主文 1 被告は,原告甲会に対し,2672円及びこれに対する平成12年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告乙及び原告丙に対し,各30万円及びこれに対する平成12年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告らが,大型ごみ焼却場建設計画に反対する懇談会を開催するために,平成12年11月14日分のa町中央公民館(以下「中央公民館」という。)の使用許可を受けていたところ(以下「本件許可」という。),同懇談会の開催日当日,中央公民館の館長であるEらが,同懇談会が社会教育法23条1項2号の「特定の政党の利害に関する事業」に該当するとして,本件許可を取り消す旨の処分をしたことにつき,被告に対し,同処分には地方自治法244条2項,a町中央公民館使用に関する条例(以下「本件条例」という。)6条2号にそれぞれ違反する違法があるとして,国家賠償を求めた事案である(遅延損害金の請求も含む。)。 1 基礎となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は括弧内掲記の証拠により容易に認めることができる。 (1) 当事者等ア原告甲会(以下「甲会」という。)は,大型ごみ焼却場建設計画の見直しを求めることなどを目的として結成された団体であり,規約や会員名簿等を備え,かつ,会費や役員等の定めを有する団体でもある(甲1)。 原告乙(以下「原告乙」という。)は,甲会の代表世話人であり,原告丙(以下「原告丙」という。)は,a町の町議会議員(共産党所属)で,同会の世話人である(甲1)。 イ被告は,中央公民館を開設,運営する地方公共団体である。 本件当時,E(以下「 世話人であり,原告丙(以下「原告丙」という。)は,a町の町議会議員(共産党所属)で,同会の世話人である(甲1)。 イ被告は,中央公民館を開設,運営する地方公共団体である。 本件当時,E(以下「E館長」という。)は,中央公民館の館長,F(以下「F教育長」という。)は,a町の教育長で,いずれもa町の職員である。 (2) 中央公民館の利用及び許可に関する諸規定等ア地方自治法中央公民館は,「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)」(244条1項)であり,被告は,「正当な理由」がない限り,住民が中央公民館を利用することを拒んではならない(同条2項)。 イ社会教育法公の施設である公民館においては,「特定の政党の利害に関する事業」を行うことができない(23条1項2号)。 ウ本件条例等(ア) 以下の各号に該当する場合には,中央公民館の使用を許可せず,又は使用を取り消すことができる(6条,甲5)。 1号:「公益を害し,又は風俗をみだすおそれがあると認められたとき」2号:「条例,規則等に違反して使用するおそれがあると認められたとき」3号:「その他公民館の管理,運営上支障があると認めたとき」(イ) 中央公民館の使用者は,「許可を受けた目的以外」に公民館を使用してはならない(7条,甲5)。 (ウ) 中央公民館の使用許可権限を持つのは館長であるが(2条,甲5),「重要かつ異例のとき」には,館長は,教育委員会の決定を得て使用を許可する(a町中央公民館規則4条2項,甲6),他方,中央公民館の使用許可に関する教育委員会の事務は,教育長に委任されている(a町教育委員会事務委任規則2条,乙7)。 (エ) したがって,結局,「重要かつ異例のとき」には,E館長は,F教育長の裁可を得た上で,許可若しくは不許可又は 育委員会の事務は,教育長に委任されている(a町教育委員会事務委任規則2条,乙7)。 (エ) したがって,結局,「重要かつ異例のとき」には,E館長は,F教育長の裁可を得た上で,許可若しくは不許可又は許可の取消の決定をすることになる(本件の場合)。 (3) 本件許可前の原告らの活動の経緯(甲8,甲9,甲18,乙5,原告乙,原告丙,証人F)ア平成6年ころ,鳥栖市,a町を含む1市4町は,共同の大型ごみ焼却場を建設することを計画し,鳥栖地区ごみ処理施設建設促進協議会(以下「協議会」という。)を設立した。 イ協議会は,鳥栖市内の候補地を探したが,やがて,被告から,a町g地区での建設を打診され,同地区を建設候補地としたが,地元の強い反対にあったため,同地区での計画の実施を断念した。 ウその後,協議会と被告a町は,a町h地区を建設候補地と決め,相互に連携しながら,大型ごみ焼却場の建設計画を進めた(以下「本件建設計画」という。)。 エ原告乙,原告丙らは,平成12年2月7日(以下,日付けはいずれも平成12年のものを指すこととする。),環境問題についての学習会を開催していくこと,本件建設計画に反対し,その計画の見直しを求めていくことなどを目的として,甲会を発足させた(甲1)。 オ甲会は,6月末ころ,町民大集会の開催のためにa町勤労青少年ホームの使用許可を申請し,一旦は許可されたが,その後,目的外使用にあたるとして許可を取り消されたため,6月27日,場所を代えてa勤労者体育センターの使用許可を申請して許可され,7月2日,同センターで町民大集会を開催した(甲15,乙1)。 カその後,甲会は,佐賀県に本件建設計画に対して行政指導を行うように申し入れたり(甲13の1),大型ごみ焼却場の危険性を指摘したビラをa町内に頒布するなどして活動を続け,10月10 15,乙1)。 カその後,甲会は,佐賀県に本件建設計画に対して行政指導を行うように申し入れたり(甲13の1),大型ごみ焼却場の危険性を指摘したビラをa町内に頒布するなどして活動を続け,10月10日,学習会を開催するために中央公民館の使用許可を申請して許可され,10月30日,学習会を開催した(乙2)。 (4) 本件許可及び取消処分の経緯(証拠は(3)と同じ)ア本件許可申請(ア) 原告丙らは,10月ころ,共産党の国会議員であるG(以下「G議員」という。)を招いて懇談会を行うことを企画し(以下「本件懇談会」という。),11月8日,E館長に対し,以下のとおり,中央公民館の使用許可を申請した(甲2)。 ① 申請人原告丙② 使用団体甲会③ 使用人員 50人④ 使用年月日,日時 11月14日午後7時から午後10時まで⑤ 使用室 3階室⑥ 使用目的環境問題を考える懇談会⑦ 備考 G(共産党国会議員)参加予定(イ) E館長は,11月8日,使用料を納入させた上で,原告らの中央公民館(3階室)の使用を許可した(甲2,甲3の1,なお,甲2の許可申請書には,F教育長の決済印もある。)。 (ウ) 原告丙は,11月13日,F教育長から,本件懇談会の場所を中央公民館の3階から2階の和室へ替わるように要請され,収容人員が少なくなることから難色を示したものの,これを承諾し,上記アの申請書をそのまま使用し,⑤の使用室を和室へと変更した上,再び,中央公民館の使用許可を申請した(甲2)。 (エ) E館長は,11月13日,使用料についての差額を精算した上で,中央公民館(2階の和室)の使用を許可した(甲3の2)。 イビラの作成頒布と本件許可の取消(ア) そのころ,原告乙らは,本件懇談会につい E館長は,11月13日,使用料についての差額を精算した上で,中央公民館(2階の和室)の使用を許可した(甲3の2)。 イビラの作成頒布と本件許可の取消(ア) そのころ,原告乙らは,本件懇談会についてのビラ(甲4,以下「本件ビラ」という。)を作成し,a町内や佐賀市内で頒布していたところ,これが,F教育長らの目にとまった。 (イ) 原告丙は,11月14日,F教育長から,電話で,中央公民館を使用させないと言われたため,直ちに抗議した上,さらに,原告乙らと共に,抗議のために被告町役場を訪れ,その場で,F教育長,E館長らと話し合いを行った。 (ウ) F教育長及びE館長は,同日,本件ビラの冒頭に「安全問題で調査権発動!」,次の行には他の文字よりも大きく「国会議員が来町」などと記載され,さらに,下段にはG議員が比例区選出である旨記載されていたことから,本件懇談会が社会教育法23条1項2号の「特定の政党の利害に関する事業」に該当する(したがって,本件条例7条で禁止された「許可を受けた目的以外」の使用にも該当する。)と認め,原告丙らに対し,中央公民館の使用許可処分を取り消し,使用を不許可とする旨通告した(以下「本件取消処分」という。)。 ウ原告乙らは,本件懇談会を中央公民館で開催することができなくなったため,すぐに代わりの施設を探し,結局,中央公民館の近くにあった地区の公民館で本件懇談会を開催した。その際,原告乙らは,会場変更を告知する立看板やポスターを掲げたり,中央公民館の近くに人員を配置し,出席者を新会場へ誘導するなどした。 (5) 本件ビラの記載内容ア本件ビラの大きさはB5版で,これを横方向に横書きしたもので,冒頭には他の文字よりもやや大きく「安全問題で調査権発動!」との記載があり,次の行に,さらに大きく(他の文字に比べれば約4倍の大きさ) ア本件ビラの大きさはB5版で,これを横方向に横書きしたもので,冒頭には他の文字よりもやや大きく「安全問題で調査権発動!」との記載があり,次の行に,さらに大きく(他の文字に比べれば約4倍の大きさ),かつ,太い文字で「国会議員が来町」との題目としての記載がある。 イその次の行から,「広域(巨大)ごみ処理施設建設問題で不安と疑問が広がっています。本来,a町と鳥栖市は安全問題で説明会を開く責任と義務がありますが,その要請をあくまで拒否,安全問題で説明できないようでは私たちの暮しは守れません。特に1市11町村の「給水タンク」と隣接して建設計画がはかられているために飲み水の汚染が心配されておりa町だけの問題ではありません。今,来年度へ向けて予算編成中,この建設費の4分の1が国費です。国会でも声をあげていく必要があります。党派を超えて代表である国会議員さんに働きかけていきたいと思いますので,ぜひ!お集まり下さい。」との本文としての記載がある。 ウその次の行の中央部分に,他の文字よりもやや大きく「懇談会」との記載があり,それぞれ改行の上,「とき 11月14日(火曜日)夜7時半」,「ところ a町中央公民館3階」との案内部分の記載がある。 エその下段には,「G代議士(環境委員)兵庫県・比例選出」と記載され,改行の上,「14日の夜にa町に来町,よる住民のみなさんの意見をうかがいます。15日午前中に現地を確認して午後からa町と鳥栖市の担当者の説明を聞き,もどられます。」との記載がある。 オ最下段の右端に寄せて,他の文字よりもやや小さく「連絡先94-2395(乙)」との記載がある。 2 争点(1) 本件取消処分の違法性(本件取消処分の時点において,被告が,本件懇談会を社会教育法23条1項2号の「特定の政党の利害に関する事業」に該当すると認定したことの 乙)」との記載がある。 2 争点(1) 本件取消処分の違法性(本件取消処分の時点において,被告が,本件懇談会を社会教育法23条1項2号の「特定の政党の利害に関する事業」に該当すると認定したことの適否。なお,現に開催された本件懇談会の内容如何を問うものではない。)(2) 損害額(原告らの主張:甲会=ビラの印刷費用等2672円,原告乙及び原告丙の損害=慰謝料各30万円)第3 争点についての判断 1 争点(1)について(1) 本件取消処分の違法性についてア社会教育法23条1項2号によって公民館で禁止される「特定の政党の利害に関する事業」とは,文字どおり,「特定の政党」の利害に関する政治的活動を指すのであって,単なる政治的活動を指すのではない。また,同号の「利害に関する」の解釈についても,憲法に定められた集会の自由を実質的に保障するためには,公共の福祉に反しない限り,公民館という施設の利用が認められるべきであること,そして,集会なるものは通常何らかの政治的意思の表明を伴うことが多いことを考慮すれば,単に特定の政党に事実上の利害が関係するというだけでは足りず,たとえば,当該集会の目的が,特定の政党が掲げる政策内容にたまたま合致している部分があるとか,同目的を遂行するにあたり,結果的に同政党を支援することにもなったというだけでは足りないのであって,特定の政党自体はもとより,その一組織ないしは下部組織として,もしくは,それらの団体と密接な関連のある者ないしは団体として,特定の政党の政策目的を実現するため(あるいは,反対政党の政策実現を阻止するため),統治機構の獲得維持を志向し,その一環としてなされるものでなければならない。 以上を前提として,被告が,本件懇談会を「特定の政党の利害に関する事業」に該当すると認定したことの適否について検討す ),統治機構の獲得維持を志向し,その一環としてなされるものでなければならない。 以上を前提として,被告が,本件懇談会を「特定の政党の利害に関する事業」に該当すると認定したことの適否について検討する。 イ前記第2の1「基礎となる事実」によれば,甲会は,本件建設計画に反対するために結成された団体であり,原告らは,本件懇談会を本件建設計画に反対する活動の一環として開催しようとしたことは明らかである。 しかしながら,本件建設計画に反対するという本件懇談会の目的自体をみても,必然的に特定の政治思想ないしは特定の政党の政策と結びついたり,あるいは,これから当然に出てくる類のものではないし,証拠(甲8,甲9,甲18,原告乙,原告丙)によれば,甲会は,いかなる政党や政治団体にも属さず,構成員にどの政党を支持するかを問わない市民団体であり,実際には代表世話人の原告乙は公明党の支持者であり,原告丙は共産党所属の町議会議員であるなど,各々の構成員の政治思想ないしは支持政党も様々であったこと,原告乙らは,本件建設計画に反対するため,特定の政党に限らず,様々な政党に属する町議会議員らに対して本件建設計画に反対するように働きかけてきたことなどの事実が認められ,これらの事実によれば,本件懇談会をもって,特定の政党による統治機構の獲得維持を志向した政治活動と評価することはできない。 この点に関して,被告は,本件懇談会の申請人である原告丙が共産党所属の町議会議員であること,懇談会に共産党の国会議員であるG議員の参加が予定されていたことなどを指摘するが,かかる点を考慮しても,原告らの活動が特定の政党の政策目的の実現に具体的に関わったなどとは到底いえないのであり,先に認定した事実に照らせば,原告らが主張するとおり,原告丙は単に便宜的に原告らを代表して申請を行っ しても,原告らの活動が特定の政党の政策目的の実現に具体的に関わったなどとは到底いえないのであり,先に認定した事実に照らせば,原告らが主張するとおり,原告丙は単に便宜的に原告らを代表して申請を行ったに過ぎないし,G議員を招いた点についても,原告らの活動の一環として,国会議員に地元の意をくみ取ってもらい,国政レベルで問題提起ないし問題点を調整してもらうことにあったに過ぎない。 ウまた,前記第2の1「基礎となる事実」によれば,甲会は,会の発足以来,本件懇談会までの間に,a町内の公共施設で学習会を2度に渡って開催したり,町内でビラを頒布するなどの活動を続けてきたこと,F教育長及びE館長がその際の公共施設の使用許可にいずれも関わっていたこと(そのうち一度は目的外使用に当たるとして使用許可を取り消したこともある。),本件取消処分の前にも,F教育長及びE館長が一旦は中央公民館の使用を許可したこと(その後,使用室を変更させている。)などの事実が認められ,これらの事実によれば,F教育長及びE館長は,大型ごみ焼却場の建設に反対するという本件懇談会の性格や内容について,十分に了知した上で,本件取消処分を行ったというべきである。 エこれに対し,被告は,F教育長らは,原告らの活動の詳細については把握していなかったところ,本件ビラの記載内容を見て,本件懇談会が「特定の政党の利害に関する事業」に該当すると認定したのであって,その判断に誤りはなかったと主張する(乙5,証人F)。 そこで,本件ビラの記載内容についてみると,たしかに,被告が主張するように,冒頭に「調査権発動!」「国会議員が来町」などと大きく記載され,下段にはG議員が比例区選出である旨記載されており,これらの記載部分のみをみると,本件懇談会が政治的な色彩を持つかのような印象を受ける。また,本件 権発動!」「国会議員が来町」などと大きく記載され,下段にはG議員が比例区選出である旨記載されており,これらの記載部分のみをみると,本件懇談会が政治的な色彩を持つかのような印象を受ける。また,本件ビラには,これまでの懇談会とは異なり,どこにも会の主催者が明記されていない。しかしながら,本文の部分をみると,本件建設計画の実施によって生じる環境問題に強い懸念が表明され,さらに,「党派を超えて代表である国会議員さんに働きかけていく必要があります。」などと訴えられており(国会議員は働きかけられる側ということになる。),それらの部分を一読すれば,本件懇談会の主催者が甲会であるとは分からないにしても,本件懇談会が,本件建設計画に反対する団体によって,その反対運動の一環として開催されようとしていることは容易にわかるはずである。してみると,結局,本件ビラの記載内容のみによっても,本件懇談会をもって,特定の政党による統治機構の獲得維持を志向した政治活動と評価する余地はない。 エそうすると,被告が,本件懇談会を「特定の政党の利害に関する事業」と認定して本件取消処分を行った点について,合理的な理由があったとは認められず,本件取消処分は違法というほかない。 (2) 以上の認定事実によれば,F教育長及びE館長には,公民館の許可権限を有する者として当然要求される判断を誤り,違法な処分に及んだという点において,少なくとも過失があったものと認められる。 (3) したがって,被告は,国家賠償法1条1項に基づき,原告らに対し,本件処分により与えた損害を賠償する責任がある。 2 争点(2)について(1) 甲会は,本件処分により,中央公民館での開催を前提とした本件ビラの紙代,コピー代等として,少なくとも2672円の損害を被ったと認められる(甲7の1及び2)。 (2) 原告乙 点(2)について(1) 甲会は,本件処分により,中央公民館での開催を前提とした本件ビラの紙代,コピー代等として,少なくとも2672円の損害を被ったと認められる(甲7の1及び2)。 (2) 原告乙及び原告丙は,支持政党の違いはあるにせよ,原告乙は甲会の代表者として,原告丙は世話人として,共に学習会や懇談会を開催してきたものであり,本件取消処分により,不当に中央公民館の使用を阻まれて集会の自由を制約されただけでなく,開催日当日に急遽,代替施設の確保や新施設への誘導を余儀なくされるなどしており,これらの不利益や本件取消処分の態様及び本件取消処分に至る経緯,その他一切の事情を考慮すると,精神的苦痛に対する慰謝料は,いずれも30万円と評価するのが相当である。 3 よって,主文のとおり判決する(仮執行宣言は相当でないので,これを付さない。)。 佐賀地方裁判所民事部裁判長裁判官亀川清長裁判官早川真一裁判官杉原崇夫
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