主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、平成13年10月6日から令和6年11月5日までの間、京都弁護士会に所属する弁護士であったものであるが、第1 Aから、医療法人Bに対する診療契約の債務不履行等に基づく損害賠償請求事件を受任し、令和5年5月18日に同事件に係る訴訟上の和解が成立したことにより、同月25日、同法人との間で医師賠償責任保険契約を締結していたC株式会社から、前記和解に基づく解決金として、京都市中京区所在のD信用金庫E支店に開設した被告人名義の普通預金口座に75万円の送金を受け、これを前記Aの訴訟承継人であるFらのために業務上預かり保管中、遅滞なく送金を受けた金銭を同人らに引き渡さなければならないのに、その頃、これを自己の用途に費消する目的で、同人らに引き渡さず着服し、もって前記75万円を横領し、第2 前記第1記載の着服行為等の発覚を免れようと考え、同年9月28日頃、同市伏見区所在の被告人方において、行使の目的で、大津地方裁判所民事部裁判所書記官Gの記名押印のある同年5月19日付け第2回弁論準備手続調書(和解)正本の写しを作成し、同写しの期日欄に記載された「5月18日」の「5」及び「8」を切り取り、それぞれ「9」と記載の紙片を貼り付けて差し替えるなどして「9月19日」にし、同写しの「和解条項」欄の支払期限に関する記載である「令和5年6月19日限り、次の口座」の「6月19日限り、次の口座」を切り取り、「1」、「0」及び「月19日限り、次の口座」と記載の紙片を順に貼り付けて差し替えるなどして、「令和5年10月19日限り、次の口座」にし、同写しの作成日欄に記載された「5月19日」の「5」を切り取 「1」、「0」及び「月19日限り、次の口座」と記載の紙片を順に貼り付けて差し替えるなどして、「令和5年10月19日限り、次の口座」にし、同写しの作成日欄に記載された「5月19日」の「5」を切り取り、「9」と記載の紙片を貼り付けて差し替えるなどして、「9月19日」にした上、前記被告人方に設置された複写機でこれを 複写するなどし、もって前記書記官名義の第2回弁論準備手続調書(和解)正本の写しを偽造した上、同年9月30日頃、前記偽造に係る第2回弁論準備手続調書(和解)正本の写しをあたかも真正に成立したもののように装い、同写しを、滋賀県長浜市所在のH株式会社本社工場の前記F宛てに郵送し、同年10月2日頃、同人にこれを閲覧させて行使した。 (量刑の理由)被告人は、弁護士として高い職業倫理の保持が求められる立場にあったにもかかわらず、被害者の預り金を横領した上、横領の発覚を免れるため、あろうことか、裁判所の和解に係る手続調書正本の写しを偽造して行使することにまで及んだのであり、本件は悪質な犯行である。自らの法律事務所の経費等の不足を補うために預り金の着服を繰り返し、本件も別の依頼者から着服した預り金を補填するために横領をしたというのであるから、動機に格別酌むべきものなどない。依頼者が弁護士から示された公文書の内容を通常疑うものではないところ、その信頼をも裏切ったのであって、司法一般に対する信頼を損なう犯行といえ、強い非難に値する。 他方、業務上横領については被害者に対して被害弁償がされ、被害者からは刑事処分を求めない意思が明らかにされていること、被告人が各事実を認め、反省していること、前科がないこと、当然ではあるが、本件等が原因で所属弁護士会から退会命令処分を受けていること、被告人の妻が出廷し監督を約したことなどの事情が認められる こと、被告人が各事実を認め、反省していること、前科がないこと、当然ではあるが、本件等が原因で所属弁護士会から退会命令処分を受けていること、被告人の妻が出廷し監督を約したことなどの事情が認められるので、このような点をも十分に考慮して、主文のとおり刑を定めた上、その全部の執行を猶予し、被告人に社会内で更生する機会を与えることとした。 (求刑・懲役3年)令和7年3月25日京都地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官大寄淳裁判官棚村治邦裁判官長船源
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