平成20(ワ)38425等 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年12月21日 東京地方裁判所
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判決文本文58,938 文字)

- 1 -平成21年12月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(ワ)第38425号特許権侵害差止等請求事件平成21年(ワ)第36365号承継参加申立事件口頭弁論終結日平成21年10月14日判決東京都千代田区〈以下略〉脱退原告旭化成エレクトロニクス株式会社東京都千代田区〈以下略〉脱退原告承継参加人(以下「参加人」という。)旭化成イーマテリアルズ株式会社同訴訟代理人弁護士新保克芳同高崎仁同洞敬同井上彰東京都千代田区〈以下略〉被告信越化学工業株式会社同訴訟代理人弁護士生田哲郎同森本晋同佐野辰巳同補佐人弁理士松本雅利主文 参加人の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,脱退原告と被告との間に生じたものを含めて,参加人の負担とする。 事実及び理由 第1請求- 2 - 被告は,別紙物件目録記載の各ペリクルを製造,販売,輸出してはならない。 被告は,別紙物件目録記載の各ペリクルを廃棄せよ。 被告は,参加人に対し,1億4000万円及びこれに対する平成21年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,発明の名称を「大型ペリクル用枠体及び大型ペリクル」とする特許権を有していた脱退原告が,被告が製造,販売,輸出する別紙物件目録記載の各ペリクル(以下「被告製品」という。)が前記特許権に係る発明の技術的範囲に属し,前記特許権を侵害するとして,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告製品の製造,販売,輸出の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄並びに民法709条,特許法102条2項に基づく被告製品の販売により被告が得た利益相当額の損害金1億4000万円及びこれに対する不法行為の後の日( 売,輸出の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄並びに民法709条,特許法102条2項に基づく被告製品の販売により被告が得た利益相当額の損害金1億4000万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成21年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 参加人は,本件訴え提起後の平成21年4月1日,脱退原告,旭化成株式会社及び旭化成ケミカルズ株式会社を分割会社,参加人を承継会社とする会社分割により,脱退原告から,前記特許権に関する一切の権利(本件訴訟における損害賠償請求権を含む。)を承継した。脱退原告は,平成21年10月14日,被告の承諾を得て,本件訴訟から脱退した。 争いのない事実( )当事者 ア脱退原告は,半導体集積回路,プリント基板用ガラス長繊維織物などの製造,販売を業とする株式会社である。 イ被告は,塩化ビニル樹脂,半導体シリコンなどの製造,販売を業とする株式会社である。 ウ参加人は,電子部品及び電子材料の製造及び販売を業とする株式会社で- 3 -ある。 ( )脱退原告の特許権 脱退原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」,本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。)を有していた。 特許番号第4007752号発明の名称大型ペリクル用枠体及び大型ペリクル出願年月日平成12年7月26日優先権主張番号特願平11-216071(以下「本件基礎出願」という。)優先日平成11年7月30日優先権主張国日本国登録年月日平成19年9月7日特許請求の範囲請求項1(請求項1に係る発明を「本件発明1」という。)「大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠 国日本国登録年月日平成19年9月7日特許請求の範囲請求項1(請求項1に係る発明を「本件発明1」という。)「大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体であって,前記大型ペリクル膜を展張する面積が1000以上であり,且つ前記枠体の長辺の幅が該枠体の短cm mm辺の幅の1.05倍~5倍であり,且つ前記枠体の長辺の幅が4~30で,且つ前記枠体の短辺の幅が3~23とされたmmmmmmことを特徴とする大型ペリクル用枠体。」請求項6(請求項6に係る発明を「本件発明2」といい,本件発明1と併せて「本件発明」という。)「請求項1~5のいずれか1項に記載の大型ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクル。」( )構成要件の分説 - 4 -本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 ア本件発明1(ア)大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体であって,(イ)前記大型ペリクル膜を展張する面積が1000以上であり,cm 且つ(ウ)前記枠体の長辺の幅が該枠体の短辺の幅の1.05倍~5倍であり,且つ(エ)前記枠体の長辺の幅が4~30で,mmmm(オ)且つ前記枠体の短辺の幅が3~23とされたことmmmmを特徴とする大型ペリクル用枠体。 イ本件発明2請求項1~5のいずれか1項に記載の大型ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクル。 ( )被告の行為 被告は,業として,国内において被告製品を製造し,国内で販売し,又は海外(韓国や台湾等)に輸出している。 ( )被告製品の構成 被告製品は,本件発明1及び2の構成要件を形式的に充足する(被告製品が本件 業として,国内において被告製品を製造し,国内で販売し,又は海外(韓国や台湾等)に輸出している。 ( )被告製品の構成 被告製品は,本件発明1及び2の構成要件を形式的に充足する(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するかどうかは争いがある。)。 ( )本件特許権に関する権利の承継 参加人は,脱退原告から,平成21年4月1日,会社分割により,本件特許権に関する一切の権利(本件訴訟における損害賠償請求権を含む。)を承継した。 争点 ( )被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか。 - 5 -( )本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。 ア本件発明について,本件基礎出願に基づいて国内優先権を主張することができるか。 イ本件発明は,新規性欠如により無効にされるべきものか(無効理由1)。 ウ本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべきものか(無効理由2-乙19を主引用例とする進歩性欠如)。 エ本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべきものか(無効理由3-乙22を主引用例とする進歩性欠如)。 オ本件発明は,記載要件(サポート要件)違反により無効にされるべきものか(無効理由4)。 ( )損害額 第3争点に対する当事者の主張 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか。 (参加人)被告は,被告製品が本件発明の構成要件を形式的に充足することを認めた上で,本件発明の特許請求の範囲には,撓みに影響するとされている要因であるヤング率や枠体の高さ等が記載されておらず,本件明細書は,当業者が実施可能な程度に記載されていないから,本件発明の技術的範囲を特許請求の範囲の記載よりも狭く解釈すべきであると主張する。 しかし,本件発明は,枠体の撓み防止と有効面積の確保という二つの技術的要請を,ヤング率や枠体の高さ等ではな ないから,本件発明の技術的範囲を特許請求の範囲の記載よりも狭く解釈すべきであると主張する。 しかし,本件発明は,枠体の撓み防止と有効面積の確保という二つの技術的要請を,ヤング率や枠体の高さ等ではなく,長辺幅と短辺幅を別々に制御するという新たな着想で解決したものであり,ヤング率や枠体の高さ等を記載する必要はない。本件発明1は,長辺幅と短辺幅の各数値を限定することにより新規性,進歩性を生じるものではなく,長辺幅を短辺幅よりも広くすることにより,大型ペリクル用枠体における所要の技術的課題を解決した点に本質を有する発明である。前記各数値に臨界的意義は存在せず,また,そもそも,従来技- 6 -術の理解と異なり,長辺幅と短辺幅を別個に着目して技術的課題を解決した本件発明1にとって,前記各数値に臨界的意義など必要でない。 したがって,本件発明の技術的範囲を狭く解釈すべきとする被告の主張は,その前提において誤っているから,被告製品が本件発明の技術的範囲に属することは,明らかである。 (被告)本件発明は,いわゆる数値限定発明として,仮に,特許性が認められるとしても,格別の顕著な作用効果が本件明細書に記載されている範囲で権利が認められるべきであるから,その技術的範囲は,実施例に記載されているもの及びその均等物に限定解釈すべきであるところ,被告製品は,いずれもこれに該当しないから,本件発明の技術的範囲に属しない。 ( )特許発明の技術的範囲の解釈法理 特許法70条1項と2項の関係について,例えば,知的財産高裁平成18年9月28日判決(平成18年(ネ)第10007号)では,「当該特許発明の特許請求の範囲の文言が一義的に明確なものであるか否かにかかわらず,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意 07号)では,「当該特許発明の特許請求の範囲の文言が一義的に明確なものであるか否かにかかわらず,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈すべきものと解するのが相当である。」と判示している。 また,特許法が,サポート要件(同法36条6項1号)を規定するのは,「発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害するおそれが生じ,上記の特許制度の趣旨に反することになるからである」(知的財産高裁平成17年11月11日判決(平成17年(行ケ)10042号,以下「知財高裁平成17年判決」という。)。この法理は,特許発明の技術的範囲の解釈にも適用されるべきである。 - 7 -さらに,東京地裁平成17年12月27日判決(平成15年(ワ)第23079号)では,「特許制度は,発明を公開した者に対し,一定の期間その利用についての独占的な権利を付与することによって発明を奨励するとともに,第三者に対しても,この公開された発明を利用する機会を与え,もって産業の発達に寄与しようとするものであるから(最高裁平成10年(受)第153号同11年4月16日第二小法廷判決・民集53巻4号627頁参照),特許権者は,与えられる独占的な権利と引換えに,当業者に当該特許発明を十分に理解させる開示を行う必要がある。それゆえに,特許請求の範囲において記載されている発明は,発明の詳細な説明に記載されて基礎付けられていなければならず(同法36条6項1号),発明の詳細な説明には,当業者が『実施をすることができる程度に明確かつ十分に』記載されていなければならない(同条4項1号 詳細な説明に記載されて基礎付けられていなければならず(同法36条6項1号),発明の詳細な説明には,当業者が『実施をすることができる程度に明確かつ十分に』記載されていなければならない(同条4項1号)。」と判示し,特許発明の技術的範囲を唯一の実施例に記載された内容に限定解釈している。 したがって,本件発明の技術的範囲は,発明の詳細な説明の記載に基礎付けられた範囲に限定して解釈するべきであり,被告製品は,かかる技術的範囲に属さないと解すべきである。 ( )本件発明1の技術的範囲の解釈 本件発明1が解決しようとする課題は,「ペリクル膜の張力によるフレームの撓みが生じないこと」である。本件発明1が,特許法36条4項1号における「実施をすることができる」に該当するためには,当業者がペリクル膜の張力による撓みが生じないペリクル用枠体を,過大な試行錯誤を要することなく生産することができることが必要である。 したがって,本件特許の願書に添付された明細書及び図面に「実施をすることができる程度に明確かつ十分に」記載されている発明は,「ペリクル膜の張力による撓みが生じないペリクル用枠体である」と当業者が認識できるように,発明の詳細な説明及び図面に記載されている発明であり,本件発明- 8 -の技術的範囲は,かかる範囲に限定されると解すべきである。 そして,ペリクル膜の張力による撓み量は,膜の張力,枠体の当該辺の長さ,材質(ヤング率)及び断面二次モーメント(断面が長方形の場合には,当該辺の高さ及び幅による。)によって変化する。したがって,ペリクル膜の張力による撓みが生じないということを当業者が認識できるためには,これらの変数の組合せ,又は,これらの変数を組み合わせるための具体的条件が記載されている必要がある。しかし,本件明細書には,これらの変数の組合せに が生じないということを当業者が認識できるためには,これらの変数の組合せ,又は,これらの変数を組み合わせるための具体的条件が記載されている必要がある。しかし,本件明細書には,これらの変数の組合せによって枠体の撓みが生じないことが認識できるように記載されているのは,実施例1及び比較例1のみである。 したがって,本件発明1の技術的範囲は,実施例1の記載からペリクル膜の張力による撓みが生じないと当業者が認識できる範囲,すなわち,撓み量が生じないとの観点において実施例1と均等とされる範囲に限られ,比較例1に記載された発明は,本件発明1の構成要件(ウ)の数値範囲を外れ,本件発明1の技術的範囲に属さないから,結果として,本件発明1の技術的範囲は,実施例1に記載された大型ペリクル用枠体及びその均等物に限定されることになる。 ( )被告製品と本件発明1の技術的範囲との対比 本件発明1の技術的範囲を実施例1に記載された大型ペリクル用枠体及びその均等物と限定して解釈した上で,被告製品と本件発明1の技術的範囲とを対比すると,被告製品は,いずれも実施例1と異なり,その均等物ともいえないから,本件発明1の技術的範囲に属しない。 ( )被告製品と本件発明2の技術的範囲との対比 前記( )ないし( )と同様の理由により,被告製品は,本件発明1の技術的 範囲に属する大型ペリクル用枠体に,ペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクルとはいえないから,本件発明2の技術的範囲に属しない。 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。 - 9 -( )本件発明について,本件基礎出願に基づいて国内優先権を主張すること ができるか。 (被告)ア本件基礎出願(乙1)の特許願に添付された明細書及び図面の記載内容(ア)「特許請求の範囲」の記載 )本件発明について,本件基礎出願に基づいて国内優先権を主張すること ができるか。 (被告)ア本件基礎出願(乙1)の特許願に添付された明細書及び図面の記載内容(ア)「特許請求の範囲」の記載本件基礎出願の特許請求の範囲には,次の2つの請求項が記載されている。 請求項1「大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体であって,前記大型ペリクル膜を展張する面積が1000以上で且つ前記cm 枠体の長辺の幅寸法が短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成され,前記大型ペリクル膜が貼着される前記枠体の長辺及び短辺の貼着面の幅寸法を略等しくしたことを特徴とする大型ペリクル用枠体。」請求項2「少なくとも前記枠体の長辺の貼着面側に傾斜面を形成して前記枠体の長辺及び短辺の貼着面の幅寸法を略等しくしたことを特徴とする請求項1に記載の大型ペリクル用枠体。」(イ)「発明の詳細な説明」の記載【発明が解決しようとする課題】の記載a「大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体であって,長辺の幅寸法を短辺の幅寸法よりも大きくして長辺の強度を確保して長辺の枠体の内側に向かう撓みを抑制し,更に大型ペリクル膜が貼着される長辺と短辺の貼着面の幅寸法を略等しくすることで接着剤を均一に塗布することが出来る大型ペリクル用枠体を提供せんとするものである。」【0008】- 10 -b【課題を解決するための手段】の記載「前記大型ペリクル膜を展張する面積が1000以上で且つ前記cm 枠体の長辺の幅寸法が短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成され,前記大型ペリクル膜が貼着される前記枠体の長辺及び短辺の貼着面の幅寸法を略等しくしたことを特徴とする」【0009】「枠体の長辺の幅寸法を短辺の幅寸法の1 寸法が短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成され,前記大型ペリクル膜が貼着される前記枠体の長辺及び短辺の貼着面の幅寸法を略等しくしたことを特徴とする」【0009】「枠体の長辺の幅寸法を短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成したことで長辺の強度を確保して長辺の枠体の内側に向かう撓みを抑制することが出来」【0011】【発明の実施の形態】の記載c「枠体1は互いに異なる所定の幅寸法と,等しい所定の高さ寸法と,異なる所定の長さ寸法とを夫々有する長辺1aと短辺1bからなる方形状で構成されており,」【0016】「枠体1のペリクル膜2を展張する面積は1000以上で構成さcm れ,該枠体1の長辺1aの幅寸法Waは短辺1bの幅寸法Wbの1. 3倍以上で構成されている。」【0017】「枠体1の長辺1aの幅寸法を短辺1bの幅寸法の1.3倍以上で構成したことで該長辺1aの幅寸法を短辺1bの幅寸法より大きくして該長辺1aの強度を確保し,該長辺1aの枠体1の内側に向かう撓みを抑制することが出来る。」【0019】d【発明の効果】の記載「枠体の長辺の幅寸法を短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成したことで長辺の強度を確保して長辺の枠体の内側に向かう撓みを抑制することが出来」【0030】e実施例の記載1例も記載がない。 イ本件発明1と本件基礎出願に記載された発明との対比- 11 -本件発明1の構成要件(ア)は,本件基礎出願の特許請求の範囲,【0008】及び【0016】に記載されており,同構成要件(イ)は,優先権主張の基礎出願の特許請求の範囲,明細書【0009】及び【0017】に記載されているが,構成要件(ウ),(エ)及び(オ)の各数値範囲は,本件基礎出願の明細書及び図面中には,これをサポートする記載は何らされていない。 ウまとめしたがって,本件発明は,本件 17】に記載されているが,構成要件(ウ),(エ)及び(オ)の各数値範囲は,本件基礎出願の明細書及び図面中には,これをサポートする記載は何らされていない。 ウまとめしたがって,本件発明は,本件基礎出願の明細書(以下「当初明細書」という。)及び図面中に記載されていない発明であり,優先権主張の効果を享受することができず,特許要件の判断基準日は,本件特許の出願日である平成12年7月26日となり,平成11年法律41号による改正後の特許法が適用されることになる。 エ参加人の主張について(ア)本件発明が国内優先権主張の効果を享受できるためには,本件特許の請求項1及び6に記載された事項が,当初明細書に明示的に記載された事項であるか,当初明細書に記載がなくても,これに接した当業者であれば,出願時の技術常識に照らして,その意味であることが明らかであって,その事項がそこに記載されているのと同然であると理解される事項である必要がある。 (イ)本件発明1に係る特許請求の範囲の記載事項を検討すると,構成要件(ウ)に「1.05倍~5倍」,構成要件(エ)に「4~30」,mmmm構成要件(オ)に「3~23」との数値範囲が記載されている。 mmmmこの「1.05倍~5倍」,「4~30」,「3~23mmmmmm」との数値範囲は,当初明細書に明示的には記載されていない。そmmこで,この数値範囲が,これに接した当業者であれば,出願時の技術常識に照らして,その意味であることが明らかであって,その事項がそこ- 12 -に記載されているのと同然といえるかを検討することになる。 (ウ)参加人は,当初明細書【0008】に「長辺の幅寸法を短辺の幅寸法より大きくして」と記載されており,かかる技術思想は,長辺幅が短辺幅の1.05~5倍である場合も いえるかを検討することになる。 (ウ)参加人は,当初明細書【0008】に「長辺の幅寸法を短辺の幅寸法より大きくして」と記載されており,かかる技術思想は,長辺幅が短辺幅の1.05~5倍である場合も包含するから優先権主張の効果を享受できると主張するが,当初明細書には,「長辺の幅寸法を短辺の幅寸法より大きくして」,つまり,「1.0倍より大きい」ということが記載されておらず,あくまで,「長辺の幅は短辺の幅の1.3倍以上」という幅比の限定が付されていたのである。したがって,当初明細書の「より大きく」という記載は,1.3倍以上の趣旨であるから,1.0倍超を含むから1.05倍~5.0倍の数値範囲を含むとの参加人の主張は失当である。 また,単に数値範囲に包含されているというだけでは,記載されているのと同然であるとはいえない。特許庁審査基準の「第Ⅲ部第1節4.2各論(3)数値限定」に「請求項に記載された数値範囲の最小値を変更して新たな数値範囲とした場合,新たな数値範囲の最小値が当初明細書等に記載されており,かつ,補正後の数値範囲が当初明細書等に記載された数値範囲に含まれている場合は,当該補正は許される」と記載されているように,新たな数値範囲が当初明細書に記載された数値範囲に含まれているだけでは足りず,新たな数値範囲の最小値が当初明細書に記載されてなければならない。当初明細書には,「1.05倍」との数値は全く記載されていない。 いずれにしても,本件発明1の構成要件(ウ)の「1.05倍~5倍」の数値範囲は新規事項であり,本件発明について優先権を主張することができないことは明らかである。 (エ)参加人は,当初明細書の「2~12程度」との記載を「1. mmmm 以上12.5未満」と勝手に読み替えた上で,本件基礎出願mmmm- 13 - ができないことは明らかである。 (エ)参加人は,当初明細書の「2~12程度」との記載を「1. mmmm 以上12.5未満」と勝手に読み替えた上で,本件基礎出願mmmm- 13 -の図3(b)の縦横比が正確であることを前提に,同図のWb/Wdが約1.9であるとして,短辺幅Wbが「2.85以上23.75mm未満」と計算して,短辺幅「3~23」の範囲が本件基礎mmmmmm出願に記載されていたと主張するが,そもそも「W,Wは2~cdmm 程度」との記載と図3からは,「4」,「30」あるmmmmmmいは「3」,「23」という数値を一義的に導き出すことがでmmmmきない。また,「1.5」と「2」とでは25%も相違するし,mmmm「2~12程度」を「1.5以上12.5未満」と読mmmmmmmmみ替えることにも合理性がない。更にいえば,特許庁審査基準の図面の補正の項には,「図面の記載は必ずしも現実の寸法を反映するものとは限らない。」(特許庁審査基準第Ⅲ部第1節6.図面の補正)と記載されているように,図3(b)の図面が厳格な寸法比で描かれているという根拠がない。そのため,数値限定された発明の根拠を当初明細書の図面に求める参加人の主張は失当である。 また,参加人の主張は,辺の幅Wcの「4~30」の導出にmmmmついては,図3(a)の縮尺を使用していないという齟齬もある。すなわち,参加人は,図3(a)の使用に代えて,「枠体の長辺の幅寸法を短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成した」【0011】という記載を持ち出して,短辺幅の「3~23」の各数値に1.3を乗じると,mmmm「3.9~29.9」となるから,本件発明における長辺幅mmmm「4~3 上で構成した」【0011】という記載を持ち出して,短辺幅の「3~23」の各数値に1.3を乗じると,mmmm「3.9~29.9」となるから,本件発明における長辺幅mmmm「4~30」についても,本件基礎出願には開示されているとmmmmと主張する。しかし,本件発明の本質は長辺の幅が短辺の幅より大きいことにあるとする参加人の主張によれば,長辺の幅が短辺の幅の1.3倍以上である旨の記載は,長辺の幅の算出の基礎にできないはずであり,この点でも,参加人の主張は矛盾している。 結局,本件発明1の構成要件(エ)の「4~30」,同構成要mmmm- 14 -件(オ)の「3~23」の数値範囲は新規事項であり,本件発明mmmmは,国内優先権主張の効果を享受することができないことが明らかである。 (参加人)ア本件基礎出願に係る発明は,枠体の撓みと有効露光領域の確保という二つの技術課題を解決するために,長辺の幅寸法を短辺の幅寸法よりも広くするという点に,その本質を有する発明である。そして,かかる技術思想は,長辺幅が短辺幅の1.05~5倍である場合も包含するものである。 イ本件基礎出願(乙1)に記載された図3のWc(長辺の貼着面の幅)及びWd(短辺の貼着面の幅)について,当初明細書【0024】には,「接着剤が均一に塗布出来る貼着面1a1,1b1の好ましい幅寸法Wc,Wdは2~12程度である。」と記載されている。 mmmmこのように,「2~12程度」とある以上,この数値範囲は一定mmmmの幅のあるものであり,1.5以上12.5未満までの範囲を含mmmmむものである。 そして,図3の短辺の貼着面の幅Wdと短辺幅Wbを測定して,その比率(Wb/Wd)を求めると,約1.9である。短辺の貼着面の幅Wdは, 以上12.5未満までの範囲を含mmmmむものである。 そして,図3の短辺の貼着面の幅Wdと短辺幅Wbを測定して,その比率(Wb/Wd)を求めると,約1.9である。短辺の貼着面の幅Wdは,上記のとおり「1.5以上12.5未満」であるから,これに1. mmmm9を乗じれば短辺幅Wbが約「2.85以上23.75未満」でmmmmあることが分かる。このことから,本件基礎出願には,本件発明における短辺幅「3~23」が開示されているということができる。 mmmm次に,当初明細書【0011】には,短辺幅と長辺幅の関係について,「枠体の長辺の幅寸法を短辺の幅寸法の1.3倍以上で構成した」という記載がある。前記の短辺幅「3~23」の各数値に1.3を乗じmmmmると,「3.9~29.9」であるから,本件発明における長辺mmmm幅「4~30」についても,本件基礎出願には開示されている。 mmmm- 15 -ウ以上のとおり,本件基礎出願には,短辺幅(Wb)が3~23,mmmm長辺幅(Wa)が4~30の枠体が開示されており,本件発明1mmmmの構成要件(ウ),(エ)及び(オ)がいずれも記載されているから,本件発明について,本件基礎出願による優先権主張の効果を享受できないという被告の主張は,失当である。 エ被告の主張について(ア)被告の主張が,本件基礎出願にすべてが特定されている必要があるというなら,それは,明細書に全く同様の文言的な一致を求めるに等しく,国内優先権制度を認めた趣旨に反する。国内優先権に関するものではないが,「当初明細書等に記載した事項」の解釈について,知財高裁平成20年5月30日大合議判決が次のような解釈を示している。 「『明細書又は図面に記載した事項』とは,技術的思想 優先権に関するものではないが,「当初明細書等に記載した事項」の解釈について,知財高裁平成20年5月30日大合議判決が次のような解釈を示している。 「『明細書又は図面に記載した事項』とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう『事項』とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ『明細書又は図面に記載した事項』,とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は『明細書又は図面に記載した事項の範囲内において』するものということができる。」この判断は,知財高裁が発表している判決の要旨において,わざわざ,「訂正の要件として特許法が定める『明細書又は図面に記載した事項の範囲内において』について,次のような一般的な判断基準を提示した。」と紹介されているように,知財高裁の大合議の判断として「一般的な判断基準」を示した点に意味がある。 - 16 -これに従えば,優先権基礎出願の「明細書等に記載した事項」とは,「当業者によって明細書又は図面のすべての記載を総合することによって導かれる技術的事項」ということができる。 (イ)本件において,幅の比率としてある一定範囲が望ましいことは自明であり,「1.05倍~5倍」という事項が,当初明細書【0008】に「長辺の幅寸法を短辺の幅寸法より大きくして」幅を変えるという記載に包含される事項であることは,既に述べたとおりであり,当該範囲は,単に当業者が実用化するに当たり妥当である範囲にすぎないので,新たな技術的事項でもない。 幅寸法より大きくして」幅を変えるという記載に包含される事項であることは,既に述べたとおりであり,当該範囲は,単に当業者が実用化するに当たり妥当である範囲にすぎないので,新たな技術的事項でもない。この点,被告は,本件基礎出願には「1. 3倍以上という幅比の限定が付されていた」というが,1.3倍未満の場合には効果がないというような比較例があるわけでもなく,1.3倍以上に限定したものではないことは,明細書及び図面の記載全体から明らかである。 また,被告は,「1.5」と「2」とでは25%も相違し,mmmmまた,「2~12程度」を「1.5以上12.5未mmmmmmmm満」と読み替えることにも合理性がないと批判するのみである。さらに,被告は,図3(b)の図面が厳格な寸法比で描かれているという根拠がないというが,被告の引用する特許庁の審査基準も,「必ずしも現実の寸法を反映するものとは限らない。」というだけであって,参照できないわけではない。 ( )本件発明は,新規性欠如により無効にされるべきものか(無効理由1)。 (被告)本件発明は,本件特許の出願日である平成12年7月26日前に,日本国内において,株式会社ニコン製「液晶ディスプレイ用露光装置FX-21S」(以下「本件露光機」という。)用フォトマスクに貼着して使用されるペリクル(以下「本件露光機用ペリクル」という。)として販売され,公然- 17 -知られた発明と同一の発明であり,また,公然実施をされた発明と同一であるから,特許法29条1項1号又は2号に該当し,特許を受けることができない。 ア平成12年7月1日以前に,本件露光機用フォトマスクに対応するペリクルが販売・納入されたこと(ア)本件露光機は,平成11年に開発されて先行ユーザーに販売され,平成12年7月1 ができない。 ア平成12年7月1日以前に,本件露光機用フォトマスクに対応するペリクルが販売・納入されたこと(ア)本件露光機は,平成11年に開発されて先行ユーザーに販売され,平成12年7月1日には一般ユーザー向け販売が開始されたこと株式会社ニコンが公表している製品年表(乙17)の平成11年の欄には,「FX-21S(LCD用)」と記載され,平成12年5月30日のニュース発表(乙18)では,同年7月1日に本件露光機の発売開始とされている。すなわち,本件露光機は,平成11年に開発され,そのころから先行ユーザーに販売され,平成12年7月1日には一般ユーザー向けに販売が開始された。 (イ)平成12年7月1日以前に,旭化成電子株式会社がフォトマスクメーカーに本件露光機用ペリクルを販売,納入していたこと本件露光機は,平成12年7月1日に一般ユーザー向けに販売されており,露光装置を使用する際にはフォトマスクが必要不可欠であることからすれば,遅くとも同日ころまでに本件露光機用フォトマスクがフォトマスクメーカーから本件露光機の先行ユーザー向けに販売されたことが推認できる。そして,フォトマスクメーカーは,ペリクルメーカーからペリクルを購入し,量産用フォトマスクにペリクルを貼着してフォトマスクを販売するから,遅くとも平成12年7月1日までに,ペリクルメーカーからフォトマスクメーカーに対して本件露光機用ペリクルが販売されたことが推認できる。 また,平成12年当時,日本国内における液晶製造用の大型ペリクルの販売は,脱退原告(当時:旭化成電子株式会社)が事実上独占してい- 18 -たことから,平成12年7月1日以前に,旭化成電子株式会社からフォトマスクメーカーに本件露光機用ペリクルが販売・納入されたことが推認できる。 イ本件発明と本件露光機用ペリク 占してい- 18 -たことから,平成12年7月1日以前に,旭化成電子株式会社からフォトマスクメーカーに本件露光機用ペリクルが販売・納入されたことが推認できる。 イ本件発明と本件露光機用ペリクルが同一であること(ア)本件露光機用ペリクルの仕様本件露光機は,露光面積が×であり,用いられるマスク 700mmサイズが×である(乙18)。このマスクサイズは,本件 750mm明細書の実施例1で使用されたマスクサイズそのものである。被告が調査したところ,本件露光機用ペリクルのフレームサイズは,内寸× ,外寸×であった。ペリクルフレームの内寸と外724mm436mm732mm寸の差から,長辺と短辺のそれぞれの幅を計算すると,長辺幅は()÷2=9,短辺幅は()÷2=4となる。 436-418mm732-724mm(イ)本件露光機用ペリクルと本件発明との対比本件露光機用ペリクルのフレームサイズは,本件明細書の実施例1に記載されているペリクル用枠体の寸法と同一である。 したがって,本件発明1と本件露光機用ペリクルの枠体として実施された発明は同一であり,本件発明2と本件露光機用ペリクルとして実施された発明は同一である。 ウ本件発明は,一般販売開始により守秘義務が解放され公知となった発明と同一であること(ア)ペリクルの仕様が記載された「次期露光装置「」用大型マスFX-21Sク仕様(案)」(甲3の添付資料,以下「甲3資料」という。)に開示のペリクルのサイズ情報は,一般販売開始により守秘義務が解放されたこと本件露光機用ペリクルが本件発明と同一であることは,甲3資料から明らかであり,本件露光機用ペリクルが本件特許出願日前に数十枚出荷,- 19 -販売されたことは,参加人も認めるところで されたこと本件露光機用ペリクルが本件発明と同一であることは,甲3資料から明らかであり,本件露光機用ペリクルが本件特許出願日前に数十枚出荷,- 19 -販売されたことは,参加人も認めるところである。参加人は,この事実を認めた上で,本件露光機用ペリクルの情報は守秘義務を負ったメーカーに対してのみ示されていたとして,本件露光機用ペリクルの出荷,販売が公然実施に当たらないと主張する。この点,甲3資料は,その表題から明らかなように,本件露光機が「次期露光装置」と呼ばれていた開発段階の書面である。また,株式会社ニコンの製品年表(乙17)及びプレスリリース(乙18)から明らかなように,本件露光機は,平成11年に開発され(乙17),平成12年7月1日に一般販売が開始されている(乙18)。このことからも甲3資料は,開発段階において作成された書面であることが確認できる。すなわち,甲3資料は,本件露光機開発段階(平成11年ころ)には守秘義務があったことを一応推認させるものである。 しかし,本件露光機は,本件特許出願日前の平成12年7月1日に,株式会社ニコンにより一般ユーザー向け販売が開始されている。一般ユーザー向けに販売されるということは,不特定の者に,本件露光機の情報が開示されてもよいことを甲3資料の作成者である株式会社ニコンが宣言したということである。この時点から,甲3資料の受取人たる旭化成電子株式会社,HOYA株式会社,信越石英株式会社,その他の先行ユーザーたる液晶パネルメーカー等の開発関係者は,甲3資料の秘密保持義務から解放されたと解すべきである。 また,参加人は,甲3資料に記載の技術情報が秘密情報であった根拠の一つとして,競合露光機メーカーが当該情報を入手できれば,本件露光機で生産できるパネルサイズ,取り数が推測でき,本件露光機の導入 。 また,参加人は,甲3資料に記載の技術情報が秘密情報であった根拠の一つとして,競合露光機メーカーが当該情報を入手できれば,本件露光機で生産できるパネルサイズ,取り数が推測でき,本件露光機の導入を新たに検討する液晶パネルメーカーにとっては,露光機としての性能こそが重要であり,いかなるペリクルが使用されるかは,およそ関心がない事項であると主張する。そうであれば,甲3資料の作成者である株- 20 -式会社ニコンが秘密にすべきとしていた情報は,生産できるパネルサイズ,取り数,あるいは露光範囲であったということになり,ペリクルフレームサイズは,それらの情報を推測することができるとの理由で秘密にされていたにすぎない。しかし,本件露光機の一般販売が開始された際に,生産できるパネルサイズ,取り数,露光範囲に関する情報は公開されており(乙18),これらの情報は,既に秘密情報ではなくなっていた。したがって,これらの情報を推測させるとの理由で秘密とされていたペリクルの情報も,秘密を保持する利益が失われていた。このことからも,株式会社ニコンによる本件露光機の一般ユーザー向け販売開始により,甲3資料記載のペリクルサイズが秘密保持の対象ではなくなったと解すべきである。 (イ)本件露光機の一般販売開始により,甲3資料に記載された発明が公然知られた発明になったこと本件露光機の一般販売開始により,各開発関係者の秘密保持義務が解放されたと解すべきであるから,その時点から,開発関係者は特定人から不特定人に転化したと解される。 特許法29条1項各号の「公然」の字句の意義について,特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」[第17版]82頁4~7行には,次のような記載がある。「(ハ)秘密保持の義務については,組合契約において「組合員使用の某機械はこれを秘密に ついて,特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」[第17版]82頁4~7行には,次のような記載がある。「(ハ)秘密保持の義務については,組合契約において「組合員使用の某機械はこれを秘密にし組合員以外の者に観覧又は使用させない」と定めていたとしても「組合解散後においても各員はこれを秘密にしなければならない」というような明文がない限り,組合解散と同時に秘密厳守の義務も解除され,その組合解散時にその組合員の発明の利用が公然性を有することになるとされている。」。 この法理は,本件にも当てはまる。すなわち,前記開発関係者間では,甲3資料の作成日である平成11年5月13日当時,本件露光機用大型- 21 -マスクの開発のために,組合類似の開発協力関係にあったと推認できるが,本件露光機の開発が終了し,本件露光機の一般販売が株式会社ニコンにより開始された時点で,かかる開発協力が終了したと考えるべきである。また,上記(ア)で述べたとおり,一般販売が開始された時点で,甲3資料に記載されたペリクルの情報は,秘密にすべき情報ではなくなったといえるから,本件露光機の一般販売開始により,本件露光機用ペリクルの販売行為が公然性を有することになったと解することができる。 これにより,不特定人と評価される開発関係者が甲3資料を受領し閲覧したことは,本件発明を知っていたことになるから,本件発明は,本件露光機の一般販売開始時である平成12年7月1日には公知となっており,結局,本件特許出願時には,公然知られた発明と同一のものとして,特許法29条1項1号に該当し,特許を受けることができない。 エ本件発明は,一般販売開始により守秘義務が解放され公然実施された発明と同一であること仮に,本件露光機の一般販売開始日(平成12年7月1日)から本件特許出願日(平成12年7月 ることができない。 エ本件発明は,一般販売開始により守秘義務が解放され公然実施された発明と同一であること仮に,本件露光機の一般販売開始日(平成12年7月1日)から本件特許出願日(平成12年7月26日)までの間に,本件露光機用ペリクルの販売実績がなかったとしても,平成12年7月1日以前に販売された本件露光機用ペリクルは,引き続き,守秘義務が解放されたマスクメーカー又は液晶パネルメーカーで使用されていたから,この使用が公然実施に該当する。 オ 結論 以上のとおり,本件発明は,本件特許出願時に公知公用の発明であるから,特許法29条1項1号又は2号に該当し,特許を受けることができないものである。 (参加人)本件発明は,本件特許出願日である平成12年7月26日前に,公然と知- 22 -られる状態になっておらず,また,公然と実施された状態にもなっていない。 ア本件露光機の開発の際,開発に参加した各メーカーは,提供した技術情報(ペリクル枠体の寸法を含む。)につき,守秘義務を負担していたこと本件露光機用ペリクルは,株式会社ニコンが販売した本件露光機で使用するためのものであり,脱退原告は,これをマスクメーカーであるHOYA株式会社に本件特許出願日までに数十枚出荷した。HOYA株式会社は,マスク用のガラスも必要であり,このガラスを信越石英株式会社から購入していた。 本件露光機を開発するに当たっては,露光機メーカーの株式会社ニコンと,開発メーカー(HOYA株式会社,信越石英株式会社,旭化成電子株式会社)の間で,様々な技術情報が交換された。そして,その中には,本件露光機用ペリクルに関する技術情報も含まれていた。 競合露光機メーカーがこれらの技術情報を入手すると,本件露光機で生産できるパネルのサイズ,取り数を推測でき,開発のターゲットを絞り込むことが ,本件露光機用ペリクルに関する技術情報も含まれていた。 競合露光機メーカーがこれらの技術情報を入手すると,本件露光機で生産できるパネルのサイズ,取り数を推測でき,開発のターゲットを絞り込むことが可能になる。また,競合ペリクルメーカーも,当該露光機で使用するマスクやペリクルの寸法が分かれば,その製品を開発することが可能になる。そのため,株式会社ニコンと開発メーカーは,本件露光機の技術情報(ペリクル枠体の寸法を含む。)が競合開発メーカーに漏れないように,当該情報について相互に守秘義務を負っていた。 イ守秘義務は一般販売開始後も消滅していないこと本件露光機の開発には,ある液晶パネルメーカーも参画しており,露光機の規格を決定する際に,自社情報を開示していた。そして,本件露光機が完成すると,正式販売の数か月前に,先行して同液晶パネルメーカーに本件露光機が納品され,旭化成電子株式会社のペリクルも同社にフォトマスクを納品するフォトマスクメーカーに出荷された。本件露光機は,当時最先端のものであって,実際に導入する液晶パネルメーカーは極めて限定- 23 -されており,その購入の検討にも相当の時間がかかることは常識であって,実際に,同年中には販売されていない。開発に関与した各メーカー(液晶パネルメーカーを含む。)は,新たな購入者が現れるまで,各情報を秘密にしておくことが相互の利益であることを認識していたから,その時期まで秘密保持義務が解放されることはなかった。 したがって,本件露光機の一般販売を開始するとされた日後も,実際に開発に関与していない液晶パネルメーカーが本件露光機を購入するまでの期間として想定できる数か月間は,開発に関与した各メーカーの守秘義務が消滅することはない。 この点,被告は,組合の場合の記述を引用するなどして本件露光機の一般販売 ーカーが本件露光機を購入するまでの期間として想定できる数か月間は,開発に関与した各メーカーの守秘義務が消滅することはない。 この点,被告は,組合の場合の記述を引用するなどして本件露光機の一般販売開始によって,各開発関係者の秘密保持義務は解放されたと主張するが,明確に「解散」した組合の場合ですら,義務の残存があり得るのであるから,そのような積極的な解散という事実もなく,また,秘密保持を外すという指示もない状況で,しかも,各開発者としてはより長期間の秘密保持を望んでいるのであるから,本件露光機の一般販売開始により開発協力が終了したということはできない。現に,旭化成電子株式会社はもちろん,同じく開発メンバーであったHOYA株式会社も,守秘義務が解除されたとは考えていない。何より,株式会社ニコン自身が,販売開始によって各開発メーカーの守秘義務を解除したとは考えていない(甲6)。 ウ本件特許出願日前に公然と知られていないこと本件露光機の導入を新たに検討する液晶パネルメーカーにとっては,露光機としての性能こそが重要であり,いかなるペリクルが使用されるかは,およそ関心がない事項である。現に,露光機にペリクルが付属されることはなく,露光機の納品後にフォトマスクの注文があって初めてフォトマスクと一体となって出荷されるにすぎない。本件露光機を販売する株式会社ニコンとしても,ペリクルに関する情報を開示する必要もなく,実際に,- 24 -株式会社ニコンの本件露光機に関するパンフレット(甲5)には,ペリクルの情報や,ましてや枠体の長辺幅と短辺幅を示唆するような記載も全くない。本件露光機を見せる機会があったとしても,本件露光機自体からは,ペリクルの枠体の長辺幅と短辺幅について知ることもできない。 エ本件特許出願日前に公然と実施されていないこと本件では, 載も全くない。本件露光機を見せる機会があったとしても,本件露光機自体からは,ペリクルの枠体の長辺幅と短辺幅について知ることもできない。 エ本件特許出願日前に公然と実施されていないこと本件では,前記のように,実際に開発に関与していない液晶パネルメーカーが本件露光機を購入するまで,開発関係者間のみで情報が共有されていただけであり,実際に脱退原告の製造したペリクルが出荷された先のフォトマスクメーカーも,フォトマスクが出荷された液晶パネルメーカーも,すべて,共同開発者の一員であった。そして,旭化成電子株式会社は,平成12年末までに,本件露光機用のペリクルを搭載したフォトマスクを,開発に関与していない液晶パネルメーカーに出荷したことはない。 したがって,開発に関与していない液晶パネルメーカーに初めて出荷される時期までは,少なくともペリクルに関する情報が対外的に明らかになる余地はなく,まして,一般販売を開始するとされた日から1か月も経過していない本件特許出願日である平成12年7月26日であれば,一層,知られることはないから,本件特許出願日前に公然と実施されてはいない。 オ 結論 以上のとおり,本件発明は,開発に関与していない液晶パネルメーカーに初めて本件露光機が出荷されるまでは,公然と知られる状態になっておらず,また,公然と実施された状態にもなっていなかった。 ( )本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべきものか(無効理由2- 乙19を主引用例とする進歩性欠如)「旭化成電子:製品紹介-ペリクル」のウェブサイト(乙19の添付資料)に記載された発明(以下「乙19発明」という。)を主引用例とする進歩性欠如- 25 -(被告)本件発明1は,その出願日である平成12年7月26日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,又は,電気通信回 (以下「乙19発明」という。)を主引用例とする進歩性欠如- 25 -(被告)本件発明1は,その出願日である平成12年7月26日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,又は,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,かつ,公衆が現にアクセスした「旭化成電子:製品紹介-ペリクル」のウェブサイトに記載された発明(乙19発明)及びその余の公知文献(乙4,乙6,乙8及び乙21)に記載された発明や本件特許出願時の当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 ア乙19発明は,特許法29条2項の「前項各号に掲げる発明」に該当すること(ア)乙19発明は,本件特許出願日(平成12年7月26日)前の平成11年1月12日には電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっていたから,平成11年法律41号による改正後の特許法29条1項3号の発明に該当する。 (イ)仮に,本件特許の優先権主張出願時に施行されていた平成11年法律41号による改正前の特許法が適用されるとしても,乙19発明は,遅くとも本件特許の優先日(平成11年7月30日)前である平成11年1月12日には電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっており,かつ,少なくとも同日までに公衆が現にアクセスしていたから,平成11年法律41号による改正前の特許法29条1項1号の発明に該当する。 (ウ)したがって,乙19発明は,特許法29条2項の「前項各号に掲げる発明」に該当する。 イ乙19発明の内容乙19の添付資料の8頁には,次の3種類のフレーム規格を有する膜展張面積1000cm以上の大型ペリクルが記載されている。 UP7050283mm416mm294mm427mm品名:内径×,外径× 8頁には,次の3種類のフレーム規格を有する膜展張面積1000cm以上の大型ペリクルが記載されている。 UP7050283mm416mm294mm427mm品名:内径×,外径×- 26 -UP7550334mm568mm348mm582mm品名:内径×,外径×UP8050557mm678mm573mm694mm品名:内径×,外径×ペリクル用枠体の長辺の幅は,短辺の外径と内径の差を2で割った値であり,短辺の幅は,長辺の外径と内径の差を2で割った値となるから,長辺及び短辺の幅はそれぞれ次のとおりになり,いずれも等幅である。 UP70505.5mm5.5mm品名:長辺の幅,短辺の幅UP75507mm7mm品名:長辺の幅,短辺の幅UP80508mm8mm品名:長辺の幅,短辺の幅ウ本件発明1と乙19発明の対比本件発明1の各構成要件につき,乙19発明と対比すると,次のとおりである。 (ア)構成要件(ア)UP7050294mm乙19発明は,ペリクル用枠体の辺の長さが,品名は×,品名は×,品名は×427mmUP7550348mm582mmUP8050573mmで,いずれも長辺と短辺を有する方形状の大型ペリクル用枠体694mmであり,本件発明1の構成要件(ア)と同一である。 (イ)構成要件(イ)乙19発明のペリクル膜を展張する面積は,品名は×UP7050294mm427mm1255.38cmUP7550348mm582mmであるのでとなり,品名は× であるのでとなり,品名は×である2025.36 cmUP8050573mm694mm のでとなり,いずれもを超えているから,本件発 2mmであるのでとなり,品名は× であるのでとなり,品名は×である2025.36 cmUP8050573mm694mm のでとなり,いずれもを超えているから,本件発明3976.62 cm1000cm 1の構成要件(イ)と同一である。 (ウ)構成要件(ウ)乙19発明の枠体の長辺の幅と短辺の幅の比は1倍(等幅)であるから,本件発明1の構成要件(ウ)の数値範囲の下限値1.05倍とは0. 05だけ相違している。 - 27 -(エ)構成要件(エ)UP70505.5mmUP7550乙19発明の枠体の長辺の幅は,品名で,品名で,品名でであり,いずれも~の範囲内であ7mmUP80508mm 30mmるから,本件発明1の構成要件(エ)と同一である。 (オ)構成要件(オ)UP70505.5mmUP7550乙19発明の枠体の短辺の幅は,品名で,品名で,品名でであり,いずれも~の範囲内であ7mmUP80508mm 23mmるから,本件発明1の構成要件(オ)と同一である。 エ本件発明1と乙19発明との唯一の相違点である構成要件(ウ)は,当業者が通常行う単なる設計事項にすぎないこと(ア)相違点の分析本件発明1と乙19発明とを対比すると,構成要件(ウ)のみで相違しており,他の構成要件は一致している。 構成要件(ウ)を更に分析すれば,「枠体の長辺の幅が当該枠体の短辺の幅より広いこと」(構成要件(ウ)-1)と,これをさらに数値限定した「幅比を1.05倍~5倍との数値範囲に限定したこと」(構成要件(ウ)-2)の2つの要件からなる。 (イ)構成要件(ウ)-1についてa長辺の幅が短辺の幅より広いペリクル用枠体が本件特許出願前に公知であったこと米国特許第5, 範囲に限定したこと」(構成要件(ウ)-2)の2つの要件からなる。 (イ)構成要件(ウ)-1についてa長辺の幅が短辺の幅より広いペリクル用枠体が本件特許出願前に公知であったこと米国特許第5,008,156号公報(乙4)の2頁の及びFig.1「アルミニウム精密加工製品写真集」(乙6)の2頁「マスクペリクル用アルミフレーム(黒色アルマイト)」の上の写真の上段左から2番目のペリクル用枠体の写真には,それぞれ,長辺の幅が短辺の幅より広いペリクル用枠体が記載されている。 なお,乙6の2頁の写真のペリクル用枠体は,長辺の幅が短辺の幅- 28 -の約2倍になっている。 乙4及び乙6の公知文献には,ペリクル用枠体において長辺の幅を短辺の幅より大きくすることが記載されているから,構成要件(ウ)-1は,本件特許出願日前に既に公知であった。 b本件特許出願の審査経緯において,ペリクル大型化の際に枠体の撓みが課題になっていなかった旨の参加人の主張が誤っていること上記米国特許公報(乙4)は,平成19年6月6日(起案日)付け拒絶理由通知書(乙9)において引用された文献であり,脱退原告は,この拒絶理由通知書に対して,平成19年8月6日付け意見書(乙11)において,「引用文献1,2では,何れもペリクルの面積が特定されておらず,しかも,枠体の幅も特定されていないので,本発明のような大型ペリクルに特有の問題点を認識することは不可能です。」と主張し,あたかも当業者に知られていなかった大型ペリクルに特有の問題点が初めて認識されたかのごとく述べている。 しかし,次のとおり,ペリクルの大型化の際に枠体の撓みが課題となることは,本件特許出願当時には,当業者の技術常識になっていた。 すなわち,特開平4-254856号公報(乙20,以下「乙20公報」という。)には,液晶 り,ペリクルの大型化の際に枠体の撓みが課題となることは,本件特許出願当時には,当業者の技術常識になっていた。 すなわち,特開平4-254856号公報(乙20,以下「乙20公報」という。)には,液晶製造用マスクのための防塵体が記載されており,この【0004】には,「半導体製造用防塵体と液晶製造用防塵体との大きな違いは,その要求される大きさの点である。」と記載され,【0006】には,「液晶製造用防塵体を提供するためには,面積が大きくかつ物理的に強い光学薄膜体を張設して,それ自体のたわみもなくかつ薄膜体もゆがまず均一に張れるような支持枠の材質を提供する必要がある。」と記載されている。つまり,同公報には,大型化する液晶製造用ペリクルでは,支持枠(ペリクル用枠体)自体のたわみが課題になっていることが記載されており,平成4年9月には,- 29 -ペリクルの大型化の際に枠体の撓みが課題となることが公知になっていた。 さらに,平成8年6月のペリクルサイズ標準化のワーキンググループの会議において,業界の関係各社間で,ペリクル枠が大きくなった時に,ペリクル枠の歪み(撓み)が問題となるとの認識を共有化されている(乙12)。このワーキンググループは,業界の関係各社のほとんどが参加していたワーキンググループであり,遅くとも,乙12の添付資料がワーキンググループ参加各社に配布された時には,ペリクルの大型化の際に枠体の撓みが課題となることが当業者の技術常識になっていた。 また,ペリクル用枠体ではないが,張力の掛かる枠体において,長辺が短辺より撓みやすいこと,そして,枠体に掛かる張力によって枠体の長辺が撓むことが予想される場合,枠体の長辺の幅をより広くすることによって強度を高くする方法は,本件特許出願日前に当業者の常套手段であった。 すなわち,特開平8-12 枠体に掛かる張力によって枠体の長辺が撓むことが予想される場合,枠体の長辺の幅をより広くすることによって強度を高くする方法は,本件特許出願日前に当業者の常套手段であった。 すなわち,特開平8-129962号公報(乙8,以下「乙8公報」という。)に記載された発明は,カラー陰極線管に関するものであるが,枠体に膜を張っており,膜の張力で枠体が撓むという課題がある点で,本件発明1と課題の技術的共通性がある。同公報の【0004】には,「平面型カラー陰極線管は,例えば3:4又は9:16の縦横比率の横長画面であるため,製造工程においてシャドウマスクに一定の張力を加えた状態で枠体に溶接固定しても,枠体の長辺と短辺のたわみ量が異なり,シャドウマスクに加えられる張力が不均一になるという問題を有していた。」と記載され,膜(シャドウマスク)の張力によって,枠体の長辺と短辺の撓み量が異なるという課題が明記されている。また,【0010】には,「枠体の長辺側の機械的強- 30 -度を短辺側の機械的強度よりも高くしたので,シャドウマスクの張力による枠体の長辺側及び短辺側の変形量をシャドウマスクの変形量と等しくすることができる。」と記載されており,前記課題の解決のためには,枠体の長辺側の機械的強度を短辺側より高くすればよいことが明記されている。さらに,【0012】には,「枠体の長辺側におけるフランジ部の少なくとも一部における幅を,短辺側のフランジ部の幅よりも広くする方法,…によっても,同様に長辺側の機械的強度が短辺側の機械的強度よりも高い枠体を得ることができる。」と記載されており,長辺側の幅を広くすることによって長辺側の機械的強度を高める手法が明記され,【0024】には,「長辺側のフランジ部43aの少なくとも一部分の幅W1を,短辺側のフランジ部43bの幅W2 されており,長辺側の幅を広くすることによって長辺側の機械的強度を高める手法が明記され,【0024】には,「長辺側のフランジ部43aの少なくとも一部分の幅W1を,短辺側のフランジ部43bの幅W2よりも相対的に広くすることにより,長辺側の機械的強度が短辺側の機械的強度よりも高い枠体を得ることができる。」と記載されている。 以上から,乙8公報には,膜の張力による枠体の長辺と短辺の撓み量が異なる場合には,枠体の長辺の幅を広くすればよいことが記載されている。 また,特開平7-324573号公報(乙21)に記載された発明は,網戸に関するものであるが,張力により枠体が内側に撓むという課題を有している点で,本件発明1と課題の技術的共通性がある。同公報の【0002】には,「幅寸法に対して高さ寸法が大きい網戸はネットの張力によって縦框が框組みの内周側へ湾曲する傾向があるため,通常は両縦框の中間部間に中桟が入れられる。中桟のない網戸を製作するには縦框に,その見付け方向にネットの張力に抵抗し得る剛性を持たせることが必要になるが,見付け幅が大きくなる上,重量が増すため意匠性の低下とコストの上昇を招く。」との記載がある。こ- 31 -の記載から,中桟のない枠体では,張力による内側への湾曲を防ぐためには,縦框(長辺)に張力に対抗し得る剛性を持たせることが必要であり,そのためには,見付け幅(枠体の長辺の幅)が大きくなることが示されている。 以上のように,枠体に膜等を張ったときに,その張力によって枠体の長辺が撓む場合,枠体の長辺の幅を広くすることによって強度を高くする方法は,本件特許出願日前に当業者の常套手段となっており,構成要件(ウ)-1は,本件特許の出願時に公知であった。このように,構成要件(ウ)-1は,本件特許の出願時に公知の構成であり,脱退原告もこ る方法は,本件特許出願日前に当業者の常套手段となっており,構成要件(ウ)-1は,本件特許の出願時に公知であった。このように,構成要件(ウ)-1は,本件特許の出願時に公知の構成であり,脱退原告もこれを自認したからこそ,手続補正書(乙10)により,構成要件(ウ)-2の数値限定を行ったものである。 (ウ)構成要件(ウ)-2についてa構成要件(ウ)-2の幅比の数値範囲の上限値及び下限値には,臨界的意義がなく,単なる設計事項にすぎないこと1.05倍~5倍という数値範囲を限定する根拠として,本件明細書の【0027】段落の「長辺1aの幅Waは,短辺1bの幅Wbよりも大きく,好ましくは,1.05倍~20倍,より好ましくは,1. 1倍~10倍,更に好ましくは1.3倍~5倍である。」との単なる一行記載しか存在しない。しかも,その数値範囲の上限値,下限値の選択において,「好ましくは,1.05倍~20倍」の下限値である1.05倍という数値と,「更に好ましくは1.3倍~5倍」の上限値である5倍という数値を極めて便宜的に採用している。 なお,実施例には,枠体の長辺の幅9,短辺の幅4の2. mmmm25倍の例があるのみで,下限値の1.05倍も上限値の5倍も,その裏付けとなるデータは,何ら示されていない。比較例1には,枠体の長辺の幅9,短辺の幅9の1倍の例が記載されているが,mmmm- 32 -比較例1も枠体が撓まないと記載されており,1倍(等幅)と1.05倍の相違が示されているわけではなく,下限値1.05倍の技術的意義の裏付けとなるデータにはならない。技術常識から判断して,幅比が1倍と1.05倍の場合で枠体の撓み量に格別の差違があるとは到底思われず,比較例1は,まさにこれを実証するものである。 したがって,本件明細書には,構成要件(ウ)-2の 。技術常識から判断して,幅比が1倍と1.05倍の場合で枠体の撓み量に格別の差違があるとは到底思われず,比較例1は,まさにこれを実証するものである。 したがって,本件明細書には,構成要件(ウ)-2の数値範囲の上限値,下限値の臨界的意義を具体的に示す記載がなく,これらの値は,当業者が通常行う単なる設計事項にすぎない。 なお,乙6の2頁の写真には,長辺の幅と短辺の幅の比が約2倍のペリクル用枠体が開示されていることからも,構成要件(ウ)-2の数値範囲が当業者が通常行う単なる設計事項であることが理解できる。 b構成要件(ウ)-2の数値範囲は,当業者が容易に設定できる単なる設計事項と解されること枠体の高さと材質が同一であり,かつ,ペリクル膜によって生じるペリクル用枠体に掛かる張力が等分布であると仮定すれば,ペリクル用枠体の1辺の長さをN倍にしたとき,該1辺の幅をN倍にする4/3ことにより最大撓み量を同じにすることができることは,当業者が容易に推測できることである(乙13,ティモシェンコ梁理論)。 例えば,乙19発明の品名には,長辺の長さが短辺の長さUP7050の約1.45倍(=427/294)である大型のペリクル用枠体が例示されており,この例示されたペリクル用枠体において,ティモシェンコ梁理論の最大撓み量の計算式を適用すれば,長辺と短辺の最大撓み量を同じにするためには,長辺の幅を短辺の幅の約1.64倍(≒1.45の1.33乗)にすればよいと算出することができる。 上記の最大撓み量の計算式が近似式であることやペリクル用枠体の設計時には一定の誤差が許容されることに鑑みれば,上記の約1.64- 33 -倍の前後の数値範囲から適切な数値を設計することは,当業者が通常行う設計事項にすぎない。 c構成要件(ウ)-2の数値限定に格別な技術的意義が 許容されることに鑑みれば,上記の約1.64- 33 -倍の前後の数値範囲から適切な数値を設計することは,当業者が通常行う設計事項にすぎない。 c構成要件(ウ)-2の数値限定に格別な技術的意義がないこと更にいえば,①枠体の長辺の撓みを抑制するためには,短辺の幅とは独立に長辺の幅を増加すればよく,また,長辺の幅が膜の張力に鑑みて充分に大きければ,短辺の幅に比べて小さくとも良い。しかも,②本件発明1では,そもそも枠体の長辺と短辺の長さ比は規定されていないので,長辺と短辺の幅比を規定すること自体,技術的意義がない。 したがって,構成要件(ウ)-2の数値限定に,格別な技術的意義はなく,当業者が通常行う設計事項にすぎない。 (エ)相違点(構成要件(ウ))についてのまとめ以上のとおり,本件特許出願時において,「枠体の長辺の幅が当該枠体の短辺の幅より大きいこと」(構成要件(ウ)-1)は,公知であり,「1.05倍~5倍の数値範囲に限定したこと」(構成要件(ウ)-2)は,乙6にも示されているように当業者が通常行う設計事項にすぎないから,これらを単に結合したにすぎない本件発明1の構成要件(ウ)は,本件特許出願当時,当業者が通常行う設計事項にすぎないものである。 オ進歩性欠如(無効理由2)の結論本件発明1の構成要件(ア),(イ),(エ)及び(オ)は,乙19発明の構成と同一であり,これに乙6にも示されているような当業者が通常行う設計事項にすぎない構成要件(ウ)を付加しただけの本件発明1は,乙19発明に記載された発明並びにその余の公知技術(乙4,乙8,乙21)及び当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明1は,特許法29条2項の規定により特許を受け- 34 -ることができないものであり,本件特 及び当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明1は,特許法29条2項の規定により特許を受け- 34 -ることができないものであり,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものである。 また,本件発明2は,「請求項1~5のいずれか1項に記載の大型ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクル。」であり,「ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたこと」には,特許性を判断する上で何ら技術的意義がない。そして,本件発明1は,本件特許出願時に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,少なくとも本件発明2のうち,請求項1(本件発明1)を引用した発明の範囲については,本件特許出願時に当業者が容易に想到できた発明である。 よって,本件発明2は,本件特許出願時に当業者が容易に発明をすることができた発明を包含しているから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る本件特許は,無効審判により無効にされるべきものである。 カ参加人の主張について(ア)本件特許の効果が①撓み防止と②有効面積の確保という二つの相反する課題解決であるとする参加人の主張は誤りであること参加人は,本件発明の効果が①撓み防止と②有効面積の確保という二つの相反する課題解決であることを前提として,乙4,乙6,乙8及び乙21をみても,そのような技術思想の示唆等は存在しないと主張する。 しかし,本件発明は,①撓み防止と②有効面積の確保という二つの相反する課題を解決したものではなく,①枠体の撓み防止をして,②有効面積を確保したという発明にすぎない。結局,本件発明の進歩性を判断するためには,乙19発明又は乙22発明(後記( ),乙22)に,① 枠体の撓み防止の効果を はなく,①枠体の撓み防止をして,②有効面積を確保したという発明にすぎない。結局,本件発明の進歩性を判断するためには,乙19発明又は乙22発明(後記( ),乙22)に,① 枠体の撓み防止の効果を付与するために乙4,乙6,乙8及び乙21により公知の常套手段を用いることが容易であったか否かを検討すれば足りる。 - 35 -そして,本件特許出願日又は優先日前には,大型ペリクルでは枠体の撓み防止が課題であることが公知であり(乙20),乙19発明又は乙22発明に枠体の撓み防止の常套手段を適用してみることは,当業者にとって容易であった。そして,乙8,乙21には,方形状の枠体が張力によって撓む場合に,枠体の長辺の幅を大きくするという技術手段が開示されているのである。 (イ)乙8,乙21に記載された常套手段がペリクル用枠体とは異なる技術分野であるとする参加人の主張は誤りであること参加人は,乙8,乙21の技術分野がペリクル用枠体ではないから,乙8,乙21に記載された常套手段を乙19発明又は乙22発明に適用できないと主張する。 しかし,ペリクル用枠体と,乙8のカラー陰極線管,乙21の網戸は,枠体が張力によって撓むという観点で技術的に共通しており,枠体の撓みを防止する手段を選択するという材料力学的な視点からは,枠体の用途がペリクルであろうとカラー陰極線管や網戸であろうと,相違はない。 このことは,当業者がペリクル用枠体の強度を検討するために,ティモシェンコ梁理論による強度計算の式(なお,脱退原告の前身である旭化成電子株式会社もこの式を利用していたことは,乙16のとおりである。)を転用していたことからも容易に理解できる。 また,参加人は,乙8,乙21には有効面積を確保するという技術課題が示唆されていないと主張する。 しかし,有効面積の確保は,枠体の撓み 6のとおりである。)を転用していたことからも容易に理解できる。 また,参加人は,乙8,乙21には有効面積を確保するという技術課題が示唆されていないと主張する。 しかし,有効面積の確保は,枠体の撓み防止の結果にすぎないから,主たる効果である枠体の撓み防止のために,乙8,乙21に記載された常套手段を乙19発明又は乙22発明に適用することの阻害要因とはならない。 以上のとおり,乙8,乙21がペリクル用枠体以外の用途であるとい- 36 -うことは,公知の常套手段を乙19発明又は乙22発明に適用することを阻害する理由にならず,技術分野が異なるとの形式的理由による参加人の主張は失当である。 (ウ)参加人は,構成要件(ウ)-2の数値範囲が設計事項にすぎないと認めていること参加人は,構成要件(ウ)-2の数値範囲(同じく,構成要件(エ),(オ)の数値範囲)の限定に臨界的意義がないこと,すなわち,数値範囲が設計事項であることを自認している(後記(参加人)イの主張のほか,前記1(参加人)の主張)。 (エ)ペリクル膜を展張する際の接着剤の塗布工程上の制約からペリクル枠体の各辺は等幅とされていたという参加人の主張は失当であること参加人は,ペリクル膜を展張する際の接着剤の塗布工程上の制約から,ペリクル枠体の各辺は等幅とするのが当然とされており,これを別々に設定するという本件発明の技術思想は,当時の技術常識にも反するものであったと主張する。 しかし,参加人のかかる主張は,本件明細書の記載と矛盾するものであり,また,当時の当業者の技術常識と相違するものである。 すなわち,脱退原告は,本件明細書の実施例において,長辺の接着剤塗布面幅が短辺の接着剤塗布面幅の2倍でも,接着剤の塗布工程上の制約はなかったことを自認しているのであるから(本件明細書【0091】【00 わち,脱退原告は,本件明細書の実施例において,長辺の接着剤塗布面幅が短辺の接着剤塗布面幅の2倍でも,接着剤の塗布工程上の制約はなかったことを自認しているのであるから(本件明細書【0091】【0095】),ペリクル膜を展張する際の接着剤の塗布工程上の制約からペリクル枠体の各辺は等幅とするのが当然とされていたとの参加人の主張は,本件明細書の記載に明らかに矛盾するものである。 この点,参加人は,当時の塗布技術では,塗布量を辺ごとに調整することは困難であったと主張するが,枠体の長辺の塗布幅と短辺の塗布幅が少々異なっていても,塗布量を辺ごとに調整することは困難ではなか- 37 -った。例えば,ノズルからの単位時間当たりの接着剤吐出量が一定の公知のディスペンサーを利用した場合には,単にディスペンサーの移動速度等を適宜変更するだけで異塗布幅の均一塗布が可能である。特開平7-24390号公報(乙23)には,ニードルから吐出される液体の塗布タイミング,塗布量,塗布時間を制御する制御装置を構成要件の一部に有する液体塗布装置が記載されている。同装置によって「塗布動作を教示することによりワーク上に様々な状況や条件に対応して粘度の高い液体を人手によらず自動的に塗布できるようになると共に,塗布状態を細かく調整することが可能」【0018】と記載されている。よって,「当時の塗布技術では,塗布量を辺ごとに調整することは困難であった」ということは,事実でない。 (参加人)ア被告は,乙19又は乙22のペリクル用枠体に,乙4,乙6,乙8及び乙21を組み合わせれば,本件発明を容易に発明をすることができたから,本件発明は,進歩性を欠くと主張する。 この点,乙19及び乙22に記載されたペリクル用枠体は,本件発明の構成要件(ウ)を有していない点において,本件発明と相違する。 容易に発明をすることができたから,本件発明は,進歩性を欠くと主張する。 この点,乙19及び乙22に記載されたペリクル用枠体は,本件発明の構成要件(ウ)を有していない点において,本件発明と相違する。 ある発明が公知技術から容易に想到できるというためには,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分でなく,当該発明の特徴点に到達するために,当該試みをしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるが,本件特許出願当時,ペリクル用枠体の①撓み防止と②有効面積の確保という二つの相反する課題解決のために,枠体の長辺幅と短辺幅のそれぞれに着目するという技術的発想は存在しなかったし,乙4,乙6,乙8及び乙21を見ても,そのような技術思想の示唆等は存在しない。 (ア)乙6,乙4について- 38 -a乙6には,長辺の中央部の幅が広くなっている形状のUT1X露光機用ペリクルの枠体が記載されているが,このペリクル用枠体の長辺の中央部の幅が広くなっているのは,ガイドと呼ばれる器具を左右に取り付けるためである。そして,このUT1X露光機用マスクのサイズは5インチと決まっており,それに張られるペリクルのサイズはそのサイズよりも小さいため,ペリクル膜の張力による枠体の撓みの問題は特に生じない。また,この露光機で使用する露光領域は,マスク全体に占める割合が小さいため,有効面積をなるべく広く確保するように枠体を設計する必要もない。 このように,枠体の長辺の中央部の幅が広くなっているのは,本件発明の技術課題とは全く関係のない理由によるものであり,現に,最近のUT1X用ペリクルは,こうしたガイドを使わないため,枠体の長辺及び短辺が同じ幅で形成されている。 よって,乙6には,大型化したペリクル膜の張力による撓みの防止と有効面積 るものであり,現に,最近のUT1X用ペリクルは,こうしたガイドを使わないため,枠体の長辺及び短辺が同じ幅で形成されている。 よって,乙6には,大型化したペリクル膜の張力による撓みの防止と有効面積の確保を考えて,枠体の長辺を短辺より幅広にするという技術思想は全くなく,当該枠体から本件発明を想到することはない。 bまた,乙4に記載された発明は,ペリクル用枠体に関する発明ではなく,ペリクル膜に関する発明であり,その内容は,ペリクル膜の紫外線透過率を上げるという技術課題を,特定の材料で構成された膜を使用することにより解決するというものであり,本件発明とは全く関係がない課題に関するものである。 このように,乙4は,ペリクル膜に関するものであるため,枠体についてほとんど記載がなく,当然のことながら,ペリクル用枠体の撓みの防止や有効面積の確保といった本件発明の技術課題に関する記載・示唆なども一切存在しない。乙4の図1には,長辺幅が短辺幅に比べて広く見えるペリクル用枠体がたまたま記載されているが,乙4が- 39 -出願された昭和63年当時のペリクルは,UT1X露光機用ペリクル(乙6)のように,比較的小さいサイズのものしかなかった。 したがって,膜自体の発明にすぎない発明の明細書である乙4の図1に,小型ペリクルを想定した図があったとしても,ペリクルの大型化に伴う枠体の撓みと有効面積の確保という問題を解決しようとする当業者が,乙4から,本件発明を想到することはあり得ない。 (イ)乙8について乙8は,カラー陰極線管に関するものであり,シャドウマスクを溶接固定する枠体の幅そのものではなく,該枠体を補強するフランジ部分の幅を広くすることで,該枠体の強度を確保する技術思想が開示されている。しかし,そもそも,カラー陰極線管は,カラーブラウン管テレビの一部 定する枠体の幅そのものではなく,該枠体を補強するフランジ部分の幅を広くすることで,該枠体の強度を確保する技術思想が開示されている。しかし,そもそも,カラー陰極線管は,カラーブラウン管テレビの一部品であり,マスクへの異物の付着を防止するペリクル用枠体とは,技術分野を大きく異にする。 また,乙8の【発明が解決しようとする課題】(【0004】段落),【作用】(【0010】段落)に記載があるとおり,乙8に記載された発明は,カラー陰極線管の製造時や動作時において,シャドウマスクが熱膨張することによる同マスクの撓みを防ぎ,画像の色むら等を防ぐという技術課題を解決するものである。熱膨張による撓みという問題の解決と,膜の張力によるペリクル用枠体の撓みの解決は,全く別個の目的であり,当該発明を当業者が見ても,膜の張力による撓みの解決のために枠体の長辺幅を短辺幅より広くするという本件発明を想起することはない。 しかも,乙8には,シャドウマスクを溶接固定する枠体であって,フランジ部を有するものが開示されているが,これは,露光可能な有効面積をなるべく広く確保するという思想自体がないことを端的に示すものである。 - 40 -このように,乙8には,ペリクル枠の大型化によって膜の張力で生じる撓みを防止するという技術課題も,同時に有効面積も確保するという技術課題も,何ら記載も示唆もないから,乙8から本件発明に想到することはできない。 (ウ)乙21について乙21は,発明の名称を「網戸の框組み」とするものであるが,網戸は,ペリクル用枠体と技術分野を全く異にするものであり,当業者が乙21の記載内容とペリクル用枠体とを組み合わせるなど,到底あり得ないことはいうまでもない。 また,乙21は,ネットの張力によって縦框が框組みの内周側に湾曲することを防ぐために,見付け方 ,当業者が乙21の記載内容とペリクル用枠体とを組み合わせるなど,到底あり得ないことはいうまでもない。 また,乙21は,ネットの張力によって縦框が框組みの内周側に湾曲することを防ぐために,見付け方向の幅を広くすることが記載されているものの,横框の幅については示唆がなく,長辺の幅を短辺の幅より太くすることで,枠体の撓みを防止するとともに有効面積も確保するという技術思想も,どこにも開示されていない。実際に,当該発明は,本件発明とは逆に,縦框の幅が横框の幅よりも狭い網戸を製作することをも想定しており,そのような網戸が現に開示されている。 したがって,ペリクル用枠体開発の当業者が,乙21を参照して本件発明に想到するなどあり得ない。 イ本件発明は,長辺幅を短辺幅よりも広くすることにより大型ペリクル用枠体における所要の技術課題を解決した点に本質を有する発明であること被告は,構成要件(ウ)の数値範囲の上限及び下限値には臨界的意義がなく,単なる設計事項であるという。しかし,本件発明は,当該数値を限定することで新規性,進歩性が生じるものではなく,長辺幅を短辺幅よりも広くすることにより,大型ペリクル用枠体における所要の技術課題を解決した点に,その本質を有する発明である。そして,本件発明は,長辺幅と短辺幅が等しい従来のペリクル用枠体と,まさに,長辺幅と短辺幅が異な- 41 -る点において明確に区別されるものである。 このように,構成要件(ウ)の各数値に臨界的意義は存在しないし,従来の技術理解と異なり,枠体の長辺幅と短辺幅を別個に着目して技術課題を解決した本件発明にとって,臨界的意義などそもそも必要でない。このように,発明の本質部分を確保しつつ,明細書の記載に基づき権利範囲を適切な範囲に特定することは,何ら不合理なことではなく,実際,多くの特許において 明にとって,臨界的意義などそもそも必要でない。このように,発明の本質部分を確保しつつ,明細書の記載に基づき権利範囲を適切な範囲に特定することは,何ら不合理なことではなく,実際,多くの特許においても行われていることである。 ウ本件特許の出願当時,ペリクル膜を展張する際の接着剤の塗布工程上の制約から,ペリクル用枠体の各辺は等幅とするのが当然とされており,これを別々に設定するという本件発明の技術思想は,当時の技術常識にも反するものであった。当時の塗布技術では,塗布量を辺ごとに調整することは困難であったので,すべての辺を等量で塗布していた。また,幅の異なる枠体に,接着剤を未塗布なく又ははみ出しがないように塗ることは,極めて困難であった。 エ被告の主張について(ア)本件発明の効果は,①撓み防止と②有効面積の確保という相反する課題解決であり,この点を無視して,対比判断をしても意味がない。この課題解決方法を議論した当業者の集まりにおいても,「枠体の幅を大きくすること」と「枠体の幅を大きくしないことによる有効面積の確保」が二つの「相反する課題」であり,枠体の幅を大きくすることで撓みを防止しようと当時の当業者が認識していたことは明らかであり,この二つの課題を解決するために,枠体の長辺幅を大きくするということは,およそ誰も想定できなかった(乙12)。 (イ)被告は,ペリクル用枠体と,乙8のカラー陰極線管及び乙21の網戸とは,枠体が張力によって撓むという観点で技術的に共通しており,枠体の撓みを防止する手段を選択するという材料力学的な視点からは,- 42 -枠体の用途がペリクルであろうと,カラー陰極線管や網戸であろうと相違はないと主張するが,乙8は,膜の張力で生じる枠体の撓み防止という発想を有しておらず,乙21は,網戸に関して枠の組込みの仕方を -枠体の用途がペリクルであろうと,カラー陰極線管や網戸であろうと相違はないと主張するが,乙8は,膜の張力で生じる枠体の撓み防止という発想を有しておらず,乙21は,網戸に関して枠の組込みの仕方を解決手段として開示しているものであり,本件に適用することができるものではない。 (ウ)被告は,ペリクル膜を展張する際の接着剤の塗布工程上の制約からペリクル枠体の各辺は等幅とするのが当然とされていたとの参加人の主張が,本件明細書の記載と矛盾するものであり,また,当時の当業者の技術常識と相違すると主張する。 しかし,本件発明が枠体の長辺幅を大きくするという解決手段を見出すに際して障害になった技術常識と,それを克服した後で行った本件明細書に開示された塗布状態とを比べること自体,間違いである。 また,被告は,特開平7-24390号公報(乙23)には,ニードルから吐出される液体の塗布タイミング,塗布量,塗布時間を制御する制御装置を構成要件の一部に有する液体塗布装置が記載されていて,塗布状態を細かく調整することが可能であると主張する。 しかし,同公報(乙23)は,その課題及び効果として「塗布開始時の挙動の遅れを設定時間を長くすることにより補う」ことが開示されているだけであって,塗布幅を途中で変更することについては,具体的に何らの解決手段も示しておらず,当時の塗布技術では塗布量を辺ごとに調整することが困難であったとの技術常識は,何ら否定されるものではない。 ( )本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべきものか(無効理由3- 乙22を主引用例とする進歩性欠如)刊行物である登録実用新案公報第3041760号(以下「乙22公報」という。)に記載された発明(以下「乙22発明」という。)を主引用例と- 43 -する進歩性欠如(被告)本件発明1は,そ 如)刊行物である登録実用新案公報第3041760号(以下「乙22公報」という。)に記載された発明(以下「乙22発明」という。)を主引用例と- 43 -する進歩性欠如(被告)本件発明1は,その出願日前の平成9年10月3日に頒布された刊行物である乙22公報に記載された発明(乙22発明)及びその余の公知文献に記載された発明や本件特許出願時の当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 ア乙22公報の記載内容【0003】には,大型のペリクルの例示として,「大型のペリクルの場合,特に液晶表示素子製造のための大型マスクに使用するペリクルの場合,例えば,キャノン社製の一括露光装置MPA-3000で用いられるペリクルは294×427と大きいため」との記載がある。 mm【0006】には,「大型のペリクルに用いられるフレームは…フレーム幅が5程度」と記載されている。 mmイ本件発明1と乙22発明との対比本件発明1の各構成要件につき,乙22発明と対比すると,次のとおりである。 (ア)構成要件(ア)【0003】には,大型ペリクルの例として294×427のペmmリクルを挙げており,乙22発明は,構成要件(ア)について,本件発明1と同一である。 (イ)構成要件(イ)【0003】には,大型ペリクルとして294×427(=12mm55.38)のペリクルが例示されていることから,乙22発明は,cm 構成要件(イ)について,本件発明1と同一である。 (ウ)構成要件(ウ)- 44 -乙22公報には,ペリクル用枠体の長辺の幅と短辺の幅の比は記載されておらず,乙22発明は,構成要件(ウ)について,本件発明1と相違する。 (エ)構 一である。 (ウ)構成要件(ウ)- 44 -乙22公報には,ペリクル用枠体の長辺の幅と短辺の幅の比は記載されておらず,乙22発明は,構成要件(ウ)について,本件発明1と相違する。 (エ)構成要件(エ)乙22公報の【0003】には,枠体長辺の幅は明記されていないが,mm【0006】には,大型ペリクルの一般論として,フレーム幅が5程度である旨の記載があり,【0003】に記載されている従来技術の大型ペリクルがこれと異なることは示唆されていないから,【0003】に記載された大型ペリクルの長辺の幅は4~30の範囲内mmmmと推認でき,乙22発明は,構成要件(エ)について,本件発明1と実質的に同一である。 (オ)構成要件(オ)上記(エ)と同様の理由により,【0003】に記載された大型ペリクルの短辺の幅は,3~23の範囲内と推認でき,乙22発明は,mmmm構成要件(オ)について,本件発明1と実質的に同一である。 ウ本件発明1と乙22発明との相違点である本件発明1の構成要件(ウ)は,当業者が通常に行う単なる設計事項の相違にすぎないこと上記( )の(被告)エに記載のとおり,本件発明1の構成要件(ウ)は, 本件特許出願時に,当業者が通常に行う設計事項にすぎない。 エ進歩性欠如(無効理由3)の結論本件発明1の構成要件(ア),(イ),(ウ)及び(オ)は,乙22発明と同じであり,これに当業者が通常行う設計事項にすぎない構成要件(ウ)を付加しただけの本件発明1は,乙22発明並びにその余の公知技術及び当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明1は,特許法29条2項の規定により特許を受け- 45 -ることができないものであり,同発明に係る本件特許は,無効審判により無効にさ 容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明1は,特許法29条2項の規定により特許を受け- 45 -ることができないものであり,同発明に係る本件特許は,無効審判により無効にされるべきものである。 また,本件発明2は,「請求項1~5のいずれか1項に記載の大型ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクル。」であり,「ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたこと」には,特許性を判断する上で何ら技術的意義がない。そして,本件発明1は,本件特許出願時に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,少なくとも本件発明2のうち,請求項1(本件発明1)を引用した発明の範囲については,本件特許出願時に当業者が容易に想到できた発明である。 よって,本件発明2は,本件特許出願時に当業者が容易に発明をすることができた発明を包含しているから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同発明に係る本件特許は,無効審判により無効にされるべきものである。 オ参加人の主張について参加人の主張に対する反論は,前記( )(被告)カのとおりである。 (参加人)参加人の主張は,前記( )(参加人)アないしエのとおりである。 ( )本件発明は,記載要件(サポート要件)違反により無効にされるべきも のか(無効理由4)(被告)ア本件特許の請求項1に記載されている本件発明1の範囲が,発明の詳細な説明の欄の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えていること(ア)判断基準の法理「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許- 46 -請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載され 「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許- 46 -請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである」とされている(知財高裁平成17年判決)。 また,本件発明1は,複数の変数の数値範囲の限定を組み合わせて発明が表現されている,いわゆるパラメータ特許発明である。このようなクレーム形式の発明の場合には,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するとされるためには,発明の詳細な説明に,その数式が示す範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的な意味が,具体例の開示がなくとも,特許出願時において当業者に理解できる程度に記載するか,又は特許出願時の技術常識を参酌して,当該数式が示す範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である(知財高裁平成17年判決)。 すなわち,①数値範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されていること,②特許出願時の技術常識を参酌して,当該数値範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載されていることのいずれにも該当しない場合には,サポート要件を充足しないことになるが,次のとおり,本件明細書は,いずれにも該当しない。 (イ)数値範囲と得られる効果との 程度に,具体例を開示して記載されていることのいずれにも該当しない場合には,サポート要件を充足しないことになるが,次のとおり,本件明細書は,いずれにも該当しない。 (イ)数値範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されていないこと本件発明1の構成要件(ウ)では,枠体の長辺の幅と短辺の幅の比を1. - 47 -05~5倍と規定している。この数値範囲は,本件明細書【0027】に記載されている,いわゆる一行記載に基づいて数値限定されたものである。しかし,【0027】には,なぜこの数値範囲であれば好ましいのかの説明が記載されていない。このため,枠体の長辺の幅を短辺の幅の1.05倍~5倍という範囲から選択することと,本件発明1によって得られる効果,すなわち「ペリクル膜の張力によるフレームの撓みが生じないこと」との関係の技術的意味が,当業者に理解できるように記載されていない。 また,ティモシェンコ梁理論から導出される最大撓み量の計算式を利用してペリクル用枠体の最大撓み量をある程度推測することは,本件特許の出願時における当業者の技術常識である。しかし,前記計算式には,「長辺の幅と短辺の幅の比」というパラメータは含まれていないから,前記技術常識を考慮しても,「長辺の幅と短辺の幅の比を1.05倍~5倍とすること」と,「ペリクル膜の張力による枠体の撓みが生じないこと」との因果関係を,当業者が理解することはできない。 以上のことから,本件発明1の数値範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されているということができず,上記①には該当しない。 (ウ)特許出願時の技術常識を参酌して,当該数値範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識でき くとも当業者に理解できる程度に記載されているということができず,上記①には該当しない。 (ウ)特許出願時の技術常識を参酌して,当該数値範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載されていないこと本件明細書には,枠体の長辺の幅と短辺の幅の比について,【0027】のいわゆる一行記載のほかは,実施例1及び2の9/4のmmmm2.25倍の具体例と,比較例1の9/9の1倍の具体例しかmmmm記載されていない。しかし,【0027】には,なぜ当該数値範囲内であればペリクル用枠体の撓みが生じないとの効果が生じるかは,記載さ- 48 -れていない。また,実施例1及び2と比較例1は,いずれも「枠体の撓みは生じない」とされており,効果上の差が認められないから,当該数値範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識することはできない。構成要件(ウ),(エ)及び(オ)は独立変数であるので,これらの組合せは,事実上,無限に存在するにもかかわらず,枠体の長辺幅と短辺幅の比が1.05倍から5倍の間の範囲で,本件発明1の効果を奏することを示すのに十分な実施例は記載されていない。なお,比較例1は,枠体の長辺幅と短辺幅の比が1.05倍のすぐ外であるが,「枠体の撓みは生じない」と記載されたものであり,比較例1の枠体の長辺幅と短辺幅の比が1.05倍の外にあることは,むしろ,枠体の長辺幅と短辺幅の比が1.05倍以上であるという数値限定が,本件発明1の効果とは無関係であることを意味しているとさえいえる。 このように,本件明細書には,本件発明1の効果を奏することを示すのに十分な実施例が存在せず,②にも該当しない。 (エ)まとめ以上のように,本件明細書は,パラメータ発明がサポート要件を満たす場合である ように,本件明細書には,本件発明1の効果を奏することを示すのに十分な実施例が存在せず,②にも該当しない。 (エ)まとめ以上のように,本件明細書は,パラメータ発明がサポート要件を満たす場合である上記①,②のいずれの場合にも該当しないから,本件明細書は,サポート要件を充足していないといわざるを得ず,本件発明1に係る本件特許は,特許無効審判によって無効にされるべきものである。 イ「発明の詳細な説明」に記載されている「発明の課題を解決するための手段」が,請求項の記載に反映されていないため,請求項1に記載された本件発明1が,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えていること(ア)特許・実用新案審査基準の判断基準サポート要件の法理を反映していると解される平成15年10月に特許庁が公表した特許・実用新案審査基準の第Ⅰ部第1章「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の2.2.1.1「第36条第6項第1号違- 49 -反の類型」の(4)には,「請求項において,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなる場合」がサポート要件を満たさない類型として挙げられている。すなわち,発明の詳細な説明に記載されている「発明の課題を解決するための手段」と請求項の記載の対応関係を検討し,「発明の課題を解決するための手段」の必須要素が,請求項に反映していなければ,サポート要件違反と判断することができる。 (イ)本件発明1における「課題を解決するための手段」について本件発明1が解決しようとする課題は,ペリクル膜の張力による枠体の撓みを生じさせないことであるが,ティモシェンコ梁理論の計算式によれば,ペリクル用枠体の撓みに影響を与える因子は,荷重,当該枠体の長さ,ヤング が解決しようとする課題は,ペリクル膜の張力による枠体の撓みを生じさせないことであるが,ティモシェンコ梁理論の計算式によれば,ペリクル用枠体の撓みに影響を与える因子は,荷重,当該枠体の長さ,ヤング率及び当該枠体の断面二次モーメントである。これらのうち,ヤング率は,材質によって定まるパラメータである。また,断面二次モーメントは,断面の形状及び寸法によって定まるパラメータであり,仮に,枠体の断面形状が長方形である場合には,枠体の高さと幅によって定まる。 ところが,断面二次モーメントを求める際に必須の要件である枠体の断面形状について,本件明細書の【発明を解決するための手段】及び【発明の実施の形態】並びに図面には,枠体の長辺及び短辺の貼着面の幅を略等しくするために,少なくとも枠体の長辺の貼着面側に傾斜面又は段差を設けた形状しか記載されていない(【0016】,【0022】,【0023】,【0044】,実施例1(【0091】),比較例1(【0102】),図1ないし10)。 したがって,本件明細書の【発明を解決するための手段】及び【発明の実施の形態】並びに図面に記載されている課題を解決するための手段- 50 -は,少なくとも,枠体の長辺の断面形状は,貼着面側に傾斜面又は段差を設けた形状となっていることである。 また,本件発明1では,構成要件(エ)において枠体の長辺の幅の数値範囲を,構成要件(オ)において枠体の短辺の幅の数値範囲をそれぞれ具体的に特定しているが,ヤング率が異なる場合,すなわち,材質が異なる場合には,適切な辺の幅の数値範囲が異なることになる。したがって,構成要件(エ)及び(オ)における数値範囲に技術的意義があるのは,構成要件(エ)及び(オ)の数値範囲を設計する際に用いられた材質と同程度のヤング率を持つ材質に限られる。 (ウ)「発明 したがって,構成要件(エ)及び(オ)における数値範囲に技術的意義があるのは,構成要件(エ)及び(オ)の数値範囲を設計する際に用いられた材質と同程度のヤング率を持つ材質に限られる。 (ウ)「発明の詳細な説明」に記載されている発明の「課題を解決するための手段」と請求項1の記載との対比しかし,請求項1の記載では,枠体の長辺の材質も断面形状も限定しておらず,任意の材質で,任意の断面形状のものについて特許を請求するものになっている。 したがって,本件発明1は,本件明細書の【発明を解決するための手段】及び【発明の実施の形態】並びに図面に記載されている発明の範囲を超えるものとなっている。 よって,本件特許の請求項1の記載は,記載要件(サポート要件)を満たしていないといわざるを得ず,本件発明1に係る本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものである。 ウ本件特許の請求項6の記載は,特許法36条6項1号の記載要件(サポート要件)を満たさないこと前記ア,イのとおり,請求項1に記載された大型ペリクル用枠体の発明は,特許法36条6項1号の記載要件(サポート要件)を満たしていないから,請求項6に記載された発明のうち,少なくとも請求項1を引用した発明については,同号の要件を満たさない。 - 51 -よって,本件発明2に係る本件特許は,特許無効審判によって無効にされるべきものである。 エ参加人の主張について(ア)参加人の主張は,本件特許の出願審査経緯における特許権者の行動と矛盾する主張であること参加人は,本件発明は,大型ペリクル用枠体において,長辺幅を短辺幅よりも広くすることで所定の技術課題を解決した点にその本質を有する発明であり,数値自体に臨界的意義を見出したものではないと主張し,本件発明は,あたかも数値限定以外の構成要件だけで,特許性が認め 辺幅よりも広くすることで所定の技術課題を解決した点にその本質を有する発明であり,数値自体に臨界的意義を見出したものではないと主張し,本件発明は,あたかも数値限定以外の構成要件だけで,特許性が認められるに充分であるかのような主張をするが,かかる参加人の主張は,本件特許の出願審査経緯における特許権者の行動と矛盾するものである。 本件特許の出願時の請求項1は,「大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体であって,前記大型ペリクル膜を展張する面積が1000以上であり,且つ枠体cm の長辺の幅が短辺の幅より大きいことを特徴とする大型ペリクル用枠体。」というものであった(乙2)。これを,本件発明の構成要件と対比すれば,本件発明1の構成要件(ア),(イ)及び(ウ)-1,本件発明2の構成要件となる。この請求項に対し,引用文献1(乙5)及び引用文献2(乙4)から当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶理由通知書(乙9)が発せられた。参加人は,この拒絶理由通知書に対し,手続補正書(乙10)及び意見書(乙11)を提出した。この手続補正書による補正により,請求項1に,本件発明1の構成要件(ウ)-2,(エ)及び(オ)の各数値限定が追加された。すなわち,本件発明1の構成要件(ウ)-2,(エ)及び(オ)の各数値限定は,進歩性がないとの拒絶理由通知を克服するために追加された構成要件である。 - 52 -この点,参加人は,本件発明の構成要件中の数値について,臨界的意義がないと主張するが,前記拒絶理由通知書は,先行技術を引用例として進歩性がないことを理由とするものであり,記載不備(特許法36条違反)を理由とするものではない。前記拒絶理由通知書では, ,臨界的意義がないと主張するが,前記拒絶理由通知書は,先行技術を引用例として進歩性がないことを理由とするものであり,記載不備(特許法36条違反)を理由とするものではない。前記拒絶理由通知書では,記載不備について一切言及しておらず,進歩性がないとの拒絶理由のみが指摘されていた。そして,出願人(脱退原告)は,先行技術を理由とする拒絶通知を克服すべく,あえて特許請求の範囲を減縮したのであるから,この特許請求の範囲を減縮する補正は,進歩性を主張するために必要であったと考えるべきである。参加人の主張は,要するに,意見書と同時に行った手続補正が拒絶理由と全く無関係に特許請求の範囲を減縮したものであるとの主張であり,許されるものではない。 更にいえば,前記意見書の1頁【意見の内容】の10~12行には,「本発明の特徴を一層明確ならしめるべく,また,前記各引用文献との相違を一層明瞭ならしめるべく,本日別途手続補正書を提出して,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を補正致しました。」と記載されており,本件発明1の構成要件(ウ),(エ)及び(オ)の数値範囲の限定は,拒絶理由通知書での引用文献との相違を明瞭にするために必要であったことを明らかにしている。さらに,前記意見書の2頁5~6行には「枠体の長辺の幅と短辺の幅とを数値限定することで」と記載され,同意見書の2頁22行には「具体的な長辺,短辺の幅を特定した本発明」と記載されており,本件発明が数値限定によって初めて特許性が獲得できる発明であることを明示している。 以上のとおり,脱退原告は,本件特許の出願審査経緯において,前記拒絶理由通知書に対し,本件発明は数値限定したことで特許性が付与されるべきである旨応答していたにもかかわらず,本件訴訟段階において,被告から各構成要件の数値限定の持つ技術的意義を問われ, いて,前記拒絶理由通知書に対し,本件発明は数値限定したことで特許性が付与されるべきである旨応答していたにもかかわらず,本件訴訟段階において,被告から各構成要件の数値限定の持つ技術的意義を問われ,一転して追- 53 -加した本件発明1の構成要件(ウ)-1,(エ)及び(オ)が技術的意義のない数値限定であると主張するものであり,このような主張は許されない。 (イ)本件発明が本質的に枠体の長辺幅が短辺幅よりも広い限り所要の効果を奏するという参加人の主張は,本件明細書の記載と合致しないこと参加人は,本件特許が知財高裁平成17年判決と前提を異にする根拠として,本件発明が,本質的に枠体の長辺幅が短辺幅よりも広い限り所要の効果を奏するものであり,特定の数値範囲にすることによって初めて特定の作用効果を奏することを内容とする発明でないことを挙げている。しかし,そもそも,本件発明が本質的に長辺幅が短辺幅よりも広い限り所要の効果を奏するという参加人の主張は,本件明細書の記載と合致しない誤った主張である。 まず,「所要の効果」について,参加人は,①撓み防止と②有効面積の確保という二つの相反する課題を解決することである旨主張するが,本件明細書には,①撓み防止を原因として②有効面積の確保という結果が得られることが記載されているだけで,二つの相反する課題を本件発明が解決したとは記載されていない。 また,本件特許の異別の独立形式発明である請求項2の発明では,「枠体の長辺の幅が該枠体の短辺の幅よりも大きく」としか限定されていないのに,本件特許の請求項1の発明では,単に長辺幅が短辺幅よりも大きいと規定せずに,さらに,構成要件(ウ)-2,(エ)及び(オ)の数値限定を追加して規定していることに鑑みると,当然に,これらの追加の構成要件は,本件発明1の本質であると解釈され 幅が短辺幅よりも大きいと規定せずに,さらに,構成要件(ウ)-2,(エ)及び(オ)の数値限定を追加して規定していることに鑑みると,当然に,これらの追加の構成要件は,本件発明1の本質であると解釈されるべきである。 したがって,本件発明が知財高裁平成17年判決と前提を異にするという主張は,本件明細書の記載と合致せず,根拠のない主張である。 (参加人)ア被告は,本件発明がパラメータ発明であるとした上で,本件明細書がサ- 54 -ポート要件を充足しないと主張する。 しかし,本件発明は,大型ペリクル用枠体において,長辺幅を短辺幅よりも広くすることで所定の技術課題を解決した点にその本質を有する発明であり,構成要件中の「1.05倍~5倍」は,実用化に当たり,妥当な範囲として好ましい範囲を特許請求の範囲に加えて,より発明の範囲を明瞭にしたものであって,当該数値自体に臨界的意義を見出したものではない。このことは,本件明細書の記載をみれば,普通に理解できる。このように,本件発明は,本質的に,枠体の長辺幅が短辺幅よりも広い限り所要の効果を奏するものであって,特定の数値範囲にすることにより初めて特定の作用効果を奏することを内容とする発明ではないから,知財高裁平成17年判決とは,前提を全く異にする。 また,本件明細書の比較例1は,実施例1と枠体の長辺幅が同じであり,短辺幅は実施例1より広く9㎜としたものである。しかるところ,本件明細書には,比較例1で実施例1と同一の有効露光面積とするには,実施例1よりも一回り大きなマスクが必要となったことも記載されている。 有効露光面積は同じであるのに,比較例1の方が実施例1よりも一回り大きなマスクが必要であるということは,換言すれば,実施例1の方が比較例1よりも,マスクの面積全体に占める有効露光面積の割合が高く,効率的に 面積は同じであるのに,比較例1の方が実施例1よりも一回り大きなマスクが必要であるということは,換言すれば,実施例1の方が比較例1よりも,マスクの面積全体に占める有効露光面積の割合が高く,効率的に有効露光面積が確保されていることを意味している。 以上のように,本件明細書の発明の詳細な説明,特に実施例1と比較例1を見れば,本件発明では,従来技術と異なり,枠体の長辺幅を短辺幅よりも広くすることで,①枠体の撓みの防止と,②有効面積の確保という二つの技術的要請が同時に満たされていることが示されている。そして,前記二つの具体例は,本件発明と従来技術の相違を示す典型的な例であるから,その効果に相対的な差はあるとしても,当業者であれば,特許請求の範囲全体について,本件発明の作用効果を十分に理解でき,本件発明の技- 55 -術課題を解決できることも,十分理解可能である。 したがって,本件明細書に特許法36条に違反する点はない。 イ被告は,ティモシェンコ梁理論によれば,ヤング率や枠体の高さ等もペリクル用枠体の撓みに影響を与えるから,これらの要因について記載がない本件明細書は,特許法36条に違反するとも主張する。 しかし,本件発明は,ティモシェンコ梁理論に固執していたため解決できなかった,①枠体の撓みの防止と,②有効面積の確保という二つの技術的要請を,同梁理論のファクターである枠体の高さやヤング率などではなく,長辺幅と短辺幅を別々に制御するという新たな着想で解決したものである。このように,本件発明は,ティモシェンコ梁理論とは異なる知見に基づくものであるから,ヤング率や枠体の高さ等を記載する必要はない。 例えば,枠体の部材としてヤング率の大きい金属を使用すれば,それだけ枠体の撓み量は少なくなる。しかし,その場合であっても,長辺幅が短辺幅よりも広い枠体の方が グ率や枠体の高さ等を記載する必要はない。 例えば,枠体の部材としてヤング率の大きい金属を使用すれば,それだけ枠体の撓み量は少なくなる。しかし,その場合であっても,長辺幅が短辺幅よりも広い枠体の方が,各辺等幅の枠体よりもペリクル用枠体として優れているというのが,本件発明の技術知見である。このように,本件発明は,ティモシェンコ梁理論とは異なる技術知見であるから,同理論のファクターが記載されていなくても,本件明細書の開示には全く問題がなく,当業者は,これに所要の技術常識を組み合わせればよいだけのことである。 したがって,本件明細書に特許法36条に違反する点はない。 ウ被告は,参加人の主張は,本件特許の出願審査経緯における特許権者の行動と矛盾すると主張するが,被告が引用する意見書(乙11)においては,「今回の手続補正により,単に枠体の長辺の幅を該枠体の短辺の幅よcmりも大きくするといっただけでなく,ペリクル膜を展張する1000以上の面積に対して枠体の長辺の幅と短辺の幅等を数値限定することで, ペリクルの有効面積を最大限に確保しつつ歪みの生じない大型ペリクル用枠体とすることを達成したものです。」と記載されており,枠体の長辺と- 56 -短辺の幅を数値として限定したからといって,当該数値に特別の作用効果を認識していないことは表現されている。そもそも,前記意見書は,拒絶理由通知書(乙9)で引用された公知文献との違いについても,「引用文献との相違」として,「引用文献1,2では,何れもペリクルの面積が特定されておらず,しかも,枠体の幅も特定されていないので,本発明のような大型ペリクルに特有の問題点を認識するのは不可能です。具体的には,引用文献1では,審査官殿が指摘する図4は,枠体の長辺と短辺の幅が等しいと思われる図2とともに引用文献1の発明を構 で,本発明のような大型ペリクルに特有の問題点を認識するのは不可能です。具体的には,引用文献1では,審査官殿が指摘する図4は,枠体の長辺と短辺の幅が等しいと思われる図2とともに引用文献1の発明を構成するものとして並列に列挙されております。このことは,引用文献1から長辺の幅を短辺の幅に対して太くすることによって大型ペリクル特有の問題点を解決しようとする本発明における大型ゆえの問題点を認識しているとは言えません。又,引用文献2でも同様に審査官が指摘する図1は,枠体の長辺と短辺の幅が等しいと思われる図3と並列に列挙されています。従って,引用文献2からも大型ペリクル特有の問題点を認識しているとは言えません。」というのであって,そこから明らかになるのは,本件発明は,大型ペリクル用枠体において,長辺幅を短辺幅よりも大きくすることで所定の技術課題を解cm決した点に,その本質を有する発明であり,大型という点で1000cm2以上という要件があり,それに対して,それ以外の数値は,1000以上というサイズに見合った幅寸法を規定したものであり,その数値自 体に臨界的意義を見出したものではないということである。 損害額(参加人)本件特許の登録日である平成19年9月7日以降,平成20年11月末までの被告による被告製品の販売数は,450個を下回ることはなく,その売上合計額は,2億8000万円を下回らない。 被告における被告製品の一個当たりの「利益」(特許法102条2項)は,- 57 -いずれも各販売価格の50パーセントを下回らない。 したがって,被告による本件特許権の侵害行為によって参加人が被った損害額は,1億4000万円を下回らない(特許法102条2項)。 (被告)否認ないし争う。 第4当裁判所の判断本件事案の性質に鑑み,まず,争点( )エ(本 件特許権の侵害行為によって参加人が被った損害額は,1億4000万円を下回らない(特許法102条2項)。 (被告)否認ないし争う。 第4当裁判所の判断本件事案の性質に鑑み,まず,争点( )エ(本件発明は,進歩性欠如により 無効にされるべきものか(無効理由3-乙22を主引用例とする進歩性欠如))について判断する。 被告は,本件発明は,乙22発明に,その余の公知文献(乙4,乙6,乙8及び乙21)に記載された発明や本件特許出願時の当業者の技術常識(以下,技術常識の内容は,優先権主張日における技術常識も含めて検討するものとする。)に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項に違反する無効理由があると主張するので,以下,検討する。 乙22発明の内容( )乙22公報には,次の記載がある(乙22)。 ア乙22公報の記載内容「フォトマスクやレチクルの防塵体として用いられるペリクルにおいて,フォトマスク又はレチクルに貼り付ける粘着剤の厚みが1以上であるmm大型ペリクル。」【請求項1】「即ち,従来は粘着材の厚みが0.4~0.8の両面テープ又はホッmmトメルト粘着材が用いられていた。しかしながら大型のペリクルの場合,特に液晶表示素子製造のための大型マスクに使用するペリクルの場合,例えば,キャノン社製の一括露光装置MPA-3000で用いられるペリクルは294×427と大きいため,従来の粘着材ではどうしてもmmmm一部に粘着不良が発生してしまうという問題点があった。」【0003】- 58 -「本考案は大きなサイズのペリクルにおいても,フォトマスク又はレチクルへの粘着が確実にするペリクルを提供することを目的とするものである。」【0004】「大型のペリクルに用いられるフレームは,鉄系合金等の剛性に高い金属 ズのペリクルにおいても,フォトマスク又はレチクルへの粘着が確実にするペリクルを提供することを目的とするものである。」【0004】「大型のペリクルに用いられるフレームは,鉄系合金等の剛性に高い金属で作られるが,平坦性が必要のため板材から切り取って製造しているものの,フレーム幅が5程度と細いため歪み補正等の処理をおこなってもmm歪みを完全に無くすことは難しく,±0.1程度の歪みが発生してしまう。 この歪みはフレームサイズが大きくなればなるほど大きくなる傾向がある。 このようにフレームに歪みがある状態でも,本考案の如く粘着材の厚みが 以上有れば,更にはペリクルサイズが300角を超えるようなmmmm大型ペリクルにおいては1.5以上有れば粘着材自身の変形によってmmマスクからの剥がれを防ぐことが出来る。」【0006】「図1は従来のペリクルを示す。フレームの一方の面に光線透過率の高く,かつ清浄な膜がこの面全体を覆うようにピンと貼り付けられ,他方の面にはマスクに貼り付けるための粘着剤が配置されている。(中略)図2は本考案のペリクルであり,粘着材以外の構成は従来ペリクルと変わらない。 (中略)図3はペリクルの実装状態を示す図面である。(中略)フレームが多少変形しても粘着材が厚いためマスクから部分的にも剥がれることがない。」【0008】「本考案によれば,フォトマスク又はレチクルへの粘着を確実なものとするペリクルを提供することができた。」【0009】イ図1には,フレームの一方の面に,光線透過性が高くかつ清浄な膜が,この面全体を覆うようにピンと貼り付けられた,従来のペリクルが示されている。 この従来のペリクルについて,例えば,キャノン社製の一括露光装置MPA-3000で用いられる294×427のサイズのペリクルmmmm- 貼り付けられた,従来のペリクルが示されている。 この従来のペリクルについて,例えば,キャノン社製の一括露光装置MPA-3000で用いられる294×427のサイズのペリクルmmmm- 59 -が示されており【0003】,また,従来の大型ペリクルに用いられるフレームについて,フレーム幅が5程度であることが示されている【0mm006】。 図2には,粘着剤以外の構成が従来のペリクルと変わらない,考案に係るペリクルが示されている。 ( )乙22公報に記載された乙22発明の内容 前記( )で認定したところによれば,乙22公報には,考案に係るペリク ルに用いられるフレームの発明として,次の発明(乙22発明)が記載されているものと認められる。 「フレームの一方の面に光線透過性の高く,かつ清浄な膜がこの面全体を覆うようにピンと貼り付けられた大型ペリクルに用いられるフレームであって,フレームの大きさを294×427,フレームの幅を5㎜mmmm程度とする大型ペリクルのフレーム」の発明 本件発明1と乙22発明との対比本件発明1は,前記第2の1争いのない事実で判示したとおりであり,これと乙22発明とを,以下,対比する。 ( )本件発明1と乙22発明との対比 乙22発明は,大型ペリクルのフレームの発明であるから,フレームの一方の面全体を覆うようにピンと貼り付けられる「光線透過性の高く,かつ清浄な膜」は,本件発明1の「ペリクル膜」に相当する。 また,乙22発明の「大きさを294×427…とする大型ペリmmmmクルのフレーム」は,本件発明1の「長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体」に相当する。 そして,乙22発明のフレームの面積は,294(29.4cm)×mm (42.7cm)=「1255.38」とな 本件発明1の「長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体」に相当する。 そして,乙22発明のフレームの面積は,294(29.4cm)×mm (42.7cm)=「1255.38」となる。 mmcm ( )本件発明1と乙22発明の共通点及び相違点 - 60 -そうすると,本件発明1と乙22発明とは,「(ア)大型ペリクル膜を展張して貼着支持する長辺と短辺とを有する方形状の大型ペリクル用枠体であって,(イ)前記大型ペリクル膜を展張する面積が1255.38でcm あり,且つ,(エ)前記枠体の長辺の幅が5程度,且つ,(オ)前記枠mm体の短辺の幅が5程度とされたことを特徴とする大型ペリクル用枠体」mmである点において共通し,本件発明1が「(ウ)長辺の幅が該枠体の短辺の幅の1.05倍~5倍」であるのに対し,乙22発明が「長辺の幅」「短辺の幅」が5程度と同じである点(相違点)で相違する。 mm 相違点の検討( )乙20公報及び乙22公報における技術課題の開示 乙20公報には,液晶製造用マスクの防塵体に関する発明が開示されているところ(【請求項1】),【従来の技術】には,「これらの材料の中で特に重要なスペックとして,高い張力を有することがあげられる。防塵体として,ピンと張った状態で支持枠にたるみなく張設されていることが要求される。従来使用してきたアルミニウム製の防塵体では,光学的薄膜体が大きくなったときその張力によって,支持枠がたわむ現象が観察された。この点が防塵体を作成する上で重要な問題点である。」(【0005】),【発明が解決しようとする課題】には,「液晶製造用防塵体を提供するためには,面積が大きく物理的に強い光学薄膜体を張設して,それ自体のたわみもなくかつ薄膜体もゆがまず均一に張れるよ (【0005】),【発明が解決しようとする課題】には,「液晶製造用防塵体を提供するためには,面積が大きく物理的に強い光学薄膜体を張設して,それ自体のたわみもなくかつ薄膜体もゆがまず均一に張れるような支持枠の材質を提供する必要がある。」(【0006】)と記載されており,液晶製造用マスクの防塵体は,支持枠にたるみなく張設されることが要求されるが,張設される薄膜体が大きくなると,その張力により支持体が撓む現象が観察されること,薄膜体の張設による撓みをなくし,かつ,薄膜体も歪まず均一に張れる支持枠の提供が課題であることが開示されている。 また,前記1( )アのとおり,乙22公報によれば,フォトマスク又はレ - 61 -チクルに貼り付ける粘着材の厚みを1以上とすることにより(【請求項mm1】),大きなサイズのペリクルにおいても,フォトマスク又はレチクルへの粘着を確実にするペリクルを提供することができる(【0004】,【0009】)。しかし,それは,フレームに歪みがある状態でも,粘着材自身の変形によってペリクル膜のマスクからの剥がれを防ぐことができるというものであって,フレームに歪みが発生し,この歪みがフレームサイズが大きくなればなるほど大きくなるという技術課題自体を解消するものではない(【0006】)。そして,ペリクル膜が「粘着材自身の変形によってマスクからの剥がれを防ぐことが出来る。」(【0006】)との記載及び「図1は従来のペリクルを示す。フレームの一方の面に光線透過率の高く,かつ清浄な膜がこの面全体を覆うようにピンと貼り付けられ,他方の面にはマスクに貼り付けるための粘着剤が配置されている。」(【0008】)との記載から,前記のフレームの歪みがフレームの一方の面全体を覆うようにピンと貼り付けられたペリクル膜の張力により生じること 面にはマスクに貼り付けるための粘着剤が配置されている。」(【0008】)との記載から,前記のフレームの歪みがフレームの一方の面全体を覆うようにピンと貼り付けられたペリクル膜の張力により生じることは,当業者に明らかである。 したがって,乙20公報の記載内容を知る当業者は,乙22公報の記載自体からも,大型ペリクルでも,ピンと張った状態でペリクル膜をたるみなくフレームに貼り付けることが要求されるものであり,そのペリクル膜の張力によりフレームに歪みが生じ,その歪みは,フレームサイズが大きくなるにつれて増大するという技術課題が開示されているものと理解できる。 ( )当業者の技術常識について ア(ア)遅くとも昭和62年2月20日に日本国内で公刊されていた「現代材料力学」(乙13)には,梁の全長に等分布荷重がかかる場合の撓みについて,両端が支点上に載っているだけの「両端支持ばり」(乙13の68,69頁),両端が完全に固定されている「両端固定ばり」(乙13の79頁),一端が固定され他端は支持されている「一端固定- 62 -他端支持のはり」(乙13の76,77頁)の場合のそれぞれの梁の最大撓み量を求める計算式(ティモシェンコ梁理論)が記載されている。 すなわち,y:撓みの最大値,L:梁の長さ,w:等分布荷重,maxE:ヤング率,I:断面二次モーメントとした場合,両端支持梁の場合の最大撓み量は,y=5wL/384EI(式1)max 両端固定梁の場合の最大撓み量は,y=wL/384EI(式2)max 一端固定他端支持梁の場合の最大撓み量は,y=0.0054wL/Emax I(式3)となる。なお,式3の分母を式1及び式2に揃えると,式3は,y=2.0736wL/384EIとなる。 max このように,梁の全長に等分布荷重 ,y=0.0054wL/Emax I(式3)となる。なお,式3の分母を式1及び式2に揃えると,式3は,y=2.0736wL/384EIとなる。 max このように,梁の全長に等分布荷重が掛かるときの最大撓み量は,端が固定されているか,支持されているかにより,計算で求められる最大撓み量の絶対値が異なるものの,いずれの場合であっても,wL/E Iに一定の係数を乗じた値となる。 そして,断面二次モーメントIは,断面形状が長方形である場合には,b:梁の幅,h:梁の高さとした場合,I=bh/12となる。 断面形状が長方形である場合の断面二次モーメントIを,前記式1,2及び3に代入すると,y=5wL/32Ebh(式1’)max y=wL/32Ebh(式2’)max y=2.0736wL/32Ebh(式3’)max となり,係数部分をaで表すと,前記各式は,次のとおりとなる。 y=a・wL/Ebh(式4)max (イ)前記式4からすると,ヤング率E,等分布荷重w及び梁の幅bを変えない場合,梁の長さを長くすれば,最大撓み量が増大し,短くすれば,最大撓み量が減少すること,梁の高さh又は梁の幅bを大きくすれば,最大たわみ量が減少し,小さくすれば,最大撓み量が増大すること,梁- 63 -の長さを長くしても,それに比例させて梁の高さh又は梁の幅bを大きくすれば,最大撓み量が変化しないことが理解でき,このことは,当業者の技術常識であったと認められる。 なお,三井石油化学工業株式会社情報電子事業部の作成した1996年6月14日付け「次世代レティクル対応ペリクル枠検討用資料」(乙12の添付資料)には,ペリクル枠が大きくなったときのペリクル枠の歪みという問題の検討に当たり,枠サイズと歪み量の関係 成した1996年6月14日付け「次世代レティクル対応ペリクル枠検討用資料」(乙12の添付資料)には,ペリクル枠が大きくなったときのペリクル枠の歪みという問題の検討に当たり,枠サイズと歪み量の関係を算出する際,前記事業部ペリクルセンターの技術者が,前記等分布荷重・両端支持梁の最大撓み量の計算式(式1’)を用いていたことが記載されており,平成8年6月当時,ペリクル用枠体の撓みを表す近似式として,ティモシェンコ梁理論の計算式が使用され,ペリクル用枠体の撓みの検討がされていた例があるものと認められる。 イ(ア)特開平8-129962号公報(乙8,以下「乙8公報」という。)には,次の記載がある。 「【産業上の利用分野】本発明は,カラー陰極線管,特に一定の張力を加えた状態でフレーム(枠体)に固定されたシャドウマスクを有する平面型カラー陰極線管に関する。」【0001】「【発明が解決しようとする課題】しかしながら,平面型カラー陰極線管は,例えば3:4又は9:16の縦横比率の横長画面であるため,製造工程においてシャドウマスクに一定の張力を加えた状態で枠体に溶接固定しても,枠体の長辺と短辺のたわみ量が異なり,シャドウマスクに加えられる張力が不均一になるという問題を有していた。その結果,カラー陰極線管の動作時に,シャドウマスクの熱膨張により,シャドウマスクに設けられた電子ビーム透過孔と,蛍光スクリーン上の蛍光体との相対的な位置が一致しなくなり,画像の色むら等の原因となるという問題を有していた。」【0004】- 64 -「また,上記各構成において,前記枠体の長辺側及び短辺側はそれぞれ別の部材で構成され,前記長辺側の部材の厚さが短辺側の部材の厚さよりも厚いことが好ましい。また,前記枠体の長辺側及び短辺側の材質がそれぞれ異なることが好ましい。また,前 の長辺側及び短辺側はそれぞれ別の部材で構成され,前記長辺側の部材の厚さが短辺側の部材の厚さよりも厚いことが好ましい。また,前記枠体の長辺側及び短辺側の材質がそれぞれ異なることが好ましい。また,前記枠体の長辺側の材料のヤング率が短辺側の材料のヤング率よりも高いことが好ましい。また,上記構成において,前記枠体の材料の熱膨張係数が前記シャドウマスクの材料の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。」【0009】「【作用】以上のように構成された本発明のカラー陰極線管によれば,略矩形枠状のシャドウマスク溶接部と,シャドウマスク溶接部の各辺の内周に連続して形成されシャドウマスク溶接部に対し略垂直な側壁部と,側壁部に連続して形成されシャドウマスク溶接部に平行なフランジ部とを有する枠体と,所定の張力が加えられた状態で枠体のシャドウマスク溶接面に溶接されたシャドウマスクとを具備し,枠体の長辺側の機械的強度を短辺側の機械的強度よりも高くしたので,シャドウマスクの張力による枠体の長辺側及び短辺側の変形量をシャドウマスクの変形量と等しくすることができる。そのため,シャドウマスクを枠体に溶接した後でも,シャドウマスクに加えられた張力が均一となり,また枠体の変形が小さいため所定の張力が得らる。」【0010】「枠体の長辺側及び短辺側をそれぞれ別の部材で構成し,長辺側の部材の厚さを短辺側の部材の厚さよりも厚くするか,または,枠体の長辺側及び短辺側の材質をそれぞれ異なるようにすることによっても,同様に長辺側の機械的強度が短辺側の機械的強度よりも高い枠体を得ることができる。」【0013】「図9に示すように,枠体4の長辺側4a及び短辺側4bをそれぞれ別の部材で構成し,長辺側の部材4aの厚さを短辺側の部材4bの厚さよりも厚くする。長辺側の部材4a及び短辺側の部材4bの 」【0013】「図9に示すように,枠体4の長辺側4a及び短辺側4bをそれぞれ別の部材で構成し,長辺側の部材4aの厚さを短辺側の部材4bの厚さよりも厚くする。長辺側の部材4a及び短辺側の部材4bの材料として,- 65 -基本的に同じものを用いることにより,溶接による組立てが可能となる。 このような構成により,長辺側の機械的強度が短辺側の機械的強度よりも高い枠体を得ることができる。」【0026】「枠体の長辺側及び短辺側をそれぞれ別の部材で構成し,長辺側の部材の厚さを短辺側の部材の厚さよりも厚くするか,または,枠体の長辺側及び短辺側の材質をそれぞれ異なるようにすることによっても,同様に長辺側の機械的強度が短辺側の機械的強度よりも高い枠体を得ることができる。」【0030】(イ)上記の記載によれば,乙8公報には,枠体の長辺と短辺の撓み量が異なり,シャドウマスクに加えられる張力が不均一になるという課題に対して,枠体の長辺側の機械的強度を短辺側の機械的強度よりも高くすることにより,シャドウマスクの張力による枠体の長辺側及び短辺側の変形量をシャドウマスクの変形量と等しくしてその課題を解決すること,そして,枠体の長辺側の機械的強度を短辺側の機械的強度よりも高くする方法として,長辺側の部材の厚さを短辺側の部材の厚さよりも厚くすることが開示されているものと認められる。そして,上記ア(イ)のとおり,最大撓み量を減少させるには,部材の高さ(厚さ)又は幅を大きくすればよいことは,当業者の技術常識であることからすれば,長辺及び短辺を有する方形状の枠体において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,広範な技術分野における共通の技術常識であると認められる。 ウ小括以上によれば,力を均等に受ける材料の撓み量が,長さが長くなると増大し, 辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,広範な技術分野における共通の技術常識であると認められる。 ウ小括以上によれば,力を均等に受ける材料の撓み量が,長さが長くなると増大し,幅が広くなると減少すること,長辺及び短辺を有する方形状の枠体において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,技術分野を越えて広く知られていた技術常識であって,ペリクルを取り扱- 66 -う技術分野においても,当業者の技術常識であったというべきである。 ( )前記相違点に係る構成の容易想到性 ア前記( )で認定したように,乙20公報の記載内容を知る当業者は,乙 22公報の記載自体からも,フレームサイズが294×427のmmmmような大型ペリクルでも,ピンと張った状態でペリクル膜をたるみなくフレームに貼り付けることが要求されるものであり,その結果,ペリクル膜の張力によりフレームに歪みが生じ,その歪みは,フレームサイズが大きくなるにつれて増大するという技術課題が開示されているものと理解できる。 他方,前記( )で認定したように,長辺及び短辺を有する方形状の枠体 において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,技術常識であって,当業者が当然のこととして知るところである。 そうすると,公知となっている,大型ペリクルにおいてフレームサイズが大きくなるにつれてフレームの歪みが増大するという上記の技術課題を解決する観点から,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを増大させるという上記の技術常識を当てはめて,ペリクル膜の張力による歪みに応じ,長辺の幅を短辺の幅よりも広くすることは,当業者が容易に想到することができたものであるといえる。 したがって,前記相違点のうち,「長辺の幅」が「短辺の幅」よりも大 ペリクル膜の張力による歪みに応じ,長辺の幅を短辺の幅よりも広くすることは,当業者が容易に想到することができたものであるといえる。 したがって,前記相違点のうち,「長辺の幅」が「短辺の幅」よりも大きいという本件発明の構成は,乙22発明に,当業者の技術常識を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。 イ次に,上記以外の相違点に係る構成について,本件明細書の記載その他の証拠に照らしても,長辺の幅が短辺の幅よりも「1.05~5倍」大きいということは,短辺の上限下限値(3~23)及び長辺の上限mmmm下限値(4~30)とともに,特段の技術的意義があると認めるmmmmことはできず,この点は,参加人自身も自認するところである。そうする- 67 -と,上記の各構成については,いずれも当業者が設計的事項として,適宜設定できたものといえる。 ウ以上によれば,前記2( )の相違点に係る構成は,乙22発明に当業者 の技術常識を適用することにより,すべて当業者が容易に想到することができたものである。 (4)参加人の主張について参加人は,接着剤の塗布工程上の制約からペリクル用枠体の各辺を等幅とするのが技術常識であったと主張する(前記第3の2(4)(参加人)の主張で引用する前記第3の2(3)(参加人)ウ)。 しかし,接着剤の塗布工程上の制約からペリクル用枠体の各辺を等幅とするのが技術常識であると認めるに足る客観的な証拠はない。かえって,特開平7-24390号公報(乙23)には,ディスペンサに設けられたニードルから吐出される液体の塗布タイミング,塗布量,塗布時間を制御する制御装置を構成の一部として有する液体塗布装置の発明が開示されているところ(【請求項1】),【発明の詳細な説明】には,「移動塗布での塗布量は,移動速 液体の塗布タイミング,塗布量,塗布時間を制御する制御装置を構成の一部として有する液体塗布装置の発明が開示されているところ(【請求項1】),【発明の詳細な説明】には,「移動塗布での塗布量は,移動速度(塗布速度)を設定することで調整を行うようにする。」(【0017】)と記載され,【発明の効果】には,「塗布動作を教示することによりワーク上に様々な状況や条件に対応して粘度の高い液体を人手によらず自動的に塗布できるようになると共に,塗布状態を細かく調整することが可能となる等大きな利益がある。」(【0018】)と記載されている。同公報の記載によれば,塗布ニードルから単位時間当たりに吐出される接着剤の量が一定であっても,ディスペンサーの移動速度を制御することにより,異なる塗布幅に均一に接着剤を塗布することが可能であったと認めることができるから,本件特許の出願当時の塗布技術において,枠体の辺ごとに塗布剤の量を調整することは可能であったと認められる。 また,乙22公報においては,ペリクル膜を貼り付ける手段に制限はない- 68 -のであるから,どのような貼り付け手段であっても等幅でしか行えないと解することは困難である。 したがって,参加人の上記主張は,枠体の長辺と短辺の幅を異なるものとすることを阻害する根拠(阻害要因)とはならず,これを採用することはできない。 本件発明1について以上によれば,本件発明1は,乙22発明と当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 本件発明2について本件発明2(請求項6)は,「請求項1~5のいずれか1項に記載の大型ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクル。」であるところ,「ペリクル用枠体にペリクル膜 件発明2について本件発明2(請求項6)は,「請求項1~5のいずれか1項に記載の大型ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたことを特徴とする大型ペリクル。」であるところ,「ペリクル用枠体にペリクル膜を貼り付けたこと」自体には,特段の技術的意義がない。そして,前記1ないし4のとおり,本件発明1は,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,少なくとも本件発明2(請求項6)のうち,本件発明1(請求項1)を引用した発明は,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 よって,本件発明2は,当業者が容易に発明をすることができた発明を包含しており,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 小括以上によれば,争点( )エ(本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべ きものか(無効理由3-乙22を主引用例とする進歩性欠如))に関する被告の主張は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,参加人の請求は,いずれも理由がない。 - 69 -第5 結論 以上の次第で,参加人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官清水節裁判官坂本三郎裁判官岩崎慎- 70 -物件目録A:枠体外寸が474×782,枠体内寸が456×768,mmmmmmmm長辺幅が9,短辺幅が7,枠体高さが4.9で,アルミニウム合mmmmmm金製のペリクル用枠体に,ペリクル膜を貼り付け,粘着材層の厚さを含めた全体の高さが5.9であるペリクルmmB:枠体外寸が ,短辺幅が7,枠体高さが4.9で,アルミニウム合mmmmmm金製のペリクル用枠体に,ペリクル膜を貼り付け,粘着材層の厚さを含めた全体の高さが5.9であるペリクルmmB:枠体外寸が750×904.5,枠体内寸が734×890. mmmmmm ,長辺幅が8,短辺幅が7,枠体高さが5.8で,アルミニmmmmmmmmウム合金製のペリクル用枠体に,ペリクル膜を貼り付け,粘着材層の厚さを含めた全体の高さが7.0であるペリクルmmC:枠体外寸が783×1136,枠体内寸が761×1116mmmmmm,長辺幅が11,短辺幅が10,枠体高さが5.8で,アルミmmmmmmmmニウム合金製のペリクル用枠体に,ペリクル膜を貼り付け,粘着材層の厚さを含めた全体の高さが7.0であるペリクルmmD:枠体外寸が783×957,枠体内寸が761×937,mmmmmmmm長辺幅が11,短辺幅が10,枠体高さが5.8で,アルミニウmmmmmmム合金製のペリクル用枠体に,ペリクル膜を貼り付け,粘着材層の厚さを含めた全体の高さが7.0であるペリクルmm- 71 -物件説明書物件目録のAないしDの枠体で使用されているアルミニウム合金は,JIS呼称A5052又はその相当品であり,ヤング率は約720000kgf/cmであ る。

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