平成23年4月27日判決言渡平成22年(行ケ)第10194号審決取消請求事件平成23年3月16日口頭弁論終結判決 原告古河電気工業株式会社 訴訟代理人弁護士加藤義明同松永章吾同原澤敦美訴訟代理人弁理士住吉秀一同宮城康史 被告特許庁長官指定代理人稲垣浩司同岡本昌直同黒瀬雅一同小林和男 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が不服2008-7486号事件について平成22年5月6日にした審決を取り消す。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「回転コネクタ」とする発明について,平成13年12月26日に特許出願をし(特願2001-394990号。甲6),平成16年11月1日に出願審査請求をした(甲7)が,平成19年10月1日付けで拒絶理由通知を受けた(甲8)ので,同年12月6日付けで手続補正書を提出した(甲10)が,平成20年2月20日付けで拒絶査定を受けた(甲11)。これに対し,原告は,平成20年3月27日,拒絶査定に対する不服審判の請求をし(不服2008-7486号。甲12),同年4月23日付けで手続補正書を提出した(甲14。 以下「本件補正」という。)。 特許庁は,平 原告は,平成20年3月27日,拒絶査定に対する不服審判の請求をし(不服2008-7486号。甲12),同年4月23日付けで手続補正書を提出した(甲14。 以下「本件補正」という。)。 特許庁は,平成22年5月6日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(以下「審決」という。),その謄本は,同月18日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載(1) 平成19年12月6日付けの手続補正書(甲10)による補正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,上記補正後の特許請求の範囲に記載された発明を「本願発明」といい,同補正後の明細書を図面と併せて「本願明細書」という。)。 「【請求項1】互いに相対回転自在に組み合わされ,内部に環状の空間が形成される回転ケースと外筒部材を有する固定ケース及び渦巻き状に巻回されると共に,中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され,一端が前記回転ケースに,他端が前記固定ケースに,それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え,前記帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって前記両ケースが複数回相対的に回転可能な回転コネクタにおいて,前記複数の帯状伝送線は,最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄く,前記ローラと前記回転ケースとの間のクリアランスが前記ローラと前記外筒部との間のクリアランスよりも大きいことを特徴とする回転コネクタ。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(甲14。補正部分は下線部。以下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明を「本願補正発明」という。)。 「【請求項1】互いに相対回転自在に組み合わされ,内部に環状の空間が形成される回転ケースと外筒部材を有する固定 下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明を「本願補正発明」という。)。 「【請求項1】互いに相対回転自在に組み合わされ,内部に環状の空間が形成される回転ケースと外筒部材を有する固定ケース及び渦巻き状に巻回されると共に,中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され,一端が前記回転ケースに,他端が前記固定ケースに,それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え,前記帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって前記両ケースが複数回相対的に回転可能な回転コネクタにおいて,前記複数の帯状伝送線は,最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄く,回転時における,前記ローラと前記回転ケースとの間のクリアランスすなわち前記ローラと前記回転ケースに巻き回される帯状伝送線との距離が,前記ローラと前記外筒部との間のクリアランスすなわち前記ローラと前記外筒部に巻き回される帯状伝送線との距離よりも常に大きいことを特徴とする回転コネクタ。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,審決は,①本願補正発明は,特開2001-112156号公報(甲1。以下,甲1記載の発明を「引用発明」ということがある。)記載の発明に周知技術を適用することにより,容易に発明をすることができたものであるから,本件補正は独立特許要件を充足せず許されない,②本願補正発明の発明特定事項は,本願発明の発明特定事項に他の発明特定事項を付加したものであるから,本願発明も本願補正発明と同様に,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許を受けることはできない,とするものである。 審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明,同発明と本願補正発明との一致点及び相違点 技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許を受けることはできない,とするものである。 審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明,同発明と本願補正発明との一致点及び相違点を次のとおり認定した。 (1) 引用発明「相互に回転可能に連結され,内部に環状のケーブル収納空間3が形成される可動側ハウジング2と外筒部9を有する固定側ハウジング1及び渦巻き状に巻回されると共に,中間に配置される特定ローラ12A,12BによってU字状に巻き返され,一端が前記可動側ハウジング2に,他端が前記固定側ハウジング1に,それぞれ支持されて前記環状のケーブル収納空間3に収容される第1及び第2の可撓性ケーブル4,5を備え,前記第1及び第2の可撓性ケーブル4,5の巻き締め及び巻き戻しによって前記両ハウジング1,2が複数回相対的に回転可能な車載用回転コネクタ。」(2) 本願補正発明と引用発明の一致点「互いに相対回転自在に組み合わされ,内部に環状の空間が形成される回転ケースと外筒部を有する固定ケース及び渦巻き状に巻回されると共に,中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され,一端が前記回転ケースに,他端が前記固定ケースに,それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え,前記帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって前記両ケースが複数回相対的に回転可能な回転コネクタ。」(3) 本願補正発明と引用発明の相違点「本願補正発明では,複数の帯状伝送線は,最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄く,回転時における,ローラと回転ケースとの間のクリアランスすなわち前記ローラと前記回転ケースに巻き回される帯状伝送線との距離が,前記ローラと外筒部との間のクリアランスすなわち前記ローラと よりも薄く,回転時における,ローラと回転ケースとの間のクリアランスすなわち前記ローラと前記回転ケースに巻き回される帯状伝送線との距離が,前記ローラと外筒部との間のクリアランスすなわち前記ローラと前記外筒部に巻き回される帯状伝送線との距離よりも常に大きいのに対して,引用発明では,第1の可撓性ケーブル4と第2の可撓性ケーブル5の厚さが不明であり,特定ローラ12A,12Bと可動側ハウジング2との間のクリアランスや特定ローラ12A,12Bと外筒部9とのクリアランスが不明であるので,複数の帯状伝送線(第1及び第2の可撓性ケーブル4,5)は,最短の帯状伝送線を除 く他の帯状伝送線(第2の可撓性ケーブル5)の厚さが,最短の帯状伝送線(第1の可撓性ケーブル4)の厚さよりも薄いとはいえず,回転時における,ローラ(特定ローラ12A,12B)と回転ケース(可動側ハウジング2)との間のクリアランスが,前記ローラ(特定ローラ12A,12B)と外筒部(外筒部9)との間のクリアランスよりも常に大きいとはいえない点。」第3 取消事由に関する原告の主張審決には,進歩性に係る判断の誤り(取消事由1),手続上の違法(取消事由2)があるから,取り消されるべきである。 1 取消事由1(本願発明の容易想到性判断の誤り)審決は,本件補正の目的を特許請求の範囲の減縮とした上で,本願補正発明について容易想到であり独立特許要件を充足しないとして本件補正を却下し,本願発明についても同様に容易想到であり特許を受けることはできないと判断した。 しかし,本願発明が容易想到であるとした審決の判断には,以下のとおり誤りがある。 なお,原告は,本件補正が許されないとした審決の結論について争わない(原告は,本件補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において 決の判断には,以下のとおり誤りがある。 なお,原告は,本件補正が許されないとした審決の結論について争わない(原告は,本件補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,却下されるべきであると主張する。)。 (1) 本願発明の課題解決手段の認定の誤り審決は,本願発明の課題がローラや該ローラを連結する移動部材ががたつくことによる異音の発生の防止という周知の課題であることを前提に,かかる課題は,ローラと回転ケースや外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることにより解決できると認定している。 しかし,本願発明の課題は,高温によって帯状伝送線についた癖に起因した突発音の音圧レベルを低減できる回転コネクタを提供することにある。上記突発音は,伝送線の撓みに起因していると考えられ,伝送線の撓みが少ない場合には,伝送線の厚さが突発音の音圧レベルに与える影響が小さい。本願発明は,長い方の帯状伝 送線と比較して,伝送線の自由に動くことができる部分が少なく,撓みの生じ難い,最短の帯状伝送線の厚さを薄くすることなく,その他の帯状伝送線の厚さだけを薄くすることにより,ローラと回転ケースや外筒部とのクリアランスを小さくすることでは解決できない帯状伝送線の癖に起因した突発音について,効果的に音圧レベルを抑えることができるようにしたものである。本願発明の上記効果は,甲17により裏付けられている(なお,甲17は,回転コネクタ全体の突発音の音圧レベルを測定したものである。)。 (2) 引用例及び周知技術の認定及び容易想到性判断の誤りア甲1について審決は,以下の相違点を認定しなかった誤りがある。すなわち,引用発明は,厚さの均一な複数枚の可撓性ケーブルのうち,最短の可撓性ケーブルに,エアバッグ回路 び容易想到性判断の誤りア甲1について審決は,以下の相違点を認定しなかった誤りがある。すなわち,引用発明は,厚さの均一な複数枚の可撓性ケーブルのうち,最短の可撓性ケーブルに,エアバッグ回路に接続される導体を担持し,エアバッグ回路用の導体の電気抵抗値を最も小さくするのに対し,本願発明は,長い帯状伝送線を薄くし,高温によってついた癖に起因した突発音を低減するものであり,課題解決手段及び効果が相違する。なお,エアバッグ回路用の導体の電気抵抗値は,なるべく小さくするというのが技術常識であり,本願発明においても,エアバッグ回路を備える帯状伝送線については,帯状伝送線の厚さを薄くせずに電気抵抗値を下げる必要があるところ,フラットケーブル6及び7を共に薄くすることは,上記技術常識を無視するものである。 イ甲2について審決は,甲2(特開平7-320837号公報)に記載された発明(以下「甲2発明」という。)は,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることにより,ローラのがたつきを解決する発明と認定している。 しかし,甲2発明は,弾性部材を配置することにより,ローラ及び連結部材のがたつきを抑え,がたつきによる異音の発生を防止するものであり,高温によってついた可撓性ケーブルの癖に起因した突発音とは関連がなく,甲2には,本願発明の特徴である長い帯状伝送線を薄くすることについて,記載も示唆もされていない。 ウ甲3について審決は,甲3(特開平9-320723号公報)に記載された発明(以下「甲3発明」という。)は,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることにより,ローラのがたつきを解決する発明と認定している。 しかし,甲3発明は,揺動支点部が案内溝に嵌合してローラの動きを規制す ーラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることにより,ローラのがたつきを解決する発明と認定している。 しかし,甲3発明は,揺動支点部が案内溝に嵌合してローラの動きを規制することで,がたつきの発生を防止するものであり,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることの周知例とはいえない。また,「移動体と,内側円筒部及び外側円筒部との間の隙間によって,フレキシブルフラットケーブルの移動がスムーズになるから,フレキシブルフラットケーブルに大きな張力や座屈が発生するのを防止することができる。」(甲3段落【0014】)との記載からすれば,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることには阻害要因がある。さらに,移動体のがたつきによるフレキシブルフラットケーブルへの張力や座屈の発生は,高温によってついた可撓性ケーブルの癖に起因した突発音とは関連がなく,甲3には,本願発明の特徴である長い帯状伝送線を薄くすることについて,記載も示唆もされていない。 エ甲4について甲4(特開平10-154565号公報)には,「略々中央に円孔を有する円盤形状の支持体7は,支持体内周端7bを内側ケース1の外周溝1aと外側ケース蓋2cとで挟持されると共に,外側ケース2の内周溝2bと外側ケース蓋2cとで挟持されている。よって,支持体7は,前記ケースの回転軸線に平行な方向への相対的な移動が阻止される。」(段落【0021】),「よって,例えば支持体7が振動または衝撃のために移動して内側ケース1または外側ケース2に衝突して衝突音を発するようなことが無い。」(段落【0022】)と記載され,図1には,フラットケーブルとガイドロール5との間にクリアランスがない状態が示されている。しかし,回転コネクタを ケース2に衝突して衝突音を発するようなことが無い。」(段落【0022】)と記載され,図1には,フラットケーブルとガイドロール5との間にクリアランスがない状態が示されている。しかし,回転コネクタを構成する部材の振動による衝突音は,高温によってついた可撓性ケーブルの癖に起因した突発音とは関連がない。したがって,甲4には,本願発明の特徴 である長い帯状伝送線を薄くすることについて,記載も示唆もされていない。 オ甲5について甲5(実開平6-11288号公報)は,フラットケーブルの巻き方向反転部の内側にフラットケーブルの外周面および内周面に弾性的に当接する回転部材を設けると共に,ダミーケーブルの巻き方向反転部の内側ダミーケーブルの外周面および内周面に弾性的に当接する回転部材を設けることにより,フラットケーブルおよびダミーケーブルは,回転部材の弾性により内側ケースおよび外側ケースに押し付けられるため,内側ケースを回転させたときに弛みが生じることがなくなり,内側ケースの回転によりフラットケーブルをスムーズに巻き方向反転部に沿って送ることが可能となるものである。しかし,フラットケーブルをスムーズに巻き方向反転部に沿って送ることは,高温によってついた可撓性ケーブルの癖に起因した突発音とは関連がない。したがって,甲5には,本願発明の特徴である長い帯状伝送線を薄くすることについて,記載も示唆もされていない。 カ小括以上のとおり,甲1ないし5には,本願発明の解決手段である,長い帯状伝送線を薄くすることにより,高温によってついた癖に起因した突発音の音圧を低減できるという効果について,記載も示唆もされていない。甲5は,高温の熱履歴を受けた可撓性ケーブルに曲げ型がついた場合でも,コネクタが回転不能にならないようにすることを課題とする発明であり, 圧を低減できるという効果について,記載も示唆もされていない。甲5は,高温の熱履歴を受けた可撓性ケーブルに曲げ型がついた場合でも,コネクタが回転不能にならないようにすることを課題とする発明であり,高温によって帯状伝送線に癖がつくことに起因した突発音の音圧を低減することを課題にした発明ではなく,甲1ないし4には,高温によって帯状伝送線に癖がつくことに関する記載すらない。引用発明及び周知例には,高温によって帯状伝送線に癖がつくと回転時に異音が発生することや,その異音の発生を防止することは課題とされていない。したがって,本願発明は,甲1ないし5には全く記載されていない新たな効果を奏するものであり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 2 取消事由2(手続上の違法) 審判長は,本願発明を当業者が容易になし得たと認定するため,甲2ないし5を引用するのであれば,原告に対し,新たな拒絶理由を通知し,反論の機会を与えるべきであったにもかかわらず,これを怠っており,審決には手続上の違法がある。 第4 被告の反論 1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)に対し(1) 本願発明の課題解決手段の認定の誤りに対し原告は,審決には,本願発明の課題解決手段について,クリアランスを小さくすることにより突発音の音圧レベルを低減すると認定した誤りがあると主張する。 しかし,本願明細書には,従来技術として,「突発音は,前記ローラと回転ケースや固定ケースとの間の半径方向のクリアランスを小さくすると,音圧レベルを低減できることが知られている。」(段落【0003】)と記載されているのであって,回転コネクタの分野において,ローラや該ローラを連結する移動部材ががたつくこと,すなわちクリアランスが発生することによる異音の発生を防 知られている。」(段落【0003】)と記載されているのであって,回転コネクタの分野において,ローラや該ローラを連結する移動部材ががたつくこと,すなわちクリアランスが発生することによる異音の発生を防止するという周知の課題と,本願発明の課題とは無関係ではない。 なお,原告は,甲17に基づき,最短の帯状伝送線の厚さは薄くすることなく,その他の帯状伝送線の厚さだけを薄くすることにより,効果的に突発音の音圧レベルを抑えることができると主張するが,甲17には,最短の帯状伝送線の突発音の音圧レベルは示されておらず,回転コネクタ全体としての突発音の音圧レベルは明らかでないから,これにより本願発明の作用効果が裏付けられているとはいえない。 (2) 引用例及び周知技術の認定及び容易想到性判断の誤りに対しア甲1について本願明細書の段落【0003】にも,従来技術の課題として記載されているとおり,回転コネクタの分野において,通常,可撓性ケーブルは,中間部分が巻き返されており,高温の環境に放置されれば,必然的に,可撓性ケーブルに癖がつき,回転時に突発音が発生することになるから,この突発音を防止することは,周知の課題である。また,回転コネクタの分野において,ローラや該ローラを連結する移動 部材ががたつくこと,すなわち,クリアランスが発生することによる異音の発生を防止することも,当業者にとって周知の課題である。そうすると,回転コネクタにおいて,高温やクリアランスの発生による異音の発生を防止することは,周知の課題であり,引用発明においても内在する自明の課題であるから,本願発明と引用発明は,異音の発生の防止という共通の課題を有している。また,引用発明に異音の発生を防止するための周知技術を適用して,本願発明のように構成することに格別の困難性はなく,突発音 るから,本願発明と引用発明は,異音の発生の防止という共通の課題を有している。また,引用発明に異音の発生を防止するための周知技術を適用して,本願発明のように構成することに格別の困難性はなく,突発音を一層低減できるとの効果も,引用発明及び周知技術から,当業者が予測し得る範囲内のものである。 イ甲2について甲2には,バネによって可撓性ケーブルとローラとの遊び,すなわち,ローラと内筒部及び外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを縮小することにより,ローラ及び連結部材のがたつきを抑え,異音の発生を防止する構成が示されている。 したがって,審決が,甲2を挙げて,異音防止のため,ローラと内筒部及び外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることが周知の技術事項であるとしたことに誤りはない。 ウ甲3について甲3には,ローラを内側円筒部や外側円筒部に押し付けるように構成すること,すなわち,クリアランスを小さくすることにより,ローラや移動体のがたつきを抑え,異音の発生を防止する構成が示されている。したがって,審決が,甲3を挙げて,回転コネクタの分野において,ローラや該ローラを連結する移動部材ががたつくことによる異音の発生を防止するため,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくすることが周知の技術事項であるとしたことに誤りはない。なお,原告は,甲3について,審決が周知例として挙げたものとは異なる実施例について,阻害要因があると主張しているのであって,かかる主張は失当である。 エ甲4,5について 審決は,クリアランスがない回転コネクタが周知であることを示すため,甲4,5を挙げたのであって,長い帯状伝送線を薄くすることが周知であることを示すものではない。 2 取消事由2(手続上の違法)に対し 決は,クリアランスがない回転コネクタが周知であることを示すため,甲4,5を挙げたのであって,長い帯状伝送線を薄くすることが周知であることを示すものではない。 2 取消事由2(手続上の違法)に対し周知技術とは,文献等を例示するまでもなく,当業者ならば当然知っているはずの事項であって,審査ないし審判において周知技術を用いる際,そのことについて意見書提出又は補正の機会を与えなくとも,当業者である出願人に対し,不意打ちとなることはない。また,甲2,5は,拒絶理由通知において,引用文献として示されている。さらに,原告は,意見書や手続補正書(方式)(甲13)において,本願発明と引用発明との相違点について反論を行っており,意見を述べる機会が与えられ,補正する機会もあった。 したがって,審決に手続上の違法はない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,本願発明及び本願補正発明いずれについても,引用発明に周知技術を適用することにより容易に想到できたといえるから,審決に誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)について原告は,審決は,本願発明の課題解決手段の認定を誤った上,本願発明の課題とは無関係の周知技術を認定して,本願発明が容易想到であると判断した誤りがあると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用することができない。 (1) 事実認定ア本願発明の請求項1は,第2の2の(1)記載のとおりであり,本願明細書には,以下の記載がある(甲6)。 「【0002】【従来の技術】相対的に回転する二部材間で電気信号,光信号あるいはこれら双方の信号等を伝 送する回転コネクタとして,例えば,回転ケースと固定ケースとによって形成される環状の空間に,複数のローラを有するリングを配 に回転する二部材間で電気信号,光信号あるいはこれら双方の信号等を伝 送する回転コネクタとして,例えば,回転ケースと固定ケースとによって形成される環状の空間に,複数のローラを有するリングを配置すると共に,渦巻き状に巻回される複数のフラットケーブルのそれぞれの中間部分を,前記各ローラでU字状に巻き返して収容したものがある(例えば,特開2001-112156号)。」「【0003】このように中間部分を巻き返したフラットケーブルを有する回転コネクタは,85℃程度以上の高温の環境に2時間程放置すると,高温によって前記フラットケーブルに癖がつき,回転時に突発音と呼ばれる異音が発生する傾向がある。このような突発音は,前記ローラと回転ケースや固定ケースとの間の半径方向のクリアランスを小さくすると,音圧レベルを低減できることが知られている。」「【0004】【発明が解決しようとする課題】ところで,前記フラットケーブルは,偏平な金属導体を電気絶縁性の合成樹脂で被覆したものである厚さを有している。このため,前記回転コネクタは,前記クリアランスを小さくするうえで限界があり,従って突発音の音圧レベルを低減するうえで限界があった。」「【0005】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので,突発音を一層低減可能な回転コネクタを提供することを目的とする。」「【0006】【課題を解決するための手段】本発明においては上記目的を達成するため,互いに相対回転自在に組み合わされ,内部に環状の空間が形成される回転ケースと固定ケース及び渦巻き状に巻回されると共に,中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され,一端が前記回転ケースに,他端が前記固定ケースに,それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え,前記帯状伝送線の巻き締 と共に,中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され,一端が前記回転ケースに,他端が前記固定ケースに,それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え,前記帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって前記両 ケースが複数回相対的に回転可能な回転コネクタにおいて,前記複数の帯状伝送線は,最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄い構成としたのである。」イ甲1(引用例)には以下の記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,自動車のステアリング装置に装着されてエアバッグシステム等の電気的接続手段として利用される車載用回転コネクタに係り,特に,ケーブル収納空間内に複数枚の可撓性ケーブルが収納され,かつ各可撓性ケーブルの巻回方向がケーブル収納空間内で反転された車載用回転コネクタに関する。」「【0008】【発明が解決しようとする課題】ところで,車載用回転コネクタは,前記したように,自動車のステアリング装置に組み込まれて,ステアリングホイールに装着されたエアバッグ回路やホーン回路等の電気的接続手段として用いられるが,これらの各回路のうちエアバッグ回路は保安上特に高い信頼性が要求されるので,自動車の車体に所定値以上の加速度(衝撃力)が作用したとき,ステータ側に備えられた制御回路からの信号をステアリングホイール側に備えられたエアバッグ・インフレータに確実に伝達するため,エアバッグ回路に接続される導体には,特に導体抵抗が小さいことが要求される。」「【0010】本発明は,かかる従来技術の不備を解消するためになされたものであって,その課題とするところは,エアバッグ回路に接続される導体の電気抵抗が小さく,エアバッグ・インフレータを確実に駆動可能な信頼性に優れた車載用 ,かかる従来技術の不備を解消するためになされたものであって,その課題とするところは,エアバッグ回路に接続される導体の電気抵抗が小さく,エアバッグ・インフレータを確実に駆動可能な信頼性に優れた車載用回転コネクタを提供することにある。」「【0011】【課題を解決するための手段】本発明は,前記の課題を解決するため,同心に配置されかつ回動自在に連結された一対のハウジングと,当該一対のハウジングの間 に形成される環状のケーブル収納空間内に巻き締め及び巻き戻し可能に収納され,両端が前記一対のハウジングのそれぞれに固定された複数枚の可撓性ケーブルとを備え,前記複数枚の可撓性ケーブルのうち,最も全長が短い可撓性ケーブルに,エアバッグ回路に接続される導体を担持するという構成にした。」ウ甲2には以下の記載がある。 「【0004】【発明の課題】しかし,上記公報に記載のケーブルリールでは,複数個のローラと可動体との間に余分な空間が存在するため,可動体の回動時においてフラットケーブルに反転部が押圧され,ローラおよび連結部材ががたつき,異音が発生する恐れがある。また,可動体の静止時においても,前記ケーブルリールに振動もしくは衝撃等が加わった場合においても,ローラおよび連結部材ががたつき,異音が発生する恐れがある。さらに,前記空間において,可撓性ケーブルの遊びによる座屈が発生する可能性もある。」「【0021】・・・さらに,内筒部9と可撓性ケーブル3との間に配設されるバネ24によって,ローラ4の内側に有る可撓性ケーブル3をローラ4とともに係止することができ,空間11における内筒部9とローラ4との遊び動作の発生を防止している。これによって,前記遊び空間における可撓性ケーブル3の座屈,およびローラ4,可撓性ケーブル3による異音の発生を防止する ことができ,空間11における内筒部9とローラ4との遊び動作の発生を防止している。これによって,前記遊び空間における可撓性ケーブル3の座屈,およびローラ4,可撓性ケーブル3による異音の発生を防止することが可能である。」「【0022】本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,以下のように種々変形可能である。例えば,ゼンマイのように中心に丸まる性質の弾性バネ24aを,図3に示すように,ローラ4の外周における可撓性ケーブル3の外側に巻回する。 このように構成することによって,ローラ4の外側の可撓性ケーブル3をローラ4に押圧することができ,同時にローラ4をも係止することが可能である。このようにしても,空間11内においてローラ4および可撓性ケーブル3が遊ぶことがなく,異音の発生および可撓性ケーブル3の座屈の発生を抑制することが可能である。」エ甲3には以下の記載がある。 「【0007】【発明が解決しようとする課題】ところで,上記相対回転部材間継電装置10においては,移動体21と内側のケーブル13との間,及び移動体21と外側のケーブル13との間に十分大きな隙間が設けられているため,移動体21の移動がスムーズに行われるものの,例えば自動車の走行時の振動や,エンジン振動によって,移動体21ががたつき,異音が発生してしまうという問題がある。」「【0008】このため,図11及び図12に示すように,ローラ22を内側円筒部11aに押し付けるように構成したり,図13及び図14に示すように,ローラ22を外側円筒部12aに押し付けるように構成したりすることによって,移動体21のがたつきを防止することが考えられる。」(2) 判断本願発明は,中間部分を巻き返した帯状伝送線(フラットケーブル)を有する回転コネクタにおいて,高温によって帯状伝送 ことによって,移動体21のがたつきを防止することが考えられる。」(2) 判断本願発明は,中間部分を巻き返した帯状伝送線(フラットケーブル)を有する回転コネクタにおいて,高温によって帯状伝送線(フラットケーブル)についた癖により回転時に生ずる異音(突発音)の音圧を一層低減するとの課題を解決するため,複数の帯状伝送線(フラットケーブル)のうち,最短の帯状伝送線(フラットケーブル)以外の帯状伝送線(フラットケーブル)の厚さが,最短の帯状伝送線(フラットケーブル)の厚さよりも薄く,ローラと回転ケースとの間のクリアランスが,ローラと外筒部との間のクリアランスよりも大きい構成とした発明である。 他方,甲1(引用例)には,ケーブル収納空間内に複数枚の可撓性ケーブル(フラットケーブル)が収納され,かつ各可撓性ケーブル(フラットケーブル)の巻回方向がケーブル収納空間内で反転された車載用回転コネクタが示されている。また,甲2,3によれば,可撓性ケーブル(フラットケーブル)を用いる回転コネクタにおいては,ローラと内筒部や外筒部との間に余分な空間(クリアランス)が存在すると,ローラ,該ローラを連結する移動部材及び可撓性ケーブルによる異音や可撓性ケーブルの遊びによる座屈が発生するおそれがあること,かかる課題を解決するため,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくす ることは,周知の技術であったと認められる。また,フラットケーブルを用いる回転コネクタにおいては,フラットケーブルを薄くするほど,内筒部や外筒部に巻回された部分の半径方向における厚さが薄くなるから,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さく設計することができるといえる。 そうすると,引用発明においても,ローラと内筒部や外筒部との間に余分 方向における厚さが薄くなるから,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さく設計することができるといえる。 そうすると,引用発明においても,ローラと内筒部や外筒部との間に余分な空間(クリアランス)が存在すると,ローラ,該ローラを連結する移動部材及び可撓性ケーブルによる異音が発生するおそれがあるが,フラットケーブルを薄くするほど,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さく設計することができ,上記異音を低減することができる。したがって,異音の音圧を低減するために,フラットケーブルの厚さを薄くすることに困難性はない。 また,本願発明の特許請求の範囲には,「最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄く,」と記載され,本願明細書には,複数のフラットケーブルのうち,最短のフラットケーブルを除く他のフラットケーブルの電気絶縁性等の被覆を薄くすることにより(すなわち,導体等の太さを変えることなく),上記フラットケーブルの厚さが,最短の帯状フラットケーブルの厚さよりも薄くすることが記載されている(段落【0011】)。しかし,本願明細書には,最短のフラットケーブルを除く他のフラットケーブルの厚さのみを薄くすることの技術的意義は,何ら示されておらず,複数のフラットケーブルのうち,どのフラットケーブルを薄くするかは,当業者が適宜選択し得る設計的事項といえる。のみならず,「厚さを薄くする」との記載は,単に「最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線」と「最短の帯状伝送線」とを対比させたものであって,両者の厚さの大小関係を相対的に示したにすぎないのであるから,仮に,「最短の帯状伝送線」を厚くした場合であっても,「最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄 て,両者の厚さの大小関係を相対的に示したにすぎないのであるから,仮に,「最短の帯状伝送線」を厚くした場合であっても,「最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが,最短の帯状伝送線の厚さよりも薄く」なることになり,このような記載についての技術的意義を合理的に把握することは,到底できない。 仮に,上記構成が,保安上特に高い信頼性が要求される回路(例えば,エアバッ グ回路)に接続されるフラットケーブルについて,導体抵抗を小さくするため,最も全長が短く,導体が厚いフラットケーブルとするものであるとしても,上記構成を採用することは,甲1(引用例)の記載(段落【0008】,【0010】,【0011】)から容易に想到することができたといえる。 以上によれば,本願発明における「中間部分を巻き返したフラットケーブルを有する回転コネクタにおいて,異音(突発音)の音圧を低減するため,複数の帯状伝送線(フラットケーブル)のうち,最短の帯状伝送線(フラットケーブル)以外の帯状伝送線(フラットケーブル)の厚さが,最短の帯状伝送線(フラットケーブル)の厚さよりも薄い」との構成は,引用発明に周知技術を適用することにより,容易に想到できたというべきである。また,本願発明における「前記ローラと前記回転ケースとの間のクリアランスが前記ローラと前記外筒部との間のクリアランスよりも大きい」との構成は,フラットケーブルのほとんどが内筒部に巻回された状態におけるフラットケーブルの内筒部への巻き付き量は,フラットケーブルのほとんどが外筒部に巻回された状態におけるフラットケーブルの外筒部への巻き付き量よりも多いことから,当然に採られる構成である。 したがって,本願発明は,引用発明に周知技術を適用することにより,容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 なお,原告は の外筒部への巻き付き量よりも多いことから,当然に採られる構成である。 したがって,本願発明は,引用発明に周知技術を適用することにより,容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 なお,原告は,本件補正が許されないことについて争っていないが,念のため判断すると,本願補正発明は,本願発明のうち,「前記ローラと前記回転ケースとの間のクリアランスが前記ローラと前記外筒部との間のクリアランスよりも大きいこと」を,「回転時における,前記ローラと前記回転ケースとの間のクリアランスすなわち前記ローラと前記回転ケースに巻き回される帯状伝送線との距離が,前記ローラと前記外筒部との間のクリアランスすなわち前記ローラと前記外筒部に巻き回される帯状伝送線との距離よりも常に大きいこと」と補正するものであるが,上記本願発明と同様に,本願補正発明も引用発明に周知技術を適用することにより,容易想到であり,本件補正は独立特許要件を満たさないから,審決の判断に誤りはない。 以上のとおり,原告の取消事由1の主張は,採用することができない。 2 取消事由2(手続上の違法)について原告は,審判長は,本願発明を当業者が容易になし得たと認定するため,甲2ないし5を引用するのであれば,原告に対し,新たな拒絶理由を通知し,反論の機会を与えるべきであったにもかかわらず,これを怠っており,審決には手続上の違法があると主張する。しかし,原告の上記主張は,採用することができない。 すなわち,審決は,ローラと内筒部や外筒部との間の半径方向におけるクリアランスを小さくするようにすることが周知技術であることを示し,その例示として甲2,3を掲記し,また,ローラと内筒部との間のクリアランスがローラと外筒部との間のクリアランスよりも大きいことの容易想到性の判断において,本願補正発明にお 周知技術であることを示し,その例示として甲2,3を掲記し,また,ローラと内筒部との間のクリアランスがローラと外筒部との間のクリアランスよりも大きいことの容易想到性の判断において,本願補正発明におけるクリアランスよりも小さいクリアランスを有するもの(クリアランスがないもの)が周知技術であることを示し,その例示として甲4,5を掲記した。そうすると,甲2ないし5は,周知技術を示す文献であるから,甲2ないし5を引用するに当たり,原告に対し,新たな拒絶理由を通知し,反論の機会を与えるべきであったとはいえず,審決に手続上の違法はない。 3 結論以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,他に本件審決にはこれを取り消すべき違法は認められない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも,理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官知野明 裁判官中平健は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官飯村敏明
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