について一定の限度で本件米国特許権の実施権を許諾するほか,本件契約の発効日以前に米国内で販売等がされた本件装置についても本件米国特許権の侵害を理由とする請求等をしないことを約し,②被上告人が,乙社に対し,被上告人又はその関連会社により本件契約の発効日以前に米国内で販売等がされ,及び同日以降に販売等がされる本件装置に係るロイヤルティを支払うことを骨子とするものであるということができる。そして,本件各金員のうち57万米ドルは,本件契約の発効日を開始日として,被上告人及びその関連会社が本件米国特許権に基づき本件装置を直接又は間接に米国内で販売等をする非独占の限定的な実施権の許諾を受ける条件となるロイヤルティの前払金として支払われたものであり,米国内で販売等がされる本件装置に係る本件米国特許権の実施料として支払われたものと解される。また,本件各金員のうち19万米ドルは,本件契約の発効日以前に米国内で販売等がされた本件装置に係る本件米国特許権の実施料として支払われたものと解される。 本件契約中には,乙社は,被上告人が本件契約で定めるロイヤルティを支払うことを条件として,被上告人及びその関連会社が本件米国特許権に基づき本件装置を世界中で製造し又は製造させることを許諾する旨の文言(2条)や,本件各金員は,本件申立ての終結と本件米国特許権に関する被上告人と乙社との間の未解決の紛- 7 -争の解決に対する対価である旨の文言(6条(a)項)があるが,これらは,上記の本件契約の本体を成す合意に付随するものであるにとどまり,本件各金員が本件米国特許権の米国内における実施料として支払われたものであるという上記判断を左右するものではない。また,乙社及びその関連会社が,その所有し,又 成す合意に付随するものであるにとどまり,本件各金員が本件米国特許権の米国内における実施料として支払われたものであるという上記判断を左右するものではない。また,乙社及びその関連会社が,その所有し,又は支配する本件米国特許権に対応する特許権に基づく権利主張をしない旨の条項(5条(a)項)も,本件契約においてロイヤルティの権原とされた本件米国特許権を除いたB社及びその関連会社が所有し,又は支配するその対応特許権に関するものであり,これと同条(b)項に定める被上告人及びその関連会社が所有し,又は支配する特許権との間において,相互に無償で権利主張をしない旨の合意をしたものと解されるものであるから,上記判断を左右するものではない。なお,被上告人は,自らは本件装置を米国内に輸入して米国内で販売等をしておらず,本件米国特許権の侵害を問われる立場にはない者であるが,その関連会社である米国子会社が米国内において本件装置の販売等を行うことができなければ経済的打撃を受けるという関係にあり,米国子会社の米国内における上記事業を可能にするために被上告人自ら本件契約を締結したものということができるから,これをもって特に異とすべきものとはいえない。 4 【要旨】以上のとおり,本件各金員は,米国内における本件装置の販売等に係る本件米国特許権の使用料に当たるものであり,被上告人の日本国内における業務に関して支払われたものということはできない。そうすると,本件各金員は,所得税法161条7号イ所定の国内源泉所得に当たる使用料ではないというべきであるから,乙社には本件各金員に係る所得税の納付義務はなく,したがって,被上告人には当該所得税の徴収納付義務はない。被上告人の上記徴収納付義務を否定し,本件各処分を違法であるとした原審の判断は,結論において正当である。論旨は採用する 得税の納付義務はなく,したがって,被上告人には当該所得税の徴収納付義務はない。被上告人の上記徴収納付義務を否定し,本件各処分を違法であるとした原審の判断は,結論において正当である。論旨は採用することができない。 - 8 - 5 なお,原判決の控訴人の表示に明白な誤りがあったので,民訴法257条1項により主文第3項のとおり更正する。 よって,裁判官甲斐中辰夫,同島田仁郎の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 裁判官甲斐中辰夫,同島田仁郎の反対意見は,次のとおりである。 私たちは,本件各金員が所得税法161条7号イの使用料に当たらないとする多数意見に賛同することはできない。その理由は次のとおりである。 1 原審が適法に確定した前記事実関係等によれば,被上告人は,我が国において本件装置を製造してこれを被上告人とは別個独立の法人格を有する米国子会社に販売し,米国子会社がこれを輸入して米国内において販売等をしているというのである。そうすると,被上告人は,我が国において本件装置の製造,販売を業としている者であるが,米国内における本件装置の販売等を業とする者ではなく,米国内においてのみ排他的効力を有する本件米国特許権を直接侵害する立場にあるのは,米国子会社であって,被上告人ではない。 2 本件契約は,本件米国特許権に関する乙社と被上告人との間のすべての未解決の紛争を解決するために合意されたものである (前文F)ところ,本件契約中の上記未解決の紛争に当たる事項に関する条項は,①乙社は,被上告人及びその関連会社に対し,被上告人が本件契約で定めるロイヤルティを支払うことを条件として,本件米国特許権に基づき,本件装置を世界中で製造し,又は製造させ,かつ,本件装置を米国内で直接又は間接に販売等をする非独占の限定的な実施 告人が本件契約で定めるロイヤルティを支払うことを条件として,本件米国特許権に基づき,本件装置を世界中で製造し,又は製造させ,かつ,本件装置を米国内で直接又は間接に販売等をする非独占の限定的な実施権を許諾することを定める2条,②乙社は,被上告人及びその関連会社等に対し,本件契約の発効日以前に発生した本件米国特許権の侵害に関するすべての請求について免責等をし,本件契約の発効日以前に米国に輸入され,又は米国内で製造,販売等がされた本件装置についていか- 9 -なる訴訟も提起しないことを定める4条,③乙社及びその関連会社は,被上告人及びその関連会社等に対し,本件装置の製造,販売等について,本件米国特許権のあらゆる国における対応特許権に基づく権利主張をしないことを定める5条(a)項,④本件契約の下で行われる支払は,本件契約に基づく本件申立ての終結と本件米国特許権に関する両当事者間の未解決のすべての紛争の解決に対する対価であることを定める6条(a)項である。これらの規定によれば,本件契約において解決を図るものとした乙社と被上告人との間の未解決の紛争というのは,本件米国特許権を直接侵害する米国内における本件装置の販売等に係るものに限らず,米国以外の国における本件装置の製造及び米国以外の国で製造した本件装置を米国内での販売等に供するために販売することに係るものも含むものであることが明らかである。すなわち,本件米国特許権自体は,多数意見が指摘するように,米国内においてのみ効力を有するものであるが,上記未解決の紛争は,本件米国特許権を直接侵害するものに限られず,本件米国特許権の内容を成す発明ないし技術の使用に関して生ずる紛争全般を意味するものと解される。 3 本件契約2条及び6条(a)項によれば,被上告人が乙社に対し,上記未解決の紛争を解決 に限られず,本件米国特許権の内容を成す発明ないし技術の使用に関して生ずる紛争全般を意味するものと解される。 3 本件契約2条及び6条(a)項によれば,被上告人が乙社に対し,上記未解決の紛争を解決する対価としてロイヤルティを支払うものとされているところ,当該ロイヤルティの具体的内容を定める条項は,①米国内での販売等の目的で米国に輸出等をするために,被上告人が販売する本件装置について,本件契約に定める条件に基づき,単一のロイヤルティが支払われなければならないことを定める6条(a)項前段,②ロイヤルティは,本件装置について請求書が発行された時又はその船積み時に発生することを定める6条(a)項後段,③本件各金員の支払額及び支払時期並びにそのうち57万米ドルは,本件契約の発効- 10 -日以後に発生するロイヤルティに充当される前払金として取り扱われることを定める6条(b)項,④被上告人は,乙社に対し,本件契約の発効日から,本件装置の正味販売価格に対する本件米国特許権の特許請求の範囲に対応する所定の割合による金額のロイヤルティを支払うことを定める6条(c)項,⑤本件装置の正味販売価格は,被上告人の送り状価格,被上告人の工場での引渡し時価格又は日本国の空港若しくは海港での引渡し時価格とすることを定める7条,⑥ 被上告人は,乙社に対し,米国に向けて輸出した本件装置の全数量,その正味販売価格,ロイヤルティの計算等をした報告書を提出することなどを定める8条である。 これらの規定によれば,上記ロイヤルティは,被上告人が我が国において本件装置の製造,販売をしてこれを米国へ輸出するまでの行為をその対象としてとらえており,その額は,米国内における本件装置の販売等の数量及びその価格を基準とするものではなく,被上告人が我が国で販売した本件装置で米国内 販売をしてこれを米国へ輸出するまでの行為をその対象としてとらえており,その額は,米国内における本件装置の販売等の数量及びその価格を基準とするものではなく,被上告人が我が国で販売した本件装置で米国内での販売等に供されるものの数量及びその販売価格を基準としている。 4 上記1ないし3の事実関係等によれば,本件契約に定めるロイヤルティは,我が国において本件装置を製造し,米国子会社に対して販売,輸出をしているにすぎず,本来本件米国特許権を直接侵害する立場にない被上告人に対して,被上告人が我が国で本件装置を米国子会社に販売,輸出をした時点において,その販売価格及び数量を基準として発生し,米国内における販売を待たずに支払わなければならないとするものである。そうすると,上記ロイヤルティは,米国内における本件装置の販売等についての本件米国特許権の実施許諾に対する使用料ではなく,被上告人が我が国において本件装置を製造し,その販売をするについての本件米国特許権の内容を成す技術等の実施許諾に対する使用料であると解するのが相当である。そ- 11 -して,被上告人が上記ロイヤルティを支払うことにより,本件契約2条及び4条に基づき,米国子会社が米国内において本件装置の販売等をすることについても,本件米国特許権の侵害が問われないことになるのである。 5 原審が適法に確定した前記事実関係等によれば,本件各金員のうち,57万米ドルは本件契約の発効日以後に被上告人が我が国において製造して販売する本件装置で米国内で販売等に供されるものに係るロイヤルティの前払金として支払われたものであり,その余の19万米ドルは同日以前に被上告人が我が国で製造して販売した本件装置で米国内で販売等に供されたものに係るロイヤルティとして支払われたものと解されるものである。そうすると,本件各金 ものであり,その余の19万米ドルは同日以前に被上告人が我が国で製造して販売した本件装置で米国内で販売等に供されたものに係るロイヤルティとして支払われたものと解されるものである。そうすると,本件各金員は,我が国において本件装置の製造,販売を業とする被上告人が当該業務に関して所得税法161条7号イにいう工業所有権その他の技術に関する権利又は特別の技術による生産方式に準ずるものに対する使用料として支払ったものであり,国内源泉所得に当たるというべきである。 これと異なる原審の判断は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから,原判決を破棄した上で所要の裁判をすべきである。 (裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官横尾和子裁判官泉徳治裁判官島田仁郎裁判官才口千晴)- 12 -

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