- 1 - 平成30年7月26日判決言渡平成29年(行ウ)第130号損害賠償請求事件(住民訴訟) 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用及び補助参加により生じた費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は被告補助参加人Aに対し3362万1000円及びこれに対する平成29年8月16日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の請求をせよ。 2 被告は被告補助参加人Bに対し3007万2000円及びこれに対する平成29年8月16日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の請求をせよ。 第2 事案の概要本件は,C市の住民である原告が,同市が平成22年に実施したD小学校E号 館(以下「本件校舎」という。)の耐震補強工事(以下「本件工事」という。)は十分な補強をすることができないことがあらかじめ判明していたにもかかわらず行われたものであり,本件工事に係る公金の支出は違法であるなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,本件工事の当時C市長であった補助参加人A及び教育長であった補助参加人Bに損害賠償として前記第1記載の とおりの金員の支払請求をすることを被告に対して求める住民訴訟の事案である(遅延損害金の起算日はいずれも被告に対する本件訴状送達の日の翌日である。)。 これに対し,被告及び被告補助参加人らは,本件訴えは適法な監査請求の前置を欠く不適法な訴えであるとして,これを却下する旨の裁判を求めるとともに, 原告の請求をいずれも棄却する旨の裁判を求めた。 - 2 - 1 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。)⑴ 当事者 も棄却する旨の裁判を求めた。 - 2 - 1 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。)⑴ 当事者等ア原告は,C市の住民である。 イ被告は,C市長である。 ウ補助参加人Aは,平成22年当時,C市長の職にあった者であり,補助参加人Bは,同年当時,C市教育委員会教育長の職にあった者である。 ⑵ 本件工事に係る公金の支出の経緯等ア C市は,平成21年度事業として,本件校舎を含む市内の3校4棟の耐震補強工事を実施することとし,同年8月20日,Fとの間で,上記4棟 の耐震診断及び補強設計業務を委託する旨の委託契約(甲2)を締結した。 しかし,平成22年1月20日,Fから,本件校舎については補強設計が困難と判断したとして作業を中止する旨の業務変更報告書(以下「F報告書」という。甲3)が提出され,C市とFとは,同月28日付けで,上記作業の中止に伴い委託金額を減額する旨の変更契約(甲4)を締結した。 イ C市は,平成22年2月9日,Gとの間で,履行期を同年3月31日まで,委託金額を354万9000円として,本件校舎の耐震診断及び補強設計業務(以下「本件設計等業務」という。)を委託する旨の業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。甲6)を締結した。同契約は,随意契約の方法により締結されたものであり(甲5),契約書において,発注者 名は,「C市代表者C市長A」と記載されている。また,C市は,同契約の締結に当たり,Gとの間で,本件設計等業務は本件校舎のコンクリートの最低強度が財団法人日本建築防災協会の「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」(以下「耐震診断基準」という。)に記載された最 ,本件設計等業務は本件校舎のコンクリートの最低強度が財団法人日本建築防災協会の「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」(以下「耐震診断基準」という。)に記載された最低強度を下回ることを前提とすることなどを内容とする 同日付け覚書(以下「本件覚書」という。甲7)を取り交わした。 - 3 - ウその後,Gにより,本件設計等業務が実施され,これに基づく委託料354万9000円は,平成22年5月14日に,C市からGに支払われた(乙1)。 エ C市は,平成22年6月30日,Hとの間で,工期を同年9月30日まで,請負代金を2551万1850円として,Gによる設計に基づく本件 校舎の補強工事(本件工事)の請負契約(以下「本件請負契約」といい,本件業務委託契約と併せて「本件各契約」という。甲8の1)を締結した。 本件請負契約の契約書において,発注者名は,「C市教育委員会教育長B」と記載されている。 本件請負契約については,その後,同月27日付けで,工期を同年11 月30日まで,代金額を456万0150円増額する旨の変更契約(甲8の2)が締結された。 オその後,Hにより本件工事が実施され,本件請負契約に基づく請負代金3007万2000円は,うち1020万円が平成22年8月25日に,うち1987万2000円が同年12月24日に,それぞれC市からHに 支払われた(乙2,3)。 ⑶ 本件校舎の閉鎖に至る経緯C市が,平成27年12月,大阪府に対し,建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下「耐震改修促進法」という。)に基づき,同市内の校舎の耐震診断の結果を報告したところ,平成28年3月,大阪府から,C市に対し, 本件校舎については,コンクリート強度が公的基準に達していないため,このま 促進法」という。)に基づき,同市内の校舎の耐震診断の結果を報告したところ,平成28年3月,大阪府から,C市に対し, 本件校舎については,コンクリート強度が公的基準に達していないため,このままでは耐震補強を実施したと判断することはできないとの指摘があり,同年10月,C市は,本件校舎を閉鎖した(乙5,11)。 ⑷ 本件訴えに至る経緯ア原告は,平成29年5月1日,C市監査委員に対し,本件工事に係る公 金の支出が違法・不当であるなどとして監査請求(以下「本件監査請求」- 4 - という。)をした。 なお,本件監査請求は,本件工事に係る公金の支出から地方自治法242条2項本文の定める監査請求期間である1年を経過した後にされたものである。 イ C市監査委員は,平成29年6月28日付けで本件監査請求を棄却し, その頃,これを原告に通知した(甲9)。 ウ原告は,平成29年7月26日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 2 争点⑴ 原告が監査請求期間を徒過したことにつき地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」(以下,単に「正当な理由」という。)があるか(本 案前の争点)⑵ 被告補助参加人らの損害賠償責任の有無 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点⑴(原告が監査請求期間を徒過したことにつき正当な理由があるか)について (原告の主張)ア本件工事に係る公金の支出の違法性については,平成29年4月17日に,I新聞のニュースサイトに「市教委は設計業者から『コンクリート強度が弱くて耐震工事は困難』と指摘されたのに,別の業者に頼んで工事を済ませ,6年間校舎を使っていた。」との記事が掲載されて初めて一般の住 民の知り得るところとなったのである。したがって,本件工事に係る公金の支出につ 』と指摘されたのに,別の業者に頼んで工事を済ませ,6年間校舎を使っていた。」との記事が掲載されて初めて一般の住 民の知り得るところとなったのである。したがって,本件工事に係る公金の支出について,C市の「住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時」(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)は,上記記事が掲載された平成29年 4月17日であったというべきである。 - 5 - そして,原告は,同日から14日後の同年5月1日に本件監査請求をしたのであるから,上記の時から相当な期間内に監査請求をしたということができる。 したがって,原告が監査請求期間を徒過したことについては正当な理由があったというべきである。 イ被告は,本件各契約及びこれらに基づく委託料等の支払並びにその経緯等に関する公文書がC市情報公開条例(平成10年C市条例第10号)による情報公開請求(以下,単に「公開請求」という。)の対象となっていたなどとして,正当な理由がない旨主張する。しかし,特段の事情や契機となる端緒がないにもかかわらず,住民が公開請求をしなければならないと 解するのは相当でない。本件工事後も本件校舎が耐震診断基準を満たしていないことが公表されていなかったことなどからすると,上記特段の事情や契機となる端緒はなかったのであり,被告の上記主張は的を射ないものである。 また,被告は,D小学校E号館耐震補強設計に係る第三者委員会(以下 「本件委員会」という。)の設置要綱(乙6の1)が公表された時には,C市の住民は相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知るこ 会(以下 「本件委員会」という。)の設置要綱(乙6の1)が公表された時には,C市の住民は相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができた旨主張するが,平成29年4月17日に上記記事が掲載されるまでに,本件委員会の設置が広報誌に掲載されたなどの事情はなく,一般住民が上記設置要綱に接す る契機はなかった。また,仮に,上記設置要綱に接することがあったとしても,本件委員会において検証等が行われることとなったのであるから,これを知った住民としては,行政の自浄作用に期待し,その結果が報告されるまでは監査請求を控えるのが自然かつ合理的である。したがって,被告の上記主張も,的を射ないものである。 (被告及び被告補助参加人らの主張)- 6 - ア住民が相当の注意力をもってする調査については,マスコミ報道や広報誌等によって受動的に知った情報だけに注意を払っていれば足りるものではなく,住民であれば誰でもいつでも閲覧できる情報等については,それが閲覧をすることができる状態に置かれれば,その頃には住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて知ることができるものというべ きである(最高裁判所平成14年9月17日第三小法廷判決・集民207号111頁参照)。 そして,本件各契約及びこれらに基づく委託料等の支払並びにその経緯等に関する公文書(原告が本件訴訟において証拠として提出した各文書を含む。)は,いずれも当該文書の作成日以降,公開請求の対象となっていた のであって,この時期以降,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件工事に係る公金の支出の存在及び内容を知ることができたというべきである。 本件監査請求は, って,この時期以降,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件工事に係る公金の支出の存在及び内容を知ることができたというべきである。 本件監査請求は,上記各文書の公開請求をすることができた時から,6年4か月以上も経過した後にされたものであるから,正当な理由は認めら れない。 イ仮に,上記各文書の公開請求をすることができた時をもって,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件工事に係る公金の支出の存在及び内容を知ることができた時に該当するといえないとしても,その後,本件工事に関しては,平成 28年9月14日に開催されたC市議会第3回定例会において複数の議員から質問があり,C市教育部長から詳細な説明がされ,その会議録が同年12月26日に市役所庁舎1階の資料コーナー及び同4階の情報公開コーナーに据え置かれるとともに,同市議会のホームページにも掲載された。また,本件校舎の耐震補強設計に関して検証等を行うための第三者委 員会(本件委員会)の設置要綱が同年11月7日に施行され,同日,C市- 7 - 公告式条例(昭和25年C市条例第11号)に基づき同条例2条2項の定める掲示場に掲示して公表され,同年12月22日にはC市のホームページに掲載されている。これらの経緯に照らせば,遅くとも,本件委員会の設置要綱が適式に公表された同年11月7日の時点,又は,更に譲って,C市議会の上記会議録が公開された同年12月26日の時点では,本件工 事に係る公金の支出に問題があるとされていることを誰でも知ることができたということができ,この時点をもって,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件工事に係る 公金の支出に問題があるとされていることを誰でも知ることができたということができ,この時点をもって,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件工事に係る公金の支出の存在及び内容を知ることができた時に該当するというべきである。 そして,本件監査請求は,上記設置要綱の公表の時から6か月近く,上記会議録の公開の時から4か月以上を経過した後にされたものであるから,いずれにせよ,正当な理由は認められない。 ⑵ 争点⑵(被告補助参加人らの損害賠償責任の有無)について(原告の主張) ア本件校舎については,Fから補強設計が困難であることが明確に示されたのであるから,補強ではなく建て替えを検討すべきであった。それにもかかわらず,被告補助参加人らは,こうした検討を一切せずに,漫然と,最低強度を下回ることを前提とする耐震設計をGに委託した上で,Hに本件工事を発注したが,結局,大阪府からの指摘を受けて,本件校舎の閉鎖 を余儀なくされた。被告補助参加人らは,必要かつ最少の限度を超えて支出をしないよう事務を処理すべき法的義務(地方自治法2条14項,地方財政法4条1 項)を負っていたにもかかわらず,上記のとおり,漫然と無駄な本件工事を実施し,公金の支出をしたのであり,この点に,義務違反がある。 イ本件業務委託契約は,地方自治法施行令167条の2第1項2号に基づ- 8 - き随意契約の方法により締結されたものであるが,最低強度を下回ることを前提とする設計であるからといって,その性質又は目的が競争入札に適しないとはいえず,同号の要件を満たさないから,この点においても違法がある。 また,C市教育委員会に対する事務委任規則(昭和49年C市規則第2 2号)によれば,500万円 は目的が競争入札に適しないとはいえず,同号の要件を満たさないから,この点においても違法がある。 また,C市教育委員会に対する事務委任規則(昭和49年C市規則第2 2号)によれば,500万円未満の業務委託の契約は教育委員会に委任されているにもかかわらず,本件業務委託契約は市長名で締結されており,この点においても違法がある。 被告補助参加人らは,適法な手続を慎重に実施すべき義務をも怠り,漫然と無駄な本件工事を実施し,公金の支出をしたのであり,義務違反があ る。 ウ以上のとおり,被告補助参加人らには義務違反があるところ,これにより,C市は本件業務委託契約に係る委託料額(354万9000円)及び本件請負契約の代金額(3007万2000円)相当の損害(合計3362万1000円)を被った。 よって,補助参加人AはC市に対し3362万1000円及びこれに対する遅延損害金の損害賠償責任を,補助参加人Bは同市に対し3007万2000円及びこれに対する遅延損害金の損害賠償責任を負う。 (被告及び被告補助参加人らの主張)本件工事に係る公金の支出に違法な点はなく,被告補助参加人らがこれに ついてC市に対する損害賠償責任を負うことはない。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(原告が監査請求期間を徒過したことにつき正当な理由があるか)について⑴ 正当な理由の有無についての判断枠組み 普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観- 9 - 的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができた を知ることができなかった場合には,正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである (前記最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決)。 ⑵ 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲1~4,6~9,乙1~3,5~8,11)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件工事に係る公金の支出の経緯等は,前記前提事実⑵アからオまでの とおりであるところ,その過程においては,本件校舎の補強設計が困難であるため設計作業を中止する旨のF報告書(甲3),Gとの間の本件業務委託契約の契約書(甲6)及び本件覚書(甲7),同契約に基づく委託料に係る支出命令書(乙1),Hとの間の本件請負契約の契約書(甲8の1)並びに同契約に基づく請負代金に係る支出命令書(乙2,3)が作成ないし取 得され,これらの公文書(以下「本件各公文書」という。)は,いずれも,その作成・取得の時点以降,C市情報公開条例に基づく公開の対象となり,C市の住民であれば誰でも,公開請求をし,その内容を了知することができた。もっとも,本件工事が,本件校舎のコンクリートの最低強度が耐震診断基準に記載された最低強度を下回ることを前提に行われたものであ るとの事情(以下「本件事情」という。)について,C市から積極的に公表されたことはなかった。 イ前記前提事実⑶のとおり,平成28年3月,耐震改修促進法に基づくC市からの報告に対し,大阪府は,本件校舎については,コンクリート強度が公的基準に達していないため,このままでは耐震補強を実施したと判断 することはできないと 8年3月,耐震改修促進法に基づくC市からの報告に対し,大阪府は,本件校舎については,コンクリート強度が公的基準に達していないため,このままでは耐震補強を実施したと判断 することはできないとの指摘をした。 - 10 - その後,同年7月までの間,C市と大阪府との間で協議等が行われたが,最終的に,大阪府から耐震補強済みとの判断ができない旨の回答があった。 ウ C市は,平成28年8月,D小学校PTA実行委員会に本件事情等について報告した後,保護者説明会を実施した。 エ平成28年9月14日に開催されたC市議会第3回定例会において,J 議員及びK議員から,本件工事についての質問がされたのに対し,O教育部長は,「平成21年度に耐震診断及び補強設計業務を委託した設計業者が建物のコア抜きを実施し,耐震設計可能な強度未満であったため補強設計が困難と判断し,中止の申し入れがあったことと,市単費でコンクリート強度不足を前提として,大地震時における校舎の倒壊を防止することを 目的に,別の設計事務所に耐震診断及び補強設計業務を委託し,その設計書に基づき,建設会社が耐震補強工事を実施したことが判明いたしました。」などと本件事情等についての説明をした。 上記定例会の会議録(乙5)は,平成28年12月26日に市役所庁舎1階の資料コーナー及び同4階の情報公開コーナーに据え置かれるととも に,同市議会のホームページに掲載された。 オ C市教育委員会は,本件校舎の「耐震補強設計に関して,公正中立かつ客観的な検証等を行うため」本件委員会を設置することとして,「D小学校E号館耐震補強設計に係る第三者委員会設置要綱」(乙6の1)を定めたところ,同要綱は,平成28年11月7日に施行され,同日,C市公告式条 例に基づき同条例2条2項の定め こととして,「D小学校E号館耐震補強設計に係る第三者委員会設置要綱」(乙6の1)を定めたところ,同要綱は,平成28年11月7日に施行され,同日,C市公告式条 例に基づき同条例2条2項の定める掲示場に掲示して公表され,同年12月22日にはC市のホームページ(乙6の3)に掲載された。 本件委員会は,同月28日及び平成29年2月7日に会議を開催したところ,本件委員会の会議は原則として公開するものとされ(上記設置要綱5条4項),あらかじめ上記各会議の開催を告知する文書が同市のホームペ ージに掲載されていた。 - 11 - 本件委員会は,同年3月13日付けで報告書を取りまとめ,同報告書は,その頃,同市のホームページに掲載されるなどして公表された。 カ平成29年4月17日,I新聞のニュースサイトに,本件工事の経緯等に関し,「校舎閉鎖耐震補強も強度不足で大阪・C市教委」と題する記事(甲1)が掲載された。 キ原告は,平成29年5月1日,C市監査委員に対し,本件工事は設計業者から本件校舎のコンクリート強度が弱く耐震工事をすることは困難である旨の指摘を受けていたにもかかわらず行われたものであり,本件工事に係る公金の支出は地方自治法2条14項,地方財政法4条1 項に照らして違法・不当であるとして,本件監査請求をした。 ⑶ 判断ア上記認定事実によれば,本件工事は一定の規模を有する公共施設に対する耐震補強工事であり,その工期も約5か月に及んでいたことなどからすると,本件工事が行われていたこと自体は,その当時から,地域住民にとって,客観的・外形的に明らかであったということができる。そうすると, 本件工事が行われていることが客観的・外形的に明らかになった時点において,本件工事の請負契約(本件請負契約)のみ 住民にとって,客観的・外形的に明らかであったということができる。そうすると, 本件工事が行われていることが客観的・外形的に明らかになった時点において,本件工事の請負契約(本件請負契約)のみならず,本件工事を施工するために当然に必要となる設計契約(本件業務委託契約)についても,契約の締結その他の財務会計上の行為の存在自体は,D小学校周辺の地域住民にとっては明らかであったということができる。そして,C市が本件 校舎を含む市内3校4棟の耐震補強工事を実施していたことのほか,C市の規模等に鑑みれば,D小学校の周辺住民に限らず,C市の住民が,相当の注意力をもって調査すれば,本件工事に係る公金の支出の存在を知ることができたことは明らかというべきである。 また,上記認定事実によれば,本件工事に係る公金の支出に関しては, F報告書及び本件覚書を含む本件各公文書が作成ないし取得され,その作- 12 - 成・取得の時点以降,C市の住民であれば誰でも,公開請求により,その内容を了知することができたというのであるから,本件各公文書につき上記請求をすれば,本件各契約の内容等の形式的事情のみならず,本件工事がFから本件校舎の補強設計をすることは困難である旨の指摘を受けた後にコンクリート強度が弱いこと等を前提に施工されたとの事情(本件事情) を知ることもできたと考えられる。 もっとも,本件監査請求は,補強設計をすることが困難である旨の指摘を受けていたにもかかわらず本件工事が行われたことを問題とするものであるところ,このような事情(本件事情)は,本件各契約に係る契約書や支出命令書のみを調査しただけでは判明しないものであって,更にF報告 書や本件覚書の公開請求をするなどして,その詳細な経緯まで調査しなければ,本件監査請求をする )は,本件各契約に係る契約書や支出命令書のみを調査しただけでは判明しないものであって,更にF報告 書や本件覚書の公開請求をするなどして,その詳細な経緯まで調査しなければ,本件監査請求をするに足りる程度に当該行為の内容を知ることはできなかったものというべきである。そして,特段の情報や契機もないのに,上記のような特殊な事情があることを考慮に入れて調査をすることは相当に困難であると考えられ,本件各契約に係る契約書や支出命令書を調査す ることについては,住民による合理的な調査として一般的に期待することができるとしても,それを超えて詳細な経緯を調査することまで住民に期待するのは酷な面があるといわざるを得ない(公開請求に係る情報を「本件工事に係る情報一切」などとして公開請求をすれば,F報告書や本件覚書も公開されたと考えられるものの,特段の情報もないのに,このような 包括的・網羅的な公開請求をすることまでを期待するのが相当であるとはいい難い。)。そうすると,被告の内部において本件各公文書が作成ないし取得されたとしても,本件事情は,C市の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても知ることが困難であったものということができる。 以上によれば,本件工事に係る公金の支出について,被告の内部におけ る本件各公文書の作成ないし取得の時点において,C市の住民が相当の注- 13 - 意力をもって調査を尽くしても客観的にみて本件監査請求をするに足りる程度にその内容を知ることができたと解することはできない。 イしかしながら,上記認定事実によれば,平成28年8月にはD小学校において保護者説明会が実施されたほか,同年9月14日にはC市議会定例会において教育部長から本件事情等についての詳細な説明がされ,さらに, 同年11月7日には本 れば,平成28年8月にはD小学校において保護者説明会が実施されたほか,同年9月14日にはC市議会定例会において教育部長から本件事情等についての詳細な説明がされ,さらに, 同年11月7日には本件委員会の設置要綱が施行されて公表されたというのである。これらの経緯に照らせば,遅くとも,本件委員会の設置要綱が公表された同年11月7日頃には,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば本件事情を知ることができたと解するのが相当である。 しかるに,上記認定事実によれば,原告が本件監査請求をしたのは上記 の時から5か月以上が経過した平成29年5月1日であるから,原告が上記の時から相当の期間内に監査請求をしたとは到底いえない。 ウ以上に対し,原告は,本件委員会の設置が広報誌に掲載されたなどの事情はなく,平成29年4月17日に上記認定事実カの記事が掲載されるまでは,一般住民が本件事情を知ることはできなかった旨主張する。しかし, 上記認定事実によれば,本件工事については,平成28年8月にはD小学校で保護者説明会が開催されていたというのであるから,少なくとも同校周辺の地域においては,住民の知るところとなっていたと考えられる上,その後,同年9月には,市議会でも複数の議員から質問がされていたのであり,そのような事情の下で本件委員会が設置され,その設置要綱が適式 に公表されたというのであるから,本件事情の下で本件工事が行われたことについて問題があるとされていることは,C市の住民が相当の注意力をもって調査すれば容易に知り得る状態になっていたというべきである。加えて,「相当の注意力」をもってする調査については,単にマスコミ報道や広報誌等によって受動的に知った情報等だけに注意を払っていれば足り るというものではないことからしても,原告 べきである。加えて,「相当の注意力」をもってする調査については,単にマスコミ報道や広報誌等によって受動的に知った情報等だけに注意を払っていれば足り るというものではないことからしても,原告の上記主張は採用することが- 14 - できない。 また,原告は,本件委員会において検証等が行われることとなったのであるから,本件委員会の設置を知った住民としては,その結果が報告されるまでは監査請求を控えるのが自然かつ合理的である旨主張するが,第三者委員会が設置されたからといって,必ずしもその結果を待って監査請求 を控えるのが自然かつ合理的であるとはいい難いし,仮に,この点を措くとしても,原告自身が本件委員会による検証等の結果を待って,あえて相当の期間内に監査請求をしなかったというわけでもない以上,原告の上記主張は,その前提を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 エ以上によれば,原告が監査請求期間を徒過したことにつき正当な理由が あるということはできない。したがって,本件訴えは,適法な監査請求の前置を欠く不適法な訴えである。 2 結論よって,本件訴えは,その余の点について判断するまでもなく,不適法であるから却下することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 裁判官森田亮 裁判官石川舞子
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