主文 原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。理由 上告代理人阿部甚吉、同滝井繁男、同木ノ宮圭造、同阿部泰章、同仲田隆明の上告理由第一について。商法は、商人に関する取引上重要な一定の事項を登記事項と定め、かつ、商法一二条において、商人は、右登記事項については、登記及び公告をしないかぎりこれを善意の第三者に対抗することができないとするとともに、反面、登記及び公告をしたときは善意の第三者にもこれを対抗することができ、第三者は同条所定の「正当ノ事由」のない限りこれを否定することができない旨定めている(もつとも昭和二四年法律一三七号「法務局及び地方法務局の設置に伴う関係法律の整理に関する法律」附則一〇項により、「商法一二条の規定の適用については、登記の時に登記及び公告があつたものとみなす。」こととされている。)。商法が右のように定めているのは、商人の取引活動が、一般私人の場合に比し、大量的、反復的に行われ、一方これに利害関係をもつ第三者も不特定多数の広い範囲の者に及ぶことから、商人と第三者の利害の調整を図るために、登記事項を定め、一般私法である民法とは別に、特に登記に右のような効力を賦与することを必要とし、又相当とするからに外ならない。ところで、株式会社の代表取締役の退任及び代表権喪失は、商法一八八条及び一五条によつて登記事項とされているのであるから、前記法の趣旨に鑑みると、これについてはもつぱら商法一二条のみが適用され、右の登記後は同条所定の「正当ノ事由」がないかぎり、善意の第三者にも対抗することができるのであつて、別に民法一一二条を適用ないし類推適用する余地はないものと解すべきである。これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、本件約束手- 1 -形は、上 することができるのであつて、別に民法一一二条を適用ないし類推適用する余地はないものと解すべきである。 てはもつぱら商法一二条のみが適用され、右の登記後は同条所定の「正当ノ事由」がないかぎり、善意の第三者にも対抗することができるのであつて、別に民法一一二条を適用ないし類推適用する余地はないものと解すべきである。これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、本件約束手- 1 -形は、上 することができるのであつて、別に民法一一二条を適用ないし類推適用する余地はないものと解すべきである。これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、本件約束手- 1 -形は、上告人会社代表取締役Dが取締役を退任して代表権を喪失し、その登記がなされた後に、同人により会社の代表者名義をもつてE組ことFに宛てて振出され、更にFから株式会社G商店を経て被上告人に裏書譲渡されたというのであるから、被上告人は、Fにおいて、Dより右手形の振出交付を受けた際、右代表権の喪失につき善意であり、かつ、商法一二条所定の「正当ノ事由」があつたことを主張立証することによつてのみ上告人会社に右手形金を請求することができるにとどまり、Fの善意無過失を理由に民法一一二条を適用ないし類推適用して上告人会社の表見代理責任を追及することは許されないものといわなければならない。しかるに原審は、右「正当ノ事由」を顧慮することなく、Fが、本件約束手形の振出交付を受けた際、Dの代表権喪失につき善意無過失であつたと認め、民法一一二条により右手形に関する上告人会社の表見代理責任を認めたのであり、右判断は、前述の法理に違背し、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。よつて、その余の上告理由につき判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、Fにおいて本件約束手形の振出交付を受けた折り、右「正当ノ事由」があつたか否かについて、更に原審に審理を尽させるを相当とする。よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官岡原昌男裁判官小川信雄裁判官 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官岡原昌男裁判官小川信雄裁判官大塚喜一郎裁判官吉田豊- 2 -
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