- 1 - 主文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人藤村義徳、同原田玲の上告受理申立て理由第1及び第2の2について 1 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 被上告人株式会社植宗は、平成16年1月、株式会社植宗エクステリアの設立に当たり、その株式200株(以下「本件株式1」という。)を引き受け、本件株式1の株主となった。同社は、公開会社でない株券発行会社である。 被上告人植宗は、平成24年4月、Aに対し、本件株式1を譲渡し、植宗エクステリアの取締役会は、上記の譲渡について承認した。 また、被上告人Y1は、平成18年5月、植宗エクステリアの募集株式310株を引き受け、当該株式の株主となった。被上告人Y1は、同年8月頃、Bに対し、上記株式のうち240株(以下「本件株式2」という。)を譲渡し、同社の取締役会は、上記の譲渡について承認した。同人は、平成25年7月、Cに対し、本件株式2を譲渡し、同社の取締役会は、上記の譲渡について承認した。 植宗エクステリアは、設立以来、株券を発行したことはなかった。 Aは、平成29年10月、本件株式1につき、債権者代位権に基づき被上告人植宗の植宗エクステリアに対する株券発行請求権を行使するとして、同社に対し、株券の交付を自己に対してすることを求め、同社から、株券として、原判決別紙3の目録記載の文書(以下「本件株券1」という。)の交付を受けた。また、Cは、同月、本件株式2につき、債権者代位権に基づき被上告人Y1の同社に対する株券発行請求権を行使するとして、同社に対し、株券の交付を自己に対してすることを求令和4年(受)第1266号各株 また、Cは、同月、本件株式2につき、債権者代位権に基づき被上告人Y1の同社に対する株券発行請求権を行使するとして、同社に対し、株券の交付を自己に対してすることを求令和4年(受)第1266号各株券引渡請求及び独立当事者参加事件令和6年4月19日第二小法廷判決- 2 -め、同社から、株券として、原判決別紙2の目録記載の文書(以下「本件株券2」という。)の交付を受けた。 Aは、令和2年3月、上告人に対し、本件株式1を譲渡し、本件株券1を交付した。また、Cは、同年7月、上告人に対し、本件株式2を譲渡し、本件株券2を交付した。植宗エクステリアの取締役会は、上記の譲渡についていずれも承認した。 2 本件は、上告人が、被上告人植宗に対し、上告人が本件株式1を有する株主であることの確認等を求め、また、被上告人Y1に対し、上告人が本件株式2を有する株主であることの確認等を求める事案である。 3 原審は、上記事実関係の下において、要旨次のとおり判断し、上告人は本件株式1及び2を無権利者から譲り受けたにすぎず、これらを善意取得する余地もないとして、上告人の請求をいずれも棄却した。 株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、会社法128条1項により、当該株式に係る株券を交付しなければ、譲渡当事者間においても、その効力を生じないから、本件株式1について被上告人植宗からAに、本件株式2について被上告人Y1からBに、それぞれ有効に譲渡されたということはできない。 また、株式会社が会社法216条所定の形式を具備した文書を株主に交付したときに初めて当該文書が株券としての効力を有することになると解すべきところ、本件株券1及び2は、株主である被上告人らに交付されたものでないから、株券としての効力を有せず、上告人は本件株式1及び2に係る株券の めて当該文書が株券としての効力を有することになると解すべきところ、本件株券1及び2は、株主である被上告人らに交付されたものでないから、株券としての効力を有せず、上告人は本件株式1及び2に係る株券の交付を受けたということはできない。 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 会社法は、株主はその有する株式を譲渡することができると規定するとともに(127条)、株式は意思表示のみによって譲渡することができることを原則とするところ、同法128条は、株券発行会社の株式の譲渡について特則を設け、同- 3 -条2項は、株券の発行前にした譲渡につき、株券発行会社に対する関係に限ってその効力を否定している。そして、同条1項は、株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じないと規定しているところ、株券の発行前にした譲渡について、仮に同項が適用され、株券の交付がないことをもって、株券発行会社に対する関係のみならず、譲渡当事者間でもその効力を生じないと解すると、同項とは別に株券発行会社に対する関係に限って同条2項の規定を設けた意味が失われることとなる。また、株券の発行前にした譲渡につき、上記原則を修正して譲渡当事者間での効力まで否定すべき合理的必要性があるということもできない。以上によれば、同条1項は、株券の発行後にした譲渡に適用される規定であると解するのが相当であるというべきである。 したがって、株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、当該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはないと解するのが相当である。 そうすると、本件株式1の被上告人植宗からAへの譲渡は、本件株式1に係る株券の交付がないことをもっ 該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはないと解するのが相当である。 そうすると、本件株式1の被上告人植宗からAへの譲渡は、本件株式1に係る株券の交付がないことをもって譲渡当事者間での効力が否定されることはなく、また、本件株式2の被上告人Y1からBへの譲渡及び同人からCへの譲渡は、本件株式2に係る株券の交付がないことをもって譲渡当事者間での効力が否定されることはないというべきである。 また、株券発行会社の株式の譲受人は、株券の発行前に株式を譲り受けたとしても、当該株式に係る株券の交付を受けない限り、株券発行会社に対して株主として権利を行使することができないから(会社法128条2項)、当該株式を譲り受けた目的を実現するため、譲渡人に対して当該株式に係る株券の交付を請求することができると解される。そうすると、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条1項本文(平成29年法律第44号による改正前のもの)により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができると解するのが相当である。 - 4 -そして、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使する場合、株券発行会社に対し、株券の交付を直接自己に対してすることを求めることができるというべきであり(大審院昭和9年(オ)第2498号同10年3月12日判決・民集14巻482頁、最高裁昭和28年(オ)第812号同29年9月24日第二小法廷判決・民集8巻9号1658頁参照)、株券発行会社が、これに応じて会社法216条所定の形式を具備した文書を直接譲受人に対して交付したときは、譲渡人に対して株券交付義務を履行したことになる。 したがって、上記文書につき、 658頁参照)、株券発行会社が、これに応じて会社法216条所定の形式を具備した文書を直接譲受人に対して交付したときは、譲渡人に対して株券交付義務を履行したことになる。 したがって、上記文書につき、株券発行会社に対する関係で株主である者に交付されていないことを理由に、株券としての効力を有しないと解することはできない。 そうすると、前記事実関係の下では、本件株券1及び2につき、それぞれA及びCに交付されたことをもって、本件株式1及び2に係る株券としての効力を有しないということはできないから、上記両名から本件株券1及び2の交付を受けた上告人は、本件株式1及び2に係る株券の交付を受けたと認められる余地がある。 5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官尾島明裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官岡村和美)
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