平成29(行ケ)10045 特許取消決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年9月18日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文58,518 文字)

平成30年9月18日判決言渡 平成29年(行ケ)第10045号特許取消決定取消請求事件 口頭弁論終結日平成30年7月3日判決 原告ノバルティスアーゲー 同訴訟代理人弁護士北原潤一 同訴訟代理人弁理士小林浩 日野真美 箱田満 同訴訟復代理人弁理士西澤恵美子 被告特許庁長官 同指定代理人高堀栄二 藤原浩子 大宅郁治 河本充雄 板谷玲子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が異議2016-700138号事件について平成28年10月6日にした特許取消決定を取り消す。 第2 前提となる事実(証拠を掲記した以外の事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨から認められる。) 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,発明の名称を「低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)を調節するための分子および方法」とする発明について,平成20年10月31日を国際出願日とする特許出願(特願2010-532556号。優先権主張:平成19年11月2日,米国)をし,平成27年6月19日,特許権の設定の登録(特許第5764329号。請求項の数は39。)を受けた(以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。甲20) (2) 平成28年2月19日,本件特許につき特許異議の申立て(以下「本件異議申立て」とい を受けた(以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。甲20)(2) 平成28年2月19日,本件特許につき特許異議の申立て(以下「本件異議申立て」という。甲21)がされ,特許庁は,これを異議2016-700138号事件として審理した。 特許庁は,平成28年5月13日付けで,原告に対し,取消理由を通知し(以下「本件取消理由通知」という。),期間(90日)を定めて意見書を提出する機会を与えたが(甲22),原告はこれに応答しなかった。 特許庁は,平成28年10月6日,「特許第5764329号の請求項1ないし39に係る特許を取り消す。」との決定をし(出訴期間として90日を附加。以下「本件取消決定」という。),同月17日,その謄本が原告に送達された。 (3) 原告は,平成29年2月13日,本件取消決定の取消しを求めて,本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,各請求項記載の発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい,本件発明1~39を総称して「本件発明」ともいう。)。 【請求項1】特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であって,ここで,(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと ペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a特異 的であり,優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない,結合分子。 【請求項2】請求項1に記載のLRP6結合分子であって,ここで,抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324。 【請求項3】請求項2に記載のLRP6結合分子であって,ここで,抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結 請求項2に記載のLRP6結合分子であって,ここで,抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:(a)配列番号:1のアミノ酸70-109;(b)配列番号:1のアミノ酸114-152;(c)配列番号:1のアミノ酸157-196;(d)配列番号:1のアミノ酸201-237;または(e)配列番号:1のアミノ酸242-326。 【請求項4】請求項1に記載のLRP6結合分子であって,ここで,抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:(a)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(b)配列番号:1のアミノ酸889-929。 【請求項5】請求項4に記載のLRP6結合分子であって,ここで,抗体の抗原結合部分 が以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:(a)配列番号:1のアミノ酸889-929;(b)配列番号:1のアミノ酸677-680;(c)配列番号:1のアミノ酸720-723;(d)配列番号:1のアミノ酸763-766;(e)配列番号:1のアミノ酸806-809;または(f)配列番号:1のアミノ酸846-849。 【請求項6】抗原結合部分がWntシグナル伝達経路をアゴナイズすることができる,請求項1-5のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項7】抗原結合部分がWntシグナル伝達経路をアンタゴナイズすることができる,請求項1-5のいずれかに記載のL することができる,請求項1-5のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項7】抗原結合部分がWntシグナル伝達経路をアンタゴナイズすることができる,請求項1-5のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項8】抗原結合部分が1つ以上のWnt1,Wnt2,Wnt6,Wnt7a,Wnt7bまたはWnt10-特異的シグナル伝達活性をアンタゴナイズすることができる,請求項1-3のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項9】抗原結合部分が非ヒト霊長類のLRP6と交差反応する,請求項1-8のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項10】抗原結合部分が齧歯動物種のLRP6と交差反応する,請求項1-8のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項11】抗原結合部分がヒトLRP5と交差反応する,請求項1-10のいずれかに 記載のLRP6結合分子。 【請求項12】抗原結合部分が直鎖エピトープに結合する,請求項1-11のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項13】抗原結合部分が非直鎖エピトープに結合する,請求項1-11のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項14】LRP6結合分子が抗体のFabフラグメント,Fab’フラグメント,F(ab’)2,Fdフラグメント,一価フラグメント,二価フラグメント,一本鎖Fv,単一ドメイン抗体,ダイアボディまたはFvフラグメントを含む,請求項1-13のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項15】抗原結合部分がリン酸化LRP6(ホスホ-LRP6)に結合し,阻害することができる,請求項1-14のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。 【請求項16】抗原結合部分が1nM以下 結合部分がリン酸化LRP6(ホスホ-LRP6)に結合し,阻害することができる,請求項1-14のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。 【請求項16】抗原結合部分が1nM以下のKDにてLRP6に結合する,請求項1-15のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項17】抗体がヒト抗体である,請求項1-16のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項18】抗体がヒト化抗体である,請求項1-17のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項19】 LRP6結合分子がキメラ抗体である,請求項1-18のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項20】抗原結合部分が下記イソ型のいずれか:IgG1,IgG2,IgG3またはIgG4,の抗体由来である,請求項1-19のいずれかに記載のLRP6結合分子。 【請求項21】LRP6結合分子がLRP6がWnt1,Wnt2,Wnt6,Wnt7a,Wnt7bおよびWnt10から選択されるLRP6リガンドに結合することを阻害する,請求項1-20のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。 【請求項22】LRP6結合分子がLRP6がWnt1,Wnt2,Wnt6,Wnt7a,Wnt7bおよびWnt10に結合することを阻害する,請求項1-21のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。 【請求項23】請求項1-22のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項24】Wnt関連障害に罹患しているか,または患っている対象における,Wnt関連障害を処置するための医薬組成物であって,請求項1-22のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項25】 nt関連障害に罹患しているか,または患っている対象における,Wnt関連障害を処置するための医薬組成物であって,請求項1-22のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項25】癌に罹患しているか,または患っている対象における,癌を処置するための医薬組成物であって,請求項1-5および7-22のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項26】 骨関節症に罹患しているか,または患っている対象における,骨関節症を処置するための医薬組成物であって,請求項1-5および7-22のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項27】肥満または糖尿病に罹患しているか,または患っている対象における,肥満または糖尿病を処置するための医薬組成物であって,請求項1-14および16-20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項28】神経変性疾患に罹患しているか,または患っている対象における,神経変性疾患を処置するための医薬組成物であって,請求項1-14および16-20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項29】線維性障害に罹患しているか,または患っている対象における,線維性障害を処置するための医薬組成物であって,請求項1-14および16-20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項30】骨粗鬆症に罹患しているか,または患っている対象における,骨粗鬆症を処置するための医薬組成物であって,請求項1-14および16-20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項31】特異的にLRP6の 象における,骨粗鬆症を処置するための医薬組成物であって,請求項1-14および16-20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項31】特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であって,ここで,(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が (a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,抗原結合部分が,LRP6結合分子の非存在下または対照抗体の存在下での阻害と比較して,Wnt1シグナル伝達経路を少なくとも99%阻害し,Wnt3シグナル伝達経路を34%以下で阻害する(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,抗原結合部分が,LRP6結合分子の非存在下または対照抗体の存在下での阻害と比較して,Wnt1シグナル伝達経路を36%以下で阻害し,Wnt3シグナル伝達経路を少なくとも98%阻害する,結合分子。 【請求項3 ,LRP6結合分子の非存在下または対照抗体の存在下での阻害と比較して,Wnt1シグナル伝達経路を36%以下で阻害し,Wnt3シグナル伝達経路を少なくとも98%阻害する,結合分子。 【請求項32】Wntシグナル伝達経路をアゴナイズすることができる,請求項31に記載のLRP6結合分子。 【請求項33】Wntシグナル伝達経路をアンタゴナイズすることができる,請求項31に記載のLRP6結合分子。 【請求項34】請求項31-33のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項35】Wnt関連障害に罹患しているか,または患っている対象における,Wnt関連障害を処置するための医薬組成物であって,請求項31-33のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。 【請求項36】癌に罹患しているか,または患っている対象における,癌を処置するための医薬組成物であって,特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって,ここで,(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配 にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する,結合分子を含む医薬組成物。 【請求項37】肥満または糖尿病に罹患しているか,または患っている対象における,肥満 または糖尿病を処置するための医薬組成物であって,特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって,ここで,(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する,結合分子を含む医薬組成物。 【請求項38】神経変性疾患に罹患しているか,または患っている対象における,神経変性疾患を処置するための医薬組成物であって,特異的にLRP6の第1の する,結合分子を含む医薬組成物。 【請求項38】神経変性疾患に罹患しているか,または患っている対象における,神経変性疾患を処置するための医薬組成物であって,特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって,ここで,(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分 が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する,結合分子を含む医薬組成物。 【請求項39】線維性障害に罹患しているか,または患っている対象における,線維性障害を処置するための医薬組成物であって,特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって,ここで,(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号: P6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の 抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する,結合分子を含む医薬組成物。 3 本件異議申立ての理由(甲21)本件異議申立てに係る申立書(以下「本件異議申立書」という。)記載の異議理由は次のとおりである。 (1) 異議理由1(明確性要件違反,実施可能要件違反及びサポート要件違反)本件発明1の「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」及び「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a特異的であり,優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない」の意義は不明瞭である。したがって,本件発明1~39に係る特許請求の範囲の記載は不明瞭であるから,明確性要件を満たさない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1~39を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されて る特許請求の範囲の記載は不明瞭であるから,明確性要件を満たさない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1~39を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,実施可能要件を満たさない。 (2) 異議理由2(実施可能要件違反及びサポート要件違反)本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明のLRP6結合分子を具体的に製造したことが記載されているものの,製造した結合分子の結合部分が結合するエピトープのアミノ酸配列が具体的に開示されていない。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1~39を 実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,実施可能要件を満たさない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明には,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子を提供するという本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。したがって,本件発明1~39は,本件明細書に実質的に記載されたものではなく,サポート要件を満たさない。 (3) 異議理由3(実施可能要件違反及びサポート要件違反)本件特許の特許請求の範囲の記載は,LRP6結合分子が結合するエピトープについて極めて広範囲のアミノ酸の配列を包含しているが,本件明細書の発明の詳細な説明には,エピトープをどのようにして決定するか,あるいはエピトープが少なくともいくつのアミノ酸からなるかについて,ガイダンスとなるような記載が全くない。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1~39を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,実施可能要件を満たさない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明は,Wntシグナ の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1~39を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,実施可能要件を満たさない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明は,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子を提供するという本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。したがって,本件発明1~39は,本件明細書に実質的に記載されたものではなく,サポート要件を満たさない。 (4) 異議理由4(甲1に基づく進歩性欠如)FutureOncology, (2005) 1(5), 673-681(平成17年発行。甲1)には,次の発明が記載されている。 「[a’] 特異的にLRP6の第1のプロペラに結合する結合部分を含むLRP6結合分子であって,ここで,[b’](i) 結合部分が (a) 配列番号:1のアミノ酸20―326;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,[c’] 抗原結合部分が,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない,結合分子。」そして,本件発明は,甲1~7記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 異議理由5(甲4に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)特表2004-537289号公報(公表日:平成16年12月16日。 甲4)には,次の発明が記載されている。 「[a’]特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であって,ここで,[b P6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であって,ここで,[b’] (i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(a’)配列番号:1のアミノ酸148-168及び288-308;または(判決注:原文のまま)のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,[d’] (i)(判決注:原文のまま)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合する[モノクローナル抗体の抗原]結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であり,抗原結合部分が(c’)配列番号:1のアミノ酸768-788及び908-928のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番 号:1)のエピトープに結合する。」そして,本件発明は,甲4に実質的に記載された発明であるか,甲4~7記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 本件取消理由通知における理由(甲22)本件取消理由通知に係る取消理由通知書(以下「本件取消理由通知書」という。)記載の理由は,①本件発明1~39は,甲4に記載された発明である,②本件発明1~39は,甲1~7記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである,③本件特許は,実施可能要件を満たしていない,④本件特許は,サポート要件を満たしていない,⑤本件特許は, 発明1~39は,甲1~7記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである,③本件特許は,実施可能要件を満たしていない,④本件特許は,サポート要件を満たしていない,⑤本件特許は,明確性要件を満たしていない,というものであるが,これに対して原告が応答をした形跡は,証拠上認められない。 なお,取消理由の詳細については,本件異議申立書を参照することとされている。 5 本件取消決定の理由(甲23)本件取消決定に係る決定書記載の理由は次のとおりである。 「特許第5764329号の請求項1ないし39に係る発明は,願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし39に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。 これに対して,平成28年5月13日付けで取消理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,特許権者からは応答がなかった。 そして,上記の取消理由は妥当なものと認められるので,本件請求項1ないし39に係る特許は,この取消理由によって取り消すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。」第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(明確性要件,実施可能要件及びサポート要件の各適合性に関する判断の誤り) (1) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,本件発明1の「特異的」及び「優先的」との用語の意味が不明瞭で,その結果として本件発明1は意義が不明瞭なものとなっているから,本件発明1~39は明確性要件にも実施可能要件にも適合しないとの主張が記載されている。 しかし,これらの用語の意味は,本件明細書の記載から明瞭であるから,次のとおり,当該主張を参照してされた本件取消決定の判断は誤りである。 (2) 「特異的」との用語につ 載されている。 しかし,これらの用語の意味は,本件明細書の記載から明瞭であるから,次のとおり,当該主張を参照してされた本件取消決定の判断は誤りである。 (2) 「特異的」との用語について本件異議申立書には,本件明細書の段落【0038】に,Wnt1特異的アンタゴナイズLRP6結合分子は,β-カテニンリン酸化及び分解を少なくとも5%以上可能にする等の記載があることを指摘して,「特異的」との用語がどの程度の特異性を意味しているのかが不明瞭であるとの主張が記載されている。 しかし,本件発明において,「結合の態様」と「結合の結果であるシグナル伝達」とは異なる。本件発明1のLRP6結合分子(i)(特異的にLRP6の「第1のプロペラ」に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子をいう。以下同じ。)に係る「LRP6の第1のプロペラに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって」との記載における「特異的」とは,文字通り,結合の態様の説明であり,β-カテニンリン酸化及び分解(すなわち,標準Wntシグナル伝達)という特異的結合の結果とは別物である。 したがって,当業者は,この区別を認識でき,本件発明1の「Wnt1特異的」中の「特異的」という用語の意味を理解することができるから,不明瞭ではない。 (3) 「優先的」との用語について本件発明1は,LRP6結合分子(i)につき,特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的 であり,「優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」ものであるところ,当業者は,この「優先的」とは,本件明細書の段落【0228】記載の表2から,約2倍(Fab0 Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」ものであるところ,当業者は,この「優先的」とは,本件明細書の段落【0228】記載の表2から,約2倍(Fab023の場合,(100-23)/(100-62)=77/38)から約4倍(Fab015の場合,(100-1)/(100-77)=99/23)(判決注:下線を付した数値が,当該表中に記載されている数値である。)であることが理解できる。 すなわち,当業者は,請求項1の記載から,特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分は,Wnt3a誘導シグナル伝達経路と比較してWnt1誘導シグナル伝達経路を優先的に阻害すると理解できるし,また,特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分は,Wnt1誘導シグナル伝達経路と比較してWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を優先的に阻害すると理解できる。 したがって,本件発明1の「優先的」との用語は不明瞭でない。 (4) 本件発明2~39について独立形式の本件発明1を引用する従属形式の本件発明2~30,独立形式の本件発明31,これを引用する従属形式の本件発明32~35,及び独立形式の本件発明36~39についても同様である。 (5) 小括以上によれば,本件発明の用語に不明確な点はなく,本件特許は,明確性要件,実施可能要件及びサポート要件に適合している。 2 取消事由2(実施可能要件及びサポート要件の各適合性に関する判断の誤り)(1) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,本件明細書の発明の詳細な説明は,①本件発明の結合分子の結合部分が結合するエピトープのアミノ酸配列を具体的に開示していないから,当 の誤り)(1) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,本件明細書の発明の詳細な説明は,①本件発明の結合分子の結合部分が結合するエピトープのアミノ酸配列を具体的に開示していないから,当業者が本件発明1~39を実 施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず,実施可能要件に適合しない,②Wntシグナル伝達を調節するLPR6結合分子を提供するという本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえないから,本件発明1~39は,本件明細書の発明の詳細な説明に実質的に記載されたものでなく,サポート要件に適合しないとの主張が記載されている。 しかし,次のとおり,本件明細書には,LRP6の特定のアミノ酸領域に結合する抗体が実施可能に記載されているし,かつ本件発明の課題が解決できるように記載されているから,当該主張を参照してされた本件取消決定の判断は誤りである。 (2) LRP6結合分子の発明(本件発明1~22,31~33)についてア本件発明1は,LRP6アンタゴニスト抗体に,2つのクラスのLRP6結合分子,すなわち,「Wnt3および/または3aシグナル伝達を阻害する」「Wnt3および/または3a特異的LRP6結合分子」と,「他のWntタンパク質(Wnt1,2,6,7A,7B,9,10A,10B)シグナル伝達を阻害する」「Wnt1特異的LRP6結合分子」があることを見出したものである。このことは,本件明細書記載の実施例1,特に表2(【0228】)から理解できる。 また,本件発明1は,上記「Wnt1特異的LRP6結合分子であるWnt1特異的LRP6アンタゴニスト抗体」が,LRP6のプロペラ1に結合すること,及び,上記「Wnt3および/または3a特異的LRP6結合 本件発明1は,上記「Wnt1特異的LRP6結合分子であるWnt1特異的LRP6アンタゴニスト抗体」が,LRP6のプロペラ1に結合すること,及び,上記「Wnt3および/または3a特異的LRP6結合分子であるWnt3a特異的LRP6アンタゴニスト抗体」が,LRP6のプロペラ3に結合すること,を見出したものである。このことは,本件明細書記載の実施例3,特に表3(【0230】)から理解できる。 イこのように,当業者は,本件明細書の実施例1及び3の記載から,「Wnt3および/または3aシグナル伝達を阻害しているが,他のWntタ ンパク質シグナル伝達をあまり阻害していない,Wnt3および/または3a特異的LRP6結合分子がLRP6のプロペラ3に特異的に結合すること」及び「他のWntタンパク質シグナル伝達を阻害しているが,Wnt3および/または3aシグナル伝達をあまり阻害していない,Wnt1特異的LRP6結合分子がLRP6のプロペラ1に特異的に結合すること」が理解できる。そして,当業者は,「特異的にLRP6の第3のプロペラに結合し,抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a特異的であり,優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない,結合分子」又は「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合し,抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない,結合分子」との本件発明は,上記の記載に基づくものであることが理解できる。 さらに,本件明細書の段落【0226】には,「抗LRP6アンタゴニストFabsが優先的にWnt1またはWnt3a-誘導Wntシグナル伝達を阻害することを見出した。」と記載されて ことが理解できる。 さらに,本件明細書の段落【0226】には,「抗LRP6アンタゴニストFabsが優先的にWnt1またはWnt3a-誘導Wntシグナル伝達を阻害することを見出した。」と記載されており,本件発明1のLRP6結合分子が実際に特許請求の範囲に規定されている活性を奏することを示している。すなわち,本件明細書は,本件発明1のLRP6結合分子が,当分野で認識されているアッセイにおいて有用性を示すことを記載している。 したがって,本件発明1にあっては,結合する領域がLRP6の第1又は第3のプロペラであることが具体的に特定されていれば足り,LRP6のプロペラ内のエピトープのアミノ酸配列又は抗原結合部位のアミノ酸配列を限定的に記載する必要はない。 ウ以上によれば,本件明細書は,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子を提供するという本件発明1の課題が解決できるように記載され ているし,本件発明1を実施可能に記載している。 そして,本件発明1と同様の構成要件を有する独立形式の本件発明31,本件発明1又は本件発明31を引用する従属形式の本件発明2~22,32及び33についても同様である。 (3) 医薬組成物の発明(本件発明23~30,34~39)についてア本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,本件発明23~30及び34~39は,本件発明1~22又は31~33に係るLRP6結合分子を含む医薬組成物についての発明であるところ,これらの医薬発明につき,当業者がその発明を実施することができるように本件明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず,また,当該発明の詳細な説明には,当業者が発明の課題が解決できることを認識できるように記載されているとはいえないから,実施可能要件にもサポート要件にも適合しないとの 明の詳細な説明に記載されておらず,また,当該発明の詳細な説明には,当業者が発明の課題が解決できることを認識できるように記載されているとはいえないから,実施可能要件にもサポート要件にも適合しないとの主張が記載されている。 イしかし,本件明細書には,LRP6結合分子を含む医薬組成物の治療的使用について記載がされている。すなわち,医薬組成物については段落【0188】~【0208】に,ヒト患者を処置するための本件発明の使用については段落【0209】~【0225】に,Wntのシグナル伝達の異常が,「骨粗鬆症,骨関節症,多発性嚢胞腎,糖尿病,統合失調症,血管疾患,心疾患,非発癌性増殖性疾患および神経変性疾患」などと関連していることについては段落【0006】にそれぞれ記載されている。 したがって,当業者は,本件発明のLRP6結合分子が,請求項23~30及び34~39に記載の医薬として使用し得ると理解することができる。 (4) 小括以上のとおり,本件明細書は,当業者が本件発明を実施できる程度に十分かつ明確に記載されており,かつ,本件発明は本件明細書に記載された発明 であるから,本件特許は実施可能要件及びサポート要件に適合する。 3 取消事由3(実施可能要件及びサポート要件の各適合性に関する判断の誤り)(1) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,①本件発明のLRP6結合分子が結合する「エピトープ」は極めて広範囲のアミノ酸の配列を包含しており,当業者が本件発明1~39を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから,実施可能要件に適合しない,②本件明細書の発明の詳細な説明は,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子を提供するという本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載さ いないから,実施可能要件に適合しない,②本件明細書の発明の詳細な説明は,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子を提供するという本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえないから,サポート要件に適合しないとの主張が記載されている。 しかし,次のとおり,当該主張を参照してされた本件取消決定の判断は誤りである。 (2) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,LRP6結合分子(i)及びLRP6結合分子(ii)(特異的にLRP6の「第3のプロペラ」に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子をいう。以下同じ。)はLRP6の所定のドメイン内のアミノ酸配列(配列番号1)のいずれかに含まれるか,又はいずれかと重複するヒトLRP6の「エピトープ」に結合する「抗原結合分子」を含むところ,「いずれかに含まれるか,またはいずれかと重複する」エピトープは,例えば,配列番号:1のアミノ酸20-326の中においてただ一つのアミノ酸を含む場合,又はただ一つのアミノ酸において重複する場合をも含み,その数は広範囲となり得るため,そのような広範囲の配列(エピトープ)に結合する抗原結合部位を含むLRP6結合分子が,Wnt1又はWnt3aに特異的な分子あるいはWnt1又はWnt3/3a誘導シグナル伝達経路を優先的に阻害する分子を必ずしも包含しないことは明らかであるとの主張が記載されている。 しかし,本件発明のLRP6結合分子(i)は,LRP6の第1のプロペ ラに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって,当該抗原結合部分がヒトLRP6(配列番号:1)の特定のエピトープに結合し,かつ,当該抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害 を含むLRP6結合分子であって,当該抗原結合部分がヒトLRP6(配列番号:1)の特定のエピトープに結合し,かつ,当該抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない結合分子であり,シグナル伝達経路に関する活性の有無によって規定されている。LRP6結合分子(ii)も同様である。 したがって,各請求項に規定されている活性を奏しない分子は,本件発明の範囲外であるから,これらの範囲外の分子について議論する必要はない。 (3) 過剰な実験を行う必要があるとの主張についてア本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,エピトープについて具体的な記載がない本件明細書に基づいて,当業者がエピトープを決定して本件発明に係るLRP6結合分子を得るためには,過剰な実験を行う必要があるとの主張が記載されている。 イしかし,本件明細書の段落【0066】の「ヒトLRP6のタンパク質配列(配列番号:1)内のドメインの位置」に関する記載,段落【0011】及び【0013】の抗原結合部分に関する記載により,本件明細書はLRP6に関連するエピトープを示している。 ウそして,当業者は,本件特許の優先日当時に利用可能な技術を用いることによって,インビトロで,エピトープを含む特定のペプチド(すなわち,プロペラ1領域又はプロペラ3領域のアミノ酸配列)に結合する本件発明の候補LRP6抗体を十分な数で特定することができる。本件明細書の段落【0100】~【0178】は,本件発明の抗体を作製する様々な方法を提示している。また,本件明細書には,インビトロで抗体を作製するための複数の技術が記載されている(例えば,CDRグラフト法につき,段落【0115】)。さらに,本件明 発明の抗体を作製する様々な方法を提示している。また,本件明細書には,インビトロで抗体を作製するための複数の技術が記載されている(例えば,CDRグラフト法につき,段落【0115】)。さらに,本件明細書は,特異的にLRP6に結合するモノクローナル抗体を産生するのに十分な情報を示している(段落【01 48】~【0157】)。そして,モノクローナル抗体からFabを製造することは,当業者にとって日常的なことであり,常套手段によって実現できる。すなわち,当業者は,本件明細書の記載及び本件特許の優先日当時の周知技術を用いることにより,本件発明のLRP6結合分子を容易に製造することができる。 より具体的には,当業者は,本件明細書の段落【0102】,【0148】及び【0156】の記載から,ファージディスプレイ法を使用してモノクローナル抗体を製造することができること,また,そのようなモノクローナル抗体の製造は,ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを提供する工程((i)ライブラリー提供工程),及び,ファージディスプレイ法により標的とする抗原(例えば,LRP6のエピトープ)でライブラリーをスクリーニングする工程((ii) スクリーニング工程)を経ることにより,特定のエピトープに結合するモノクローナル抗体等のLRP6結合分子を得るというものであることを理解できる。 まず,(i)ライブラリー提供工程に関し,本件特許の優先日当時,当業者は,自らファージディスプレイ抗体関連遺伝子ライブラリーを構築することも,商業的に作成されていたいくつかの抗体関連遺伝子ライブラリーを利用することも可能であり,実際に,本件発明の抗LRP6抗体は,HuCALGOLD抗体ライブラリーを用いて取得されている。 そして,(ii) スクリーニング 抗体関連遺伝子ライブラリーを利用することも可能であり,実際に,本件発明の抗LRP6抗体は,HuCALGOLD抗体ライブラリーを用いて取得されている。 そして,(ii) スクリーニング工程に関し,当業者は,本件明細書の段落【0011】,【0013】及び【0020】のエピトープに関する記載に基づき,上記のようにして得たライブラリーを,全長LRP6又はLRP6の特定のエピトープ,例えば,プロペラ1の配列番号1の残基20-326あるいは配列番号1のアミノ酸286-324への結合についてスクリーニングすることができる。 エ次に,当業者は,本件明細書の記載及び本件特許の優先日当時の周知技 術を用いることにより,製造した結合分子の結合性及び活性を調べることができる。 得られた候補LRP6抗体又はそれらのFabフラグメントは,①ヒトLRP6のプロペラ1内のエピトープへの結合能,及び②Wnt1誘導シグナル伝達をアンタゴナイズする能力について,本件明細書の実施例1~3に記載されている方法によりスクリーニングすることができる。そして,本件明細書の段落【0095】,【0135】,【0179】~【0187】は,LRP6結合分子の機能特性が,アッセイによってインビトロ及びインビボで試験できることを示しており,当業者は,これらの記載に基づき,容易にLRP6結合分子の結合能や活性をアッセイできた。 より具体的には,当業者は,本件明細書の段落【0135】,【0184】及び実施例1の記載に基づき,上記のスクリーニング工程で得られた所定のエピトープに結合するLRP6結合分子について,レポーターアッセイなどの機能アッセイを用いて評価することにより,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子をスクリーニングすることができる。そして, ピトープに結合するLRP6結合分子について,レポーターアッセイなどの機能アッセイを用いて評価することにより,Wntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子をスクリーニングすることができる。そして,レポーターアッセイで実際にWnt特異的抗LRP6アンタゴナイズ抗体が同定できることは,実施例1に示されている。さらに,実施例3では,LRP6アンタゴニスト抗体関連分子とLRP6との結合をFACSアッセイにより測定しており,表3に結果が示されている。表3からは,「Wnt1特異的LRP6アンタゴニスト抗体関連分子は,プロペラ1に結合すること」,「Wnt3特異的LRP6アンタゴニスト抗体関連分子は,プロペラ3に結合すること」がそれぞれ理解できる。 このように,当業者は,本件明細書の記載及び本件特許の優先日当時に利用可能な技術に基づいて,上記のスクリーニング工程で得られた所定のエピトープに結合するLRP6結合分子の中から,本件発明のWntシグナル伝達を調節するLRP6結合分子を取得することが可能である。 オしたがって,当業者は,本件発明のLRP6結合分子を特定するために過剰な実験を行う必要はない。 4 取消事由4(甲1を主引用例とする進歩性に関する判断の誤り)(1) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,本件発明1~39は,甲1~7に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとの主張が記載されている。 しかし,次のとおり,当該主張を参照してされた本件取消決定の判断は誤りである。 (2) 甲1記載の発明の認定の誤り甲1に記載されている発明は,次のように認定されるべきである。 「Wntリガンドが結合するLRP5および6の細胞外ドメインに結合し,Wnt誘導Fz-LRP複合体形成を破壊することによりW 甲1に記載されている発明は,次のように認定されるべきである。 「Wntリガンドが結合するLRP5および6の細胞外ドメインに結合し,Wnt誘導Fz-LRP複合体形成を破壊することによりWnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する,スクレロスチン。」(以下「甲1発明(原告)」という。)したがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りである。 (3) 本件発明1と甲1発明(原告)との相違点の認定の誤りア上記(2)を前提とすると,本件発明1と甲1発明(原告)との相違点は次のとおりである。 <相違点1>本件発明1がLRP6受容体の第1のプロペラ又は第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗体結合部分を含むのに対して,甲1発明(原告)ではスクレロスチンがLRP5及び6の細胞外ドメインのどこに結合するか特定されていないこと<相違点2>本件発明1が,(i)「優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害 するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」,又は(ii)「優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない」のに対して,甲1発明(原告)ではどのWntシグナル伝達を阻害するかが開示されていないこと<相違点3>本件発明1がモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であるのに対して,甲1発明(原告)はスクレロスチンであることイこれに対し,本件異議申立書には,請求項1の「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む」との記載は,「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合する結合部分」と実質的に同じであるとして,請求項1の「モノクローナル LRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む」との記載は,「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合する結合部分」と実質的に同じであるとして,請求項1の「モノクローナル抗体の」との記載を無視し,上記の相違点は実質的な相違点ではないとの主張が記載されている。 ここで,モノクローナル抗体とは,特定の抗原エピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す単一分子の抗体分子を意味することは周知の事実である。この点に関連し,本件明細書の段落【0085】には,「本明細書において使用される“モノクローナル抗体組成物”なる用語は単一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。」との記載がある。したがって,本件発明のLRP6結合分子(i)における「モノクローナル抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子」とは,人為的に作成されたモノクローナル抗体から誘導される結合分子を意味することは明らかである。 しかし,本件異議申立書記載の主張は,LRP6に結合するモノクローナル抗体とLRP6に結合するタンパク質とを混同している。すなわち, スクレロスチンなどのLRP6に結合するタンパク質は,モノクローナル抗体ではなく,また本件発明のようなモノクローナル抗体から誘導される結合分子でもない。したがって,本件発明1における「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む」との発明特定事項は,甲1発明(原告)において相当する発明特定事項である「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合する結合部分」と全く異なるものである。 ウしたがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,い )において相当する発明特定事項である「特異的にLRP6の第1のプロペラに結合する結合部分」と全く異なるものである。 ウしたがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りである。 (4) 相違点に係る構成の容易想到性についての判断の誤りア相違点1に係る構成について(ア) 甲1は,LRP5に着目しており,本件発明のLRP6に対する抗体に着目する動機付けをもたらす記載はない。かえって,甲1の記載に鑑みれば,本件特許の優先日当時の当業者は,LRP5とLRP6とが互換可能であるとは考えていなかったというべきである。 (イ) TheJournalofBiologicalChemistry, 280(20), 19883-19887(甲3)には,Wnt1がLRP5の第1のプロペラドメインに結合することについて明確な示唆がない。また,甲3にはLRP5についての知見がLRP6についても同様に適用できることは何ら示されていない。かえって,甲1と甲3にはLRP5に関する構造及び機能に関する情報が非常に詳細に記載されているから,これらの文献の組合せは,当業者がWnt結合を妨げる分子を開発するための主要な標的として,LRP6ではなく,LRP5を選択することをより確実にするものである。 (ウ) BoneKEy-Osteovision, 2007 December, 4(12), 337-341(甲2)の発行日(平成19年12月)は,本件特許の優先日(同年11月2日)よりも後であるから,甲2は,特許法29条1項3号の刊行物に該当しな い。この点を措くとしても,甲2には,LRP5に関する事項が記載されているにすぎない。 (エ) 被告は,LRP5とLRP6の第1の ,甲2は,特許法29条1項3号の刊行物に該当しな い。この点を措くとしても,甲2には,LRP5に関する事項が記載されているにすぎない。 (エ) 被告は,LRP5とLRP6の第1のプロペラと第3のプロペラのアミノ酸配列が「区別することなく適宜代替可能」であるとし,あたかもLRP5に関する事項がそのままLRP6にも適用可能であるかのように主張するが,LRP5とLRP6との間の配列相同性は低いため,LRP5の第1のプロペラに結合するスクレロスチンが,必ずしもLRP6の第1のプロペラに結合するとはいえない。 (オ) さらに,甲4~7にも,本件発明のLRP6に対する結合分子に着目する動機付けとなる記載はない。 したがって,当業者は,本件特許の優先日当時,相違点1に係る構成を容易に想到することができなかった。 イ相違点2に係る構成について甲3には,Wnt1がLRP5の第1のプロペラドメインに結合することについて明確な示唆がないし,LRP5の第1のプロペラドメインに結合する分子が「優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」ことを開示も示唆もしていない。 また,スクレロスチンが,本件発明の抗体結合分子(ii)のようにLRP6において「優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しないこと」は,いずれの文献にも開示も示唆もされていない。 したがって,当業者は,本件特許の優先日当時,相違点2に係る構成を容易に想到することができなかった。 ウ相違点3に係る構成について(ア) 甲2及び甲3は,スクレロスチンに関する文献であるところ,これら の文献には,スクレロスチ 構成を容易に想到することができなかった。 ウ相違点3に係る構成について(ア) 甲2及び甲3は,スクレロスチンに関する文献であるところ,これら の文献には,スクレロスチンを他のWntアンタゴニストタンパク質に置換した場合にも同様の作用効果を奏することは示されていない。ましてや,スクレロスチンを抗体に置換した場合に同様の作用効果を奏すると当業者が理解できたということはできない。 また,甲3には,スクレロスチンのアンタゴニスト効果がLRP結合に対するWntとの直接的競合によるものではないであろうと記載されており,LRP5の相互作用を担う領域にはWnt結合サイトが含まれていないことが示唆されている。 したがって,当業者は,これらの文献から,LRP5の第1のプロペラドメインへの結合によってWnt1誘導シグナルを阻害することを期待して,スクレロスチンに代えてモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む結合分子を選択する動機付けを何ら得られない。 (イ) さらに,相違点1に関して指摘したとおり,LRP5とLRP6とでスクレロスチンが同様に作用するかは不明である。そもそも,同じ分泌タンパク質同士ですら必ずしも置換可能でないことから,「スクレロスチン」を「抗体」に置き換えることは当業者にとって到底容易ではない。 (ウ) したがって,当業者は,本件特許の優先日当時,相違点3に係る構成を容易に想到することができなかった。 エ小括以上によれば,当業者は,甲1記載の発明と甲2~7記載の事項とを組み合わせても,本件発明1に容易に想到することはできない。 本件発明1と同様の構成要件を有する独立形式の本件発明31,本件発明1又は本件発明31を引用する従属形式の本件発明2~30及び32~35,並びに独立形式の 件発明1に容易に想到することはできない。 本件発明1と同様の構成要件を有する独立形式の本件発明31,本件発明1又は本件発明31を引用する従属形式の本件発明2~30及び32~35,並びに独立形式の本件発明36~39についても同様である。 したがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りである。 5 取消事由5(甲4を主引例とする新規性及び進歩性に関する判断の誤り)(1) 本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,本件発明1~39は,甲4に記載された発明と同一であるか,甲4~7に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとの主張が記載されている。 しかし,次のとおり,当該主張を参照してされた本件取消決定の判断は誤りである。 (2) 甲4記載の発明の認定の誤り甲4に記載されている発明は,次のように認定されるべきである。 「WntとLRP5の間のリガンド/受容体相互作用の変化やWnt活性の調整によって骨粗鬆症の治療薬として使用できる,LRP5の第1のプロペラ領域,第2のプロペラ領域,第3のプロペラ領域,第4のプロペラ領域,LDLR領域または細胞質ゾルのエピトープに結合する,抗LRP5抗体。」(以下「甲4発明(原告)」という。)したがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りである。 (3) 本件発明1と甲4発明(原告)との相違点の認定の誤りア上記(2)を前提とすると,本件発明1と甲4発明(原告)との相違点は次のとおりである。 <相違点1>結合分子が結合する受容体について,本件発明1がLRP6であるのに対して,甲4発明(原告)がLRP5であること<相違点2>結合分子が結合する受容体内の領域について,本件発明 <相違点1>結合分子が結合する受容体について,本件発明1がLRP6であるのに対して,甲4発明(原告)がLRP5であること<相違点2>結合分子が結合する受容体内の領域について,本件発明1がLRP6の第1のプロペラ領域又は第3のプロペラ領域であるのに対して,甲4発明(原告)がLRP5の第1のプロペラ領域,第2のプロペラ領域,第3のプロペラ領域,第4のプロペラ領域,LDLR領域又は細胞質ゾルである こと<相違点3>結合分子が結合して引き起こされるWntシグナル伝達経路について,本件発明1がWnt1又はWnt3誘導シグナル伝達経路を「阻害」するのに対して,甲4発明(原告)がWntシグナル伝達経路を「調整」することイこれに対し,本件異議申立書には,甲4にLRP6に結合するFabが開示されているとの主張が記載されている。 しかし,甲4において実際に作製された抗体は,LRP5に結合するもののみである。そして,甲4の表12には,各タンパク質ドメインに対応するLRP5(表12ではZmax1残基)の配列と,それに対応するLRP6の配列が記載されているものの,その同一性%は10%~100%とかなりばらつきがあり,これに接した当業者は,LRP5に結合する抗体がそのままLRP6の対応する位置に結合すると理解することはできない。 したがって,甲4には,LRP6に結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む結合分子は実質的に開示されていない。 ウまた,本件異議申立書には,LRP6に結合するFabであれば,本件発明1に係る発明特定事項を満たすと理解できるとの主張が記載されているが,このようなことはあり得ない。 エしたがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りで 件発明1に係る発明特定事項を満たすと理解できるとの主張が記載されているが,このようなことはあり得ない。 エしたがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りである。 (4) 相違点に係る構成の容易想到性についての判断の誤りア相違点1に係る構成についてLRP5とLRP6は,必ずしも同様の作用効果をもたらすとはいえない。そして,証拠として提出されている文献の記載に鑑みても,当業者は, 本件特許の優先日当時,互いに異なるLRP5及びLRP6が適宜代替可能であるとは考えていなかった。 イ相違点2に係る構成について甲4記載の発明は,「第1のプロペラ領域,第2のプロペラ領域,第3のプロペラ領域,第4のプロペラ領域,LDLR領域又は細胞質ゾル」に結合する抗体に関するものであるところ,いずれの文献にも,第1のプロペラ領域又は第3のプロペラ領域を選択する動機付けとなるような記載はない。 ウ相違点3に係る構成について甲4では,アミノ酸残基数10~20程度の合成した線状ペプチドを用いてLRP5単一特異性ポリクローナル抗体を作製している。 この点に関連して,エピトープは,大きく分けて,線状エピトープ(直鎖エピトープ)と立体構造エピトープ(非連続エピトープ又は非直鎖エピトープ)に分類されるところ,立体構造エピトープはタンパク質の立体的な構造によって形成されているものであるため,タンパク質を分解してこの立体構造エピトープが含まれる部分の短い線状ペプチドを得たとしても,立体構造が変化することで抗原性が消失する。また,この立体構造エピトープが含まれる部分の短い線状ペプチドを配列に基づいて合成したとしても,立体構造が再現しないため,同様に抗原性を示さない可能性が高い。 したがっ 化することで抗原性が消失する。また,この立体構造エピトープが含まれる部分の短い線状ペプチドを配列に基づいて合成したとしても,立体構造が再現しないため,同様に抗原性を示さない可能性が高い。 したがって,甲4に記載されているような短い線状ペプチドを用いた試験では,本件発明の分子が結合するエピトープの抗原性が消失している可能性が高いことが理解される。 そして,甲4記載のポリペプチドを用いてLRP6に対する抗体を調製したとしても,Wnt1阻害特性を有するLRP6結合分子を得ることができるとは考え難いし,実際にそのような結合分子が得られる証拠もない。 (5) 小括 ア以上によれば,本件発明1は,甲4に記載されている発明ではないし,当該発明に基づいて,容易に想到できたものでもない。 本件発明1と同様の構成要件を有する独立形式の本件発明31,本件発明1又は本件発明31を引用する従属形式の本件発明2~30及び32~35,並びに独立形式の本件発明36~39についても同様である。 イしたがって,この点についての本件異議申立書記載の主張及び被告の主張は,いずれも誤りである。 6 取消事由6(理由不備)(1) 取消決定には,審決と同様に,結論とそれに至った理由を記載しなければならない。すなわち,取消決定においても,審判官の判断の慎重,合理性を担保しその恣意を抑制して決定の公正を保障すること,当事者が決定に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与えること及び決定の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることという目的を達しうる程度の理由の記載がなされなくてはならない。より具体的には,取消決定には,①当該事件の適用に関係する法律の根拠及びその解釈,②当事者が提出し,又は職権で調査した証拠に基づいて認定した事 的を達しうる程度の理由の記載がなされなくてはならない。より具体的には,取消決定には,①当該事件の適用に関係する法律の根拠及びその解釈,②当事者が提出し,又は職権で調査した証拠に基づいて認定した事実,③認定した事実を法律に適用した場合の論理過程及び判断結果等を記載することによって,判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示されていなくてはならない。 (2) しかし,本件取消決定は,平成28年5月13日付けで通知した取消理由が妥当なものであると述べるにとどまり,具体的理由は一切記載されておらず,上記①~③についての具体的記載も欠いている。 なお,本件取消理由通知書が参照する本件異議申立書には,一応異議理由が詳細に示されているものの,これは飽くまでも当事者の主張にすぎず,これをそのまま参照することにより取消決定の理由に代えることは許されない。 (3) さらに,本件異議申立書に記載された異議理由は明らかに誤っており,これらの理由が取消理由であるとは理解できない。 例えば,甲1記載の発明及び甲4記載の発明に関し,被告自身が,本件訴訟において,本件異議申立書で主張された発明とは大きく異なる発明を認定して主張していることからも,本件異議申立書の記載が誤っていることは明らかである。 (4) 以上のとおり,本件取消決定には具体的な理由が付されていないという重大な違法があり,直ちに取り消されるべきである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(明確性要件,実施可能要件及びサポート要件の各適合性に関する判断の誤り)について原告は,「Wnt1特異的」等の「特異的」との用語は,結合の程度を意味しており,結合の結果を意味するものではないと主張するが,結合の結果を意味すると解釈することもできる。 )について原告は,「Wnt1特異的」等の「特異的」との用語は,結合の程度を意味しており,結合の結果を意味するものではないと主張するが,結合の結果を意味すると解釈することもできる。 このような曖昧な語句を用いて,本件明細書の実施例3等に記載されたFab010等の「特定」の抗体に係る発明であることを表現しようとしているのであれば,本件特許は明確性要件に適合していないというべきである。 2 取消事由2(実施可能要件及びサポート要件の各適合性に関する判断の誤り)について(1) 本件明細書の記載では,実施例に用いられたFabのアミノ酸配列等の化学構造や認識するエピトープが不明であるから,原告が行ったかもしれない実験を第三者は同じ手間暇をかけて実施する必要があり,特許制度の趣旨からすると,「独占的,排他的な権利が発生する」技術的な開示があるとはいえない。 また,本件明細書の実施例として記載された結合アッセイ自体も,LRP5/6上のリガンドの結合部位を決定する公知の方法にすぎず,結果自体も公知である。 なお,原告は,Wnt1グループ(Wnt1,2,6,7A,7B,9, 10A,10B)とWnt3/3aグループの2つのグループが存在することを発見したことが本件発明の成果であると主張する。しかし,実施例1等は,あくまでも公知の結合アッセイによるグループ分けの結果でしかなく,本件明細書の記載から理解できるのは,同じグループに属するWntリガンドのLRP6受容体上の結合部位が同じグループ内のものは接近しているという情報にすぎず,同じグループ内のWntリガンドが同等の機能(生理活性)を有するということが理解できるものではない(そのような実験は本件明細書中に存在しない)。むしろ多数の知られているWntリガンド う情報にすぎず,同じグループ内のWntリガンドが同等の機能(生理活性)を有するということが理解できるものではない(そのような実験は本件明細書中に存在しない)。むしろ多数の知られているWntリガンドがグループの数に対応するただ2つの生理活性しか司っていないとは考え難いことからすると,Wnt1グループとWnt3/3aグループとのグループ分けがどのような技術的意義を持つかについては,本件明細書の記載からは全く不明であるといわざるを得ない。このような本件明細書の記載が「Wntアンタゴニスト抗体」の医薬品としての利用という観点での成果を示すものであるということはできない。 したがって,原告が指摘する本件明細書の記載は,いずれも本件発明の「実施例」といえるほどの技術的意義のある開示でなく,原告の主張は理由がない。 (2) 医薬組成物の発明につき,本件明細書の段落【0188】~【0208】及び【0209】~【0225】には,一般的な製剤化技術やWntシグナル伝達が関連しているかもしれないあらゆる疾患が列挙されているにすぎず,本件発明の「LRP6結合分子」が特定の疾患の治療に有効であることを推認させることは記載されていない。 かえって,医薬発明における新規有効成分である「LRP6結合分子」に関し,薬理試験結果が出願当初の明細書に記載されていないのであるから,本件特許は実施可能要件及びサポート要件を満たさないというべきである。 3 取消事由3(実施可能要件違反及びサポート要件の各適合性に関する判断の 誤り)原告は,種々の技術を挙げて,当業者は本件発明に係るLRP6結合分子を,過剰な実験を要することなく容易に得ることができると主張する。 しかし,原告が指摘する技術は,いずれも当該技術分野の一般的な技術,すなわち一般的なFab ,当業者は本件発明に係るLRP6結合分子を,過剰な実験を要することなく容易に得ることができると主張する。 しかし,原告が指摘する技術は,いずれも当該技術分野の一般的な技術,すなわち一般的なFab等の抗体類の製造方法やリガンド・受容体の結合アッセイ法にすぎない。技術水準からみた本件発明の特徴を考慮した場合,例えば,本件発明の「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」「LRP6結合分子」について,どのような化学構造(アミノ酸配列)のFabを製造し,その多数のFabの中の,いずれの化学構造(アミノ酸配列)のFabが「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」機能を有していたのかを実験結果とともに本件明細書に記載しなければ,当業者であっても本件発明を「過度な実験を要する」ことなく実施することはできない。 4 取消事由4(甲1を主引用例とする進歩性に関する判断の誤り)について(1) 引用例の記載ア甲1記載の発明甲1には,「Wntリガンドが結合するLRP5/6受容体のβ-プロペラ領域に結合することにより,WntとLRP5/6の間のリガンド/受容体の相互作用を破壊してWnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害し腫瘍増殖抑制する,スクレロスチン等のWntアンタゴニスト蛋白質。」(以下「甲1発明(被告)」という。)が記載されている。 イ甲2記載の事項「SOSTおよびそのタンパク質産物スクレロスチンは,骨細胞で高度に発現され(1),Lrp5-Wnt-β-カテニンシグナルの阻害剤とし て作用する(2-4) 。 イ甲2記載の事項「SOSTおよびそのタンパク質産物スクレロスチンは,骨細胞で高度に発現され(1),Lrp5-Wnt-β-カテニンシグナルの阻害剤とし て作用する(2-4)。」「Lrp5-Wnt-β-カテニンシグナル伝達のスクレロスチンによる阻害の分子メカニズムに対する更なる洞察は,G171V高骨量変異を含む,LRP5のβ-プロペラ1領域中の突然変異が,スクレロスチン結合へのLrp5耐性を起こすことを示す研究から来たものである(9)。β-プロペラ2,3または4領域の変異は何の影響も及ぼさなかった。これは,β-プロペラ1がスクレロスチン結合に重要な領域であることを示している。この研究はさらに,スクレロスチンがWnt1とWntl0bによるシグナル伝達を阻害するが,Wnt3aについては阻害しないことを示した。」ウ甲3記載の事項「加えて,我々はLRP6ならびにLRP5にスクレロスチンが結合し,LRP5ドメインの最初の2つのYWTD-EGF反復ドメインが結合に寄与することを同定した。」「これらの変異体は,それぞれLRP5R12またはLRP5R34である(図2E)。…スクレロスチン-APはLRP5R12に特異的に結合することができるが,LRP5R34には結合しない(図2C)。…このデータは,最初の2つのYWTD-EGF反復ドメインの両方がスクレロスチンに結合することができることを示唆している。」(2) 本件発明1と甲1発明(被告)との対比ア本件発明1と甲1発明(被告)との一致点及び相違点本件発明1と甲1発明(被告)とを対比すると,甲1発明(被告)の「Wntアンタゴニスト蛋白質」は,本件発明1の「LRP6結合分子」に相当し,甲1発明(被告)の「β-プロペラ」は,本件発明1の「第1の 本件発明1と甲1発明(被告)とを対比すると,甲1発明(被告)の「Wntアンタゴニスト蛋白質」は,本件発明1の「LRP6結合分子」に相当し,甲1発明(被告)の「β-プロペラ」は,本件発明1の「第1のプロペラ」と「第3のプロペラ」を包含するものであり,甲1発明(被告)の「WntとLRP5/6の間のリガンド/受容体の相互作用を破壊してWnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害し」は,本件発明1の「優先的 にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害する」に相当する。 したがって,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点>「特異的にLRP6のβ-プロペラに結合して,Wnt誘導シグナルを阻害するLRP6結合分子。」<相違点>「Wnt誘導シグナルを阻害するLRP6結合分子」が本件発明1では,「(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;の タンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a 特異的であり,優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない」のに対して,甲1発明(被告)では,「LRP5/6のβ-プロペラ領域に結合することにより,WntとLRP5/6の間のリガンド/受容体の相互作用を破壊して,Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する,スクレロスチン等のWntアンタゴニスト蛋白質」である点。 イ相違点について(ア) 上記(1)イ後段のとおり,甲1発明(被告)で例示されたスクレロスチンがLRP5の第1のプロペラにおいてWnt1と競合し,Wnt3aとは競合しない「Wntアンタゴニスト蛋白質」であることは公知であるから,LRP6受容体の第1のプロペラに結合するWnt1リガンドに対する,WntとLRP6の間のリガンド/受容体の相互作用を破壊するために,LRP6受容体の第1のプロペラに結合する「Wnt1アンタゴニスト蛋白質」を用いることは当業者が容易に想到し得ることである。 そして,一般に,リガンド/受容体の相互作用を破壊する「アンタゴニスト蛋白質」として「抗体」を用いることは当該技術分野の常套手段であるから,「Wntアンタゴニスト蛋白質」として「抗体」を用いることは当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 なお,本件発明1の「(a)配列番号 抗体」を用いることは当該技術分野の常套手段であるから,「Wntアンタゴニスト蛋白質」として「抗体」を用いることは当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 なお,本件発明1の「(a)配列番号:1のアミノ酸20-326」は,本件明細書の段落【0011】記載の定義によれば「第1のプロペラ(プロペラ1)」と同義である。 また,上記(1)ウのとおり,甲3には,本件明細書の実施例3と類似する,LRP5/6の各プロペラ領域を欠失させてリガンドの結合活性を観察する,LRP5/6受容体におけるリガンド(スクレロスチン等) の結合部位の特定方法が記載されており,Wnt3a等のWntリガンドのLRP6受容体中の結合部位(エピトープを含む)を特定して当該結合部位(エピトープを含む)に結合するアンタゴニスト蛋白質(アンタゴニスト抗体)を作成することは当業者であれば容易になし得ることである。 したがって,本件発明1は,甲1記載の発明,甲2~7記載の発明及び常套手段に基づいて,当業者が容易になし得る発明にすぎない。 (イ) そして,本件明細書には,相違点に係る機能を有するFabの構造(アミノ酸配列)はおろか,当該抗原結合断片Fabが認識するエピトープ(LRP6中の数個のアミノ酸配列)さえ記載されておらず,「Wnt1と競合する」等の機能的な特徴の記載以外に構造に関する記載は一切存在しないから,請求項1に記載された発明の機能的な特徴を理解する糸口すらない。 したがって,結合分子の構造に関し,特許請求の範囲においては,結合するエピトープの存在する範囲としてLRP6中の広範なアミノ酸配列が羅列されたにすぎない本件発明1について,「Wnt1と競合する」等の有利な効果を参酌することはできない。 (3) 本件発明2 するエピトープの存在する範囲としてLRP6中の広範なアミノ酸配列が羅列されたにすぎない本件発明1について,「Wnt1と競合する」等の有利な効果を参酌することはできない。 (3) 本件発明2~39について本件発明2~39においては,抗体の抗原結合部分が結合する部分(エピトープ)を特定したり,医薬用途を特定しているが,本件明細書には,実験に用いられたFabの構造(アミノ酸配列)はおろか,当該抗原結合断片Fabが認識するエピトープ(LRP6中の数個のアミノ酸配列)さえ記載されていないことを考慮すると,甲1の「Wnt/β-カテニンシグナル伝達の阻害および腫瘍増殖抑制」や甲4の「WntとLRP6の間のリガンド/受容体相互作用の変化やWnt活性の調整によって」「治療薬として使用できる」「アンタゴニスト」を取得するために,Wnt1やWnt3aと競合 するアンタゴニスト抗体を取得して,疾患の治療に使用することは,当業者であれば容易になし得ることであり,その効果も予期し得る範囲のものにすぎない。 したがって,本件発明2~39についても,甲1記載の発明,甲2~7記載の発明及び常套手段に基づいて,当業者が容易になし得る発明にすぎない。 (4) 小括以上によれば,本件発明1~39は,甲1記載の発明,甲2~7記載の発明及び常套手段から当業者が容易になし得る発明である。 5 取消事由5(甲4を主引用例とする新規性及び進歩性に関する判断の誤り)について(1) 甲4記載の発明甲4には,「WntとLRP6の間のリガンド/受容体相互作用の変化やWnt活性の調整によって骨粗鬆症の治療薬として使用できる,LRP6の第1のプロペラ領域または第3のプロペラ領域のエピトープに結合する抗LRP6抗体。」(以下「甲4発明(被告) 容体相互作用の変化やWnt活性の調整によって骨粗鬆症の治療薬として使用できる,LRP6の第1のプロペラ領域または第3のプロペラ領域のエピトープに結合する抗LRP6抗体。」(以下「甲4発明(被告)」という。)が記載されている。 (2) 本件発明1と甲4発明(被告)との対比ア本件発明1と甲4発明(被告)との一致点及び相違点本件発明1と甲4発明(被告)とを対比すると,甲4発明(被告)の「抗LRP6抗体」は,本件発明1の「モノクローナル抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子」に相当し,甲4発明(被告)の「エピトープ」は,本件特明1の「モノクローナル抗体の抗原結合部分」が結合する部分であり,甲4発明(被告)の「WntとLRP6の間のリガンド/受容体相互作用」は,本件発明1の「優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害する」又は「優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害する」に相当する。 したがって,両者の一致点及び一応の相違点は次のとおりである。 <一致点>「WntとLRP6の間のリガンド/受容体相互作用を変化させWnt活性を調整できる,特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子。」<相違点>本件発明1が,「(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(a)配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し, 配列番号:1のアミノ酸20-326;または(b)配列番号:1のアミノ酸286-324;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合,抗原結合部分が(c)配列番号:1のアミノ酸631-932;または(d)配列番号:1のアミノ酸889-929;のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し,モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a特異的であり,優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない」の に対して,甲4発明(被告)では,リガンドであるWntの種類(Wnt1及びWnt3/3a)に対応したLRP6受容体中の結合部位(第1のプロペラ及び第3のプロペラ中のアミノ酸番号で特定された領域)が特定されていない点イ相違点について(ア) 本件発明1の(a)配列番号:1のアミノ酸20-326,(b)配列番号:1のアミノ酸286-324,(c)配列番号:1のアミノ酸631-932,(d)配列番号:1のアミノ酸889-929は,本件明細書の段落【0011】記載の定義,及び,この分野の総説である甲5及び6に記載されたLRP5/6のアミノ酸配列とEGFリピートの位置を考慮すると,それ 配列番号:1のアミノ酸889-929は,本件明細書の段落【0011】記載の定義,及び,この分野の総説である甲5及び6に記載されたLRP5/6のアミノ酸配列とEGFリピートの位置を考慮すると,それぞれ(a)第1のβ-プロペラとEGFリピート(本件発明1のプロペラ1),(b)第1のEGFリピート,(c)第3のβ-プロペラとEGFリピート(本件発明1のプロペラ3),(d)第3のEGFリピートに相当する。 そして,甲4発明(被告)が「WntとLRP6の間のリガンド/受容体相互作用の変化やWnt活性の調整によって」「治療薬として使用できる」抗体であることを考慮すると,当該抗体が特定のWntのアンタゴニストとして機能することは当業者に明らかである。そうすると,甲4の段落【0347】や段落【0351】に例示されたアミノ酸配列を,そのアミノ酸番号に基づいて本件発明1の(a)~(d)のアミノ酸配列にあてはめると,(a)の領域の13種のエピトープ,(b)の領域の1種のエピトープ,(c)の領域の2種のエピトープ,(d)の領域の1種のエピトープに関し,(a)及び(b)に対応する「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経 路を阻害しない」もの,又は,(c)及び(d)に対応する「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a特異的であり,優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない」ものが含まれている蓋然性が高い。 したがって,本件発明1は,甲4記載の発明であるか,あるいは甲4記載の発明から当業者が容易になし得る発明にすぎない。 (イ) 伝達経路を阻害しない」ものが含まれている蓋然性が高い。 したがって,本件発明1は,甲4記載の発明であるか,あるいは甲4記載の発明から当業者が容易になし得る発明にすぎない。 (イ) そして,本件明細書には,「Wnt1と競合する」等の機能的な特徴の記載以外の構造上の記載は一切ないことから,結合分子の構造に関し,特許請求の範囲においては,結合するエピトープの存在する範囲としてLRP6中の広範なアミノ酸配列が羅列されたにすぎない本件発明1について,「Wnt1と競合する」等の有利な効果を参酌することはできないことは,上記4(2)イ(イ)において主張したところと同様である。 (3) 本件発明2~39について本件発明2~39においては,抗体の抗原結合部分が結合する部分(エピトープ)を特定したり,医薬用途を特定しているが,本件明細書には,実験に用いられたFabの構造(アミノ酸配列)はおろか,当該抗原結合断片Fabが認識するエピトープ(LRP6中の数個のアミノ酸配列)さえ記載されていないことを考慮すると,甲4の課題である「WntとLRP6の間のリガンド/受容体相互作用の変化やWnt活性の調整によって」「治療薬として使用できる」抗体を取得するために,Wnt1やWnt3a等の疾患に関連することが公知の各種Wntと競合する抗体を取得して,疾患の治療に使用することは,当業者であれば容易になし得ることであり,その効果も予期し得る範囲のものにすぎない。 したがって,本件発明2~39についても,甲4記載の発明であるか,あるいは甲4記載の発明から当業者が容易になし得る発明にすぎない。 (4) 小括以上によれば,本件発明1~39は,甲4記載の発明であるか,あるいは甲4~7の組合せから当業者が容易になし得る発明である。 から当業者が容易になし得る発明にすぎない。 (4) 小括以上によれば,本件発明1~39は,甲4記載の発明であるか,あるいは甲4~7の組合せから当業者が容易になし得る発明である。 6 取消事由6(理由不備)について(1) 本件は,平成29年2月13日に訴えが提起され,同年5月9日の第1回弁論準備手続期日及び同年9月5日の第2回弁論準備手続期日を経ていたところ,同年12月6日付けの原告第3準備書面において初めてこのような新たな取消事由を主張するのは,いたずらに訴訟の進行を遅延させるものであって,時機に後れたものとして許されない。 (2) 被告は,「権利者は,取消理由通知に対して応答がなければ,決定の予告をせずに取消決定がされ得る点を理解しており,本件の権利を積極的に維持する意思を有していない」という原告代理人の回答を信用して,それ以上異議手続を進めることなく,簡略な異議の決定を行ったものであり,本件は,最高裁昭和54年(行ツ)第134号同59年3月13日第三小法廷判決が説示した「特段の事情が認められ」る事件に該当する。 (3) 特許異議申立手続では,特許異議申立書は特許権者に送付されており,この送付された特許異議申立書の記載を引用したからといって,特許権者がその内容を了知することができないということはない。 原告は,異議申立書の記載を参照した取消理由を取消決定の理由に代えることはできないと主張するが,合議体は本件異議申立書記載の取消理由について,合議により審理し,その結果,当該理由により特許を取り消すべきものと判断した結果,本件取消理由通知をしたのであるから,その内容を改めて記載するか引用形式で記載するかという,形式的な相違のみによって,「取消理由通知時」における判断の慎重性,公正性が影響を受け ものと判断した結果,本件取消理由通知をしたのであるから,その内容を改めて記載するか引用形式で記載するかという,形式的な相違のみによって,「取消理由通知時」における判断の慎重性,公正性が影響を受けるものではない。 また,上記(2)のとおり,そもそも,本件取消決定において簡略記載がされたのは,原告が自ら招いた結果とも言い得るものである。 (4) 原告は,本件異議申立書に記載された異議理由は明らかに誤っていると主張するが,本件異議申立書の記載事項から,上記4(1)アにおいて主張した甲1発明(被告)及び上記5(1)アにおいて主張した甲4発明(被告)がそれぞれ認定できることは明らかであるから,この点についての原告の主張は理由がない。 第5 当裁判所の判断 1 本件発明について(1) 特許請求の範囲本件発明の特許請求の範囲は,上記第2の2に記載のとおりである。 (2) 本件明細書の記載内容本件明細書には,概ね以下の記載がある(甲20。なお,記載中の図1~4は,本件明細書に付されていない。)。 ア技術分野及び背景技術【0001】Wnt遺伝子ファミリーはInt1/Wnt1癌原遺伝子およびショウジョウバエwingless(“Wg”),ショウジョウバエWnt1ホモログに関連する分泌タンパク質の大きなクラスをコードする…。Wntは種々の組織および臓器で発現し,ショウジョウバエにおける分節;線虫における内胚葉発達;および哺乳動物における手足の極性,神経堤分化,腎臓形態形成,性決定および脳発達の確立を含む多数の発生プロセスに必要である…。Wnt経路は胚形成および成熟生物の両方で動物発達におけるマスター調節因子である…。 【0002】Wntシグナルは7回膜貫通ドメイン受容体のFri む多数の発生プロセスに必要である…。Wnt経路は胚形成および成熟生物の両方で動物発達におけるマスター調節因子である…。 【0002】Wntシグナルは7回膜貫通ドメイン受容体のFrizzled(“Fz”)ファミリーにより伝達される…。Frizzled細胞-表面受容体(Fzd)は標準および非標準の両方のWntシグナル伝達において必 須の役割を果たす。標準経路において,Wntタンパク質によるFzdおよびLRP5/6(低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5および6)を活性化すると,シグナルは“β-cat破壊複合体”によるβ-カテニンのリン酸化および分解を阻止し,核において安定なβ-カテニン転座および蓄積,したがってWntシグナル伝達を可能にすることを引き起こす…。 【0003】グリコーゲン合成キナーゼ3(GSK3,ショウジョウバエにおけるshaggyとしても既知),腫瘍サプレッサー遺伝子生成物APC(大腸腺腫様ポリポーシス)…および骨組(scaffold)タンパク質AxinはすべてWnt経路の負の調節因子であり,一緒に“β-cat破壊複合体”を形成する。Wntリガンドの非存在下で,これらのタンパク質は複合体を形成し,β-カテニンのリン酸化および分解を促進するが,Wntシグナル伝達は複合体を不活性化し,β-カテニン分解を阻止する。安定化β-カテニンは結果として核に移行し,そこでTCF(T細胞因子)転写因子(リンパ球エンハンサー結合因子-1(LEF1)としても既知)に結合し,TCF/LEF-誘導性転写のコアクチベーターとして働く…。 【0005】β-カテニンの安定化を介する異常に高いWnt経路活性化は多数の結腸直腸癌腫の腫瘍形成において主要な役割を果たす。80%の結腸直腸癌腫(CRC)が腫瘍リプレッサーA として働く…。 【0005】β-カテニンの安定化を介する異常に高いWnt経路活性化は多数の結腸直腸癌腫の腫瘍形成において主要な役割を果たす。80%の結腸直腸癌腫(CRC)が腫瘍リプレッサーAPCにおいて不活性化している変異を有し,これが連続したWntシグナル伝達を可能にすると予測されている。 さらに,Wnt経路活性化が黒色腫,乳房,肝臓,肺および胃癌と関連し得ることを提案する証拠が増加している。Wnt,正常発達および癌の長く認められた関係,Wntシグナル伝達の標的としてc-Myc癌原遺伝子の同定でさらに確立された関係がある…。 【0006】さらに,Wntシグナル伝達の病理学的に高いまたは低いレベルと関連する他の障害は,骨粗鬆症,骨関節症,多発性嚢胞腎,糖尿病,統合失調症,血管疾患,心疾患,非発癌性増殖性疾患および神経変性疾患,例えば,アルツハイマー病を含むが,これらに限定されない。Wntシグナル伝達の異常上方調節は癌,骨関節症および多発性嚢胞腎と関連し,Wntシグナル伝達の異常下方調節は骨粗鬆症,肥満,糖尿病,線維性障害および神経変性疾患と関連する。 【0007】Wntシグナル伝達関連障害,例えば,結腸直腸癌の治療法を開発するための最近のパラダイムは,β-catまたはWnt経路のβ-catの下流成分を標的とすることに頼っている。しかしながら,最近の試験でWnt受容体FrizzledおよびLRP5/6が介在する自己分泌Wntシグナル伝達が腫瘍増殖および生存の調節において重要な役割を果たし得ることを提案している。他の重要な連結に沿ってWnt経路の活性化を調節することによりWntシグナル伝達活性を阻害または増強し,それによってWntシグナル伝達関連障害を処置,診断,予防および/または改善する薬物および方法の必要性 な連結に沿ってWnt経路の活性化を調節することによりWntシグナル伝達活性を阻害または増強し,それによってWntシグナル伝達関連障害を処置,診断,予防および/または改善する薬物および方法の必要性が存在する。 イ発明の概要【0008】本発明は,LRP6のエピトープ,LRP6結合分子およびその分子を使用する方法に関する。LRP6結合分子はLRP6と相互作用し,したがってLRP6機能を調節することができる。LRP6をアゴナイズまたはアンタゴナイズする結合分子はそれぞれWnt経路シグナル伝達を促進または阻害するために使用することができる;したがって,LRP6をアゴナイズまたはアンタゴナイズする結合分子は,例えば,それぞれWnt 経路シグナル伝達の異常に低いまたは異常に高いレベルと関連するWntシグナル伝達障害を診断,その症状を改善,その障害から保護,およびその障害を処置するために使用することができる。Wntシグナル伝達の異常上方調節と関連する障害の非限定的な例は癌(例えば,乳癌,肺癌および大腸癌)である。Wntシグナル伝達の異常下方調節と関連する障害の非限定的な例は低い骨ミネラル密度(BMD)により特徴付けられる骨関連障害(例えば,骨粗鬆症)である。 【0009】種々の局面において,本発明はLRP6の1つ以上の生物学的機能を調節する(例えば,阻害または促進する)LRP6結合分子を提供する。例えば,LRP6結合分子はβ-カテニンのリン酸化および続く分解を調節することができる。さらなる例として,LRP6結合分子はWnt経路の不可欠のメンバー,例えば,DKK1(dickkopf1),DKK2,DKK4,SOST1,SOSD1(USAG1),sFRP(可溶性Fzd-関連タンパク質)1-4,Wise(USAG1のマウス の不可欠のメンバー,例えば,DKK1(dickkopf1),DKK2,DKK4,SOST1,SOSD1(USAG1),sFRP(可溶性Fzd-関連タンパク質)1-4,Wise(USAG1のマウスバージョン)またはWntリガンドそれら自体に結合するLRP6の能力を妨げることができる。 【0010】LRP6結合分子は,例えば,LRP6(例えば,LRP6の特定のドメインまたはエピトープ内,LRP6の細胞外ドメインの第1または第3のプロペラ,またはいずれかのプロペラ内の特定のドメイン(例えば,EGFリピート,YWTD様モチーフまたは他のもの))に結合する抗体およびこのような抗体の抗原結合部分を含むポリペプチドを含む。LRP6結合分子は,また,結合部分が抗体由来ではなく,例えば,免疫グロブリン様フォールドを有するポリペプチド由来LRP6結合分子であり,抗原結合部分がランダム化,選択および親和性成熟を介してLRP6に結合す るように操作された分子を含む。 【0011】したがって,1つの局面において,本発明はLRP6に結合する(例えば,特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって,ここで,抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ1(配列番号:2;配列番号:1の残基20-326)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸286-324(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:NATNPCGIDN GGCSHLCLMS PVKPFYQCAC PTGVKLLENG KTCK(配列番号:3));(b)配列番号:1のアミノ酸66-69(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重 IDN GGCSHLCLMS PVKPFYQCAC PTGVKLLENG KTCK(配列番号:3));(b)配列番号:1のアミノ酸66-69(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWSD);(c)配列番号:1のアミノ酸110-113(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);(d)配列番号:1のアミノ酸153-156(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);(e)配列番号:1のアミノ酸197-200(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWAD);および(f)配列番号:1のアミノ酸238-241(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTD)。 【0012】他の局面において,本発明はLRP6に結合する(例えば,特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって,ここで,抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ1(配列番号:2;配列番号: 1の残基20-326)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸20-65;(b)配列番号:1のアミノ酸70-109;(c)配列番号:1のアミノ酸114-152;(d)配列番号:1のアミノ酸157-196;(e)配列番号:1のアミノ酸201-237;および(f)配列番号:1のアミノ酸242-326。 【0013】したがって,1つの局面において,本発明はLRP6に結合する(例えば,特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって,ここで,抗原結合部分は以下のうちいずれかに含 【0013】したがって,1つの局面において,本発明はLRP6に結合する(例えば,特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって,ここで,抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ3(配列番号:4;配列番号:1の残基631-932)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸889-929(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:GW NECASSNGHC SHLCLAVPVG GFVCGCPAHY SLNADNRTC(配列番号:5));(b)配列番号:1のアミノ酸677-680(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);(c)配列番号:1のアミノ酸720-723(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWAD);(d)配列番号:1のアミノ酸763-766(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTE);(e)配列番号:1のアミノ酸806-809(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);および(f)配列番号:1のアミノ酸846-849(すなわち,下記配列に含まれるか,またはそれと重複しているエピトープ:YWTD)。 【0014】 他の局面において,本発明はLRP6に結合する(例えば,特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって,ここで,抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ3(配列番号:4;配列番号:1の残基631-932)内のエピトープに結 であって,ここで,抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか,または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ3(配列番号:4;配列番号:1の残基631-932)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸631-676;(b)配列番号:1のアミノ酸681-719;(c)配列番号:1のアミノ酸724-762;(d)配列番号:1のアミノ酸767-805;(e)配列番号:1のアミノ酸810-845;および(f)配列番号:1のアミノ酸850-932。 【0015】種々の態様において,LRP6結合分子(例えば,抗LRP6アンタゴナイズ抗体)は特定のWntリガンドが同時に結合することを阻止するようにヒトLRP6内のエピトープ(例えば,ヒトLRP6プロペラ1,プロペラ3またはそれらの構成ドメインまたはモチーフ)に結合する。非限定的な例として,Wntシグナル伝達経路をアンタゴナイズするLRP6結合分子はWnt1またはWnt3aリガンドがLRP6と結合することを阻止する。例えば,Wnt3およびWnt3a-特異的シグナル伝達活性はWnt3a特異的LRP6をアンタゴナイズする結合分子によりさらに効果的に阻害することができる。さらなる非限定的な例として,Wnt1,Wnt2,Wnt6,Wnt7a,Wnt7bおよびWnt10-特異的シグナル伝達活性はWnt1特異的LRP6をアンタゴナイズする結合分子によりさらに効果的に阻害することができる。 【0029】1つの態様において,LRP6結合分子はヒト抗体である。 【0033】 LRP6結合分子(例えば,LRP6の細胞外ドメインの第1または第3のプロペラ内のエピトープ,または該プロペラ内の特定のドメイン(例えば,EGFリピートまたはYWTD様モチ 【0033】 LRP6結合分子(例えば,LRP6の細胞外ドメインの第1または第3のプロペラ内のエピトープ,または該プロペラ内の特定のドメイン(例えば,EGFリピートまたはYWTD様モチーフ)に結合するLRP6結合分子)は1つ以上の多くの生物学的活性を示すことができる。種々の態様において,LRP6結合分子は種々のWntシグナル伝達経路メンバー(例えば,DKK1(dickkopf1),DKK2,DKK4,SOST1,SOSD1(USAG1),sFRP(可溶性Fzd-関連タンパク質)1-4,WiseまたはWntリガンドそれら自体)へのLRP6結合を阻害する。例えば,LRP6結合分子はWntシグナル伝達経路メンバーへのLRP6結合を対照と比較して(例えば,LRP6結合分子の非存在下での結合と比較して)少なくとも5%,10%,15%,25%または50%阻害する。 【0066】ヒトLRP6のタンパク質配列(配列番号:1)内のドメインの位置は下記のとおりである:シグナルペプチドは配列番号:1のアミノ酸残基1-19に見ることができ;六枚β-プロペラ構造を形成する,4つのYWTD(チロシン,トリプトファン,スレオニンおよびアスパラギン酸)-型β-プロペラドメイン…は配列番号:1のアミノ酸20-326;配列番号:1のアミノ酸327-630;配列番号:1のアミノ酸631-932および配列番号:1のアミノ酸933-1246に見ることができる。 ヒトLRP6はN42,N81,N281,N433,N486,N692,N859,N865,N926およびN1039にてN-グリコシル化される。 【0095】種々の種のLRP6および特定のLRP6のエピトープに結合する分子の能力を評価するための標準アッセイは,当分野で既知であり,例えば, 1039にてN-グリコシル化される。 【0095】種々の種のLRP6および特定のLRP6のエピトープに結合する分子の能力を評価するための標準アッセイは,当分野で既知であり,例えば, ELISAおよびウエスタンブロットを含む。LRP6結合分子がLRP6の特定のエピトープに結合するかどうかの同定にペプチドエピトープ競合アッセイを使用することができる。例えば,LRP6結合分子をペプチドの飽和濃度にて興味あるLRP6エピトープに対応するペプチドとインキュベートする。プレインキュベートしたLRP6結合分子を,例えば,Biacore(登録商標)分析により,固定化LRP6への結合に対して試験する。ペプチドとのプレインキュベーションによるLRP6結合の阻害は,LRP6結合分子がペプチドエピトープに結合することを示す…。結合動態は,また,当分野で既知の標準アッセイ,例えば,Biacore(登録商標)分析またはFACS分析による明白な結合により評価することができる。LRP6の機能特性に対するLRP6結合分子の作用を評価するためのアッセイは以下にさらに詳細に記載されている。 【0100】抗体本明細書に記載されている抗LRP6抗体はヒトモノクローナル抗体を含む。いくつかの態様において,LRP6に結合する抗体の抗原結合部分(例えば,VHおよびVL鎖)は他の抗LRP6結合分子を創造するように“混合および適合”される。このような“混合および適合”された抗体の結合は前記結合アッセイ(例えば,FACS,ELISA)を使用して試験することができる。 【0102】本明細書において使用される,ヒト抗体は,抗体の可変領域または全長鎖が配列源としてヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られるとき,特定の生殖細胞系列配列の“生成物 【0102】本明細書において使用される,ヒト抗体は,抗体の可変領域または全長鎖が配列源としてヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られるとき,特定の生殖細胞系列配列の“生成物”である,またはそれに“由来”する重鎖または軽鎖可変領域または全長重鎖または軽鎖を含む。このような系の1つにおいて,ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子 を有する遺伝子導入マウスにより製造される。遺伝子導入は興味ある抗原(例えば,本明細書に記載されているhLRP6のエピトープ)により免疫化される。あるいは,ヒト抗体は,ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを提供し,興味ある抗原(例えば,本明細書に記載されているhLRP6またはhLRP6エピトープ)ライブラリーをスクリーニングすることにより同定される。 【0135】標準分子生物学技術は改変された抗体配列を製造および発現させるために使用することができる。改変された抗体配列によってコードされる抗体は,機能特性が,特異的なLRP6への結合,LRP6がWnt経路メンバー(例えば,DKK1(dickkopf1),DKK2,DKK4,SOST1,SOSD1(USAG1),sFRP(可溶性Fzd-関連タンパク質)1-4,WiseまたはWntリガンド)に結合する能力の阻害およびβ-カテニンリン酸化および分解の調節を含むが,これらに限定されない,抗LRP6抗体の機能特性の1つ,一部または全部を保持するものである。改変された抗体の機能特性は当分野で利用できる,および/または本明細書に記載されている標準アッセイ(例えば,ELISA)を使用して評価することができる。 【0148】モノクローナル抗体生成モノクローナル抗体(mAb)は慣用のモノクローナル抗体方法論を含 されている標準アッセイ(例えば,ELISA)を使用して評価することができる。 【0148】モノクローナル抗体生成モノクローナル抗体(mAb)は慣用のモノクローナル抗体方法論を含む種々の技術,例えば,KohlerandMilstein (1975 Nature, 256:495)の標準体細胞ハイブリダイゼーション技術により,またはライブラリーディスプレイ法,例えば,ファージディスプレイ法を使用して製造することができる。 【0156】 本発明のヒトモノクローナル抗体は,また,ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して製造することができる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ方法は当分野で設立されている。…。ライブラリーは全長LRP6またはLRP6の特定のエピトープへの結合をスクリーニングされ得る。 【0157】本発明のヒトモノクローナル抗体は,また,ヒト抗体応答が免疫で製造され得るようにヒト免疫細胞を再構成されたSCIDマウスを使用して製造することができる。 【0184】LRP6結合分子をWnt誘導LRP6リン酸化およびβ-カテニン安定化,レポーター遺伝子または標的遺伝子発現を増加または減少する能力に対して試験することができる。 【0188】医薬組成物他の局面において,本発明は,本発明のLRP6結合分子(例えば,モノクローナル抗体またはその抗原-結合部分)の1つまたは組合せを含む,薬学的に許容される担体とともに製剤化された組成物,例えば,医薬組成物を提供する。このような組成物は(例えば,2種以上の異なる)結合分子の1つまたは組合せを含み得る。例えば,本発明の医薬組成物は,標的抗原上の異なるエピト ともに製剤化された組成物,例えば,医薬組成物を提供する。このような組成物は(例えば,2種以上の異なる)結合分子の1つまたは組合せを含み得る。例えば,本発明の医薬組成物は,標的抗原上の異なるエピトープに結合するか,または相補的活性を有する抗体または薬物の組合せを含むことができる。 【0189】本発明の医薬組成物は,また,組合せ治療,すなわち他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば,癌治療に関して,組合せ治療は抗 LRP6抗体(例えば,LRP6抗体をアンタゴナイズする)を少なくとも1つの他の化学療法剤と共に含むことができる。同様に,糖尿病治療に関して,組合せ治療は抗LRP6抗体(例えば,LRP6抗体をアゴナイズする)を少なくとも1つの他のインスリン分泌促進剤,例えば,ナテグリニドまたはレパグリニドと共に含むことができる。同様に,骨粗鬆症治療に関して,組合せ治療は抗LRP6抗体(例えば,LRP6抗体をアゴナイズする)を少なくとも1つの他の骨密度を増加することができる薬物,例えば,カルシウム,ビタミンDまたはビスホスホネートと共に含むことができる。組合せ治療において使用することができる治療剤の例は以下の本発明の薬物の使用についてのセクションにおいてより詳細に記載されている。 【0209】本発明の使用および方法本明細書に記載されているLRP6結合分子はインビトロおよびインビボで診断的および治療的有用性を有する。例えば,これらの分子を種々の障害を処置,予防または診断するために,培養中の細胞に,例えば,インビトロまたはインビボで,または対象に,例えば,インビボで投与することができる。LRP6結合分子は異常Wntシグナル伝達と関連する疾患および状態を意味する“Wntシグナル伝達関連障害”に罹 ば,インビトロまたはインビボで,または対象に,例えば,インビボで投与することができる。LRP6結合分子は異常Wntシグナル伝達と関連する疾患および状態を意味する“Wntシグナル伝達関連障害”に罹患しているヒト患者を処置するために特に適当である。Wntシグナル伝達の異常上方調節は,特にアンタゴナイズLRP結合分子の投与による処置で修正可能である,癌,骨関節症および多発性嚢胞腎と関連する。逆に,Wntシグナル伝達の異常下方調節は,特にアゴナイズLRP結合分子の投与による処置で修正可能である,骨粗鬆症,肥満,糖尿病および神経変性疾患と関連する。 ウ実施例 【0226】実施例1:Wnt特異的抗LRP6アンタゴナイズ抗体の同定抗LRP6アンタゴニストFabsが優先的にWnt1またはWnt3a-誘導Wntシグナル伝達を阻害することを見出した。293T細胞に,SuperTopflashおよびSV40-Renillaレポーターと共にWnt1またはWnt3a発現プラスミドを一時的にトランスフェクトした。LRP6 Fabで処理された細胞および抗-リソソーム対照Fab(Fab対照)で処理された細胞間のルシフェラーゼシグナルの比を少なくとも図1および2にプロットおよび記載した。 【0227】標準Wntシグナル伝達できるWntシグナル伝達経路タンパク質は本発明のLRP6結合分子を2つのクラスに分けることができる。Wnt3およびWnt3aはWnt3a-特異的LRP6アンタゴニストAbsによりブロックされた。他のWntタンパク質(Wnt1,2,6,7A,7B,9,10A,10B)はWnt1-特異的LRP6アンタゴニストAbsによりブロックされた。 【0228】293T細胞にSuperTopflashお ntタンパク質(Wnt1,2,6,7A,7B,9,10A,10B)はWnt1-特異的LRP6アンタゴニストAbsによりブロックされた。 【0228】293T細胞にSuperTopflashおよびSV40-Renillaと共に異なるWntおよびFrizzled構築物を一時的にトランスフェクトし,LRP6アンタゴニストFabの一群で処理することにより,実験を行った。LRP6 Fabで処理された細胞および抗-リソソーム対照Fab(Fab対照)で処理された細胞間のルシフェラーゼシグナルの比を表IIに示す:表II【表2】 【0229】実施例2:Wnt特異的抗LRP6抗体の同定抗LRP6アゴニストFabsを同定した。293T-STF細胞を指示された抗体(1ug/ml)および0%または5%のWnt3a-条件培地で一晩処理し,ルシフェラーゼ活性を測定した。指示されたWnt3a濃度で,LRP6 Fabで処理された細胞および抗-リソソーム対照Fab(Fab対照)で処理された細胞間のルシフェラーゼシグナルの比を少なくとも図3において見られるようにプロットした。 【0230】実施例3:LRP6のドメインマッピングおよびエピトープ同定少なくとも図4において示されるとおり,FACSアッセイを使用するLRP6欠失変異体のドメインマッピングは,Wnt1-特異的LRP6アンタゴニスト抗体がプロペラ1に結合し,そしてWnt3a-特異的LRP6アンタゴニスト抗体およびアゴニストLRP6抗体がプロペラ3に結合することを示す。293T細胞にMESDと共にN-末端Flag-標識野生型または変異体LRP6発現構築物を一時的にトランスフェクトした。細胞を抗-Flag抗体(図4B)および指示されたFab(図4 C)で染色し,FAC MESDと共にN-末端Flag-標識野生型または変異体LRP6発現構築物を一時的にトランスフェクトした。細胞を抗-Flag抗体(図4B)および指示されたFab(図4 C)で染色し,FACSにより分析した。赤色の曲線は2つのアゴニストLRP6抗体(Fab025およびFab026)を示す。紫色の曲線は2つのWnt1特異的LRP6アンタゴニスト抗体(Fab010およびFab021)を示す。暗青色の曲線は2つのWnt3a特異的LRP6アンタゴニスト抗体(Fab002およびFab004)を示す。明青色の曲線はWnt3aおよびWnt1両方の誘導シグナル伝達を阻害するLRP6アンタゴニスト抗体(Fab005)を示す。表IIIは抗LRP6FabsおよびLRP6切断変異体間の相対的結合能を示す(この表形式データは図4A-4Cで示されるFACS分析図に対応する)。“--”は非活性を示し,そして“+”は活性を示す(大きな活性に対してより多くの記号)。 表III【表3】 2 取消事由2及び3について(1) 本件発明は,LRP6結合分子の発明及び医薬品組成物の発明からなるところ,この両発明について,実施可能要件及びサポート要件の各適合性に係る取消事由2及び3を併せて検討する。 (2) LRP6結合分子の発明(本件発明1~22,31~33)についてア実施可能要件適合性について (ア) 原告は,「当業者が,エピトープについて具体的に特定する記載がない本件明細書の記載に基づいて,エピトープを決定してLRP6結合分子を得るためには,過剰な実験を行う必要がある。」との本件異議申立書記載の主張に対し,本件明細書には,LRP6に関連するエピトープが示されており,当業者であれば,本件特許の優先日当時に利用可能な技術を用いることにより,イ 実験を行う必要がある。」との本件異議申立書記載の主張に対し,本件明細書には,LRP6に関連するエピトープが示されており,当業者であれば,本件特許の優先日当時に利用可能な技術を用いることにより,インビトロで,エピトープを含む特定のペプチド(すなわち,プロペラ1領域又はプロペラ3領域のアミノ酸配列)に結合する本件発明の候補となるLRP6抗体を十分な数で特定することができ,また,本件明細書の記載及び本件特許の優先日当時の周知技術を用いることにより,製造された結合分子の結合性及び活性を調べ,その有用性を確認することができたと主張する。 (イ) 検討a 物の発明について,明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには,当業者が,明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,その物を生産でき,かつ,使用することができるように具体的に記載されていることが必要であると解するのが相当である。 b 本件明細書の記載について上記1(2)において認定したとおり,本件明細書には,本件発明に係るLRP6結合分子のLRP6上の結合部分や結合によるWntリガンドの結合阻害についての説明(【0015】,【0033】等)とともに,実施例1には,優先的にWnt1又はWnt3a誘導Wntシグナル伝達を阻害する抗LRP6アンタゴニストFabs(実験時のプライベートネームであるFab003,Fab004,Fab015など7つのFabで記載)が同定された旨が記載されている(【0226】~【0228】)。 しかし,本件明細書には,上記各Fabがいかなる抗原結合部分を含んでいるのか,すなわち,抗原結合部分やそれが認識するエピトープがいかなるアミノ酸配列等によって特定されるのかについて,これを具体的に示す記載はなく,そ には,上記各Fabがいかなる抗原結合部分を含んでいるのか,すなわち,抗原結合部分やそれが認識するエピトープがいかなるアミノ酸配列等によって特定されるのかについて,これを具体的に示す記載はなく,その手掛かりとなる記載も見当たらない。 また,実験結果が記載されていたと推測される図は,全て欠落している。 c 本件発明1~22,31~33は特定のアミノ酸配列の抗原結合部分を含むLRP6結合分子,すなわち化学物質の発明である。そして,上記bにおいて説示したとおり,本件明細書の記載から,実施例で得られた各Fabのアミノ酸配列等の化学構造や認識するエピトープを把握することはできない。また,本件明細書には,Wnt1特異的等の機能的な限定に対応する具体的な化学構造等に関する技術情報も記載されていない。そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明における他の記載及び本件特許の出願時の技術常識を考慮しても,特許請求の範囲に規定されている300程度のアミノ酸の配列に基づき,Wnt1に特異的である等の機能を有するLRP6結合分子を得るためには,当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要があると認めるのが相当である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が,本件明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,本件発明に係る物を生産でき,かつ,使用することができるように具体的に記載されているとはいえない。 (ウ) 原告の主張についてa 原告は,特定のエピトープに対応する抗原結合部分を有する抗体は,汎用のファージディスプレイ法により取得することができるから,本件発明に係る結合分子を得るために,当業者が期待し得る程度を超え る試行錯誤は要しないし,本件明細書記載の機能アッセイにより得られた抗体の機能(Wnt特異性)に 取得することができるから,本件発明に係る結合分子を得るために,当業者が期待し得る程度を超え る試行錯誤は要しないし,本件明細書記載の機能アッセイにより得られた抗体の機能(Wnt特異性)についても,当業者は容易に確認することができると主張する。 確かに,原告が主張する技術は,いずれも本件発明が属する技術分野における一般的な技術である,抗体類の製造方法やリガンド・受容体の結合アッセイ法であって,例えば,抗原又はエピトープが特定されている場合に,ファージディスプレイ法等の周知の技術を適用することによって,それに対応する抗体が得られることは技術常識であるといえる(この点,当事者間に争いはない)。しかし,本件発明に係る「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」「LRP6結合分子」を生産するためには,まず,本件発明に係るLRP6の第1又は第3プロペラに相当するそれぞれ300程度のアミノ酸の配列から,本件発明に係る特異性を満たすエピトープになり得ると予想される特定の塩基配列を選定した上で,ファージディスプレイ法などの周知の手法によってそれらに対応する化学構造(アミノ酸配列)を有するペプチド(すなわちFab)を取得し,得られた多数のFabの中から,「Wnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」との機能を有するFabを特定することが必要である。 これに対し,本件明細書には,本件発明に係る特異性を満たすエピトープとなり得ると予想される特定の塩基配列の具体的な選定方法について何ら記載がないから,本件明細書に基づいて本件発明のLRP6結合分子を得ようとする当業 細書には,本件発明に係る特異性を満たすエピトープとなり得ると予想される特定の塩基配列の具体的な選定方法について何ら記載がないから,本件明細書に基づいて本件発明のLRP6結合分子を得ようとする当業者は,結局,発明者が本件発明を発明した際に行ったのと同程度の試行錯誤をしなければならないところ, これは当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いるものというべきである。 すなわち,エピトープを特定すれば,それに対応する抗体は周知の手法により得ることができるとはいえるものの,本件明細書には,そのエピトープについて,具体的なアミノ酸配列等のその構造に関する技術的特徴が実施例として開示されておらず,また,本件明細書における他の記載及び出願時の技術常識に基づいても,エピトープ又はそれに対応する抗体結合部分の具体的構造等を特定することができない以上,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて本件発明に係る結合分子を容易に生産することができるとはいえない。 b また,原告は,本件発明は,本件特許の優先日当時に公知でなかった「LRP6の特定のプロペラへ結合する抗体と特定のWntシグナル伝達経路の阻害との関係性」という新しい知見を基礎とするWnt1又はWnt3誘導シグナル伝達経路を阻害するという本件発明特定事項を有する結合分子であるから,結合する領域がLRP6の第1又は第3のプロペラであることが具体的に特定されていれば足り,LRP6のプロペラ内のエピトープのアミノ酸配列又は抗原結合部位のアミノ酸配列を限定的に記載することを要しないと主張する。 しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,上記のとおり,抗体の抗原結合部位又はエピトープが十分に特定されていないことから,本件明細書の他の記載及び本件特許の出願時の技術常識を参 ないと主張する。 しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,上記のとおり,抗体の抗原結合部位又はエピトープが十分に特定されていないことから,本件明細書の他の記載及び本件特許の出願時の技術常識を参酌しても,当業者が,本件発明に係る結合分子の結合する領域はLRP6の第1又は第3のプロペラであることが特定されていると理解できるとはいえず(例えば,実施例1において,「優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導伝達経路を阻害しない」結果が示されているFab015,Fab016,Fab019及びFa b020は,いずれも実施例3に掲げられていないことから,当該各Fabが結合する領域がどこであるかは不明である。),本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するとはいえない。 c したがって,この点についての原告の主張はいずれも採用することができない。 (エ) 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1~22,31~33について,当業者が容易に実施することができるように明確かつ十分に記載したものと認めることはできない。 イサポート要件適合性について(ア) 原告は,本件明細書の発明の詳細な説明における実施例1(特に表2)及び実施例3(特に表3)の記載から,当業者は,「Wnt3および/または3aシグナル伝達を阻害しているが,他のWntタンパク質シグナル伝達をあまり阻害していない,Wnt3および/または3a特異的LRP6結合分子がLRP6のプロペラ3に特異的に結合すること」,「他のWntタンパク質シグナル伝達を阻害しているが,Wnt3および/または3aシグナル伝達をあまり阻害していない,Wnt1特異的LRP6結合分子がLRP6のプロペラ1に特異的に結合すること」,及び本件発明 tタンパク質シグナル伝達を阻害しているが,Wnt3および/または3aシグナル伝達をあまり阻害していない,Wnt1特異的LRP6結合分子がLRP6のプロペラ1に特異的に結合すること」,及び本件発明は,これらに基づいた結合分子に関するものであることがいずれも理解できるし,また,本件明細書は,本件発明のLRP6結合分子について,本件発明の属する技術分野で周知のアッセイにおいて有用性が確認できることを示しているから,結局,本件明細書には,Wntシグナル伝達を調節するLPR6結合分子を提供するという本件発明の課題が解決できるような記載があると主張する。 (イ) 検討a 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範 囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。 b これを本件についてみると,本件発明1の技術的特徴は,原告が主張するとおり,特定のWntとLRP6におけるその特定の結合部位との関係(例えば,Wnt1の結合部位はプロペラ1の領域であること等)を有し,具体的な抗原結合部分(Fab)を備える「Wnt1アンタゴニスト抗体」及び「Wnt3aアンタゴニスト抗体」にあると認められる。そして,特許請求の範囲に記載されているとおり,「抗原結合部分が,配列番号:1のアミノ酸20-326;または…のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP 体」にあると認められる。そして,特許請求の範囲に記載されているとおり,「抗原結合部分が,配列番号:1のアミノ酸20-326;または…のいずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し」,「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」等の主として機能によって特定される広範な化学物質の発明について特許を受けようとするものである。 一方,上記ア(イ)bにおいて説示したとおり,本件明細書には,具体的な抗体の抗原結合断片Fabを得たことをうかがわせるプライベート番号(Fab003,Fab015など)が記載されているものの,それらの具体的なFabの構造(アミノ酸配列)も,当該抗原結合断片が認識するエピトープ(LRP6中の数個のアミノ酸配列)も記載されていない(なお,上記のとおり,実験結果が記載されていたと推測される図が全て欠落しているため,これらのFabが有する詳 細な機能・特性の検証自体が事実上不可能である。)。そして,特許請求の範囲には,「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」という機能的な特徴を有することが記載されているものの,これらの機能と得られたFabの構造上の特徴等を関連づける情報も何ら記載されていない。 そうすると,本件発明1について,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも,また,当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題 発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも,また,当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 このことは,本件発明2~22,31~33についても同様である。 (ウ) 小括以上によれば,本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しているとはいえない。 (3) 医薬組成物の発明(本件発明23~30,34~39)についてア本件発明23~30,34~39は,特定の抗原結合部分を含むLRP6結合分子を含有する医薬組成物に関する発明であって,そのうち本件発明23~30,34及び35は,先行する請求項に記載されているLRP6結合分子を含む医薬組成物の発明,本件発明36~39は,それぞれ独立して特定の抗原結合部分を含むLRP6結合分子を含有する医薬組成物に関する発明である。 イ実施可能要件適合性について(ア) 医薬に関する発明については,一般に,物質名や成分組成等が示されることのみによっては,その有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり,当該医薬を使用することができないから, 実施可能要件に適合するものといえるためには,明細書の発明の詳細な説明が,その医薬を生産することができるだけでなく,出願時の技術常識に照らし,医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載されている必要があるというべきである。 (イ) 本件についてみると,本件明細書の段落【0188】~【0208】及び【0209】~【0221】には,医薬組成物に関する一般的な製剤化技術や投与方法とともに,癌や骨関節症,糖尿病など「LRP6結合分子」が関連する可能性がある多 書の段落【0188】~【0208】及び【0209】~【0221】には,医薬組成物に関する一般的な製剤化技術や投与方法とともに,癌や骨関節症,糖尿病など「LRP6結合分子」が関連する可能性がある多くのWntシグナル伝達関連障害が列挙されている。しかし,本件明細書には,本件発明23~30,34~39に係る医薬組成物が新規有効成分とするところの「LRP6結合分子」を用いた薬理試験結果など,医薬としての具体的な有用性を当業者が理解し得るような記載がされていない。そうすると,当業者は,本件発明に係る特定の「LRP6結合分子」がいかなる疾患の治療に有効であるかを具体的に理解することができないというべきである。 したがって,本件発明23~30,34~39について,本件明細書の発明の詳細な説明は,実施可能要件に適合するものとはいえない。 ウサポート要件適合性について本件明細書の発明の詳細な説明によれば,本件発明23~30,34~39に係る医薬組成物が解決しようとする課題は,本件発明に係る特定の「LRP6結合分子」を含む医薬組成物を提供することにより,Wntシグナル伝達関連障害を処置,予防又は診断することと認められる(【0007】及び【0209】)。しかし,上記イにおいて説示したとおり,本件明細書の段落【0188】~【0208】及び【0209】~【0221】には,一般的な製剤化技術やWntシグナル伝達が関連している可能性がある多くの疾患が列挙されているものの,本件明細書の他の記載を参酌しても,本件発明に係る特定の「LRP6結合分子」がいかなる疾患の 治療に有効であるかを具体的に理解することはできないから,本件明細書の発明の詳細な説明は,上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。 そうすると,本件 治療に有効であるかを具体的に理解することはできないから,本件明細書の発明の詳細な説明は,上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。 そうすると,本件発明23~30,34~39に係る特許請求の範囲の記載は,サポート要件に適合するものとはいえない。 (4) 小括以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合しているとはいえないし,特許請求の範囲の記載もサポート要件に適合しているとはいえない。 したがって,原告が主張する取消事由2及び3は,いずれも理由がない。 3 取消事由6(理由不備)について(1) 原告は,本件取消決定には具体的な理由が付されていないという重大な違法があると主張する。 (2) そこで検討するに,特許異議の申立てについての決定には,決定の結論及び理由を記載しなければならない(特許法120条の6第1項4号)。 この点に関連して,特許法157条2項4号は,審決をする場合には審決書に理由を記載しなければならないと定めている。この趣旨は,審判官の判断の慎重,合理性を担保しその恣意を抑制して審決の公正を保障すること,当事者が審決に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与えること及び審決の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることにあるというべきであり,したがって,審決書に記載すべき理由としては,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は技術水準とされる事実などこれらの者にとって顕著な事実について判断を示す場合であるなど特段の事由がない限り,前示のような審判における最終的な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要するものと解するのが相当である(最高裁昭和59年3 場合であるなど特段の事由がない限り,前示のような審判における最終的な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要するものと解するのが相当である(最高裁昭和59年3月13 日第三小法廷判決・集民141号339頁)ところ,このことは特許異議の申立てに係る決定についても同様と解される。 (3) 本件についてみると,上記第2の5において認定したとおり,本件取消決定に係る決定書そのものには,結論に至った具体的な判断過程も,その根拠となるべき証拠による認定事実も何ら記載されていない。 しかし,当該決定書には,「平成28年5月13日付けで取消理由を通知し」,「上記の取消理由は妥当なものと認められる」との記載がされており,本件取消理由通知書には,取消理由の要旨と,詳細については本件異議申立書を参照のこととの記載がされ,本件異議申立書には,本件特許が取り消されるべきであることについての理由が,証拠を具体的に摘示して,詳細に記載されているのであるから,本件異議申立書,本件取消理由通知書及び本件取消決定に係る決定書の全体をみれば,当該決定書の記載が,審決の公正を保障し,当事者が決定に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与え,決定の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にするという趣旨に反するものとはいえない。また,本件異議申立手続において,被告が本件取消理由通知をしたのに対し,原告が応答をしなかったという経緯も踏まえれば,本件取消決定に係る決定書そのものに,結論に至った具体的な判断過程や,その根拠となるべき証拠による認定事実が何ら記載されていないとしても,上記の結論に変わりはないものというべきである。 したがって,本件取消決定に係る決定書が,適法な理由の記載を欠く違法なものであ 根拠となるべき証拠による認定事実が何ら記載されていないとしても,上記の結論に変わりはないものというべきである。したがって,本件取消決定に係る決定書が,適法な理由の記載を欠く違法なものであると認めることはできず,この点についての原告の主張を採用することはできない。 4 結論以上によれば,実施可能要件及びサポート要件に適合しないとして本件特許を取り消すとした異議の決定の結論に誤りはないから,その余の取消事由について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 高橋彩 裁判官 間明宏充

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