平成29年10月20日判決言渡平成28年(行ウ)第484号工作物除却命令等請求事件 主文 1 本件訴えのうち行政代執行の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 処分行政庁は,被告補助参加人に対し,別紙1物件目録記載1の土地上にある同目録記載2のフェンス及びブロック塀を除却せよとの是正措置命令を発せ よ。 2 処分行政庁は,被告補助参加人が前項の是正措置命令(以下「本件是正措置命令」という。)を履行しないときは,行政代執行法の定めるところに従い,別紙1物件目録記載2のフェンス及びブロック塀を除却せよ。 第2 事案の概要 不動産の賃貸,売買等を業とする原告は,東京都文京区内の土地を購入し,同土地の北側のがけ地となっている部分を造成して,同土地に沿ってその下方に存在する私道との間で,人が出入り,通行することを可能にする階段を新たに設置し,同私道と接することによって初めて建築基準法令の規定を満たすこととなる規模の共同住宅を建築しようとしたところ,同私道の所有者である被 告補助参加人は,上記造成工事中に,同私道上の原告購入地に沿う部分にフェンス及びブロック塀を設置した。 本件は,原告が,上記の被告補助参加人によるフェンス及びブロック塀の設置は,建築基準法(以下,単に「法」という。)45条1項に規定する私道の変更に当たり,重大な損害を避けるため他に適当な方法がないと主張して,特定 行政庁である文京区長において, ブロック塀の設置は,建築基準法(以下,単に「法」という。)45条1項に規定する私道の変更に当たり,重大な損害を避けるため他に適当な方法がないと主張して,特定 行政庁である文京区長において,同項に基づきこれらの工作物の除却の是正措 置命令(本件是正措置命令)を被告補助参加人に対して発するとともに,被告補助参加人が同命令を履行しないときは自ら行政代執行するよう,同区長の所属する被告文京区に対し,義務付けを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 建築物の敷地等と道路の関係 ア建築物の敷地は,原則として,自動車のみの交通の用に供する道路等を除く道路に2メートル以上接しなければならない(法43条1項本文)。 法第3章の規定が適用されるに至った際現に建築物が建ち並んでいる幅員4メートル未満の道で,特定行政庁の指定したものは,ここにいう道路とみなし(以下,この特定行政庁の指定を受けた私道を「2項道路」とい う。),原則として,その中心線からの水平距離2メートルの線をその道路の境界線とみなすが,当該道がその中心線からの水平距離2メートル未満でがけ地,川,線路敷地その他これらに類するもの(以下「がけ地等」という。)に沿う場合においては,当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離4メートルの線をその道路の境界線とみなす (法42条2項)。 イ地方公共団体は,特殊建築物等の敷地が接しなければならない道路の幅員,その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係について当該建築物の用途又は規模の特殊性により,これによっては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合において は,条例で,必要な制限を付加するこ の敷地又は建築物と道路との関係について当該建築物の用途又は規模の特殊性により,これによっては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合において は,条例で,必要な制限を付加することができる(法43条2項)。 共同住宅は,ここにいう特殊建築物に当たる(法2条2号)ところ,東京都においては,共同住宅等の敷地及び建築物と道路との関係についての制限の付加について,東京都建築安全条例第2章第1節及び第3節が定めている(甲27。同条例1条,9条2号)。 (2) 私道の変更又は廃止の制限 私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定又は同条2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合においては,特定行政庁は,その私道の変更又は廃止を禁止し,又は制限することができる(法45条1項)。 2 前提事実(争いがないか,後掲各証拠等により容易に認められる事実) (1) 原告は,不動産の賃貸,売買等を業とする会社である(原告代表者資格証明書)。 (2) 被告は,特別地方公共団体である特別区であり,文京区長(処分行政庁)は,被告の区域における法上の特定行政庁である(地方自治法1条の3第3項,281条,283条2項,法2条35号)。 (3) 原告は,平成27年9月24日,文京区内の都市計画法上の第一種中高層住居専用地域にある別紙1物件目録記載3ないし5の土地(以下「本件土地」という。)を前所有者から購入した(以下「本件売買」という。)。本件土地の形状は別紙2のとおりであり,その周辺は戸建て住宅や共同住宅が立ち並ぶ住宅地で,本件土地上にはかつて建物が存在していた。(甲2ないし4,6, 7,甲8の2)(4) 別紙1 件土地の形状は別紙2のとおりであり,その周辺は戸建て住宅や共同住宅が立ち並ぶ住宅地で,本件土地上にはかつて建物が存在していた。(甲2ないし4,6, 7,甲8の2)(4) 別紙1物件目録記載1の土地は,本件土地の北側及び東側に地図上で隣接しており,被告補助参加人が所有している。同土地のうち本件土地北側に隣接する部分は,幅員約3メートルの通路となっており,2項道路として特定行政庁の指定を受けている(以下,同土地部分を「本件私道」という。)。本 件売買当時,本件土地は,本件私道よりも約6メートル高く,本件土地側は急峻ながけ地を形成しており,そのがけ下部には高さ約4メートルの大谷石積みの擁壁(以下「旧擁壁」という。)が存在していて,本件私道との間は,人や車両が相互に通行できない状態にあった。本件売買当時の本件土地の接道関係は,西側の道路(以下「西側道路」という。)と,幅員2メートルの通 路状の部分で長さ2メートル接するのみであった。 (甲5の1・2,甲6,7, 9)(5) 原告は,周辺住民に対し,平成27年11月7日,旧擁壁を取り壊して擁壁を新設する計画に係る説明会を開催し,さらに,同年12月頃,本件土地上に鉄筋コンクリート造り地上4階地下1階建て(外観上は5階建て)の共同住宅(以下「本件マンション」という。)を建築する計画を説明した。これ らの計画は,旧擁壁の跡に高さ約2メートルの新たな擁壁を設置し,その東端に間口約3メートルの開口部を設けて本件私道に通じる階段を設置することで本件土地から本件私道への出入りを可能にすることを内容とするものであった。(甲8の3~9,甲30,33,弁論の全趣旨)(6) 原告は,平成28年1月頃,本件土地の造成工事に着手したところ,被告 補 私道への出入りを可能にすることを内容とするものであった。(甲8の3~9,甲30,33,弁論の全趣旨)(6) 原告は,平成28年1月頃,本件土地の造成工事に着手したところ,被告 補助参加人は,同月11日から翌12日にかけて,本件私道上の本件土地寄りの部分に,本件土地に沿って,長さ11.75メートルにわたり,別紙1物件目録記載2(1)の高さ1.57メートルの黒色フェンス(以下「本件フェンス」という。)を設置し,次いで,同年2月初め頃,本件私道から見て同フェンスの内側に近接して同目録記載2(2)の高さ1.79メートルのブロック 塀(以下「本件ブロック塀」といい,本件フェンスと合わせて「本件各工作物」と総称する。)を設置し,これらにより,原告による上記の工事がされても,本件土地と本件私道とは引き続き相互に通行できない状態となった。(甲18,19)(7) 原告は,平成28年3月1日,法6条の2第1項に基づき,指定確認検査 機関である株式会社国際確認検査センターに対し,本件マンションの建築確認を申請した(以下「本件建築確認申請」という。)ところ,株式会社国際確認検査センターは,同年8月10日,本件マンションが建築基準関係規定に適合することを確認して,原告に対し,確認済証を交付した(甲8の1,甲28。以下「本件建築確認」という。)。 本件建築確認は,本件土地が本件私道に長さ6メートル以上接することで初 めて,本件マンションが東京都建築安全条例10条の3第1項,17条,19条等の建築基準法令の規定に適合するとしてされたものであって,本件各工作物は完了検査時までには撤去することを前提にされており,西側道路との接道のみでは,本件マンションは建築基準法令の規定に適合しないものであった。 また,本件 適合するとしてされたものであって,本件各工作物は完了検査時までには撤去することを前提にされており,西側道路との接道のみでは,本件マンションは建築基準法令の規定に適合しないものであった。 また,本件私道が2項道路とされる範囲を,中心線からの後退(セットバック) ではなく,本件土地と本件私道の境界線から北側に4メートルの部分とし(いわゆる一方後退),本件土地側のセットバックによる敷地面積の減少を考慮しないことによって本件マンションが基準容積率を充足する内容のものであった。 (甲8の2~6,弁論の全趣旨)(8) 被告の建築監視員は,原告に対し,平成28年9月1日,本件土地と本件 私道の間に本件各工作物が存在する状況を前提に,本件建築確認による建築工事に着工した場合,法43条及び東京都建築安全条例10条の3第1項,17条,19条ほかの建築基準法令の規定に抵触し,違反となるおそれがあるとして,法12条5項に基づき,本件マンションの着工予定日に関する報告を求めた(甲26,弁論の全趣旨)。 (9) なお,原告は,被告補助参加人に対し,平成28年2月ないし3月頃,本件土地所有権及び人格権(通行権)に基づき本件各工作物の撤去等を求める仮処分命令を東京地方裁判所に申し立てたが,同裁判所は同月4日付けで同申立てを却下した。これに対し,原告が即時抗告をしたが,東京高等裁判所は同年5月17日付けで同抗告を棄却し,さらに,原告が許可抗告の申立て 及び特別抗告をしたが,それぞれ同裁判所において同年6月20日付けで許可抗告を許可しない旨の決定及び最高裁判所において同年9月7日付けで特別抗告を棄却する旨の決定がされた。(丙1ないし4)また,原告は,被告補助参加人に対し,平成28年,本件土地所有権及び人格権(通行権)に基づ い旨の決定及び最高裁判所において同年9月7日付けで特別抗告を棄却する旨の決定がされた。(丙1ないし4)また,原告は,被告補助参加人に対し,平成28年,本件土地所有権及び人格権(通行権)に基づき本件各工作物の撤去並びに本件各工作物設置の不法行 為に基づき損害賠償等を求める本案訴訟を東京地方裁判所に提起したが,同裁 判所は,平成29年2月8日,同請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。これに対し,原告が控訴したが,東京高等裁判所は同年7月13日,同控訴を棄却する旨の判決を言い渡した。(丙5,7) 3 主な争点と当事者の主張本件の主な争点は,(1)本件是正措置命令の義務付けの訴えの適否に関し,① 原告適格の有無(争点1)及び②本件各工作物が除却されないことによる原告の重大な損害の有無(争点2),並びに(2)本件是正措置命令の義務付け請求の成否に関し,①被告補助参加人による本件各工作物の設置によって,本件土地が法43条1項の規定等に抵触することとなるか否か(争点3)及び②処分行政庁が本件是正措置命令をしないことが裁量権を逸脱・濫用するものであるか 否か(争点4)であり,これらに関する当事者の主張は,以下のとおりである。 (1) 争点1(原告適格の有無)(被告の主張)本件土地と本件私道との間にはもともと旧擁壁で覆われた約6メートルの高低差のがけがあり,その間を直接行き来することはできず,現に本件土地の前 所有者は,本件土地から公道に至る際には,西側道路のみを通行しており,本件私道は本件土地の所有者の通行の用に供されていたわけではなかった。すなわち,本件土地の所有者は,本件私道を接道として享受する利益を有しておらず,反射的利益として本件私道を利用し得たというにすぎな 件私道は本件土地の所有者の通行の用に供されていたわけではなかった。すなわち,本件土地の所有者は,本件私道を接道として享受する利益を有しておらず,反射的利益として本件私道を利用し得たというにすぎないから,仮に本件私道が廃止されたとしても,日常生活上著しい支障を受ける立場にはないと解 される。 したがって,本件土地の所有者は,元来,本件私道の廃止処分の取消し等を求めることについて,法律上保護された利益を有していないのであり,そうである以上,本件私道が(事実上)変更又は廃止された場合であっても,その是正を求めることについて法律上の利益を有するものではなく,当該是正措置命 令の義務付けを求める原告適格はない。 (原告の主張)ア法45条1項は,もともと私道の管理は原則として当該私道所有者に委ねられていることから,私道の廃止や変更をすることは,私道所有者が本来自由にできるはずであるが,私道の廃止等によって接道要件に抵触する敷地が出現することは,その敷地の権利者及び建物の所有者にとって不測 の損害となることから,そのような不合理な結果が生じないよう,特定行政庁が,当該私道の変更や廃止を禁止し,又は制限をすることができることとしたものである。したがって,同項は,私道に沿接する土地の所有者の当該私道利用についての利益を保護すべきものとする趣旨を含むと解される。 原告は,本件私道に約12メートルの長さで接する本件土地を所有し,本件土地が本件私道に接することを前提として本件マンションの建築を予定しているところ,本件各工作物がなければ,本件マンションを建築するに当たって問題なく接道要件を満たすものの,本件各工作物の存在によって,被告から,本件建物は法及び東京都建築安全条例に抵触す 築を予定しているところ,本件各工作物がなければ,本件マンションを建築するに当たって問題なく接道要件を満たすものの,本件各工作物の存在によって,被告から,本件建物は法及び東京都建築安全条例に抵触することとなると警告さ れ,工事を行っても検査済証は出せないとして,工事の続行を止めるように指導されているのであり,これは,不利益処分を予告するものである。すなわち,原告に対する不利益な扱いが被告補助参加人による本件各工作物の築造によってされ,本件マンションの着工ができないものであるから,原告は,本件是正措置命令を求める原告適格を有する。 イ被告は,本件土地の前所有者による本件私道の通行態様を問題とし,前所有者が本件土地から公道に至るために日常的に本件私道を利用していた事実がないことから,原告は本件私道の利用(通行)について人格的利益を有してはおらず,反射的利益として本件私道を利用し得たにすぎない原告の利益は,法律上保護された利益とはいえないと主張する。 しかし,原告適格の有無の判断において,原告が人格的利益を有すること が必要なものではなく,法43条1項の接道要件を充足する「道路」とは,法上の道路であればよく,建築物の敷地の所有者が通行権(人格的権利)を有することや,私道所有者から通行承諾を得ていることは要件とはなっていない。原告は,本件私道の通行権を有するか否かにかかわらず,原告適格を有する。 なお,道路の隣接地から道路に出ることは,通行権の問題ではなく,所有権に関わる相隣関係の問題であるところ,道路に隣接する土地を所有している所有権のみで,道路に出る権利はあるのであり,道路の所有者から道路へ出ることができないよう壅塞されるべき理由はない。 また,道路の隣接地は 問題であるところ,道路に隣接する土地を所有している所有権のみで,道路に出る権利はあるのであり,道路の所有者から道路へ出ることができないよう壅塞されるべき理由はない。 また,道路の隣接地は,道路に出ることができるし,できなければならい。 それは,所有権に基づく相隣関係で考えても,通行権で考えても同様であり,単なる通行者は利害関係が少ない場合もあるかもしれないが,道路の隣接地所有者は,密接な利害関係があるため,道路を従前使用していたか否かにかかわらず,通行権は認められるべきである。 (2) 争点2(本件各工作物が除却されないことによる原告の重大な損害の有無) (原告の主張)ア本件土地は,地積が398.92平方メートルと広さがあることから,その使用方法としてはマンション建設用地とするのが一般であり,それが最有効活用の方法である。 原告は,不動産の売買等を目的とする会社であり,本件売買に当たり, 本件土地の形状や権利関係を調査した上で,本件土地上に共同住宅の建設が可能であると判断し,本件土地を買い受け,旧擁壁を撤去して,新たに本件私道への接道が可能となるような形状に土地を造成して擁壁を新設したものであり,本件売買及び本件土地の造成と擁壁新設のために,平成27年9月18日に1億0500万円,平成28年2月23日に2200 万円の無尽給付を受けたところ,原告は,本件マンションを建設し,直ち に上記給付の返済をする予定である。 原告は,同年8月10日に本件建築確認を得たことから,同日以降,いつでも適法に本件マンションの建築に着工することができるが,これを完成したとしても,本件各工作物の存在により,接道義務に違反する状態となる。原告は,被告から, 件建築確認を得たことから,同日以降,いつでも適法に本件マンションの建築に着工することができるが,これを完成したとしても,本件各工作物の存在により,接道義務に違反する状態となる。原告は,被告から,本件各工作物が撤去されない限り,検査済証は 出せない旨を告知されており,処分行政庁によって本件マンションの使用禁止命令が出される可能性もあるところ,本件マンションを建築したとしても,検査済証が出されなければ,実際上売却は不可能であり,原告に膨大な損害が生じることが明らかであるため,本件各工作物が撤去されない限り,現実的に原告が本件マンションの建築に着手することはできない。 本件マンションの建築着工が遅れると,その間,無尽給付契約の利息に相当する掛増金支払分について,原告に損害が生じるところ,原告が支払を要する掛増金の金額は,平成33年1月まで月76万2000円と負担は重く,加えて本件各工作物が撤去されない限りは,無尽給付契約の元金の返済も困難となる。本件各工作物が除却されない場合には,原告は倒産 に追い込まれるおそれが高度であり,ひとたび破産等の事業停止となると,その損害は回復することができないから,原告に重大な損害が生じることは明らかである。 イ被告は,原告に本件私道の通行権がなく,これを使用する権原がない以上,本件私道を利用できないことをもって原告に「重大な損害」が生じる おそれがあると評価することはできず,本件マンションの建築が事実上できなくなるとの結果が生じるとしても,原告が有していた既得の地位ないし期待が侵害されたものということはできないと主張する。 しかし,接道要件を充足するかどうかは,建築物の敷地が法上の道路に接していて,物理的に避難等を要する際に,当該敷地から当該道 位ないし期待が侵害されたものということはできないと主張する。 しかし,接道要件を充足するかどうかは,建築物の敷地が法上の道路に接していて,物理的に避難等を要する際に,当該敷地から当該道路に出る ことができるかどうかという観点から判断されるものであり,当該道路の 通行について,敷地所有者が人格的権利を有するか否かや,私道所有者の承諾の有無が問われるものではない。原告代表者は,被告の建築指導課に赴き,被告から,本件土地を造成して階段等を設置することによって,本件土地から本件私道にアクセスすることが可能となった場合には,本件私道を接道として,共同住宅建築のための接道要件を満たすこととなること の確認を得た上で,本件土地を共同住宅建築用地として買い受け,土地の造成を行ったものであるところ,本件各工作物は,原告が本件土地を買い受けたときから既に存在していたものではなく,本件土地の造成工事を開始した後になって,被告補助参加人によって造られたものである。原告は,本件売買時より,本件私道を法上の道路として接道要件を満たし,共同住 宅を建築することができることについて,期待を有していたものであり,本件各工作物が撤去されないことにより,その期待が侵害されているものであり,原告に重大な損害が生じることは明らかである。 (被告の主張)本件土地は,西側道路に接しているのであるから,本件マンションのよう な共同住宅ではなく,戸建て住宅や一定の規模の共同住宅であれば,建築基準関係規定上,必ずしも本件私道に接道することが求められるわけではなく,そのような建築物の設計は可能であった。 本件各工作物を除却せよとの是正措置命令の義務付けがされないことにより本件マンションの建築が事実上できなくな に接道することが求められるわけではなく,そのような建築物の設計は可能であった。 本件各工作物を除却せよとの是正措置命令の義務付けがされないことにより本件マンションの建築が事実上できなくなる等の結果が生じるとしても, かかる結果は,原告が本件私道の利用に関して被告補助参加人との協議が整わないままに計画を強行したことによるのであって,原告が有していた既得の地位ないし期待が侵害されたものということはできない。 したがって,上記是正措置命令がされないことにより原告の計画が実現できなくなることをもって,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)37条 の2第1項に規定する「重大な損害」と法的に評価することもできないとい うべきである。 (3) 争点3(被告補助参加人による本件各工作物の設置によって,本件土地が法43条1項の規定等に抵触することとなるか否か)(原告の主張)ア本件各工作物の設置が法45条1項の「私道の変更」に当たること (ア) 建築基準法令の規定が接道要件を定めるのは,道路が防災活動や避難経路として重大な役割を有するからである。ある建物が私道によって接道義務を果たす場合に,私道所有者による私道の廃止又は変更により,私道に接する第三者の建築物が一方的に建築基準法令の規定に違反する状態になることは不合理であることなどから,法45条1項 は,私道に接する不動産を所有する第三者に不測の損害が生じることのないよう,特定行政庁が是正措置を行うことを可能にしたものである。そのため,法上の道路である以上は,その所有者の独占的,排他的利用は許されず,所有者以外の第三者も含む一般公衆の通行が許容されなければならない。 本 を可能にしたものである。そのため,法上の道路である以上は,その所有者の独占的,排他的利用は許されず,所有者以外の第三者も含む一般公衆の通行が許容されなければならない。 本件マンションが接道要件を満たすためには,本件私道との接道が不可欠であるが,本件各工作物の存在により,本件土地から本件私道への出入りが一切不可能となっているところ,本件私道からこれに接する本件土地に入るという交通を,本件私道所有者が私権を行使して妨害することは許されず,本件各工作物の設置は,私道所有者の権利 行使として許されない原告に多大な損害を生じさせる濫用行為であり,法45条1項が禁じる「私道の変更」に当たる。 (イ) 被告は,本件土地の土砂流出の危険があるとした上で,被告補助参加人による本件各工作物の築造目的が土砂流出に対応するための安全確保策であり,緊急かつ一時的な措置にすぎないことから,その築造 が「私道の変更」に当たらないと主張する。 しかし,原告は,本件土地の所有者として本件土地を管理する責任を有しており,土砂の流出などが起こることのないよう,措置を講じている。土砂流出の危険があるなどということは,平成29年6月9日の本件第4回口頭弁論期日において陳述された被告準備書面において初めてなされた主張であり,被告は本件土地について土砂が流出する危険があ るなどと認識をした事実もなく,具体的な危険性も存在しない。被告補助参加人も,同被告準備書面が送付されるまで,土砂流出の危険を本件各工作物の主な築造目的として主張したことはなく,過去の原告との交渉経緯からも,その設置の目的は,本件マンション居住者に本件私道を通行させないようにすることにあり,その設置状況や設置目的に鑑みて 物の主な築造目的として主張したことはなく,過去の原告との交渉経緯からも,その設置の目的は,本件マンション居住者に本件私道を通行させないようにすることにあり,その設置状況や設置目的に鑑みて も,本件各工作物は緊急的かつ一時的に設置されたものであることをうかがわせる事実は一切存在していない。 イ本件土地が本件私道に接する法45条1項の「敷地」に当たること(ア) 被告は,法45条1項の「敷地」は,既に建物が存在する土地を意味するものであって,本件土地には本件マンションはいまだ存在して いないと主張するが,同項は私道の廃止又は変更がされようとする時点において,道路に接する敷地に必ず建築物が存在しなければならないとするものではない。 本件土地には本件売買前,前所有者の居住する建物が建てられており,原告は,その建物を取り壊し,新たな建物として本件マンション を建設するための本件建築確認申請を出しているのであり,一旦建替えのために建物を取り壊したら「敷地」ではなくなるなどとしたら,私道に面する土地上の建物は廃道の危険があるため建替えできないこととなるが,そのような主張は,詭弁であり,極めて不誠実であって,義務を行わないための言い訳にすぎない。 建物は存在しなくなったものの,建築することが近い将来において 具体的に予定されている場合も当然「敷地」と解すべきである。 (イ) 被告は,法45条1項の「敷地」に該当するためには,当該私道によって接道要件を満たす建物が存在しているか,従前当該私道によって接道要件を満たしていた建築物の存在した敷地であることを要するとも主張する。 しかし,土地を購入して建物を建築しようとする 要件を満たす建物が存在しているか,従前当該私道によって接道要件を満たしていた建築物の存在した敷地であることを要するとも主張する。 しかし,土地を購入して建物を建築しようとする者は,①建物の建築を目的として土地の所有権を取得し,②建築を行うため,法令で定められた近隣に対する説明会の開催や建築標識の設置などの手続を行い,③建築確認を得て工事に着手し,④建築工事を完了し,⑤完了検査を受けて検査済証を得,⑥居住者が入居するとの順で手続を踏んで いくこととなるところ,被告の主張を前提とすると,資本を投下して建物の建築工事を終えたとしても,完了検査より前に私道の変更がされて接道要件に抵触することとなった場合には,建築主は,特定行政庁から,法9条1項に基づき,建物の使用禁止や除却命令等が出されることとなる一方で,私道の変更を行った私道所有者に対しては,何 らの措置もされないこととなる。このような対応が許されるとすると,私道と接する敷地の買受けには大きなリスクを伴うこととなり,敷地の買受人の地位は非常に不安定となるし,上記のような不平等な取扱いとなる対応は許されない。 また,上記の被告の主張を前提とした取扱いは,本件私道が「道路」 であることの性質にもそぐわない結果となる。すなわち,「道路」である以上は,誰でも自由に通行することができ,私道所有者は,一般第三者の私道の通行や私道への立入りを全面的に禁止したり,阻害したりすることは許されないから,被告補助参加人は,原告に対し,本件私道への立入りの禁止を求めたとしても,その請求は認められないと ころ,本件各工作物の設置は,訴えを提起したとしても認められない 請求を自力で実現する行為にほかならず,行政庁において,本件土地が法45条 求めたとしても,その請求は認められないと ころ,本件各工作物の設置は,訴えを提起したとしても認められない 請求を自力で実現する行為にほかならず,行政庁において,本件土地が法45条1項の「敷地」に当たらないとして被告補助参加人の行為を容認することは,法が私道を「道路」として扱うこととした趣旨,目的を没却する結果となり,私道所有者のみを有利に,敷地所有者のみを一方的に不利に取り扱うものであって,同項の適用範囲を不当に 狭めるものであり,相当でない。 建物の工事が完了する前であっても,建物の建築を具体的に予定し,建築に着手するための手続がとられた後であれば,建築を予定する敷地所有者の期待は法的保護に値するものであるといえ,私道に接する土地は「敷地」に該当すると解すべきである。原告は,本件マンショ ン建築に先立ち,旧擁壁の撤去を終えて擁壁新設に着手し,本件マンションの建築計画を近隣住民に説明し,本件建築確認申請に先立ち,文京区細街路拡幅整備要綱により,事前に協議書を提出することを要することから,平成27年12月21日に処分行政庁に対して細街路拡幅整備協議変更届を提出したところ,本件フェンスはその後で設置 され,本件ブロック塀は,文京区中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整及び開発事業の周知に関する条例6条1項に基づき本件マンションに係る建築標識を設置し,同条3項に基づき平成28年1月18日に処分行政庁に対して標識設置届出を行った後で設置されたものであるから,本件各工作物の設置がされた時点において,本件土地は 本件マンションの建築予定地として「敷地」に該当する。 (ウ) 被告は,本件土地は,北側の本件私道との間が法42条2項ただし書の適用される「がけ地」であったことか 本件土地は 本件マンションの建築予定地として「敷地」に該当する。 (ウ) 被告は,本件土地は,北側の本件私道との間が法42条2項ただし書の適用される「がけ地」であったことから,本件私道に接する法45条1項の「敷地」に該当しないとも主張する。 しかし,法42条2項ただし書は道路の幅員確保のために規定され たものであるところ,この規定を根拠として,セットバック義務を負 わないがけ地を含む土地が,法45条1項の「敷地」に該当しないということにはならない。「がけ地」は高さや形状など様々であり,非常に急峻で到底造成ができないものがある一方,現在の技術によっては,地盤面を下げて擁壁を新設することで,接道やセットバックが可能となることもあるが,その場合でも通常のいわゆる中央後退によるセッ トバックに比して多額の費用を要することになるため,がけ地所有者にそのような負担を強いることは相当でないことから,「がけ地」等に沿う道路については一方後退となっているものである。一方で,がけ地であっても,土地を造成してがけ地に沿う2項道路に出入りすることが可能となれば,当該がけ地を含む土地は「建築物の敷地」となり, 当該2項道路は「道路」となって,法43条1項の接道要件を満たすことになるから,従前がけ地であったとしても,現に道路に接するのであれば,建築確認は下りるのであり,検査済証の交付もされる。法43条1項の「敷地」は,過去にその敷地にがけ地が含まれていたのかどうかは何ら考慮されず,がけ地であったことが問題とはならない ところ,法45条1項の「敷地」は,法43条1項と同様に解することが必要であり,過去にがけ地であったことが,法45条1項の「敷地」に当たるか否かの判断に影響するものではない。 い ところ,法45条1項の「敷地」は,法43条1項と同様に解することが必要であり,過去にがけ地であったことが,法45条1項の「敷地」に当たるか否かの判断に影響するものではない。 (被告の主張)ア本件各工作物の設置が法45条1項の「私道の変更」に当たらないこと 被告補助参加人によれば,本件各工作物は,本件土地内のがけが崩落して土砂が本件私道又は近隣の土地に流入することを防ぐため設けたものであり,その存置については原告と協議の上決めるとのことである。本件土地に関しては,近隣居住者から被告に対し,工事現場に仮囲いが設けられていない等の陳情が寄せられており,本件私道を所有,管理している被告補助参加人が, 本件私道を通行する者や被告補助参加人が賃貸している近隣の土地の借地人 の安全を確保するため本件各工作物を設けた旨の説明には相応の説得力があるといえ,その理由,態様からすれば,本件各工作物は,緊急かつ一時的な対応として設けられたものとも考えられ,少なくとも現時点では,恒久的な工作物に当たるとは断定できない。このような緊急かつ一時的な対応として設けられる工作物として,上下水道,電気,ガス等のインフラストラクチャ ーに係る工事のための仮囲い等の設置は,法45条1項が禁じる私道の変更には当たらないというべきところ,本件各工作物の設置も,同項が禁じる「私道の変更」に当たるとは直ちには解されない。 イ本件土地が本件私道に接する法45条1項の「敷地」に当たらないこと(ア) 法45条1項が私道の変更又は廃止を制限しているのは,私道に接 して建築物が建築された後に当該私道を変更又は廃止した場合,当該建築物の敷地が接道義務に抵触することとなるおそれがあるた (ア) 法45条1項が私道の変更又は廃止を制限しているのは,私道に接 して建築物が建築された後に当該私道を変更又は廃止した場合,当該建築物の敷地が接道義務に抵触することとなるおそれがあるため,私道所有者による私道の変更又は廃止の自由を前提としながら,公益上の観点から特定行政庁がこれらを制限できる旨を規定したものであり,同項にいう「敷地」とは,既に建物が存在する土地を意味すると解す るのが相当である。 本件土地に本件マンションはいまだ存在していないのであるから,本件土地は,法45条1項にいう本件私道に接する敷地には当たらない。 (イ) 被告は,建物建替えのために建物を取り壊したら「敷地」でなくな るなどという主張はしておらず,法45条1項にいう「敷地」に該当するためには,当該私道によって接道要件を満たしている建築物の敷地であることを要するものと解すべき解釈を前提として,当該「敷地」とは,そのような敷地上に従前から建物が存在する土地を意味すると主張しているものである。また,そのような同条の趣旨からすれば, 本件私道を接道として建物を建築することができるという将来的な期 待を保護しようとするものではなく,これは近い将来に具体的な建築計画があった場合でも異なるものではないと解すべきである。 (ウ) さらに,本件私道は,本件土地側が「がけ地」となっていることから,旧擁壁下の道路境界線から北側へ4メートルのいわゆる一方後退(法42条2項ただし書)となっていたものであるところ,いわゆる 中心後退か一方後退かの判断は,「がけ」の部分が将来道路として整備されることが期待され得るかどうかが重要な要素となるものであって,一方後退になっているということは,当該がけ地 ところ,いわゆる 中心後退か一方後退かの判断は,「がけ」の部分が将来道路として整備されることが期待され得るかどうかが重要な要素となるものであって,一方後退になっているということは,当該がけ地が将来道路として整備されることが期待され得ないと評価されていたということであり,そのようながけ地等を介して接する2項道路を接道として用いて建築 物の敷地となることを,法は本来想定していないものと解される。 このような観点からしても,本件土地は,本件私道との関係で法45条1項にいう「敷地」には該当しないというべきである。 (4) 争点4(処分行政庁が本件是正措置命令をしないことが裁量権を逸脱・濫用するものであるか否か) (原告の主張)ア建築基準法令の規定並びに法45条の趣旨及び目的に照らし,「私道の変更」の態様や目的,必要性や,これによって害される行政目的の内容及び程度,これによって私道に接する敷地所有者に生じる不利益の程度や,敷地所有者が当該私道を接道として建物を建築することができるものと 信じたその期待の程度,自発的な違反解消の見込み等を総合考慮して,是正措置をとって行政目的達成により得られる利益と,是正措置をとることによって損なわれる利益とを比較衡量し,前者が後者に優越すると認められるにもかかわらず,是正措置がとられない場合には,裁量権の逸脱又は濫用があるものといえる。 本件において,後者に比して前者ははるかに大きいから,処分行政庁が, 本件是正措置命令をとらないことは,裁量権の逸脱又は濫用に当たる。 イ被告は,本件是正措置命令を行っていない処分行政庁の判断に裁量権の逸脱・濫用はない理由として,被告補助参加人の行為が法45条1項に 令をとらないことは,裁量権の逸脱又は濫用に当たる。 イ被告は,本件是正措置命令を行っていない処分行政庁の判断に裁量権の逸脱・濫用はない理由として,被告補助参加人の行為が法45条1項に違反すると断じきれるものでないこと,本件土地からの土砂流出のおそれが否定できないこと,本件私道の通行権をめぐる争いが未解決であることを 挙げるが,被告補助参加人の行為が法45条1項に当たることは上記(3)の争点3に関する原告の主張のとおりであり,本件土地からの土砂流出のおそれは事実無根の主張である。また,本件私道の通行権をめぐる争いについては,処分行政庁による是正措置命令の判断に当たり考慮されるべき事情ではない。 処分行政庁は,尽くすべき考慮を尽くさず,逆に考慮すべきでない事柄を不当に重視して,本件是正措置命令をとらないものであり,裁量権の逸脱又は濫用に当たることは明らかである。 (被告の主張)仮に本件各工作物の設置が「私道の変更」に当たるとしても,是正措置を 命じるか否かは特定行政庁の合理的裁量に委ねられているところ,上記(3)の争点3に関する被告の主張のとおり,被告補助参加人の行為は法45条1項に違反すると断じきれるものではないこと,また,本件土地からの土砂流出のおそれが依然として否定できないこと,本件の背景事情たる原告と被告補助参加人との間の本件私道の通行権をめぐる争いが未解決であることからす れば,これらの事情を考慮して,現時点において本件是正措置命令を行っていないという処分行政庁の判断について,裁量権の逸脱又は濫用はないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 原告適格の有無(争点1)について (1) いわゆる非申請型の義務付けの訴えは,行政庁 の判断について,裁量権の逸脱又は濫用はないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 原告適格の有無(争点1)について (1) いわゆる非申請型の義務付けの訴えは,行政庁が一定の処分をすべき旨を 命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができる(行訴法37条の2第3項)。 ここで,法律上の利益を有する者とは,当該処分がされないことにより自己の権利又は法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該処分の根拠となる法令の規定が,不特定多 数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,かかる利益も上記の法律上保護された利益に当たり,当該処分がされないことによりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の義務付けの訴えの原告適格を有 するものというべきである。そして,当該法令の規定が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮して決すべきである(行訴法37条の2第4項,同法9条2項参照)。 (2) これを法45条1項に基づく是正措置命令の処分についてみると,同項は,私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定又は同条2項の規定に基づく条例の規定(以下「法43条1項の規定等」という。)に抵触することとなる場合に,特定行政庁に,その私道の変更又は廃止を禁止し,又は制限する是正措置命令の権限を委ねたものであり,これは 項の規定に基づく条例の規定(以下「法43条1項の規定等」という。)に抵触することとなる場合に,特定行政庁に,その私道の変更又は廃止を禁止し,又は制限する是正措置命令の権限を委ねたものであり,これは, 変更又は廃止に係る私道に接する敷地が法43条1項の規定等に抵触することを予防する趣旨に出た規定であることは明らかである。そして,法43条1項の規定は,交通上,安全上,防災上及び衛生上の観点から,建築物の敷地の接道義務を定めたものであり,同条2項の規定に基づく条例は,当該建築物の用途又は規模の特殊性により,避難又は通行の安全の目的を充分に達 し難いと認める場合に,その接道義務の内容を加重するものであって,これ らは,当該建築物の防災及び衛生並びにその居住者,利用者等の避難及び通行の安全を保護しようとするものといえるところ,少なくとも,敷地上の建築物について,当該私道により接道義務を果たす内容の建築確認を受けた上で当該建築物を建築した者又は建築しようとしている者(以下「建築確認取得者」という。)にとってのそうした利益は,専ら不特定多数者の一般的公益 の中に吸収解消させるにとどめられているものとはいい難く,これをその個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含んでいるものと解するのが相当である。 そうすると,敷地上の建築物について,私道の変更又は廃止があると主張する私道により接道義務を果たす内容の建築確認取得者は,法45条1項に 基づいて当該私道の変更又は廃止を制限する是正措置命令の義務付けの訴えを提起する原告適格を有するというべきである。 (3) 本件是正措置命令の義務付けを求める本件訴え部分は,原告が,被告補助参加人が本件私道上に本件各工作物を設置した行為が法45条1項の「私道の変更」に当た 格を有するというべきである。 (3) 本件是正措置命令の義務付けを求める本件訴え部分は,原告が,被告補助参加人が本件私道上に本件各工作物を設置した行為が法45条1項の「私道の変更」に当たると主張して,その除却を命ずる本件是正措置命令の義務付 けを求めるものであるところ,前提事実(7)のとおり,原告は,本件訴訟の口頭弁論終結時において,本件土地が本件私道により接道義務を果たす内容の本件建築確認を受けた上で,建築物を建築しようとしている立場にあるから,その主張する「私道の変更」に対する是正措置命令の義務付けを求めるにつき行訴法37条の2第3項にいう法律上の利益(原告適格)を有するという べきである。 (4) これに対し,被告は,本件土地と本件私道との間には旧来よりがけ地が存在し,本件私道が本件土地の所有者の通行の用に供されていたわけではなく,本件私道を接道として享受する利益を有しておらず,反射的利益として本件私道を利用し得たにすぎない旨主張する。 しかし,法45条1項によって法律上保護された利益の内容は上記(2)で 判示したとおりであり,少なくとも,当該私道により接道義務を果たす内容の建築確認取得者であれば,当該私道の変更又は廃止に対する是正措置命令の義務付けを求めるにつき法律上の利益を有すると解するのが相当であって,被告が主張する私道の旧来の利用状況等の具体的な事情は,本案要件の充足の有無に関する問題として扱われるべきものと解される。 そして,原告適格を認めた上で,私道の旧来の利用状況等の具体的な事情を審理した結果,「私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定又は同条2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合」に当たらず法45条1項に 用状況等の具体的な事情を審理した結果,「私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定又は同条2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合」に当たらず法45条1項に基づく是正措置命令の処分の義務付け請求の要件に欠けることが明らかになったときには,遡って当該隣地の所有 者に原告適格がないものとして遇するのではなく,その本案の要件を満たさないものとして扱うのが相当である。(以上につき,最高裁判所平成6年9月27日第三小法廷判決・集民173号111頁参照)上記の被告の主張は採用することができない。 2 本件各工作物が除却されないことによる原告の重大な損害の有無(争点2) について(1) 非申請型の義務付けの訴えは,一定の処分がされないことにより,重大な損害を生ずるおそれがあるときに限り,提起することができる(行訴法37条の2第1項)。 ここで,重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては,損害の回復 の困難な程度を考慮するものとし,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされる(同条2項)。 (2) これを本件についてみると,原告は,本件建築確認を受けた本件マンションについて,本件土地と本件私道の間に本件各工作物が存在する状況を前提に,被告の建築監視員から,法43条2項を受けた東京都建築安全条例の各 規定に抵触し,違反するおそれがあるとの指摘を受けていることが認められ (前提事実(8)),このまま本件マンションの建築工事に着手してこれを完成させたとしても,本件各工作物が存在するためにその完了検査を受けることはできず,本件マンションを実用に供することができない蓋然性が高いということができる。 また,証拠(甲2 に着手してこれを完成させたとしても,本件各工作物が存在するためにその完了検査を受けることはできず,本件マンションを実用に供することができない蓋然性が高いということができる。 また,証拠(甲21の1・2,甲22の1・2,甲23)及び弁論の全趣 旨によれば,原告は,本件マンションを建築する等のために総額1億2700万円の無尽給付を受け,掛増金を含むその掛金として総額1億8800万円余りの債務を負担していることが認められ,その弁済原資としては本件マンションを実用に供した際の分譲代金又は賃料を予定していたとうかがわれるところ,資本金が2100万円にとどまる特例有限会社の原告(原告代表 者資格証明書)にとって,その債務の規模と資本金の規模を比較すれば,本件マンションを実用に供することができないときには,その弁済は著しく困難となって,その経営が破綻する可能性も低くないと考えられる。 すなわち,処分行政庁により法45条1項に基づく本件是正措置命令の処分がされず,本件各工作物の存在が放置されることで,原告は,本件マンシ ョンを実用に供することができず,そのために,回復の困難な経営の破綻に至るおそれがあることすら相当程度見込まれるというべきであって,その損害の程度は著しいということができる。 原告に生じるおそれのある上記の損害は,本件是正措置命令の処分がされないことによる重大な損害に当たると解するのが相当である。 (3) これに対し,被告は,本件マンションの建築が事実上できなくなるとしても,原告の既得の地位ないし期待が侵害されたものということはできないから,これが実現できなくなることをもって行訴法37条の2第1項の「重大な損害」と法的に評価することはできない旨主張する。 しかしながら,上記1(4)に し期待が侵害されたものということはできないから,これが実現できなくなることをもって行訴法37条の2第1項の「重大な損害」と法的に評価することはできない旨主張する。 しかしながら,上記1(4)において判示したのと同様に,非申請型の義務付 けの訴えの訴訟要件の一つである重大な損害の有無を判断するに際しても, 損害の基礎となる地位の既得性の有無等は,本案要件として判断されるべき事柄であると解するのが相当であり,本案審理に先立ち,原告の既得の地位の有無に関わる事実等の詳細までをも具体的に審理,認定するといったことは想定されていないというべきである。原告について,本件是正措置命令の処分の義務付けの訴えの原告適格を有すると解すべき以上,本件是正措置命 令の処分がされないことと相当因果関係のある損害は全て取り込んで,これが重大な損害に当たるか否かの判断をするのが相当である。 上記の被告の主張は採用することができない。 3 原告の重大な損害を避けるため本件是正措置命令の義務付けの訴え以外の適当な方法の有無について 非申請型の義務付けの訴えは,さらに,一定の処分がされないことによる重大な損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り,提起することができる(行訴法37条の2第1項)が,上記1(2)に判示したとおり,法45条1項に基づく是正措置命令の処分が,個別的利益としても保護された関係者の法律上の利益を本来的に保護するために特定行政庁に権限を委ねられたものである ことに照らせば,原告にとって,本件是正措置命令の処分の義務付けを求めることについて,上記2に認めた重大な損害を避けるため他に適当な方法がないときに当たるということができる。 なお,行政手続による紛争解決と民事訴訟等の手続による紛争解決との間に 分の義務付けを求めることについて,上記2に認めた重大な損害を避けるため他に適当な方法がないときに当たるということができる。 なお,行政手続による紛争解決と民事訴訟等の手続による紛争解決との間に優劣があるわけではないから,ここにいう他に適当な方法があるかは,行政手 続の枠内において他に適当な方法があるかという観点から吟味されるべきものであって,被告補助参加人に対する民事訴訟の提起が可能であることは,ここにいう他に適当な方法がないことを左右しないと解される。 以上によれば,原告が本件是正措置命令の義務付けを求める本件訴え部分は,非申請型の義務付けの訴えとして適法というべきである。 4 被告補助参加人による本件各工作物の設置によって,本件土地が法43条1 項の規定等に抵触することとなるか否か(争点3)について(1) 法45条1項の意義等ア上記1(2)に判示したとおり,法45条1項は,私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定等に抵触することとなる場合に,特定行政庁に,その私道の変更又は廃止を禁止し,又は制限する是 正措置命令の権限を委ねたものである。そして,法43条1項の規定等は建築物の敷地の接道義務を定めたものであることに照らすと,法45条1項にいう「私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定等に抵触することとなる」といえるためには,当該私道が,そもそも,それに接する個々の敷地との関係において,交通上,安全上等の観点から人 が出入りし,通行することができるという機能(以下「接道機能」という。)を果たしている通路であると認められることが必要であり,法45条1項にいう「道路に接する敷地」であるとの要件を満たすために が出入りし,通行することができるという機能(以下「接道機能」という。)を果たしている通路であると認められることが必要であり,法45条1項にいう「道路に接する敷地」であるとの要件を満たすためには,当該私道が上記の点を充足する通路であることがその前提となっていると解される。 また,私道が,その中心線からの水平距離2メートル未満でがけ地等に沿 う2項道路である場合において,がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離4メートルの線をその道路の境界線とみなす(いわゆる一方後退)とされている(法42条2項ただし書。関係法令の定め(1)ア)のは,当該私道が,がけ地のほか,川,線路敷地を含むがけ地等に沿うものであるときは,当該がけ地等を構成する敷地と私道との境界を跨いで人が出 入りし,通行することは通常想定されないため,当該敷地の所有者等においても当該私道を利用することは予定されておらず,当該私道は,当該敷地との関係において接道機能を果たす必要がないことの半面として,公衆の通行に供することを受忍すべき2項道路の範囲は専ら当該私道の側で負担することが相当であることをも勘案して,当該私道の側に一方後退すべきこととし たものと解される。 以上の点を踏まえれば,敷地と2項道路に指定されたこれに沿う私道との間にがけ地等が存在するために,交通上,安全上等の観点からみて当該敷地と当該私道との境界を跨いで人が出入りし,通行することが通常予定されているとはいえない形状をしており,当該敷地の所有者等において当該私道を出入りや通行のために利用してきたような実績もなく,当該がけ地が急峻で ある等の事情により,社会通念上,その不利用の状況が変更される蓋然性も容易に認め難い場合には,当該私道は,当該敷地との関 を出入りや通行のために利用してきたような実績もなく,当該がけ地が急峻で ある等の事情により,社会通念上,その不利用の状況が変更される蓋然性も容易に認め難い場合には,当該私道は,当該敷地との関係で接道機能を果たす通路であるとはいえないというべきであり,当該敷地は,当該私道「に接する敷地」であるとの要件の前提を欠くものと解することが相当である。 イこれに対し,原告は,本件私道が法上の道路に当たる以上,その所有者 以外の第三者も含む一般公衆の通行が許容されなければならず,これに地図上隣接する一切の土地から直接出入りし,通行することは自由であると解すべきである旨主張する。 しかしながら,2項道路に指定された通路に出入りし,通行することが一般に認められるのは,法42条2項の指定がされることにより反射的な 利益が生じるためにすぎず,2項道路に指定された通路に沿う土地の所有者であることから当然に権利として出入り,通行が認められるわけではない。そして,一方後退について定める法42条2項ただし書は上記アに判示した趣旨をも含むものと解されるところ,2項道路に指定された通路に沿う土地の所有者であっても,そもそも当該土地の形状からして当該通路 に出入りし,通行することができないのであれば,当該土地は当該通路に接しているということはできないから,当該通路に直接出入りし,通行することが自由であるとの前提に欠けるものといわざるを得ない。 その余の点を含め,上記アに判示したところと異なる原告の主張は採用することができない。 (2) 検討 アそこで,上記(1)アの観点から本件についてみると,前提事実及び後掲各証拠等によれば,本件土地及び本件私道をめぐる状況について,以下の 。 (2) 検討 アそこで,上記(1)アの観点から本件についてみると,前提事実及び後掲各証拠等によれば,本件土地及び本件私道をめぐる状況について,以下の各事実が認められる。 (ア) 本件土地は,その北側において本件私道に沿っているが,本件売買当時,本件土地の平坦部は本件私道よりも約6メートル高く,本件土 地の北側は,急峻ながけ地となっており,そこに高さ約4メートルの旧擁壁が設置されていて,旧来,本件私道との間で人が出入りし,通行することができない状態にあった(前提事実(4))。 (イ) 本件私道は,被告補助参加人の運営する寺院が存在するほか,数軒の住宅及び共同住宅等が建築されている概ね正方形の区画を,北側, 西側及び南側の三方から取り囲むように設けられた一連の通路の南側の一部を構成する部分であり,当該一連の通路の幅員は概して狭く,主としてこれらの一連の通路を通行しなければ公道に出ることのできない上記の住宅等及び同通路西側の住宅等の居住者により利用されてきたことがうかがわれる。他方,本件土地の西側は,通路状の部分に より西側道路に2メートル接しており,本件土地上にかつて存在した建物に居住していたと考えられる本件土地の前所有者は,西側道路を通行して公道に出入りしていた。(前提事実(3)及び(4),甲6,12,弁論の全趣旨)(ウ) 原告は,平成27年9月に本件土地を購入し,同年末頃までには周 辺住民に対して旧擁壁の取壊し及び本件私道への出入り,通行を可能にする階段を伴う新しい擁壁の設置並びに本件マンションの建築の計画を説明したが,被告補助参加人は,これに反対する立場から,本件各工作物を設置した。原告は,本件各工作物が設 私道への出入り,通行を可能にする階段を伴う新しい擁壁の設置並びに本件マンションの建築の計画を説明したが,被告補助参加人は,これに反対する立場から,本件各工作物を設置した。原告は,本件各工作物が設置された後,本件建築確認申請を行い,本件建築確認を受けたが,その内容は,本件各工 作物を完了検査時までには撤去することを前提としたものであった。 (前提事実(3)及び(5)ないし(7),甲13ないし16)そして,原告は,被告補助参加人に対し,本件土地所有権及び人格権(通行権)に基づき本件各工作物の撤去並びに本件各工作物設置の不法行為に基づき損害賠償等を求める別訴を提起したが,同別訴において同請求をいずれも棄却する旨の判断がされ,これらの判断が上告審で覆される可能性を除け ば,私法上の権利として,本件各工作物を除去する方途は閉ざされている(前提事実(9))。 イ上記アの事実関係によれば,本件土地は,2項道路に指定された本件私道に沿って位置してはいるが,本件私道との間にがけ地が存在するために,交通上,安全上等の観点から本件土地と本件私道との境界を跨いで人が出 入りし,通行することが通常予定されているとはいい難い形状をしており,本件各工作物が設置された時点で,本件土地の所有者等において本件私道を出入りや通行のために利用してきたような実績もうかがわれず,社会通念上,本件土地の所有者等において,私法上の権利に基づいて,旧擁壁の存在した急峻ながけ地を跨いで本件私道に出入りし,通行することができ るようになる蓋然性も容易に認め難い状況にあったというべきであるから,本件私道は,本件土地との関係で接道機能を果たす通路であるとは認められない。 したがって,本件土地は,本件私道「に接する敷地」 なる蓋然性も容易に認め難い状況にあったというべきであるから,本件私道は,本件土地との関係で接道機能を果たす通路であるとは認められない。 したがって,本件土地は,本件私道「に接する敷地」であるとの要件に欠けるものと解すべきである。 ウなお,このように解するとしても,本件土地は西側道路に接しているから,本件土地の所有者としては,本件土地を敷地とするいかなる建築物をも適法に建築することができないわけではない。 また,仮に,本件土地の所有者等が,本件土地のがけ地部分の一部に階段を設けるなどして,交通上,安全上等の観点から本件私道への人の出入 り,通行が可能となるように現況を改変することについて,本件私道の所 有者の明示又は黙示の承諾を得られれば,本件私道が本件土地との関係で接道機能を果たす通路となり得る可能性もあるのであり,本件土地の最有効利用の可能性が全く閉ざされているわけでもない。 したがって,上記イのように解することで,2項道路として指定された本件私道に沿って位置する本件土地の所有者等の権利が不当に害される ことにはならない。 (3) 帰結以上によれば,本件各工作物の設置によって,本件土地が法43条1項の規定等に抵触することとなる場合に当たるとはいえず,被告補助参加人による本件各工作物の設置が,原告との関係で法45条1項の要件を満たしてい るとはいえないから,その除却を命じる本件是正措置命令の処分の義務付け請求は,その余の争点について判断するまでもなく,理由がない。 5 行政代執行の義務付けの訴えの適否について非申請型の義務付けの訴えは,行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないときに提起することが許されて までもなく,理由がない。 5 行政代執行の義務付けの訴えの適否について非申請型の義務付けの訴えは,行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないときに提起することが許されている(行訴法3条6項1号)と ころ,原告が求める処分をすべき法的権限を行政庁が有することを当然の前提にしているものと解される。 しかるところ,行政代執行は,行政上の義務として命ぜられた,他人が代わってなすことのできる行為について,義務者がこれを履行しない場合に,一定の要件の下に認められるものであって(行政代執行法2条),何ら行政上の義務が命ぜられて いない段階において,行政代執行を行うべき法的権限を行政庁が有するということはできない。 上記4に判示したとおり,本件是正措置命令の処分の義務付け請求に理由がない以上,その命令内容の行政代執行を行うべき法的権限を処分行政庁が有しているということはできないから,原告がその行政代執行の義務付けを求める本件訴え部分 は,処分行政庁においていまだ法的権限を有しない処分の義務付けを求めるものと して,不適法というべきである。 6 結論よって,本件訴えのうち行政代執行の義務付けを求める部分は不適法であるから却下し,本件是正措置命令の義務付け請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民事訴訟法61条,66条を適用して,主 文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官平山馨 裁判官馬場潤 豊 裁判官平山馨 裁判官馬場潤
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