平成13(行コ)174等 損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成10年(行ウ)第126号)

裁判年月日・裁判所
平成14年4月24日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文14,699 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの本件各請求(当審において拡張した部分を含む。)をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴(1) 控訴人らア原判決を取り消す。 イ被控訴人らの本件各請求をいずれも棄却する。 ウ訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 (2) 被控訴人らア本件各控訴をいずれも棄却する。 イ控訴費用は,控訴人らの負担とする。 2 附帯控訴(1) 被控訴人らア原判決を次のとおり変更する。 (ア) 控訴人Aは,世田谷区に対し,1億7553万7900円及びうち1億1007万2600円に対する平成10年4月10日から,うち1841万2400円に対する平成11年4月1日から,うち1658万6500円に対する平成12年4月1日から,うち1708万6800円に対する平成13年4月1日から,うち1337万9600円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (イ) 控訴人Bは,世田谷区に対し,控訴人Aと連帯して,2194万2237円及びうち1375万9075円に対する平成10年4月10日から,うち230万1550円に対する平成11年4月1日から,うち207万3312円に対する平成12年4月1日から,うち213万5850円に対する平成13年4月1日から,うち167万2450円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (ウ) 控訴人Cは,世田谷区に対し,控訴人Aと連帯して,2194万2237円及びうち1375万9075円に対する平成10年4月10日から,うち230万1550円に対する平成11年4月1日から,うち207万3312円に対する平 対し,控訴人Aと連帯して,2194万2237円及びうち1375万9075円に対する平成10年4月10日から,うち230万1550円に対する平成11年4月1日から,うち207万3312円に対する平成12年4月1日から,うち213万5850円に対する平成13年4月1日から,うち167万2450円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (エ) 控訴人Dは,世田谷区に対し,控訴人Aと連帯して,2194万2237円及びうち1375万9075円に対する平成10年4月10日から,うち230万1550円に対する平成11年4月1日から,うち207万3312円に対する平成12年4月1日から,うち213万5850円に対する平成13年4月1日から,うち167万2450円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (オ) 控訴人Eは,世田谷区に対し,控訴人Aと連帯して,2194万2237円及びうち1375万9075円に対する平成10年4月10日から,うち230万1550円に対する平成11年4月1日から,うち207万3312円に対する平成12年4月1日から,うち213万5850円に対する平成13年4月1日から,うち167万2450円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (カ) 控訴人Fは,世田谷区に対し,1億7553万7900円及びうち1億1007万2600円に対する平成10年4月10日から,うち1841万2400円に対する平成11年4月1日から,うち1658万6500円に対する平成12年4月1日から,うち1708万6800円に対する平成13年4月1日から,うち1337万9600円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払 6500円に対する平成12年4月1日から,うち1708万6800円に対する平成13年4月1日から,うち1337万9600円に対する平成14年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (キ) 控訴人世田谷区長は,控訴人A,控訴人B,控訴人C,控訴人D及び控訴人Eに対し,世田谷区せたがやの家の供給に関する条例に基づく補助金の交付をしてはならない。 イ当審における訴訟費用は,控訴人らの負担とする。 ウアの(ア)ないし(カ)につき,仮執行の宣言(2) 控訴人ら被控訴人らの各請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要本件の事案の概要は,次のとおり訂正し,付加し,又は削除するほかは,原判決の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 1 原判決3頁19行目の「特定賃貸住宅」を「特定優良賃貸住宅」と,同24行目の「1億6215万8300円」を「1億7553万7900円」とそれぞれ改める。 2 原判決5頁9行目の「「」から同10行目の「」」までを「「世田谷区せたがやの家システム建設費助成金交付要綱」」と,同行目の「「」から同11行目の「」」までを「「世田谷区せたがやの家システム家賃助成金交付要綱」」とそれぞれ改め,同17行目の「都道府県知事に」の次に「同計画の」を加え,同26行目の「賃貸人が」を「賃貸人は」と改める。 3 原判決8頁4行目の「甲」の次に「第2号証及び」を加え,同5行目の「並びに第9号証」を削り,同8行目の「9年」を「5年」と改める。 4 原判決9頁18行目の「11日」を「31日」と,同24行目の「もの」を「者」と,同25行目から同26行目にかけての「302万6900円」を「285万5427円」と,同行目から同10頁1行目にかけての「316万2800円」を「294万1404円に,平成13 「もの」を「者」と,同25行目から同26行目にかけての「302万6900円」を「285万5427円」と,同行目から同10頁1行目にかけての「316万2800円」を「294万1404円に,平成13年4月1日に月額290万5506円」とそれぞれ改める。 5 原判決10頁1行目の「及び第6号証」を「,第6号証,第8号証及び第9号証」と改め,同7行目の「1708万6800円」の次に「,平成13年度分として1337万9600円(ただし,平成13年4月1日から平成14年1月末日まで)」を,同8行目の「(」の次に「甲第24号証,」をそれぞれ加え,同13行目の「建築費助成金」を「建設費助成金」と改め,同15行目の次に行を改めて「(8) 第1審相被告Gは,第1審口頭弁論終結後の平成13年5月30日に死亡し,妻である控訴人A並びに子である控訴人B,控訴人C,控訴人D及び控訴人Eが法定相続分に従ってGの権利義務を相続し,本件訴訟を承継した。(弁論の全趣旨)」を加える。 6 原判決17頁11行目の「効力」を「効果」と改める。 第3 証拠証拠関係は,本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 理由 1 本件各補助金交付に至る経緯等前記判断の前提となる事実並びに証拠(甲2ないし4,6,10の1,2,13の1,乙9,12ないし14,18,19の1ないし3,23ないし25,丙1,2,4ないし9,11,証人H,同J)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件各補助金交付に至る経緯等について,以下の事実を認めることができる。 (1) G(昭和12年8月10生)は,平成5年当時,建材の販売等を行う株式会社星谷材木店(以下「星谷材木店」という。)の代表取締役であるとともに,区の区議会議員の地位にあったが,区議会議員につ 。 (1) G(昭和12年8月10生)は,平成5年当時,建材の販売等を行う株式会社星谷材木店(以下「星谷材木店」という。)の代表取締役であるとともに,区の区議会議員の地位にあったが,区議会議員については,平成10年10月22日付けで辞任した。 Gの妻である控訴人A(昭和17年12月16日生)の父Kは,不動産などかなりの資産を有し,星谷材木店を経営していた者であるが,K夫婦には,1男5女が生まれたものの,長男は生後間もなく死亡してしまい,M家を継ぐべき男子がいなかった。そこで,G(旧姓L)は,昭和41年11月5日,M家に入り婿する形でK夫婦の長女である控訴人Aと婚姻し,その後の昭和46年12月7日,K夫婦と養子縁組をした。 Gと控訴人Aの子である控訴人B,控訴人C,控訴人D及び控訴人Eは,Kが死亡した場合の相続税対策として,いずれも,昭和62年7月31日,Kと養子縁組をした。なお,控訴人Aは,星谷材木店の取締役に就任している。 (2) 昭和63年8月5日,Kが死亡し,世田谷区(省略)にある本件土地は,G,控訴人A及び控訴人Cの3名によって相続された(持分各3分の1)。当時,本件土地上には,星谷材木店の材木倉庫,製版工場などの建物があった。 (3) Gと控訴人Aは,平成5年ころ,本件土地にある材木倉庫などの建物を取り壊し,本件土地上に1,2階は星谷材木店の事務所及び材木置場,3階以上を賃貸マンションとする8階建ての建物を建築しようと考え,同年3月ころ,Gは,幼なじみであり,一級建築士で株式会社尾崎建築事務所の代表者であるJにその設計を依頼した。Jは,同年4月末ころ,一応のプランを作成してGに渡したところ,Gから本件制度を利用したいとの意向が伝えられたため,Jは,区の担当者から本件制度に関する資料を入手するなどしてその調査を始めた。 (4) は,同年4月末ころ,一応のプランを作成してGに渡したところ,Gから本件制度を利用したいとの意向が伝えられたため,Jは,区の担当者から本件制度に関する資料を入手するなどしてその調査を始めた。 (4) Gは,平成5年5月,Jと共に,区の本件制度の担当責任者であったH(当時は区の都市整備部参事(住宅計画担当)であり,同年7月から住宅政策室長になった。)の職場を訪れ,同人に本件制度を利用したいのでよろしくとのあいさつをした。H室長は,Gが区議会議員になったころから同人を知っていたが,区議会議員であるGが本件制度を利用することに特に問題があるとは認識していなかった。 (5) Jは,平成5年9月24日までに本件土地上に建築する地上8階建て(地下1階付き)鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の設計を終え,同日,G名義で建築確認の申請手続をした。 同年10月,同年度のせたがやの家住宅供給者の公募があったため,Jは,同月7日,申込者をGとして,区に対し,本件制度の申込手続をした。その後,後述の選定会議が開かれるまでの間に,Gから申込者を控訴人Aに変更したいとの依頼があったため,Jは,区に対し,申込者を控訴人Aに変更する手続を行った結果,その申込書(甲4)中の申込者の氏名部分が区の担当者によってGから控訴人Aへと訂正された。 (6) 区は,平成5年度から本件制度の住宅供給者となるべき者を応募者の中から選定会議(その責任者はH室長)で選定することにし,その第1回目の会議が同年11月17日に開かれたが,その会議で,控訴人Aは本件制度の適用対象者として選定された。なお,同年度にせたがやの家として選定されたのは合計9棟であるが,これらは,世田谷区を北沢地域,世田谷地域,玉川地域,砧地域及び烏山地域の5地域に分けた各地域から2棟ずつ(ただし,北沢地域のみ1棟)選定されてい にせたがやの家として選定されたのは合計9棟であるが,これらは,世田谷区を北沢地域,世田谷地域,玉川地域,砧地域及び烏山地域の5地域に分けた各地域から2棟ずつ(ただし,北沢地域のみ1棟)選定されている。 (7) 控訴人Aは,平成5年12月2日,区から事前協議開始承認の通知を受けたため,これに基づき,同月24日,東京都知事に対し,特定優良賃貸住宅供給計画の認定申請書を区を経由して提出し,平成6年1月21日,東京都知事からその認定を受け(丙4),同年2月17日,区及び公社との間で,建設する建物の内容等に関する覚書(乙23)を取り交わした。 なお,控訴人Aは,東京都から,同月22日付けで「東京都優良民間賃貸住宅認定・融資あっせん決定通知」を受け,株式会社富士銀行玉川支店からのファミリー型住宅建設資金分として3億3770万円の融資のあっせんを受け,同年3月7日,同行から住宅建設資金として3億3770万円を借り入れ,これを本件建物の建築資金の一部としている。 (8) 控訴人Aは,平成6年1月21日付けで本件法律12条に基づく平成5年度の建設費助成金の交付申請をし(乙12),平成6年1月25日,区は,これを承認する旨の通知をし(乙24),同年4月14日,控訴人Aに対し,建設費助成金として2302万4000円を交付した。この建設費助成金は,本件建物のうちせたがやの家とされる部分に対するもので,設計費及び共同施設等整備費の一部に充てられるものであった。 控訴人Aは,同日,さらに,本件条例11条に基づく同年度せたがやの家建設費助成金の交付申請をし(乙13),区は,同月20日,これを承認してその旨を控訴人Aに通知し(乙25),平成7年4月4日,建設費助成金として3397万2000円を交付した。 (9)ア控訴人A,区及び公社の三者間で取り交わした前記覚書 は,同月20日,これを承認してその旨を控訴人Aに通知し(乙25),平成7年4月4日,建設費助成金として3397万2000円を交付した。 (9)ア控訴人A,区及び公社の三者間で取り交わした前記覚書に基づいて本件建物が建築され,平成7年3月3日にこれが完成したが,同年5月31日,本件建物は,控訴人Aの持分が2分の1,Gと控訴人Cの持分が各4分の1として所有権保存登記がされた。 同年3月16日,控訴人Aと公社は,本件建物について,控訴人Aを貸主,公社を借主として,本件条例に基づいて公社が公募し,選定する第三者に対して転貸することを目的とする一括借上げ契約を締結した(丙6)。この契約は,公社が本件建物の全住宅戸数26戸のうち3階から6階までの18戸を賃料月額285万5427円,期間20年として賃借することを内容としているが,そのほかに,控訴人Aは,家賃助成金の申請及び受領に関する業務を公社に委託すること,公社は,上記18戸を入居者に家賃合計月額302万6900円で転貸すること,家賃助成金が控訴人Aに交付される場合は,公社が入居者から収納する額は上記転貸家賃の額から家賃助成金の額を控除した額とすること,控訴人Aが本件法律11条の規定に基づいて東京都知事から供給計画の認定を取り消され,家賃助成金が交付されなくなった場合には,公社は上記家賃の額から当該供給計画の認定が取り消されていなければ交付されるべき家賃助成金の額を差し引いた額を控訴人Aに支払えば足りることなどが約定されている。その後,公社が控訴人Aに支払う賃料の額は,平成9年4月分から月額294万1404円,平成13年4月分から月額290万5506円と,また,公社が入居者に転貸する家賃の合計額は,平成9年4月分から月額316万2800円,平成13年4月分から月額312万4200円とそれぞれ 1404円,平成13年4月分から月額290万5506円と,また,公社が入居者に転貸する家賃の合計額は,平成9年4月分から月額316万2800円,平成13年4月分から月額312万4200円とそれぞれ改められている。 イ以上の控訴人Aと公社との間のせたがやの家一括借上げ契約における公社の同控訴人に対して支払うべきせたがやの家一括借上げの賃料の額,公社のせたがやの家の入居者に対する転貸家賃の額及び公社が入居者から実際に収納する家賃の額並びに同控訴人が区から交付を受ける家賃助成金の相互の関係を更にふえんすれば,以下のとおりである。 すなわち,まず,控訴人Aと公社との間の上記せたがやの家一括借上げ契約における公社から同控訴人に支払われる賃料の額は,公社のせたがやの家入居者に対する転貸家賃の合計額から公社の収受する手数料分7パーセント相当額を控除した額とされている。上述の公社が控訴人Aに支払う賃料の額と公社の入居者に対する転貸家賃の合計額とは,以上の関係にある。 次に,本件条例によれば,公社のせたがやの家入居者に対する転貸家賃のうち,実際に入居者が負担するのは,転貸家賃の額の範囲内で入居者の負担能力等を考慮して区の規則で定める額(以下「入居者負担金」という。)であり(17条),転貸家賃と入居者負担金との差額が家賃助成金として区から補助されることになっているところ(18条),前記のように,控訴人Aと公社との間のせたがやの家一括借上げ契約において家賃助成金が交付される場合は公社は入居者から約定の転貸家賃の額から家賃助成金の額を控除した額(すなわち,入居者負担金)を収納するとされているのは,本件条例の上記のような規定に基づくものである。 そして,公社は,入居者から収納するこの入居者負担金と控訴人Aからの委任に基づき区から代理受領する家賃助成金との 負担金)を収納するとされているのは,本件条例の上記のような規定に基づくものである。 そして,公社は,入居者から収納するこの入居者負担金と控訴人Aからの委任に基づき区から代理受領する家賃助成金との合計額の中から前記7パーセントの手数料相当額を控除した残額を同控訴人に対するせたがやの家の約定賃料として支払うことになる。 したがって,控訴人Aと公社との間のせたがやの家一括借上げ契約によれば,同控訴人が公社に委任して区に対して家賃助成金の交付を申請し,これを受領することになっているが,この家賃助成金によって実質的に利益を受けるのは,控訴人Aではなく,約定の転貸家賃の額から家賃助成金相当額の減免を受けるせたがやの家の入居者ということになる。 (10) 本件建物の上記18戸は,平成7年4月1日から入居が開始され,控訴人Aに対する区からの家賃助成金の交付が始まった。 また,本件建物には,上記18戸以外に,地下に駐車場,地上1,2階に星谷材木店の事務所及び材木置場があるほか,控訴人Aが直接管理し,賃貸している住宅として6階に2戸,7階と8階に各3戸がある。 (11) 本件制度は,もともとは公営住宅制度を補完して地域における多様な賃貸住宅需要に対応し,地域住民の居住水準の向上を図るという国の政策(前記昭和61年4月5日付け建設事務次官通達)に発するものであるが,世田谷区においては,かなり以前から出生率が全国平均を下回るなど少子化の問題が生じており,この問題の解決策の一つとして中堅所得者(ファミリー層)向け住宅の供給が重要と認識され,区は,平成2年ころから,全国の他の自治体に先駆けて,中堅所得者層に向けた住宅対策に取り組んできた。区の住宅対策としては,区が区立住宅を建設してこれを区民に提供する方法と民間から住宅を借り上げてこれをせたがやの家として区民 国の他の自治体に先駆けて,中堅所得者層に向けた住宅対策に取り組んできた。区の住宅対策としては,区が区立住宅を建設してこれを区民に提供する方法と民間から住宅を借り上げてこれをせたがやの家として区民に提供する方法(本件制度)とがあるが,中堅所得者層に向けた住宅対策は,主に後者の方法によって行われている。 本件法律及び本件条例に基づく本件制度では,区がせたがやの家住宅供給者に建設費助成金及び家賃助成金の補助金を交付する場合,その費用の一部について国から補助を受けることができるが,そのためには都道府県知事によって優良賃貸住宅供給計画の認定を受ける必要があり,区は,本件条例施行の前後を通じて,この認定があることを本件制度の適用の必須の要件としていた。 2 争点1について前記判断の前提となる事実及び上記1で認定した事実によると,本件各補助金は,本件法律及び本件条例に基づいてせたがやの家住宅供給者に対して交付されたものであるところ,被控訴人らは,控訴人Aが専業主婦であることなどに照らすと,本件各補助金交付の名宛人が控訴人Aとされているのは,形式にすぎず,本件各補助金は実質的にはGに対して交付されたものである旨主張する。 そして,なるほど,当初建物の設計をJに依頼したのはGであり,建築確認申請や平成5年度のせたがやの家住宅供給者の公募に対する応募もGの名義でされたこと,同年当時,星谷材木店の代表取締役はGであり,控訴人Aは同社の取締役であったことは,上記1で認定したとおりである。 しかしながら,上記1で認定したとおり,本件土地は,もと控訴人Aの実父であるKが所有し,同人は,星谷材木店を経営していたこと,K夫婦にはM家を継ぐべき男子がいなかったことから,GがM家に入り婿する形でK夫婦の長女である控訴人Aと婚姻し,K夫婦と養子縁組をしたこと,本件土 るKが所有し,同人は,星谷材木店を経営していたこと,K夫婦にはM家を継ぐべき男子がいなかったことから,GがM家に入り婿する形でK夫婦の長女である控訴人Aと婚姻し,K夫婦と養子縁組をしたこと,本件土地は,控訴人A,控訴人C及びGの3名によって相続されたこと(持分各3分の1),控訴人Aは,東京都から「東京都優良民間賃貸住宅認定・融資あっせん決定」に基づいて融資のあっせんを受け,株式会社富士銀行玉川支店からのファミリー型住宅建設資金分として3億3770万円を借り入れ,これを本件建物の建築資金の一部に充てていること,本件建物は,控訴人Aの持分が2分の1,Gと控訴人Cの持分が各4分の1として所有権保存登記がされていることなどの事実が存するのであって,これらの事実に照らすと,控訴人Aは,本件土地及び本件建物について,名実共に権利を有することが明らかであり,せたがやの家住宅供給者となる資格を有していたものと認められる。そして,本件制度においては,管理者である公社が住宅供給者から住宅を一括して借り上げて管理を行い,これを入居者に転貸するというシステムが採られており,また,家賃の額の設定も,前記判断の前提となる事実及び上記1で認定した事実のとおり,本件条例等の規定に従って行われることになっていることなどからすると,本件制度における住宅供給事業を行うことについては特に専門的知識は必要とされないと解されるのであって,控訴人Aが被控訴人らが主張するように専業主婦であるからといって,本件制度における住宅供給者になり得ないものではないというべきである。その当初においてGとされていた本件制度の申込者がどのような理由で控訴人Aに変更されたかについては必ずしも判然としないが(区議会議員であるGが本件制度を利用することには問題があるとの判断があったとみる余地もあるが, とされていた本件制度の申込者がどのような理由で控訴人Aに変更されたかについては必ずしも判然としないが(区議会議員であるGが本件制度を利用することには問題があるとの判断があったとみる余地もあるが,単に控訴人AがM家の跡取り娘であり,かつ,Gよりも5歳若いことが理由になったにすぎないという控訴人Aらの主張もあながち否定し難いところである。),いずれにしても,控訴人Aにおいても,本件制度における住宅供給者になり得たものというべきであって,Gでなければならない特段の理由はないから,区に対する関係でせたがやの家住宅供給者となり,本件各補助金の交付を受けたのは,名義上のみならず,実質的にも控訴人Aであるというべきである。したがって,控訴人Aは,本件各補助金交付の形式上の名宛人にすぎず,本件各補助金は実質的にはGに交付されたものであるとの被控訴人らの上記主張は,採用することができないというべきである。 もっとも,控訴人Aがせたがやの家住宅供給者であるとはいっても,Gは,本件土地及び本件建物について上記のように持分権を有しているから,控訴人Aが本件建物をせたがやの家住宅として供給し,本件各補助金の交付を受けることによって,事実上少なくとも本件建物の持分に応じた利益を受けているものと推認することができないではなく,その意味で,そして,その限度で,Gも本件各補助金の実質的受領者といえないことはない。 そこで,以下においては,せたがやの家住宅の供給者は控訴人Aであり,本件各補助金は同控訴人に対して交付されているものであるが,上述の意味及び限度において実質的には区議会議員であるGもその利益を受けていることにより本件各補助金の交付が違法となることがあるかという見地から,判断することとする。 3 争点2について争点2についての判断は,原判決22頁13行目か 区議会議員であるGもその利益を受けていることにより本件各補助金の交付が違法となることがあるかという見地から,判断することとする。 3 争点2について争点2についての判断は,原判決22頁13行目から同24頁20行目までに記載のとおりであるから,これをここに引用する。 4 争点3について(1) Gが平成10年10月22日付けで辞任するまで区の区議会議員であったことは上記1で認定したとおりであるところ,被控訴人らは,本件各補助金の交付は地方自治法(以下「法」という。)92条の2の規定に違反して違法,無効である旨主張する。 ところで,法92条の2は,普通地方公共団体の議会の議員は当該普通地方公共団体に対して「請負」をする者になることができない旨を規定しているが,この規定の趣旨は,議会の議員が普通地方公共団体との間で請負等の取引関係に立つことを禁ずることによって,普通地方公共団体の事務の公正な運営を確保することにあるものと解される。そして,同条の上記趣旨に照らせば,ここにいう「請負」とは,民法632条以下に定める請負だけでなく,業務として行われる経済的ないし営利的な取引関係で一定期間にわたる継続的なものをすべて含むものと解するのが相当である。 しかるところ,本件制度における各補助金の交付は,それ自体は経済的ないし営利的な取引とはいえないものの,各補助金は,区の住宅政策として行われている本件制度の下において,民間の土地所有者等からせたがやの家にふさわしい住宅を長期にわたって安定的に提供を受けることを前提として,せたがやの家住宅の供給者に対し,その者がせたがやの家として建設する住宅の建設費の一部を助成し,また,公社がせたがやの家として一括借上げをした住宅の家賃の一部を助成する(ただし,実際に助成を受けるのは,前述のとおり,せたがやの家の入居者 がせたがやの家として建設する住宅の建設費の一部を助成し,また,公社がせたがやの家として一括借上げをした住宅の家賃の一部を助成する(ただし,実際に助成を受けるのは,前述のとおり,せたがやの家の入居者である。)目的で交付されるものであるから,これを全体としてみれば,せたがやの家住宅の供給者と補助金の交付をする区との間には継続的な経済的取引関係があるというべきであり,この関係は,法92条の2にいう「請負」に当たるというべきである。 しかしながら,法92条の2の規定に違反して普通地方公共団体の議会の議員が当該普通地方公共団体に対して「請負」をする者となったとしても,その「請負」に当たる行為が当然に無効となったり,違法となったりするものと解することはできない。けだし,同条は,普通地方公共団体の議会の組織について定めている法第6章第1節中に置かれた規定であり,また,同条に違反した効果としては,法は127条1項前段において当該議員の失職を規定するにとどまり,しかも,同項中段において法92条の2の規定に該当するか否かの判断を,裁判所にはではなく,当該議員の属する議会にゆだねていることにかんがみれば,同条は,普通地方公共団体の議会の議員が当該普通地方公共団体に対して「請負」をする者になることを禁止したにとどまる規定であり,「請負」に当たる当該行為の効力を問題にしている規定ではないと解するのが相当だからである。 また,法92条の2の規定の趣旨が以上のようなものであることにかんがみれば,同条に違反した行為が法2条15項前段及び16項の規定(いずれも平成11年法律第87号による改正前のもの)によって無効とされることもないものというべきである。 したがって,本件各補助金の交付が法92条の2の規定に違反していることを理由に違法,無効であるとする被控訴人らの主 第87号による改正前のもの)によって無効とされることもないものというべきである。 したがって,本件各補助金の交付が法92条の2の規定に違反していることを理由に違法,無効であるとする被控訴人らの主張は,採用することができない。 (2) また,上記のような法92条の2の規定の趣旨にかんがみれば,本件各補助金の交付が同条に違反するものであるとしても,それゆえに当然に公序良俗に反して無効であると解することはできない。したがって,本件各補助金の交付が公序良俗に反して無効であるとの被控訴人らの主張も,採用することができない。 (3) 被控訴人らは,本件各補助金の交付は,法92条の2の規定に違反するものであるから,法232条の2の規定にいう公益性を有するものとはいえず,同条に違反する旨主張する。 しかしながら,法92条の2の規定と法232条の2の規定とは,その趣旨・目的を異にするものであるから,法92条の2の規定に違反するということから直ちに本件各補助金の交付が法232条の2の規定にいう公益性を有しないということはできない。本件各補助金の交付が法232条の2の規定にいう公益性を有するか否かは,本件法律及び本件条例並びに本件制度の趣旨・目的,本件各補助金の交付がその中で果たす役割や効果等に即して判断すべきものである。この観点からみると,前述のとおり,区は,その住宅政策の一環として本件制度を設けているところ,本件制度は,中堅所得者等の居住の用に供する居住環境が良好な賃貸住宅の供給を促進するための措置を講ずることにより,優良な賃貸住宅の供給の拡大を図り,もって国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的として制定された本件法律,及び同法をうけて,中堅所得者等及び高齢者等の居住の用に供する賃貸住宅を確保するため,優良な民間の賃貸住宅をせたがやの家としてそ 民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的として制定された本件法律,及び同法をうけて,中堅所得者等及び高齢者等の居住の用に供する賃貸住宅を確保するため,優良な民間の賃貸住宅をせたがやの家としてその適正かつ安定的な供給を図るための措置を講ずることにより,区民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的として制定された本件条例に基づいて設けられた制度である。そして,本件制度における各補助金のうち,建設費助成金は,住宅供給者がその提供する住宅を控訴人区長が定めるせたがやの家にふさわしい建設基準に従って建設するのに要する費用の一部を補助するために交付されるものであり,家賃助成金は,本件条例等に基づいて定められるせたがやの家の家賃の額とせたがやの家入居者の負担する家賃の額との差額を予算の範囲内で補助するもので,実質的には入居者の負担を軽減するために交付されるものであること,本件各補助金も本件制度の上記趣旨に則って交付されていることは,前記判断の前提となる事実及び上記1で認定したところから明らかである。したがって,本件各補助金の交付は,正に区の住宅政策を遂行するためにされたものというべきであって,法232条の2の規定にいう「公益上必要がある場合」に該当することは明らかというべきである。なお,本件制度がせたがやの家の入居者の居住の安定,居住環境の向上等に資するだけでなく,補助金が交付され,かつ,長期にわたり安定した家賃収入が確保されるという点において住宅供給者に対しても利益をもたらすことは否定し得ないところであるが,このことによっても,その公益性は何ら損なわれるものではない。けだし,本件制度の目的とするところは,前述のとおり,民間の土地所有者等(住宅供給者)からの中堅所得者等向けの優良な賃貸住宅の適正かつ安定的な供給を確保することにあるのであり, われるものではない。けだし,本件制度の目的とするところは,前述のとおり,民間の土地所有者等(住宅供給者)からの中堅所得者等向けの優良な賃貸住宅の適正かつ安定的な供給を確保することにあるのであり,住宅供給者につき生ずる補助金の交付(ただし,補助金のうち,家賃助成金は,前述のとおり,せたがやの家の入居者の家賃を補助するものであり,住宅供給者に直接の利益をもたらすものではない。)あるいは長期の安定した家賃収入の確保という利益は,それ自体が目的ではなく,本件制度の上記目的達成のための施策の結果として副次的にもたらされるにすぎないものであり,しかも,本件法律及び本件条例においても当然に予定しているところだからである。そして,本件制度における各補助金交付の趣旨がこのようなものであることにかんがみれば,せたがやの家の住宅供給者が区の区議会議員であるというだけでは,各補助金の交付が「公益上必要がある場合」に該当しないということはできない。 したがって,本件各補助金の交付が法232条の2の規定に違反して違法,無効である旨の被控訴人らの主張も,採用することができない。 (4) 被控訴人らは,本件建物は周辺環境が良好とはいえず,応募要件・選定基準に合致していないのにせたがやの家として選定されたものであって選定手続に違法がある旨主張する。 しかしながら,前記1で認定したとおり,控訴人Aは,区が設置する選定会議において本件制度の適用対象者として選定された上,東京都知事から特定優良賃貸住宅供給計画の認定を受けているのであって,その選定手続に誤りがあったと認めるに足りる証拠はない。また,Gが区の区議会議員であったということだけで,その選定手続が違法であるということはできないし,当時本件建物以上によりせたがやの家としてふさわしい建物があったことや本件建物がせたがや 証拠はない。また,Gが区の区議会議員であったということだけで,その選定手続が違法であるということはできないし,当時本件建物以上によりせたがやの家としてふさわしい建物があったことや本件建物がせたがやの家として選定されたことによって区に何らかの損害が生じていることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件建物をせたがやの家として選定した手続に違法があることを前提として本件各補助金交付の違法をいう被控訴人らの主張も,採用することができない。 (5) 被控訴人らは,また,本件各補助金の交付は本件法律及び本件条例の目的に違反して許されない旨主張する。 しかしながら,(3)において上述したところによれば,本件各補助金の交付が本件法律及び本件条例の趣旨・目的に違反するといえないことは明らかであり,被控訴人らの上記主張は,採用することができない。 5 結論以上の次第であるから,本件各補助金の交付が違法,無効であるとする被控訴人らの主張はいずれも理由がないものというべきであり,本件各補助金の交付が違法,無効であることを前提とする被控訴人らの本件各請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも失当というべきである。 したがって,当裁判所の上記判断と異なる原判決は不当であるから,これを取り消し,被控訴人らの本件各請求(当審において拡張した部分を含む。)をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官石井健吾裁判官大橋弘裁判官植垣勝裕は,転官のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官石井健吾

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