平成17(ワ)1013 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年7月26日 千葉地方裁判所
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判決文本文14,296 文字)

- 1 -平成18年7月26日判決言渡平成17年(ワ)第1013号損害賠償請求事件主文 被告は,原告Aに対し,金614万7756円及びこれに対する平成17年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,金574万2756円及びこれに対する平成17年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを4分し,その3を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 この判決は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 原告ら(1)被告は,原告Aに対し,2654万2293円及びこれに対する平成17年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告は,原告Bに対し,2504万2293円及びこれに対する平成17年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)訴訟費用は,被告の負担とする。 (4)仮執行の宣言 被告(1)原告らの請求をいずれも棄却する。 (2)訴訟費用は,原告らの負担とする。 第2事案の概要本件は,原告らの子であるCが,被告(千葉市)の管理する動物公園内に設置されたサークル状ベンチから転落して,上記ベンチのサークルの内側に植え- 2 -られたツツジの枯れ枝がその後頭部に刺さって受傷した脳挫傷により死亡した事故について,原告らが,背もたれのないベンチを設置し,また,ベンチの内側に枯れ枝を密生させていた被告には公の営造物である上記公園の設置管理に,,,瑕疵があった旨主張して被告に対し国家賠償法2条の営造物責任に基づき原告Aにおいて相続したCの治療関係費,逸失利益及び慰謝料並びに固有の積極損害及び慰謝料の合計額 る上記公園の設置管理に,,,瑕疵があった旨主張して被告に対し国家賠償法2条の営造物責任に基づき原告Aにおいて相続したCの治療関係費,逸失利益及び慰謝料並びに固有の積極損害及び慰謝料の合計額2654万2293円,原告Bにおいて相続したCの治療関係費,逸失利益及び慰謝料並びに固有の積極損害及び慰謝料の合計額2504万2293円及びそれぞれこれらに対する上記事故発生日である平成17年4月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実(1)千葉市動物公園(以下「本件公園」という)は,昭和60年に開園。 した都市公園であり,草原ゾーン,鳥類・水系ゾーン,小動物ゾーン等,複数のテーマで分けられたエリアにより構成されている。子ども動物園(以下「本件動物園」という)は,そのうちの一つである。 。 本件動物園は,子供たちが動物と直接ふれあうことによって,動物への理解を深め,自然保護の精神を養い,自然科学への興味を育てることを目的とする,子供牧場,コンタクトエリア,小動物展示施設及び管理施設により構成される面積約7500平方メートルの区域である。 (2)本件事故について日時平成17年4月10日午後2時50分ころ場所千葉市若葉区源町280番地本件動物園態様Cが,本件動物園内に設置されていたサークル状のベンチ(「」。)(,以下本件ベンチというから内側に転落したなお事故に至る経過については争いがある。 。)- 3 -受傷内容Cは,本件ベンチの内側に植えられていたツツジの枝が後頭部に刺さったことにより,脳損傷等の傷害を負い,いわゆる植物状態となって,死亡した。 (3)本件事故現場の状況ア本件ベンチは,別紙図面のとおり,本件動物園内の「インコとゾウガメ ツツジの枝が後頭部に刺さったことにより,脳損傷等の傷害を負い,いわゆる植物状態となって,死亡した。 (3)本件事故現場の状況ア本件ベンチは,別紙図面のとおり,本件動物園内の「インコとゾウガメの森「ウシの運動場」及び「カピバラ舎」の間に設置されている。 」,イ本件ベンチはサークル状になっており,本件事故当時,その内側にツツジが植えてあった。 ウ本件ベンチは,細長い卵形で,長径は6.5m,短径は短い方が約2. 5m,長い方が約3.9mであり,背もたれはなく,檜製の座板が付けられたものである。座板は高さ約40cmの位置にあり,約45cmの奥行きがある。 エ被告は本件事故後,本件ベンチの内側に植栽されていたツツジを撤去した上で,草花に変更し,また,本件動物園内にある背もたれのない他のサークルベンチについても,その内側に植栽されていたツツジを撤去して草花に変更した。 (4)当事者等ア(ア)C(平成15年8月24日生)は,原告Aと原告Bの子であり,本件事故当時1歳7か月であった。 本件事故当時のCの身体は,身長81cm,体重11.5kg,胸囲47cm,頭囲47cmであり,通常の発育過程にあった。 (),()。 イ原告らの間には長女であるD平成6年9月28日生がいるイ被告は,本件公園を設置し,これを管理する地方公共団体である。 主要な争点本件の主要な争点は,Ⅰ本件事故に至る経過,Ⅱ被告の本件公園の設置管理の瑕疵の有無,Ⅲ本件事故と相当因果関係を有する原告らの損害額であ- 4 -り,主要な争点に関する当事者双方の主張は,以下のとおりである。 (1)争点Ⅰ(本件事故に至る経過)についてア原告らの主張Cは,原告B及びDの少し先を歩いて本件ベンチへ向かい,両手をつき右足を上げて本件ベンチに登り,一瞬座っ の主張は,以下のとおりである。 (1)争点Ⅰ(本件事故に至る経過)についてア原告らの主張Cは,原告B及びDの少し先を歩いて本件ベンチへ向かい,両手をつき右足を上げて本件ベンチに登り,一瞬座ったかに見えたが,深く腰掛けすぎたため後方に転落した。 イ被告の主張Cは,Dと本件ベンチに並んで座っていたが,その場から数メートル離れていた原告BがDに声を掛けたところ,CもDとともに降りようとした,,かDが本件ベンチから降りようとした際にその身体をCに接触させたかあるいはCがDの身体に寄りかかっていたかいずれかのために,バランスを崩して後方に転落した。 (2)争点Ⅱ(被告の本件公園の設置管理の瑕疵の有無)についてア原告らの主張(ア)本件ベンチに背もたれがないことa被告は,幼児が不測の行動を起こしても幼児の生命身体に危害を与えるような設備を設置してはならないところ,本件動物園は幼児とその家族を客として呼び込む施設でありながら,本件動物園内にある本件ベンチは背もたれがないために,これに座った幼児がいつでも仰向けに転落する危険の高いものであった。このように本件動物園に設置された本件ベンチは背もたれがなく,安全性を欠如しているから,本件公園の設置に瑕疵がある。 b本件ベンチ周辺は,幼児を対象とした展示もされており,被告はこの周辺に子供を積極的に呼び込んでいた。また,1歳前後の男児は,本件ベンチのようなベンチに一人で容易に登ることができるのであるから,保護者が同伴することは必要ではない。 - 5 -原告BがCを放置していたなどの事情はなく,家族が一緒に行動していた間に本件事故が発生したものであるから,Cが一人で本件ベンチに登っていたことがその本来の用法を逸脱したということにはならない。 (イ)本件ベンチの内側に植栽があったこと ,家族が一緒に行動していた間に本件事故が発生したものであるから,Cが一人で本件ベンチに登っていたことがその本来の用法を逸脱したということにはならない。 (イ)本件ベンチの内側に植栽があったことa被告は,幼児が不測の行動を起こしても幼児の生命身体に危害を与えるような設備を設置してはならないところ,本件ベンチの内側に密生していた枯れ枝は,幼児が仰向けに転落したときに身体に突き刺さる危険なものであった。このように本件ベンチの内側に密生していたツツジは危険な状態にあったから,本件公園の管理に瑕疵がある。 b上記(ア)のとおり,Cが一人で本件ベンチに登っていたことがその本来の用法を逸脱したということにはならない。 (ウ)本件ベンチに子供を連れてくる保護者等には,本件ベンチから子供が転落し後頭部に枯れ枝が突き刺さることまで予見できないから,原告Bに過失はない。 イ被告の主張(ア)本件ベンチに背もたれがないことについてa公の営造物が通常有すべき安全性とは,営造物の利用者の常識的秩序ある利用方法を期待した相対的安全性で足りるところ,本件においては,以下のとおり,上記利用方法から逸脱した方法で本件ベンチが利用されたものであり,本件べンチからの転落の危険は,利用者の守備範囲内で回避すべき問題である。 (a)ベンチの背もたれは,転落防止を目的として設置されるものではなく,長時間の休憩をとるという目的のために設置されるにすぎず,幼児用のベンチには背もたれが付いていなければならないという技術(構造)標準があるわけではなく,背もたれがないことに- 6 -よりこれを利用する幼児が転落するかもしれないという可能性は,保護者が同伴して監護することによって回避することが前提となっている。 ベンチはあくまでも休憩のための用具であり,子供が単独で遊ぶ 6 -よりこれを利用する幼児が転落するかもしれないという可能性は,保護者が同伴して監護することによって回避することが前提となっている。 ベンチはあくまでも休憩のための用具であり,子供が単独で遊ぶことを予定した遊具とは性質を異にするものであるところ,足腰が未発達で独力で行動する能力が肉体的にも精神的にも極めて未熟な1歳7か月程度の月齢の幼児であれば,本件動物園のような施設等においては,一般的に保護者同伴での行動が予定され,保護者がすぐに手をさしのべられる位置に付き添っていることが当然に期待される。1歳7か月の幼児であれば,背もたれのないベンチに腰掛けることはできても,相対的に頭部が重く,姿勢に安定性がないこともあって,転落のおそれがあることは容易に予想できることから,,。 同伴の保護者が膝に抱えるか常に付き添って座らせるべきである本件動物園において,小学生未満の幼児の入園料が無料であると,,いう事実は幼児を連れた保護者を経済的に優遇する裏返しとして同伴保護者の責任において幼児の安全には十分配慮することを期待していることをも意味しているのである。 (),,,,bまた本件ベンチは構造的に子供専用のベンチではなく幼児から高齢者まで入園者であれば誰でも利用することを予定しているところ,本件は,保護者に同伴された幼児という点に固有の事情が認められる利用者の一人にすぎないのであって,他の利用者と区別して,その安全性について特別の配慮をしなければならないものではない。 bなお,被告が背もたれのないベンチを配置したのは,サークル内の植栽が見えるようにという修景への配慮と,身長の低い幼児でも周囲の展示動物等がよく見渡せるようにという子供の目線の高さを考慮し- 7 -た結果であって,その設置は,本件動物園の目的を実現す ル内の植栽が見えるようにという修景への配慮と,身長の低い幼児でも周囲の展示動物等がよく見渡せるようにという子供の目線の高さを考慮し- 7 -た結果であって,その設置は,本件動物園の目的を実現するための有意義な配慮・工夫であり,決して偶然の所産ではない。 (イ)本件ベンチの内側に植栽があったことについてa本件ベンチの内側にツツジの植栽を配置したのは,本件動物園内の自然の景観を重視した,修景の確保の観点からであり,本件動物園の目的を実現するための工夫である。したがって,被告は美観保持上枯れ枝を取り除くことを心がけねばならないことはあっても,幼児の利用者の安全確保という観点から,幼児がベンチから転落することに備えて枯れ枝を除去する義務まではない。 ,,b仮にCに突き刺さったツツジの枝が枯れていたとしても被告には幼児の転落を予想して枯れ枝を事前に取り除く義務はなく,本件ベンチ内からツツジを撤去すべき義務もない。 (a)ツツジの樹形は根ぎわから多数の枝が分かれているため,もともと枯れ枝を選り分けにくく,本件事故が発生した新緑が出始め,,る前の時期は枯れ枝かどうかを見分けることが特に困難であってこの時期に園内の灌木から枯れ枝をすべて除去することは不可能であった。したがって,幼児が転倒又は転落するかもしれないという危険を抽象的に思い描き,その危険が考えられるすべての場所の植栽について撤去や枯れ枝の除去をしなければ安全性を欠くということはできない。 (b)設置管理者が植栽を撤去することを要するのは,植栽の周辺にある施設を本来の用法に従って利用した場合でも幼児が植栽の上に転倒や転落する危険性が具体的に予見できる場合に限られるべきであるところ,本件においては,上記(ア)aのとおり,保護者の付添いによる利用が本来の用法であるという って利用した場合でも幼児が植栽の上に転倒や転落する危険性が具体的に予見できる場合に限られるべきであるところ,本件においては,上記(ア)aのとおり,保護者の付添いによる利用が本来の用法であるというべきであるから,被告が上記撤去をしなかったことにより安全性を欠くことにはならな- 8 -い。 (c)本件事故状況から,Cが後方に転落したことは偶然であり,本件ベンチの前方に転落して脳挫傷等により死亡する可能性も同じ程度にあったことからすれば,転落場所が本件ベンチの前か後ろかによって転落の結果(転落による受傷の内容・程度)が変わるものではない。仮に前方に転落した場合に,前方に緩衝材を設置していないことをもって被告の設置管理責任が問われるはずはないから,転落の危険と転落の結果の点で差異のない後方へ転落した場合のみ被告の責任を問うのは不合理である。 (ウ)本件事故は原告Bの過失が招いたものである。 Cは生後1年7か月であり,身体の大きさの割には頭部が大きく,身体の重心が高く,足腰の弱い幼児であるところ,原告BはCを本件ベンチに監護者なしで一人で座らせ,足も地面に着かないなど非常に不安定で,転落の危険がある状態にさせた。そして,原告BがCの隣に座っていたDを呼び寄せようとすれば,Cは一人取り残されるのを心細く思って,姉の後を追おうとして,一人でベンチを降りようとするであろうことは親として容易に推測できたし,また,Cが一人でベンチを降りようとすれば転落の危険が大きいこともまた容易に予測できた。あるいは,Dが本件ベンチから降りようとすれば,側に座っていたCの身体に接触し,その結果Cがバランスを失する事態なども容易に予測できたはずであるのに,不注意にもDに呼びかけをしてCを転落させる危険を増大させたものであり,親として幼児を安全に監護すべき義務を著 の身体に接触し,その結果Cがバランスを失する事態なども容易に予測できたはずであるのに,不注意にもDに呼びかけをしてCを転落させる危険を増大させたものであり,親として幼児を安全に監護すべき義務を著しく怠った重大な過失がある。 (3)争点Ⅲ(本件事故と相当因果関係を有する原告らの損害額)についてア原告らの主張(ア)Cの損害4258万4586円- 9 -a治療関係費27万2137円(a)治療費8137円(b)付添費21万4500円1日6500円,入院期間33日分6500円×33日=21万4500円(c)入院雑費4万9500円1日1500円,入院期間33日分1500円×33日=4万9500円b逸失利益2171万2449円年収547万8100円(平成15年度男子学歴計全年齢平均賃金,生活費控除50%,ライプニッツ係数7.927)547万8100円×(1-0.5)×7.927=2171万2449円c慰謝料2060万円(a)入通院慰謝料60万円(b)死亡慰謝料2000万円(イ)原告A固有の損害525万円a葬儀費用150万円b慰謝料100万円c弁護士費用275万円(ウ)原告B固有の損害375万円a慰謝料100万円b弁護士費用275万円イ被告の主張原告の上記アの主張は争う。 第3争点に対する判断- 10 - 争点Ⅰ(本件事故に至る経過)について(1)証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告Bは,本件事故当日午前10時30分ころ(以下,本件事故当日については時刻のみを表示する,DとCを連れ,友人のEとその子供と。)ともに,本件公園を訪れ,本件動物園に入園した。 イ原告Bは,午後2時40分ころ,Cを抱きかかえて,Dと (以下,本件事故当日については時刻のみを表示する,DとCを連れ,友人のEとその子供と。)ともに,本件公園を訪れ,本件動物園に入園した。 イ原告Bは,午後2時40分ころ,Cを抱きかかえて,Dとともに,本件ベンチから約5m離れた本件動物園の「インコとゾウガメの森」の塀の前で,ゾウガメを見ていた。 ウそのころ,飼育されているゾウガメがふだんは歩かないのに珍しく歩いていたため「インコとゾウガメの森」の前には人だかりができていた。 ,,,,エ原告Bは午後2時50分ころ抱きかかえていたCを下ろしたところCとDは,本件ベンチに向かって歩き出し,原告Bが時々立ち止まりながら本件ベンチに向かい,原告Bが本件ベンチの約2,3m手前の位置にいるときに,Cは本件ベンチにたどり着き,本件ベンチに手をついて登り始めた。 そのころ,本件動物園飼育科職員のFは,本件ベンチから約15m離れた位置から本件ベンチ越しに「インコとゾウガメの森」の前の人だかりを見ていた。 オCは,5~10秒かけて,本件ベンチに足を乗せて,本件ベンチの外側,,を向くように身体を回転しながら座ったが座板に深く腰掛けすぎたため本件ベンチの内側に仰向けに転倒した。 カ原告Bが本件ベンチの内側に入ってCを抱きかかえたところ,Cはぐったりしており,原告Bは,Cの後頭部にツツジの枯れ枝が刺さっているのに気が付いた。 (2)ア被告は,CとDとが本件ベンチに並んで座っていたところ,離れた場所にいた原告BのDへの呼びかけによって,Cがバランスを崩して後方- 11 -に転落した旨主張し,Fの証言及びその作成の陳述書の記載にはこれに沿う部分がある。 ,,しかしCらが本件ベンチに座っているのをFが目撃したという場所は本件ベンチから約15m離れた位置である(上記(1)エ)上,子供がベン 言及びその作成の陳述書の記載にはこれに沿う部分がある。 ,,しかしCらが本件ベンチに座っているのをFが目撃したという場所は本件ベンチから約15m離れた位置である(上記(1)エ)上,子供がベンチに座っていること自体は何ら不自然なことではないから,FがCらの,,「」様子を注視していたとは認められずかえってインコとゾウガメの森の前にできた人だかりに意識が集中していたものと認められる。 このように,子供が並んで座っていたのを意識して見たわけではないことからすれば,FにはCらが座っていたこと自体の記憶が鮮明にあるわけ,,ではなく後にCが転落したのを目撃したことから振り返って考えてみて並んで座っていた子供がいたとすれば,その子供らはCとDではないかと推測した可能性があるから,Fの上記証言及び陳述書の記載部分を直ちに信用することはできない。 イ他方,原告Bは,Cが本件ベンチに登る間にも本件ベンチに向かってCについて行きながらその様子を見ていた旨供述し,原告Bの陳述書にも同様の記載があるが,Cが本件ベンチに登る5~10秒の間に成人である原告Bがわずか2,3mの距離を歩いて本件ベンチにたどり着かなかったということは不合理であり,原告Bの供述及び陳述書の記載中の原告BはCの後を見続けながらついて行った旨の部分は直ちに信用することはできない。 ウなお,Eは,ゾウガメを見ていたEが振り返ったときに原告B,C及びDが本件ベンチに並んで座っていた旨証言するが,本件事故発生から5~10分前のことであり,並んでいたが座っていたかどうかまでは不明であ,。 る旨証言していることから上記証言は前記認定を左右するものではない,,「」エ以上のとおり本件事故に至る経過はCらがインコとゾウガメの森の前から,C,D,原告Bの順で本件ベンチに 。 る旨証言していることから上記証言は前記認定を左右するものではない,,「」エ以上のとおり本件事故に至る経過はCらがインコとゾウガメの森の前から,C,D,原告Bの順で本件ベンチに向かったが,原告Bが時々- 12 -立ち止まったりしていた間に,Cは本件ベンチに到着し,一人で本件ベンチに登ったものの深く腰掛けすぎたため,仰向けに転倒したものと認められる。 争点Ⅱ(被告の本件公園の管理の瑕疵の有無)について(1)証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件公園の入園料は,大人(高校生以上)500円,小学生及び中学生100円,小学生未満無料であり,本件動物園は,幼児や子供連れの利用者が特に多い。 イ被告は,本件事故以前,サークルベンチ内に植えられていたツツジを,毎年6月ころ剪定していた。 ウ本件ベンチ内に植えられたツツジの中には,本件事故当日,枯れ枝も混ざっていた。 エ都市公園技術標準によれば,背もたれのないベンチは短時間の休息に向いており,一般的な座面高は,大人と子供の兼用で35~40cmとされている。 オ年齢1歳7か月程度,身長80cm程度の幼児は,本件ベンチを一人で10秒以内に登ることができる。 カCが本件ベンチに座った場合,足が地面に着くことはない。 キ本件事故当時,Cの側にはDがいた。 (2)上記(1)及び前記第2の1の事実に基づき,検討する。 ア公の営造物の設置又は管理に瑕疵があるとは,公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,これに基づく国及び公共団体の賠償責任については,その過失の存在を必要としないと解される(最高裁昭和45年8月20日第一小法廷判決・民集24巻9号1268頁参照。上記)安全性の欠如の有無は,当該営造物の構造,本来の用法,場所的環境及び, は,その過失の存在を必要としないと解される(最高裁昭和45年8月20日第一小法廷判決・民集24巻9号1268頁参照。上記)安全性の欠如の有無は,当該営造物の構造,本来の用法,場所的環境及び,。 利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである- 13 -この点,被告は,本件ベンチを幼児が使用することについて,保護者がすぐに手をさしのべられる位置に付き添って座らせるか,膝に抱えることが本来の用法であり,これを逸脱した利用による本件べンチからの転落の危険は,利用者の守備範囲内で回避すべき問題である旨主張する。 ,((),()確かにCの身長と本件ベンチの高さから前記第2の1 ウ ア(ア,Cが本件ベンチに座った場合,Cの足は地面に着かず(上記))(1)カ,Cは頭囲と胸囲の長さが同じで相対的に頭部が重い1歳7か)月の幼児であったため,重心が高く安定感の不足した状態になるから,Cのような幼児が本件ベンチに座る際には保護者が付き添って座ることが多いものと考えられる。 しかし,本件動物園は「こども動物園」と名付けられ,本件公園の入園料の価格設定をみても子供連れが主な来園者であることを想定しており,特に幼児その他の子供を連れた利用者が多い(上記(1)ア)ところ,このような施設においては,異常な行動でないかぎり単独行動をする幼児に対しても事故の発生しないような安全性を確保することが求められているといえるから,幼児に保護者が常に付き添うことが要求されるとするのは相当ではなく,保護者が離れていた際に発生した事故すべてが保護者の守備範囲内にあるということはできない。すなわち,保護者において,自分の目が届き,異常があればすぐに対処できる距離で,単独行動をする子供を見ていることも許される程度の安全性が,このような が保護者の守備範囲内にあるということはできない。すなわち,保護者において,自分の目が届き,異常があればすぐに対処できる距離で,単独行動をする子供を見ていることも許される程度の安全性が,このような遊園施設においては求められているのである。そして,ベンチはこれに座ることが本来の用法であり,本件ベンチについては,約40cmの高さであるため幼児が単独で登ることができる(上記(1)オ)のであるから,幼児が一人で登って座ることは本件ベンチの本来の用法であると考えられる。 そして,本件においては,10歳になる姉のDがCのすぐ近くにおり,原告Bも2,3m離れた位置にいたのであるから,1歳7か月の子を全く- 14 -単独でベンチに座らせて放置していたというわけではなく,上記のとおり幼児が多数訪れる遊園施設での事故であることをも勘案すれば,Cが単独で本件ベンチを登って座ったことがその本来の用法を逸脱していたとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 イ本件ベンチに背もたれがないことについて原告らは,本件動物園内にある本件ベンチに幼児が座った場合に,背もたれがないために幼児がいつでも仰向けに転落する危険の高い状態であったことから,背もたれがない本件ベンチは安全性を欠如している旨主張する。 確かに,本件ベンチに背もたれがあれば本件事故は発生しなかったということはできるが,本件動物園は,子供たちが動物と直接ふれあうことによって,動物への理解を深め,自然保護の精神を養い,自然科学への興味を育てることを目的とする施設であり,自然の景観を感じさせるように設計されているのであり,背もたれのあるベンチを設置することは景観を害し,身長の低い子供たちが展示動物等を見る際に妨げにもなり,上記目的に反することになる。 そうすると,後記のとおり じさせるように設計されているのであり,背もたれのあるベンチを設置することは景観を害し,身長の低い子供たちが展示動物等を見る際に妨げにもなり,上記目的に反することになる。 そうすると,後記のとおり,ベンチの内側に植物が植えられていたこととの関係を別にすれば,本件ベンチが背もたれのないものであることだけをもって安全性を欠いていたとまではいえない。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 ウ本件ベンチの内側に植栽があることについて(),,,ア背もたれのない本件ベンチには通常植栽を背にして座るから座った者の足が地面に着かない高さである場合,仰向けに植栽の方向に転倒することは,前(本件ベンチの外側)に転倒することよりも高い可能性で起きると考えられる。なぜなら,座板に大腿部が載っている場合- 15 -には前方向には安定性があり,また載っていない場合であっても前に足があるため先に足が着地する可能性が高いと考えられるからである。 (イ)aその上で,本件ベンチの内側に植栽があったことについて検討すると,本件ベンチは背もたれがなく,奥行きが45cmとさほど広くないことから,足が地面に着かないような子供が座った場合には,常に保護者が付き添っているとは限らない(このような利用も本件ベンチの本来の用法に含まれることは前記のとおりである)から,子。 供が本件ベンチの内側に転倒する危険が考えられる。そして,植物が本件ベンチの内側に植えられていた場合,植物であれば枯れる可能性があることも予想でき,枯れた植物が内側にあった場合には,ツツジのような灌木が植えられていれば,枯れ枝の硬さや鋭さから,転倒した人が怪我を負うことも当然に予見することができ,また,予見すべきである。 bこの点,被告は,美観保持上枯れ枝を取り除くことを心が ジのような灌木が植えられていれば,枯れ枝の硬さや鋭さから,転倒した人が怪我を負うことも当然に予見することができ,また,予見すべきである。 bこの点,被告は,美観保持上枯れ枝を取り除くことを心がけねばならないことはあっても,幼児の利用者の安全確保という観点から,幼児がベンチから転落することに備えて枯れ枝を除去しなければならないという義務まではない旨主張する。 しかし,上記のとおり,本件動物園は来園者の多くが幼児や子供連れであることを想定している施設であるから,通常の単独行動をする幼児について事故が発生しないような安全性が求められているといえ,幼児の安全確保の見地に立つことが必要である。そのような見地からは,背もたれのない本件ベンチの内側に上記のような植物を植えていたことは通常有すべき安全性を欠いたものというべきである。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 c被告は,ツツジの樹形は根ぎわから多数の枝が分かれているため,もともと枯れ枝を選り分けにくく,本件事故が発生した新緑が出始め- 16 -る前の時期は,枯れ枝かどうかを見分けることが特に困難であって,この時期に園内の灌木から枯れ枝をすべて除去することは不可能であった旨主張する。 確かに,本件動物園において,ツツジの剪定時期は毎年6月とされており,本件事故はそれよりも2か月前の剪定が予定されていない時期であったことは前記認定のとおりである。 しかしながら,本件ベンチの内側に枯れ枝があれば,本件ベンチの内側に転倒した場合に人が怪我をするような危険な状態となることは上記aのとおり明らかであり,人が本件ベンチの内側に転倒する可能性が考えられる以上は,その場合の危険な状態を除去しないことは通常有すべき安全性を欠くものであったというべきである。他方,枯れ枝かどうかを見分 とおり明らかであり,人が本件ベンチの内側に転倒する可能性が考えられる以上は,その場合の危険な状態を除去しないことは通常有すべき安全性を欠くものであったというべきである。他方,枯れ枝かどうかを見分けることが不可能であることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 エ以上の次第で,被告が背もたれのない前記形状の本件ベンチの内側に枯れ枝の混ざったツツジを植栽していたことは,営造物の管理に瑕疵があるものと認められる。 争点Ⅲ(本件事故と相当因果関係を有する原告らの損害額)について証拠によれば,原告らが被った損害は,以下のとおりであると認められる。 (1)C死亡による損害3978万2051円ア治療関係費27万2137円(ア)治療費8137円(イ)付添費21万4500円1日につき6500円で入院期間33日間(ウ)入院雑費4万9500円1日につき1500円で入院期間33日間- 17 -イ逸失利益2150万9914円Cは本件事故当時1歳7か月の男児であり,本件事故に遭わなければ18歳から67歳までの間就労が可能でありその間男性労働者平均賃金平,(成16年賃金センサス産業計企業規模計男性労働者学歴計平均賃金は542万7000円)相当額の収入を得られたものと考えられるから,生活費として50%を控除し,また,ライプニッツ係数により年5分の中間利息を控除して逸失利益額を算出すると次のとおり2150万9914円円,(未満切捨て。以下同じ)となる。 。 542万7000円×(1-0.5)×(19.2010-11.2740)=2150万9914円ウ慰謝料1800万円前記認定の本件事故の態様及び結果並びに本件においては父母である原告A及び原告Bがそれぞれ固有の慰謝料を請 .5)×(19.2010-11.2740)=2150万9914円ウ慰謝料1800万円前記認定の本件事故の態様及び結果並びに本件においては父母である原告A及び原告Bがそれぞれ固有の慰謝料を請求していることその他諸般の事情を考慮すると,C死亡による慰謝料額は1800万円とするのが相当である。 (2)原告らの損害ア相続原告らは,上記(1)のCの損害賠償請求権3978万2051円をそれぞれ2分の1ずつ相続した。 イ原告Aの損害としての葬儀費用150万円本件事故と相当因果関係を有する損害としての葬儀費用は150万円とするのが相当である。 ウ原告ら固有の慰謝料各100万円前記認定の事故態様及びその結果並びに本件においてはC自身の慰謝料を請求していることその他諸般の事情を考慮すると,C死亡による原告ら固有の慰謝料額は各100万円が相当であると認められる。 - 18 -(3)過失相殺ア本件において,原告Bは,C及びDとともに本件ベンチに向かうに当たって,Cが先行するに任せ,時々立ち止まりながら本件ベンチに向かったのであり,常にCを見て移動していたわけではなかった。また,1歳7か月であるCが一人で,背もたれがなく,内側には植物が植えられている本件ベンチに登るのを認めていながら,駆け寄ることもなくCが本件ベンチを登るに任せていた(上記1(1)エ,オ。本件事故はその結果発生し)たものであり,このことにかんがみれば,原告Bの監護義務懈怠の程度は小さくなく,本件事故の発生について原告ら側にも過失があったといわざるを得ない。 そして,上記諸般の事情を考慮すれば,本件事故発生についての原告ら側の過失割合は,7割5分とみるのが相当である。 イ前記(2)の原告Aの損害額合計2239万1025円,原告Bの損害額合計2089万1025円 記諸般の事情を考慮すれば,本件事故発生についての原告ら側の過失割合は,7割5分とみるのが相当である。 イ前記(2)の原告Aの損害額合計2239万1025円,原告Bの損害額合計2089万1025円から原告らの過失割合である7割5分を減じると,原告Aについて559万7756円,原告Bについて522万2756円となる。 (4)弁護士費用本件事案の内容,請求認容額等の諸事情を考慮すれば,原告Aについて55万円,原告Bについて52万円は本件事故と相当因果関係のある損害であると認めることができる。 (5)原告らの各損害額以上のとおり,原告Aの損害額は614万7756円,原告Bの損害額は574万2756円となる。 結論 よって,原告らの各請求は,被告に対し,国家賠償法2条の営造物責任に基づき,原告Aにおいては損害賠償金合計614万7756円及び原告Bにおい- 19 -ては損害賠償金合計574万2756円並びにそれぞれこれらに対する本件事故発生日である平成17年4月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これらを認容し,その余の請求は理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第1部裁判長裁判官長谷川誠裁判官工藤涼二裁判官泉寿恵

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