昭和44(う)616 水産資源保護法違反、茨城県内水面漁業調整規則違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和44年10月20日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      一 各原判決を破棄する。      二 被告人A、同Bをそれぞれ罰金二〇、〇〇〇円に、同Cを罰金一 〇、〇〇〇円に各処する。      三 被告人らにおいて右罰金を完納すること

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判決文本文5,847 文字)

主文 一各原判決を破棄する。 二被告人A、同Bをそれぞれ罰金二〇、〇〇〇円に、同Cを罰金一〇、〇〇〇円に各処する。 三被告人らにおいて右罰金を完納することができないときは、いずれも金一、〇〇〇円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。 四被告人Aから、水戸地方検察庁で保管中の同庁昭和四三年領第九三〇号の一、三枚網(かさねさし網)一統を、同Bから同じく水戸地方検察庁で保管中の同庁昭和四三年領第九三一号の一、三枚網(かさねさし網)一統を、同Cから同じく水戸地方検察庁で保管中の同庁昭和四三年領第一〇四七号の一、流しさし網一統を、それぞれ没収する。 理由 本件各控訴の趣意は、いずれも水戸区検察庁検察官事務取扱検事藤井嘉雄作成名義の各控訴趣意書に記載してあるとおりであり、これらに対する答弁は、いずれも弁護人中村浩紹作成名義の各答弁書並びに答弁補充書(但し、被告人A、同Cにつき、被告人Bの分を各引用)のとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対して当裁判所は、次のとおり判断する。 各論旨は、被告人らに対する各公訴事実、すなわち、被告人らが各起訴状記載の日時、場所(いずれも茨城県下のa川)において、いずれも法定の除外事由がないのに、さけを漁獲しようとして、被告人A、同Bにおいては、船外機付漁船からかさねさし網を河中に流す方法により、被告人Cにおいては、さし網を河中に入れる方法により、それぞれ、さく河魚類であるさけを採捕したものであるとの、水産資源保護法(以下、単に法という。)二五条、三七条四号違反(なお、被告人A、同Bについては、茨城県内水面漁業調整規則《以下、単に規則という。》二七条、三七条一項一号違反の各事実につき、各原判決が無罪を言い渡したことに 単に法という。)二五条、三七条四号違反(なお、被告人A、同Bについては、茨城県内水面漁業調整規則《以下、単に規則という。》二七条、三七条一項一号違反の各事実につき、各原判決が無罪を言い渡したことに対し、各原判決の、法及び規則にいう「採捕」の意義の解釈、適用に誤りがあり、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであると主張する。 よつて、各所論にかんがみ、考察検討するに、各原判決は、無罪理由の前提として、被告人A、同Bについては、それぞれ、さけを漁獲する目的で禁止漁具であるかさねさし網を河中に流し、採捕行為をしたが、間もなく県の取締り職員に発見され、さけ等の漁獲物を得るに至らず、また右魚類を網にからませるなどして現実にこれを自己の支配内に入れる状態を生じさせるにも至らなかつたものと認め、被告人Cについても、さけを漁獲する目的でさし網を河中に張つたが、上潮で綱が流れなかつたため、間もなく網を揚げ、さけその他の魚類を獲らずに舟付場に戻り、さけを自己の支配内に入れる状態を生じさせるにも至らなかつたものと認めたうえ、右被告人らの各行為は、いずれも採捕の未遂行為にすぎないものであつて、各起訴状記載の罰条に該当するものでなく、法及び規則中、他に本件各行為を処罰する規定は存しないとして、前掲各公訴事実につき無罪の言渡しをしたものであり、その理由の骨子とするところは、法及び規則にいう「採捕」とは、現実に魚類を捕捉するか(「採捕」の日常用語的意味)、捕捉しうる状態において実力支配内に帰属するに至らしめた(目的論的概念構成)ことを意味すると解するのが相当であるところ、右解釈によれば、被告人らの前示各行為は、いまだいずれも「採捕」に該当しないものである、右解釈の限界を超えて、取締りの徹底ないし便宜の観点から、右「採捕」の意義につき、現実に魚類を自己の支配内 ろ、右解釈によれば、被告人らの前示各行為は、いまだいずれも「採捕」に該当しないものである、右解釈の限界を超えて、取締りの徹底ないし便宜の観点から、右「採捕」の意義につき、現実に魚類を自己の支配内に入れると否とを問わず、採捕の方法を行ない、魚類を捕捉しうる可能性を生ぜしめること、すなわち採捕行為をすることであると解するのは、拡張解釈の域を超え、罪刑法定主義の原則に抵触する、というにあるものと認められる。 しかしながら、法二五条の立法趣旨が産卵のため内水面にさく上するさけの繁殖の保護をはかることであり、規則二七条の立法趣旨もまた、内水面における水産資源の保護培養をはかるにあることは、縷説を要しないところであつて、右立法趣旨に即した目的論的見地に立つてみると、各原判決の「採捕」の意義に関する前記解釈は、字句の厳格解釈に執するの余り、狭きに過ぎるものと認めざるを得ない。右解釈にいう「魚類を捕捉しうる状態において実力的支配内に帰属するに至らしめた」とは、本件についていえば、さけを被告人らの使用した網にからませること(一旦、網にからまつた魚類が逸走することの稀有であることは、当審における事実取調の結果に徴し、明らかである。)を指すものと解されるが、そもそも被告人らのなしうる行為としては、それぞれの網を水中に張ることだけであつて、さけその他の魚類が網にからむかどうかは、人為の及ばない全くの偶然事であり、また、当審における事実取調の結果によれば、取り締る側からすると、魚類が網にからまつたかどうかを確認することは、不可能であるとはいえないまでも、甚だ困難であると認めざるを得ないのである。そして、原判決の解釈によれば、いかに大規模に、かつ、長時間網を水中に張つていても、魚類が網にからまつたことを確認しないかぎり検挙もできず、また、一尾も網にからまない ると認めざるを得ないのである。そして、原判決の解釈によれば、いかに大規模に、かつ、長時間網を水中に張つていても、魚類が網にからまつたことを確認しないかぎり検挙もできず、また、一尾も網にからまない以上、未遂として処罰の対象とならないのに、小規模、短時間の採捕行為であつても、一尾でも網にからめば、既遂として検挙ないし処罰の対象とされることとなるが、かような取締りを著しく困難にし、かつ、不公平な法適用という結果を招くことは、行政取締法規である法二五条または規則二七条所定の「採捕」についての解釈態度としてとうてい賛同できないところである。 <要旨>以上の理由により、右「採捕」とは、論旨の主張するとおり、本件被告人らの実行した、いわゆる採捕行為</要旨>を指称し、現実に魚類を採捕したか否か、あるいはこれを捕捉しうる状態において実力的支配内に帰属するに至らしめたか否かは問うところではないと解するのが相当であるというべきである。しかして、右解釈は、以下の判例、すなわち、法定の除外事由がないのに禁止漁具である釣を使用してさけの採捕行為をしたが、現実に採捕するに至らなかつた(旧)北海道漁業取締規則三五条違反の事案につき、同条所定の漁具漁法により水産動物を採捕すべき行為に出た場合は、現にこれを獲得したと否とにかかわらず、右漁具漁法による水産動物の採捕を禁じた右法条の犯罪を構成する旨判示した大審院昭和一三年三月七日判決(刑集一七巻三号一六九頁)を始めとして、右判決の援用する、(旧)漁業法施行規則四七条違反の事案につき水産動植物を疲憊又は斃死せしむべき有毒物を使用して水産動植物採捕の方法を行なつた以上、実際これを採捕したと否とを問わず右規則四六条(右「有毒物ヲ使用シテ水産動植物ヲ採捕スルコトヲ得ス」と規定)の犯罪を構成する旨判示した大審院大正一四年三月五 用して水産動植物採捕の方法を行なつた以上、実際これを採捕したと否とを問わず右規則四六条(右「有毒物ヲ使用シテ水産動植物ヲ採捕スルコトヲ得ス」と規定)の犯罪を構成する旨判示した大審院大正一四年三月五日判決(刑集四巻二号一二一頁)、さらには(旧)狩猟法一一条違反の事案につき、同条にいわゆる捕獲とは鳥獣を自己の実力支配内に入れようとする一切の方法を行なうことをいい、実際鳥獣を実力支配内に入れ得たか否かは、これを問わない旨判示した大審院昭和一八年一二月二八日判決(刑集二二巻二二号三二三頁)、被告人が猟銃を発射したが、現実に山鳩を捕獲しなかつた事案につき、(旧)狩猟法五条六項中、「前二項ノ期間内ニ非ザレバ狩猟鳥獣ヲ捕獲スルコトヲ得ズ」とあるのは、許可された期間外においては現実に狩猟鳥獣を捕獲する場合のみならず、一般に狩猟行為をも禁止する趣旨と解するのを相当とする旨判示した東京高等裁判所昭和二九年一二月三日判決(高裁刑集七巻一二号一七四三頁)の各趣旨とも一致するものであつて、判例上確立された見解であるということができる。もつとも、最高裁判所判例として、(旧)漁業法七〇条にいわゆる「採捕」の意義につき、水産動植物を採取捕獲する目的で有毒物または爆発物を使用した者が、現実にその動植物を取得占有するに至つた場合のみに止まらず、有毒物または爆発物の使用により動植物を疲憊斃死せしめ容易に捕捉しうる状態に置いた場合をも指称するものと解するのが相当であるとした昭和二八年七三一日判決(刑集七巻七号一六六六頁)及び同法六八条にいわゆる「採捕」の意義につき、魚類を捕獲するために爆発物を使用し、魚類を容易に捕捉しうる状態に置くにおいては該魚類は爆発物使用者の支配内に帰属するものということができるから、現実にこれを拾い集めて取得すると否とを問わず、右法条にいわゆる「水 めに爆発物を使用し、魚類を容易に捕捉しうる状態に置くにおいては該魚類は爆発物使用者の支配内に帰属するものということができるから、現実にこれを拾い集めて取得すると否とを問わず、右法条にいわゆる「水産動植物を採捕」したものと解するを相当とするとした昭和二九年三月四日決定(刑集八巻三号二二八頁)があつて、一見前掲各大審院判決と牴触しているかの観があるが、いずれも従来の大審院判例を変更する旨明言しているわけではなく、かつまた、事案は、いずれも右六八条の規定に違反して採捕したとされる水産動植物の所持罪(同法七〇条違反)にかかるものであつて、本件のような当該被告人の採捕行為それ自体が問題とされている案件とは異なるものであるので、当裁判所の上記判断の妨げとなるものではないと解する(なお、最近前記最高裁判所昭和二九年三月四日の決定の趣旨を援用して、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律一条ノ四の三項にいう「捕獲」の意義につき、本件各原判決と同旨の厳格解釈の立場をとつた福岡高等裁判所昭和四二年一二月一八日判決(高裁刑集二〇巻六号七九一頁)及びこれと立場を同じくする仙台高等裁判所昭和四三年一月二三日判決(高裁刑集二一巻二号九五頁)が相次いでおり、本件弁護人の答弁において利益に援用されているところであるが、当裁判所はこれに左袒することはできない。)。 以上の次第であるから、当裁判所の右判断と異なる法令解釈のもとに被告人らの無罪を言い渡した各原判決は、法令の適用を誤つたものであり、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明白であるから、各原判決は、この点においていずれも破棄を免かれない。論旨は、いずれも理由がある。 よつて、本件各控訴は理由があるから、刑訴法三九七条、三八〇条により、各原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書の規定に従い、さらに、次のとおり自判する。 (被 ない。論旨は、いずれも理由がある。 よつて、本件各控訴は理由があるから、刑訴法三九七条、三八〇条により、各原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書の規定に従い、さらに、次のとおり自判する。 (被告人Aに対する認定事実)同被告人に対する起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これを引用する。 (右認定事実に対する証拠の標目)省略(右認定事実に対する法令の適用)同被告人の所為中、法定の除外事実がないのに、内水面においてさく河魚類たるさけを採捕した点は、法二五条、三七条四号に禁止漁具たるかさねさし網により水産動植物を採捕した点は、規則二七条、三七条一項一号(なお、いずれも罰金等臨時措置法二条)に各該当し、以上は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるので、刑法五四条一項前段、一〇条に従い、重い前者の罪に対する刑に従い、所定刑中、罰金刑を選択し、所定罰金額の範囲内で量刑処断し、罰金不完納の場合の換刑処分につき、刑法一八条を、主文第四項掲記の該当物件(本件犯罪行為にかかる漁具で、同被告人の所有に属する。)の没収につき、規則三七条二項を、それぞれ適用する。 (被告人Bに対する認定事実)同被告人に対する起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これを引用する。 (右認定事実に対する証拠の標目)省略(右認定事実に対する法令の適用)被告人Aに対するものと同一であるから、これを引用する。 (被告人Cに対し、原判決の認定事項に追加して認定する事実)原判決の認定事実を除くほか、同被告人に対する起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これを引用する。 (右認定事実に対する証拠の標目)省略(同被告人に対する法令の適用)同被告人の所為中、法定の除外事由がないのに、内水面においてさく河魚類たるさけを採捕した点は、法二五条、三七条四号に、法定の (右認定事実に対する証拠の標目)省略(同被告人に対する法令の適用)同被告人の所為中、法定の除外事由がないのに、内水面においてさく河魚類たるさけを採捕した点は、法二五条、三七条四号に、法定の除外事由がないのに、さし網によつて水産動植物を採捕するにつき、知事の許可を受けなかつた点は、規則六条三号、三七条一項一号(なお、いずれも罰金等臨時措置法二条)に各該当し、以上は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるので、刑法五四条一項前段、一〇条に従い、重い前者の罪に対する刑に従い、所定刑中、罰金刑を選択し、所定罰金額の範囲内で量刑処断し、罰金不完納の場合における換刑処分につき、刑法一八条を、主文第四項掲記の該当物件(本件犯罪行為にかかる漁具で、同被告人の所有に属する。)の没収につき、規則三七条二項を、それぞれ適用する。 なお、刑訴法一八一条一項但書に従い、当審訴訟費用を被告人らに負担させないこととして、主文のとおり判決する。 (裁判長判事栗本一夫判事石田一郎判事藤井一夫)

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