平成21(ネ)1752 街頭宣伝活動禁止等本訴請求,反訴請求控訴,附帯控訴事件(通称 出版社街頭宣伝活動差止)

裁判年月日・裁判所
平成21年9月30日 東京高等裁判所
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判決文本文11,283 文字)

主文 1 被控訴人Aの附帯控訴(当審における請求の拡張を含む。)及び請求の減縮に基づき,原判決第1項及び第2項並びに第3項のうち被控訴人Aに関する部分を次のとおり変更する。 (1) 控訴人らは,自ら若しくは控訴人組合の所属組合員,支援者等の第三者をして,下記の行為によって被控訴人Aの住居の平穏を害し,又はその名誉・信用を毀損する行為をし,若しくはさせてはならない。 記ア被控訴人Aの自宅(居所。上記B)に赴いて,面会を強要することイ被控訴人Aの自宅(居所)のマンション(上記B)の入口ドアの中心点を基点として,半径150メートルの範囲内の土地において,被控訴人らを非難する内容の又は被控訴人らの個人情報を記載した内容のビラを配布することウ上記土地において,ゼッケン等を着用し佇立又は徘徊することエ上記土地において,拡声器を使用し又は大声を上げるなどして被控訴人らを非難し,演説を行い,又はシュプレヒコールをすることオ上記土地において,被控訴人A又は近隣住居の塀等に横断幕を掛けたり,組合旗を掲げたり,立看板を立てかけたりすること(2) 控訴人らは,被控訴人Aに対し,各自100万円及びこれに対する平成21年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人Aのその余の請求を棄却する。 2 控訴人らの控訴をいずれも棄却する。 3 被控訴人会社の附帯控訴(当審で拡張した請求を含む。)を棄却する。 4 訴訟費用は,被控訴人Aと控訴人らの間においては,第1,2審を通じ,本訴について生じた部分を10分し,その1を被控訴人Aの負担とし,その9を控訴人らの負担とし,被控訴人会社と控訴人らとの間においては,控訴費用を 被控訴人Aと控訴人らの間においては,第1,2審を通じ,本訴について生じた部分を10分し,その1を被控訴人Aの負担とし,その9を控訴人らの負担とし,被控訴人会社と控訴人らとの間においては,控訴費用を 控訴人Cの負担とし,附帯控訴費用を被控訴人会社の負担とする。 5 この判決の第1項(1)及び(2)は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨等(控訴人ら) 1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。 2 控訴人Cが,被控訴人会社に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 3 被控訴人会社は,控訴人Cに対し,平成15年10月から平成17年3月まで毎月末日限り各金10万円及び平成17年4月から毎月末日限り各金25万円並びにこれらに対する各期限の翌日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人らの本訴請求(当審で拡張した請求を含む。)をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,第1審,2審を通じて,被控訴人らの負担とする。 (附帯控訴人ら) 1 原判決中被控訴人ら敗訴部分を取り消す。 2 主文第1項(1)(原判決認容部分を含む。)と同じ。 3 控訴人らは,自ら若しくは控訴人組合の所属組合員,支援者等の第三者をして,下記の行為によって被控訴人会社の住居の平穏を害し,又はその名誉・信用を毀損する行為をし,若しくはさせてはならない。 記ア被控訴人会社の本店等同社の施設に赴いて,面会を強要することイ被控訴人会社の本店が入居しているビル(○ビル)の入口ドアの中心点を基点として,半径150メートルの範囲内の土地において,被控訴人らを非難する内容の又は被控訴人らの個人情報を記載した内容のビラを配布すること ウ上記土地において,拡声 入口ドアの中心点を基点として,半径150メートルの範囲内の土地において,被控訴人らを非難する内容の又は被控訴人らの個人情報を記載した内容のビラを配布すること ウ上記土地において,拡声器を使用し又は大声を上げるなどして被控訴人らを非難し,演説を行い,又はシュプレヒコールをすることエ上記土地において,被控訴人会社又は近隣住居の塀等に横断幕を掛けたり,組合旗を掲げたり,立看板を立てかけたりすることオ上記土地において,ゼッケン等を着用し佇立又は徘徊すること 4 控訴人らは被控訴人Aに対し,各自300万円及びこれに対する平成21年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 控訴人らは被控訴人会社に対し,各自300万円及びこれに対する平成21年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 訴訟費用は,第1審,2審を通じて,控訴人らの負担とする。 7 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 本件の事案の要旨は,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決5頁4行目の「差し止め」を「差止め」と改める。)。 被控訴人らは,当審において,街宣活動の差止めの態様について,その地域を各基点から150メートルの範囲内の土地に限り不服を申し立てるとともに,被控訴人Aにおいて禁止行為を拡張し,並びに不法行為に基づく損害賠償の請求につき,各自300万円の損害賠償及びこれらに対する平成21年6月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める旨請求を拡張及び減縮した。 2 本件の前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張の要旨については,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2及び3記載の 支払を求める旨請求を拡張及び減縮した。 2 本件の前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張の要旨については,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2及び3記載のとおりである。ただし,原判決6頁3行目の「当時の」から同行の「された」までを削り,同12頁21行目の「している。」を「し,中央労働委員会(以下「中労委」という。)は,平成21年1月21日,本件救済命令 を取り消し,控訴人組合の救済申立てを棄却する旨の命令をした。(甲105)」と改め,同頁25行目末尾に「控訴人組合は,平成21年3月19日,同年4月20日及び同年5月18日にも街宣活動を行った。(甲106ないし109)」と,同13頁13行目末尾に改行して「控訴人組合は,平成21年6月20日にも同様の街宣活動を行った。(争いがない。)」とそれぞれ加え,同14頁9行目の「及び」を「および」と,同頁11行目及び13行目の「要請」をいずれも「養成」と,同21頁1行目の「差し止め」を「差止め」と,同頁23行目の「未払い」を「未払」と,同23頁8行目の「雇わないとは」を「雇わないと」とそれぞれ改める。 3 控訴人らの当審における主張の要旨(1) 被控訴人Aの差止請求についてア労使関係の領域と私生活の領域との区分について「労使関係の領域」,「職場領域」という概念自体が不明確である,単に,「企業経営者といえども,個人として,住居の平穏や地域社会ないし私生活領域における名誉・信用が保護,尊重されるべき」という一言で,「労使関係の場で生じた問題は,労使関係の領域で解決すべき」とされる法的根拠が不明である。 さらに,被控訴人Aの場合,その仕事のあり方(被控訴人会社の出版事業に関する仕事を午前中自宅で行い,会社に電話等で連絡して,労働者に指示命令し の領域で解決すべき」とされる法的根拠が不明である。 さらに,被控訴人Aの場合,その仕事のあり方(被控訴人会社の出版事業に関する仕事を午前中自宅で行い,会社に電話等で連絡して,労働者に指示命令し,午後から出社して来る等)からして,その自宅における「私生活の領域」と「労使関係の領域」,「職場領域」を截然と区別することはできない。 イ名誉・信用毀損の成否について原判決は,本件ビラの記載につき名誉・信用毀損の成否を判断していない。事実を摘示しての名誉毀損については,憲法21条の解釈として,判例上「その行為が公共の利益に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら 公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときは,同行為には,違法性がなく,仮に同事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において同事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される」ものとされており,意見ないし論評の表明による名誉毀損の成否に関しては,憲法21条の解釈として,判例上,「公共の利害に関する事実か」,「目的が専ら公益を図るものか」,「人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したか」,「前提としている事実が主要な点において真実であることの証明があったか」という基準によって判断すべきものとされているのに,原判決は上記基準による判断を全く行わず,名誉・信用毀損の成立を認めるものであって,理由不備,憲法違反,判例違反たるを免れない。 ウ権利侵害の態様について原判決は,控訴人らの行為を抽象的にいうのみで,被控訴人Aの住居の平穏(平穏な私生活を営む権利)が,いかなる実態において,いかなる程度に侵害されたのか,被控訴人Aが地域社会においていかなる「名誉・信用」を得ていたのか,また 抽象的にいうのみで,被控訴人Aの住居の平穏(平穏な私生活を営む権利)が,いかなる実態において,いかなる程度に侵害されたのか,被控訴人Aが地域社会においていかなる「名誉・信用」を得ていたのか,またかかる「名誉・信用」が,いかなる態様において,どの程度毀損されたのか,全く検討していない。被控訴人らの主張は具体性がなく,被控訴人Aは「逃げ場のない自宅までこられて,自分も妻も恐怖心を感じ,非常にいやである」旨陳述したのみであるから差止めの必要性があるとはいえない。このことは控訴人らの被控訴人A宅訪問の際の行動が,控訴人組合の争議行為,組合活動ないし表現行為として正当性の範囲を逸脱していないことの証左である。違法行為の蓋然性があるというだけで,表現の自由を事前に差し止めることは憲法21条の解釈として許されない。 エ被控訴人Aの承諾について 被控訴人Aは自宅近辺における街宣活動をも承諾していた。 オ本件出版祝賀会における街宣活動について本件出版祝賀会は,被控訴人会社の業務ないし業務に密接関連する行事として開かれたものであり,職場領域ではないとはいえない。 控訴人組合は,憲法で保障された団体行動権に基づいて,学術・出版関係者を中心とする出席者に対して,都労委の命令を履行しない被控訴人会社及びその代表者たる被控訴人Aの実態を知らせ,労働争議の解決に向けて協力をお願いしたのであるから,正当な団体活動を行ったにすぎない。 (2) 被控訴人Aの損害賠償請求についてア控訴人らの行為により侵害された被控訴人Aの権利の内容と損害の不明確性控訴人らによる街宣活動は適法である。街宣活動(デモ行進)は,東京都公安委員会の許可条件に従いなされたもので,何らの違法性もない。原判決は,被控訴人Aが地域社会においていかなる「名誉・信用」を得てい 控訴人らによる街宣活動は適法である。街宣活動(デモ行進)は,東京都公安委員会の許可条件に従いなされたもので,何らの違法性もない。原判決は,被控訴人Aが地域社会においていかなる「名誉・信用」を得ていたのか,また,かかる名誉・信用がいかなる実態において,どの程度毀損されたのかも全く検討・判断しておらず,理由不備・事実誤認を免れない。 イ慰謝料算定の不明確性被控訴人Aが受けたという名誉・信用毀損の具体的内容は明らかでなく,慰謝料算定の根拠は全く不明であって,原判決は,裁判所としての裁量権を明らかに逸脱する。 ウ控訴人Cの責任原因の不明確性控訴人Cが街宣活動のすべてに参加したことは何ら立証されていないし,同人が主体的・中心的にこれらに参加したことの立証もない。 控訴人Cは,控訴人組合の組合員であり,労働組合の組合員は,組合の決定に従わない場合は統制違反として処分を受け,場合によっては控訴人組合から除名されることもある。したがって,控訴人組合が決定した方針 に従って行動することを控訴人Cは拒絶できない立場にある。このような労働組合と所属組合員との関係を無視して,何ら理由なく控訴人C個人に控訴人組合と同等の責任を認めた原判決の判断は,労働者の団結権を保障する憲法28条,これを具体化する労働組合法に反するものである。 (3) 控訴人Cの反訴請求についてア本件労働契約の内容についての事実誤認及び証拠評価の誤り(ア) 原判決は,控訴人Cが研究者を目指していたから,将来自分の手足を縛るような合意を被控訴人Aと締結するはずがないというが,控訴人Cが研究者を志望していたとしてもその可能性はほとんどないに等しい実情にあった。同人は,被控訴人会社について,自らの研究や関心を仕事の上で生かせる場と考えており,就職活動の腰掛け的存在と位 ,控訴人Cが研究者を志望していたとしてもその可能性はほとんどないに等しい実情にあった。同人は,被控訴人会社について,自らの研究や関心を仕事の上で生かせる場と考えており,就職活動の腰掛け的存在と位置付けていたわけではない。 (イ) 原判決は,被控訴人会社における労務管理の実態及び控訴人Cの勤務実態を見誤っている。 被控訴人会社にはアルバイトと正社員の区別がなく,控訴人Cの勤務実態は,他の社員と同等以上であった。 (ウ) 原判決は,団体交渉での発言やビラの記載の「片言隻句」に捉えられて本件の実態を見失っている。D組合員が第1回団体交渉において「現時点でアルバイトという形で仕事をしているようですけれども」などと発言した趣旨は,期間限定のアルバイトであることを認めたものではなく,被控訴人会社がアルバイトという形で仕事をさせているが,勤務実態は他の社員(正社員)と代わらないので,正社員としての処遇をすべきであると要求したものである。組合が発行したビラに「期限の迫っている」などの記載があるのは,期間限定のアルバイトの身分を承認したものではなく,約束どおり正社員にしてもらう平成17年3月末が迫っているとの趣旨である。 (エ) 被控訴人Aの発言の変転被控訴人Aは,その発言の全体の流れからすると,平成16年12月28日の面談では,控訴人Cの雇用継続を前提としており,平成17年3月末で期限切れであるとの告知をしていなかった。ところが,被控訴人Aは,第2回団体交渉から「3月期限切れ」を言い出した。 (オ) 都労委の認定都労委は上記の経過を正しく認定し,平成17年3月までの約束だったとする被控訴人会社の主張は到底採用できないと判断した。 (カ) E証人は,正社員にする約束はなかったと証言したが,その後,中労委の第2回審問において を正しく認定し,平成17年3月までの約束だったとする被控訴人会社の主張は到底採用できないと判断した。 (カ) E証人は,正社員にする約束はなかったと証言したが,その後,中労委の第2回審問において,控訴人Cが正社員になりたいというのを聞いていたと証言した。 (キ) 被控訴人Aの「最終選択」についての弁解は支離滅裂であり,破綻している。最終選択というのは,どこも就職先がきまらなければ被控訴人会社に留まるということにほかならず,「期限切れ」解雇ということにはなり得ない。 (ク) 本件は,背景事情として,控訴人Cが労働組合に加入したこと,労働組合員として職場環境の改善を求めて活動を始めたことを嫌悪した被控訴人Aが,平成17年4月以降正社員になることを約束として働いてきた控訴人Cに対し,その組合活動を甘受できず,なんとしてもそれを排除しなければならないと考えたことに起因する。 ところが,原判決は,被控訴人Aが控訴人Cの雇用期限切れを言い出したのが第2回団体交渉以降であることをことさらに無視し,控訴人Cについて「期限付きのアルバイト」であるなどという被控訴人Aの後付の主張を追認した。原判決には重大な事実誤認と証拠評価の誤りがある。 イ改正前の労働基準法14条の解釈適用の誤り1年を超える契約期間を決めることは,改正前の労働基準法14条が明 文で禁ずるところであり,これに違反して雇用契約が締結された場合,当該契約は期間を1年とする雇用期間として効力を有するにすぎない。 1年経過後労働者が引き続きその労務に従事し,しかもそのことにつき使用者も労働者も異議を述べなかった場合,当該契約は爾後期間の定めのない雇用契約として更新されたものと解すべきである。 契約期間とは使用者が労働者に対して労働の提供を要求することができる権利が有効に発生 も労働者も異議を述べなかった場合,当該契約は爾後期間の定めのない雇用契約として更新されたものと解すべきである。 契約期間とは使用者が労働者に対して労働の提供を要求することができる権利が有効に発生する期間(有効期間)にほかならない。 ウ解雇法理の解釈適用の誤り継続的雇用に対する労働者の期待が主観的な願望でない以上は,雇い止めに解雇法理が適用されるというべきである。 本件においては控訴人Cが他の社員(正社員)並みの仕事をこなしていたことは客観的に明らかであり,具体的スケジュールにおいても,被控訴人会社から月1回の出版を任され,その計画は,「契約期間」後の平成17年4月以降にまで及んでいた。 被控訴人会社が,控訴人Cに対し,雇用継続を期待させるような言動,取扱いをしていたことは明らかである。 4 被控訴人らの当審における主張の要旨(1) 被控訴人会社の請求ア被控訴人会社の控訴人らに対する街宣活動の差止請求(ア) 平成21年1月21日付け中労委の命令で本件救済命令は取り消され,控訴人Cに雇用契約上の地位が存在しない旨及び被控訴人会社に団体交渉義務のないことも判断されたから,同日以降,控訴人らの街宣活動は正当な組合活動とはいえない。 (イ) 控訴人らが今後も被控訴人会社に対する街宣活動を行う蓋然性は高い。 (ウ) 本件同様に組合員に雇用契約上の地位がないことを前提とした上で 差止めを認めた裁判例に照らしても,被控訴人会社の差止請求は認められてしかるべきである。 イ被控訴人会社の損害賠償額の拡張被控訴人らによる街宣活動は,1時間以上にわたり拡声器を使用し又は大声を上げるなどして演説又はシュプレヒコールを行うものであり,それが50回近く反復継続されているから,被控訴人会社の被った営業活動を営む権利の侵害は極 活動は,1時間以上にわたり拡声器を使用し又は大声を上げるなどして演説又はシュプレヒコールを行うものであり,それが50回近く反復継続されているから,被控訴人会社の被った営業活動を営む権利の侵害は極めて甚大である。 よって,被控訴人会社は,控訴人らに対し,不法行為に基づく損害賠償として300万円の支払を求める。 (2) 被控訴人Aの請求ア被控訴人Aが差止めを求める街宣活動行為の態様の拡張控訴人らは,当初の街宣活動をエスカレートさせ,シュプレヒコールをしたり,拡声器を使用し又は大声を上げるなどして演説を行ったり,横断幕や組合旗の設置等の行為も行っており,これらの行為により,被控訴人Aの住居の平穏や地域社会ないし私生活における名誉・信用がさらに侵害されたことから,これらの行為についても差止めの必要がある。 イ被控訴人Aの損害賠償額の拡張控訴人らの街宣活動は,一般人が休息している日曜日等の休日の午前中に,被控訴人会社の業務とは全く関係のない完全な私的領域である被控訴人Aの自宅に街宣活動を敢行するものである。その態様も,1時間以上にわたり拡声器を用いて演説を行ったり,シュプレヒコールを行うものであって,これによる被控訴人Aやその家族らの住居の平穏の侵害の程度は重大であり,かかる街宣活動は平成17年6月2日から平成21年3月17日現在まで31回に及ぶ上,同年6月20日にも行われており,裁判例に照らせば300万円以上の慰謝料が認められてしかるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人Aの請求には一部理由があるが,被控訴人会社の請求(当審で拡張及び減縮された部分を含む。)及び控訴人Cの反訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第3 争点に対 が,被控訴人会社の請求(当審で拡張及び減縮された部分を含む。)及び控訴人Cの反訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決27頁21行目の「る」を「ル」と改め,同28頁20行目の「街宣活動を」の次に「行い,平成21年6月20日にも同様の活動を」と,同33頁5行目末尾に「控訴人組合は,原判決が仮執行宣言付で被控訴人A宅付近における街宣活動を禁止したにもかかわらず,当審第1回口頭弁論期日後である平成21年6月20日にも,被控訴人A宅付近で街宣活動を行った。」とそれぞれ加え,同頁15行目冒頭から同頁25行目末尾までを「に鑑み,主文第1項(1)のとおり,控訴人Aの差止請求を認容すべきである。」と改め,同34頁7行目の「変わりはない」の次に「,被控訴人Aの場合,その仕事のあり方からして,その自宅における『私生活の領域』と『労使関係の領域』,『職場領域』を截然と区別することはできない」と,同頁25行目の「であって,」の次に「本件の場合,被控訴人会社は千代田区<以下略>にあるのに比し,被控訴人Aの自宅は豊島区<以下略>に所在していて,現に区別することができる。被控訴人Aがその自宅で控訴人会社の業務に関する準備を行い,同社に電話をかけたからといって,自宅が職場領域となるとすることはできない。」とそれぞれ加え,同35頁5行目末尾から同頁6行目冒頭の「及んで」を「及び,平成21年6月20日にも」と改め,同行の「結果」の次に「及び弁論の全趣旨」と加え,同頁12行目末尾の「80万」を「100万」と改め,同頁19行目末尾の「。」を削り,同42頁19行目の「未払い」を「未払」と改める。 2 控訴人らの当審における主張につい 及び弁論の全趣旨」と加え,同頁12行目末尾の「80万」を「100万」と改め,同頁19行目末尾の「。」を削り,同42頁19行目の「未払い」を「未払」と改める。 2 控訴人らの当審における主張について控訴人らの主張は,基本的に原審における主張の繰り返しにすぎず,当審の判断は,引用にかかる原判決(上記訂正後のもの。以下同じ。)の説示すると おりであり,控訴人らが当審において提出した証拠を考慮してもその結論は左右されない。付言すれば,次のとおりである。 (1) 控訴人らは,差止め請求に関し,原判決が真実性等の判断を怠ったなどと主張するが,配布するビラ等の記載内容が真実であったとしても,控訴人らの行為が相当性の範囲を著しく超える違法なものであることは引用にかかる原判決の説示のとおりである。控訴人らは,報道・出版における名誉・信用毀損に関する法理を本件にも適用すべきことを主張するが,当裁判所は,控訴人らの相当性の範囲を著しく超える行為により,被控訴人Aの平穏な私的生活を営む権利が侵害されるとともに,同被控訴人の地域社会おける名誉・信用が毀損されたこと,これらの権利侵害が今後も続くおそれがあることを理由に一定の行為の差止めを認めるものであって,控訴人らが作成した文書における事実摘示そのものにより同被控訴人の名誉が毀損されたことを理由に差止めを認めるものではないから,控訴人らの上記主張は失当である。 (2) 次に,控訴人らは,被控訴人Aの損害賠償請求に関し,東京都公安委員会の許可に従ったから違法ではない,控訴人Cが労働組合の方針に従わざるを得ない立場にあったから控訴人組合と同等の責任を負わせることができないなどとも主張するが,前者は公共の平穏維持と個人法益の保護とを混同するものであり,公安委員会の許可を得たからといって,民事上の責任が ない立場にあったから控訴人組合と同等の責任を負わせることができないなどとも主張するが,前者は公共の平穏維持と個人法益の保護とを混同するものであり,公安委員会の許可を得たからといって,民事上の責任がないとはいえないし,後者は,本件の場合,控訴人Cは,組合員を拘束することができるとは解されない控訴人組合の違法な方針を盾に,街宣活動を共同したにすぎず,組合員が労働組合の適法な行動方針に従うことを求められる場面とは異なるのであって,控訴人らの主張はいずれも失当である。 (3) 控訴人Cの反訴請求に関し,控訴人らは,原判決は事実誤認をし,かつ,証拠の評価を誤っていると主張するが,本件の証拠に照らせば,前記引用にかかる原判決の認定どおり,本件労働契約は,控訴人Cについて正社員としての採用を前提としたものではなく,助手の期間中である平成17年3月末 までの間におけるアルバイト先を確保するための有期雇用契約であったものと認められる。控訴人Cは,F大学に助手として採用され,兼職が禁止されていたところ,同控訴人が同大学に被控訴人会社への就職の許可を求めたことの主張も立証もないのであり,被控訴人会社が同控訴人を平成15年7月1日から正社員として採用したものと認定することは,困難である。なお,中労委も,本件雇用は平成15年7月から平成17年3月までの期限を限った大学の助手任期中のいわゆるアルバイトとしてのものであると判断している(甲105)。改正前の労働基準法14条に関する解釈適用に関する当裁判所の判断も,前記引用にかかる原判決の説示のとおりである。 3 被控訴人らの当審における主張について(1) 被控訴人会社の請求については,引用した原判決の説示するとおりであって,被控訴人会社の請求には理由がない。前認定のとおり,都労委の命令が中労委の命令 被控訴人らの当審における主張について(1) 被控訴人会社の請求については,引用した原判決の説示するとおりであって,被控訴人会社の請求には理由がない。前認定のとおり,都労委の命令が中労委の命令によって取り消された事実は認められるが,当審の口頭弁論終結時において同命令に対する不服申立ての出訴期間が経過しておらず,結論は異ならない。 (2) 被控訴人Aの請求のうち,差止請求に関する請求拡張分については,控訴人らが,被控訴人Aの自宅前の路上で,拡声器を用い,シュプレヒコールをしたり,横断幕をはったり,旗を立てかけたりしていることから,正当として認容すべきである。また,控訴人らは,原判決後も,同被控訴人の自宅付近で街宣活動を行ったから,慰謝料を増額するのが相当である。これらの点に関しては,上記説示のとおり,原判決を訂正済みである。 第4 結論よって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,被控訴人会社の附帯控訴(当審における請求拡張分を含む。)は理由がないから,これを棄却することとする。被控訴人Aの請求(当審における請求の拡張及び減縮を含む。)については前記の限度で理由があるから,これと異なる原判決を変更 することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部 裁判長裁判官南敏文 裁判官野山宏 裁判官棚橋哲夫

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