主文 本件申立てを却下する。 申立て費用は申立人の負担とする。 理由 第1申立ての趣旨大阪市西成区長は,仮に,申立人の住所を大阪市α-×-44とする旨を住民票に記載せよ。 第2事案の概要 本案訴訟は,申立人が,「大阪市α-×-44」(以下「本件住所地」という。)をその住所とする旨の住民異動届(以下「本件異動届」という。)を提出したのに対し,大阪市西成区(以下「西成区」という。)の区長(以下「西成区長」という。)が,申立人には本件住所地に居住の実態がないことを理由として,本件異動届を受理しない旨の処分(以下「本件不受理処分」という。)をしたのは,住民基本台帳法(以下「住基法」という。)に反し違法であるなどとして,その取消しを求めるとともに,本件異動届の記載に基づく住民登録を求めた事案(処分の取消しの訴え(行訴法3条2項)及び義務付けの訴え(同条6項2号))である。 本件申立ては,申立人が,行訴法37条の5第1項に基づき,本件不受理処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり,かつ,本案について理由があるとみえるときに当たる上,本件異動届どおりの住民登録を行うことにより公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときに当たらないなどとして,本件異動届の記載に基づく住民登録を仮に義務付けるよう求めた事案である。 当事者の主張申立人の主張は,別紙1の1,2のとおりであり,相手方の主張は,別紙2の1,2のとおりである。 争点 本件の争点は,①本件申立てについて適法な本案訴訟の係属を欠くか,②本件不受理処分により生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか,③本案について理由があるとみえるか,である。 第3当裁判所の判断 法令の定め(1)住基法 欠くか,②本件不受理処分により生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか,③本案について理由があるとみえるか,である。 第3当裁判所の判断 法令の定め(1)住基法8条は,住民票の記載,消除又は記載の修正(同法18条を除き,以下「記載等」という。)は,同法30条の2第1項及び第2項,30条の3第3項並びに30条の4の規定によるほか,政令で定めるところにより,この法律の規定による届出に基づき,又は職権で行うものとする旨規定し,住民基本台帳法施行令(昭和42年政令292号。以下「住基法施行令」という。)8条は,市町村長は,その市町村の住民基本台帳に記録されている者が転出をし,又は死亡したときその他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由が生じたときは,その者の住民票(その者が属していた世帯について世帯を単位とする住民票が作成されていた場合にあっては,その住民票の全部又は一部)を消除しなければならないと規定し,同令12条3項は,市町村長は,住民基本台帳に脱漏若しくは誤載があり,又は住民票に誤記若しくは記載漏れがあることを知ったときは,当該事実を確認して,職権で,住民票の記載等をしなければならないと規定する。 また,住基法22条は,転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい,出生による場合を除く。)をした者は,転入をした日から14日以内に,①氏名,②住所,③転入をした年月日,④従前の住所,⑤世帯主についてはその旨,世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯 主との続柄,⑥転入前の住民票コード,⑦その他政令で定める事項を市町村長に届け出なければならず,当該届出をする者は,住所の異動に関する文書で政令で定めるものを添えて,同項の届出をしなければならない旨規定する。さらに の住民票コード,⑦その他政令で定める事項を市町村長に届け出なければならず,当該届出をする者は,住所の異動に関する文書で政令で定めるものを添えて,同項の届出をしなければならない旨規定する。さらに,住基法施行令11条は,市町村長は,住基法の規定による届出があったときは,当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して,住民票の記載等を行わなければならない旨規定する。 そして,住基法4条は,住民の住所に関する法令の規定は,地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない旨規定し,地方自治法10条1項は,市町村の区域内に住所を有する者は,当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする旨規定する。 (2)ア公選法9条は,1項において,日本国民で年齢満20年以上の者は,衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有すると規定し,2項において,日本国民たる年齢満20年以上の者で引き続き3箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は,その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有すると規定する。 イ公選法19条1項は,選挙人名簿は,永久に据え置くものとし,かつ,各選挙を通じて一の名簿とすると規定し,同条2項は,市町村の選挙管理委員会(特別区の選挙管理委員会を含む。以下同じ。)は,選挙人名簿の調製及び保管の任に当たるものとし,毎年3月,6月,9月及び12月(以下「登録月」という。)並びに選挙を行う場合に,選挙人名簿の登録を行うものとすると規定する。そして,同法21条1項は,選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民(同法11条1項若しくは252条又は政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しない者を除く。)で,その者に係る登録市町村等(当該市町村及び消滅市町村をいう。)の住民 る年齢満20年以上の日本国民(同法11条1項若しくは252条又は政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しない者を除く。)で,その者に係る登録市町村等(当該市町村及び消滅市町村をいう。)の住民票が作成された日(他の市町村から登録市町村等の区域内に住所を移した者で住基法22条の規定により届出 をしたものについては,当該届出をした日)から引き続き3箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行うと規定し,公選法21条4項は,市町村の選挙管理委員会は,政令で定めるところにより,当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を調査し,その者を選挙人名簿に登録するための整理をしておかなければならないと規定する。 さらに,同法26条は,市町村の選挙管理委員会は,同法22条の規定により選挙人名簿の登録をした日後,当該登録の際に選挙人名簿に登録される資格を有し,かつ,引き続きその資格を有する者が選挙人名簿に登録されていないことを知った場合には,その者を直ちに選挙人名簿に登録し,その旨を告示しなければならないと規定する。 公選法27条1項は,市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録されている者が同法11条1項若しくは252条若しくは政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しなくなったこと又は当該市町村の区域内に住所を有しなくなったことを知った場合には,直ちに選挙人名簿にその旨の表示をしなければならないと規定し,公選法28条2号は,市町村の選挙管理委員会は,当該市町村の選挙人名簿に登録されている者について,同法27条1項の表示をされた者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日後4箇月を経過するに至ったときは,これらの者を直ちに選挙人名簿から抹消し,その旨を告示しなければならないと規定する。 ウ公選法42条1項本文は,選挙 者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日後4箇月を経過するに至ったときは,これらの者を直ちに選挙人名簿から抹消し,その旨を告示しなければならないと規定する。 ウ公選法42条1項本文は,選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は,投票をすることができないと規定し,同項ただし書は,選挙人名簿に登録されるべき旨の決定書又は確定判決書を所持し,選挙の当日投票所に至る者があるときは,投票管理者は,その者に投票をさせなければならないと規定し,同条2項は,選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録された者であっても選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されることができない者であるときは,投票をすることができないと規定し,同法43条 は,選挙の当日(同法48条の2の規定による投票にあっては,投票の日),選挙権を有しない者は,投票をすることができないと規定し,公職選挙法施行令(昭和25年政令89号。以下「公選法施行令」という。)29条1項は,選挙人名簿に登録されている者は,他の市町村の区域内に住所を移した場合においてなお選挙権を有するときは,当該他の市町村の選挙人名簿に登録されるまでの間,現に選挙人名簿に登録されている市町村において投票をすることができると規定する。そして,公選法44条2項は,選挙人は,選挙人名簿又はその抄本の対照を経なければ,投票をすることができないと規定し,公選法施行令35条1項は,投票管理者は,投票立会人の面前において,選挙人が選挙人名簿に登録されている者であることを選挙人名簿又はその抄本と対照して確認した後に,これに投票用紙を交付しなければならないと規定する。 (3)住基法10条は,市町村の選挙管理委員会は,公選法22条1項若しくは2項若しくは26条の規定により選挙人名簿に登録をしたとき,又は同法28条の規定により選 交付しなければならないと規定する。 (3)住基法10条は,市町村の選挙管理委員会は,公選法22条1項若しくは2項若しくは26条の規定により選挙人名簿に登録をしたとき,又は同法28条の規定により選挙人名簿から抹消したときは,遅滞なく,その旨を当該市町村の市町村長に通知しなければならないと規定し,住基法15条1項は,選挙人名簿の登録は,住民基本台帳に記録されている者で選挙権を有するものについて行うものとすると規定し,同条2項は,市町村長は,同法8条の規定により住民票の記載等をしたときは,遅滞なく,当該記載等で選挙人名簿の登録に関係がある事項を当該市町村の選挙管理委員会に通知しなければならないと規定する。 公選法29条1項は,市町村長及び市町村の選挙管理委員会は,選挙人の住所の有無その他選挙資格の確認に関し,その有している資料について相互に通報しなければならないと規定する。 (4)住基法38条1項は,地方自治法252条の19第1項の指定都市に対するこの法律の規定の適用について,政令で定めるところにより,区を市と, 区の区域を市の区域と,区長を市長とみなすと規定し,同条2項は,前項に定めるもののほか,指定都市に対するこの法律の規定の適用については,政令で特別の定めをすることができると規定する。また,公選法269条前段は,衆議院議員,参議院議員,都道府県の議会の議員及び長の選挙並びに指定都市の議会の議員及び長の選挙に関してこの法律を適用するについては,政令の定めるところにより,当該市においては,区を市とみなし,区の選挙管理委員会及び選挙管理委員を市の選挙管理委員会及び選挙管理委員とみなすと規定し,同条後段は,この場合において,同法22条の規定の適用については,同条中「資格を有する者」とあるのは,「資格を有し,かつ,その日において当該区の 市の選挙管理委員会及び選挙管理委員とみなすと規定し,同条後段は,この場合において,同法22条の規定の適用については,同条中「資格を有する者」とあるのは,「資格を有し,かつ,その日において当該区の区長が作成する住民基本台帳に記録されている者」とすると規定する。そして,大阪市は,地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令(昭和31年政令254号)の定める指定都市であり,西成区は大阪市の地方自治法252条の20にいう区である。 (5)住基法31条の4,住基法施行令31条2項は,住基法の規定により指定都市の区長がした処分に不服がある者は市長に審査請求をすることができ,この場合においては,都道府県知事に再審査請求をすることもできる旨規定し,同法32条は,同法31条の4に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分についての審査請求の裁決を経た後でなければ,提起することができない旨規定する。 本件に係る事実関係(争いのない事実及び疎明資料等により一応の認定のできる事実。なお,疎明資料等により一応の認定をした事実は,末尾に疎明資料等を引用する。)(1)アβの東北端に位置し,γ及びδ丁目,αないしε丁目,ζ及びη丁目,θないしι丁目並びにκから成る面積約0.62平方キロメートルの地域(λ又はμ地区と通称される。以下「λ」ということがある。)は,主に建設現場等での日雇労働に従事する推定約2万1000人の者(以下「日 雇労働者」という。)が拠点とする場所である。日雇労働者の多くは,λで求職活動を行った上,大阪近郊又は遠方の建設現場等で稼働している。 【疎乙1,3,8】イ本件住所地には,あいりん労働公共職業安定所(以下「あいりん職安」という。),財団法人A(以下「A」という。)及び社会福祉法人B(以下「B」という。)が所在する。 している。 【疎乙1,3,8】イ本件住所地には,あいりん労働公共職業安定所(以下「あいりん職安」という。),財団法人A(以下「A」という。)及び社会福祉法人B(以下「B」という。)が所在する。【疎乙1,4,6】ウあいりん職安は,雇用保険法44条所定の日雇労働被保険者手帳を所持する者が所定の要件を満たした場合に同法48条所定の日雇労働求職者給付金を支給する事業等を行い,Aは,住民登録のない者に対する職業あっせんや自立支援就労事業のあっせん,労働相談や福利厚生事業等を行うほか,娯楽室,食堂,売店,シャワールーム,ロッカー,理髪店を備え,さらに,野宿や簡易宿所に居住しているなどの理由で郵便物を確実に受け取ることができない日雇労働者のために,郵便物の着信場所として,同人ら宛ての郵便物の配送を受けて保管し,その要請に応じてこれらを交付する業務を行っている。また,Bは,無料低額診療施設C病院の設置運営等を行っている。これらの各施設は,南側に隣接している市営ν住宅とともに,国,大阪府,相手方,雇用促進事業団が共同で昭和45年に設立したDを構成している。Dは,8階建て(市営住宅部分は13階建て)の未登記建物である。【疎甲3,11,23,疎乙1,4,6,7,申立ての全趣旨】エξ公園は,γに位置し,都市公園法に基づいて相手方が設置,管理する都市公園である。その北側約半分には,日雇労働者が起居する小屋が点在している。ξ公園には水道の設備はなく,便所も設置されていない。 ξ公園とDとの位置関係は別図のとおりであり,DのうちA等が入居する北側部分とξ公園との間の距離は最短で約150メートル程度である。 【疎乙7,9,10,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】 (2)ア申立人は,平成元年2月ころからλに居住している日雇労働者である。 申立 の間の距離は最短で約150メートル程度である。 【疎乙7,9,10,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】 (2)ア申立人は,平成元年2月ころからλに居住している日雇労働者である。 申立人は,λに来た当初は簡易宿所に主に居住し,時折遠方の建設作業現場(飯場)に赴く生活を送っていたが,平成2年ころから約2年間はλ内にアパートを借りて生活し,その後は平成10年ころまで,再び簡易宿所で主に居住していた。申立人は,平成10年ころ以降,経済的に貧窮の度を増し,簡易宿所を出て野宿生活を送っていたが,平成12年春ころからはπ公園内の小屋で起居するようになった。しかしながら,申立人は,平成18年10月ころ,π公園を管理する相手方からの通告を受けて,上記小屋を撤去し,同公園を引き払った。【審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】イ申立人は,π公園の小屋で起居していた当時,勤務先の自転車店をその住民票上の住所として届け出ており,同店を郵便物の着信場所として利用していたが,同店が平成18年8月に閉鎖となり,自動車運転免許証の更新に住民票の写しが必要となったため,これを機に住民票上の住所も移転することとし,同月21日,友人宅である「大阪市σ××番1号τビル×××号」(以下「本件友人宅」という。)を住所とする届出をした。そのため,平成19年6月29日の本件不受理処分当時,申立人に係る住民票には本件友人宅が住所として記載されていた。もっとも,申立人は,本件友人宅に居住したことがないことはもとより,荷物等を置いている事実もない。【疎甲1,審尋期日における申立人の陳述】ウ申立人は,平成18年12月,ξ公園のほぼ中央に位置する,地面に打ち込まれた木材の柱に木製の合板等を打ち付けて壁とし,屋根代わりに波板を被せた構築物(以下「本件構築物」とい おける申立人の陳述】ウ申立人は,平成18年12月,ξ公園のほぼ中央に位置する,地面に打ち込まれた木材の柱に木製の合板等を打ち付けて壁とし,屋根代わりに波板を被せた構築物(以下「本件構築物」という。)に移住し,以後はその中で起居している。本件構築物は,それまで隣接する同様の構築物で起居していた者が管理して主に倉庫として用いていたが,現在では,申立人が自前の南京錠を付けて管理し,断熱シートを被せるなど適宜に改造して専 ら単独で占有している。申立人は,本件構築物内に,自炊用の道具や文房具,詩集,ろうそく,簡易ベッド等の私物を置いている。【疎甲1,2,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】エ本件構築物で起居するようになってからの申立人の生活(月曜日から金曜日まで)は,おおむね以下のとおりである。 申立人は,本件構築物で起床し,午前5時にDのシャッターが開くと,同センターへ赴いて排便や洗面を済ませるとともに,同所付近で販売されているコンビニエンスストアの廃棄用弁当を購入して朝食とし,松原市に赴いて空き缶収集を行い,同市内でこれを売却し,午前11時ころまでにDに戻り,空き缶収集で用いた透明ビニール袋を洗浄する。申立人は,取得した現金でパン等を購入して昼食とし,その後はD3階の空きスペースで知人と歓談したり,読書をしたり,横になって休息したりするほか,同センター内にある便所やシャワールーム,食堂,売店を利用したり,洗濯を行ったりして過ごしている。また,申立人は時々Aで郵便物を受け取るが,同センター内のロッカーは使用していない。午後6時になると,Dはシャッターが下りるため,申立人は,他の日雇労働者と共に同センターを出て本件構築物に戻り,ξ公園で所携の携帯用ガスコンロ等を用いて自炊して夕食をとり,同構築物内で就寝する。 なお,土曜日 ると,Dはシャッターが下りるため,申立人は,他の日雇労働者と共に同センターを出て本件構築物に戻り,ξ公園で所携の携帯用ガスコンロ等を用いて自炊して夕食をとり,同構築物内で就寝する。 なお,土曜日や日曜日は空き缶収集ができないため,申立人は本件構築物で朝寝をするが,午後くらいからはDに行って平日と同様に過ごすことが多い。 申立人は,月に3回程度,μ地区高齢日雇労働者特別清掃事業に参加する(同事業は1年ごとに住民票や身分証明書による登録が必要であり,申立人の場合,直近の登録は本年3月である。)が,高齢のため条件の良い仕事には就けないことから,Aのその他の職業あっせんは利用していない。 また,申立人は,以前は日雇雇用保険被保険者手帳を所持していたが,現 在は所持していない。 【疎甲11,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】オ申立人は,平成19年6月29日,西成区長に対し,同日に本件友人宅から本件住所地に転入した旨の本件異動届を提出した。これに対し,窓口で対応した西成区職員は,住民表示台帳上では,本件住所地には職業安定所,福祉センター及びBのみが所在していることになっており,うち居住することができる施設はBのみであるとの認識であったが,念のために上記3施設に電話で確認したところ,いずれの施設からも,申立人の居住の実体はない旨の回答が寄せられた。そこで,上記職員は,本件異動届を受理せず,その用紙を申立人に返却した(本件不受理処分)。申立人は,口頭で,それではξ公園に住所を移すのではどうかと尋ねたが,上記職員は,それは認められない旨答えた。申立人は,同日夜,本件異動届を西成区役所に郵送で提出した。【疎甲4,5,疎乙7,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】カ申立人は,平成19年7月9日,本件不受理処分を不服として,大 た。申立人は,同日夜,本件異動届を西成区役所に郵送で提出した。【疎甲4,5,疎乙7,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】カ申立人は,平成19年7月9日,本件不受理処分を不服として,大阪市長に対し,その取消しを求める審査請求をした。西成区長は,同月10日付けの「住民異動届出書の不受理について(通知)」と題する書面(以下「本件通知書」という。)で,申立人が郵送した本件異動届について不受理とすることを本件住所地に郵送して通知し,申立人は,同月11日,本件通知書を受領した。本件通知書には,西成区長が本件異動届を受理することができない理由として,「本異動届に記載されているこれからの住所地(α×番44号)については,市営住宅部分を除き,該当する施設は,A・あいりん職安・Bであります。同施設においては,Bでの長期入院以外は,生活の本拠として居住できる場所とは社会通念上考えられません。 念のため同施設へ電話確認をしたところ,居住の事実を確認することはできませんでした。よって,この転入届は受付することができません。」と 記載されていた。【疎甲7,審尋期日における申立人の陳述,申立ての全趣旨】キ申立人は,平成19年7月17日,本件不受理処分を不服として,大阪市長に対する前記審査請求の結果を待つことなく,本案事件のうち本件不受理処分の取消しの訴えを提起し,同月31日,訴えを変更して住民登録に係る義務付けの訴えを追加提起するとともに,本件申立てをした。【当裁判所に顕著な事実】(3)大阪市長の選挙(以下「本件選挙」という。)は,平成19年11月4日に告示され,同月18日に投票が行われることが予定されている。【疎甲25】 本件申立てについて適法な本案訴訟の係属を欠くか(争点①)(1)前記のとおり,住基法32条,31条の4,住基法 月4日に告示され,同月18日に投票が行われることが予定されている。【疎甲25】 本件申立てについて適法な本案訴訟の係属を欠くか(争点①)(1)前記のとおり,住基法32条,31条の4,住基法施行令31条2項は,住基法の規定により指定都市の区長がした処分の取消しの訴えは,当該処分についての市長に対する審査請求の裁決を経た後でなければ提起することができない旨規定しているところ,申立人は,本件不受理処分について大阪市長に審査請求をしたものの,その結果を待つことなく,審査請求の8日後には本件不受理処分の取消しの訴え(本案事件)を提起しているから,行訴法8条2項2号に該当しない限り,本案事件は,審査請求の前置を欠くものとして不適法ということになる。そこで,本案事件の提起について,同号に規定する「処分,処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するか否かについてまず検討する。 住民基本台帳制度は,市町村(特別区を含む。以下同じ。)において,住民の居住関係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行うことを目的とする制度として規定され(住基法1条),市町村長は, 常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならず(同法3条1項),定期に,同法7条に規定する事項について調査をするものとされ(同法34条1項),同項に定める場合のほか,必要があると認めるときは,いつでも同法7条に規定する事項について調査をすることができ(同法34条2項 同法7条に規定する事項について調査をするものとされ(同法34条1項),同項に定める場合のほか,必要があると認めるときは,いつでも同法7条に規定する事項について調査をすることができ(同法34条2項),同条1項,2項の調査に当たり,必要があると認めるときは,当該吏員をして,関係人に対し,質問をさせ,又は文書の提示を求めさせることができ(同条3項),市町村長は,その事務を管理し,及び執行することにより,又は同法10条若しくは同法12条,13条の規定による通知若しくは通報若しくは同法34条1項若しくは2項の調査によって,住民基本台帳に脱漏若しくは誤載があり,又は住民票に誤記若しくは記載漏れがあることを知つたときは,届出義務者に対する届出の催告その他住民基本台帳の正確な記録を確保するため必要な措置を講じなければならない(同法14条1項)。 そして,前記のとおり,ある者について住民票の消除がされると,住基法15条2項に基づく市町村長からの住民票の消除の通知に基づいて当該市町村の選挙管理委員会によりその者について選挙人名簿に公選法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨の表示がされ,さらに,その者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日後4箇月を経過するに至ったときは,当該市町村の選挙管理委員会により同法28条2号の規定に基づき選挙人名簿から抹消されることとなる結果,その者は,同法42条1項の規定により,選挙人名簿に登録されるべき旨の決定書又は確定判決書を所持して選挙の当日投票所に至らない限り,すべての選挙において投票をすることができなくなる。また,上記選挙人名簿からの抹消がされる前においても,前記のとおり,その者は,少なくとも市町村の議会の議員又は長の選挙において,当該住所を有しなくなった旨の表示が誤っていることなどを明らかにする資料 また,上記選挙人名簿からの抹消がされる前においても,前記のとおり,その者は,少なくとも市町村の議会の議員又は長の選挙において,当該住所を有しなくなった旨の表示が誤っていることなどを明らかにする資料の 提示等があることによってその住所要件の存在を確認し得るというような特別の事情がある場合を除いて,選挙権の要件としての住所要件(同法9条2項)を欠くものとして,投票することができなくなる。 そして,住基法4条は,住民の住所に関する法令の規定の解釈は,地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならないと規定し,同項は,市町村の区域内に住所を有する者は,当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とすると規定しているところ,およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合,反対の解釈をすべき特段の事由のない限り,その住所とは各人の生活の本拠(民法22条参照)を指すものと解されるから,地方自治法10条1項にいう住所も,これと別異に解すべき特段の事由は見いだせない。したがって,同項にいう住所とは,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解される。 しかるところ,前記本件に係る事実関係(2)イのとおり,申立人の住民票上の住所である本件友人宅は,客観的にみて申立人の生活の本拠たる実体を何ら具備していない上,申立人は,本件異動届の提出によって,その事実を西成区長に対して自ら申告してしまっているということができる。 これらによれば,本件選挙の投票日までに,申立人が本件友人宅に住基法にいう住所すなわち生活の本拠を有しないものとして職権による住民票の を西成区長に対して自ら申告してしまっているということができる。 これらによれば,本件選挙の投票日までに,申立人が本件友人宅に住基法にいう住所すなわち生活の本拠を有しないものとして職権による住民票の消除を受け,選挙管理委員会により公選法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨の表示がされる可能性が極めて高いといえるのであり,また,その場合,本件選挙の際に申立人において投票事務従事者に対し投票が認められるために必要な当該表示が誤っていることを明らかにする資料の提示等を行うことが容易であるとも直ちに認め難い。 以上によれば,本件不受理処分により,申立人は少なくとも本件選挙において選挙権を行使することが極めて困難になるといわざるを得ないのであり,本件不受理処分により憲法15条1項,3項,93条2項等によって保障されている申立人の選挙権を行使する権利が侵害されるというべきである。そして,選挙権は,憲法によって保障され,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,当該権利又はその行使を制限することが原則として許されない国民の重要な権利であるにとどまらず,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであることにかんがみると,申立人には,本件不受理処分により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるというべきである。 したがって,本件訴え(本案訴訟)は,行訴法8条2項2号に該当し,本件不受理処分についての審査請求に対する裁決を経ないで提起されたことによっては,不適法とはならないと解される。 (2)次に,本件訴え(本案訴訟)は,前記のとおり,行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされ 審査請求に対する裁決を経ないで提起されたことによっては,不適法とはならないと解される。 (2)次に,本件訴え(本案訴訟)は,前記のとおり,行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合において,当該行政庁が当該処分をすべきであるにかかわらずこれがされないときに,当該行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)であるところ,このような義務付け訴訟が適法であるためには,当該法令に基づく申請を却下する旨の処分が取り消されるべきもの等であること,すなわち,当該訴訟と併合して提起すべき行訴法37条の3第3項各号所定の訴えに係る請求に理由があることが必要であり,仮に当該請求に理由がない場合には,当該義務付け訴訟は不適法として却下を免れない(同条1項,5項)。 しかるところ,本件において,申立人は,本件不受理処分の取消訴訟を,本件住所地を住民票上の住所として記載することを義務付ける訴訟と併合して 提起しているから,本件不受理処分が少なくとも取り消されるべきものであること,すなわち,本件不受理処分の取消しを求める訴えに理由があることが必要となる。 そして,前記本件に係る事実関係(2)カ及び申立ての全趣旨によれば,本件不受理処分は,申立人が本件住所地に居住している事実がないことを理由としていることが明らかであるところ,前記のとおり,住基法にいう住所とは,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解すべきであるから,本件住所地が申立人にとって上記のような意味における生活の本拠に当たるということができないのであれば,本件不受理処分には瑕疵はなく る実体を具備しているか否かにより決すべきものと解すべきであるから,本件住所地が申立人にとって上記のような意味における生活の本拠に当たるということができないのであれば,本件不受理処分には瑕疵はなく,その取消しを求める訴えには理由がないことになる。 そこで検討するに,前記本件に係る事実関係(2)を総合すれば,申立人は,平成18年12月ころ以降はほぼ毎日,本件住所地に所在するDの3階で午前11時ころから午後6時前まで過ごし,知人と歓談したり,読書したり,横になって休息したりしているほか,月に3回程度は同センターにおいてμ地区高齢日雇労働者特別清掃事業の紹介を受け,同センターにおいて,給排水設備を有しないξ公園では行うことができない排便,洗面及び洗濯等を行い,シャワー設備を用いたり,飲料水を確保している上,郵便物の着信場所としても用いているというのであるが,反面,Dを午後6時以降午前5時までの間起臥寝食の場として用いることは禁じられているため,申立人は,午後6時ころ以降はDから約150メートル離れたξ公園に移動し,同公園で自炊して夕食をとり,同公園内にある本件構築物内で就寝し,本件構築物内に簡易ベッドや文房具等の私物を南京錠を掛けて保管しているというのであるから,本件住所地は,申立人にとって,客観的にみて,その生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心として,生活の本拠たる実体を具備して いるものとまでは認めることはできず,かえって,申立人の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心は本件構築物の所在場所であることがうかがわれなくもない。 したがって,西成区長が住基法施行令11条において付与された審査権限に基づいて審査した結果として申立人の住所を本件住所地と認めなかったことには不合理な点はなく,他に本件不受理処分が違法であることをう したがって,西成区長が住基法施行令11条において付与された審査権限に基づいて審査した結果として申立人の住所を本件住所地と認めなかったことには不合理な点はなく,他に本件不受理処分が違法であることをうかがわせる事情もないというほかはない。 (3)これに対し,申立人は,本件住所地は,生活の本拠としての条件を具備していると主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件住所地をもって住基法にいう住所と認めることができるためには,本件住所地が申立人の一時的な滞在場所にすぎないのではなく客観的に生活の本拠たる実体を具備していると評価するに足りる事実関係が認められることが必要であり,そのような事実関係が認められない限り,本件住所地をもって住基法にいう住所と認めることはできないというべきであるところ,申立人がほぼ毎日約7時間をDですごし,その文化的生活のために不可欠な給排水設備等をほぼ専ら同センターに依存しているとしても,それだけでは,本件住所地を申立人にとっての生活の本拠たる実体と認めることはできない。なお,申立人は,船舶内に居住することを常とし,港を転々としている船員の住所について,航海を終われば通常帰港する関係にある主たる定けい港であるとする昭和46年3月31日自治振第128号各都道府県総務部長宛振興課長通知のように,国も一定の場所で継続して起居することができない者についてその権利行使を妨げないよう住所について柔軟な解釈を示している旨主張するが,上記事例についていえば,当該船員の生活の本拠はいわば船舶そのものであるが,当該生活の本拠自体が常時移動しているため,その船舶の主けい港を当該船員の住所と解したものであって,住民自体が移動している場合とは事案を異にするというべきであ る。 また,申立人は,平成19年3月15日の参議院厚生労働委員会にお るため,その船舶の主けい港を当該船員の住所と解したものであって,住民自体が移動している場合とは事案を異にするというべきであ る。 また,申立人は,平成19年3月15日の参議院厚生労働委員会において,厚生労働大臣が「法的な居所と申しますか,住民としての登録場所が存在する方がこのホームレスの皆さんの自立,就労といったようなことについて好都合であることは申すまでもないことでございまして,その意味ではこの問題,私よく総務大臣の方にお伝えして,善処方を依頼しておきたいと,このように思います。」と答弁していることから,申立人の場合には,郵便物を受領し,日雇雇用保険の給付手続や求職活動・技能講習の受付手続等を行っい,その法的な居所として最もふさわしい本件住所地こそが住基法上の住所と認められるべきである旨主張する。 確かに,一定の住所が維持することができない者については,住民票の調製を受けることができない結果,選挙権はもとより,身分証明書の発行を受けることができないために,福祉受給権その他の権利を行使したり,職業のあっせんを受けたりすることが著しく困難であったり,不可能となったりする可能性があることは否定できず,疎甲18によれば,諸外国においては,架空の住所への登録を認めるなどの方途を通じてそうした者の社会復帰を支援する試みが行われている例があることが一応認められる。 しかしながら,申立人の主張自体から,一定の必要性がある場合に生活の本拠とまではいえない場所を住所として登録することを認めるか否かについて,政府においても検討が緒に付いたといえるにすぎないことは明らかであり,厚生労働大臣が上記のような答弁を行ったというだけでは,既に説示したような住基法の住所の意義が変容するものでもないというべきである(なお,前記のとおり,住基法にいう住所とは地方自 とは明らかであり,厚生労働大臣が上記のような答弁を行ったというだけでは,既に説示したような住基法の住所の意義が変容するものでもないというべきである(なお,前記のとおり,住基法にいう住所とは地方自治法10条1項にいう「住所」と同義であるところ,住所と居所とは異なる概念である上(民法22条,23条参照),地方自治法10条2項が,住民は,法律の定めるところにより,その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し, その負担を分任する義務を負うと規定していることなどからみて,住所が知れない場合には,居所を住所とみなすとの民法23条1項の規定は,住基法にいう住所を判定するに当たっては適用の余地がないと解すべきである。)。 なお,申立人は,「法的な居所」についての立法措置等が講じられるまで,暫定的に本件住所地を申立人の住所として認めるべきとも主張するが,その法的根拠の具体的内容は必ずしも明らかとはいえないというべきである。のみならず,前記本件に係る事実関係(2)のとおり,申立人がDにおいて就職あっせんなどの求職活動,日雇雇用保険の給付手続を行っている事実はない上,技能講習の受付手続を行っていることを認めるに足りる証拠もないから,申立人の主張はその前提においても失当である。 したがって,申立人の上記主張は,いずれも採用することができない。 (4)さらに,申立人は,選挙権の制限は,投票の正確性又は投票に係る事務手続の円滑性を確保することができない場合にのみ許されるところ,申立人がβ内に居住していることが明らかである以上,その選挙権を制限されるべき理由はなく,申立人が選挙権を行使することができないのは,ひとえに,相手方らが申立人のように一定の住居を維持できない者の選挙権を不当に制限する公選法の改正,又は公選法が投票の要件とする住所 れるべき理由はなく,申立人が選挙権を行使することができないのは,ひとえに,相手方らが申立人のように一定の住居を維持できない者の選挙権を不当に制限する公選法の改正,又は公選法が投票の要件とする住所を一定の住居を維持できない者に用意できない住基法の改正が遅れたことにあるのであり,そのことによる選挙権の制限は違憲であり,かつ,参政権に対する不合理な制限を禁ずる市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号。 以下「自由権規約」という。)25条にも反するから,住基法を憲法及び自由権規約に反しないよう限定解釈するとすれば,β内のいずれかの場所を申立人の住所と認めるべきであるところ,申立人についてξ公園又は本件構築物の所在場所をその住所として認められる保障はないというべきであるから,いわば次善の策として,Dの所在する本件住所地をその住所として認めるべきであるといった趣旨の主張をする。 確かに,前記認定事実によれば,申立人の生活の本拠は本件構築物の所在場所であることがうかがわれなくはないが,申立ての全趣旨によれば,相手方はそのような場所を住所とする住基法に基づく届出を認めない運用を行っていると認められるから,申立人は,本件友人宅を住所とする住民票が消除された場合,公選法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨の表示の抹消ないし同法28条2号の規定による選挙人名簿からの抹消の取消しを受けることができず,その選挙権の行使が事実上制限される可能性がある。 ところで,選挙人名簿の被登録資格を定めた公選法21条1項の規定は,選挙直前の意図的な住民票の移動による不正投票の防止を図るなど選挙の公正を確保する趣旨に出たものであるとともに,同法27条1項,28条2号の規定と相まって,複数の市町村の選挙人名簿に重複して登録される事態及びいずれの 民票の移動による不正投票の防止を図るなど選挙の公正を確保する趣旨に出たものであるとともに,同法27条1項,28条2号の規定と相まって,複数の市町村の選挙人名簿に重複して登録される事態及びいずれの市町村の選挙人名簿にも登録されない事態を可能な限り防止する趣旨に出たものと解される。そして,昭和44年法律第30号による改正前の公選法21条1項において「引き続き3箇月以上その市町村の区域内に住所を有する者」を当該市町村の名簿に登録する旨規定していたのを上記改正により「引き続き3箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者」について行うことに改めた経緯に照らすと,上記改正後の公選法21条1項が引き続き3箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されていることを選挙人名簿の被登録資格の要件として規定しているのは,これを個々の現実の住所関係にかからせるとその認定が著しく困難になり,選挙人名簿自体がかえって不正確なものとなるおそれがあることから,住基法に基づいて整備される住民基本台帳を基礎とすることにより,これを統一的にかつ比較的容易,敏速な方法で把握することができるようにする趣旨に出たものであると解される。以上のような立法目的及び趣旨にかんがみると,公選法21条,27条1項,28条2号の規定は,直ちに不合理であるということはできない。 他方で,前記のとおり,住民基本台帳の制度は,選挙人名簿の登録の基礎となるものであるにとどまらず,住民基本台帳に住民の居住関係の事実と合致した正確な記録をすることによって,住民の居住関係の公証,学齢簿の編成,国民健康保険,介護保険,国民年金,児童手当等様々な行政事務処理の基礎とされるものであるほか,住民票に記載されている住所は,本人確認情報を構成するものとして,同法に基づいて構築される住民基本台帳ネット 民健康保険,介護保険,国民年金,児童手当等様々な行政事務処理の基礎とされるものであるほか,住民票に記載されている住所は,本人確認情報を構成するものとして,同法に基づいて構築される住民基本台帳ネットワークシステムを通じて,市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の行政機関等に対する本人確認情報の提供並びに公的個人認証サービスを行うための基礎となるものである。 以上のような公選法21条1項,27条1項,28条2号の規定の趣旨,目的並びに住民基本台帳の制度の目的及び住民票における住所の記載の意義等にかんがみると,申立人が住民基本台帳への記録を求める住所と同一の市町村内に客観的に生活の本拠たる実体を具備した一定の場所の存在が認められ得るとしても,専ら申立人の選挙権の行使を確保するためにのみ,申立人の主張するように住基法の規定を解釈適用することは,かえって同法の定める上記のような住民基本台帳制度の趣旨,目的を損なうのみならず,住民基本台帳を基礎に選挙人名簿の被登録資格を把握することにより選挙人名簿の正確性を確保するととともにこれを容易,敏速な方法で調製し,もって選挙の公正を確保しようとする公選法の上記各規定の趣旨,目的,殊に上記昭和44年法律第30号による公選法21条1項の規定の改正の趣旨をも損なうものとして,許されないというべきである。 したがって,申立人の前記主張は,採用することができない。 (5)加えて,申立人は,申立人の居住する場所は本件住所地と極めて近接したξ公園内である上,判決によって申立人の住所が本件住所地であると認定されれば申立人による投票も選挙無効の原因とはならないのであるから,本件住所地を申立人の住所と認めなかった本件不受理処分は違法であるといった 趣旨の主張をする。 しかしながら,前記のとおり,住基法 れれば申立人による投票も選挙無効の原因とはならないのであるから,本件住所地を申立人の住所と認めなかった本件不受理処分は違法であるといった 趣旨の主張をする。 しかしながら,前記のとおり,住基法にいう住所は,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものと解されるのであり,一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものであるところ,住民基本台帳の制度は,市町村において,住民基本台帳に住民の居住関係の事実と合致した正確な記録をすることによって,住民の居住関係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行うものとして,住基法が定めたものであって,住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とするものである(同法1条)。 そして,住民基本台帳の制度は,住民の居住関係の公証にとどまらず,選挙人名簿の登録(同法15条1項,公選法21条1項),学齢簿の編成(学校教育法施行令1条,2条),国民健康保険(住基法28条,国民健康保険法9条10項),介護保険(住基法28条の2,介護保険法12条5項),国民年金(住基法29条,国民年金法12条3項),児童手当(住基法29条の2,児童手当法施行規則8条)等各種の行政事務処理の基礎とされるものである。さらに,住民票に記載されている住所は,住基法30条の5第1項にいう本人確認情報を構成するものとして,同法に基づいて構築される住民基本台帳ネットワークシステムを通じて,市町村の区域を超えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の行政機関 住基法30条の5第1項にいう本人確認情報を構成するものとして,同法に基づいて構築される住民基本台帳ネットワークシステムを通じて,市町村の区域を超えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の行政機関等に対する本人確認情報の提供並びに公的個人認証サービスを行うための基礎となるものである。以上のような住基法における住所の意義及び機能に照らすと,同法にいう住所は,自ずから地域的に限定された場所を予定しているものと解される。また,住居表示に関する法律(昭和37年法律第119号)は,合理的な住居表示の制度及 びその実施について必要な措置を定め,もって公共の福祉の増進に資することを目的とするものであるが(1条),市街地にある住所若しくは居所又は事務所,事業所その他これらに類する施設の所在する場所(以下「住居」という。)を表示するには,都道府県,郡,市(特別区を含む。),区(地方自治法252条の20の区をいう。)及び町村の名称を冠するほか,①市町村内の町又は字の名称並びに当該町又は字の区域を道路,鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川,水路等によって区画した場合におけるその区画された地域(以下「街区」という。)につけられる符号(以下「街区符号」という。)及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる住居表示のための番号(以下「住居番号」という。)を用いて表示する方法(街区方式),②市町村内の道路の名称及び当該道路に接し,又は当該道路に通ずる通路を有する建物その他の工作物につけられる住居番号を用いて表示する方法(道路方式),のいずれかの方法によるものとする旨規定しており(2条),住基法も,住民票の住所の記載が住居表示に関する法律の上記規定に従って行われることを前提としているものと解される。これらによれば,住基法にいう住所は, の方法によるものとする旨規定しており(2条),住基法も,住民票の住所の記載が住居表示に関する法律の上記規定に従って行われることを前提としているものと解される。これらによれば,住基法にいう住所は,少なくとも住居表示に関する法律にいう住居番号によって特定される場所ないしそれに準じる程度に限定された場所を指すものと解すべきである。 のみならず,選挙管理委員会が選挙人名簿に登録されている者について住基法にいう住所,すなわち,生活の本拠でない場所を住所とする住民票の記載がされている事実を知った場合又はそのような記載がされていると疑うべき事情が存在する場合,職権による当該住民票の消除及びその旨の当該市町村長からの当該選挙管理委員会に対する通知がされていなくても,当該選挙管理委員会において,同法21条4項,公選法施行令10条の2の規定する被登録資格についての調査義務を尽くさず,公選法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨の表示をせずにその者の投票を認めることは, 選挙の管理執行の手続に関する規定に違反するものとして選挙無効の原因となると解する余地があるところ,申立人について生活の本拠たる実体を具備しているものとは認められない場所がその住所であるとして,公選法21条1項の選挙人名簿の被登録資格が存在することを前提とした手続を進めることは,選挙の管理執行の手続に関する規定に違反するものとして,選挙無効の原因となると解する余地があるというべきである。 そうであるとすれば,たとい申立人がDと近接したξ公園内の本件構築物において起居していたとしても,Dという限定された場所について客観的に生活の本拠たる実体を具備していると評価するに足りる事実関係が認められない限り,その所在地の住所をもって住基法にいう住所と認めることはできないものというべきである いう限定された場所について客観的に生活の本拠たる実体を具備していると評価するに足りる事実関係が認められない限り,その所在地の住所をもって住基法にいう住所と認めることはできないものというべきである。そして,前記認定事実の下においては,Dの所在地をもって客観的に申立人の生活の本拠たる実体を具備していると認められないことは,前記のとおりである。 以上のとおりであるから,申立人の前記主張は,採用することができない。 (6)以上検討したところによれば,本件不受理処分の取消しを求める請求を認容する余地はないから,本件義務付けの訴えは不適法といわざるを得ず,そうであるとすれば,本件訴え(本案訴訟)が全体として適法に継続しているということができない(争点①)ことはもとより,本件申立ては,本案について理由があるとみえるときにも当たらない(争点③)ことが明らかというべきである。 結論 以上のとおりであるから,その余の点を判断するまでもなく,本件申立ては理由がないから,これを却下すべきである。 よって,主文のとおり決定する。 平成19年8月10日 大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官西川知一郎裁判官岡田幸人裁判官森田亮
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