令和5年(わ)第122号強盗殺人未遂、窃盗被告事件判決 主文 被告人を懲役19年に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、コンビニエンスストアの店員等に暴行を加えて同店内の金品を強取しようと考え、令和5年6月22日午前3時44分頃から同日午前3時47分頃までの間、長崎県a市b町cd番地所在のB店敷地内において、同店店員C(当時48歳)に対し、同人が死亡するかもしれないことを認識しながら、あえて、手に持ったバール(重量約1.3kg、長さ約54cm)でその頭部を殴るなどの暴行を加え、同人を気絶させてその反抗を抑圧し、引き続き同店内において、客として居合わせたD(当時63歳)に対し、同人が死亡するかもしれないことを認識しながら、あえて、前記バールでその頭部を多数回殴り、手拳でその頭部及び顔面を多数回殴るなどの暴行を加え、同人を同店外に逃走させてその反抗を抑圧し、同店店長E管理の現金5万円在中のマネーケース1個(時価5000円相当)を強取するとともに、Dが同店内の床に落とした同人所有又は管理の現金約1万1000円及び運転免許証等7点在中の財布1個(時価合計約1万円相当)を窃取したが、前記各暴行により、Cに左視力障害の後遺症を伴う加療約3か月間を要する頭蓋骨骨折、右急性硬膜外血腫、脳挫傷、左眼外傷性視神経症等の傷害を、Dに通院加療約6か月間を要する左頭頂骨骨折、左下顎骨骨折、左尺骨骨折等の傷害をそれぞれ負わせたにとどまり、殺害するに至らなかったものである。 (量刑の理由)強盗殺人未遂の犯行についてみるに、被告人は、コンビニエンスストアの店員であるCが店外に出たところを突然、重量約1.3kgも わせたにとどまり、殺害するに至らなかったものである。 (量刑の理由)強盗殺人未遂の犯行についてみるに、被告人は、コンビニエンスストアの店員であるCが店外に出たところを突然、重量約1.3kgもある長さ約54cmの鋼製 のバールで手加減なく頭部を殴るなどし、さらに、その直後に来店した客であるDにも襲いかかり、約1分半にわたって、店内で同人を追い回しながら、その頭部や顔面をバール又は手拳で多数回殴るなどの激しい暴行を加えている。また、両名は、いずれも、止血をせず放置されていれば、死に至る危険があり、とりわけ、Cは、医師の所見によれば、あと1時間止血が遅れていれば、確実に死亡していたとされている。したがって、犯行態様は極めて危険かつ悪質である。窃盗の犯行については、Dが逃げる際に落とした財布をこれ幸いと盗んだというものであって、犯行態様は良くなく、強い非難に値する。 C及びDは、強盗殺人未遂の犯行により、それぞれ加療約3か月、通院加療約6か月の骨折を伴う傷害を負っており、Cには視力障害の後遺症も残っている。生じた結果は重大であり、同人らの今後の人生に与えた悪影響の大きさをも考えれば、処罰感情が峻烈であるのも当然である。窃盗の被害も含めた財産的損害も決して少額とはいえない。被害店舗や地域社会に与えた影響も大きく、本件の重大性を示している。 本件に至る経緯についてみるに、検察官は、被告人は遅くとも犯行の約2か月前にはコンビニ強盗を決意しおおよその方法を具体化しており、犯行に使用したバールも事前に職場から持ち出して用意していた旨主張する。しかし、これらの事実を認定できるだけの十分な証拠はなく、給料をギャンブルで使い切ったことで犯行の約5時間前に強盗を決意しバールは被害店に隣接する会社の倉庫から持ち出した旨をいう被告人の供述を排斥す かし、これらの事実を認定できるだけの十分な証拠はなく、給料をギャンブルで使い切ったことで犯行の約5時間前に強盗を決意しバールは被害店に隣接する会社の倉庫から持ち出した旨をいう被告人の供述を排斥することはできない。もっとも、被告人が知人らとした強盗をほのめかすようなやり取りからは、その頃から被告人が漠然とではあるにせよ、金銭を手に入れる選択肢の一つとして強盗を思いついていた様子がうかがわれる。そして、被告人は、本件においては、靴の上から靴下を履く、目出し帽や手袋等を用意するなどの周到な準備を整えた上で犯行に及んでもいる。また、ギャンブルが原因で金銭に窮したとの犯行動機は酌むべき点に乏しいといわざるを得ない。 加えて、前記のような犯行態様や犯行時の状況等に照らせば、被告人は自己の行為 がCやDの生命に及ぼす危険性の高さを十分に認識していたといえる。以上の事情に照らせば、被告人の責任は大幅に減じられるものではない。 量刑検索システムを利用して、前科のないものが凶器を用いて行った強盗殺人未遂事件の量刑傾向を見るに、そもそも被害者が複数の事案自体が件数としては少なく、前述のような犯情の悪質性の高さも踏まえると、本件は同類型の中でも相当程度重い部類に位置づけられる。 その上で、被告人の兄や元職場の上司の協力を得て、CとDに対してそれぞれ10万円を支払ったこと、犯罪歴がなく、反省の態度を示すとともに、ギャンブル障害の治療に努める旨述べていることなどの被告人に有利な犯情以外の事情も考慮して、主文のとおりの実刑に処することとした。 (求刑-懲役22年)長崎地方裁判所刑事部 裁判長裁判官太田寅彦 裁判官上原美也子 裁判官平川優希 長崎地方裁判所刑事部 裁判長裁判官太田寅彦 裁判官上原美也子 裁判官平川優希
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